特許第6220063号(P6220063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6220063
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】太陽電池及び太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20171016BHJP
【FI】
   H01L31/04 262
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-527615(P2016-527615)
(86)(22)【出願日】2015年4月7日
(86)【国際出願番号】JP2015001954
(87)【国際公開番号】WO2015190024
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2016年11月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-120283(P2014-120283)
(32)【優先日】2014年6月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】遠洞 陽子
(72)【発明者】
【氏名】渡部 武紀
(72)【発明者】
【氏名】大塚 寛之
【審査官】 井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−003724(JP,A)
【文献】 特開2009−206366(JP,A)
【文献】 特表2011−507245(JP,A)
【文献】 特開2014−075532(JP,A)
【文献】 特表2008−519438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−50/15
IEEE Xplore
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型の半導体基板の受光面とは反対の面に第1の導電型の拡散層と第2の導電型の拡散層が形成されている太陽電池であって、
前記第1の導電型の拡散層に接合された第1の電極部と、前記第2の導電型の拡散層に接合された第2の電極部を備え、
前記第1の電極部上に形成された第1の電極ライン部と、
前記第2の電極部上に形成された第2の電極ライン部と、
前記第1の電極ライン部が接続された第1の電極バスバー部と、
前記第2の電極ライン部が接続された第2の電極バスバー部とを備え、
少なくとも前記第2の電極部と前記第1の電極バスバー部が交差する領域において、第1の絶縁膜が前記第2の電極部の側面部と上部を覆うように形成されており、
少なくとも前記第1の電極部と前記第2の電極バスバー部が交差する領域において、第2の絶縁膜が前記第1の電極部の側面部と上部を覆うように形成されており、
前記第1の絶縁膜の直下において、前記第2の電極部がライン状に連続して形成されており、
前記第2の絶縁膜の直下において、前記第1の電極部がライン状に連続して形成されているものであることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記第2の絶縁膜が形成された箇所以外の箇所における前記第1の電極部の形状及び前記第1の絶縁膜が形成された箇所以外の箇所における前記第2の電極部の形状が、ドット状、ライン状、又はこれらの形状の組み合わせのいずれかであり、
前記第2の絶縁膜の直下に形成された前記第1の電極部の長さが前記第2の絶縁膜の長さよりも大きく、前記第1の電極部の幅が前記第2の絶縁膜の幅よりも小さく、
前記第1の絶縁膜の直下に形成された前記第2の電極部の長さが前記第1の絶縁膜の長さよりも大きく、前記第2の電極部の幅が前記第1の絶縁膜の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第1の絶縁膜が少なくとも前記第1の電極バスバー部の直下に存在する前記第2の導電型の拡散層を覆うように形成され、
前記第2の絶縁膜が少なくとも前記第2の電極バスバー部の直下に存在する前記第1の導電型の拡散層を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第1の電極バスバー部及び前記第2の電極バスバー部の本数の合計が4本以上、10本以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第1の絶縁膜及び前記第2の絶縁膜が、少なくともシリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びポバール樹脂から一つ以上選択された樹脂を含有する材料からなるものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記第2の電極部と前記第1の電極バスバー部が交差する領域において、
前記第2の電極部の長さが0.35〜5.0mmであり、前記第1の絶縁膜の長さが0.32mm〜4.0mmであり、前記第1の電極バスバー部の幅が0.30mm〜3.0mmであり、
前記第1の電極部と前記第2の電極バスバー部が交差する領域において、
前記第1の電極部の長さが0.35〜5.0mmであり、前記第2の絶縁膜の長さが0.32mm〜4.0mmであり、前記第2の電極バスバー部の幅が0.30mm〜3.0mmであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第2の電極部と前記第1の電極バスバー部が交差する領域において、
前記第1の電極バスバー部の長さが0.3mm以上であり、前記第1の絶縁膜の幅が0.03mm〜1.5mmであり、前記第2の電極部の幅が0.02〜0.20mmであり、
前記第1の電極部と前記第2の電極バスバー部が交差する領域において、
前記第2の電極バスバー部の長さが0.3mm以上であり、前記第2の絶縁膜の幅が0.03mm〜1.5mmであり、前記第1の電極部の幅が0.02〜0.20mmであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記第1の絶縁膜及び前記第2の絶縁膜の厚みが1〜60μmであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記第1の電極ライン部、前記第2の電極ライン部、前記第1の電極バスバー部及び前記第2の電極バスバー部が、少なくともAg、Cu、Au、Al、Zn、In、Sn、Bi、Pbから選択される1種類以上の導電性物質と、さらにエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂から選択される1種類以上の樹脂を含有する材料からなるものであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項10】
第1の導電型の半導体基板の受光面とは反対の面に第1の導電型の拡散層と第2の導電型の拡散層が形成された太陽電池の製造方法であって、
前記受光面とは反対の面に、前記第1の導電型の拡散層及び該第1の導電型の拡散層に接合された第1の電極部、並びに前記第2の導電型の拡散層及び該第2の導電型の拡散層に接合された第2の電極部を形成する工程と、
前記第2の電極部の側面部と上部を覆うように第1の絶縁膜を形成し、前記第1の電極部の側面部と上部を覆うように第2の絶縁膜を形成する工程と、
第1の電極ライン部を前記第1の電極部上に、第1の電極バスバー部を前記第1の電極ライン部に接続するように形成することと、第2の電極ライン部を前記第2の電極部上に、第2の電極バスバー部を前記第2の電極ライン部に接続するように形成することとを同時に行う工程とを有し、
