特許第6217754号(P6217754)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6217754燃料電池用電極触媒、その製造方法、および燃料電池用電極触媒を用いた膜電極接合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6217754
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】燃料電池用電極触媒、その製造方法、および燃料電池用電極触媒を用いた膜電極接合体
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/90 20060101AFI20171016BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20171016BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20171016BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20171016BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20171016BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20171016BHJP
   B01J 27/24 20060101ALI20171016BHJP
【FI】
   H01M4/90 X
   H01M8/10
   H01M4/88 K
   H01M4/92
   B01J37/08
   B01J37/16
   B01J27/24 M
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-538724(P2015-538724)
(86)(22)【出願日】2013年9月27日
(86)【国際出願番号】JP2013076183
(87)【国際公開番号】WO2015045083
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2016年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 大剛
(72)【発明者】
【氏名】水上 貴彰
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−51214(JP,A)
【文献】 特開2011−195351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/90
B01J 27/24
B01J 37/08
B01J 37/16
H01M 4/88
H01M 4/92
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する担体と、前記担体の表面に形成された窒素含有カーボン触媒とを備えた燃料電池用カソード電極触媒において、
前記窒素含有カーボン触媒中の炭素に対する水素の比率が、2.8×10−6よりも大きく1.2×10−5よりも小さいことを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒。
【請求項2】
導電性を有する担体と、触媒材料の前駆体となる樹脂、窒素源、および、鉄を含む金属塩と、を混合し、焼成、炭素化し、さらにその後、還元処理を行う、請求項1に記載の燃料電池用カソード電極触媒の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、前記還元処理の処理温度が400℃未満であることを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒の製造方法。
【請求項4】
固体高分子電解質膜の一方の表面にアノード電極が形成され、他方の面にカソード電極が形成された膜電極接合体において、
前記カソード電極の触媒は、導電性を有する担体の表面に形成された窒素含有カーボン触媒であり、
前記窒素含有カーボン触媒中の炭素に対する水素の比率が、2.8×10−6よりも大きく1.2×10−5よりも小さいことを特徴とする膜電極接合体。
【請求項5】
請求項4において、前記アノード電極の触媒がパラジウムと酸化ルテニウムを含むことを特徴とする膜電極接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池用電極触媒、その製造方法、および燃料電池用電極触媒を用いた膜電極接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、脱石油化に向け、燃料電池を始め、リチウムイオン電池、バイオ燃料、太陽電池などの研究開発が活発に行われている。イオン伝導性の固体高分子電解質膜を使用する燃料電池には、メタノールをアノード極燃料とする直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)と、水素ガスをアノード極燃料とする固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)とがある。
