(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
合成ゴム等の主原料であるイソプレンは、たとえば、エチレンセンターのエチレンクラッカーより排出されるC5留分中に含まれるイソプレンを抽出蒸留することによって得られる。
【0003】
C5留分中に含まれるイソプレンを抽出蒸留するプロセスにおいては、C5留分からシクロペンタジエンを二量化(ジシクロペンタジエンとなる)して除去した後、ペンタン、ペンテン類等の軽質分、およびペンタジエン類(ジシクロペンタジエンおよび1,3−ペンタジエンを含む)、アセチレン類等の重質分をそれぞれ2つの蒸留塔で除去し、さらに次の抽出蒸留塔でジオレフィン類(1,3−ペンタジエンを含む)および残りのアセチレン類を除去した後、残留分を蒸留することで、塔底より効率よくイソプレンを得ることができる。
【0004】
この際に、イソプレンを抽出蒸留により抽出した際の抽出残油として、残留分が得られるが、該残留分は、エチレンセンターに返送され、主としてガソリン基材やエチレンクラッカーの原料として用いられている。その一方で、このような残留分中には、イソアミレン(2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、3−メチル−1−ブテン)が含まれており、イソアミレンは、脱水素化することによってイソプレンを与えるものであるが、イソプレンの合成原料としては利用されず、上述したように、エチレンセンターに返送され、ガソリン基材やエチレンクラッカーの原料として消費されているのが実状である。これは、イソアミレンを脱水素化することによりイソプレンを得る方法における、イソプレンの収率が低いことによると考えられる。
【0005】
たとえば、特許文献1では、プロピレンおよびイソブテンを不均化させ、不均化させた流れからイソアミレンを分離し、分離したイソアミレンを脱水素化させることにより、イソプレンに変換できる点が開示されている。しかしながら、この特許文献1には、イソアミレンを脱水素化させる際に用いる触媒や、脱水素化反応の条件等についての開示がされておらず、そのため、この特許文献1に記載された技術では、イソアミレンを原料として、イソプレンを収率良く製造することは困難であった。
【0006】
一方、特許文献2には、酸化亜鉛および炭酸カルシウムを含有する触媒を用いて、第二環式アルコールから環式ケトンを製造する技術が開示されている。また、特許文献3には、酸化亜鉛および/または酸化インジウムとシリカからなる触媒を用いて、メタノールからホルムアルデヒドを製造する技術が開示されている。しかしながら、これら特許文献2,3の技術は、アルコールを酸化させ、これによりケトンやアルデヒドを得る技術であり、上述したイソアミレンの脱水素化反応とは、反応の対象となる化合物および反応機構が全く異なるものであり、そのため、用いる触媒に要求される特性も異なるものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の製造方法は、イソアミレンを脱水素反応させることで、イソプレンを製造する方法であって、前記脱水素反応を、不活性ガス雰囲気下で、酸化亜鉛を主成分として含有する固体触媒を用いて行うことを特徴とするイソプレンの製造方法である。
なお、「酸化亜鉛を主成分として含有する」とは、酸化亜鉛を50重量%以上含有することを意味する。
【0014】
本発明において脱水素反応に用いるイソアミレンは、炭素数5の分岐状炭化水素である、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、および3−メチル−1−ブテンから選ばれる炭化水素化合物またはそれらの2種以上の混合物である。
【0015】
本発明で用いるイソアミレンは、たとえば、ナフサを熱分解してエチレンを生産する際に副生する、炭素数5の炭化水素を主成分とするC5留分から、少なくともイソプレンの一部を抽出蒸留により分離した後に、抽出残油として得られる残留分中に含まれているものを用いてもよい。なお、このようなイソプレンの抽出残油として得られる残留分は、本発明で用いるイソアミレンを構成する、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、および3−メチル−1−ブテンに加えて、たとえば、n−ペンタン、1−ペンテン、および2−ペンテンなどの炭素数5の直鎖状炭化水素なども含むものである。