特許第6215044号(P6215044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6215044
(24)【登録日】2017年9月29日
(45)【発行日】2017年10月18日
(54)【発明の名称】電解質測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20171005BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20171005BHJP
【FI】
   G01N27/26 371C
   G01N27/416 351B
   G01N27/416 351K
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-267306(P2013-267306)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-125000(P2015-125000A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(72)【発明者】
【氏名】相馬 邦彦
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−121817(JP,A)
【文献】 特開2014−041060(JP,A)
【文献】 特開平08−262031(JP,A)
【文献】 特開2000−221198(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0077330(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/49
G01N 35/00−37/00
G01D 7/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料および内部標準液が選択的に流れる流路に、それぞれ配置された複数のイオン選択性電極と、
前記複数のイオン選択性電極のそれぞれにおいて発生した起電力を受け、前記起電力に基づいて、前記試料における複数の測定項目の測定結果を求める制御装置と、
前記複数の測定項目の測定結果を表示する表示装置と、
を具備し、
前記制御装置は、前記複数の測定項目のうちの一の測定項目において、イオン選択性電極において発生する起電力が異常であることを検出したとき、前記複数の測定項目のうち、前記一の測定項目を除く測定項目において異常であることを前記表示装置に表示させる、電解質測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電解質測定装置において、
前記電解質測定装置において測定される測定項目は、前記複数の測定項目の中から依頼され、前記一の測定項目が、依頼されなかったとき、前記制御装置は、前記一の測定項目に対応するイオン選択性電極において発生する起電力が異常であるか否かを検出し、異常であるとき、前記依頼された測定項目において異常であることを前記表示装置に表示させる、電解質測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電解質測定装置において、
前記制御装置は、異常であることを前記表示装置に表示させるとき、異常を検出した測定項目を表示する、電解質測定装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電解質測定装置において、
前記制御装置は、前記複数の測定項目のうち、2以上の測定項目において異常を検出した場合、異常であることを前記表示装置に表示させるときに、表示する異常に優先順位を設定するテーブルを具備する、電解質測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電解質測定装置において、
前記複数の測定項目のそれぞれは、前記複数のイオン選択性電極のそれぞれにおいて発生した起電力に対応した測定を指定する項目である、電解質測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電解質測定装置において、
前記制御装置は、前記一の測定項目に対応するイオン選択性電極において発生する起電力が、所定の範囲を超えてばらついている場合あるいは所定の値を超えている場合に、起電力の異常として検出する、電解質測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質測定装置に関し、特に複数のイオン選択性電極を用いて電解質の測定を行う電解質測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質測定装置は血液、尿等を試料として、試料中の特定のイオンの濃度(イオン濃度)を測定する装置である。電解質測定装置には、種々の構成の装置が知られており、特にイオン選択性電極を利用して、イオン濃度を測定する電解質測定装置が臨床検査の分野で広範囲に用いられている。イオン選択性電極を用いた電解質測定装置においては、既知のイオン濃度を有する標準液を測定して、予め検量線を作成する。次に、イオン選択性電極によって、内部標準液と試料との間の電位差を求め、予め作成した検量線を用いて、試料中のイオン濃度を測定する。このような電解質測定装置は、例えば特許文献1に記載されている。また、この特許文献1には、メンテナンス中に異常を検出した場合のアラームの発生論理が述べられている。
【0003】
特許文献2には、自動分析装置が記載されており、個々の測定項目に対して複数の異常を検出した場合に、予め定められた基準に従って表示順位を設定することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−4586号公報