【0003】
DMFCおよびPEFCは、比較的低温作動が可能で、発電システムも簡便で小型化が可能なことから、施設の非常用電源や、軍事、業務用の携帯機器の非常電源、ノートパソコンや携帯音楽プレーヤー、携帯電話などの充電器として期待が持たれている。
【0004】
DMFCでは燃料にメタノール、また、PEFCでは水素を燃料に使用し、アノード触媒層/プロトン導電膜/カソード触媒層から構成される膜電極接合体を導電性のガス拡散層で挟み、アノード極およびカソード極に設けた集電板により外部回路と繋いだ電池システムである。DMFCのアノード触媒層側に液体燃料であるメタノールを供給すると、下記式(1)に示す化学反応により、メタノールが酸化されて二酸化炭素(CO2)に変化し、プロトン(H+)と電子(e-)とが発生する。
CH3OH + H2O → CO2 + 6H+ + 6e- (1)
【0005】
この反応によって発生したプロトンと電子とは、カソード触媒層に供給される酸素ガスと下記式(2)の反応により、水(H2O)を生成する。
2 + 4H+ + 4e- → 2H2O (2)
【0006】
従って、電池全体として下記式(3)の反応が進行し、この際に発生する電子を外部回路で取り出して、電気エネルギーを得ることができる。
CH3OH + 3/2O2 → CO2 + 2H2O (3)
【0007】
また、現在、実用触媒としてDMFCおよびPEFCの電極には、白金系触媒が使用されているが、レアメタルであり、かつ非常に高価であることから、白金使用量を削減することが必須の課題となっている。
【0008】
こうしたことから、燃料電池のコスト削減には、白金を用いない安価な触媒の開発が求められている。これに対して、窒素をドープしたカーボンは高い酸素還元活性を有することが知られており、白金代替触媒として注目されている。例えば、特許文献1には、カーボン材料に含窒素有機化合物を共有結合させた含窒素有機基置換カーボン材料を少なくとも一種含む有機材料を焼成して含窒素カーボンアロイを形成して触媒とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−195351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の窒素含有カーボン触媒の酸素還元活性は、白金触媒に比べて依然として低く、更なる酸素還元活性の向上が望まれている。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高価な白金を用いず、酸素還元活性に優れた燃料電池用電極触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の燃料電池用電極触媒は、導電性を有する担体と、前記担体の表面に形成された窒素含有カーボン触媒とを備え、前記窒素含有カーボン触媒中の炭素に対する水素の比率(水素/炭素)が、2.8×10-6よりも大きく1.2×10-5よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、高い酸素還元活性を有する燃料電池用電極触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の燃料電池用電極触媒の構成を示す模式図。
図2】膜電極接合体の構成を示す模式図。
図3】窒素含有炭素触媒中の炭素に対する水素の比率と酸素還元活性の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の燃料電池用電極触媒の実施形態を説明する。上述の通り、窒素を炭素材料にドープさせることにより酸素還元活性を有する非白金系の燃料電池用電極触媒を得ることができる。しかしながら、従来の窒素含有カーボン触媒の酸素還元活性は白金触媒に比べて著しく低いため、所望の性能を得ることができない。
【0016】
これに対して、本発明者らが鋭意検討した結果、窒素含有カーボン触媒中の炭素に対する水素の比率が、2.8×10−6よりも大きく1.2×10−5よりも小さいことにより高い酸素還元活性を有する窒素含有触媒を提供することができる。
【0017】
窒素含有カーボン触媒は、炭素がSP2混成軌道により化学結合し、2次元に広がった六角網面構造を持つ炭素の集合体が存在し、この六角網面構造が弱い相互作用により積層され、構造がある程度乱れた乱層構造のグラファイト構造を有している。この六角網面構造の水素終端されたエッジが酸素還元反応の活性点と考えられており、このエッジ近傍に窒素原子が導入されることにより、高い酸素還元活性を示すとされている。
【0018】
本発明の窒素含有カーボン触媒中の炭素に対する水素の比率の算出は、昇温脱離ガス分析(TDS)によって測定された窒素含有カーボン触媒の水素終端されたエッジからの水素の脱離量と、さらに後述するX線光電子分光(XPS)によって評価した炭素含有量を用い、水素脱離量と炭素含有量の比から求められる。
【0019】
