特許第6217280号(P6217280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6217280熱硬化性樹脂組成物並びにそれを用いたプリプレグ、積層板、プリント配線板、及び実装基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6217280
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物並びにそれを用いたプリプレグ、積層板、プリント配線板、及び実装基板
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20171016BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20171016BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20171016BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20171016BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20171016BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20171016BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20171016BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20171016BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20171016BHJP
【FI】
   C08L63/00 C
   C08G59/40
   C08J5/24CFC
   B32B27/00 101
   B32B5/28 Z
   B32B15/08 105A
   H05K1/03 610L
   H01L23/12 N
   C08K5/098
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-197170(P2013-197170)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-63585(P2015-63585A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】串田 祐子
(72)【発明者】
【氏名】土川 信次
(72)【発明者】
【氏名】泉 寛之
(72)【発明者】
【氏名】石倉 久美子
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/061811(WO,A1)
【文献】 特開2014−122339(JP,A)
【文献】 特開2013−189581(JP,A)
【文献】 特開2013−189580(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/018126(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02602277(EP,A1)
【文献】 特開2002−309084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C08L 63/00
B32B 5/28
B32B 15/08
B32B 27/00
C08G 59/40
C08J 5/24
C08K 5/098
H01L 23/12
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される、カルボキシル基を有するシロキサン樹脂(a)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応させることにより得られる、分子構造中に水酸基及びエポキシ基を有する化合物(A)、1分子中に2個以上のシアネート基を有する化合物(B)、及びナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ及びオクチル酸亜鉛から選ばれる1種以上の有機金属塩(C)を含む熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rは、各々独立に炭素数1〜5の飽和炭化水素基であり、mは5〜100の整数である)
【請求項2】
分子構造中に水酸基及びエポキシ基を有する化合物(A)と1分子中に2個以上のシアネート基を有する化合物(B)とを反応させて得られる化合物を含む請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸又は塗工してなるプリプレグ。
【請求項4】
請求項に記載のプリプレグを積層してなる積層板。
【請求項5】
請求項に記載の積層板の表面又は表面及び内部に導体パターンが形成されたプリント配線板。
【請求項6】
請求項に記載のプリント配線板と、
前記プリント配線板に配置されたプリント部品及び搭載部品とを含む実装基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージ等の電子分野の用途に好適な熱硬化性樹脂組成物、並びにそれを用いたプリプレグ、積層板、プリント配線板及び実装基板に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂組成物は、架橋構造を有し、高い耐熱性及び優れた寸法安定性を発現するため、電子部品等の分野で広く使用されている。例えば、熱硬化性樹脂組成物が基材に含浸又は塗布されたプリプレグから形成された積層板、この積層板の表面又は表面とその内部に導体パターンが形成されたプリント配線板、及び配線基板等の層間絶縁材料などに使用されている。また、近年、プリント配線板等の薄型化に伴い、プリント配線板の反りが問題になっている。この反りを抑制するために、高い弾性率と低い熱膨張係数を発現する熱硬化性樹脂組成物が望まれている。
【0003】
また、近年、環境に対する意識の高まりから、電子部品を実装する際に鉛フリーはんだを使用することや、電子部品を実装する基板としてハロゲンフリー基板を使用することが求められている。しかし、鉛フリーはんだは、従来のはんだよりも使用温度が高く、ハロゲンフリー基板は、通常のハロゲン含有基板に比べて難燃性に劣る。このため、さらに高い耐熱性、及び難燃性を発現する熱硬化性樹脂組成物が望まれている。さらに、製品の安全性、及び作業環境向上のため、毒性の低い成分で構成され、毒性ガス等が発生しづらい熱硬化性樹脂組成物が望まれている。
【0004】
そのような熱硬化性樹脂組成物としてシアネート化合物が注目されている(例えば、特許文献1〜5を参照)。シアネート化合物は、低誘電特性を有し、難燃性に優れる樹脂組成物である。しかし、エポキシ硬化系の熱硬化性樹脂にシアネート化合物を使用した場合、硬化した樹脂の耐熱性や強靭性が不足するという問題が生じる場合がある。
【0005】
特許文献1及び2には、シアネート化合物及び無機充填剤からなり、低熱膨張性を発現させる樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物では、低熱膨張性を発現させるために無機充填剤の配合量を多くしている。このため、銅張積層板や層間絶縁材料としてこの樹脂組成物を使用した場合、ドリル加工性や成形性が悪い場合がある。
【0006】
