特許第6216287号(P6216287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6216287-リチウム空気二次電池 図000003
  • 特許6216287-リチウム空気二次電池 図000004
  • 特許6216287-リチウム空気二次電池 図000005
  • 特許6216287-リチウム空気二次電池 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6216287
(24)【登録日】2017年9月29日
(45)【発行日】2017年10月18日
(54)【発明の名称】リチウム空気二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/08 20060101AFI20171005BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20171005BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20171005BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20171005BHJP
   C22C 1/08 20060101ALN20171005BHJP
   C22C 9/06 20060101ALN20171005BHJP
   C22C 19/03 20060101ALN20171005BHJP
【FI】
   H01M12/08 K
   H01M12/08 Z
   H01M4/40
   H01M4/86 M
   H01M4/90 M
   !C22C1/08 D
   !C22C1/08 F
   !C22C9/06
   !C22C19/03 M
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-115984(P2014-115984)
(22)【出願日】2014年6月4日
(65)【公開番号】特開2015-230800(P2015-230800A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2016年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野原 正也
(72)【発明者】
【氏名】林 政彦
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 薫
(72)【発明者】
【氏名】北林 博人
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/001745(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0147756(US,A1)
【文献】 特開2015−063742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86−4/98、12/00−16/00
C22C 1/08、9/06、19/03
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属共連続多孔体を含む空気極と、
金属リチウム又はリチウム含有物質を含む負極と、
前記空気極と前記負極に接する有機電解液とを含み、
前記金属共連続多孔体は、少なくとも銅(Cu)を含有し、5%以上60%以下のニッケル(Ni)を更に含むナノポーラスである三次元網目構造を有するものであることを特徴とするリチウム空気二次電池。
【請求項2】
前記金属共連続多孔体は、更に金(Au)により表面修飾されていることを特徴とする請求項1に記載のリチウム空気二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム空気二次電池に関する。特に本発明は、鉛蓄電池やリチウムイオン電池などの従来の二次電池よりも小型軽量で、かつ遙かに大きい放電容量を実現できるリチウム空気二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
正極活物質として空気中の酸素を用いるリチウム空気二次電池は、電池外部から常に酸素が供給され、電池内に大量の負極活物質である金属リチウムを充填することができる。このため、電池の単位体積当たりの放電容量の値を非常に大きくできることが報告されている。
【0003】
これまでに非特許文献1に報告されているように、カーボンを主体とする正極であるガス拡散型空気極に種々の触媒を添加して、放電容量、サイクル特性などの電池性能を改善することが試みられている。
【0004】
非特許文献1では、カーボンを主体とする前記正極について、カーボン単体と9種類の触媒を検討し、空気極に含まれるカーボンの重量当たりで1000〜3000mAh/gの非常に大きな放電容量が得られている。しかしながら、充放電を繰り返すと、著しい放電容量の低下が起こる。例えば、カーボン単体の場合、2サイクルで容量維持率が約10%となり、著しい容量の減少が見られる。また、触媒を担持した場合でも、例えば、Coの場合、10サイクルで容量維持率が約65%となる。このように、非特許文献1のリチウム空気二次電池では著しい容量の減少が見られ、二次電池としての十分な特性は得られていない。また、ほとんどの場合で平均放電電圧は2.5V程度であり、一方、充電電圧は4.0〜4.5Vを示し、最も低いものでも3.9V程度である。このため、非特許文献1のリチウム空気二次電池は充放電のエネルギー効率は低い。
【0005】
カーボンを用いず、金属多孔体を主体とする正極(空気極)に関する開示が、非特許文献2にある。非特許文献2では、金属多孔体として金(Au)を検討しており、100サイクルで容量維持率が95%以上である、非常に優れたサイクル性能を有するリチウム空気二次電池が報告されている。また、このリチウム空気二次電池の平均放電電圧は2.6V程度であり、充電電圧は3.5V程度である。このため、充放電に関しても高いエネルギー効率が得られている。しかしながら、正極が全て質量密度の高い金(Au)で構成されているため、重量あたりの放電容量が300mAh/g程度しか得られていない。加えて、貴金属である金(Au)を使用するため、材料費の上昇などの問題が生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Aurelie Debart, et al., Journal of Power Sources, Vol. 174, pp. 1177 (2007).