前記電極部を形成する工程において、前記第2の電極部を、前記第1の絶縁膜の直下においてライン状に連続して形成し、前記第1の電極部を、前記第2の絶縁膜の直下においてライン状に連続して形成し、
前記絶縁膜を形成する工程において、前記第1の絶縁膜を、少なくとも前記第2の電極部と前記第1の電極バスバー部が交差する領域に形成し、前記第2の絶縁膜を、少なくとも前記第1の電極部と前記第2の電極バスバー部が交差する領域に形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池及び太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図15は、従来の裏面電極型太陽電池を模式的に示す断面図である。従来の技術を用いて作製された裏面電極型太陽電池110について、図15を参照して説明する。N型シリコン基板113の受光面側には凹凸形状114が形成され、N型拡散層であるFSF(Front Surface Field)層115が形成されている。そして、凹凸形状114上には、N型シリコン基板113側から二酸化ケイ素を含む誘電性パッシベーション層(表面パッシベーション層)117、窒化シリコンを含む反射防止膜116が形成されている。
【0003】
また、N型シリコン基板113の裏面には酸化物層(第1裏面パッシベーション膜)119が形成されている。さらに、N型シリコン基板113の裏面側にはN型ドープされたN型拡散層120とP型ドープされたP型拡散層121とが交互に形成されている。そして、N型拡散層120にはN型金属コンタクト11が形成されており、P型拡散層121にはP型金属コンタクト12が形成されている。これらの基板自体と直接結合するコンタクト電極は、集電用のフィンガー電極として機能させることもできる。
【0004】
図19は、従来の裏面電極型太陽電池の裏面の外観を模式的に示す平面図である。図19に示すように、裏面電極型太陽電池は、フィンガー電極(N型金属コンタクト11、P型金属コンタクト12)から集電するためのバスバー電極を基板端に1対(N型バスバー電極22、P型バスバー電極23)設ける。図19では基板外周に最も近い電極がN型金属コンタクト電極となっているが、P型金属コンタクト電極でも良いし、それぞれP型、N型と異なる型の金属電極でも良い。
【0005】
裏面電極型太陽電池を高効率化するために、発電層であるP型拡散層をできる限り広くすると短絡電流の増加が期待できる。このため、P型拡散層とN型拡散層の割合は80:20〜90:10とP型拡散層の領域を広く形成することが望ましい。また、基板とコンタクト電極の接触面積(以下、コンタクト面積とも記載する。)をできるだけ小さくしてパッシベーション領域を広くすると開放電圧の増加が期待できるため、コンタクト電極の形状を、細いラインや、ドット状とすることにより金属コンタクト領域をできるだけ小さく設計することが望ましい。
【0006】
特許文献1ではコンタクト電極を形成し、コンタクト電極以外を絶縁膜で覆い、配線電極を形成するという3工程により、電極と基板のコンタクト面積を必要最低限に抑え、パッシベーション領域を大きくした裏面電極型太陽電池が開示されている。
【0007】
図16は、特許文献1で開示された従来の裏面電極型太陽電池の裏面の外観を模式的に示す平面図である。しかしながら特許文献1の太陽電池はバスバー電極(N型バスバー電極22、P型バスバー電極23)が基板外周に1対形成されているのみである(図16参照)。この配置の場合、フィンガー電極の長さが長いため、配線抵抗が非常に大きくなり、曲線因子低下の原因となってしまう。この問題は、配線電極(フィンガー電極)の断面積を大きくする、もしくはフィンガー長さを短く設計することにより解決できると考えられる。
【0008】
図17は、特許文献2で開示された従来の裏面電極型太陽電池の裏面の外観を模式的に示す平面図である。図17に示すように、例えば、特許文献2ではフィンガー電極41の長さを短くするためにバスバー電極30を複数対設けた太陽電池の電極形状が開示されている。この配置の場合、基板長さLに対してフィンガー長さがL/3となり、バスバー電極が1対のときに比べて配線抵抗が3分の1となる。しかしながらこの場合にも、バスバー電極が外周に配置されており、外周のバスバー電極は片側のフィンガー電極からの電流しか集電していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5317209号公報
【特許文献2】特許第5214755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明者らは、バスバー電極のパターンの改善を試みた。図18は、バスバー電極の位置を変更した裏面電極型太陽電池の裏面の外観を模式的に示す平面図である。図18に示すように、例えば、バスバー電極(N型バスバー電極22、P型バスバー電極23)が両側のフィンガー電極(N型フィンガー電極39、P型フィンガー電極40)から集電できるようにバスバー電極を内側に形成するような配置変更を行い、異なる導電型用のフィンガー電極とバスバー電極が接しないように絶縁膜124、125を設けると、バスバー電極の本数を変更することなく、フィンガー長さをL/6にすることができ、配線抵抗を1対バスバー電極の6分の1まで低減することができる。
【0011】
一方、太陽電池の高効率化の観点からは、コンタクト面積を減少させるため、基板と直接接合するコンタクト電極の線幅を細くしたり、コンタクト電極を不連続にして電極を間引くことが必要である。図20図21は、本発明者らが検討した裏面電極型太陽電池の電極の形成工程を示す図である。
【0012】
例えば、コンタクト電極28の線幅を細くする場合、図20に示すように、コンタクト電極28を形成したのち(図20(1))、異なる導電型用のバスバー電極が交差する領域に絶縁膜124を設け(図20(2))、バスバー電極30を形成することができる(図20(3))。この場合、線幅の細いコンタクト電極のみが、集電用のフィンガー電極として機能する。従って、フィンガー電極が細くなるため、すなわち、フィンガー電極の断面積が小さくなるために配線抵抗が増大し、変換効率が低下するという問題があった。
【0013】
また、図21に示すように、コンタクト面積を小さくするために、コンタクト電極28をドット状に不連続に形成することもできる。この場合、コンタクト電極28をドット状に不連続に形成したのち(図21(1))、これらの電極を繋ぐ別の配線電極29を形成し(図21(2))、異なる導電型用のバスバー電極が交差する領域に絶縁膜124を設け(図21(3))、バスバー電極30を形成することができる(図21(4))。しかしながら、この場合、上記のように配線電極29を形成する工程が必要となるため、工程が増え、コストが高くなるなどの問題があった。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、配線抵抗が低く、変換効率の高い太陽電池を提供すること、及びそのような太陽電池を低コストで製造することができる太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の導電型の半導体基板の受光面とは反対の面に第1の導電型の拡散層と第2の導電型の拡散層が形成されている太陽電池であって、
前記第1の導電型の拡散層に接合された第1の電極部と、前記第2の導電型の拡散層に接合された第2の電極部を備え、
前記第1の電極部上に形成された第1の電極ライン部と、
前記第2の電極部上に形成された第2の電極ライン部と、
前記第1の電極ライン部が接続された第1の電極バスバー部と、
前記第2の電極ライン部が接続された第2の電極バスバー部とを備え、
少なくとも前記第2の電極部と前記第1の電極バスバー部が交差する領域において、第1の絶縁膜が前記第2の電極部の側面部と上部を覆うように形成されており、
