【文献】
Klimke et al,Optimization and Application of Polyolefin Branch Quantification by Melt-State 13C-NMR Spectroscopy,Macromolecuar Chemistry and Physics,米国,WILEY-VCH,2006年,vol. 207, no. 4,382-395
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によるポリオレフィン分枝の分析方法は、a)複数の分枝(branch)を含むポリオレフィンを含む試料に対して、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)分光器およびパルスプログラムを用いて前記複数の分枝(branch)のピークがそれぞれ分離されたスペクトルを得るステップと、b)前記分離されたピークを用いて複数の分枝の含有比率を計算するステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
まず、本発明によるポリオレフィン分枝の分析方法は、a)複数の分枝(branch)を含むポリオレフィンを含む試料に対して、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)分光器を用いてスペクトルを得た後、前記得られたスペクトル中の前記複数の分枝(branch)のピークをそれぞれ分離するステップを含む。
【0013】
本発明で分析する分析対象は、ポリオレフィンを含む試料であり、前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、およびLDPEのうちのいずれか1つを用いることができ、好ましくはポリエチレンを用いることができる。
【0014】
前記ポリオレフィンは、複数の分枝(branch)を含むことができるが、分枝(branch)とは、ポリオレフィンの主鎖にある炭素に、水素の代わりに他の鎖が連結される場合がしばしばあるが、主鎖に連結された該鎖を分枝(branch)といい、例えば、PEの場合、枝か多くなると密度が相対的に低くなって低密度ポリエチレン(LDPE)になり、枝がほとんどないものは密度が高くなって高密度ポリエチレン(HDPE)になる。一般的に、線状ポリオレフィンが非線状ポリオレフィンより強いが、非線状ポリオレフィンの方がより安く、成形も容易である。
【0015】
本発明のポリオレフィンが含む複数の分枝は、
図1に示しているように、C1分枝(C1 branch)は主鎖まで含むプロピレン(propylene)分枝、C2分枝(C2 branch)は主鎖まで含むブテン(butene)分枝、C3分枝(C3 branch)は主鎖まで含むペンテン(pentene)分枝、C4分枝(C4 branch)は主鎖まで含むヘキセン(hexene)分枝、C5分枝(C5 branch)は主鎖まで含むヘプテン(heptene)分枝、C6分枝(C6 branch)は主鎖まで含むオクテン(octene)分枝などのように示すことができる。前記ポリエチレンの分枝は、短鎖分枝(SCB、short chain branch)と長鎖分枝(LCB、long chain branch)とに分けられる。通常、1−オクテン共単量体(1−octene comonomer)によって作られるC6分枝とそれ以上の分枝についてLCBと定義する。本発明のポリオレフィンは、前記SCBおよびLCBの両者を含むことができ、好ましくは、前記定義に基づいたC1〜C6のプロピレン(propylene)、ブテン(Butene)、ペンテン(Pentene)、ヘキセン(Hexene)、ヘプテン(Heptene)、およびオクテン(Octene)分枝のうちの2以上の分枝(branch)を含むことができる。
【0016】
本発明によるポリオレフィン分枝の分析方法は、ポリオレフィンを含む試料に対して、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)分光器およびパルスプログラムを用いて前記複数の分枝(branch)のピークがそれぞれ分離されたスペクトルを得るようにする。前記NMR分光器、パルスプログラムは、分析対象のポリオレフィンに含まれる分枝によって選択することができ、NMR分光器は、