【非特許文献2】Zhangquan Peng, et al., Science, Vol. 337, pp. 563 (2012).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、リチウム空気二次電池を、高容量二次電池として作動させ、かつ充電及び放電反応に高活性な空気極を用いることによって、充放電サイクルを繰り返しても放電容量の低下が小さいリチウム空気二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明のリチウム空気二次電池は、
金属共連続多孔体を含む空気極と、
金属リチウム又はリチウム含有物質を含む負極と、
前記空気極と前記負極に接する有機電解液とを含み、
前記金属共連続多孔体は、少なくとも銅(Cu)を含有し、5%以上60%以下のニッケル(Ni)を更に含むナノポーラスである三次元網目構造を有するものであることを特徴とする。
【0010】
前記金属共連続多孔体は、更に金(Au)により表面修飾されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のリチウム空気二次電池は、容量、サイクル性能などの電池特性を大幅に改善することができる。また、前記銅(Cu)を含有する金属共連続多孔体に、所定量のニッケル(Ni)を更に含有させることにより、前記金属共連続多孔体の耐腐食性が向上し、サイクル性能を改善することができる。また、これらの金属共連続多孔体が金(Au)により表面修飾されることにより、空気極の活性が向上し、大きな放電容量を得ることができる。
【0012】
また、本発明のリチウム空気二次電池は、金属共連続多孔体[銅(Cu)]を含む空気極であるため、従来よりも優れたサイクル特性、エネルギー効率などを実現することができる。具体的には、充放電の電圧差が小さく、かつ充放電サイクルを繰り返しても放電容量の低下を抑えることができる。
【0013】
また、金属共連続多孔体[銅(Cu)]を含む空気極を用いることにより、リチウム空気二次電池の効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るリチウム空気二次電池100の基本的な構成を示す図である。
図2】本実施例で使用したリチウム空気二次電池セルの構造を示す断面図である。
図3】実施例1に係るリチウム空気二次電池セル200の充放電曲線を示す図である。
図4】実施例1、2、3、4及び5、並びに比較例1、2及び3に係るリチウム空気二次電池の放電容量のサイクル依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、適宜図面を参照しつつ、本発明に係るリチウム空気二次電池の一実施形態について詳細に説明する。
【0016】
[リチウム空気二次電池の構成]
本発明に係るリチウム空気二次電池の基本的構造を図1に示す。本発明のリチウム空気二次電池100は、図1に示されるように、空気極(正極)1、負極2及び電解質3を少なくとも含む。
【0017】
より具体的には、前記空気極1は、金属を構成要素に含むことができる。負極2は金属リチウム又はリチウムイオンを放出及び吸収することができるリチウム含有合金などの物質を構成要素とすることができる。また、これらの空気極と負極との間に電解質3が配置されうる。
【0018】
以下に上記の各構成要素について説明する。なお、本明細書において、電解液とは、電解質が液体形態である場合をいう。
【0019】
(I)空気極(正極)
(I−1)空気極(正極)の材料
本発明では、前記空気極は、金属を含むことができる。本発明の空気極は、金属が共連続多孔構造を有する金属共連続多孔体であることが好ましい。
【0020】
本発明のリチウム空気二次電池では、空気極の金属として銅(Cu)を含む。特に、前記空気極は、酸素還元(放電)及び酸素発生(充電)の両反応に対して高活性な金属として銅(Cu)を含有する金属共連続多孔体を含むことが好ましい。このような金属共連続多孔体を含むことで、本発明のリチウム空気二次電池は、二次電池としての性能を高めることができる。
【0021】
本発明のリチウム空気二次電池の空気極では、電解質/電極/ガス(酸素)の三相界面サイトにおいて、電極反応が進行する。即ち、例えば、電解質に有機電解液(固体電解質に有機電解液を含浸したものを含む)を用いた場合、空気極中に有機電解液が浸透し、同時に大気中の酸素ガスが供給され、電解液−電極−ガス(酸素)が共存する三相界面サイトが形成される。前記金属共連続多孔体が高活性であれば、酸素還元(放電)及び酸素発生(充電)がスムーズに進行し、電池性能は大きく向上することになる。
【0022】
空気極での反応は次のように表すことができる。
2Li+(1/2)O+2e → LiO (1)
2Li+O+2e → Li (2)
【0023】
上式中のリチウムイオン(Li)は、負極から電気化学的酸化により電解質中に溶解し、この電解質中を空気極表面まで移動してきたものである。また、酸素(O)は、大気(空気)中から空気極内部に取り込まれたものである。なお、図1には、負極から溶解する材料(Li)、空気極で析出する材料(LiO)、及び空気(O)を構成要素と共に示した。
【0024】
本発明では、銅(Cu)を含有する金属共連続多孔体を空気極で使用することによって、上述した三相界面サイトが効率よく形成され、前記電極が高活性であれば、酸素還元(放電)及び酸素発生(充電)がスムーズに進行して電池性能が大きく向上する。