また、特許文献3及び4には、シアネート樹脂とアラルキル変性エポキシ樹脂とを必須成分として含有する熱硬化性樹脂組成物が開示されている。必須成分であるシアネート樹脂は靭性及び硬化反応性が劣る樹脂であるため、この熱硬化性樹脂組成物の硬化反応性及び強靭性は不十分である。また、これらを積層板や層間絶縁材料に使用した場合、得られたプリント配線板の耐熱性、信頼性及び加工性が不十分である場合がある。
【0007】
多層化されたプリント配線板に熱硬化性樹脂組成物を使用する場合、熱硬化性樹脂組成物には、導体層との接着性、耐熱性、難燃性及びドリル加工性等の特性が必要になる。しかし、これらの特性を十分に満足する熱硬化性樹脂組成物を得ることは難しい。これに関して、特許文献5には、シアネート基を有する化合物、シロキサン樹脂及び溶融シリカを用いた熱硬化性樹脂組成物が開示されている。この熱硬化性樹脂組成物は優れた低熱膨張性等を発現する。そして、この熱硬化性樹脂組成物は、ほかの一般的な熱硬化性樹脂組成物に比べて、導体層との優れた接着性、高い難燃性、良好なドリル加工性及び優れた低誘電特性等を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−268136号公報
【特許文献2】特開2003−73543号公報
【特許文献3】特開2002−309085号公報
【特許文献4】特開2002−348469号公報
【特許文献5】特開2012−52110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献5に記載の熱硬化性樹脂組成物を基板に使用した場合、その基板の弾性率は低くなる。また、高弾性なシアネート化合物であるフェノールノボラック型シアネートを用いても、基板の弾性率を高くすること(例えば、25℃における曲げ弾性率が28GPa以上にすること)は困難である。なぜならば、通常の硬化条件(100〜250℃で0.1〜5時間のプレス条件)では、硬化反応性に劣るフェノールノボラック型シアネートの重合は不十分であり、熱硬化性樹脂組成物は硬化不足になるからである。また、回路基板のデスミア工程において、樹脂組成物中に硬化不十分の状態の樹脂が溶出する場合があり、耐デスミア性の向上が必要であった。さらに、プリント配線板用樹脂組成物のワニスやプリプレグには保存安定性が求められる。
【0010】
本発明は、樹脂の硬化不足の問題を抑制し、高弾性で、低熱膨張性、耐湿耐熱性、及び耐デスミア液性に優れ、さらにワニスの保存安定性にも優れる熱硬化性樹脂組成物並びにそれを用いたプリプレグ、積層板、プリント配線板及び実装基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、カルボキシル基を有するシロキサン樹脂とエポキシ基を有する化合物とをエステル化反応させることにより得られる化合物と、シアネート基を有する化合物と、有機金属塩とを含む熱硬化性樹脂組成物を採用することによって、高弾性で、低熱膨張性及び耐湿耐熱性に優れ、さらに耐デスミア液性にも優れる熱硬化性樹脂組成物並びにそれを用いたプリプレグ、積層板及び実装基板を得られるとの知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]下記一般式(I)で表される、カルボキシル基を有するシロキサン樹脂(a)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応させることにより得られる、分子構造中に水酸基及びエポキシ基を有する化合物(A)、1分子中に2個以上のシアネート基を有する化合物(B)、及び有機金属塩(C)を含む熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式中、R1は、各々独立に炭素数1〜5の飽和炭化水素基であり、mは5〜100の整数である)
[2]分子構造中に水酸基及びエポキシ基を有する化合物(A)と1分子中に2個以上のシアネート基を有する化合物(B)とを反応させて得られる化合物を含む上記[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[3]有機金属塩(C)が、ナフテン酸金属塩及びオクチル酸金属塩から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]又は[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸又は塗工してなるプリプレグ。
[5]上記[4]に記載のプリプレグを積層してなる積層板。
[6]上記[5]に記載の積層板の表面又は表面及び内部に導体パターンが形成されたプリント配線板。
[7]上記[6]に記載のプリント配線板と、プリント配線板に配置されたプリント部品及び搭載部品とを含む実装基板。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高弾性で、低熱膨張性及び耐湿耐熱性に優れ、さらに耐デスミア液性にも優れる熱硬化性樹脂組成物並びにそれを用いたプリプレグ、積層板、プリント配線板及び実装基板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、下記一般式(I)で表される、カルボキシル基を有するシロキサン樹脂(a)(以下、成分(a)と呼ぶことがある)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物(b)(以下、成分(b)と呼ぶことがある)とを反応させることにより得られる、分子構造中に水酸基及びエポキシ基を有する化合物(A)(以下、成分(A)と呼ぶことがある)、1分子中に2個以上のシアネート基を有する化合物(B)(以下、成分(B)と呼ぶことがある)、及び有機金属塩(C)(以下、成分(C)と呼ぶことがある)を含むものである。
【化2】
(式中、R1は、各々独立に炭素数1〜5の飽和炭化水素基であり、mは5〜100の整数である)
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物を詳細に説明する。
【0014】
[カルボキシル基を有するシロキサン樹脂(a)]
本発明のカルボキシル基を有するシロキサン樹脂(a)は、下記一般式(I)で表される。
【化3】
ここで、耐熱性、低熱膨張性及び溶剤溶解性に優れる熱硬化性樹脂組成物が得られる点から、式中、R1は各々独立に炭素数1〜5の飽和炭化水素基であることが好ましい。また、mは2〜100の整数であることが好ましく、10〜40であることがより好ましい。成分(a)としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製の商品名「X−22−162A」(カルボキシル基当量:865)、商品名「X−22−162B」(カルボキシル基当量:1500)等が挙げられる。
【0015】
[1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物(b)]
本発明の1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物(b)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば、特に制限されるものではない。成分(b)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アラルキル変性型エポキシ樹脂、脂環式型エポキシ樹脂、アルコール型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びグリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