【特許文献2】特開平8−262031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動分析装置と異なり、電解質測定装置においては、1つの流路に複数のイオン選択性電極が設けられ、当該流路を試料および内部標準液が、選択的に流れる。試料を例にすると、試料は1つの流路に設けられた複数のイオン選択性電極に、順次接触するように流路を流れる。この場合、1つのイオン選択性電極が、1つの測定項目に対応する。言い換えるならば、1つのイオン選択性電極に生じた電圧に基づいて、1つの測定項目での測定結果が求められる。
【0006】
1つの流路に複数のイオン選択性電極が設けられているため、試料を流路に注入することにより、複数の測定項目について、ほぼ同時に測定を行うことができ、測定の効率化を図ることが可能である。この場合、複数の測定項目のそれぞれについては、個別に測定したデータが異常か否かを検出する論理(異常検出論理)あるいは異常を検出する手段(異常検出手段)を設けることが可能である。
【0007】
しかしながら、このように、測定項目毎に、測定中の異常検出手段や異常検出論理を持っている場合では、ある測定項目で、電解質測定装置において共通の部位に関わる異常を検出してアラームが発生しても、他の測定項目の異常検出論理では、異常と見なされない範囲となりアラームが発生しない場合がある。このような場合、高精度な測定結果が要求される電解質測定装置においては、測定したデータの信頼性が十分であるとは言い切れない。
【0008】
本発明の目的は、測定したデータの信頼性を向上させることが可能な電界質測定装置を提供することにある。
【0009】
特許文献1には、ある測定項目で検出した異常を用いて、電解質測定装置の信頼性を向上させることは認識されていない。また、特許文献2は、自動分析装置に向けられている。
【0010】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
すなわち、電解質測定装置は、試料および内部標準液が選択的に流れる流路に、それぞれ配置された複数のイオン選択性電極と、複数のイオン選択性電極において発生した起電力を受け、起電力に基づいて、試料における複数の測定項目の測定結果を求める制御装置と、複数の測定項目の測定結果を表示する表示装置とを具備する。ここで、制御装置は、複数の測定項目のうちの一の測定項目において、イオン選択性電極において発生する起電力が異常であることを検出したとき、上記した一の測定項目を除く測定項目において異常であることを表示装置に表示させる。
【0013】
これにより、一の測定項目に対応するイオン選択性電極において、起電力に異常を検出したとき、他の測定項目においても異常が表示される。流路を流れる試料あるいは内部標準液は、イオン選択性電極に順次接触することになる。そのため、一の測定項目に対応するイオン選択性電極だけではなく、他のイオン選択性電極によって発生する起電力にも異常が発生しているものと推定され、他のイオン選択性電極に対応する測定項目において異常が表示される。その結果として、電解質測定装置において共通の部位に関わると考えられる異常が発生した場合には、その異常を検出しなかった測定項目に対して、異常を検出した測定項目の情報に基づいて、異常が知らされることになり、測定したデータの信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0014】
一実施の形態においては、一の測定項目に対応するイオン選択性電極により発生する起電力が、所定の範囲を超えてばらつく場合あるいは所定の値を超えている場合に、異常として検出される。
【0015】
また、一実施の形態においては、上記した一の測定項目を除く他の測定項目が、測定対象として依頼されたとき、一の測定項目において異常が検出されると、依頼された他の測定項目において異常であることが表示される。これにより、依頼されていない測定項目で検出された異常が、依頼された測定項目に反映されることになる。
【0016】
さらに、一実施の形態においては、異常を表示する際には、異常を検出した測定項目が表示される。また、一実施の形態においては、複数の測定項目おいて、異常が検出されたとき、表示する異常に優先順位を設定するためのテーブルが、制御装置に設けられる。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0018】
測定したデータの信頼性を向上させることが可能な電解質測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1(A)】実施の形態に係わる電解質測定装置の構成を示すブロック図である。
図1(B)】実施の形態に係わる電解質測定装置の要部の構成を模式的に示す模式図である。
図2】実施の形態1に係わる電解質測定装置の動作を示すフローチャート図である。
図3】実施の形態2に係わる電解質測定装置の動作を示すフローチャート図である。
図4】アラームの優先順位を決定する際に用いられるアラーム付加条件テーブルの構成を示す図である。
図5】アラームを表示する測定結果表示画面の一例を示す図である。
図6】アラームの詳細を表示するアラーム画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は、原則として省略する。
【0021】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことはいうまでもない。
【0022】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0023】
(実施の形態1)