少なくとも前記第1の電極部と前記第2の電極バスバー部が交差する領域において、第2の絶縁膜が前記第1の電極部の側面部と上部を覆うように形成されており、
前記第1の絶縁膜の直下において、前記第2の電極部がライン状に連続して形成されており、
前記第2の絶縁膜の直下において、前記第1の電極部がライン状に連続して形成されているものであることを特徴とする太陽電池を提供する。
【0016】
このような太陽電池であれば、少なくとも第2の電極部と第1の電極バスバー部が交差する領域及び少なくとも第1の電極部と第2の電極バスバー部が交差する領域(以下、絶縁領域とも記載する。)に絶縁膜を設け、バスバー電極とフィンガー電極を立体構造とすることにより、フィンガー電極の長さを短くすることができ、両側のフィンガー電極から集電することができる。その結果、配線抵抗を減少させることができ、曲線因子を増加させることができる。また、コンタクト電極上にフィンガー電極を形成することで、コンタクト面積を減少しつつ、フィンガー電極の断面積を大きくし、配線抵抗を小さくすることができる。このような太陽電池であれば、安価で、配線抵抗が低く、変換効率が高い。なお、以下、第1の電極部及び第2の電極部を区別する必要がない場合は、単に、電極部又はコンタクト電極とも記載する。また、以下、第1の電極ライン部及び第2の電極ライン部を区別する必要がない場合は、単に、電極ライン部又はフィンガー電極とも記載する。また、第1の電極バスバー部及び第2の電極バスバー部を、単に、電極バスバー部又はバスバー電極とも記載する。
【0017】
また、前記第2の絶縁膜が形成された箇所以外の箇所における前記第1の電極部の形状及び前記第1の絶縁膜が形成された箇所以外の箇所における前記第2の電極部の形状が、ドット状、ライン状、又はこれらの形状の組み合わせのいずれかであり、
前記第2の絶縁膜の直下に形成された前記第1の電極部の長さが前記第2の絶縁膜の長さよりも大きく、前記第1の電極部の幅が前記第2の絶縁膜の幅よりも小さく、
前記第1の絶縁膜の直下に形成された前記第2の電極部の長さが前記第1の絶縁膜の長さよりも大きく、前記第2の電極部の幅が前記第1の絶縁膜の幅よりも小さいことが好ましい。
【0018】
このような太陽電池であれば、電極部と基板との接触面積(コンタクト面積)をより小さくすることができる。また、異なる導電型用の電極部と電極バスバー部をより接しにくくすることができる。
【0019】
また、前記第1の絶縁膜が少なくとも前記第1の電極バスバー部の直下に存在する前記第2の導電型の拡散層を覆うように形成され、
前記第2の絶縁膜が少なくとも前記第2の電極バスバー部の直下に存在する前記第1の導電型の拡散層を覆うように形成されていることが好ましい。
【0020】
裏面の基板表層に誘電体層を有する太陽電池の場合、このように絶縁膜を形成することが好ましい。拡散層幅よりも絶縁膜が大きい場合、第1の電極バスバー部が第2の導電型の拡散層に接することがないので、第1の電極バスバー部と第2の導電型の拡散層が誘電体層を通じて導通してしまうこともない。
【0021】
また、前記第1の電極バスバー部及び前記第2の電極バスバー部の本数の合計が4本以上、10本以下であることが好ましい。
【0022】
このような太陽電池であれば、フィンガー電極の配線抵抗をより減少させることができる。
【0023】
また、前記第1の絶縁膜及び前記第2の絶縁膜が、少なくともシリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びポバール樹脂から一つ以上選択された樹脂を含有する材料からなるものであることが好ましい。
【0024】
このような材料からなる絶縁膜であれば、耐熱性に優れる。従って、電極形成において熱処理を実施する場合に、このような絶縁膜とすることが好ましい。
【0025】
また、前記第2の電極部と前記第1の電極バスバー部が交差する領域において、
前記第2の電極部の長さが0.35〜5.0mmであり、前記第1の絶縁膜の長さが0.32mm〜4.0mmであり、前記第1の電極バスバー部の幅が0.30mm〜3.0mmであり、
前記第1の電極部と前記第2の電極バスバー部が交差する領域において、
前記第1の電極部の長さが0.35〜5.0mmであり、前記第2の絶縁膜の長さが0.32mm〜4.0mmであり、前記第2の電極バスバー部の幅が0.30mm〜3.0mmであることが好ましい。
【0026】
このような太陽電池であれば、異なる導電型用の電極部と電極バスバー部をより接しにくくすることができる。
【0027】
また、前記第2の電極部と前記第1の電極バスバー部が交差する領域において、
前記第1の電極バスバー部の長さが0.3mm以上であり、前記第1の絶縁膜の幅が0.03mm〜1.5mmであり、前記第2の電極部の幅が0.02〜0.20mmであり、
前記第1の電極部と前記第2の電極バスバー部が交差する領域において、
前記第2の電極バスバー部の長さが0.3mm以上であり、前記第2の絶縁膜の幅が0.03mm〜1.5mmであり、前記第1の電極部の幅が0.02〜0.20mmであることが好ましい。
【0028】
このような太陽電池であれば、基板面積に対する電極面積の割合をより適切な範囲内とすることができる。これにより、例えば、パッシベーション領域を広くし、開放電圧を増加させることができる。
【0029】
また、前記第1の絶縁膜及び前記第2の絶縁膜の厚みが1〜60μmであることが好ましい。
【0030】
このような太陽電池であれば、絶縁性をより向上させることができる。また、過度に絶縁膜を形成することもないため、所望の太陽電池をより低コストで製造することができる。
【0031】
また、前記第1の電極ライン部、前記第2の電極ライン部、前記第1の電極バスバー部及び前記第2の電極バスバー部が、少なくともAg、Cu、Au、Al、Zn、In、Sn、Bi、Pbから選択される1種類以上の導電性物質と、さらにエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂から選択される1種類以上の樹脂を含有する材料からなるものであることが好ましい。
【0032】
このような電極材料からなるものであれば、加熱時にこの電極材料がシリコン基板等の半導体基板と直接結合することがなく、コンタクト面積の増加が抑制される。
【0033】
更に本発明では、第1の導電型の半導体基板の受光面とは反対の面に第1の導電型の拡散層と第2の導電型の拡散層が形成された太陽電池の製造方法であって、
前記受光面とは反対の面に、前記第1の導電型の拡散層及び該第1の導電型の拡散層に接合された第1の電極部、並びに前記第2の導電型の拡散層及び該第2の導電型の拡散層に接合された第2の電極部を形成する工程と、
前記第2の電極部の側面部と上部を覆うように第1の絶縁膜を形成し、前記第1の電極部の側面部と上部を覆うように第2の絶縁膜を形成する工程と、
第1の電極ライン部を前記第1の電極部上に、第1の電極バスバー部を前記第1の電極ライン部に接続するように形成することと、第2の電極ライン部を前記第2の電極部上に、第2の電極バスバー部を前記第2の電極ライン部に接続するように形成することとを同時に行う工程とを有し、
前記電極部を形成する工程において、前記第2の電極部を、前記第1の絶縁膜の直下においてライン状に連続して形成し、前記第1の電極部を、前記第2の絶縁膜の直下においてライン状に連続して形成し、
前記絶縁膜を形成する工程において、前記第1の絶縁膜を、少なくとも前記第2の電極部と前記第1の電極バスバー部が交差する領域に形成し、前記第2の絶縁膜を、少なくとも前記第1の電極部と前記第2の電極バスバー部が交差する領域に形成することを特徴とする太陽電池の製造方法を提供する。
【0034】
