特許第6213052号(P6213052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6213052高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物及びその製造方法並びに接着助剤、ゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液及びゴム組成物−繊維複合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6213052
(24)【登録日】2017年9月29日
(45)【発行日】2017年10月18日
(54)【発明の名称】高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物及びその製造方法並びに接着助剤、ゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液及びゴム組成物−繊維複合体
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20171005BHJP
   C08K 5/41 20060101ALI20171005BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20171005BHJP
   C08F 14/06 20060101ALI20171005BHJP
   C08F 2/26 20060101ALI20171005BHJP
   B32B 25/10 20060101ALI20171005BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20171005BHJP
   D06M 15/248 20060101ALI20171005BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20171005BHJP
   D06M 15/273 20060101ALI20171005BHJP
   D06M 15/327 20060101ALI20171005BHJP
   D06M 15/693 20060101ALI20171005BHJP
【FI】
   C08L27/06
   C08K5/41
   C08K5/098
   C08F14/06
   C08F2/26 Z
   B32B25/10
   B32B27/30 101
   D06M15/248
   D06M15/263
   D06M15/273
   D06M15/327
   D06M15/693
【請求項の数】9
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-172628(P2013-172628)
(22)【出願日】2013年8月22日
(65)【公開番号】特開2015-40264(P2015-40264A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浜田 昭典
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 保
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−095774(JP,A)
【文献】 特開2013−082913(JP,A)
【文献】 特開2013−064097(JP,A)
【文献】 特開平07−126608(JP,A)
【文献】 特開平05−043761(JP,A)
【文献】 特開昭62−246908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/06
C08K 5/098
C08K 5/41
C08F 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰返し単位、又は下記一般式(1)で表される繰返し単位並びに下記一般式(2)、(3)、(4)及び(5)で表される少なくとも1つの繰返し単位をもつポリマーを含有し、さらに、下記一般式(1)で表される繰返し単位100重量部に対して、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物1.0〜5.0重量部及び高級脂肪酸塩0.05〜2.5重量部を含有し、かつ、塩化ビニル系重合体の平均粒子径が0.15μm以下で、平均重合度が1800〜23000であることを特徴とする高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物。
【化1】
【化2】
(式中、Rは炭素数2〜8のアルキル基を表し、Rは水素またはメチル基を表す。)
【化3】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基もしくはアルコキシルアルキル基、または水素を表し、Rは水素またはメチル基を表す。)
【化4】
(式中、Rはメチル基またはエチル基を表す。)
【化5】
(式中、Rは水素またはメチル基を表す。)
【請求項2】
スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物が、カリウム、ナトリウム、アンモニア及びトリエタノールアミンのいずれかの塩であることを特徴とする請求項1に記載の高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物。
【請求項3】
高級脂肪酸塩が、高級脂肪酸のカリウム、ナトリウム、アンモニア及びトリエタノールアミンのいずれかの塩であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物。
【請求項4】
塩化ビニル単量体100重量部に対して、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物1.0〜5.0重量部及び高級脂肪酸塩0.05〜2.5重量部を水性媒体中で重合することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載の高重合度塩化ビニル系重合体テックス組成物の製造方法。
【請求項5】
塩化ビニル単量体、並びに下記一般式(6)、(7)、(8)及び(9)で表される少なくとも1種の単量体を用い、塩化ビニル単量体100重量部に対して、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物1.0〜5.0重量部及び高級脂肪酸塩0.05〜2.5重量部を水性媒体中で重合することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載の高重合度塩化ビニル系重合体テックス組成物の製造方法。
【化6】
(式中、Rは炭素数2〜8のアルキル基を表し、R10は水素またはメチル基を表す。)
【化7】
(式中、R11は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R12は炭素数1〜4のアルキル基もしくはアルコキシルアルキル基、または水素を表し、R13は水素またはメチル基を表す。)
【化8】
(式中、R14はメチル基またはエチル基を表す。)
【化9】
(式中、R15は水素またはメチル基を表す。)
【請求項6】
請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載の高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を含むことを特徴とする接着助剤。
【請求項7】
請求項6に記載の接着助剤及びゴム組成物−繊維複合体用接着剤を含有することを特徴とするゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液。
【請求項8】
請求項6に記載の接着助剤及びゴム組成物−繊維複合体用接着剤を混合・分散して製造することを特徴とする請求項7に記載のゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載のゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液を繊維に含浸し、その後乾燥して得られる処理繊維と未加硫のゴム組成物から得られる複合体を構成してから加硫して得られることを特徴とするゴム組成物−繊維複合体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物及びその製造方法並びに接着助剤、ゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液及びゴム組成物−繊維複合体に関し、より詳しくはゴム組成物と繊維間の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着性を改善するための接着助剤を得ることに好適な高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物及びその製造方法並びにそれを含有する接着助剤、その接着助剤とゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液を含むゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液及びその接着剤処理液で処理して得られるゴム組成物−繊維複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品は、タイヤ、ベルト、ホース等の自動車部品や工業用部品、建築資材等の分野で使用されており、これらの製品は、天然ゴムやスチレンブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン等のゴムに、カーボンブラック、可塑剤、老化防止剤、加硫促進剤等を配合したゴム組成物に、接着剤を含浸・乾燥させたポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維等の繊維を加硫接着した複合体として製造されている。
【0003】