プリプレグの取り扱い性の観点からは、プリプレグにタック性が低いことが好ましく、このためには熱硬化性樹脂組成物が室温で固形であることが好ましい。また、熱硬化性樹脂組成物の硬化物が、高弾性、優れた耐湿耐熱性及び低熱膨張性を有する点から、成分(b)としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。さらに、積層板を製造する際の成形性の点から、下記式(II)に示すナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂、及び下記式(III)に示すビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0017】
【化4】
【0018】
【化5】
【0019】
[分子構造中に水酸基及びエポキシ基を有する化合物(A)]
本発明の分子構造中に水酸基及びエポキシ基を有する化合物(A)は、成分(a)と成分(b)とを反応させることにより得られる。成分(a)と成分(b)とを反応させると、二級の水酸基の生成を伴うエステル化反応が進行する。ここで、成分(b)のエポキシ基数(成分(b)の配合量/成分(b)のエポキシ基当量)が、成分(a)のカルボキシル基数(成分(a)の配合量/成分(a)のカルボキシル基当量)よりも大きくなるように、上記の成分(a)と成分(b)とを配合することが好ましい。このように上記の成分(a)と成分(b)とを配合して反応させることにより、分子構造中に水酸基及びエポキシ基を有する化合物が得られる。
【0020】
成分(b)のエポキシ基数と成分(a)のカルボキシル基数との比率(成分(b)のエポキシ基数/成分(a)のカルボキシル基数)は、1.5〜10.0であることが好ましい。この比率が1.5以上であれば、反応時に成分(a)と成分(b)との反応生成物がゲル化することが少なくなる。また、この比率が10.0以下であれば、反応中に成分(b)が不溶化することや得られる積層板の耐湿性が低下することが少なくなる。
【0021】
成分(a)と成分(b)との反応には有機溶媒を使用することが好ましい。有機溶媒の配合量としては、例えば、成分(a)及び成分(b)の合計100質量部当たり、40〜1000質量部であることが好ましい。有機溶媒の配合量が40質量部以上であれば、成分(a)及び成分(b)の溶解性が不足することや増粘により後述の成分(A)の合成が難しくなることが少ない。また、有機溶媒の配合量が1000質量部以下であれば、合成に長時間を要することが少なくなる。この反応で使用される有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン及びメシチレン等の芳香族系溶媒、炭化水素系溶媒、石油系溶媒、ジメチルスルホキシド等のS原子含有溶媒、並びにγ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
成分(a)と成分(b)の反応に使用する有機溶媒は、成分(a)及び成分(b)に対する溶解性が高いことが好ましい。また、有機溶媒は、揮発性が高くプリプレグの製造時に残溶剤としてプリプレグ中に残存しにくいことが好ましい。このような観点から、前記反応に使用する有機溶媒としては、芳香族系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン及びメシチレンがより好ましい。
【0023】
成分(a)と成分(b)の反応には、必要に応じて反応触媒を使用することができる。反応触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、及びトリブチルアミン等のアミン類、メチルイミダゾール及びフェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、成分(a)及び成分(b)に対する反応性が高い点から、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒を用いることが好ましい。
【0024】
成分(A)は、例えば、成分(a)、成分(b)、有機溶媒、及び必要に応じて添加される反応触媒を合成釜に仕込み、必要により加熱及び保温しながら1〜10時間攪拌し、反応させることにより製造される。この成分(A)の合成温度は、25〜200℃の範囲とすることが好ましい。合成温度が25℃以上であれば、反応速度が遅すぎることが少なくなる。また、合成温度が200℃以下であれば、反応に使用する溶媒に沸点の高い溶媒を用いる必要がないため、プリプレグを製造する際に溶媒が残りにくくなり耐熱性が低下することが少なくなる。
【0025】
上記反応の終点及び成分(A)の生成は、例えば、以下のようにして判別する。成分(a)及び成分(b)を反応させている溶媒から少量の試料を取り出す。そして、中和滴定により試料の酸価を測定し、成分(a)中のカルボキシル基の減少を確認する。中和滴定による酸価の測定方法はJIS規格による方法に準拠する。具体的には、取り出した少量の試料に、指示薬としてフェノールフタレインを添加し、これを水酸化カリウムメタノール溶液により滴定して中和点を確認することによって、試料の酸価を測定する。反応の終点の酸価は、反応初期の酸価の1/5以下であることが好ましい。終点での酸価が、反応初期の酸価の1/5以下であれば、成分(A)の生成量が不足しづらく、良好な相容性が得られる。
【0026】
成分(a)と成分(b)とを反応させずに熱硬化性樹脂組成物を作製した場合、熱硬化性樹脂組成物中に未反応のカルボキシル基が残留する場合がある。この場合、未反応のカルボキシル基がデスミア液と反応するため、耐デスミア液性が低くなる場合がある。一方、本発明のように、熱硬化性樹脂組成物を作製する際に、成分(a)と成分(b)とを予め反応させた場合、成分(a)のカルボキシル基と成分(b)のエポキシ基との反応が選択的に進行し、この反応により得られた成分(A)は、高分子ポリマー内に取り込まれた安定な構造になる。よって、これにより熱硬化性樹脂組成物における未反応のカルボキシル基の残留が抑えられるので、熱硬化性樹脂組成物の耐デスミア液性が向上すると考えられる。なお、この原理は本発明を限定するものではない。
【0027】
[1分子中に2個以上のシアネート基を有する化合物(B)]
本発明の1分子中に2個以上のシアネート基を有する化合物(B)としては、特に制限されるものではないが、例えば、1分子中に2個以上のシアネート基を有するフェノールノボラック型シアネート樹脂が好ましく、下記式(IV)で示されるフェノールノボラック型シアネート樹脂であることがより好ましい。
【化6】
【0028】
また、上記一般式(IV)の式中のuは0.1〜30の正の数であることが好ましく、5〜15の正の数であることがより好ましい。uが0.1以上であれば、成分(B)は結晶化しづらくなり、成分(B)の取り扱いが容易になる。また、uが30以下であれば、樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が脆くなることを抑制できる。
【0029】
[有機金属塩(C)]
本発明の有機金属塩(C)は、成分(A)と成分(B)とが反応する際の硬化促進剤として使用される。成分(C)としては、脂肪酸金属塩であることが好ましい。脂肪酸金属塩は、直鎖状の脂肪酸金属塩であっても、環状の脂肪酸金属塩であってもよい。成分(C)としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、リシノール酸及びオクチル酸等の直鎖状の脂肪酸、又はナフテン酸等の環状の脂肪酸と金属とからなる脂肪族金属塩等が挙げられる。これら1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