このような太陽電池の製造方法であれば、配線抵抗が低く、変換効率の高い裏面電極型太陽電池を低コストで生産性よく製造することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の太陽電池は、絶縁領域に絶縁膜を設け、バスバー電極とフィンガー電極を立体構造とすることにより、バスバー電極の本数を増やし、フィンガー電極の長さを短くすることができ、両側のフィンガー電極から集電することができる。その結果、配線抵抗を減少させることができ、曲線因子を増加させることができる。また、コンタクト電極上にフィンガー電極を形成することで、コンタクト面積を減少しつつ、フィンガー電極の断面積を大きくし、配線抵抗を小さくすることができ、開放電圧を向上させることができる。更に、本発明の太陽電池の製造方法は、製造工程数を増やすことなく、そのような太陽電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の太陽電池の一例を示す上面模式図である。
図2】本発明の太陽電池の一部分を拡大した拡大図である。
図3】本発明の太陽電池の一部分を拡大した拡大図である。
図4】本発明の太陽電池の一例を示す断面模式図である。
図5】本発明の太陽電池の一例を示す断面模式図である。
図6】本発明の太陽電池の製造方法の一例を示すフロー図である。
図7】本発明に係る裏面電極型太陽電池の電極の形成工程を示す図である。
図8】本発明に係る裏面電極型太陽電池の電極の形成工程を示す図である。
図9】本発明の太陽電池の一例を示す上面模式図である。
図10】本発明の太陽電池の一例を示す上面模式図である。
図11】実施例1〜8及び比較例1の太陽電池の直列抵抗の値を示すグラフである。
図12】実施例1〜8及び比較例1の太陽電池の曲線因子の値を示すグラフである。
図13】実施例1〜8及び比較例1の太陽電池の開放電圧の値を示すグラフである。
図14】実施例1〜8及び比較例1の太陽電池の変換効率の値を示すグラフである。
図15】従来の裏面電極型太陽電池を模式的に示す断面図である。
図16】特許文献1で開示された従来の裏面電極型太陽電池の裏面の外観を模式的に示す平面図である。
図17】特許文献2で開示された従来の裏面電極型太陽電池の裏面の外観を模式的に示す平面図である。
図18】バスバー電極の位置を変更した裏面電極型太陽電池の裏面の外観を模式的に示す平面図である。
図19】従来の裏面電極型太陽電池の裏面の外観を模式的に示す平面図である。
図20】本発明者らが検討した裏面電極型太陽電池の電極の形成工程を示す図である。
図21】本発明者らが検討した裏面電極型太陽電池の電極の形成工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明をより詳細に説明する。
上記のように、配線抵抗が低く、変換効率の高い裏面電極型太陽電池、及びそのような裏面電極型太陽電池を低コストで製造することができる太陽電池の製造方法が求められている。
【0038】
本発明者らは、本発明における絶縁領域に絶縁膜を設けることにより、フィンガー電極先端から最も近いバスバー電極までの距離を短くし、フィンガー電極の配線抵抗を低減することが可能であることを知見した。
【0039】
一方、太陽電池の高効率化の観点からは、上記の距離を短くする以外にも、コンタクト面積を減少させることも望まれる。
【0040】
例えば、図20に示すように、コンタクト面積を減少させるために、線幅の細いコンタクト電極とバスバー電極のみを形成することができる。しかしながら、この場合、フィンガーの断面積が小さくなり、配線抵抗が大きくなってしまうことが問題であった。
【0041】
また、図21に示すように、コンタクト電極をドット状に不連続に形成し、これらのコンタクト電極を繋ぐ別の配線電極を形成した後、バスバー電極を形成することができる。この場合、上記の配線抵抗が大きくなってしまう問題を回避することはできるが、工程が増え、コストが高くなるなどの問題があった。
【0042】
本発明者らは、上記問題点を解決するためにさらなる検討を行った結果、コンタクト電極上にフィンガー電極を形成することで、コンタクト面積を減少しつつ、フィンガー電極の断面積を大きくし、配線抵抗を小さくすることができることを知見した。また、電極の形状の軽微な変更、すなわち、絶縁膜の直下において、電極部をライン状に連続して形成されたものとすることにより、工程数を増加させることなく、配線抵抗の低い太陽電池を低コストで作製できることを知見し、本発明の太陽電池及び太陽電池の製造方法を完成させた。
【0043】
以下、本発明の太陽電池について図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下、第1の導電型の半導体基板がN型シリコン基板である場合を中心に説明するが、第1の導電型の半導体基板がP型シリコン基板であっても、ボロン、リン等の不純物源を逆に使用すればよく、何ら問題はない。
【0044】
[太陽電池(裏面電極型太陽電池セル)]
図1は、本発明の太陽電池の一例を示す上面模式図である。図2図3は、本発明の太陽電池の一部分を拡大した拡大図である。また、図4図5は、本発明の太陽電池の一例を示す断面模式図である。なお、図4は、図1の1−1’断面図である。また、図5は、図1の2−2’断面図である。
【0045】
図4図5に示すように、本発明の太陽電池は、第1の導電型の半導体基板13の受光面とは反対の面(以下、単に、裏面とも記載する。)に第1の導電型の拡散層20と第2の導電型の拡散層21が形成されている太陽電池、いわゆる裏面電極型太陽電池である。更に、図4図5に示すように、第1の導電型の拡散層20に接合された第1の電極部26と、第2の導電型の拡散層に接合された第2の電極部27を備える。
【0046】
また、図1図3に示すように、本発明の太陽電池10は、第1の電極部26上に形成された第1の電極ライン部35と、第2の電極部27上に形成された第2の電極ライン部36と、第1の電極ライン部35が接続された第1の電極バスバー部37と、第2の電極ライン部36が接続された第2の電極バスバー部38とを備える。
【0047】
また、図4図5に示すように、第1の導電型の半導体基板13の受光面側に凹凸形状14を形成し、FSF層(N型拡散層)15を形成することができる。そして、凹凸形状14上には、窒化シリコン等を含む反射防止膜16を形成することができる。FSF層15と反射防止膜16の間に、誘電性パッシベーション層(不図示)を形成することもできる。
【0048】
また、第1の導電型の半導体基板13の裏面には酸化物層(第1裏面パッシベーション膜)19を形成することができる。酸化物層19上に、第2裏面パッシベーション膜18を形成することもできる。このように受光面及び裏面のそれぞれが、保護膜(パッシベーション膜)で覆われていることが好ましい。パッシベーション膜は、酸化珪素膜、窒化珪素膜及び酸化アルミニウム膜から選択される少なくとも1つ以上からなるものであることが好ましい。
【0049】
更に、本発明の太陽電池10は、図4図5に示すように、少なくとも第2の電極部27と第1の電極バスバー部37が交差する領域において、第1の絶縁膜24が第2の電極部27の側面部と上部を覆うように形成されている。また、少なくとも第1の電極部26と第2の電極バスバー部38が交差する領域において、第2の絶縁膜25が第1の電極部26の側面部と上部を覆うように形成されている。
【0050】
また、図5に示すように、第1の電極バスバー部37は、第1の電極部26と接合することができる。また、図4に示すように、第2の電極バスバー部38は、第2の電極部27と接合することができる。
【0051】
更に、図1〜3に示すように、第1の絶縁膜24の直下において、第2の電極部27がライン状に連続して形成されている。また、第2の絶縁膜25の直下において、第1の電極部26がライン状に連続して形成されている。
【0052】