ゴム組成物と繊維間の接着力を高める接着剤としては、ビニルピリジンスチレンブタジエン共重合体樹脂ラテックス等のゴムラテックスにレゾルシンとホルマリンの縮合物溶液(RF液)を混合した処理液(RFL液)、さらにはRFL液にイソシアネート化合物やエポキシ化合物等を混合した処理液や、ゴムラテックスにマレイミド化合物を混合した処理液等が用いられている。これらの接着剤はゴムや繊維間の接着力を高めるが、高温雰囲気下での接着力や耐熱劣化後の接着力や、耐熱屈曲疲労後の接着力を高めるためにハロゲン系ゴムラテックスの使用や、特定の割合のビニルピリジン−共役ジエン系ゴムラテックスの使用によるポリエステル繊維とゴムの接着方法等が提案されている。
【0004】
(1)ポリエステル繊維を塩化ビニルの単独、又は酢酸ビニル、アクリロニトリル等の共重合を行ったビニルハライド基を含有する化合物、ポリエポキシド化合物及び/又はブロックドポリイソシアネート化合物、並びにゴムラテックスを含む処理液で処理されたポリエステル繊維とゴム複合体が提案されている(例えば特許文献1)。この方法は確かに初期接着力や耐熱劣化後の接着力に優れるものの、高温雰囲気での接着力が十分とはいえない。また、重合度については考慮されていないため、耐熱屈曲試験後の接着力に劣った。
【0005】
(2)繊維を、カルボキシル変性ポリ塩化ビニルラテックスを含有する前処理液で予め処理し、次いでRFL系接着剤を含有する接着処理液で処理するゴム補強用繊維の製造方法が提案されている(例えば特許文献2)。この方法は初期接着力や耐熱劣化後の接着力は良好だが、高温雰囲気での接着力に課題があり、重合度については考慮されていないため、耐熱屈曲試験後の接着力に劣る課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−234275号公報
【特許文献2】特開2011−241514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム等のゴム組成物とポリエステル繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維等の各種繊維間の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を改善するための接着助剤を得ることに好適な高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物及びその製造方法並びにそれを含有する接着助剤、その接着助剤とゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液を含むゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液及びその接着剤処理液で処理して得られるゴム組成物−繊維複合体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題について鋭意検討を重ねた結果、特定の物性値、特に高重合度を持つ塩化ビニル系重合体ラテックス組成物が、ゴム組成物と各種繊維間の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を改善するための接着助剤を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、所定の一般式で表される繰返し単位、又は一般式(1)で表される繰返し単位及び所定の一般式で表される少なくとも1つの繰返し単位をもつポリマーを含有し、さらに、一般式(1)で表される繰返し単位100重量部に対して、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物1.0〜5.0重量部及び高級脂肪酸塩0.05〜2.5重量部を含有し、かつ、塩化ビニル系重合体の平均粒子径が0.15μm以下で、平均重合度が1500〜23000であることを特徴とする高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物及びその製造方法並びにそれを含有する接着助剤、その接着助剤とゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液を含むゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液及びその接着剤処理液で処理して得られるゴム組成物−繊維複合体である。
【0009】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明の高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物は、下記一般式(1)で表される繰返し単位、又は下記一般式(1)で表される繰返し単位及び下記一般式(2)、(3)、(4)及び(5)で表される少なくとも1つの繰返し単位をもつポリマーを含有するものである。
【0011】
該ポリマーの含有量は、本発明の効果を奏する限り、特に限定するものではない。高温雰囲気下での接着力をより向上させるため、下記一般式(1)で表される繰返し単位100重量部に対して、0.5〜70重量部が好ましく、0.5〜50重量部がさらに好ましく、0.5〜20重量部が特に好ましい。
【0012】
【化1】
【0013】
【化2】
(式中、Rは炭素数2〜8のアルキル基を表し、Rは水素またはメチル基を表す。)
【0014】
【化3】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基もしくはアルコキシルアルキル基、または水素を表し、Rは水素またはメチル基を表す。)
【0015】
【化4】
(式中、Rはメチル基またはエチル基を表す。)
【0016】
【化5】
(式中、Rは水素またはメチル基を表す。)
一般式(1)で表される繰返し単位をもつのは、ポリ塩化ビニル等である。
【0017】
一般式(2)で表される繰返し単位をもつポリマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸n−プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸イソプロピル、ポリ(メタ)アクリル酸n−ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸イソブチル、ポリ(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸n−オクチル等が挙げられ、これらの繰返し単位の一種類以上の共重合体でも良い。
【0018】
一般式(3)で表される繰返し単位をもつポリマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メトキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸エトキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、ポリ(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、ポリ(メタ)アクリル酸n−プロポキシプロピル、ポリ(メタ)アクリル酸n−ブトキシプロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等が挙げられ、これらの繰返し単位の一種類以上の共重合体でも良い。
【0019】
一般式(4)で表される繰返し単位をもつポリマーとしては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリプロピオン酸ビニル等が挙げられ、これらの繰返し単位の一種類以上の共重合体でも良い。
【0020】
一般式(5)で表される繰返し単位をもつポリマーとしては、例えば、ポリメタクリル酸グリシジル等が挙げられ、これらの繰返し単位の一種類以上の共重合体でも良い。
【0021】
本発明の高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物は、その構造式において、架橋構造及び網目構造を有しておらず、三次元でランダムな線状な構造となっている。
【0022】
本発明の高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物は、一般式(1)で表される繰返し単位100重量部に対して、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物1.0〜5.0重量部及び高級脂肪酸塩0.05〜2.5重量部を含有するものである。
【0023】
スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物が一般式(1)で表される繰返し単位100重量部に対して1.0重量部未満の場合及び5.0重量部を超える場合は、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が低下し、好ましくない。
【0024】
高級脂肪酸塩が一般式(1)で表される繰返し単位100重量部に対して0.05重量部未満の場合及び2.5重量部を超える場合は、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が低下し、好ましくない。
【0025】
ここに、スルホン酸塩を有する有機化合物としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類等が挙げられ、また、硫酸エステル塩を有する有機化合物としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸エステルナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類等が挙げられる。これらは単独でも、2種類以上含有していても良い。
【0026】
高級脂肪酸塩としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等とアルカリとの塩が挙げられる。入手のしやすさから、ナトリウム、カリウム、アンモニア、トリエタノールアミンとの塩が好ましい。これらは単独でも、2種類以上含有していても良い。
【0027】
