【実施例】
【0053】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
【0054】
【表1】
【0055】
(固有振動数の測定方法)
固有振動数は
図1で示す方法で測定する。藤倉ゴム株式会社製ゴルフクラブタイミングハーモナイザーを用い、シャフトDの先端(細径端部)にヘッドを模擬した質量196gのおもりCを取り付ける。太径端部からヘッド側の固定端までの距離Bを180mm、シャフト先端からヘッド側の固定端までの距離Aを988mmとしてシャフトの固有振動数を測定した。
【0056】
(ねじり剛性(ねじり角度)の測定方法)
ねじり剛性は
図2で示す方法で測定する。シャフトDの細径端部は50mmを完全固定し、その固定位置端から太径部固定端の距離Eを985mmとし、細径端部と太径部とをそれぞれチャックFとGでクランプし、各チャックを介して、シャフトに対して互いに逆方向のねじりトルク(13.9kgcm)を加えて、ねじり角度を測定した。
【0057】
(実施例1)
図3に示す形状の芯金H(鉄製)を用意した。この芯金Hにおける各部分の外径、長さ、テーパー度は以下のとおりである。
【0058】
P1の外径=3.45mm、P3の外径=6.85mm、P4およびP5の外径=13.90mm、P1〜P2の距離(l1)=200mm、P2〜P3の距離(l2)=100mm、P1〜P4の距離(l3)=1180mm、P1〜P5の距離(l4)=1500mm、P1〜P2のテーパー度=8.00/1000、P3〜P4のテーパー度=8.01/1000
芯金Hにおけるプリプレグを巻きつける位置は、細径端側から測って50mmから1240mmまでの部分とした。次いで、この芯金Hに
図4に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜11)を順次巻きつけ、その上に20mm幅のポリプロピレン製収縮テープをピッチ2mmで巻きつけた。パターン1は表1記載のプリプレグ1を用い、ヘッド側先端部に配置し、炭素繊維が芯金の軸方向に対して0°とし先端部分補強層とした。パターン2は表1記載の引張弾性率780GPaの炭素繊維から成るプリプレグ2を用い、グリップ端から0mmに配置し、炭素繊維が芯金の軸方向に対して90°としてフープ層とした。パターン3,4は表1記載のプリプレグ3を用い、バイアス層とした。炭素繊維が芯金の軸方向に対して+45°に配向したプリプレグ3と−45°に配向したプリプレグ3を2枚重ね合わせたものである。また、パターン3は、
図4のパターン3左側(細径側)において、2枚の巻き始め端部(プリプレグの図中上端)が端部にて8mmずれるように重ねられ、
図4右側端部(太径側)において、2枚の巻き始め端部が22mmずれるように重ねられている。同様、パターン4は
図4のパターン4左側(細径側)において、2枚の巻き始め端部が9mmずれるように重ねられ、
図4右側端部(太径側)において、2枚の巻き始め端部が23mmずれるように重ねられている。パターン5、7、8は表1記載のプリプレグ4を用い、シャフト全長に配置し、炭素繊維が芯金の軸方向に対して0°としストレート層とした。パターン6は表1記載のプリプレグ5を用い、先端部分バイアス層とした。炭素繊維が芯金の軸方向に対して+45°に配向したプリプレグ5と−45°に配向したプリプレグ5を2枚重ね合わせたものである。パターン9は表1記載のプリプレグ6を用い、シャフト全長に配置し、炭素繊維が芯金の軸方向に対して0°としストレート層とした。パターン10は表1記載のプリプレグ1を用い、ヘッド側先端部に配置し、炭素繊維が芯金の軸方向に対して0°とし先端部分補強層とした。パターン11は表1記載のプリプレグ1を用い、ヘッド側先端部に配置し、炭素繊維が芯金の軸方向に対して0°とし先端部分補強層とした。
【0059】
また、
図4、5,6、7中の各部分の寸法は以下のとおりである。
【0060】
α1=220mm、α2=56mm、α3=120mm、α4=78mm、α5=260mm、α6=42mm、α7=160mm、α8=44mm、α9=1190mm、α10=54mm、α11=101mm、α12=1190mm、α13=77mm、α14=126mm、α15=21mm、α16=1190mm、α17=50mm、α18=230mm、α19=21mm、α20=150mm、α21=27mm、α22=22mm、α23=1190mm、α24=50mm、α25=45mm、α26=1190mm、α27=102mm、α28=23mm、α29=1190mm、α30=52mm、α31=300mm、α32=24mm、α33=200mm、α34=31mm、α35=130mm、α36=105mm、α37=21mm、α38=500mm、α39=350mm、α40=36mm