このような太陽電池であれば、絶縁領域に絶縁膜を設けることによって、バスバー電極とフィンガー電極を立体構造とすることができる。これにより、バスバー電極の本数を増やし、フィンガー電極の長さを短くすることができる。そのため、従来の大面積の裏面電極型太陽電池が抱えていた出力低下の主たる原因である、フィンガー電極先端から最も近いバスバー電極までの距離が長いために配線抵抗が高くなることを防ぐことができる。その結果、変換効率が高い太陽電池とすることができる。例えば、バスバー電極を4対(8本)設けた場合、基板の端にバスバー電極が1対設けられた従来の太陽電池と比べて、配線抵抗を8分の1に減少させることができる。
【0053】
更に、本発明の太陽電池は、絶縁膜の直下において、基板自体と直接結合する電極部がライン状に連続して形成されたものであるため、製造時に、図21に示すような配線電極29を形成する工程を別途設ける必要がない。従って、製造工程の数を減らすことができる。その結果、安価で変換効率が高い太陽電池とすることができる。
【0054】
以下、本発明の太陽電池の各構成についてより詳細に説明する。
【0055】
[第1の導電型の半導体基板]
本発明に用いることができる半導体基板は特に限定されない。例えば、N型シリコン基板を用いることができる。この場合、基板の厚さは、例えば、100〜200μm厚とすることができる。基板の主面の形状及び面積は特に限定されない。
【0056】
[電極部]
第1の電極部26及び第2の電極部27の材料としては、例えば、銀粉末とガラスフリットを有機物バインダで混合した流動性のあるペースト(以下、焼結ペーストとも記載する。)を用いることができる。
【0057】
上述のように、絶縁膜の直下において、基板自体と直接結合する電極部がライン状に連続して形成されたものである必要があるが、その他の箇所において、電極部の形状は特に限定されない。例えば、第2の絶縁膜が形成された箇所以外の箇所における第1の電極部の形状及び第1の絶縁膜が形成された箇所以外の箇所における第2の電極部の形状が、ドット状、ライン状、又はこれらの形状の組み合わせのいずれかであることが好ましい。図3に示すように、例えば、当該箇所における電極部の形状がドット状であれば、コンタクト面積をより小さくすることができる。これにより、パッシベーション領域を広くし、開放電圧を増加させることができる。
【0058】
なお、図2に示すように、絶縁膜が形成された箇所以外の箇所における電極部の形状が、ライン状であったとしても、本発明であれば、電極部上に電極ライン部が形成されているため、フィンガー電極の断面積(厚み)を大きくすることができ、配線抵抗が低い太陽電池とすることができる。
【0059】
また、第2の絶縁膜の直下に形成された第1の電極部の長さが第2の絶縁膜の長さよりも大きく、第1の電極部の幅が第2の絶縁膜の幅よりも小さいことが好ましい。また、第1の絶縁膜の直下に形成された第2の電極部の長さが第1の絶縁膜の長さよりも大きく、第2の電極部の幅が第1の絶縁膜の幅よりも小さいことが好ましい。第2の絶縁膜の直下に形成された第1の電極部の長さが第2の絶縁膜の長さよりも大きい場合や、第1の電極部の幅が第2の絶縁膜の幅よりも小さい場合には、第2の電極バスバー部と、第1の電極部を十分に離間することができる。また、絶縁膜が電極の側面を十分に覆うことができる。従って、第2の電極バスバー部と、第1の電極部の絶縁を確実に達成することができる。
【0060】
ここで、絶縁膜の直下に形成された電極部とは、絶縁膜の直下において、ライン状に連続して形成された電極部のことを指し、すなわち、絶縁膜の直下から延長され、絶縁膜の直下からはみ出した部分も含む。また、絶縁領域における上記の電極部の長さ及び絶縁膜の長さの方向、並びに後述する電極バスバー部の幅の方向は、対応する拡散層の長手方向に沿った方向である。また、上記の電極部の幅及び絶縁膜の幅の方向、並びに後述する電極バスバー部の長さの方向は、対応する拡散層の短手方向に沿った方向である。絶縁領域における電極バスバー部の長さは、図4図5に示す電極バスバー部の凸部の長さとすることができる。なお、凸部の長さの方向は、バスバー電極の長手方向である。
【0061】
[絶縁膜]
絶縁膜は、絶縁領域において、電極部の側面部と上部を覆うように形成されている。ここで、本発明における絶縁領域とは、少なくとも電極部と電極バスバー部が交差する箇所のことである。絶縁領域は、この箇所の面積よりも大きいことが好ましい。絶縁膜の形状は特に限定されないが、例えば、矩形とすることができる。第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜の厚みは、1〜60μmであることが好ましい。より好ましくは5〜40μm程度、特に好ましくは10〜30μmである。このような厚みとすることにより、絶縁性をより向上させることができる。また、過度に絶縁膜を形成することもないため、所望の太陽電池をより低コストで製造することができる。
【0062】
また、第1の絶縁膜が少なくとも第1の電極バスバー部の直下に存在する第2の導電型の拡散層を覆うように形成されていることが好ましい。また、第2の絶縁膜が少なくとも第2の電極バスバー部の直下に存在する第1の導電型の拡散層を覆うように形成されていることが好ましい。裏面の基板表層に誘電体層を有する場合には、このように、拡散層幅よりも大きい絶縁層を形成することが望ましい。拡散層幅よりも絶縁膜が大きい場合、第1の電極バスバー部が第2の導電型の拡散層に接することがないので、第1の電極バスバー部と第2の導電型の拡散層が誘電体層を通じて導通してしまうこともない。
【0063】
これらの絶縁膜は、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びポバール樹脂から一つ以上選択された樹脂を含有する材料からなるものであることが好ましい。特に、電極ライン部及び電極バスバー部を形成する際、熱処理を実施する場合には、耐熱性樹脂を選択することが望ましい。例えば、シリコーン樹脂の主鎖であるシロキサン結合は、主鎖が炭素骨格からなる有機高分子材料と比較して、結合エネルギーが大きく安定しているため耐熱性や耐候性に優れている。また、他の樹脂も分子鎖に芳香環を設けることにより高耐熱性を有した材料となる。
【0064】
[電極ライン部、電極バスバー部]
電極ライン部及び電極バスバー部は、少なくともAg、Cu、Au、Al、Zn、In、Sn、Bi、Pbから選択される1種類以上の導電性物質と、さらにエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂から選択される1種類以上の樹脂を含有する材料(以下、熱硬化ペーストとも記載する。)からなるものであることが好ましい。このような電極材料からなるものであれば、ガラスフリットを含む必要がないので、加熱時に電極材料がシリコン基板等の半導体基板と直接結合することがなく、コンタクト面積の増加が抑制される。
【0065】
第1の電極バスバー部及び第2の電極バスバー部の本数は特に限定されないが、その合計が4本以上、10本以下であることが好ましい。これにより、フィンガー電極の配線抵抗を減少し、変換効率を向上することができる。なお、電極ライン部、電極バスバー部の形状は特に限定されない。例えば、電極ライン部の形状は、絶縁領域を除き、ライン状の連続した形状とすることができる。なお、絶縁膜直下のコンタクト電極の形状は、ライン状である。また、電極バスバー部の形状は、ライン状の連続した形状とすることができる。図1等に示すように、電極ライン部と電極バスバー部は直角に交わるように形成することができる。
【0066】
また、第2の電極部と第1の電極バスバー部が交差する領域において、第2の電極部の長さが0.35〜5.0mmであり、第1の絶縁膜の長さが0.32mm〜4.0mmであり、第1の電極バスバー部の幅が0.30mm〜3.0mmであることが好ましい。
【0067】
また、第1の電極部と第2の電極バスバー部が交差する領域において、第1の電極部の長さが0.35〜5.0mmであり、第2の絶縁膜の長さが0.32mm〜4.0mmであり、第2の電極バスバー部の幅が0.30mm〜3.0mmであることが好ましい。