図1(A)は、実施の形態1に係わる電解質測定装置100の構成を示すブロック図である。図1(B)は、電解質測定装置100の要部を模式的に示した模式図である。図1(A)において、電解質測定装置100は、特に制限されないが、大別すると、イオン選択性電極4〜6等を具備する電解質測定部と、電解質測定部に接続された制御部(制御装置)と、表示部(表示装置)とを具備している。
【0024】
電解質測定部は、特に制限されないが、図1(A)において、試料用容器1、試料分注ノズル2、希釈槽3、イオン選択性電極4〜6、比較電極7、シッパーシリンジ8、内部標準液シリンジ9、希釈液シリンジ10、ピンチバルブ11、比較電極用二方電磁弁12、シッパーシリンジ吸引用2方電磁弁13、および廃液吐出用2方電磁弁14を具備している。さらに、電解質測定部は、内部標準液吐出用2方電磁弁15、内部標準液吸引用2方電磁弁16、希釈液吐出用2方電磁弁17、希釈液吸引用2方電磁弁18、比較電極液ボトル19、内部標準液ボトル20および希釈液ボトル21を具備している。
【0025】
制御部(制御装置)は、電解質測定部を制御するとともに、電解質測定部からの信号を受け、測定結果を、表示部(表示装置)によって表示させる。電解質測定部からの信号は、例えば電解質測定部で測定された起電力である。当該制御部は、特に制限されないが、図1(A)において、増幅器22、アナログ/デジタル変換器(以下、A/D変換器と称する)23、コンピュータ24、キーボード25、およびメモリ27を具備している。また、表示部(表示装置)は、表示器であるモニタ26を具備している。
【0026】
図1(A)を参照して、まず、電解質測定装置100の動作を説明する。試料用容器1内の試料が、試料分注ノズル2によって設定量だけ吸引され、希釈槽3へ吐出される。また、希釈液ボトル21内の希釈液が、希釈液吸引用2方電磁弁18、希釈液シリンジ10、希釈液吐出用2方電磁弁17の動作により希釈槽3へ吐出される。これにより、試料用容器1から希釈槽3に吐出された試料が、希釈液によって希釈される。
【0027】
ピンチバルブ11が閉じた状態で、シッパーシリンジ8、シッパーシリンジ吸引用二方電磁弁13の動作によって、比較電極液ボトル19内の比較電極液が、比較電極用二方電磁弁12を介して、比較電極7まで吸引される。
【0028】
次に、希釈槽3内で希釈された試料は、シッパーシリンジ8、シッパーシリンジ吸引用2方電磁弁13、ピンチバルブ11により、イオン選択性電極4〜6へ吸引される。この実施の形態においては、イオン選択性電極4は、Na(ナトリウム)イオン選択性電極であり、イオン選択性電極5は、K(カリュウム)イオン選択性電極であり、イオン選択性電極6は、Cl(塩基)イオン選択性電極である。希釈された試料が、イオン選択性電極4〜6に接触することにより、各イオン選択性電極4〜6のそれぞれには、それぞれのイオン濃度に応じた起電力が発生する。例えば、イオン選択性電極4は、Naイオンの濃度に応じた起電力を発生する。この実施の形態においては、比較電極7における電圧を基準電圧として、各イオン選択性電極4〜6のそれぞれに生じる起電力が測定される。
【0029】
さらに、内部標準液ボトル20内の内部標準液が、内部標準液吸引用2方電磁弁16、内部標準液シリンジ9、内部標準液吐出用2方電磁弁15の動作により、希釈槽3へ吐出される。この場合、希釈された試料と内部標準液とが、交互にイオン選択性電極4〜6へ移送されるように制御される。希釈された試料と、内部標準液とが、交互にイオン選択性電極4〜6に接触することにより、イオン選択性電極4〜6のそれぞれには、希釈された試料に基づく起電力と内部標準液に基づく起電力とが生じる。この生じる起電力は、比較電極7における電圧を基準電圧として、測定される。
【0030】
測定が終了した試料や内部標準液は、廃液吐出用2方電磁弁14を開くことにより、廃液流路から、電解質測定装置100の外へ排出される。
【0031】
測定された起電力は、イオン選択性電極4〜6のそれぞれから信号配線28を介して、制御部へ供給される。信号配線28を介して供給された起電力(測定された起電力)は増幅器22へ供給され、増幅される。増幅された後、A/D変換器23でデジタル信号に変換され、コンピュ−タ24に送られる。
【0032】
予め濃度の判明している標準液を用いて検量線が、作成される。作成された検量線は、例えばキーボード25のような入力装置を用いて、予めメモリ27に格納しておく。コンピュータ24は、メモリ27に予め記憶されている検量線を基にして、A/D変換器23から供給されたデジタル信号に対して演算を行う。すなわち、コンピュータ24は、検量線を基にして、測定した試料の電解質の濃度計算を行い、その濃度計算の結果をモニタ26のような表示装置に表示する。
【0033】
なお、比較電極7からも信号配線を介して、基準電圧が、制御部に供給されるが、図1(A)においては、省略されている。
【0034】
図1(B)には、イオン選択性電極4〜6と、試料および内部標準液が流れる流路29との関係が模式的に断面図として示されている。特に制限されないが、イオン選択性電極4〜6のそれぞれは、互いに同様な構成にされているので、イオン選択性電極4を代表として、その構造を説明する。イオン選択性電極4は、筐体の底面(図1(B)では下側)にイオン選択性膜4bが設けられ、電極4aとの間が電極内部液で充填されている。電極4a、5a、6aは、イオン選択性電極4〜6において同じ材料であるが、イオン選択性膜4b、5b、6bは、イオン選択性電極4〜6において異なるようにされている。このイオン選択性膜を変えることにより、イオン選択性電極4は、Naイオン選択性電極として機能し、イオン選択性電極5は、Kイオン選択性電極として機能し、イオン選択性電極6は、Clイオン選択性電極として機能する。
【0035】
イオン選択性電極4〜6のそれぞれは、そのイオン選択性膜が、試料および内部標準液に接触するように、試料および内部標準液が流れる流路に突出されている。図1(B)では、試料および内部標準液は、イオン選択性電極4からイオン選択性電極6の方向(矢印A)へ流れるように示されている。