1H−NMR分光器であれば特別な制限はないが、好ましくは、Bruker BBO probehead(w/z−gradient)とGradient unit[50G/cm]が装着されたBruker AVANCE III HD 700MHz NMR spectrometer(700mhz for proton and 176MHz for carbon)などを用いることができ、パルスプログラムとしては、ホモデカップリング(Homo−decoupling)パルスプログラムまたはproton−carbon hetero correlation2D法を利用するパルスプログラムを用いることができ、具体的には、Bruker社s/w Topspin v3.2に含まれたzghd.2またはzghd.3や、
1H−
13C HMQCパルスプログラム(pulse program)または
1H−
13C HSQCパルスプログラム(pulse program)などを用いることができる。ホモデカップリング(Homo−decoupling)パルスプログラムを用いる場合の測定時間は約2〜5分程度であり、proton−carbon hetero correlation2D法を利用するパルスプログラムを用いる場合の測定時間は約10〜30分程度かかる。
【0017】
まず、分析対象のポリオレフィンが、Hexene、HepteneおよびOctene分枝のうちの2以上の分枝(branch)を含む場合には、NMR分光器およびパルスプログラムを用いて複数の分枝(branch)のスペクトルが互いに重なる(coupling)部分をホモデカップリング(Homo−decoupling)してピークをそれぞれ分離してスペクトルを得る。これは、得られたスペクトル中、前記Hexene、HepteneおよびOctene分枝のピークが互いに重なる現象、すなわちカップリング(coupling)現象が現れると、前記カップリングを除去、すなわちホモデカップリング(Homo−decoupling)することにより、重なっていたピークをそれぞれ分離するのである。
【0018】
前記ホモデカップリングについて具体的にみると、
図2(b)のように、ヘキセン(hexene)とオクテン(octene)を含むポリエチレンにおいて、ヘキセン(hexene)とオクテン(octene)のメチル(methyl)ピークはすぐ隣の2番目の位置のメチレン(CH2)ピークによって三重カップリングパターン(triple coupling pattern)を示すが、このように互いに重なってカップリングされたピークに対して、デカップリング位置を変更しながらみると、特定領域でヘキセン(hexene)とオクテン(octene)のメチルピークが2つの分離された一重項(singlet)として現れることが分かるが、これにより、メチルピークのカップリングパターンを三重項から一重項に単純化させるデカップリングにより、各モノマーの積分比を求め、例えば、
1H−NMRで0.96ppmのヘキセンとオクテンのメチル領域(region)を各積分比で割ってモル比を算出することができる。
【0019】
したがって、ホモデカップリングの対象であるそれぞれの2番目の位置のprotonのデカップリング位置とデカップリング幅(decoupling width)などの最適値を見出すことが重要である。本発明において、前記ホモデカップリングパルスプログラムとしては、Bruker社s/w Topspin v3.2に含まれたzghd.2またはzghd.3を用いることができる。
【0020】
また、分析対象のポリオレフィンがPropyleneおよびButeneの分枝を含む場合には、
1H−
13C HMQCパルスプログラム(pulse program)または
1H−
13C HSQCパルスプログラム(pulse program)を用いてproton−carbon hetero correlation2D法による2次元のスペクトルを得る。より具体的には、プロピレン(C1)とブテン(C2)を含むポリエチレンを例としてみると、得られたスペクトルがプロピレン(C1)とブテン(C2)それぞれの分枝のメチルピークがほぼ同じ位置でそれぞれ二重項(doublet)と三重項(triplet)として現れるため、ホモデカップリング(Homo−decoupling)をしても一重項(singlet)2つのメチルピークを見ることができない。すなわち、デカップリング対象のメチルのすぐ隣のproton decoupling位置(O2P)が約0.1ppm以上離れていて、領域デカップリングpulse programを用いてもデカップリング効率が著しく低下する。しかし、カーボンピーク(carbon peak)は、proton−carbon hetero correlation2D法を利用して分離が可能なため、カーボンピークを基準としてプロピレン(C1)とブテン(C2)それぞれのピークを分離する。これは後述する実施例でさらに説明する。
【0021】