【0068】
第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜の長さは、より好ましくは、0.32mm〜3.0mmである。このような絶縁膜を有する太陽電池であれば、異なる導電型用の電極部と電極バスバー部をより接しにくくすることができる。
【0069】
また、第2の電極部と第1の電極バスバー部が交差する領域において、第1の電極バスバー部の長さが0.3mm以上であり、第1の絶縁膜の幅が0.03mm〜1.5mmであり、第2の電極部の幅が0.02〜0.20mmであることが好ましい。第1の電極バスバー部の長さの上限は特に限定されないが、例えば、2mmとすることができる。
【0070】
また、第1の電極部と第2の電極バスバー部が交差する領域において、第2の電極バスバー部の長さが0.3mm以上であり、第2の絶縁膜の幅が0.03mm〜1.5mmであり、第1の電極部の幅が0.02〜0.20mmであることが好ましい。第2の電極バスバー部の長さの上限は特に限定されないが、例えば、2mmとすることができる。
【0071】
このような太陽電池であれば、基板面積に対する電極面積の割合を所望の範囲内とすることができる。これにより、例えば、パッシベーション領域を広くし、開放電圧を増加させることができる。
【0072】
[太陽電池の製造方法]
本発明の太陽電池の製造方法は、第1の導電型の半導体基板の受光面とは反対の面に第1の導電型の拡散層と第2の導電型の拡散層が形成された太陽電池の製造方法であって、少なくとも以下に示す工程を有する太陽電池の製造方法である。
【0073】
まず、受光面とは反対の面に、第1の導電型の拡散層及びこの第1の導電型の拡散層に接合された第1の電極部、並びに第2の導電型の拡散層及びこの第2の導電型の拡散層に接合された第2の電極部を形成する(電極部を形成する工程)。本発明では、この工程において、第2の電極部を、第1の絶縁膜の直下においてライン状に連続して形成する。また、第1の電極部を、第2の絶縁膜の直下においてライン状に連続して形成する。
【0074】
次に、第2の電極部の側面部と上部を覆うように第1の絶縁膜を形成し、第1の電極部の側面部と上部を覆うように第2の絶縁膜を形成する(絶縁膜を形成する工程)。本発明では、この工程において、第1の絶縁膜を、少なくとも第2の電極部と第1の電極バスバー部が交差する領域に形成する。また、第2の絶縁膜を、少なくとも第1の電極部と第2の電極バスバー部が交差する領域に形成する。
【0075】
次に、第1の電極ライン部を第1の電極部上に、第1の電極バスバー部を第1の電極ライン部に接続するように形成する。また、第2の電極ライン部を第2の電極部上に、第2の電極バスバー部を第2の電極ライン部に接続するように形成する(電極ライン部及び電極バスバー部を形成する工程)。本発明では、この工程において、電極ライン部及び電極バスバー部(フィンガー電極及びバスバー電極)を同時に形成する。
【0076】
このような太陽電池の製造方法であれば、生産性がよく、高効率の裏面電極型太陽電池を低コストで作製することができる。なお、電極部を形成する工程では、後述する図6(a)〜(j)に示すように、予め、第1の導電型の拡散層及び第2の導電型の拡散層を順次形成し、その後、第1の電極部及び第2の電極部を順次形成してもよいし、これらの拡散層及び電極部をすべて同時に形成してもよい。
【0077】
以下、本発明の太陽電池の製造方法について図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
図6は、本発明の太陽電池の製造方法の一例を示すフロー図である。以下、図6に示す模式的断面図を参照して、本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法の一例について説明する。特に、N型シリコン基板の場合を例にとって説明する。
【0079】
[電極部を形成する工程]
まず、図6(a)に示すように、100〜200μm厚のN型シリコン基板13の受光面となる面(以下「N型シリコン基板の受光面」という。)の反対側の面である裏面(以下「N型シリコン基板の裏面」という。)に、窒化シリコン膜等のテクスチャマスク31をCVD法、またはスパッタ法等で形成する。
【0080】
その後、図6(b)に示すように、N型シリコン基板13の受光面にテクスチャ構造である凹凸形状14をエッチングにより形成する。エッチングは、たとえば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液にイソプロピルアルコールを添加し、60℃以上80℃以下に加熱した溶液により行われる。
【0081】
次に、図6(c)を用いて次工程を説明する。図6(c)に示すように、N型シリコン基板13の裏面に形成したテクスチャマスク31を除去後、N型シリコン基板13の受光面と裏面に酸化シリコン膜等の拡散マスク32、33を形成する。N型拡散層が形成される箇所に、エッチングペーストをスクリーン印刷法などで塗布し、加熱処理によりN型拡散層が形成される箇所の拡散マスク32が除去され、基板が露出する。パターニング処理を行ったエッチングペーストは超音波洗浄し酸処理により除去する。このエッチングペーストは、例えば、エッチング成分としてリン酸、フッ化水素、フッ化アンモニウムおよびフッ化水素アンモニウムからなる群から選択された少なくとも1種を含み、水、有機溶媒および増粘剤を含むものである。この処理は、フォトリソグラフィ法を用いて行ってもよい。
【0082】
その後、POClを用いた気相拡散によって、N型シリコン基板13の裏面の露出した箇所に、N型不純物であるリンが拡散してN型拡散層20が形成される。N型拡散層はリン酸などのN型不純物をアルコールや水に溶解させた溶液をスピン塗布し、熱拡散することでも形成が可能である。
【0083】
次に、図6(d)に示すように、N型シリコン基板13に形成した拡散マスク32及び拡散マスク33、並びに拡散マスク32、33にリンが拡散して形成されたガラス層をフッ化水素酸処理により除去した後、酸素または水蒸気雰囲気中で熱酸化を行い、酸化シリコン膜34を形成する。
【0084】
次に、図6(e)に示すように、N型シリコン基板13の裏面のP型拡散層が形成される箇所に、エッチングペーストをスクリーン印刷法などで塗布し、加熱処理によりP型拡散層が形成される箇所の拡散マスク34が除去され、基板が露出する。パターニング処理を行ったエッチングペーストは超音波洗浄し酸処理により除去する。このエッチングペーストは、例えば、エッチング成分としてリン酸、フッ化水素、フッ化アンモニウムおよびフッ化水素アンモニウムからなる群から選択された少なくとも1種を含み、水、有機溶媒および増粘剤を含むものである。
【0085】
図6(f)に示すように、N型シリコン基板13の裏面に、ホウ酸などのP型不純物源をアルコールや水に溶解させた溶液をスピン塗布し、乾燥後、熱処理によりN型シリコン基板13の裏面の露出した箇所にP型不純物であるボロンが拡散してP型拡散層21が形成される。この際、P型拡散層21はBBrなどの気相拡散法によっても形成することができる。
【0086】
次に、図6(g)を用いて次工程を説明する。図6(g)に示すように、N型シリコン基板13に形成した酸化シリコン膜34、および酸化シリコン膜34にボロンが拡散して形成されたガラス層をフッ化水素酸処理により除去する。その後、N型シリコン基板13の裏面に酸化シリコン膜等の拡散マスクを兼ねた第1裏面パッシベーション膜19をCVD法、またはSOG(スピンオングラス)の塗布、焼成により形成する。
【0087】
その後、図6(h)に示すように、N型シリコン基板13の受光面にリン酸などのN型不純物をアルコールや水に溶解させた溶液をスピン塗布し、熱拡散する手法か、POClによる気相拡散法などにより、受光面拡散層であるn層(FSF層15)を形成してもよい。