【0025】
空気極(正極)1の電極となる金属多孔体、特に銅(Cu)を含有する金属共連続多孔体は、作製条件によっては、微細な開気孔が存在する。
【0026】
このような銅(Cu)を含有する金属共連続多孔体は、正極活物質である酸素との相互作用が強いため、多くの酸素種を表面上に吸着することができる。
【0027】
このような状態が式(1)及び(2)の中間反応体となり、酸素還元反応が容易に進むようになる。また、式(1)及び(2)の逆反応である充電反応についても、前記正極は活性を有しており、電池の充電、つまり、空気極上での酸素発生反応も効率よく進行する。このように、銅(Cu)を含有する金属共連続多孔体は高活性電極として機能する。
【0028】
本発明の一実施形態では、本発明のリチウム空気二次電池の空気極として、銅(Cu)を含有する金属共多孔体は、銅金属単体からなる金属共連続多孔体[以下、銅(Cu)共連続多孔体単相とも称する]を空気極(正極)として使用する。
【0029】
本発明の別の実施形態では、本発明のリチウム空気二次電池の空気極として、上記の銅(Cu)共連続多孔体単相に加え、銅(Cu)共連続多孔体単相にニッケル(Ni)を更に含有した金属共連続多孔体[以下、本明細書において、銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体とも称する。]を用いることができる。
【0030】
銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体は、銅(Cu)にニッケル(Ni)を含有させることで、金属共連続多孔体表面に不動態膜を形成し、耐腐食性を向上することができる。このような、銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体は、本発明のリチウム空気二次電池の空気極として用いた場合、高いサイクル性能を示す。
【0031】
銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体における各金属の割合は、この金属共連続多孔体の全重量を基準としては、5重量%以上60重量%以下のニッケル(Ni)及び残量の銅(Cu)であることが好ましい。
【0032】
本発明の更に別の実施形態では、本発明のリチウム空気二次電池の空気極として、上記銅(Cu)共連続多孔体単相、又は、銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体に、金(Au)を表面修飾した金属共連続多孔体を用いることができる。このような金(Au)を表面修飾した金属共連続多孔体は、銅(Cu)よりさらに高活性である金(Au)により表面が修飾されているため、電極の活性を更に高めることが可能である。従って、これを本発明の空気極として用いた場合、更に優れた電池性能を得ることができる。
【0033】
本発明において、金(Au)は、上記の連続多孔体の表面に1〜10nm、好ましくは2〜5nmの膜厚で上記金属共連続多孔体に堆積される。
【0034】
本明細書において、「金属共連続多孔体」は、金属が共連続多孔構造を有する共連続多孔体をいう。具体的には、銅(Cu)を含有する金属共連続多孔体、例えば上記銅(Cu)共連続多孔体単相、銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体、及びこれらに金(Au)の表面処理を施した金属共連続多孔体が含まれる。本発明では、金属共連続多孔体は、金属が連続した貫通孔(孔)を有し、ナノポーラスである三次元網目構造を有する。
【0035】
(I−2)空気極の調製
本発明で空気極として使用される金属共連続多孔体、特に銅(Cu)を含有する金属共連続多孔体は、以下のように調製することができる。
【0036】
銅(Cu)を含有する金属共連続多孔体は、焼結法やデアロイング法などの公知の方法を用いて調製できる。例えば、焼結法は、銅(Cu)を含有する金属微粉末を700℃以下で焼結させる手順を用いることができる。また、デアロイング法は、例えば、銅(Cu)よりも電気化学的に卑な金属を含む銅合金を酸性溶液に浸漬し、合金中の卑な金属を溶出するというような手順を含む。より具体的には、銅(Cu)共連続多孔体単相の場合、市販の銅マンガンシートを硫酸アンモニウム等の水溶液に1〜8時間浸漬し、洗浄後乾燥することで、当該金属共連続多孔体シートを得ることができる。必要に応じて、得られたシートを所定形状(例えば円形)に切り抜くことで、空気極を製造することができる。
【0037】
別の具体的な例として、銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体も、銅(Cu)共連続多孔体単相と同様の方法で調製することができる。具体的には、例えば、銅マンガンシートを、ニッケル銅マンガンシートに置きかえればよい。
【0038】
本発明のリチウム空気二次電池では、電池の効率を上げるために、電極反応を引き起こす反応部位(上記の電解質/電極/空気(酸素)の三相界面サイト)がより多く存在することが望ましい。このような観点から、本発明では、上述の三相界面サイトが電極表面に多量に存在することが重要であり、使用する金属共連続多孔体は比表面積が高いことが望ましい。本発明では、金属共連続多孔体は、例えば平均孔径が1μm以下で、比表面積が30m/g以上であることが好適である。このため、本発明では、金属共連続多孔体は、酸性溶液などで合金の電気化学的に卑な金属を溶出するデアロイング法を用いることが望ましい。