本発明の高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物は、含有する塩化ビニル系重合体の平均粒子径が0.15μm以下である。平均粒子径が0.15μmを超えると、接着力が低下し、好ましくない。初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力をより向上させて兼ね備えるためには、0.12μm以下が好ましく、0.10μm以下がさらに好ましい。
【0028】
本発明の高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物は、平均重合度が1500〜23000と高い重合度を有する。平均重合度が1500未満であると、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が低下し、好ましくない。平均重合度が23000を超えると、耐熱屈曲疲労後の接着力が低下し、好ましくない。初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力の全ての向上のため、平均重合度は、1800〜23000が好ましく、4800〜12000がさらに好ましい。
【0029】
本発明の高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、他に、連鎖移動剤、還元剤、緩衝剤、増粘剤、縮合リン酸塩、界面活性剤、分散剤、粘着付与剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、造膜助剤、老化防止剤、凍結防止剤等を含有してもよい。
【0030】
増粘剤としては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、縮合リン酸塩としては、例えば、トリポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩等が挙げられ、分散剤としては、例えば、スチレン−マレイン酸モノエステル塩共重合体等が挙げられる。
【0031】
本発明の高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物は、塩化ビニル単量体100重量部に対して、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物1.0〜5.0重量部及び高級脂肪酸塩0.05〜2.5重量部を水性媒体中で乳化重合することにより製造することができる。乳化重合は、水を分散媒として、水に対して10〜140重量%の塩化ビニル単量体単独、又は塩化ビニル単量体と共重合可能なモノマーを、所定量のスルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物及び高級脂肪酸塩の存在下、重合開始剤を用い、攪拌下重合することにより行われる。スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物の使用量が、塩化ビニル単量体100重量部に対して1.0重量部未満の場合及び5.0重量部を超える場合は、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が低下し、好ましくない。
【0032】
スルホン酸塩を有する有機化合物としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類等が挙げられ、また、硫酸エステル塩を有する有機化合物としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸エステルナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類等が挙げられる。これらは単独でも、2種類以上使用しても良い。添加方法としては、通常一括添加、間欠添加、連続添加のいずれかの方法か、またはその組合わせによって行われる。
【0033】
高級脂肪酸塩としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等とアルカリとの塩が挙げられる。入手のしやすさから、ナトリウム、カリウム、アンモニア、トリエタノールアミンとの塩が好ましい。これらは単独でも、2種類以上使用しても良い。添加方法としては、通常一括添加、間欠添加、連続添加のいずれかの方法か、またはその組合わせによって行われる。高級脂肪酸塩の使用量が、塩化ビニル単量体100重量部に対して0.05重量部未満の場合及び2.5重量部を超える場合は、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が低下し、好ましくない。
【0034】
本発明の高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物は、塩化ビニル単量体、並びに下記一般式(6)、(7)、(8)及び(9)で表される少なくとも1種の単量体を乳化重合、ミクロ懸濁重合、シードミクロ懸濁重合により製造することができる。下記一般式(6)、(7)、(8)及び(9)で表される少なくとも1種の単量体の使用量は、本発明の効果を奏する限り、特に限定するものではない。生産性をより向上させるため、塩化ビニル単量体100重量部に対して、0.5〜75重量部が好ましく、0.5〜55重量部がさらに好ましく、0.5〜25重量部が特に好ましい。
【0035】
【化6】
(式中、Rは炭素数2〜8のアルキル基を表し、R10は水素またはメチル基を表す。)
【0036】
【化7】
(式中、R11は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R12は炭素数1〜4のアルキル基もしくはアルコキシルアルキル基、または水素を表し、R13は水素またはメチル基を表す。)
【0037】
【化8】
(式中、R14はメチル基またはエチル基を表す。)
【0038】
【化9】
(式中、R15は水素またはメチル基を表す。)
一般式(6)で表される単量体((メタ)アクリル酸エステル)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル等が挙げられる。
【0039】
一般式(7)で表される単量体((メタ)アクリル酸エステル)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
【0040】
一般式(8)で表される単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
【0041】
一般式(9)で表される単量体としては、例えば、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。
【0042】
一般式(6)〜(9)で表される単量体以外に、これらと共重合可能なビニル系単量体を使用してもよい。これらと共重合可能なビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタアクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸1−シアノエチル、(メタ)アクリル酸2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸1−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸2−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸3−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸4−シアノブチル、(メタ)アクリル酸6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチル−6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸8−シアノオクチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、メタアクリル酸n−プロポキシプロピル、メタアクリル酸n−ブトキシプロピル、等を例示することができる。
【0043】
さらに、以下の単量体を使用することもできる。例えば、(メタ)アクリル酸1,1−ジヒドロペルフルオロエチル、(メタ)アクリル酸1,1−ジヒドロペルフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸1,1,5−トリヒドペルフルオロヘキシル、(メタ)アクリル酸1,1,2,2−テトラヒドロペルフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸1,1,7−トリヒドロペルフルオロヘプチル、(メタ)アクリル酸1,1−ジヒドロペルフルオロオクチル、(メタ)アクリル酸1,1−ジヒドロペルフルオロデシル、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エステル類以外の成分としてはメチルビニルケトン等のアルキルビニルケトン化合物、ビニルエチルエーテル等のアルキルビニルエーテル化合物、アリルメチルエーテル等のアリルエーテル化合物、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、p−クロロメチルスチレン、p−アセトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、p−ブトキシスチレン、4−ビニル安息香酸、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルナフタレン等のビニル芳香族化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル化合物、アクリルアミド、ブダジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、2−(N−ピペリジメチル)−1,3−ブタジエン、2−トリエトキシメチル−1,3−ブタジエン、2−(N,N−ジメチルアミノ)−1,3−ブタジエン、N−(2−メチレン−3−ブテノイル)モルホリン等の1,3−ブタジエン化合物、イソプレン、ペンタジエン、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、プロピオン酸ビニル、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、メタクリロキシキシプロピルトリメトキシシラン、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ジアセトンメタクリレート、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等を例示することができ、均一で接着性に優れた塗膜を得るため、塩化ビニル単量体100重量部に対して、必要に応じて好ましくは1〜200重量部、さらに好ましくは5〜150重量部の割合で加えることができる。