【0088】
図6(i)に示すように、N型シリコン基板13の裏面に窒化膜等による第2裏面パッシベーション膜18をCVDまたはスパッタ法で形成する。また、表面にも反射防止膜16として、CVDまたはスパッタ法により窒化膜を形成してもよい。
【0089】
次に、図6(j)に示すように、N型シリコン基板13の裏面側に形成されたN型拡散層20、P型拡散層21に電極を形成する。
【0090】
図7図8は、本発明に係る裏面電極型太陽電池の電極の形成工程を示す図である。図7図8に示すように、第1の電極部26、第2の電極部27はシリコン基板とコンタクトを形成する電極である。これらの電極部の電極パターンは、少なくとも第2の電極部27と第1の電極バスバー部37が交差する領域及び少なくとも第1の電極部26と第2の電極バスバー部38が交差する領域において、ライン状に連続したパターンとする必要があるが、その他の箇所では楕円、矩形、ドットなどの不連続な形状でも良いし、ライン状でも良い。また、これらの形状を混在させてもよい。これらの領域において電極部をライン状に形成しておくことにより、その他の箇所において、電極部がどんな形状であっても、例えば、第1の電極バスバー部37の直下の第2の導電型の拡散層で発電した電流も収集することができる。
【0091】
基板面積に対する第1の電極部、第2の電極部の面積の割合を、それぞれ、1%〜6%程度にすることが望ましい。例えば、フィンガー電極間の距離が1.5mmピッチのときは、線幅は14μm〜90μmとなる。裏面電極(電極部)のコンタクト面積をできるだけ小さくすることにより、パッシベーション領域が増加し、開放電圧の上昇が見込めるためである。
【0092】
尚、電極部、絶縁膜、電極ライン部及び電極バスバー部の幅、長さ及び大小関係は、太陽電池の項で記載した通りのものとすることができる。また、電極部、絶縁膜、電極ライン部及び電極バスバー部の材料も、上述のものと同様のものを用いることができる。
【0093】
この電極部は、例えば、上記のようなライン状等のパターンを有する開口を持ったスクリーン製版を用いて、スクリーン印刷で形成することができる。他にもオフセット印刷や、インクジェット印刷、ディスペンサ、蒸着法などを用いて形成することも可能である。
【0094】
図6(j)、図7及び図8を参照して、電極部等の具体的な形成方法を説明する。まず、電極部の材料として、上述の焼結ペーストを用い、上記のような印刷法でN型拡散層20上又はP型拡散層21上に焼結ペーストを形成する。次に、この焼結ペーストを5〜30分間、700〜800℃の温度で焼成して、第1の電極部26又は第2の電極部27を形成することができる(図7(1)、図8(1))。このように、ガラスフリットを含有した焼結ペーストを用いることによって、焼成時にガラスフリットが溶融し、第2裏面パッシベーション膜18及び第1裏面パッシベーション膜19も同時に溶融し、これらの膜を貫通して電極が基板自体と直接結合するように接着する。尚、n電極、p電極(第1の電極部、第2の電極部)は同時に印刷し、同時に焼成してもよい。印刷、焼成を順次行ってもよい。
【0095】
[絶縁膜を形成する工程]
次に絶縁膜24、25の形成について説明する。図6(k)はP型バスバー電極の断面図、図6(l)はN型バスバー電極の断面図である。それぞれ図1の1−1’断面図と、2−2’断面図を示している。
【0096】
上記のように、第1の絶縁膜を、少なくとも第2の電極部と第1の電極バスバー部が交差する領域に形成する。また、第2の絶縁膜を、少なくとも第1の電極部と第2の電極バスバー部が交差する領域に形成する。
【0097】
絶縁膜の材料としては、上述したシリコーン樹脂等の樹脂を含有する材料からなるものを用いることができる。この材料を太陽電池基板上に形成するため、溶剤を添加し流動性を付与したペースト状態のもの(絶縁ペースト)を使用すると良い。流動性があればオフセット印刷やスクリーン印刷、およびディスペンサなどを用いることができる。
【0098】
例えば、図7図8に示すような絶縁膜のパターンを形成するために、このパターンと同様の形状の開口を持ったスクリーン製版を用いることができる。このスクリーン製版を用い、スクリーン印刷により、N型シリコン基板13の所定の位置に絶縁ペーストを塗布し、350℃以下で5分〜30分熱処理を行うことで絶縁ペーストを硬化し、絶縁膜を形成することができる(図7(2)、図8(2))。また、絶縁膜を全面に形成したのち、フォトリソグラフィを用いてエッチング処理およびパターン処理を行う方法を用いて、所望の位置に絶縁膜を形成してもよい。
【0099】
[電極ライン部及び電極バスバー部を形成する工程]
次に、第1の電極ライン部35、第2の電極ライン部36、第1の電極バスバー部37及び第2の電極バスバー部38の形成方法について説明する。
【0100】
上述のように、図20に示すような方法では、コンタクト電極の線幅が細くなり、配線抵抗が大きくなってしまうことが問題であった。また、図21に示す方法では、工程が増え、コストが高くなるなどの問題があった。
【0101】
このため、本発明では、この工程で、バスバー電極だけなく、フィンガー電極も同時に形成する(図7(3)、図8(3))。これにより、工程数を減らしつつ、配線抵抗を低減することが可能である。
【0102】
図7図8に示すように、第2の電極バスバー部38には第2の電極ライン部36が交差し、第1の電極バスバー部37には第1の電極ライン部35が交差し、接続されている。一方、異なる導電型用の第2の電極バスバー部38と第1の電極ライン部35、及び第1の電極バスバー部37と第2の電極ライン部36は離間している。本発明では、この離間した箇所に第1の電極部又は第2の電極部が存在しているので、第2の電極バスバー部38直下の第1の電極部は、電気的に断線することなく接続されることになる。一方、第1の電極バスバー部37直下の第2の電極部も、電気的に断線することなく接続されることになる。
【0103】
上述のように、基板端に1対バスバーを設ける従来の太陽電池(図19)では、基板長さLに対してコンタクト電極の長さはLとなり、配線抵抗が高くなる。一方、本発明では、絶縁領域に絶縁膜を設け、バスバー電極とフィンガー電極を立体構造とすることができるので、所望の位置にバスバー電極を形成することができる。図9図10は、本発明の太陽電池の一例を示す上面模式図である。例えば、図9に示すように、バスバー電極の両側のフィンガー電極から集電するパターンに変更すると、フィンガー電極の長さは、L/2となり、配線抵抗は半分となる。
【0104】
さらに本発明では配線抵抗を低減するため、バスバー電極を複数本設けてフィンガー長さを短くすることができる。例えば、フィンガー電極の長さは、バスバーを2対設けた場合にはL/4(図1)、3対ではL/6(図10)、4対ではL/8と小さくなる。
【0105】
ここで、電極バスバー部の上部にはタブ線と呼ばれるPb−SnなどでコーティングされたCu配線をハンダ付けした後、太陽電池はガラスと封止材の間に封止され、屋外曝露されたときにも出力が維持できるよう、モジュール化される。このため電極バスバー部はタブ線との接着力を有していれば、連続していても不連続であっても良い。
【0106】
電極ライン部及び電極バスバー部の材料としては、上述の熱硬化ペーストを用いることが望ましい。例えば、この熱硬化ペーストに流動性を付与するために、溶剤を添加することができる。溶剤を添加することで、スクリーン印刷や他の印刷方法でパターンニングが可能となる。
【0107】
例えば、スクリーン印刷法で所定の場所に溶剤を添加した熱硬化ペーストを塗布したのち、乾燥させ、350℃以下で5〜30分加熱し、硬化させる。この方法では、熱硬化ペーストが、電極部の材料である焼結ペーストのようにガラスフリットを含まないため、加熱時に電極材料(熱硬化ペースト)がシリコン基板と直接結合することがなく、コンタクト面積の増加が抑制される。このような熱硬化樹脂のペーストを用いて、タブ線とバスバー部を接触させてから熱処理を行ってもよい。このようにするとハンダ付けなしでタブ線とバスバー部を接着することができる。