一般に、硬化促進剤を用いると、硬化反応の活性化エネルギーが小さくなり、硬化反応が進行しやすくなる。しかし、活性化エネルギーが小さすぎると、室温(20℃)でも硬化反応が進行してしまうため、ワニス及びプリプレグの保存安定性が悪化する。しかし、本発明では、硬化促進剤に有機金属塩(C)を用いるので、硬化反応の活性化エネルギーが小さくなりすぎることがなく、ワニス及びプリプレグの保存安定性が良好になる。ワニス及びプリプレグの保存安定性等の観点から、成分(C)としては、ナフテン酸金属塩及びオクチル酸金属塩から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。さらに、活性化エネルギーが比較的小さく、樹脂の硬化率を向上させることができる点から、成分(C)としては、下記一般式(V)に示すナフテン酸銅及び下記一般式(VI)に示すオクチル
酸スズから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【化7】
【化8】
【0031】
[成分(A)と成分(B)との反応]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、分子構造中に水酸基及びエポキシ基を有する化合物(A)と1分子中に2個以上のシアネート基を有する化合物(B)とを反応させて得られる化合物を含むことが好ましい。成分(A)と成分(B)とを反応させる際の配合量としては、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部当たり、成分(A)の配合量を10〜60質量部とし、成分(B)の配合量を40〜90質量部とすることが好ましい。成分(A)及び成分(B)の配合量がこれらの範囲内であると、得られる樹脂は、より高弾性になり、より優れた耐湿耐熱性及び耐デスミア液性を有するようになる。また、成分(C)の配合量は、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部当たり、好ましくは、0.001〜1.0質量部である。成分(C)の配合量が0.001質量部以上であると、反応の進行が速くなり、樹脂の相容化に長い時間を要すことが少ない。また、成分(C)の配合量が1.0質量部以下であると、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の反応の反応速度が速くなりすぎず、反応の終点管理が容易になる。
【0032】
これらの配合量の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を予め有機溶媒中に溶解することが好ましい。有機溶媒中で、例えば、80〜120℃の反応温度で、成分(A)及び成分(B)のイミノカーボネ−ト化反応、トリアジン環化反応及びエポキシ基の挿入反応を進行させることができる。
【0033】
成分(A)と成分(B)との反応においては、有機溶媒を用いることが好ましい。この際に用いる有機溶媒としては、前述のように芳香族系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン及びメシチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。また、所望の反応の進行を妨げることなく、耐熱性等の特性の低下が起こらない範囲で、他の有機溶媒を混合してもよい。
【0034】
上記のイミノカーボネ−ト化反応は、水酸基とシアネート基との付加反応によりイミノカーボネ−ト結合(−O−(C=NH)−O−)が生成する反応であり、上記のトリアジン環化反応は、シアネート基が3量化しトリアジン環を形成する反応である。これにより反応生成物に3次元網目構造が形成される。さらに、上記のエポキシ基の挿入反応が進行し、イソシアヌレートやオキサゾリジノンが形成する。これらの反応によって成分(A)及び成分(B)が分散した熱硬化性樹脂組成物が製造される。
【0035】
成分(A)及び成分(B)の反応の終点管理は、例えば、成分(B)の反応率を調べることにより実施できる。成分(B)の反応率は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)測定により求めることができる。GPC測定により測定した反応開始時の成分(B)のピーク面積と、所定時間反応後の成分(B)のピーク面積とを比較して算出したピーク面積の消失率から、成分(B)の反応率は求められる。本発明では、成分(B)の反応率が10〜50%となるように成分(A)及び成分(B)を反応させることが好ましい。成分(B)の反応率が10%以上であると、成分(A)及び成分(B)が分離しづらく、Bステージ化(半硬化)の状態で、得られた熱硬化性樹脂組成物を基材に塗布することが容易になる。成分(B)の反応率が50%以下であれば、得られた熱硬化性樹脂組成物が溶媒に溶けやすくなり、ワニスの製造が容易になる。また、成分(B)の反応率が50%以下であれば、得られた熱硬化性樹脂組成物を用いて作製したプリプレグのゲル化時間が短くなりすぎることが少なくなる。これにより、そのプリプレグを用いて積層板を作製するときのプレス時のプリプレグの成形性が良好になる。
【0036】
[無機充填材]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、無機充填材を含有してもよい。これにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物が発現する、低熱膨張性、高弾性、耐熱性又は難燃性等の特性をさらに向上させることができる。熱硬化性樹脂組成物に含有させる無機充填材は、向上させる特性により適宜選択することができる。無機充填材には、例えば、溶融シリカ、破砕シリカ、マイカ、タルク、ガラス短繊維、ガラス微粉末、中空ガラス、炭酸カルシウム、石英粉末、及び金属水和物等が挙げられる。無機充填材としてこれらを単独で使用してもよいし、これらの2種以上を混合して使用してもよい。
【0037】
低い線熱膨張係数を有していることから、無機充填材は、溶融シリカが好ましく、分散性が良好なことから、下記式(VII)で示されるN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランにより表面処理された溶融シリカがより好ましい。
【化9】
【0038】
上述の表面処理された溶融シリカは、例えば、以下のようにして作製できる。メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン系有機溶媒、又はエチレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系有機溶媒などに溶融シリカを添加して混合し、混合物を作製する。その後、上記式(VII)で示されるトリメトキシシラン化合物をその混合物に添加する。60〜120℃の温度で、混合物を0.5〜5時間程度攪拌しながら、溶融シリカとトリメトキシシラン化合物とを反応させ、上述の溶融シリカが得られる。
【0039】
上述の表面処理された溶融シリカは、(株)アドマテックス等から商業的にも入手できる。このような溶融シリカには、例えば、(株)アドマテックス製の商品名「SC-2050KNK」及び「SC-2050HNK」の溶融シリカ等が挙げられる。
【0040】
無機充填材の配合量は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の化合物(A)及び化合物(B)の合計100質量部に対し、10〜300質量部とすることが好ましく、150〜250質量部とすることがより好ましい。無機充填材の配合量が10質量部以上であると、得られる樹脂の弾性率及び耐湿耐熱性を向上させることができる。また、無機充填材の配合量が300質量部以下であると、無機充填材の添加により熱硬化性樹脂組成物の成形性及び耐デスミア液性が低下することを抑制できる。
【0041】
[その他の成分]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、耐熱性、難燃性及び銅箔接着性等をさらに向上させるために、所望により、公知の熱可塑性樹脂、エラストマー、難燃剤及び有機充填剤等を含んでもよい。
【0042】