【0044】
用いられる重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の水溶性開始剤、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、2、2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルペルオキシピバレート、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等の油溶性開始剤等を挙げることができ、場合によっては、硫酸第一鉄等の第一鉄塩、ハイドロサルファイトナトリウム、L−アルコルビン酸等の還元剤を添加して重合を開始する。この時使用される重合開始剤の添加方法は、通常、一括添加、間欠添加、連続添加のいずれかの方法か、またはその組合わせによって行われる。この時使用される重合開始剤の添加方法は、通常、一括添加、間欠添加、連続添加のいずれかの方法か、またはその組合わせによって行われる。塩化ビニルモノマーの重合率は、全モノマーに対して80〜97重量%であることが好ましい。
【0045】
重合温度は15〜50℃であり、15〜45℃が好ましく、20〜45℃がさらに好ましい。重合温度が10℃未満であると塩化ビニル系重合体の平均重合度が高くなり、60℃を超えると塩化ビニル系重合体の平均重合度が低くなる。
【0046】
重合時間は、特に限定するものではないが、3〜24時間が好ましい。
【0047】
重合の終了は、容器内の圧力を常圧、さらに減圧し、モノマーを回収することにより行う。重合禁止剤を添加して重合を終了させてもよい。
【0048】
必要に応じ、重合終了後のラテックスに、塩化ビニル系重合体100重量部に対してスルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物1.0〜5.0重量部及び高級脂肪酸塩0.05〜2.5重量部を含有するように、これらの乳化剤を追加添加することができる。
【0049】
さらに、この塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を製造する際に、重合の安定化やスケール発生量の低減を目的として、連鎖移動剤、還元剤、緩衝剤、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物以外の乳化剤等を添加することもできる。
【0050】
本発明においては、これらの高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物は単独、または2種類以上のブレンド体であっても問題なく使用可能である。
【0051】
重合の終了は、反応液を冷却し行う。場合によっては、重合禁止剤を添加して重合を終了させてもよい。
【0052】
本発明の高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を製造する際に、重合の安定化やスケール発生量の低減等を目的として、連鎖移動剤、還元剤、緩衝剤、増粘剤、縮合リン酸塩、分散剤、粘着付与剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、造膜助剤、老化防止剤、凍結防止剤等を添加することもできる。
【0053】
本発明の高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物は、シーラント用途、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、アクリル繊維等の繊維接着剤用途に用いることができる。更にこれらに限定することなく、繊維の被覆剤用途、つや消し剤、ペンキ等の水性塗料用途、感圧接着剤等の接着剤用途、グラビア印刷用インク、インクジェットインク等のインク用途、熱転写用インク受容層用途、無機塗料、磁気テープ、電池用電極剤用等のバインダー用途、フィルム用途、粘着剤用途、セメント混和材、粉体塗料、フィルム、シート、雑貨、人工皮革、電線被覆、壁紙表面処理等が挙げられる。
【0054】
以下に、本発明の高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物の用途のひとつである繊維接着剤用途について説明する。
【0055】
本発明の接着助剤は、本発明の高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を含有するものである。
【0056】
本発明のゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液は、接着助剤とゴム組成物−繊維複合体用接着剤を含有する接着剤処理液である。ゴム組成物−繊維複合体用接着剤は、例えば、レゾルシンとホルマリン縮合物の水溶液とゴムラテックスを含むRFL接着剤や、RFL接着剤にマレイミド化合物やキノンジオキシム化合物等の化合物を含有する接着剤、マレイミド化合物にゴムラテックスを含有する接着剤等が挙げられる。
【0057】
RFL接着剤が含むレゾルシンとホルマリン縮合物の水溶液は、例えば、1,3−ベンゼンジオール、1,5−ベンゼンジオール、ビスヒドロキシメチルフェノール、ビスヒドロキシエチルフェノールの如きビスヒドロキシアルキルフェノール等のレゾルシンとホルマリンとの縮合物の水溶液が挙げられる。これらは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基性触媒、もしくは塩酸、硫酸等の酸触媒によって製造される。
【0058】
RFL接着剤が含有するゴムラテックスは、例えば、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスをカルボキシル基等で変性した変性ラテックス、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス及びその変性ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム及びその変性ラテックス、水素添加アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム、カルボシキ変性水素添加アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム、天然ゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、ブチルゴムラテックス、アクリル酸エステル共重合体ラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス等から選ばれた1種または2種以上を混合したラテックス混合物としても使用可能である。
【0059】
レゾルシンとホルマリン縮合物の水溶液とゴムラテックスを含むRFL接着剤は、レゾルシンとホルマリン縮合物の水溶液とゴムラテックスを任意の割合で混合することで得られる。
【0060】
RFL接着剤にマレイミド化合物やキノンジオキシム化合物等の化合物を含有するゴム組成物−繊維複合体用接着剤は、上記のRFL液に、ビスマレイミド、フェニルマレイミド及びN,N−m−フェニレンジマレイミド化合物等のマレイミド系架橋剤、p−キノンジオキシム等のキノンジオキシム系架橋剤、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート及びトリアリルイソシアヌレート等のアリル系架橋剤、硫黄等が挙げられる。これらの架橋剤は単独で用いても良いし、複数種を組み合わせて良い。
【0061】
マレイミド化合物にゴムラテックスを含有するゴム組成物−繊維複合体用接着剤は、上記のマレイミド系架橋剤に、上記の例えば、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスをカルボキシル基等で変性した変性ラテックス、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス及びその変性ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム及びその変性ラテックス、水素添加アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム、カルボシキ変性水素添加アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム、天然ゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、ブチルゴムラテックス、アクリル酸エステル共重合体ラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス等から選ばれた1種または2種以上を混合したラテックス混合物としても使用可能である。またマレイミド化合物にゴムラテックスを含有するゴム組成物−繊維複合体用接着剤は、水性接着剤中で、均質に存在する上で好ましく、更にはこの水性接着剤中に、カーボンブラックやホワイトカーボン等の補強剤や、後スルホン化ポリスチレン、ポリスチレンスルホン化ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等の分散剤を混合してもよい。
【0062】
本発明のゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液は、接着助剤をゴム−繊維複合体用接着剤に混合・分散して得られる。混合・分散する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、攪拌翼による混合分散、ホモジナイザー等による混合分散等が挙げられる。
【0063】
本発明のゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液には、必要に応じて、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ化合物等を含有していてもよい。