窒素含有カーボン触媒に含まれる炭素、酸素および窒素含有量は、X線光電子分光(XPS)によって評価することができ、特に窒素含有量は窒素の1s軌道の結合エネルギー範囲が398.5±1.0eVから401±1.0eVで測定されたピークの強度から求められる。
【0020】
本実施形態に係る窒素含有カーボン触媒は、触媒材料の前駆体となる樹脂、窒素源、および、鉄を含む金属塩を焼成、炭素化し、その後、還元雰囲気下、400℃未満で熱処理を施し、窒素含有カーボンの活性点と考えられるエッジを水素終端することによって製造することができる。窒素含有カーボン触媒は単体では、凝集によって活性サイトが埋没して高い酸素還元活性が得られない場合があるため、導電性を有する担体の表面に窒素含有カーボン触媒を担持して比表面積を増加させることが好ましい。これによって、有効な活性サイトが増加し酸素還元活性を向上できる。この場合、触媒材料の前駆体となる樹脂、窒素源、および、鉄を含む金属塩に更に担体を混合して焼成・炭素化することにより、担体の表面に窒素含有カーボン触媒を担持された構造の触媒を形成できる。なお、上記手法により得られた焼成物から鉄を除去することが好ましい。この鉄を除去することにより、炭素化物に活性サイトが形成され、酸素還元活性が向上する。鉄の除去方法は特に制限はなく、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などの酸性溶液で洗浄する方法などが挙げられる。なお、完全に鉄を除去する必要はなく、触媒中に一部鉄が残っていてもよい。
【0021】
触媒材料の前駆体となる樹脂としては、例えば、担体や金属塩などと均一に混合しやすいことから、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂などが好ましく、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの樹脂に限定されるものではなく、担体や金属塩と均一に混合できるものであれば触媒材料の前駆体として使用できる。
【0022】
窒素源は、グラファイト構造中に窒素を導入するためのものであり、例えば、フェナントロリン錯体、フタロシアニン錯体、ポルフィリン錯体、アセトニトリル、エチレンジアミン、トリメチルアミン、ピリジン、メラミンなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
鉄を含む金属塩は六角網面構造のエッジや欠陥を形成するために添加され、例えば、酢酸鉄、クエン酸鉄、塩化鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、ピロリン酸鉄、アクリル酸鉄、水酸化鉄、りん酸鉄、過塩素酸鉄、硫酸アンモニウム鉄、グルコン酸鉄、鉄アセチルアセトネート、鉄フタロシアニン、蓚酸鉄、蓚酸アンモニウム鉄等を用いることができる。鉄を含む金属塩の窒素含有カーボン触媒中の全重量あたりの割合は、0.1重量%から10.0重量%であることが好ましく、1.0重量%から5.0重量%であることがより好ましい。この範囲にすることで、より高い酸素還元活性を有する窒素含有カーボン触媒を得ることができる。
【0024】
導電性を有する担体としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブなどが好適であり、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。担体の比表面積は、燃料電池用触媒全体の比表面積を大きくして、その活性を良好に高める観点から、200m2/g以上であることが好ましく、250m2/g以上であることがより好ましい。また、燃料電池用触媒全体の比表面積を制限して、その活性を良好に高める観点から、担体の比表面積は、1200m2/g以下であることが好ましく、800m2/g以下であることがより好ましい。
【0025】
前駆体となる樹脂、窒素源、金属塩は溶剤に溶解または分散させて混合され、焼成される。このような溶剤には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、キシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類などを使用することができる。
【0026】
前述の窒素含有カーボン触媒前駆体の焼成、炭素化時の焼成雰囲気は、アルゴンガス、窒素ガス、アンモニアガスのうち、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用して混合してもよい。
【0027】
炭素化後の還元処理のガス雰囲気としては、水素ガスが好ましく、アルゴンガス、窒素ガス、アンモニアガスと混合しても良く、水素ガスに混合するガスとしては、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用して混合してもよい。その際の水素の混合割合としては50%以下が望ましい。さらに、還元処理の処理温度は、エッジに結合しているフェノール基、カルボキシル基、キノン基などを脱離させ水素終端させることが目的であるため高いことが望ましいが、400℃以上であるとエッジ近傍に導入されている窒素が脱離することで窒素含有量が低下し、酸素還元活性が低下してしまうことから、400℃よりも低いことが望ましい。