【0036】
イオン選択性電極4、5、6のそれぞれの電極4a、5a、6aは、信号配線28a、28b、28c(図1(A)では、総称して、信号配線28)を介して、制御部に接続されている。これにより、測定において、イオン選択性電極4〜6のそれぞれで生じた起電力が、制御部へ供給される。
【0037】
この実施の形態における電解質測定装置100においては、測定項目毎に、試料および内部標準液を換えるのではなく、流路29を流れる試料および内部標準液を、測定項目に対応するイオン選択性電極4〜6によって、順次測定が行われる。そのため、複数の測定項目の測定を短時間で行うことが可能となる。ところが、試料あるいは/および内部標準液に、各測定項目に対して影響を与えるような異常があった場合、イオン選択性電極4〜6のそれぞれの起電力が、この影響によって変わってしまうことが考えられる。
【0038】
また、測定項目毎に、試料を換えるのではないため、イオン選択性電極4〜6の起電力は、短時間の内に、信号配線28a、28b、28cを介して制御部へ供給される。そのため、この信号配線28a、28b、28cに電気的なノイズが重畳した場合、全ての測定項目に対して、ノイズの影響による変化が含まれてしまうことが考えられる。
【0039】
なお、図1(B)に示したイオン選択性電極と流路との関係は、一例であって、これに限定されるものではない。
【0040】
次に、実施の形態1の動作を、図1および図2を用いて説明する。図2は、実施の形態1に係わる電解質測定装置100の動作を示すフローチャート図である。
【0041】
まず、ステップ201(図2)において、キーボード25(図1(A))を用いて、電解質測定装置100で測定する項目(測定項目)の依頼が生成される。生成された測定項目は、メモリ27(図1(A))に記憶される。次に、ステップ202において、コンピュータ24は、メモリ27に記憶された測定項目に従って、電解質測定部へ測定の指示をする。すなわち、コンピュータ24を含む制御部によって、電解質測定部が制御される。この制御により、先に図1(A)において説明した手順で、試料の電解質の測定が、電解質測定部で行われ、制御部は、測定された起電力に基づいて、電解質の濃度計算を実施する。
【0042】
次にステップ203において、コンピュータ24は、電解質の測定のときおよび/あるいは算出された電解質の濃度に異常があるかどうかを判定する(異常判定)。このステップ203において、異常を検出しなかった場合は、電解質の測定結果をモニタ26に表示する(ステップ205)。この場合、モニタ26には、ステップ201で依頼された測定項目と、それぞれの項目における電解質の濃度とが表示される。なお、異常が検出されなかったため、モニタ26には、異常を示すアラームは表示されない(アラーム無し)。
【0043】
ステップ203において異常として検出する例を述べると、イオン選択性電極により測定した測定値(例えば、Naイオンの測定値)が、予め設定した範囲の上限値または下限値を超えた場合、測定した起電力にノイズが重畳している場合、あるいは測定した起電力が、予め定めた所定の範囲を超えている場合を異常として検出する。これらの場合には、異常と検出し、後で説明するようにアラームを付加する。
【0044】
電解質測定装置100では、図1(B)において、説明したように、複数のイオン選択性電極が同じ流路に接続されているので、ある検体(試料)の濃度を測定する場合、一度に同じ試料あるいは内部標準液が、複数のイオン選択性電極に、順次移送されて、複数のイオン選択性電極により起電力が測定される。そのため、例えばNaイオン測定用のイオン選択性電極4で生じた起電力に異常を検出した場合、その起電力の異常の原因が内部標準液であった場合などでは、他の項目(Kイオン測定の項目、Clイオン測定の項目)でも、内部標準液の異常が、測定値(Kイオン測定値、Clイオン測定値)に影響していることが考えられる。
【0045】
そのため、ステップ203において異常と判定した場合(YES)には、さらに検出した異常が、起電力に関わるか否かをコンピュータ24で判定する(ステップ204)。ここで起電力に関わる異常とは、例えば測定した起電力のばらつきが、予め定めた所定の範囲を超えている場合、あるいは起電力の値が、予め定めた所定の範囲を超えている場合である。このステップ204においては、測定項目毎に判定が行われる。すなわち、イオン選択性電極毎に、起電力に係わる異常の有無が判定される。図1(A)および(B)を例にして述べるならば、Naの測定項目に対応するイオン選択性電極4、Kの測定項目に対応するイオン選択性電極5およびClの測定項目に対応するイオン選択性電極6のそれぞれにおいて生じた起電力が異常な値となっているか否かの判定が行われる。
【0046】
Na、KおよびClの測定項目のいずれかにおいて、起電力に関わる異常であると、ステップ204で判定された場合(YES)には、他の電解質の測定項目で測定された起電力のばらつき、あるいは/およびその起電力の値が所定の範囲内であっても、ステップ204で検出した異常に基づき、すべての電解質の測定項目にアラームを付加する(ステップ207)。これに対して、ステップ204において、いずれの測定項目においても起電力に関わる異常ではないと判定された場合(NO)、ステップ203で異常を検出した測定項目にのみアラームを付加する(ステップ206)。
【0047】
以上のように、実施の形態1によれば、電解質測定装置100で、ある測定項目で起電力に関する異常を検出した場合、他の測定項目に対応するイオン選択性電極で測定した起電力が異常の値を示さない場合であっても、測定した電解質の測定項目の全てに、起電力に関する異常を知らせるアラームが付加されることになる。これにより、測定で求めたデータの信頼性の向上を図ることが可能な電解質測定装置100を提供することができる。
【0048】