【0064】
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等のポリイソシアネート、またはこれらのイソシアネートと活性水素原子を2個以上有する化合物、例えば、トリメチロールプロパンヤペンタエリスリトール等と反応して得られる多価アルコール付加ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0065】
ブロックイソシアネート化合物としては、前記ポリイソシアネートに、例えば、ジフェニルアミン、キシリジン等の芳香族第2級アミン類;フタル酸イミド類;カプロラクタム、バレロラクタム等のラクタム類;アセトキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム類等のブロック化剤を反応させたブロック化ポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0066】
エポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、分子内に2個以上のエポキシ有するポリエポキシド化合物で、例えば、エチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類やエピクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシド類との反応物、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類と前記ハロゲン含有エポキシド類との反応物や、3,4−エポキシシクロヘキセンエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチル−シクロメチル)アジペート等が挙げられる。
【0067】
これらのイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ化合物を繊維処理剤として、直接、繊維に有機溶剤に酢酸エチル等に希釈し、塗布乾燥してもよく、または、ゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液に混合・分散させる方法は、これらの化合物を攪拌機により混合・分散させてもよい。
【0068】
本発明のゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液により処理される繊維は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド(芳香族ポリアミド)等のポリアミド繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、レーヨン繊維、ビニロン繊維、スフ等が挙げられるが特に限定されるものではない。また繊維の形状は糸状、コード状、織物、不織布、シート、短繊維、フィルム、シート等の種々の形態があるが特に限定されるものではない。
【0069】
繊維を本発明のゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液に浸漬させる方法は、特に限定されるものではないが、1)本発明のゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液を繊維に含浸乾燥させる方法、2)イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物またはエポキシ化合物を予め酢酸エチル等の有機溶剤に希釈し繊維に浸漬乾燥した後、本発明のゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液をその繊維に含浸乾燥させる方法、3)イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物またはエポキシ化合物を本発明のゴム−繊維複合体用接着剤処理液に混合・分散させ繊維に含浸乾燥させる方法等があげられる。
【0070】
本発明のゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液によって含浸処理された繊維は、80〜150℃で水分を除去する乾燥処理を行った後、ゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液の樹脂化や繊維との化学結合を促進するため150℃以上の温度で熱処理(ベーキング)を行うことが好ましいが、ベーキング方法に特に制限はない。また、ベーキング処理を行う必要のない繊維はこの処理を行わなくても良い。
【0071】
本発明のゴム組成物−繊維複合体に用いられるゴム組成物とは、原料ゴムと、充填剤、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤及び加工助剤等からなる副原料物を混練して得られるゴム配合物のことである。
【0072】
原料ゴムは特に限定されるものでは無いが、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等の不飽和型ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン、水素添加ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴムやフッ素ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム等の飽和型ゴム等が挙げられるが、これらは単独の使用もしくは2種以上のゴムを併用しても構わない。
【0073】
副原料物は、例えば、カーボンブラックやマイカ、シリカ、クレイ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、黒鉛、マイカ、フェライト等の充填剤に加え、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル、大豆油、菜種油等の植物油、ジブチルフタル酸エステルやジオクチルフタル酸エステル等のフタル酸エステル類、液状ブタジエンゴム等液状ゴム等の可塑剤、硫黄、ベンゾイルパーオキサイド等の加硫剤、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、モルホリノジチオベンゾチアゾール、ジフェニルチオウレア、ジフェニルグアニジン、メルカプトベンゾチアゾール、N−スルフェンアミド、ジメチルジカルバミン酸亜鉛等の加硫促進剤、酸化マグネシウム、鉛丹等の金属酸化物からなる加硫促進助剤、無水フタル酸、ニトロソジフェニルアミン等のスコーチ防止剤、N−イソプロピルN´−フェニル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−t−ブチルカテコール、メルカプトベンツイミダゾール等の老化防止剤、チオキシレノール、ジキシルジスルフィド等の素練り促進剤、ワックス、ステアリン酸等の活剤、テルペンフェノール、がムロジン、トール油ロジン等の粘着付与剤、重炭酸ナトリウム、アゾジカルボンアミド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等の発泡剤等が挙げられ、これらを使用するにあたり特に制限はない。
【0074】
原料ゴムと副原料物の混練は、オープンロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー等のミキサーによって混合分散されるが特に制約を受けるものではない。
【0075】
繊維の形態がコード、織物、シート等である場合、例えば、ゴム組成物と繊維間の接着力を高める本発明のゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液により浸漬し、乾燥し水分を除去した後、繊維(ベーキング処理が必要な繊維はベーキング処理を施した繊維)とゴム組成物を密着させ、これを加硫することにより、未加硫のゴム組成物と繊維との接着を同時に行い、本発明のゴム組成物−繊維複合体を得ることができる。また、繊維の形態が短繊維である場合、例えば、ゴム組成物と本発明のゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液により浸漬し、乾燥した短繊維とを混練し、これを加硫することにより、ゴム組成物と繊維との接着を同時に行い、本発明のゴム組成物−繊維複合体を得ることができる。加硫方法には、例えば、プレス加硫、蒸気加硫、熱空気加硫、UHF加硫、電子線加硫または溶融塩加硫等があり、いずれの方法を用いてもよい。
【0076】
上記した本発明のゴム組成物−繊維複合体を成型することでゴム組成物−繊維複合体の成型体を得ることができる。成型方法としては、例えば、カレンダ加工、押出し成型、射出成型、圧縮成型等が挙げられ、これらは特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0077】
本発明の高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物は、これを含有する接着助剤を用いたゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液を繊維に含浸後乾燥することにより、本発明のゴム組成物−繊維複合体が優れたゴム組成物と繊維間の初期接着力、高温雰囲気下での接着力及び耐熱劣化後の接着力を示すものである。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
<平均粒子径>
平均粒子径は、粒径分布測定機(マイクロトラックUPA150、日機装社製)を用い、粒径分布を測定し、メジアン粒径を求め、平均粒子径とした。
【0080】
<塩化ビニル系重合体の平均重合度の測定方法>
塩化ビニル系重合体ラテックスを乾燥後、THF溶液に5倍量のメタノールを攪拌添加して塩化ビニル系重合体を析出させ、濾過・乾燥したものをJISK7367−2に従ってK値を測定し、平均重合度を算出した。
【0081】
<コモノマー由来の成分量>
アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸エチルについては、ガスクロマトグラフィーGC−14A(株)島津製作所)にてカラムにDB−5(アジレントテクノロジー(株)製)を用い、モノマー転化率から求めた。
【0082】
<高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物中の塩化ビニル単量体残基単位に対するスルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物及び高級脂肪酸塩の量>
ラテックスを40℃で24時間真空乾燥後の固形分測定により塩化ビニル単量体の重合転化率を求め、さらにガスクロマトグラフより得られた塩化ビニル単量体以外の単量体(コモノマー)の転化率から高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物中の塩化ビニル単量体残基単位に対するスルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物及び高級脂肪酸塩の量を測定した。
【0083】
<ゴム組成物−繊維複合体の初期接着力の測定>
恒温室(25℃、相対湿度65%)で1日以上放置したゴム組成物−繊維複合体のシートをJISK6502に準拠し、幅25mm、長さ100mm以上の短冊状の試験片を作製した。試験片は、引張り試験機(オリエンテック社製、型式RTM−500)を用い、50mm/分の剥離速度で加硫ゴム組成物と繊維間の剥離試験により剥離力を求め、初期の接着力とした。
【0084】
<ゴム組成物−繊維複合体の高温雰囲気下での接着力の測定>
ゴム組成物−繊維複合体シートの剥離試験を高温槽付引張り試験機(東洋ボールドウィン社製、型式UTM−4L)を用い、100℃の槽内で初期接着強度と同様の方法で剥離試験を行い、高温雰囲気下での接着力とした。
【0085】
<ゴム組成物−繊維複合体の耐熱劣化後の接着力の測定>
ゴム組成物−繊維複合体のシートを175℃、2時間の後加硫をギヤーオーブン中で行い、ゴム組成物−繊維複合体シートの剥離試験を初期接着強度と同様の方法で行い、耐熱劣化後の接着力とした。
【0086】
<ゴム組成物−繊維複合体の耐熱屈曲疲労後の接着力の測定>
ゴム組成物−繊維複合体のシートを定伸長屈曲疲労試験機(上島製作所製)を用い、100℃、300rpmで10万回耐熱疲労試験を行った後、ゴム組成物−繊維複合体シートの剥離試験を初期接着強度と同様の方法で行い、耐熱屈曲疲労後の接着力とした。
【0087】
<ゴム(SBR)組成物の調製>
スチレン・ブタジエンゴム(SBR)を原料ゴムとし、以下の配合によりSBR組成物を12インチロールで調製した。
【0088】
SBR(JSR1502、JSR社製) 100.0重量部
亜鉛華 3.0
ステアリン酸 2.0
FEFカーボンブラック 85.0
プロセス油 20.0
N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド 1.0
硫黄 1.5
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物 1.0
1,3−ジフェニルグアニジン 0.2
<ゴム(天然ゴム)組成物の調製>
天然ゴムを原料ゴムとし、以下の配合により天然ゴム組成物を12インチロールで調製した。
【0089】
天然ゴム 100.0重量部
亜鉛華 5.0
ステアリン酸 2.0
FEFカーボンブラック 45.0
プロセス油 5.0
N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド 1.0
硫黄 2.5
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物 1.0
1,3−ジフェニルグアニジン 0.2
<ゴム(CR)組成物の調製>
クロロプレンゴム(CR)を原料ゴムとし、以下の配合によりCR組成物を12インチロールで調製した。
【0090】
CR(R−10、東ソー製) 100.0重量部
亜鉛華 5.0
酸化マグネシウム 4.0
ステアリン酸 1.5
FEFカーボンブラック 40.0
ジオクチルアジピン酸ビス(2−エチルヘキシル) 5.0
オクチル化ジフェニルアミン 2.0
N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン 0.35
<ゴム(CSM)組成物の調製>
クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)を原料ゴムとし、以下の配合によりCSM組成物を12インチロールで調製した。
【0091】
CSM(エクトス(登録商標)T8010、東ソー製) 100.0重量部
酸化マグネシウム 4.0
ステアリン酸 1.5
SRFカーボンブラック 40.0
ペンタエリスリトール 3.0
ジペンタメチレンジスルフィド 0.2
<ゴム組成物−繊維複合体用接着剤の調製>
レゾルシン16.6g、ホルマリン37%水溶液14.7g(乾燥重量5.4g)、水酸化ナトリウム1.3g及び水334.4gを0.5リットルビーカー中で溶解し、室温(25℃)で2時間マグネチックスターラーを用い攪拌し縮合させた後、樹脂固形分6.4重量%のRF液366.0gを得た。
【0092】
そして固形分にして、RF23.3gとポリビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴム100.0gになるようにRF液366.0g及びポリビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス(日本ゼオン社製、ニポール2518GL)250.0gを1リットルの攪拌機のついたビーカーに入れ、攪拌しながら20時間熟成し、固形分濃度20重量%のRFL液616.0gのゴム組成物−繊維複合体用接着剤を得た。
【0093】
<ゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液の調製>
固形分にして、RFL樹脂100.0重量部と高重合度塩化ビニル系重合体組成物を50.0重量部になるようにRFL液200.0g及び接着助剤(高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物)19.1gを0.5リットルビーカーに入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら10分間熟成後100メッシュの金網でろ過し、固形分濃度22重量%のRFL接着剤処理液のゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液を調製した。
【0094】
<ゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液での処理(ポリエステル繊維の調製>
ポリエステル布(敷島カンバス社製、T−81)をゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液に10分間浸漬後、140℃のギヤーオーブンで乾燥し、引き続いて240℃の電熱プレス上で2分間無圧のベーキング処理を行い、ゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液による処理繊維とした。
【0095】
<ゴム組成物−繊維(ポリエステル)複合体の調製>
ゴム組成物−繊維(ポリエステル)複合体は、ゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液による処理繊維を各々SBR組成物、天然ゴム組成物、CR組成物、CSM組成物ではさみ、150℃で30分間プレス加硫して調製した。
【0096】
<ゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液での処理(ナイロン繊維の調製)>
ナイロン布(敷島カンバス社製、N−856)をゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液に10分間浸漬後、140℃のギヤーオーブンで乾燥し、引き続いて190℃の電熱プレス上で2分間無圧のベーキング処理を行い、ゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液による処理繊維とした。
【0097】
<ゴム組成物−繊維(ナイロン)複合体の調製>
ゴム組成物−繊維(ナイロン)複合体は、ゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液による処理繊維を各々SBR組成物、天然ゴム組成物、CR組成物、CSM組成物ではさみ、150℃で30分間プレス加硫して調製した。
【0098】
<ゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液での処理(ガラス繊維の調製)>
ガラス繊維布(カネボウ社製、KS4300UNT)をゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液に10分間浸漬後、140℃のギヤーオーブンで乾燥し、ゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液による処理繊維とした。
【0099】
<ゴム組成物−繊維(ガラス繊維)複合体の調製>
ゴム組成物−繊維(ガラス繊維)複合体は、ゴム組成物−繊維複合体接着剤処理液による処理繊維を各々SBR組成物、天然ゴム組成物、CR組成物、CSM組成物ではさみ、150℃で30分間プレス加硫して調製した。
【0100】
実施例1