次いで、これを135℃に加熱した硬化炉に2時間入れ、取り出した後常温に冷めたところで、前記収縮テープを剥ぎ取り、細径側を10mm、太径側を12mm切断して全長を1168mmとした。次いで表面を研磨して細径側の外径が8.50mm、固有振動数が275cpm、ねじり角度(トルク)が3.0°のシャフトを得た。使用したプリプレグの詳細は、表1に示すとおりである。なお、フープ層の一層以上の部分の一端はグリップ端から0mmに位置し、フープ層の一層以上の部分の他端はグリップ端から148mmに位置する(フープ層はグリップ端から0mm〜148mmの範囲に完全に一層存在している)。
【0061】
得られたシャフトの全長、重量、固有振動数、ねじり角度(トルク)を表2に示す。
【0062】
(実施例2)
図3に示す形状の芯金H(鉄製)を用意した。この芯金Hにおける各部分の外径、長さ、テーパー度は以下のとおりである。
【0063】
P1の外径=3.45mm、P3の外径=6.85mm、P4およびP5の外径=13.90mm、P1〜P2の距離(l1)=200mm、P2〜P3の距離(l2)=100mm、P1〜P4の距離(l3)=1180mm、P1〜P5の距離(l4)=1500mm、P1〜P2のテーパー度=8.00/1000、P3〜P4のテーパー度=8.01/1000
芯金Hにおけるプリプレグを巻きつける位置は、細径端側から測って50mmから1240mmまでの部分とした。次いで、この芯金Hに
図5に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜12)を順次巻きつけ、その上に20mm幅のポリプロピレン製収縮テープをピッチ2mmで巻きつけた。パターン1は表1記載のプリプレグ1を用い、ヘッド側先端部に配置し、炭素繊維が芯金の軸方向に対して0°とし先端部分補強層とした。パターン2は表1記載の引張弾性率780GPaの炭素繊維から成るプリプレグ2を用い、グリップ端から0mmに配置し、炭素繊維が芯金の軸方向に対して90°としてフープ層とした。パターン3,4は表1記載のプリプレグ3を用い、バイアス層とした。炭素繊維が芯金の軸方向に対して+45°に配向したプリプレグ3と−45°に配向したプリプレグ3を2枚重ね合わせたものである。また、パターン3は、
図5のパターン3左側(細径側)において、2枚の巻き始め端部(プリプレグの図中上端)が端部にて8mmずれるように重ねられ、
図5右側端部(太径側)において、2枚の巻き始め端部が22mmずれるように重ねられている。同様、パターン4は
図5のパターン4左側(細径側)において、2枚の巻き始め端部が9mmずれるように重ねられ、
図5右側端部(太径側)において、2枚の巻き始め端部が23mmずれるように重ねられている。パターン5、8、9は表1記載のプリプレグ4を用い、シャフト全長に配置し、炭素繊維が芯金の軸方向に対して0°としストレート層とした。パターン7は表1記載のプリプレグ6を用い、ヘッド側先端部に配置し、炭素繊維が芯金の軸方向に対して0°とし先端部分補強層とした。パターン6は表1記載のプリプレグ5を用い、先端部分バイアス層とした。炭素繊維が芯金の軸方向に対して+45°に配向したプリプレグ5と−45°に配向したプリプレグ5を2枚重ね合わせたものである。パターン10は表1記載のプリプレグ6を用い、シャフト全長に配置し、炭素繊維が芯金の軸方向に対して0°としストレート層とした。パターン11は表1記載のプリプレグ1を用い、ヘッド側先端部に配置し、炭素繊維が芯金の軸方向に対して0°とし先端部分補強層とした。パターン12は表1記載のプリプレグ1を用い、ヘッド側先端部に配置し、炭素繊維が芯金の軸方向に対して0°とし先端部分補強層とした。
【0064】
次いで、これを135℃に加熱した硬化炉に2時間入れ、取り出した後常温に冷めたところで、前記収縮テープを剥ぎ取り、細径側を10mm、太径側を12mm切断して全長を1168mmとした。次いで表面を研磨して細径側の外径が8.50mm、固有振動数が275cpm、ねじり角度(トルク)が3.0°のシャフトを得た。使用したプリプレグの詳細は、表1に示すとおりである。なお、フープ層の一層以上の部分の一端はグリップ端から0mmに位置し、フープ層の一層以上の部分の他端はグリップ端から148mmに位置する(フープ層はグリップ端から0mm〜148mmの範囲に完全に一層存在している)。
【0065】