(実施の形態2)
図3は、実施の形態2に係わる電解質測定装置の動作を示すフローチャート図である。図1(A)に示したコンピュータ24において実行されるプログラムを変えることにより、図1(A)に示した電解質測定装置100は、図2に示したフローチャートに従った動作あるいは図3に示したフローチャートに従った動作を行う。ここでは、図3に示したフローチャートに従って、コンピュータ24が動作するようにプログラムが変えられているものとする。以下、図1および図3を用いて、実施の形態2に係わる電解質測定装置100の動作を説明する。
【0049】
先ず、実施の形態1と同様に、キーボード25を用いて、試料の電解質を測定する測定項目を生成し、電解質測定依頼を行う(ステップ301)。ここで生成された測定項目は、メモリ27に記憶される。実施の形態2においては、電解質測定装置100において測定することが可能な複数の測定項目の内、いくつかの測定項目が、電解質測定依頼として依頼される。例えば、図1(A)に示した電解質測定装置100では、Na、K、Clの3項目を測定項目として依頼することが可能であるが、実施の形態2では、この3項目の測定項目の内、例えば1項目(Naを測定する測定項目)が選択され、この選択された項目(Naの測定項目)について測定依頼がされたものとする。
【0050】
ステップ301において測定依頼がされると、次に測定依頼が生成された電解質測定項目(上記した例では、Naの測定項目)の測定を行うために、ステップ302が実行される。このステップ302においては、希釈された試料と内部標準液とが、測定依頼が生成された電解質測定項目(Naの測定項目)に対応するイオン選択性電極(Naイオン選択性電極4)に吸引され、このイオン選択性電極に生じた起電力が測定され、測定項目であるNaの濃度が算出される。すなわち、このイオン選択性電極(Naイオン選択性電極4)に生じた起電力が、制御部の増幅器22へ供給され、制御部において測定項目である電解質Naの濃度の計算が行われる。
【0051】
測定された起電力と算出した電解質(Na)の濃度とに基づき、コンピュータ24は測定時に異常が発生したか否かの判定を、ステップ304において実施する。もし、ステップ304にて異常がないと判断された場合(NO)は、測定結果として、依頼のあった測定項目(Na)の例えば濃度をモニタ26に表示する(ステップ306)。この場合には、異常がないと判定したため、モニタ26には、アラームは付加されない(アラーム無し)。
【0052】
これに対して、ステップ304にて異常があると判断された場合(YES)は、異常を検出した測定項目に異常を知らせるアラームを付加して、測定結果をモニタ26に表示する(ステップ307)。すなわち、この場合には、測定結果として、例えば算出した濃度とアラームとが、モニタ26に表示されることになる。
【0053】
ところで図1(A)および(B)のように構成されている電解質分析装置100では、希釈された試料と内部標準液は、全てのイオン性選択電極4〜6へ順次移送される。言い換えるならば、試料と内部標準液が、全てのイオン選択性電極4〜6が配置された流路を、交互に流れる。
【0054】
この実施の形態2では、ステップ302で測定依頼があった測定項目(例えば、Naの測定項目)に対応するイオン選択性電極(イオン選択性電極4)を用いて起電力を測定する際に、測定依頼が無かった測定項目(例えば、KおよびClの測定項目)に対応するイオン選択性電極(イオン選択性電極5およびイオン選択性電極6)で生じる起電力を測定する。これは、上記した様に、試料と内部標準液が、流路を流れることにより、全てのイオン選択性電極4〜6に接触するため、それぞれイオン選択性電極で起電力が発生し、測定することが可能なために、測定依頼の無い測定項目についても、起電力を測定することができるためである。図3においては、ステップ303において、測定依頼の無い測定項目(K、Clの測定項目)に対応するイオン選択性電極(5、6)で、起電力の測定を実施している。
【0055】
ステップ303において測定された起電力に基づき、コンピュータ24は、ステップ305にて、測定された起電力のばらつきや、起電力の値が所定の値(範囲)を超えて、異常となっているか否かの判定を行う。すなわち、測定依頼の無かった測定項目に対応するイオン選択性電極により生じた起電力が、異常か否かの判定が、ステップ305において行われる。ステップ305にて異常を検出した場合(YES)、測定依頼のあった測定項目(Naの測定項目)にステップ305にて検出した異常を示すアラームを付加する(ステップ308)。もし、ステップ305において、異常が検出されなければ、特に何も実行せずに、終了する。
【0056】
なお、ステップ303において、測定した起電力に基づいて、測定依頼の無かった測定項目についても、電解質(K、Cl)の濃度を算出するようにしてもよい。
【0057】
このように、この実施の形態2によれば、測定依頼の無い電解質測定項目に対応するイオン選択性電極で、起電力を測定し、異常があった場合には、測定依頼のあった測定項目にアラームが付加される。これにより、測定したデータの信頼性の向上が可能な電解質測定装置100を提供することができる。
【0058】
(実施の形態3)
一般的な電解質測定装置では、ある測定項目で複数の異常を検出した場合は、測定結果を表示するモニタの画面の大きさや視認性のために、検出した複数の異常の中で最も重要度が高い異常を1つ選択して、モニタの画面に表示する。一方、実施の形態1および2においては、ある測定項目を測定した際に、これと同時に測定した他の測定項目における異常がアラームとして付加され、表示される。ある測定項目で複数の異常を検出した場合、最も重要度の高い異常と、実施の形態1および2において述べた同時に測定した他の測定項目における異常とを、ある測定項目における測定結果とともに、同時にモニタに表示することが考えられる。しかしながら、このようにすると、異常を示すアラームの量が多くなり、電解質測定装置を扱うユーザの視認性の低下あるいは/および操作性の悪化が考えられる。