表1に示す通り、2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水666.0g、塩化ビニル単量体624.0g、3重量%過硫酸カリウム水溶液40.0g(単量体に対して0.192重量部)及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液190.0g(単量体に対して1.522重量部)、5重量%ラウリン酸カリウム水溶液47.5g(単量体に対して0.381重量部)を仕込み、温度を45℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を45℃に保ち、乳化重合を進めた。オートクレーブ内の圧力が0.36MPaまで低下した後に重合を停止し、未反応の塩化ビニル単量体を回収し、これに5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液233.0g(単量体に対して1.867重量部)、5重量%ラウリン酸カリウム水溶液12.0g(単量体に対して0.095重量部)を追加添加し、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を得た(塩化ビニル単量体残基単位100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量:3.77重量部、ラウリン酸カリウムの量:0.53重量部、平均粒子径:0.07μm、平均重合度:1820)。得られた高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物(接着助剤)を用い、ゴム組成物−繊維複合体用接着剤処理液を調製した。更にゴム(SBR)組成物−繊維複合体を調製し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を評価し、これらの接着力を表1に示す。表1から、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力に優れていた。
【0101】
【表1】
実施例2〜3
表1に示す通り、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム量を変えた以外は実施例1と同様の操作で、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を得た後、ゴム(SBR)組成物−繊維複合体を調製し、評価した(塩化ビニル単量体残基単位100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量及びラウリン酸カリウムの量、平均粒子径、平均重合度、SBR組成物−ポリエステル繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表1に示す)。表1から、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力に優れていた。
【0102】
実施例4〜5
表1に示す通り、ラウリン酸カリウム量を変えた以外は実施例1と同様の操作で、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を得た後、ゴム(SBR)組成物−繊維複合体を調製し、評価した(塩化ビニル単量体残基単位100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量及びラウリン酸カリウムの量、平均粒子径、平均重合度、SBR組成物−ポリエステル繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表1に示す)。表1から、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力に優れていた。
【0103】
実施例6
表2に示す通り、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム量及びラウリン酸カリウム量を変えた以外は実施例1と同様の操作で、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を得た後、ゴム(SBR)組成物−繊維複合体を調製し、評価した(塩化ビニル単量体残基単位100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量及びラウリン酸カリウムの量、平均粒子径、平均重合度、SBR組成物−ポリエステル繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表2に示す)。表2から、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力に優れていた。
【0104】
【表2】
実施例7〜9
表2に示す通り、重合温度を変えた以外は実施例1と同様の操作で、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を得た後、ゴム(SBR)組成物−繊維複合体を調製し、評価した(塩化ビニル単量体残基単位100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量及びラウリン酸カリウムの量、平均粒子径、平均重合度、SBR組成物−ポリエステル繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表2に示す)。表2から、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力に優れていた。
【0105】
実施例10〜11
表3に示す通り、酢酸ビニル(実施例10)及びアクリル酸ブチル(実施例11)を用いて、実施例1と同様の操作で、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を得た後、ゴム(SBR)組成物−繊維複合体を調製し、評価した(塩化ビニル単量体残基単位100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量及びラウリン酸カリウムの量、平均粒子径、平均重合度、SBR組成物−ポリエステル繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表3に示す)。表3から、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力に優れていた。
【0106】
【表3】
実施例12〜13
表4に示す通り、実施例1と同様の操作で、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を得た後、SBR組成物−ナイロン繊維複合体(実施例12)、SBR組成物−ガラス繊維複合体(実施例13)を調製し、評価した(初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表4に示す)。表4から、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力に優れていた。
【0107】
【表4】
実施例14〜16
表4に示す通り、実施例1と同様の操作で、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を得た後、天然ゴム組成物−ポリエステル繊維複合体(実施例14)、天然ゴム組成物−ナイロン繊維複合体(実施例15)、天然ゴム組成物−ガラス繊維複合体(実施例16)を調製し、評価した(初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表4に示す)。表4から、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力に優れていた。
【0108】
実施例17〜19
表5に示す通り、実施例1と同様の操作で、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を得た後、CR組成物−ポリエステル繊維複合体(実施例17)、CR組成物−ナイロン繊維複合体(実施例18)、CR組成物−ガラス繊維複合体(実施例19)を調製し、評価した(初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表5に示す)。表5から、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力に優れていた。
【0109】
【表5】
実施例20〜22
表6に示す通り、実施例1と同様の操作で、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を得た後、CSM組成物−ポリエステル繊維複合体(実施例20)、CSM組成物−ナイロン繊維複合体(実施例21)、CSM組成物−ガラス繊維複合体(実施例22)を調製し、評価した(初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表6に示す)。表6から、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力に優れていた。
【0110】
【表6】
比較例1〜2
表7に示す通り、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム量を変えた以外は実施例1と同様の操作で、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を得た後、SBR組成物−ポリエステル繊維複合体を調製し、評価した(塩化ビニル単量体残基単位100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量及びラウリン酸カリウムの量、平均粒子径、平均重合度、SBR組成物−ポリエステル繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表7に示す)。実施例1〜3に対し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が劣っていた。
【0111】
【表7】
比較例3〜4
表7に示す通り、ラウリン酸カリウム量を変えた以外は実施例1と同様の操作で、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を得た後、SBR組成物−ポリエステル繊維複合体を調製し、評価した(塩化ビニル単量体残基単位100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量及びラウリン酸カリウムの量、平均粒子径、平均重合度、SBR組成物−ポリエステル繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表7に示す)。実施例1及び実施例4〜5に対し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が劣っていた。
【0112】
比較例5