【0039】
ここで、平均孔径は、金属共連続多孔体を走査型電子顕微鏡(SEM)等で拡大し、10μm四方(10μm×10μm)あたりの気孔数、及び気孔の直径を計測して、下式により平均値を求めた値である。
【0040】
平均孔径=全気孔の直径の合計/気孔数
【0041】
また、ここで比表面積は、N吸着によるBET法により求めた比表面積であると定義する。
【0042】
金(Au)で表面が修飾された金属共連続多孔体は、デアロイング法で得られた金属共連続多孔体シートを金(Au)イオン溶液に浸漬することで得ることができる。具体的には、例えば、テトラクロロ金(III)酸(HAuCl)水溶液のような金イオン溶液にポリビニルピロリドン(PVP)を溶かした混合液を調製し、この混合液に、デアロイング法で調製した銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体を10〜60分間浸漬し、その後洗浄することで、金(Au)で表面修飾された金属共連続多孔体シートを作製することができる。必要に応じて、得られたシートを所定形状(例えば円形)に切り抜くことで、空気極を製造することができる。本発明のリチウム空気二次電池の空気極を作製することにより、銅(Cu)共連続多孔体からなる空気極の効果を高めることができる。
【0043】
空気極は、これを構成する電極の片面は大気に曝され、もう一方の面は電解液と接する。
【0044】
(II)負極
本発明のリチウム空気二次電池は、負極に負極活物質を含む。この負極活物質は、リチウム二次電池の負極材料として用いることができる材料であれば特に制限されない。例えば、金属リチウムを挙げることができる。或いは、リチウム含有物質として、リチウムイオンを放出及び吸蔵することができる物質である、リチウムと、シリコン又はスズとの合金、或いはLi2.6Co0.4Nなどのリチウム窒化物を例として挙げることができる。
【0045】
なお、上記のシリコン又はスズの合金を負極として用いる場合、負極を合成する時にリチウムを含まないシリコン又はスズなどを用いることもできる。しかし、この場合には、空気電池の作製に先立って、化学的手法又は電気化学的手法(例えば、電気化学セルを組んで、リチウムとシリコン又はスズとの合金化を行う方法)によって、シリコン又はスズが、リチウムを含む状態にあるように処理しておく必要がある。具体的には、作用極にシリコン又はスズを含み、対極にリチウムを用い、有機電解液中で還元電流を流すことによって合金化を行う等の処理をしておくことが好ましい。
【0046】
本発明のリチウム空気二次電池の負極は、公知の方法で形成することができる。例えば、リチウム金属を負極とする場合には、複数枚の金属リチウム箔を重ねて所定の形状に成形することで、負極を作製すればよい。
【0047】
ここで、放電時の負極(金属リチウム)の反応は以下のように表すことができる。
【0048】
(放電反応)
Li→Li+e (3)
【0049】
なお、充電時の負極においては、式(3)の逆反応であるリチウムの析出反応が起こる。
【0050】
(III)電解質
本発明のリチウム空気二次電池は電解質を含む。この電解質は、空気極(正極)及び負極間でリチウムイオンの移動が可能なものであればよい。本発明では、リチウムイオンを含む金属塩を適切な非水溶媒に溶解した有機電解液を使用することができる。具体的には、溶質の金属塩には、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)[(CFSONLi]などを挙げることができる。また、溶媒は、例えば、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、炭酸メチルイソプロピル(MIPC)、炭酸メチルブチル(MBC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルプロピル(EPC)、炭酸エチルイソプロピル(EIPC)、炭酸エチルブチル(EBC)、炭酸ジプロピル(DPC)、炭酸ジイソプロピル(DIPC)、炭酸ジブチル(DBC)、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸1,2−ブチレン(1,2−BC)などの炭酸エステル系溶媒、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)などのエーテル系溶媒、γ−ブチロタクトン(GBL)などのラクトン系溶媒、又は、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド系溶媒を挙げることができる。更に、これらの中から二種類以上を混合した溶媒を使用することもできる。
【0051】
本発明のリチウム空気二次電池の他の電解質として、リチウムイオン導電性を有する固体電解質[例えば、75LiS・25Pなどのガラス状物質、Li14ZnGe16などのLISICON(Li Super Ionic Conductor)]、リチウムイオン導電性を有するポリマー電解質[例えば、上記有機電解質とポリエチレンオキシド(PEO)をコンポジット化した物質]などを挙げることができるが、これらに限定されない。本発明では、リチウム空気二次電池で使用される公知のリチウムイオンを通す固体電解質又はリチウムイオンを通すポリマー電解質であれば使用することができる。