そのため、本発明においては、このような残留分中に含まれているイソアミレンを用い、これを脱水素反応させることにより、イソプレンを得る際には、イソアミレンを構成する、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、および3−メチル−1−ブテンに加えて、たとえば、n−ペンタン、1−ペンテン、および2−ペンテンなどの炭素数5の直鎖状炭化水素などを含むものを用いることとなる。ただし、イソアミレンを構成する、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、および3−メチル−1−ブテン以外の成分の含有割合が高すぎると、イソプレンの製造効率が低くなってしまう場合があるため、このような場合には、前処理として、分離膜などを用いて、炭素数5の直鎖状炭化水素などを分離するための処理を行い、残留分中の、イソアミレンを構成する、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、および3−メチル−1−ブテンを濃縮してもよい。
【0016】
なお、このような残留分中に含まれているイソアミレンを用いる場合における、脱水素反応に用いる残留分中における、イソアミレンを構成する、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、および3−メチル−1−ブテン合計の含有割合は、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜100重量%、特に好ましくは50〜100重量%である。また、イソアミレンを構成する、2−メチル−1−ブテンと、2−メチル−2−ブテンと、3−メチル−1−ブテンとの割合は、特に限定されず、たとえば、用いる残留分中における割合に依存したものとなる。
【0017】
本発明の製造方法で用いる固体触媒は、酸化亜鉛(ZnO)を主成分として含有する固体触媒である。本発明で用いる固体触媒は、酸化亜鉛を主成分として含有するものであればよく、特に限定されないが、酸化亜鉛のみからなるもの(すなわち、酸化亜鉛100重量%であるもの)であってもよいし、あるいは、酸化亜鉛以外の成分を含有するものであってもよい。酸化亜鉛以外の成分としては、たとえば、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウムの他、水などの不可避成分などが挙げられる。
【0018】
本発明の製造方法で用いる固体触媒が、酸化亜鉛以外の成分を含有するものである場合における、固体触媒中の酸化亜鉛の含有割合は、好ましくは65重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上である。酸化亜鉛の含有割合が低すぎると、高い収率でのイソプレンの製造が困難となる場合がある。
【0019】
本発明の製造方法で用いる固体触媒としては、上述したように、酸化亜鉛のみからなるものの他、酸化亜鉛以外の成分を含有するものを用いることができるが、これらのなかでも、酸化亜鉛以外の成分を含有するものを用いることが好ましく、脱水素反応におけるイソプレンの収率をより高めることができるという点より、酸化亜鉛を主成分とし、酸化アルミニウムおよび酸化カルシウムを含有するものを用いることが特に好ましい。固体触媒として、酸化亜鉛を主成分とし、酸化アルミニウムおよび酸化カルシウムを含有するものを用いる場合における、酸化亜鉛の含有割合は、好ましくは65〜97重量%、より好ましくは80〜97重量%、酸化アルミニウムの含有割合は、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%、酸化カルシウムの含有割合は、好ましくは2〜10重量%、より好ましくは2〜5重量%である。また、上記酸化亜鉛、上記酸化アルミニウムおよび上記酸化カルシウムを除く成分の合計含有割合は、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0020】
また、本発明で用いる固体触媒の形状は特に限定されず、一般的には、ペレット状、球状、円柱状、リング状等である。さらに、固体触媒の粒径も特に限定されず、脱水素反応に用いる反応管の内径等によって最適な値を選べばよいが、脱水素反応を効率よく進行させるという観点より、平均粒径が、好ましくは0.5〜20mm、より好ましくは0.8〜10mmである。また、固体触媒としては、予め破砕を行い、分級することで、所望の平均粒径に調整したものを用いてもよい。
【0021】