【0059】
実施の形態3においては、先に述べた実施の形態1および2に、複数の測定項目において異常を検出した際に、アラーム表示を行う優先順位を示すアラーム付加条件テーブルが追加される。図4は、アラーム付加条件テーブル400を示す図である。このアラーム付加条件テーブル400は、複数の測定項目で異常を検出した場合に、モニタ26に表示する際の異常の優先順位を定めるテーブルである。このアラーム付加条件テーブル400は、電解質測定装置100内のメモリ27に記憶され、コンピュータ24が、モニタ26に測定結果を表示する際に、参照される。すなわち、コンピュータ24は、測定結果を表示する際に、テーブル400に従って、表示すべき異常を選択し、モニタ26に表示する。
【0060】
特に制限されないが、アラーム付加条件テーブル400は、測定項目毎に設けられる。図1(A)に示した実施の形態1を例にすると、この測定項目は3項目(Na、K、Cl)となる。各測定項目において、アラーム付加条件テーブル400は、対象とする測定項目(図4では、単に項目と記載する)が異なるが、同じ構造である。そのため、図4には、対象とする測定項目(項目)がNaの場合のアラーム付加条件テーブル400が、代表として示してある。他の項目K、Clを対象としたアラーム付加条件テーブル400については、省略する。
【0061】
図4において、408から411は、アラーム付加条件テーブル400の列を示しており、401から407は、アラーム付加条件テーブル400の行を示している。アラーム付加条件テーブル400の行401において、列408は、当該テーブル400の対象となる「測定項目」を示しており、列409は、当該テーブル400の対象となる測定項目を示している。Naの測定項目の測定結果を、モニタ26に表示する際に、図4に示したテーブル400が利用される。これを明示するため、行401の列409には、項目「Na」が登録されている。行401において、列410には、残りの(他の)測定項目が登録される。すなわち、残りの2つの項目「K、Cl」が登録されている。さらに、行401の列411には、このテーブル400を用いて、測定項目の測定結果を表示する際に付加するアラームを示している。この例では、測定項目がNaであるため、Naの測定結果を表示する際に付加されるべきアラームを示す。
【0062】
アラーム付加条件テーブル400の列409において、行402から407には、このテーブル400を用いてアラームを付加する条件を定める測定項目(Na)を測定した際の異常の有無と、異常の種類(要因)が登録されている。ここで、行402および行403は、測定項目(Na)を測定した際に、測定項目(Na)では、異常が無いことを表しており、行404および行405は、測定項目(Na)を測定した際に、測定項目(Na)において異常が検出され、その要因が起電力起因以外であることを示している。また、行406および行407は、測定項目(Na)での測定において異常が検出され、その要因が起電力に関することを示している。
【0063】
アラーム付加条件テーブル400の列410において、行402から行407には、このアラーム付加条件テーブル400の対象となる測定項目(Na)と、同時に測定された他の測定項目(K、Cl)において検出された異常の有無と、異常の要因が登録されている。ここで、行402、404および406は、他の測定項目(K、Cl)の測定において異常が無い、あるいは異常が検出されたが、その要因が起電力起因以外であることを示している。また、列410において、行403、405および407は、他の測定項目(K、Cl)の測定において、異常が検出され、その要因が起電力に関することを表わしている。
【0064】
アラーム付加条件テーブル400の列411において、行402から行407には、このテーブル400の対象とする測定項目(Na)の測定結果を表示する際に付加するアラームを示している。ここで、行402は、対象とする測定項目(Na)の測定結果を表示する際に、付加して表示するアラームは無いことを表している。行403および405は、他の測定項目(K、Cl)を測定したときに検出したアラームを付加することを表しており、行404および406は、対象とする測定項目(Na)の測定において検出した異常を付加することを示している。また、行407は、全ての測定項目の測定において異常が検出され、その内の最も優先度順位の高い異常をアラームとして付加することを示している。
【0065】
なお、アラーム付加条件テーブル400において、列408の行402から407は、タイトル「測定時に検出した異常」を示している。
【0066】
図1(A)に示したコンピュータ24は、増幅器22およびA/D変換器23を介して、電解質測定部から供給された起電力に基づいて、測定結果を算出し、測定項目をモニタ26に表示する際に、図4に示したアラーム付加条件テーブル400を参照し、アラームを付加するか否か、および付加するアラームを定める。言い換えるならば、対象の項目における異常の有無および種類と、他の項目における異常の有無および種類との組み合わせに対応して、対象の項目の測定結果を表示する際に付加されるアラームの有無および種類が、アラーム付加条件テーブルによって定められる。
【0067】
コンピュータ24は、ある測定項目(図4の例では、項目Na)について、その測定で異常を検出せず、他の項目(図4では、他の項目(K、Cl))についても、測定で異常を検出しない(図4では、異常無し)、あるいは当該他の項目についてのみ影響のある異常(図4では、起電力起因以外の異常)の場合、アラーム付加条件テーブル400の行402を選択する。行402が選択されることにより、測定項目Naの測定結果に付加するアラームが、アラーム付加条件テーブル400の列411から選択される。すなわち、アラーム付加条件テーブル400の列411における行402が選択される。アラーム付加条件テーブル400の列411における行402が選択されることにより、コンピュータ24は、対象の項目(Na)の測定結果を表示する際、「表示するアラーム無し」と認識し、対象の項目(Na)の測定結果のみをモニタ26に表示する。