【0028】
窒素含有カーボン触媒に含まれる窒素量は、できるだけ多いことが望ましいが、カーボン中に含まれる窒素の含有率が、20at.%を超えると、カーボンの導電性を担うSP2構造に乱れが生じ、導電性が低いSP3構造に変化してしまう。この導電性の低下によって、窒素ドープカーボン触媒の酸素還元活性が低下してしまうことから、窒素の含有率は、20at.%以下が望ましい。
【0029】
上記手法により形成される窒素含有カーボン触媒の水素脱離量および窒素の含有量は、樹脂、窒素源の材料の種類や混合比率、焼成条件によって調整することができる。
【0030】
本実施形態の燃料電池用電極触媒の構成を示す模式図を図1に示す。上記手法により形成された燃料電池用電極触媒は、担体11の表面を覆うように窒素含有カーボン触媒12の層が担持された構造を有する。窒素含有カーボン触媒12の担持の形態としては、個々の担体11の表面を覆うよう担持される形態のほか、図1に示したように複数の担体11が凝集した凝集体の表面を窒素含有カーボン触媒12で覆った形態でもよい。また、担体11の表面が窒素含有カーボン触媒12で全て覆われている必要はなく、担体11の一部の表面が露出していてもよい。
【0031】
図2に固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体の模式図を示す。膜電極接合体は、イオン伝導性を有する固体高分子電解質膜21の一方の表面に形成されたアノード電極22と、他方の表面に形成されたカソード電極23で構成される。このような膜電極接合体のカソード電極の触媒材料として、本実施形態の燃料電池用電極触媒が適用される。
【0032】
一方、アノード電極の触媒には公知の触媒を用いることができ、白金,金,パラジウム,イリジウム,ロジウム,ルテニウム,鉄,コバルト,ニッケル等から選ばれる1種以上を用いることができる。触媒コストを低減する観点からは、酸化活性に優れたパラジウムと酸化ルテニウムを複合した触媒を用いることが好ましい。
【0033】
このように、カソード電極に本実施形態の窒素含有カーボン触媒を用い、アノード電極にパラジウムと酸化ルテニウムを複合した触媒を用いることにより、高価な白金を用いることなく低コストで性能に優れた膜電極接合体とすることができる。
【0034】
本実施形態の膜電極接合体は、水素を燃料とする固体子分子型燃料電池(PEFC)、メタノールを燃料とする直接メタノール型燃料電池(DMFC)に採用することができ、燃料電池の構成や構造は限定されるものではなく公知の燃料電池に適用することができる。
【0035】
以下に本発明の好適な実施の形態ついて詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
エタノール中に炭素系触媒前駆体であるフェノール樹脂:0.5gを分散させた溶液に、酢酸鉄:0.002モルを添加した。次に、窒素源として1,10フェナントロリンを0.006モル添加し攪拌した。この混合溶液を減圧乾燥し、担体であるカーボンブラック(ライオン社製ケッチェンブラック:EC300J):2.0gを加え、乳鉢中で均一に混合した。この混合物を均一に石英ボートに入れ、管状電気炉へ投入した。この管状電気炉内にアルゴンガスを100 ml/min.の速度で流入させ、不活性雰囲気にした状態で、800 ℃まで昇温し、800℃で1時間保持した後、冷却した。次に、2段目の焼成として得られた焼成物をアルゴンガスに3%水素ガスを混合した混合ガスを100 ml/min.の速度で流入させ、還元雰囲気にした状態で、100 ℃まで昇温し、100℃で1時間保持した後、冷却した。得られた次に得られた焼成物を3mol/l濃度の塩酸水溶液中で煮沸することで余分な金属成分を除去した後、ろ過、洗浄、乾燥して、窒素含有カーボン触媒を得た。
(実施例2)
2段目の焼成温度を200℃に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で窒素含有カーボン触媒を得た。
(実施例3)
2段目の焼成温度を300℃に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で窒素含有カーボン触媒を得た。
(比較例1)
2段目の焼成を実施しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で窒素含有カーボン触媒を得た。
(比較例2)
2段目の焼成温度を400℃に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で窒素含有カーボン触媒を得た。
(比較例3)
2段目の焼成温度を500℃に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で窒素含有カーボン触媒を得た。
【0036】
実施例1〜3および比較例1〜3で得られた窒素含有カーボン触媒について標準的な3電極セルを組み、それらの酸素還元活性を回転ディスク電極法により評価した。
【0037】
まず、純水中に分散させた窒素含有カーボン触媒をマイクロピペットで20μl取り、これを回転ディスク用グラッシーカーボン電極上に塗布、乾燥した後、この上にイオン伝導性ポリマー分散液を5μl塗布し乾燥したものを作用極とした。また、対極には白金線、参照極には、可逆水素電極(RHE)電極を使用し、3電極セルを構成した。