【0052】
(IV)他の要素
本発明のリチウム空気二次電池は、上記構成要素に加え、セパレータ、電池ケース、金属メッシュ(例えばチタンメッシュ)などの構造部材、その他のリチウム空気二次電池に要求される要素を含むことができる。これらは、従来公知のものを使用することができる。
【実施例】
【0053】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るリチウム空気二次電池についての実施例を詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0054】
(実施例1)
先ず、前述した空気極1の電極として用いる三次元網目構造を有する銅(Cu)共連続多孔体単相を以下のようにして合成した。
【0055】
市販の50μmの厚みを有する銅マンガン(Cu30Mn70)シートを1.0mol/lの硫酸アンモニウム((NHSO)水溶液に6時間浸漬し、銅(Cu)共連続多孔体単相を得た。得られた銅(Cu)共連続多孔体単相は、硫酸アンモニウム((NHSO)が残留しないように、蒸留水による洗浄を5回繰り返した。得られたシートは、60℃で一晩乾燥を行い、X線回折(XRD)測定、SEM観察、BET比表面積測定を行い、評価した。
【0056】
デアロイング法で作成した金属は、XRD測定より銅(Cu,PDFファイルNo.01−085−1236)単相であることを確認した。また、SEM観察により、平均孔径は20nmであることを確認した。また、BET法により銅(Cu)共連続多孔体単相の比表面積を測定したところ、56m/gであった。
【0057】
次に、このような銅(Cu)共連続多孔体単相を空気極として用いたリチウム空気二次電池セルを以下のようにして作製した。
【0058】
上記のようにして得られた銅(Cu)共連続多孔体単相を直径23mmの円形に切り抜き、ガス拡散型の空気極を得た。
【0059】
次に、図2に示す断面構造を有する円柱形のリチウム空気二次電池セル200を作製した。図2は、リチウム空気二次電池セルの断面図である。リチウム空気二次電池セルは、露点が−60℃以下の乾燥空気中で、以下の手順に従って作製した。
【0060】
上記の方法で調製した空気極1を、PTFEで被覆された空気極支持体10の凹部に配置し、空気極固定用のPTFEリング8で固定した。なお、空気極1と空気極支持体10が接触する部分は、電気的接触をとるためにPTFE被覆を施さないものとした。また、空気極1と空気との接触する電極の有効面積は2cmである。
【0061】
次に、空気極1の大気が接触する面とは逆の面にリチウム二次電池用のセパレータ5を凹部の底面に配置した。続いて、図2に示すような負極固定用座金7に、負極2である厚さ150μmの4枚の金属リチウム箔(有効面積:2cm)を同心円上に重ねて圧着した。負極固定用PTFEリング6を、空気極1を設置する凹部と対向する逆の凹部に配置し、中央部に金属リチウムが圧着された負極固定用座金7を更に配置した。続いて、Oリング9を、図2に示すように空気極支持体10の底部に配置した。次いで、セルの内部(正極1と負極2との間)に、有機電解液3である1mol/lのリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド/炭酸プロピレン[(CFSONLi/PC]溶液を充填し、負極支持体11を被せて、セル固定用ねじ12で、セル全体を固定した。
【0062】
続いて、正極端子4を空気極支持体10に設置し、負極端子13を負極支持体11に設置した。
【0063】
以上の手順で調製したリチウム空気二次電池セル200の電池性能を測定した。なお、電池性能の測定試験用に、図2に示す正極端子4及び負極端子13を用いた。
【0064】
電池のサイクル試験は、充放電測定システム(Bio Logic社製)を用いて、空気極1の有効面積当たりの電流密度で0.1mA/cmを通電し、開回路電圧から電池電圧が、2.0Vに低下するまで測定を行った。また、電池の充電試験は、放電時と同じ電流密度で、電池電圧が4.0Vに増加するまで行った。電池の充放電試験は、通常の生活環境下で行った。充放電容量は銅(Cu)共連続多孔体単相からなる空気極1重量当たりの値(mAh/g)で表した。
【0065】
初回の放電及び充電曲線を図3に示す。
【0066】
図3に示されるように、銅(Cu)共連続多孔体単相を空気極に用いたときの平均放電電圧は2.8V、放電容量は640mAh/gであることが分かる。
【0067】
また、初回の充電容量は、放電容量とほぼ同様の650mAh/gであり、本発明のリチウム空気二次電池は可逆性に優れていることが分かる。
【0068】
放電容量のサイクル依存性を図4に示すが、本実施例(実施例1)では充放電サイクルを100回繰り返しても、安定した放電容量(mAh/g)が見られた。
【0069】
また、この充電時の電圧については、図3より、およそ3.7Vに平坦部分が見られ、従来の報告より低い値を示すことが分かった。
【0070】