【0068】
測定項目(Na)について、その測定で異常を検出せず、他の項目(K、Cl)の測定において、起電力に関する異常を検出すると、アラーム付加条件テーブル400の列411における行403が選択される。これにより、コンピュータ24は、モニタ26に、項目Naの測定結果を表示する際に、他の項目で検出した異常をアラームとして付加して表示を行う。この場合、アラームとして付加される異常は、他の項目で検出した起電力に関する異常の内、最も優先順位が高いと判断した異常が表示される。
【0069】
測定項目(Na)の測定で、起電力に関係しない異常(起電力起因以外の異常)が検出され、他の項目(K、Cl)では異常が検出されない(異常なし)か、あるいは起電力に関係しない異常(項目単独の異常)を検出した場合は、アラーム付加条件テーブル400の列411における行404が選択される。列411の行404が選択されることにより、コンピュータ24は、測定項目(Na)の測定結果を表示する際に、測定項目(Na)の測定で検出した異常を、アラームとして付加する。この場合も、測定項目(Na)の測定で検出した異常の中で最も重要度が高い異常を、アラームとして付加して、項目(Na)の測定結果と一緒に表示する。
【0070】
測定項目(Na)の測定において、起電力に関係しない異常(起電力起因以外の異常)が検出され、他の項目(K、Cl)の測定において、起電力に関する異常を検出した場合、コンピュータ24は、テーブル400の列411における行405を選択する。これにより、モニタ26に、測定項目(Na)の測定結果を表示する際に、他の項目(K、Cl)で検出した異常がアラームとして付加される。この場合も、他の項目(K、Cl)で検出した起電力に関する異常の内、最も優先順位が高い異常を、アラームとして付加して表示する。
【0071】
測定項目(Na)の測定において、起電力に関する異常が検出され、他の項目(K、Cl)の測定では異常が検出されない(異常無し)か、あるいは起電力に関係しない異常(起電力起因以外の異常)を検出した場合には、テーブル400の列411における行406が選択される。この選択により、コンピュータ24は、測定項目(Na)の測定結果を表示する際に、項目(Na)で検出した異常をアラームとして付加する。この場合も、項目(Na)で検出した異常の中で最も重要度が高い異常をアラームとして付加して、表示する。
【0072】
測定項目(Na)の測定において、起電力に関する異常を検出し、他の項目(K、Cl)の測定においても、起電力に関する異常を検出した場合には、テーブル400の列411における行407が選択される。この場合には、表示の対象である測定項目(Na)および他の項目(K、Cl)で検出した異常のなかで最も優先順位が高い異常を、測定項目(Na)の測定結果を表示する際に、アラームとして付加する。
【0073】
他の測定項目(K、Cl)のそれぞれについても、先に説明したように、アラーム付加条件テーブル400と同様のテーブルが設けられている。この場合、項目(K)が、表示対象の測定項目となるアラーム付加条件テーブルにおいては、項目Clと項目Naが、他の項目に該当する。同様に、項目(Cl)が、表示対象の測定項目となるアラーム付加条件テーブルにおいては、項目Naと項目Kが、他の項目に該当する。それぞれのアラーム付加条件テーブルを用いて、表示対象の測定項目の測定結果を表示する際に、アラームの付加要否、および付加されるアラームの種類が定められる。勿論、表示される全ての測定項目に対して、アラーム付加条件テーブルを設け無くてもよく、必要とされる測定項目についてのみ、アラーム付加条件テーブルを設けてもよい。
【0074】
このように、複数の電解質の測定項目で異常が発生した場合に、測定結果に表示するアラームの優先順位を設けることで、画面表示を煩雑にすることなくデータの信頼性を向上させることが可能となる。
【0075】
次に、モニタ26に表示される画面の一例を、図5および図6を用いて説明する。図5は、モニタ26に表示される測定結果表示画面を示す図であり、図6は、モニタ26に表示されるアラーム画面を示す図である。
【0076】
図5において、500は、モニタ26に表示される画面のタイトル「測定結果画面」を示している。この例では、複数の測定項目(Na、K、Cl)の測定結果が、表502として、纏めて表示されている。表502において、503は、測定項目を表示する列であり、504は、測定結果を示す列であり、505は、アラームを表示する列であり、506は、検出部位を示す列である。ここで、列505は、実施の形態1および2において検出された電解質測定装置100の全体に影響する異常を、測定結果に付加して表示する表示領域として用いられている。また、列506は、電解質測定装置100の全体に影響する異常を、検出した測定項目を表示する表示領域として用いられている。
【0077】
同図において、行507から509には、測定項目Na、K、Clの測定結果、アラームの種類および検出部位が、表示されている。例えば、行507には、測定項目が項目Naであることを示すように、列503に「Na」が表示されており、項目Naの測定結果が、列504に数字(120.0)で示されている。実施の形態1および2において、検出した電解質測定装置100の全体に影響する異常は、行507の列505に、アラームとして表示されており、この例では、「Noise(ノイズ)」となっている。Noiseが、電解質測定装置100の全体に影響する異常であるため、他の測定項目(K、Cl)についても、測定結果が列504に表示されるとともに、アラームを表示する列(表示領域)505には、「Noise」が表示されている。また、この例では、全体に影響する異常(Noise)を検出した測定項目が、項目Naであったことを示すために、検出部位の列506において、項目Naに対応する行507に、検出部位を示す印「?」が表示されている。