熱可塑性樹脂には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂及びシリコーン樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
エラストマーには、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン系重合体、カルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエン系重合体、並びにポリブタジエン、エポキシ変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン及びフェノール変性ポリブタジエン等のジエン系エラストマーなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、リン酸エステル系化合物、ホスファゼン及び赤リン等のリン系難燃剤、並びに三酸化アンチモン及びモリブデン酸亜鉛等の無機難燃剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。難燃性が向上するのみならず、ドリル加工性も著しく向上する点から、難燃剤としては、モリブデン酸亜鉛をタルク等の無機充填剤に担持した無機難燃剤が好ましい。
【0045】
モリブデン酸亜鉛を難燃剤として使用する場合には、その配合量は、化合物(A)及び化合物(B)の合計100質量部に対し、5〜20質量部とすることが好ましい。難燃剤の配合量が5質量部以上であると、難燃性やドリル加工性の向上効果が得られ、難燃剤の配合量が20質量部以下であると、ワニスのゲル化時間が十分に長くなり、プレスにより積層板を成形する際の成形性が向上する。
【0046】
有機充填剤としては、例えば、シリコーンパウダー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びポリフェニレンエーテル等の有機物粉末などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤及び密着性向上剤等をさらに含むことができる。例えば、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系及びスチレン化フェノール等の酸化防止剤、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類及びチオキサントン系等の光重合開始剤、スチルベン誘導体等の蛍光増白剤、並びに尿素シラン等の尿素化合物及びシランカップリング剤等の密着性向上剤などを含んでもよい。
【0048】
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工してなるものである。このため、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いてプリプレグを作製するとき、本発明の熱硬化性樹脂組成物はワニスの状態であることが好ましい。ここで、ワニスの状態とは、本発明の熱硬化性樹脂組成物が有機溶媒中に溶解もしくは分散された状態をいう。
【0049】
[プリプレグの基材]
本発明のプリプレグの基材として、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている公知のものを使用できる。基材の材質には、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス及びQガラス等の無機物繊維、及び有機繊維などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、又は2種以上を混合して用いてもよい。低熱膨張性の観点からは、基材の材質として、Qガラス、及び有機繊維を用いることが好ましい。有機繊維を構成する樹脂としては、例えば、アラミド樹脂、ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、超高分子ポリエチレン樹脂、及びフッ素樹脂等が挙げられる。有機繊維としては、市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、旭化成イーマテリアルズ(株)製のアラミド繊維クロス(商品名:テクノーラ)、芳香族ポリエステル繊維クロス(商品名:ゼクシオン)、及びポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維クロス(商品名:ザイロン)等が挙げられる。
【0050】
これらの基材の形態には、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、及びサーフェシングマット等が挙げられる。基材の材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により適宜選択される。必要に応じて、1種又は2種類以上の上述の材質及び形態を組み合わせた基材を本発明のプリプレグに用いることができる。基材の厚さは、特に限定されないが、例えば、約0.03〜約0.5mmである。シランカップリング剤等で表面処理した基材又は機械的に開繊処理を施した基材が、耐熱性、耐湿性及び加工性等の面から好ましい。
【0051】
乾燥後の基材に対する熱硬化性樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの質量の20〜90質量%となるように、熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸又は塗工することが好ましい。その後、含浸又は塗工した基材を、例えば100〜200℃の温度で3〜15分加熱乾燥して、基材に含浸又は塗工された熱硬化性樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)させ、プリプレグが作製される。
【0052】
[積層板]
本発明の積層板は、本発明のプリプレグを積層してなるものである。例えば、本発明のプリプレグを1〜20枚重ねて積層体を形成し、その積層体の片面又は両面に銅及びアルミニウム等の金属箔を配置した後、積層成形することにより本発明の積層板を得ることができる。金属箔は、電気絶縁材料用途で用いるものであれば特に限定されない。
【0053】
本発明の積層板の成形には、従来の電気絶縁材料用積層板、及び多層板の成形手法を適用できる。例えば、本発明の積層板の成形には、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、及びオートクレーブ成形機等を使用できる。例えば、積層板を成形するときの成形温度は100〜250℃であり、成形圧力は2〜100kg/cm2であり、加熱時間は0.1〜5時間である。
【0054】
本発明の積層板は、本発明のプリプレグを積層しているものであれば、ほかのプリプレグや配線板を含んでもよい。例えば、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組み合わせて、積層成形して、積層板を得ることができる。
【0055】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の積層板の表面又は表面及び内部に導体パターンが形成されたものである。例えば、プリント配線板は、積層板の金属箔の表面に、金属箔の主成分の酸化物層を形成する工程と、金属箔の表面に形成された酸化物層にレーザを照射して、酸化物層及び金属箔を貫通する穴を形成する工程と、金属箔の表面に形成された酸化物層を除去した後、デスミア処理を行う工程と、めっき処理を行い、穴の内部にめっき膜を形成する工程とによって作製される。例えば、金属箔は銅箔であり、酸化物層は銅酸化物層である。
【0056】
[実装基板]