得られたシャフトの全長、重量、固有振動数、ねじり角度(トルク)を表2に示す。
【0066】
(比較例1)
実施例1同様
図3に示す形状の芯金H(鉄製)を用意した。
【0067】
芯金Hにおけるプリプレグを巻きつける位置は、細径端側から測って50mmから1240mmまでの部分とした。次いで、この芯金Hに
図6に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜11 ただしパターン2はない)を順次巻きつけ、その上に20mm幅のポリプロピレン製収縮テープをピッチ2mmで巻きつけた。実施例1で設置したパターン2(引張弾性率780GPaの炭素繊維から成るプリプレグ2を用い、炭素繊維が芯金の軸方向に対して90°のフープ層)のみ存在させない形態とした。その他のパターンの寸法や作製方法、各評価方法は実施例1と同様にしてシャフトを得た。
【0068】
(比較例2)
実施例1同様
図3に示す形状の芯金H(鉄製)を用意した。
芯金Hにおけるプリプレグを巻きつける位置は、細径端側から測って50mmから1240mmまでの部分とした。次いで、この芯金Hに
図7に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜11)を順次巻きつけ、その上に20mm幅のポリプロピレン製収縮テープをピッチ2mmで巻きつけた。パターン2に引張弾性率295GPaの炭素繊維から成るプリプレグ7を用い、炭素繊維が芯金の軸方向に対して90°のフープ層を配置した以外は実施例1と同様にしてシャフトを得た。
【0069】
(評価試験1)
実施例1及び比較例1、2で製造したシャフトの太径部を切断して全長1100mmとした後、細径側にヘッド(440ml、ロフト:9.5度)、太径側に市販のグリップを装着し、長さ45.25インチ(1149mm)の試験用のドライバーゴルフクラブを製作した。
【0070】
(評価試験2)
実施例1及び2で製造したシャフトの太径部を切断して全長1100mmとした後、細径側にヘッド(440ml、ロフト:9.0度)、太径側に市販のグリップを装着し、長さ45.25インチ(1149mm)の試験用のドライバーゴルフクラブを製作した。
【0071】
(官能評価)
このクラブ用を上級者ゴルファー3名に5球ずつ試打してもらい感想を聴取した。最も振り易く、最も安心感がある、最も好感があるものを5点として5点満点の評価を行った。全テスターの平均値を表3に示す。
【0072】
(弾道計測評価)
次いでミヤマエ社製スイングロボットを用い、下記3条件で各3球ずつ、合計9球の弾道を計測した。
【0073】
<1>ストレート条件:アドレス時のフェース角をスイング方向に一致させる。
【0074】
<2>フック条件:アドレス時のフェース角を2.0度オープンにする。
【0075】
<3>スライス条件:アドレス時のフェース角を2.0度クローズにする
弾道の計測はTrackMan社製弾道計測装置「TrackMan Pro2」を用いて計測した。測定した結果を表4に示す。表4中の評価項目について内容を以下に示す。
Club Speedはインパクトまでの速度。
Ball Speedはインパクト後のボールの速度。
Vertical Angleはインパクト直後の水平方向の打ち出し角度(上下の打ち出し角度)。
Horizontal Angleはインパクト直後のターゲットラインからの打ち出し角度(左右の打ち出し角度) +は右方向、−は左方向。
Spin Rateはインパクト直後のボールの回転数。
Spin Axisはボールのスピン軸。+はスライス回転、−はフック回転。
縦方向飛距離はトータル飛距離。
横方向飛距離はターゲットラインからの横方向の差。+は右方向、−は左方向。
【0076】
弾道の最終到達点における縦方向飛距離と横方向飛距離の測定結果を
図8及び
図9に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
表3、表4、表5、
図8から明らかなように実施例のシャフトから得られたゴルフクラブによれば、上級者ゴルファーにとって最も良好なフィーリングが得られ、方向安定性に優れたゴルフクラブ用シャフトを提供することができた。また
図9から明らかなように、配向角度0°で概台形状の先端補強層を備え、当該先端補強層の一端が細径端に位置し、他端が細径端から450〜550mmの位置に存在し、細径端と細径端から300〜400mmの位置の間には先端補強層が1層以上存在する(実施例2)ことにより、より方向安定性に優れたゴルフクラブ用シャフトを提供することができた。