充放電サイクルを繰り返して充放電電圧の推移を測定した。その結果を以下の表1に示す。本実施例(実施例1)では、充放電において若干の過電圧の増加が見られるが、ほぼ安定した電圧を示すことが分かった。このように、銅(Cu)共連続多孔体単相は、リチウム空気二次電池の空気極として非常に優れた活性を有していることが分かった。
【0071】
【表1】
【0072】
(実施例2)
本実施例は、ガス拡散型の空気極として、銅(Cu)にニッケル(Ni)を5%(重量%)含有させた金属共連続多孔体を用いた例である。
【0073】
本実施例で使用する、銅(Cu)にニッケル(Ni)を5%(重量%)含有させた金属共連続多孔体(銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体)は、実施例1に示した最初のプロセスの銅マンガン(Cu30Mn70)シートをニッケル銅マンガン(Ni1。6Cu28。4Mn70)シートにすることで作製した。電極及び電池の作製法、並びに電池の評価法は、実施例1と同様である。SEM観察により、平均孔径は18nmであることを確認した。また、BET比表面積は47m/gであった。
【0074】
上記のようにして調製した銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体を空気極1として用いたリチウム空気電池の放電容量及び充放電電圧のサイクル依存性を図4及び表1に示す。
【0075】
図4に示すように本実施例(実施例2)の放電容量は、初回で620mAh/gを示し、実施例1のような銅(Cu)共連続多孔体単相とほぼ同じ値であった。また、サイクル性能も、実施例1の銅(Cu)共連続多孔体単相とほぼ同等の挙動を示すことが分かった。
【0076】
表1に示すように、充放電電圧も、実施例1と比べほぼ同等の性能を示した。これらの結果から、本実施例のリチウム空気二次電池も安定に作動することが確認できた。
【0077】
上記のように、実施例1のような銅(Cu)共連続多孔体単相とほぼ同等の性能を示したが、耐腐食性の向上による電池の性能の更なる改善のために、ニッケル(Ni)の含有量を、実施例3〜4で更に検討する。
【0078】
(実施例3)
本実施例は、ガス拡散型の空気極として、銅(Cu)に、ニッケル(Ni)を60%(重量%)含有させた金属共連続多孔体を用いた例である。
【0079】
本実施例で使用する銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体(銅(Cu)にニッケル(Ni)を60%(重量%)含有させたもの)は、実施例1に示した最初のプロセスのニッケルマンガン(Ni30Mn70)シートをニッケル銅マンガン(Ni18。6Cu11。4Mn70)シートにすることで作製した。電極及び電池の作製法、並びに電池の評価法は、実施例1と同様である。SEM観察により、平均孔径は10nmであることを確認した。BET比表面積は30m/gであった。
【0080】
上記のように調製した銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体を空気極1として用いたリチウム空気二次電池の放電容量及び充放電電圧のサイクル依存性を図4及び表1に示す。
【0081】
図4に示すように本実施例(実施例3)の放電容量は、初回で480mAh/gを示し、実施例1のような銅(Cu)共連続多孔体単相、及び、実施例2の銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体(銅(Cu)にニッケル(Ni)を5%(重量%)含有させたもの)より初回の放電容量が低下する。また、表1に示すように、充放電電圧に関して、初期のサイクルでは、実施例1及び実施例2よりも過電圧が大きいことが分かった。しかしながら、サイクル性能に関して、実施例1及び実施例2の金属共連続多孔体を用いたリチウム空気二次電池より安定した挙動を示すことが分かった。
【0082】
上記のような特性の向上は、ニッケル(Ni)を実施例2に比べ、多く含有したことによって不動態膜が形成され、空気極の耐腐食性が向上し、サイクルを繰り返しても空気極が劣化しなかったことに起因すると考えられる。そして、実施例1及び実施例2に比べ、初回の放電容量が低下したのは、不動態膜が十分に形成されたことにより、金属共連続多孔体を作製する際に、多孔質化が進まず、空気極の多孔質表面の有効な反応部位が減少したためであると考えられる。
【0083】
(実施例4)
本実施例は、ガス拡散型の空気極として、銅(Cu)にニッケル(Ni)を30%(重量%)含有させた金属共連続多孔体を用いた例である。
【0084】
本実施例で使用する銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体(銅(Cu)にニッケル(Ni)を30%(重量%)含有させたもの)は、実施例1に示した最初のプロセスのニッケルマンガン(Ni30Mn70)シートをニッケルクロム鉄マンガン(Ni9。5Cu20。5Mn70)シートにすることで作製した。電極及び電池の作製法、並びに電池の評価法は、実施例1と同様である。SEM観察により、平均孔径は18nmであることを確認した。BET比表面積は43m/gであった。
【0085】
上記のように調製した銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体を空気極1として用いたリチウム空気電池の放電容量及び充放電電圧のサイクル依存性を図4及び表1に示す。