本発明の実装基板は、本発明のプリント配線板と、本発明のプリント配線板に配置されたプリント部品及び搭載部品とを含むものである。例えば、プリント部品は半導体パッケージ用配線板であり、搭載部品は半導体素子である。
【実施例】
【0057】
次に、下記の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明をいかなる意味においても制限するものではない。本発明の一実施形態における熱硬化性樹脂組成物を用いて、プリプレグ、さらに銅張積層板を作製し、作製された銅張積層板を評価した。評価方法を以下に示す。
【0058】
[評価方法]
(1)曲げ弾性率の評価
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅張積層板から銅箔を取り除いた積層板を作製し、その積層板から25mm×40mmの試験片を切り出して、評価基板Aを作製した。評価基板Aをさらに250℃で2時間加熱して、評価基板Bを得た。5トンテンシロン装置((株)オリエンテック製、商品名:RTC−1350A)を用いて、クロスヘッド速度1mm/min、スパン間距離20mmの測定条件で、25℃における評価基板A及びBの曲げ弾性率を測定した。
【0059】
(2)線熱膨張係数の測定
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅張積層板から銅箔を取り除いた積層板を作製し、その積層板から4mm×30mmの試験片を切り出して、評価基板Cを作製した。TMA試験装置(TAインスツルメント社製、商品名:TMA―Q400)を用いて評価基板Cの30〜100℃における面方向の線熱膨張率を測定した。なお、線熱膨張率を測定したのは、以下の理由による。銅張積層板は、さらなる薄型化が望まれており、これに併せて銅張積層板を構成するプリプレグの薄型化も検討されている。薄型化されたプリプレグは、反りやすくなるため、熱処理時におけるプリプレグの反りが小さいことが望まれる。反りを小さくするためには、基材の面方向の線熱膨張係数が低いことが有効である。
【0060】
(3)吸湿はんだ耐熱性の評価
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅張積層板から銅箔を取り除いた積層板を作製し、その積層板から40mm角の試験片を切り出して評価基板Dを作製した。そして、(株)平山製作所製のプレッシャー・クッカー試験装置を用いて、100%RH、121℃、2atmの処理条件で5時間のプレッシャー・クッカー処理を評価基板Dに行った。その後、温度288℃のはんだ浴に、評価基板Dを20秒間浸漬し、外観を観察して、ふくれ及びクラックの発生を調べることで、評価基板Dの吸湿はんだ耐熱性を評価した。
【0061】
(4)耐デスミア液性の評価
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅張積層板から銅箔を取り除いた積層板を作製し、その積層板から40mm角の試験片を切り出して評価基板Eを作製した。そして、ディップ法により、80℃の温度を有する膨潤水溶液(ローム・アンド・ハース・ジャパン(株)製、商品名:サーキュポジットMLBコンディショナー211)に評価基板Eを5分間浸漬した。その後、室温で評価基板Eを3分間水洗し、同じくディップ法により80℃の温度を有する過マンガン酸強アルカリ水溶液(ローム・アンド・ハース・ジャパン(株)製、商品名:サーキュポジットMLBプロモーター213)に15分間浸漬した。そして、評価基板Eの浸漬処理前後における質量減少量(g/m2)を測定した。
【0062】
(5)ワニスの保存安定性の評価
製造直後のワニスから0.5mlのワニスを量り取り、ゲル化試験器(日新科学(株)製、商品名:TYPEGT−JIS)を用いて、そのワニスのゲル化時間を測定した。ゲル化時間の測定温度は160℃であった。また、製造したワニスを20℃の温度で3日間保存した後、同様の方法でゲル化時間を測定した。ワニス製造直後に測定したゲル化時間と、製造後20℃の温度で3日間保存した後に測定したゲル化時間との差が小さいほど、ワニスの保存安定性は良好である。
【0063】
(6)活性化エネルギーEaの算出
得られたワニスから0.5mlのワニスを量り取り、ゲル化試験器(日新科学(株)製、商品名:TYPEGT−JIS)を用いてそのワニスのゲル化時間を測定した。ゲル化時間の測定は140、150、160、170及び180℃で、それぞれ行った。各測定温度においてワニスが完全に硬化するまでの時間(Tgel)(s)を計測した。
【0064】
反応速度を(1/Tgel)(s-1)とすると、反応速度、測定温度の逆数及び活性化エネルギーEa(kJ/mol)は、下記アレニウスの式(1)によって表される関係を有する。
【数1】
(式中、Rは気体定数(J・K-1・mol-1)、Tは測定温度(K)、Eaは活性化エネルギー(kJ/mol)、Aは温度に依らない定数(s-1))
したがって、測定温度の逆数を横軸、反応速度の対数を縦軸にとり、得られた近似直線の傾きから、活性化エネルギーEa(kJ/mol)を算出した。
【0065】
製造例、及び比較製造例にて製造した熱硬化性樹脂組成物の同定はGPC測定、及びFT−IR測定により行った。それぞれの測定条件は以下のとおりである。
(7)GPC測定
GPC測定の条件は、以下のとおりとした。GPC測定に用いた装置は、オートサンプラー(東ソー(株)製、商品名:AS−8020)、カラムオーブン(日本分光工業(株)製、商品名:860−C0)、RI検出器(日本分光工業(株)製、商品名:830−RI)、UV/VIS検出器(日本分光工業(株)製、商品名:870−UV)及びHPLCポンプ(日本分光工業(株)製、商品名:880−PU)から構成される。また、測定に使用したカラムは、商品名が「TSKgel SuperHZ2000」及び「TSKgel SuperHZ2300」である東ソー(株)製のカラムであり、測定温度は40℃であり、流量は0.5ml/minであり、溶媒はテトラヒドロフラン(THF)であった。
【0066】
(8)FT−IR測定
FT−IR測定は、フーリエ変換型赤外分光装置(日本分光工業(株)製、商品名:FT/IR−6300)を使用して、分解能4cm-1、測定範囲4000〜400cm-1及び積算回数32回の測定条件で行った。後述の反応溶液をタリウム板に少量塗布し、溶媒を圧縮空気で揮発させ、熱硬化性樹脂組成物の薄膜をタリウム板上に形成した。そして、熱硬化性樹脂組成物の薄膜を形成したタリウム板に赤外光を照射し、FT−IR測定を行った。
【0067】
(製造例)
(1)製造例1:熱硬化性樹脂組成物(1−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、上記一般式(III)に示され、R2〜R5がCH3であるビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名:YX−4000、エポキシ当量:186):180.0gと、下記式(VIII)に示すシロキサン樹脂(信越化学工業(株)製、商品名:X-22-162A、カルボキシル基当量:865):120.0gと、トルエン:700.0gと、トリフェニルホスフィン:1.09g(シロキサン樹脂のカルボキシル基に対し3.0mol%相当)とを投入して混合物を作製した。反応の当量比はエポキシ基数/カルボキシル基数=7.0であった。
【0068】
次いで、上記混合物を攪拌しながら混合物の温度を110℃に昇温し、約110℃で混合物を反応させた。混合物が反応しているとき、0.5時間おきにサンプリングを行い中和滴定により混合物の酸価を測定した。3時間反応させた後に混合物の酸価が0mgKOH/gになったことを確認した。そして、混合物を室温に冷却して下記一般式(IX)に示す構造の分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物(A-1)の溶液を得た。
【化10】