本発明の製造方法で用いる固体触媒の製造方法としては、特に限定されないが、たとえば、塩基性炭酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、水酸化亜鉛などの亜鉛含有化合物を、必要に応じて用いられるアルミ含有化合物やカルシウム含有化合物とともに、加熱分解する方法や、脱水温度で仮焼する方法などが挙げられる。
【0022】
本発明における、脱水素反応は、たとえば、上記した固体触媒を充填した反応管に、不活性ガス雰囲気下で、脱水素反応させるイソアミレンを気体状態で導入させることにより行うことができる。
【0023】
本発明において、脱水素反応を行う際には、上記した固体触媒に含有されている水分を除去するために、固体触媒について予め乾燥処理を行うことが好ましい。固体触媒について予め乾燥処理を行うことにより、固体触媒中に含有される水分量を低減することができ、これにより、脱水素反応におけるイソプレンの収率をより高めることができる。
【0024】
乾燥処理条件としては、特に限定されないが、窒素ガスや乾燥空気などの乾燥ガスを供給しながら、好ましくは100〜600℃、より好ましくは400〜550℃に加熱する方法などが挙げられる。なお、この際における、乾燥ガスの供給速度(乾燥ガスの1時間当りの総流量を固体触媒の充填容積(空筒基準)で除した値。以下、「GHSV」という。)は、特に限定されないが、好ましくは200〜2000h
-1であり、より好ましくは500〜1500h
-1である。また、乾燥時間は、特に限定されないが、好ましくは10分〜2時間、より好ましくは15分〜1時間である。なお、乾燥処理後の固体触媒中に含有される水分量としては、特に限定されないが、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
【0025】
本発明の製造方法において、固体触媒を充填した反応管に、不活性ガス雰囲気下で、イソアミレンを気体状態で導入する方法としては、イソアミレン中に含まれる各成分が気化する温度(たとえば、180〜220℃)に、イソアミレンを加熱し、不活性ガスからなるスイープガス(たとえば、窒素ガスなど)とともに、固体触媒を充填した反応管に導入する方法などが挙げられる。
【0026】
固体触媒を充填した反応管に、イソアミレンおよび不活性ガスを含むガスを導入する際の空間速度(イソアミレンおよび不活性ガスを含むガスの1時間当りの総流量を固体触媒の充填容積(空筒基準)で除した値。以下、「GHSV」という。)は、特に限定されないが、好ましくは330〜2000h
-1であり、より好ましくは600〜1600h
-1である。
【0027】
また、脱水素反応させる際における温度は、好ましくは500〜620℃、より好ましくは530〜600℃、さらに好ましくは540〜570℃である。本発明においては、脱水素反応の触媒として、酸化亜鉛を主成分として含有する固体触媒を用いることで、上記のように比較的低い温度にて、高い効率で脱水素反応を進行させることができるものであり、加熱によるエネルギー消費を低く抑えることができ、これよりイソプレンの製造効率を高めることができるものである。また、上記のように比較的低い温度にて脱水素反応を行うことで、クラッキング反応を抑制することができ、これにより、未反応物をイソプレンを得るための原料として再利用することができる。一方、脱水素反応させる際の温度が高すぎると、クラッキング反応が顕著となり、未反応物をイソプレンを得るための原料として再利用することが困難となる傾向にある。
【0028】
脱水素反応の圧力は、ゲージ圧で、上限は、好ましくは0.05MPa、より好ましくは0.01MPaであり、低圧であるほど望ましい。脱水素反応は、イソアミレンから水素とイソプレンを生成する平衡反応であるため、低圧であるほどイソプレンの収率が向上する。一方、下限は、特に限定されないが、生産コストの観点より、ゲージ圧で、好ましくは0MPaである。
【0029】
脱水素反応に用いる反応管としては、特に限定されないが、内径は、好ましくは6〜100mm、より好ましくは10〜70mmであり、反応管の長さは、好ましくは0.15〜2.5m、より好ましくは0.2〜2.0mである。
【0030】