【0086】
図4に示すように、本実施例(実施例4)の放電容量は、初回で570mAh/gを示し、実施例1のような銅(Cu)共連続多孔体単相、及び実施例2のような銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体(銅(Cu)にニッケル(Ni)を5%(重量%)含有させたもの)とほぼ同じ値であった。
【0087】
また、表1に示すように、充放電電圧も、サイクルを繰り返した際に、実施例1及び実施例2と同様であった。しかしながら、サイクル性能は、実施例1及び実施例2のような金属共連続多孔体より安定した挙動を示すことが分かった。
【0088】
本実施例のように特性が向上したのは、銅(Cu)を含有する金属共連続多孔体にニッケル(Ni)を適量含有させたことにより、実施例2より耐腐食性が向上したと同時に、空気極の多孔質表面の有効な反応部位が、実施例3より高表面積で存在していることに起因すると考えられる。
【0089】
(実施例5)
本実施例は、ガス拡散型の空気極として、銅(Cu)にニッケル(Ni)を30%(重量%)含有させた金属共連続多孔体に金(Au)で表面修飾した金属共連続多孔体を用いた例である。
【0090】
本実施例で使用する金(Au)を表面修飾した銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体(銅(Cu)にニッケル(Ni)を30%(重量%)含有させ、金(Au)で表面修飾したもの)は、実施例4に示したプロセスに従って調製した銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体(銅(Cu)にニッケル(Ni)を30%(重量%)含有させたもの)を、当該プロセスに続いて、金イオン溶液に浸漬することにより調製した。金イオン溶液は、0.0001mol/lのテトラクロロ金(III)酸(HAuCl)水溶液に16.1g/lのポリビニルピロリドン(PVP)を溶かした混合液を使用した。浸漬処理の具体的手順では、前記混合溶液に、実施例4と同様のプロセスで得た金属共連続多孔体を30分間浸漬し、次いで、蒸留水による洗浄を5回繰り返した。電極及び電池の作製法、並びに電池の評価法は、実施例1と同様である。SEM観察により、平均孔径は19nmであることを確認した。BET比表面積は42m/gであった。また、本実施例5の金属共連続多孔体においてTEM観察を行ったところ、銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体(銅(Cu)にニッケル(Ni)を30%(重量%)含有させたもの)の表面に金(Au)が平均3nm堆積していることを確認した。
【0091】
金(Au)を表面修飾した、銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体(銅(Cu)にニッケル(Ni)を30%(重量%)含有させ、金(Au)で表面修飾したもの)を空気極1として用いたリチウム空気電池の放電容量及び充放電電圧のサイクル依存性を図4及び表1に示す。
【0092】
図4に示すように本実施例(実施例5)の放電容量は、初回で700mAh/gを示し、実施例1〜4のような、金で表面修飾していない銅(Cu)を含有する金属共連続多孔体よりも大きい値であった。また、サイクルを繰り返しても、本実施例の金属共連続多孔体は安定した挙動を示すことが分かった。
【0093】
また、表1に示すように充放電電圧も、実施例1〜4の場合よりも過電圧の減少が見られ、充放電のエネルギー効率が改善された。また、充放電電圧も、サイクルを繰り返しても顕著な過電圧の増加は見られず、本実施例のリチウム空気二次電池が安定に作動することを確認した。
【0094】
本実施例のような特性の向上は、非常に大きな活性を有する金(Au)を、電極(空気極)である金属共連続多孔体の表面へ被覆物質として用いることにより、酸素還元(放電)及び酸素発生(充電)の両反応がスムーズに行われたためであると考えられる。
【0095】
(比較例1)
本比較例は、空気極の電極触媒として公知であるカーボン(ケッチェンブラック)とコバルト酸化物(Co)からなる触媒を含む空気極を用いた例である。この空気極を含むリチウム空気二次電池セルを以下のようにして作製した。
【0096】
コバルト酸化物(Co)粉末、ケッチェンブラック粉末及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を50:30:20の重量比で、らいかい機を用いて十分に粉砕混合し、ロール成形して、シート状電極(厚さ:0.5mm)を作製した。このシート状電極を直径23mmの円形に切り抜き、チタンメッシュ上にプレスすることにより、ガス拡散型の空気極を得た。また、コバルト酸化物(Co)は市販試薬(Sigma−Aldrich社製)を用いた。電池のサイクル試験の条件は、実施例1と同様である。
【0097】
本比較例に係るリチウム空気二次電池の放電容量に関するサイクル性能を、実施例1〜5の結果とともに図4に示す。
【0098】
図4に示すように、本比較例1では初回放電容量は約500mAh/gと、実施例1よりも大きな値を示した。しかしながら、充放電サイクルを繰り返すと、実施例1とは異なり放電容量の極端な減少が見られ、20サイクル後の容量維持率は初期の約20%であった。