【化11】
【0069】
次いで、温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、上記の化合物(A−1)の溶液:800.0g(固形分:240.0g)と、フェノールノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン(株)製、商品名:PT−30):240.0gとを投入して混合物を作製した。その後、その混合物を攪拌しながら混合物の温度を110℃に昇温し、樹脂固形分が溶解して混合物が均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸銅の8質量%ミネラルスピリット溶液を混合物に0.24g添加し反応液を作製した。そして、約110℃で反応液を4時間反応させた。その後、その反応液を室温に冷却し熱硬化性樹脂組成物(1−1)の溶液を得た。
【0070】
この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行った。溶出時間が約12.2分付近に出現する合成原料のフェノールノボラック型シアネート樹脂のピーク面積について、反応開始時のフェノールノボッラク型シアネート樹脂のピーク面積と比較したところ、ピーク面積の消失率が33%であった。これより、フェノールノボッラク型シアネート樹脂の反応率は33%であった。さらに、反応溶液を少量取り出し、薄膜形成法によりFT−IR測定を行ったところ、重合反応によって生成されるトリアジン環の波数1560cm-1付近に出現するピークを確認することができた。また、エポキシ基の挿入反応によって生成されるイソシアヌレート及びオキサゾリジノンの波数1670cm-1及び1740cm-1付近に出現するピークをそれぞれ確認することができた。その後、樹脂溶液は減圧濃縮により、樹脂分を70質量%に調整し、熱硬化性樹脂組成物(1−1)を得た。
【0071】
(2)製造例2:熱硬化性樹脂組成物(1−2)の製造
ビフェニル型エポキシ樹脂:180.0gの代わりに上記一般式(II)に示すナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名:NC-7000L、エポキシ当量:230):180.0gを使用した点を除いて、上記熱硬化性樹脂組成物(1−1)の製造方法と同様の製造方法によって熱硬化性樹脂組成物(1−2)を得た。なお、反応の当量比がエポキシ基数/カルボキシル基数=7.0からエポキシ基数/カルボキシル基数=5.6に変わり、フェノールノボッラク型シアネート樹脂の反応率が33%から31%に変わった。
【0072】
(3)製造例3:熱硬化性樹脂組成物(1−3)の製造
ビフェニル型エポキシ樹脂:180.0gの代わりにナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名:NC-7000L、エポキシ当量:230):226.2gを使用した点、シロキサン樹脂:120.0gの代わりに下記一般式(X)に示すシロキサン樹脂(信越化学工業(株)製、商品名:X-22-162B、カルボキシル基当量:1500):150.8gを使用した点、及びトリフェニルホスフィンの配合量を1.37gから0.79gに変更した点を除いて、上記熱硬化性樹脂組成物(1−1)の製造方法と同様の製造方法によって熱硬化性樹脂組成物(1−3)を得た。なお、反応の当量比がエポキシ基数/カルボキシル基数=7.0からエポキシ基数/カルボキシル基数=9.7に変わり、0mgKOH/gになったことを確認した時間が3時間反応後から5時間反応後に変わり、フェノールノボッラク型シアネート樹脂の反応率が33%から30%に変わった。
【化12】
【0073】
(4)製造例4:熱硬化性樹脂組成物(1−4)の製造
ビフェニル型エポキシ樹脂:180.0gの代わりにナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名:NC-7000L、エポキシ当量:230):226.2gを使用した点、シロキサン樹脂の配合量を120.0gから150.8gに変更した点、及びナフテン酸銅の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.24g添加する代わりにオクチル酸スズを0.07g添加した点を除いて上記熱硬化性樹脂組成物(1−1)の製造方法と同様の製造方法によって熱硬化性樹脂組成物(1−4)を得た。なお、反応の当量比がエポキシ基数/カルボキシル基数=7.0からエポキシ基数/カルボキシル基数=5.6に変わり、フェノールノボッラク型シアネート樹脂の反応率が33%から34%に変わった。
【0074】
(5)製造例5:熱硬化性樹脂組成物(1−5)の製造
ビフェニル型エポキシ樹脂:180.0gの代わりにナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名:NC-7000L、エポキシ当量:230):226.2gを使用した点、シロキサン樹脂の配合量を120.0gから150.8gに変更した点、及びナフテン酸銅の8質量%ミネラルスピリット溶液の代わりにナフテン亜鉛の8質量%ミネラルスピリット溶液を使用した点を除いて、上記熱硬化性樹脂組成物(1−1)の製造方法と同様の製造方法によって熱硬化性樹脂組成物(1−5)を得た。なお、反応の当量比がエポキシ基数/カルボキシル基数=7.0からエポキシ基数/カルボキシル基数=5.6に変わり、フェノールノボッラク型シアネート樹脂の反応率が33%から31%に変わった。
【0075】
(6)製造例6:熱硬化性樹脂組成物(1−6)の製造
ビフェニル型エポキシ樹脂:180.0gの代わりにナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名:NC-7000L、エポキシ当量:230):226.2gを使用した点、シロキサン樹脂の配合量を120.0gから150.8gに変更した点、及びナフテン酸銅の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.24g添加する代わりにオクチル酸亜鉛を0.12g添加した点を除いて、上記熱硬化性樹脂組成物(1−1)の製造方法と同様の製造方法によって熱硬化性樹脂組成物(1−6)を得た。なお、反応の当量比がエポキシ基数/カルボキシル基数=7.0からエポキシ基数/カルボキシル基数=5.6に変わり、フェノールノボッラク型シアネート樹脂の反応率が33%から31%に変わった。
【0076】
(7)製造例7:熱硬化性樹脂組成物(1−7)の製造
ビフェニル型エポキシ樹脂:180.0gの代わりにナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名NC-7000L、エポキシ当量:230):226.2gを使用した点、シロキサン樹脂の配合量を120.0gから150.8gに変更した点、及びナフテン酸銅の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.24g添加する代わりにナフテン酸コバルトの6質量%ミネラルスピリット溶液を0.48g添加した点を除いて、上記熱硬化性樹脂組成物(1−1)の製造方法と同様の製造方法によって熱硬化性樹脂組成物(1−7)を得た。なお、反応の当量比がエポキシ基数/カルボキシル基数=7.0からエポキシ基数/カルボキシル基数=5.6に変わり、フェノールノボッラク型シアネート樹脂の反応率が33%から30%に変わった。
【0077】
(8)比較製造例1:(比較1)の製造
比較製造例1では、エポキシ基を有する化合物及びシロキサン樹脂を予めエステル化反応させることなく熱硬化性樹脂組成物を製造した。