【0038】
各窒素含有カーボン触媒の酸素還元活性を評価するため、上記の3電極セルを窒素飽和下の0.5mmol/l硫酸水溶液中で0Vから1.2Vの電位サイクルを10サイクル行い、触媒表面を洗浄した。次に、作用極を電極回転数1600rpmで回転させつつ、0Vから1.1Vの電位サイクルを1サイクル行い、バックグランド電流を測定した。その後、飽和ガスを窒素から酸素に変え、酸素を飽和させた状態で、作用極を電極回転数1600rpmで回転させつつ、0Vから1.1Vの電位サイクルを1サイクル行い、窒素含有カーボン触媒の酸素還元電流を測定した。測定した酸素還元電流からバックグランド電流を除し、0.7 V時の電流値を比較することで、酸素還元活性を評価した。
【0039】
また、最も酸素還元活性が高かった実施例2の酸素還元電流値を1.0とし、実施例および比較例の酸素還元活性を比較ならびに評価した。
【0040】
また、水素の定量に用いた昇温脱離ガス分析(TDS)の測定条件は、加熱前ステージ温度 50℃、昇温速度 10℃/min、加熱温度1250℃2h保持、加熱開始時圧力 2.0×10-7Pa検出器:四重極質量分析計、検出器印加電圧1000V、ステージ材質:SiC皿とした。
【0041】
また、窒素含有カーボン触媒中の炭素、酸素および窒素の含有量の測定は、X線光電子分光(XPS)を用いて評価した。XPSの測定は、X線源:モノクロAl(管電圧1.3kV,管電流1.3mA)、レンズ条件:HYBRID(分析面積:600×1000μm口)、分解能:Pass energy:40、走査速度:20eV/min(0.1eVステップ)、スペクトル校正:炭素1sピークで校正の条件で行った。
【0042】
図3に窒素含有カーボン触媒の酸素還元活性と窒素含有カーボン触媒中の炭素に対する水素の比率の関係、また、表1に各窒素含有カーボン触媒の酸素還元活性値、窒素含有カーボン触媒中の炭素に対する水素の比率、炭素、酸素、窒素それぞれの含有量、昇温脱離ガス分析による水素脱離量を示す。なお、酸素還元活性の値は最も活性が高かった実施例2を1.0として相対値で示している。
【0043】
【表1】
【0044】
ここで、窒素含有カーボン触媒の酸素還元活性の相対値が0.2よりも低いと、電極触媒として用いたときに稼動させる電池電圧で所望の電流値が取れないため、電圧が低下してしまう。所望の電流値を得るためには電極に使用する触媒量を増やす必要が生じるが、触媒量を増やすと電極厚みが増大することで抵抗が高くなり、白金触媒を用いた電池と同等の出力性能を得ることができない。したがって、窒素含有カーボン触媒の酸素還元活性の相対値は、0.2以上であることが望ましく、窒素ドープカーボン触媒の酸素還元活性の相対値が0.2以上であることで、従来の窒素ドープカーボン触媒では得られない白金触媒を用いた電池に近い出力性能を実現することが可能となる。
【0045】
図3および表1に示すように、炭素化後に還元処理を施すことにより形成され、窒素含有カーボン触媒中の炭素に対する水素の比率が、2.8×10−6よりも大きく1.2×10−5よりも小さい範囲にある実施例1〜3の窒素含有カーボン触媒の酸素還元活性は、いずれも0.64以上と高い酸素還元活性を示している。
【0046】
一方で、還元処理を施していない窒素含有カーボン触媒中の炭素に対する水素の比率が、2.8×10−6の比較例1および水素の炭素に対する比率が1.2×10−5以上の比較例2および3の窒素含有カーボン触媒の酸素還元活性は、いずれも0.17以下と低く所望の性能を示さない。
【0047】
このように炭素化後に還元処理を施していない炭素に対する水素の比率が、2.8×10-6よりも小さい窒素含有触媒では、炭素に対する水素の比率が小さく酸素還元反応の活性点が少ないことで高い酸素還元活性が得られないと考えられる。また一方で、炭素に対する水素の比率が1.2×10-5以上になると水素終端されたエッジ量としては多いと考えることができるが、逆に還元処理によってエッジ近傍の窒素が減少することで高い酸素還元活性を示す活性点が失活し、高い酸素還元活性を得られないと考えられる。これに対して、炭素に対する水素の比率が、2.8×10-6よりも大きく1.2×10-5よりも小さい範囲にある窒素含有カーボン触媒は適切に還元処理を行うことで、窒素含有量を保持したまま水素終端されたエッジを増加させることができるため、高い酸素還元活性を実現できると考えられる。窒素含有カーボン触媒中の炭素に対する水素の比率としては、4.0×10-6〜1.0×10-5の範囲とすることがより好ましい。
【0048】
これらの結果から、触媒材料の前駆体となる樹脂、窒素源、および、鉄を含む金属塩を焼成、炭素化し、さらにその後、還元処理を施し、窒素含有カーボン触媒中の炭素に対する水素の比率を2.8×10-6よりも大きく1.2×10-5よりも小さくすることで、窒素含有カーボン触媒の酸素還元活性を向上できることがわかる。
【符号の説明】
【0049】
11 担体
12 窒素含有カーボン触媒
21 固体高分子電解質膜
22 アノード電極
23 カソード電極
図1
図2
図3