【0099】
また、充放電電圧のサイクル依存性を実施例1〜5の結果とともに、表1に示した。
【0100】
表1からも分かるように本比較例1による充電電圧は、実施例1〜5よりも明らかに高い値であるとともに、サイクルを繰り返すと明らかに過電圧が増加し、20回目でサイクルの実施は困難となった。
【0101】
以上の結果より、本発明の金属共連続多孔体は、空気極として、公知の材料よりも、容量及び電圧に関してサイクル特性に優れており、リチウム空気二次電池用空気極として有効であることが確認された。
【0102】
(比較例2)
本比較例は、ガス核酸型の空気極として、銅(Cu)にニッケル(Ni)を1%(重量%)含有させた金属共連続多孔体を用いた例である。
【0103】
本比較例で使用するニッケル(Ni)を1%(重量%)含有した銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体(銅(Cu)にニッケル(Ni)を1%(重量%)含有させたもの)は、実施例1に示した最初のプロセスの銅マンガン(Cu30Mn70)シートをニッケル銅マンガン(Ni0.32Cu29.68Mn70)シートにすることで作製した。電極や電池の作製法及び評価法は、実施例1と同様である。SEM観察により、平均孔径18nmであることを確認した。BET比表面積は58m/gであった。
【0104】
上記のように調製した銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体を空気極1として用いたリチウム空気電池の放電容量及び充放電電圧のサイクル依存性を図4及び表1に示す。
【0105】
図4に示すように、本比較例(比較例2)の放電容量は、初回で650mAh/gを示し、実施例1のような銅(Cu)共連続多孔体単相とほぼ同じ値であった。しかし、サイクル性能は、実施例1のような銅(Cu)共連続多孔体単相に比べて低下することが分かった。
【0106】
また、表1に示すように、充放電電圧についても、サイクルを繰り返した際に、実施例1と比べて過電圧が増加することが確認された。
【0107】
上記のように初期サイクルでは、実施例1のような銅(Cu)共連続多孔体単相とほぼ同等の性能を示したが、サイクルを繰り返した際に実施例1に比べて過電圧が増加した。これは、サイクロ繰り返すことで、空気極が劣化したためと考えられる。この原因は、本比較例で使用した金属共連続多孔体におけるニッケル(Ni)の含有量が不十分であり、不動態膜が形成されなかったためと考えられる。そのため、充放電を繰り返した際に、ニッケル(Ni)が電解液へ溶出して、空気極が劣化したと考えられる。
【0108】
そのため、ニッケル(Ni)は、金属共連続多孔体に不動態膜が形成される量まで、含有させる必要があることが確認された。
【0109】
(比較例3)
本比較例は、ガス拡散型の空気極として、銅(Cu)にニッケル(Ni)を80%(重量%)含有させた金属共連続多孔体を用いた例である。
【0110】
本比較例で使用するニッケル(Ni)を80%(重量%)含有した銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体(銅(Cu)にニッケル(Ni)を80%(重量%)含有させたもの)は、実施例1に示した最初のプロセスの銅マンガン(Cu30Mn70)シートをニッケル銅マンガン(Ni25.3Cu4.7Mn70)シートにすることで作製した。電極や電池の作製法及び評価法は、実施例1と同様である。SEM観察により、平均孔径11nmであることを確認した。BET比表面積は10m/gであった。
【0111】
上記のように調製した、銅(Cu)にニッケル(Ni)を80%(重量%)含有させた銅(Cu)−ニッケル(Ni)共連続多孔体を空気極1として用いたリチウム空気電池の放電容量及び充放電電圧のサイクル依存性を図4及び表1に示す。
【0112】
図4に示すように本比較例(比較例3)の放電容量は、初回で110mAh/gを示し、実施例1のような銅(Cu)共連続多孔体単相と比べて大幅に放電容量が減少した。
【0113】
上記のような特性は、金属共連続多孔体がニッケル(Ni)を多量に含有したことにより、金属共連続多孔体の多孔質化が進まず、空気極の多孔質表面の有効な反応部位が減少したためであると考えられる。
【0114】
以上の結果から、BET比表面積が30m/g以上になるように、金属共連続多孔体中のニッケル(Ni)含有量を調整する必要があることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0115】
空気極として三次元網目構造を有する銅(Cu)を含有する金属共連続多孔体を用いることにより、充放電サイクル性能に優れたリチウム空気二次電池を作製することができ、様々な電子機器の駆動源として有効利用することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 空気極(正極)
2 負極
3 有機電解液
4 空気極端子
5 セパレータ
6 負極固定用リング(PTFEリング)
7 負極固定用座金
8 正極固定用リング(PTFEリング)
9 Oリング
10 正極支持体(PTFE被覆)
11 負極支持体
12 セル固定ねじ(PTFE被覆)
13 負極端子
100 リチウム空気二次電池
200 リチウム空気二次電池セル
図1
図2
図3
図4