【0078】
電解質測定装置100の全体に影響する異常が、どの測定項目において検出したかは、図2および図3に示したフローチャートで特定することが可能である。図5では、全体に影響する異常の例として、ノイズ(Noise)を示したが、これは一例であって、内部標準液等の異常が全体に影響する異常となる。
【0079】
実施の形態2においては、複数の測定項目の内から特定の測定項目についてのみ、測定の依頼がなされる。例えば、図5に示した複数の測定項目(Na、K、Cl)の内、測定項目(k)についてのみ測定の依頼がされる。この場合、モニタ26に表示される測定結果画面500には、依頼がされた測定項目(K)の測定結果のみが表示される。このとき、例えば、Naイオンに対応するイオン選択性電極により生じている起電力に異常が検出されれば、依頼された測定項目(K)の測定結果を表示する際に、アラームの列505にアラームが表示されることになる。勿論、この場合には、検出部位が、依頼された測定項目とは異なるので、検出部位を示す印(?)は、列506には表示されない。
【0080】
このように、測定結果画面500に異常を示すアラームを表示することで、データの信頼性を向上するとともに、異常の検出部位(測定項目)を表示することで、その後のユーザの対応を容易にすることが可能となる。
【0081】
また、図5の例においては、アラームを表示する表示領域(列505)に、Noiseのみが示されているが、この表示領域に表示されるアラームは、実施の形態3で説明した列411の内容(付加するアラーム)が表示される。この場合、項目Naの測定結果を表示する際(行507)に、Naを対象としたアラーム付加条件テーブル(図4)が用いられ、項目Kの測定結果を表示する際(行508)に、Kを対象としたアラーム付加条件テーブルが用いられ、項目Clの測定結果を表示する際(行509)に、Clを対象としたアラーム付加条件テーブルが用いられる。
【0082】
図6には、モニタ26(図1)に表示されるアラーム画面の一例が示されている。図5に示した例においては、測定結果とアラームと検出部位が、1つの画面によって表示されている。ユーザの識別をより容易にするためには、測定結果とアラームとを別々の画面により表示することが考えられる。このように考えて、測定結果を表示する測定結果画面とアラームを表示するアラーム画面とが別々に表示されるようにした場合のアラーム画面の一例が、図6に示されている。この場合、各項目の測定結果を示す測定結果画面は別に存在する。
【0083】
図6には、実施の形態1あるいは実施の形態2で、検出した電解質測定装置100の全体に影響する異常を検出した測定項目とその異常の種類が、アラーム画面に表示される。図6においては、全体に影響する異常を検出した測定項目等が、表に纏めて表示されている。図6において、602は、異常の種類と、異常を検出した測定項目の名称が表示される列であり、601は、列601で表示される種類および測定項目の名称に対応したコードが表示される列である。また、603は、検出した異常のレベルを表示する列である。
【0084】
この例においては、列602に、検出した異常の種類と、その異常を検出した測定項目とが表示される。特に制限されないが、異常を検出した測定項目は、その、名称が()内に表示される。同図では、異常の種類がノイズエラーであり、その異常を検出したのが、Naを測定する測定項目であることが示されている「ノイズエラー(Na)」。また、コードの列601には、ノイズエラーに対応するコード「001」と測定項目Naに対応するコード「001」とが表示されている。レベルの列603には、例えば異常のレベルが表示される。レベルとしては、異常の重要性あるいは対策の緊急性に対応して、例えば「報告」、「注意」、「警告」のような3段階にわけ、重要性あるいは緊急性が低い場合には、「報告」がレベルの列603に表示され、重要性あるいは緊急性が高い場合には、「警告」がレベルの列603に表示され、重要性あるいは緊急性が中間であれば、「注意」がレベルの列603に表示される。
【0085】
列601に表示するコードは、異常の種類と測定項目とに1対1で対応するように定めて、表示すればよい。また、レベルは例えば、異常の種類に応じて定めればよい。この場合、例えば、異常の種類がノイズであれば、レベルの列603に表示するレベルは「注意」、異常の種類が内部標準液であれば、レベルの列603に表示するレベルを「警告」とする。
【0086】
このように、測定結果が表示される画面とは別の画面により、例えばアラームの詳細を表示するアラーム画面(図6)で異常の検出部位を示すことができ、識別性をさらに高めることが可能となる。
【0087】
以上本発明者によってなされた発明を、前記実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 試料用容器
2 試料分注ノズル
3 希釈槽
4〜6 イオン選択性電極
7 比較電極
8 シッパーシリンジ
9 内部標準液シリンジ
10 希釈液シリンジ
11 ピンチバルブ
12 比較電極用二方電磁弁
13 シッパーシリンジ吸引用2方電磁弁
14 廃液吐出用2方電磁弁
15 内部標準液吐出用2方電磁弁
16 内部標準液吸引用2方電磁弁
17 希釈液吐出用2方電磁弁
18 希釈液吸引用2方電磁弁
19 比較電極液ボトル
20 内部標準液ボトル
21 希釈液ボトル
22 増幅器
23 A/D変換器
24 コンピュ−タ
25 キーボード
26 モニタ
27 メモリ
図1(A)】
図1(B)】
図2
図3
図4
図5
図6