【実施例】
【0108】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0109】
(実施例及び比較例)
本発明の有効性を確認するため、以下の工程を半導体基板90枚(実施例1〜8、比較例1について10枚ずつ)について行い、太陽電池90枚を作製した。
【0110】
図6に示すように、まず、15cm角、200μm厚のN型シリコン基板13の裏面に、CVD法により窒化シリコン膜を200nm形成し、テクスチャマスク31とした(図6a)。その後、N型シリコン基板13の受光面にイソプロピルアルコールを添加した水酸化カリウム溶液によりテクスチャ構造(凹凸形状)14を形成した(図6b)。
【0111】
次にN型シリコン基板13の裏面に形成したテクスチャマスク31をフッ酸溶液で除去した後、N型シリコン基板13の受光面と裏面に拡散マスク32、33として酸化シリコン膜を熱酸化により形成した。N型拡散層が形成される箇所に、リン酸を主成分としたエッチングペーストをスクリーン印刷で塗布し、加熱処理によりN型拡散層が形成される箇所の拡散マスク32が除去され、基板を露出させた(図6c)。パターニング処理を行ったエッチングペーストは超音波洗浄し酸処理により除去した。その後、POClを用いた気相拡散によって、N型シリコン基板13の裏面の露出した箇所に、N型不純物であるリンを拡散させてN型拡散層20を形成した(図6c)。
【0112】
次に、N型シリコン基板13に形成した拡散マスク32及び拡散マスク33、並びに拡散マスク32、33にリンが拡散して形成されたガラス層をフッ化水素酸処理により除去した後、酸素による熱酸化を行い、酸化シリコン膜34を形成した(図6d)。次に裏面のP型拡散層21が形成される箇所の酸化シリコン膜34をエッチングにより除去した(図6e)。
【0113】
さらに、N型シリコン基板13の裏面に、ホウ酸を含有した水溶液をスピン塗布し、乾燥後、熱処理によりN型シリコン基板13の裏面の露出した箇所にP型不純物であるボロンを拡散してP型拡散層21を形成した(図6f)。
【0114】
次に、図6g〜iに相当する工程として、N型シリコン基板13に形成した酸化シリコン膜34および酸化シリコン膜34にボロンが拡散して形成されたガラス層をフッ化水素酸処理により除去し、続いてCVD法により表面と裏面にパッシベーション膜として窒化シリコン膜を形成した。ここまでの工程は、実施例1〜8及び比較例1で共通して行った。続いて、電極の形成を行った。
【0115】
[実施例1〜4]
実施例1〜4では、図7に示すようなパターンの電極部、絶縁膜、電極ライン部及び電極バスバー部を形成した(図6j〜l)。
【0116】
まず、幅100μmのライン状のパターンの電極部を形成した。具体的には、拡散層上の所定の箇所にAg粒子、ガラスフリット、バインダー、溶剤からなる導電性ペースト(焼結ペースト)をスクリーン印刷により塗布し、乾燥、700℃、5分の焼成を行い、第1の電極部及び第2の電極部を形成した。次に、絶縁領域に長さ3mm、幅500μmの絶縁膜を形成した。絶縁膜の材料として、ポリイミドペーストを用い、このペーストをスクリーン印刷により所定の箇所に塗布し、150℃で、20分加熱し硬化させ、絶縁膜を形成した。
【0117】
次に、幅100μmのフィンガー電極(電極ライン部)と、1.2mm幅のバスバー電極(電極バスバー部)を同時に形成した。電極ライン部と電極バスバー部の材料としては、Ag粒子と、熱硬化樹脂からなる導電性ペースト(熱硬化ペースト)を用いた。この熱硬化ペーストをスクリーン印刷により塗布し、乾燥し、200℃で30分間加熱して硬化させ、第1の電極ライン部、第2の電極ライン部、第1の電極バスバー部及び第2の電極バスバー部を同時に形成した。
【0118】
実施例1では、バスバー電極を1対(図9)、実施例2では2対(図1)、実施例3では3対(図10)、実施例4では4対とした。図7に示すように、バスバー電極とフィンガー電極の接続部は、導電型の違いにより交互に離間させるようにした。すなわち、第1の電極ライン部と第1の電極バスバー部を接続させる一方で、第1の電極ライン部と第2の電極バスバー部を離間させるようにした。また、第2の電極ライン部と第2の電極バスバー部を接続させる一方で、第2の電極ライン部と第1の電極バスバー部を離間させるようにした。また、同じ導電型用の電極ライン部と電極部が接続できるようにした。
【0119】
[実施例5〜8]
実施例5〜8では、図8に示すようなパターンの電極部、絶縁膜、電極ライン部及び電極バスバー部を形成した(図6j〜l)。
【0120】
図8に示すようなパターンの電極部を形成した。絶縁膜が形成される箇所以外の箇所において、直径200μmで、拡散層の延伸する方向に沿って、0.5mmピッチ間隔で設置したパターンとした。また、絶縁領域のみ、長さ4mm、幅100μmのライン状のパターンとした。焼結ペーストをスクリーン印刷により塗布し、乾燥、700℃5分の焼成を行い、このパターンを形成した。次に、絶縁領域に長さ3mm、幅500μmの絶縁膜を形成した。絶縁膜の材料として、ポリイミドペーストを用い、このペーストをスクリーン印刷により所定の箇所に塗布し、150℃で20分加熱し硬化させ、絶縁膜を形成した。
【0121】
次に、幅100μmの電極ライン部と、1.2mm幅の電極バスバー部を同時に形成した。熱硬化ペーストをスクリーン印刷により塗布し、乾燥し、200℃で30分間加熱して硬化させ、電極ライン部と電極バスバー部を同時に形成した。
【0122】
実施例5ではバスバー電極を1対、実施例6では2対、実施例7では3対、実施例8では4対とした。図8に示すように、バスバー電極とフィンガー電極の接続部は、導電型の違いにより交互に離間させるようにした。
【0123】
[比較例1]
比較例1では、コンタクト電極とバスバー電極のみを形成した。これらの電極の形状は、基板の端に幅1.2mmのバスバー電極が1対設けられ、それぞれのバスバー電極から幅100μmのコンタクト電極が、拡散層の延伸する方向に沿って設置されたパターンとした(図19)。焼結ペーストを用いて、スクリーン印刷により、所定の位置に塗布し、乾燥、および700℃5分の焼成を行った。
【0124】
このようにして作製した太陽電池90枚について、ソーラーシミュレーター(25℃の雰囲気の中、照射強度:1kW/m、スペクトル:AM1.5グローバル)による評価を行った。結果平均を図11〜14に示す。
【0125】
図11〜14は、実施例1〜8及び比較例1の実験結果を示すグラフである。図11は、直列抵抗の値を示す。図12は、曲線因子の値を示す。図13は、開放電圧の値を示す。図14は、変換効率の値を示す。図11〜14に示すように、従来法(比較例1)では配線抵抗が原因で直列抵抗が高く、曲線因子が減少していたが、実施例1では、バスバー電極とフィンガー電極を立体構造とし、コンタクト電極上にフィンガー電極を形成することにより、コンタクト面積を減少させ、フィンガー電極の断面積を大きくすることができた。その結果、配線抵抗が小さくなり、曲線因子が増加し、変換効率が向上した。また、実施例2〜4に示すように、バスバー本数を増加させたことにより、変換効率等を、更に向上させることができた。また、実施例5〜8に示すように、電極部の形状をドット状とし、コンタクト面積をさらに減少させることにより、開放電圧がさらに向上し、さらに変換効率を高めることができた。
【0126】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図20
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