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、フェノールノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン(株)製、商品名:PT−30):240.0gと、シロキサン樹脂(信越化学工業(株)製、商品名:X-22-162A、カルボキシル基当量:865):96.0gと、ナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名:NC-7000L、エポキシ当量:230):144.0gと、シクロヘキサノン:560.0gとを投入して混合物を作製した。
【0078】
次いで、混合物を攪拌しながら混合物の温度を120℃に昇温し、樹脂固形分が溶解して混合物が均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸銅の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.48g添加し、約110℃で6時間反応を行った。その後、室温に冷却し(比較1)の溶液を得た。
【0079】
この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行った。溶出時間が約12.2分付近に出現する合成原料のフェノールノボラック型シアネート樹脂のピーク面積について、反応開始時のフェノールノボッラク型シアネート樹脂のピーク面積と比較したところ、ピーク面積の消失率が41%であった。これより、フェノールノボッラク型シアネート樹脂の反応率は41%であった。
【0080】
さらに、反応溶液を少量取り出し、薄膜形成法によりFT−IR測定を行ったところ、重合反応によって生成されるトリアジン環の波数1560cm-1付近に出現するピークを確認することができた。また、エポキシ基の挿入反応によって生成されるイソシアヌレート及びオキサゾリジノンの波数1670cm-1及び1740cm-1付近に出現するピークをそれぞれ確認することができた。その後、樹脂溶液は減圧濃縮により、樹脂分を70質量%に調整し、熱硬化性樹脂組成物(比較1)を得た。
【0081】
(9)比較製造例2:(比較2)の製造
比較製造例2では、有機金属塩の代わりにトリエチルアミンを硬化促進剤として使用して熱硬化性樹脂組成物を製造した。
ビフェニル型エポキシ樹脂:180.0gの代わりにナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名:NC-7000L、エポキシ当量:230):226.2gを使用した点、シロキサン樹脂(信越化学工業(株)製;商品名:X-22-162A、カルボキシル基当量:865)の配合量を120.0gから150.8gに変更した点、及びナフテン酸銅の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.24g添加する代わりにトリエチルアミンを21.60g添加した点を除いて、上記熱硬化性樹脂組成物(1−1)の製造方法と同様の製造方法によって熱硬化性樹脂組成物(比較2)を得た。なお、反応の当量比がエポキシ基数/カルボキシル基数=7.0からエポキシ基数/カルボキシル基数=5.6に変わり、フェノールノボッラク型シアネート樹脂の反応率が33%から35%に変わった。
【0082】
(10)比較製造例3:(比較3)の製造
比較製造例3では、有機金属塩の代わりにテトラキス(4-メチルフェニル)ボラン-テトラフェニルホスフィン錯体(TPP−MK)を硬化促進剤として使用して熱硬化性樹脂組成物を製造した。
ビフェニル型エポキシ樹脂:180.0gの代わりにナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名:NC-7000L、エポキシ当量:230):226.2gを使用した点、シロキサン樹脂(信越化学工業(株)製、商品名:X-22-162A、カルボキシル基当量:865)の配合量を120.0gから150.8gに変更した点、及びナフテン酸銅の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.24g添加する代わりにTPP−MKを19.20g添加した点を除いて、上記熱硬化性樹脂組成物(1−1)の製造方法と同様の製造方法によって熱硬化性樹脂組成物(比較3)を得た。なお、反応の当量比がエポキシ基数/カルボキシル基数=7.0からエポキシ基数/カルボキシル基数=5.6に変わり、フェノールノボッラク型シアネート樹脂の反応率が33%から34%に変わった。
【0083】
(ワニスの作製)
製造例1〜7及び比較製造例1〜3により得られ熱硬化性樹脂組成物、溶融シリカ、及びシクロヘキサノン(希釈溶剤)を、表1〜3に示した配合割合(質量部)で混合して固形分換算70質量%のワニスを調製した。実施例1〜11及び比較例1ではワニスが得られたが、比較例2及び3では、樹脂と溶融シリカとが分離し、ワニスを得ることができなかった。
【0084】
(プリプレグの作製)
厚さ0.05〜0.1mmの無機繊維基材、及び有機繊維基材に上記ワニスを含浸塗工し、160℃で10分加熱乾燥して固形分換算50質量%のプリプレグを得た。
【0085】
(積層板の作製)
このプリプレグを4枚重ねて積層体を作製し、18μmの電解銅箔を積層体の上下に配置し、圧力25kg/cm2、温度240℃のプレス条件で積層体を60分間プレスして、銅張積層板を得た。このようにして得られた積層板から作製した評価基板A〜Eを用いて、曲げ弾性率、線熱膨張係数、吸湿はんだ耐熱性、及び耐デスミア液性を評価した。評価結果を表1〜3に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
表1〜3の中の数字は、固形分の質量部により示されている。注書きは、それぞれ
*1:(株)アドマテックス製、商品名:SC-2050HNK
*2:日東紡績(株)製;#2118スタイルSガラスクロス(95μm)(GAT-7010)
*3:信越石英(株)製;#2116スタイルQガラスクロス(85μm)(SQF-2116AC)
*4:旭化成イーマテリアルズ(株)製;アラミド繊維クロス(60μm)(製品名:テクノーラ)
*5:旭化成イーマテリアルズ(株)製;芳香族ポリエステル繊維クロス(70μm)(製品名:ゼクシオン)
*6:旭化成イーマテリアルズ(株)製;ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維クロス(65μm)(製品名:ザイロン)
*7:和光純薬工業(株)製、商品名:ナフテン酸銅ミネラルスピリット溶液(銅8質量%)
*8:和光純薬工業(株)製、商品名:2−エチルヘキサン酸スズ(II)
*9:和光純薬工業(株)製、商品名:ナフテン酸亜鉛ミネラルスピリット溶液(亜鉛8質量%)
*10:和光純薬工業(株)製、商品名:2−エチルヘキサン酸亜鉛(II)
*11:和光純薬工業(株)製、商品名:ナフテン酸コバルトミネラルスピリット溶液(コバルト8質量%)
*12:日新科学(株)製ゲル化試験器使用、測定温度は160℃
*13:和光純薬工業(株)製、商品名:トリエチルアミン
*14:和光純薬工業(株)製、商品名:テトラキス(4-メチルフェニル)ボラン-テトラフェニルホスフィン錯体(TPP−MK)
【0090】
[評価結果]
表1〜3から明らかなように、比較例2及び3で得られた熱硬化性樹脂組成物は、活性化エネルギーが小さく、室温(20℃)でも硬化反応が進行するため、ワニス製造後、熱硬化性樹脂が析出し、基材にワニスを塗工することができず、プリプレグを製造できなかった。比較例1で得られた積層板は、吸湿はんだ耐熱性が悪く、デスミア液による質量減少量も大きかった。一方で、実施例1〜11で得られた積層板は、高弾性で、低熱膨張性、耐湿耐熱性、及び耐デスミア液性に優れ、さらにワニスの保存安定性にも優れる。特に、有機金属塩として、ナフテン酸銅、又はオクチル酸スズを含む熱硬化性樹脂組成物は、ワニスの保存安定性にも優れる上、185℃のプレス条件でも高弾性な積層板が得られることが判る。