本発明の製造方法によれば、脱水素反応の触媒として、酸化亜鉛を主成分として含有する固体触媒を用い、かつ、脱水素反応を不活性ガス雰囲気下で行うため、高い収率にてイソプレンを製造することができる。特に、本発明によれば、脱水素反応の触媒として、酸化亜鉛を主成分として含有する固体触媒を用いることで、イソプレン以外の炭化水素化合物への転化反応を低く抑えながら、イソプレンへの転化率を高めることができるため、これにより、極めて良好にイソプレンを製造することができるものである。すなわち、たとえば、1−ペンテンや2−ペンテンなどのイソプレン以外の炭化水素化合物への転化率が高いと、このような1−ペンテンや2−ペンテンなどは、イソプレンを得るための原料として再利用することができないため、結果として、イソプレンの収率を大きく悪化させてしまうこととなる。これに対して、本発明の製造方法によれば、このような1−ペンテンや2−ペンテンなどのイソプレン以外の炭化水素化合物への転化率を低く抑えることができるため、このような問題を有効に解決できるものである。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0032】
(実施例1)
(触媒の乾燥処理)
酸化亜鉛触媒ペレット(高さ8.5mm、直径4.6mm、酸化亜鉛:88%、酸化アルミニウム:4%、酸化カルシウム:3%、水を含むその他の成分:5%)を乳鉢で破砕し、ふるいにかけることで、粒子径が850μm〜2mmの大きさのものを分取することで、酸化亜鉛触媒粒子を得た。そして、ジャケット式ステンレス鋼製反応管(長さ:250mm、内径:23.2mm)に、得られた酸化亜鉛触媒粒子14.1mlを充填し、供給速度:GHSV=1000h
-1で窒素の導入を開始し、反応管の温度を450℃まで昇温した後、窒素導入下において、450℃、20分間の条件で乾燥処理を行った。乾燥処理後の固体触媒中に含有される水分量は、0.1重量%以下であった。
【0033】
(2−メチル−2−ブテンの脱水素反応)
2−メチル−2ブテンを送液ポンプにて1.7mmol/分で、スイープガスとしての窒素を11.6mmol/分で、それぞれ、180℃に加熱したステンレス鋼製気化管(長さ:250mm、内径23.2mm)に供給し、2−メチル−2ブテンを気化させることで、2−メチル−2ブテンと窒素との混合ガスとし、この混合ガスを、550℃に加熱した反応管(乾燥処理を行った酸化亜鉛触媒粒子が充填されたステンレス鋼製反応管(長さ:250mm、内径:23.2mm))に、供給速度:GHSV=1265h
-1、ゲージ圧にて反応圧力0.01MPa以下で導入することで、2−メチル−2−ブテンの脱水素反応を行った。そして、反応管出口ガスから得られた脱水素反応後のガスを熱交換型の冷却器で冷却し、ガス状態にて、熱伝導性検出器付きガスクロマト装置(島津製作所製)および水素炎イオン検出器付きガスクロマト装置(島津製作所製)を用いて分析を行い、各ガスクロマト装置で得られた各成分の面積比率より、脱水素反応後のガス中に含まれる成分の組成割合(モル分率)を求めた。なお、組成割合を求めるにあたっては、あらかじめ、窒素、原料および脱水素化物を構成する各成分の(モル量/ピーク面積)の検量線を作成した。そして、得られた組成割合より、下記式(1)に従い、原料転化率を、下記式(2)に従い、イソプレン収率を、下記式(3)に従い、イソプレン選択率を、それぞれ求めた。結果を表1に示す。
原料転化率(モル%)=100×(反応前原料モル量−反応後原料モル量)/反応前原料モル量 ・・・(1)
イソプレン収率(モル%)=100×(生成イソプレンモル量/反応前原料モル量) ・・・(2)
イソプレン選択率(モル%)=100×(イソプレン収率/原料転化率) ・・・(3)
【0034】
なお、本実施例においては、熱伝導性検出器付きガスクロマト装置による分析においては、パックドカラムとしてSHINCARBON ST 50/80(6.0m×3.0mm、信和化工社製)を用い、試料注入量:1.5mL、注入温度:150℃、検出器温度:200℃、キャリアガス:アルゴン、および、キャリアガス流量:40ml/minとし、オーブン温度:40℃の条件で加熱を開始し、12分保持し、次いで200℃まで10℃/minの速度で昇温させ、12分保持することにより行った。なお、熱伝導性検出器付きガスクロマト装置は、無機ガス類の分析を行うために用いた。
【0035】
また、水素炎イオン検出器付きガスクロマト装置による分析においては、キャピラリーとしてHP−1(60m×0.25μm×1.00μm、Agilent Technologies社製)を用い、試料注入量:1.0mL、スプリット比:1/50、注入温度:140℃、検出器温度:260℃、キャリアガス:ヘリウム、および、キャリアガス流量:56.3ml/minとし、オーブン温度:40℃の条件で加熱を開始し、15分保持し、次いで250℃まで20℃/minの速度で昇温させ、5分保持することにより行った。なお、水素炎イオン検出器付きガスクロマト装置は、炭素化合物の分析を行うために用いた。