表7に示す通り、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム量及びラウリン酸カリウム量を変えた以外は実施例1と同様の操作で、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を得た後、SBR組成物−ポリエステル繊維複合体を調製し、評価した(塩化ビニル単量体残基単位100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量及びラウリン酸カリウムの量、平均粒子径、平均重合度、SBR組成物−ポリエステル繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表7に示す)。実施例1及び実施例6に対し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が劣っていた。
【0113】
比較例6
表8に示す通り、重合温度を変えた以外は実施例1と同様の操作で、塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を得た後、SBR組成物−ポリエステル繊維複合体を調製し、評価した(塩化ビニル単量体残基単位100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量及びラウリン酸カリウムの量、平均粒子径、平均重合度、SBR組成物−ポリエステル繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表8に示す)。実施例1及び実施例7に対し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が劣っていた。
【0114】
【表8】
比較例7
表8に示す通り、重合温度を変えた以外は実施例1と同様の操作で、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を得た後、SBR組成物−ポリエステル繊維複合体を調製し、評価した(塩化ビニル単量体残基単位100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量及びラウリン酸カリウムの量、平均粒子径、平均重合度、SBR組成物−ポリエステル繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表8に示す)。実施例1及び実施例9に対し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力及び耐熱劣化後の接着力は優れていたが、耐熱屈曲疲労後の接着力が劣っていた。
【0115】
比較例8
表9に示す通り、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を用いなかった以外は実施例1と同様の操作で、SBR組成物−ポリエステル繊維複合体を調製し、評価した(SBR組成物−ポリエステル繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表9に示す)。実施例1に対し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が劣っていた。
【0116】
【表9】
比較例9
表9に示す通り、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を用いなかった以外は実施例12と同様の操作で、SBR組成物−ナイロン繊維複合体を調製し、評価した(SBR組成物−ナイロン繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表9に示す)。実施例12に対し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が劣っていた。
【0117】
比較例10
表9に示す通り、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を用いなかった以外は実施例13と同様の操作で、SBR組成物−ガラス繊維複合体を調製し、評価した(SBR組成物−ガラス繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表9に示す)。実施例13に対し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が劣っていた。
【0118】
比較例11
表9に示す通り、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を用いなかった以外は実施例14と同様の操作で、天然ゴム組成物−ポリエステル繊維複合体を調製し、評価した(天然ゴム組成物−ポリエステル繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表9に示す)。実施例14に対し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が劣っていた。
【0119】
比較例12
表9に示す通り、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を用いなかった以外は実施例15と同様の操作で、天然ゴム組成物−ナイロン繊維複合体を調製し、評価した(天然ゴム組成物−ナイロン繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表9に示す)。実施例15に対し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が劣っていた。
【0120】
比較例13
表9に示す通り、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を用いなかった以外は実施例16と同様の操作で、天然ゴム組成物−ガラス繊維複合体を調製し、評価した(天然ゴム組成物−ガラス繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表9に示す)。実施例16に対し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が劣っていた。
【0121】
比較例14
表10に示す通り、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を用いなかった以外は実施例17と同様の操作で、CR組成物−ポリエステル繊維複合体を調製し、評価した(CR組成物−ポリエステル繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表10に示す)。実施例17に対し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が劣っていた。
【0122】
【表10】
比較例15
表10に示す通り、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を用いなかった以外は実施例18と同様の操作で、CR組成物−ナイロン繊維複合体を調製し、評価した(CR組成物−ナイロン繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表10に示す)。実施例18に対し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が劣っていた。
【0123】
比較例16
表10に示す通り、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を用いなかった以外は実施例19と同様の操作で、CR組成物−ガラス繊維複合体を調製し、評価した(CR組成物−ガラス繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力を表10に示す)。実施例19に対し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が劣っていた。
【0124】
比較例17
表10に示す通り、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を用いなかった以外は実施例20と同様の操作で、CSM組成物−ポリエステル繊維複合体を調製し、評価した(CSM組成物−ポリエステル繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表10に示す)。実施例20に対し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が劣っていた。
【0125】
比較例18
表10に示す通り、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を用いなかった以外は実施例21と同様の操作で、CSM組成物−ナイロン繊維複合体を調製し、評価した(CSM組成物−ナイロン繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表10に示す)。実施例21に対し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が劣っていた。
【0126】
比較例19
表10に示す通り、高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物を用いなかった以外は実施例22と同様の操作で、CSM組成物−ガラス繊維複合体を調製し、評価した(CSM組成物−ガラス繊維複合体の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を表10に示す)。実施例22に対し、初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の高重合度塩化ビニル系重合体ラテックス組成物は、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム等のゴム組成物とポリエステル繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維等の各種繊維間の初期接着力、高温雰囲気下での接着力、耐熱劣化後の接着力及び耐熱屈曲疲労後の接着力を改善するための接着助剤を得ることに好適であり、ゴム組成物と各種繊維の接着助剤として広範に使用される可能性を有している。