【0036】
(実施例2)
(2−メチル−1−ブテンの脱水素反応)
2−メチル−2−ブテンに代えて、2−メチル−1−ブテンを用いた以外は、実施例1と同様にして、2−メチル−1−ブテンの脱水素反応を行い、同様にして、脱水素反応後のガス中に含まれる成分の組成割合を求めた。そして、得られた組成割合より、実施例1と同様にして、原料転化率、イソプレン収率、およびイソプレン選択率をそれぞれ求めた。結果を表1に示す。
【0037】
(実施例3)
(3−メチル−1−ブテンの脱水素反応)
2−メチル−2−ブテンに代えて、3−メチル−1−ブテンを用いた以外は、実施例1と同様にして、3−メチル−1−ブテンの脱水素反応を行い、同様にして、脱水素反応後のガス中に含まれる成分の組成割合を求めた。そして、得られた組成割合より、実施例1と同様にして、原料転化率、イソプレン収率、およびイソプレン選択率をそれぞれ求めた。結果を表1に示す。
【0038】
(比較例1)
(触媒の乾燥処理)
γ−アルミナ触媒ペレット(高さ3.1mm×直径3.1mm、酸化アルミニウム(γ−アルミナ):95%、水を含むその他の成分:5%)を乳鉢で破砕し、ふるいにかけることで、粒子径が850μm〜2mmの大きさのものを分取することで、γ−アルミナ触媒粒子を得た。そして、ジャケット式ステンレス鋼製反応管(長さ:250mm、内径:23.2mm)に、得られたγ−アルミナ触媒粒子14.1ml充填し、供給速度:GHSV=1000h
-1で窒素の導入を開始し、反応管の温度を450℃まで昇温した後、窒素導入下において、450℃、20分間の条件で乾燥処理を行った。
【0039】
(2−メチル−2−ブテンの脱水素反応)
反応管として、乾燥処理を行ったγ−アルミナ触媒粒子が充填されたステンレス鋼製反応管を用いた以外は、実施例1と同様にして、2−メチル−2−ブテンの脱水素反応を行い、同様にして、脱水素反応後のガス中に含まれる成分の組成割合を求めた。そして、得られた組成割合より、実施例1と同様にして、原料転化率、イソプレン収率、およびイソプレン選択率をそれぞれ求めた。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
表1より、脱水素反応の触媒として、酸化亜鉛を主成分として含有する固体触媒を用い、かつ、脱水素反応を不活性ガス雰囲気下で行った場合には、転化化合物中のイソプレン選択率が高く、また、イソプレン収率も高くなる結果となった(実施例1〜3)。特に、この傾向は、原料として、イソアミレンを構成する、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、および3−メチル−1−ブテンのいずれを用いた場合のいずれにおいても同様であった。
これに対し、γ−アルミナ触媒を用いた比較例1においては、転化化合物中のイソプレン選択率が低く、イソプレン収率に劣るものであった。
なお、本実施例においては、イソアミレンを構成する、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、および3−メチル−1−ブテンから選ばれる1種の化合物を用いたが、炭素数5の炭化水素を主成分とするC5留分から、少なくともイソプレンの一部を抽出蒸留により分離した後に、抽出残油として得られる残留分中に含まれているものを用いても、同様の結果が得られるものと考えられる。
【0043】
また、表2に、実施例1および比較例1における、各ガスクロマト装置で得られた各成分の面積比率より求めた、脱水素反応後のガス中に含まれる成分の組成割合を示す。表2より、比較例1においては、イソプレンの割合が低いことに加え、イソプレンや、イソアミレンを構成する、3−メチル−1ブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ブテン以外の化合物の割合が高く、イソプレンを得るための原料として再利用として適さないものであった。これに対し、実施例1においては、イソプレンの割合が高いことに加え、イソプレンや、イソアミレンを構成する、3−メチル−1ブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ブテン以外の化合物の割合が低く、再利用にも適したものであった。なお、表2中においては、実施例1および比較例1の結果のみを示したが、実施例2,3についても、実施例1と同様の傾向であった。