また、本発明は、分析対象のポリオレフィンがPropylene、Butene、Hexene、HepteneおよびOctene分枝のうちの2以上の分枝(branch)を含む場合、すなわち、LDPEのような低密度線状高分子の場合に対しても、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)分光器を用いてスペクトルを得た後、パルスプログラムを用いて前記得られたスペクトル中の前記複数の分枝(branch)のピークをそれぞれ分離することができる。この時には、Hexene、HepteneおよびOcteneの分枝に対しては、ホモデカップリングによりピークを分離し、PropyleneおよびButeneの分枝に対しては、proton−carbon hetero correlation2D法によりピークを分離することができる。
【0022】
本発明によるポリオレフィン分枝の分析方法は、b)前記分離されたピークを用いて複数の分枝の含有比率を計算するステップを含む。
【0023】
まず、前記複数の分枝の含有比率を計算するために、ホモデカップリングまたはproton−carbon hetero correlation2D法によって、それぞれ分離されたそれぞれのピークを積分して、それぞれの分枝に対する積分値を求める。前記分枝の含有比率は、ポリオレフィンに含まれた分枝の総数に対する当該分枝の個数をいい、好ましくは、ポリエチレン全体の炭素数1000個に対する各分枝の個数を計算して示すことができる。
【0024】
前記ポリオレフィンに含まれた炭素1000個あたりのそれぞれの分枝の個数は、下記式1によって計算することができる。
[式1]
炭素数1000個に対する分枝Aの個数=
=[モル比(分枝A)×1000]/[モル比(polyolefin)×l
PO+Σ(モル比(分枝k)×l
k)]
(式中、分枝kはポリオレフィンに含まれたそれぞれの分枝であり、l
kは分枝kモノマーの炭素数であり、l
POはポリオレフィン主鎖モノマーの炭素数である。)
【0025】
例えば、分枝Aと分枝Bを含むポリエチレンの場合に、前記分枝Aの積分値および前記分枝Bの積分値の比率を、
分枝Aの積分値:分枝Bの積分値=a:b(この時、a>bであればa=1、a<bであればb=1)で求めた後、
分枝Aおよび前記分枝Bの積分比(ratio)をそれぞれR
A=a/(a+b)、R
B=b/(a+b)で求める。
【0026】
以後、前記R
AとR
B値を用いて、主鎖エチレン、前記分枝Aおよび分枝Bの各組成(モル比)を、下記式2のように求める。
[式2]
主鎖エチレン(Ethylene):分枝A:分枝B=[CHとCH2領域の積分値−((M×R
A/3))×k
a−((M×R
B/3))×k
b]/4:[(M×R
A)/3)]:[(M×R
B)/3)]
(式中、Mは分枝Aおよび分枝Bのメチル(methyl)領域の積分値であり、k
aはa分枝中のCH
3を除いたプロトンの個数であり、k
bはb分枝中のCH
3を除いたプロトンの個数である。)
【0027】
上記式2により求めたそれぞれのモル比を用いて、
ポリエチレン全体の炭素数1000個に対する分枝Aおよび分枝Bの個数を、下記式3のように求める。
[式3]
炭素数1000個に対する分枝Aの個数=
=[モル比(分枝A)×1000]/[モル比(ethylene)×2+モル比(分枝A)×l
a+モル比(分枝B)×l
b]
(式中、l
aは分枝Aの炭素数であり、l
bは分枝Bの炭素数である。)
【0028】
上記式1で求められた値により炭素数1000個に対するそれぞれの分枝の個数を知ることができるが、これによりそれぞれの分枝の含有比率を計算する。
【0029】
例えば、エチレン、ヘキセンおよびオクテンを含むEHORにおいて、炭素数1000個に対する1−Hexene分枝の個数を求めると、下記式4のように求めることができる。
[式4]
炭素数1000個に対する(1−Hexene)の個数=
=[モル比(1−Hexene)×1000]/[モル比(ethylene)×2+モル比(1−Hexene)×6+モル比(1−Octene)×8]
【0030】
1H−
13C HMQCパルスプログラム(pulse program)または
1H−
13C HSQCパルスプログラム(pulse program)を用いて2次元のスペクトルを得た場合には、前記複数の分枝の分離されたピークを2Dピーク積分で積分する。前記積分された値によりそれぞれの分枝に含まれるカーボンの個数を知ることができるが、これによりそれぞれの分枝の含有比率を計算し、これも上記式1〜式4のような方法で各分枝の個数を計算することができる。
【0031】
1H−
13C HMQCパルスプログラム(pulse program)または
1H−
13C HSQCパルスプログラム(pulse program)を用いる場合、プロピレン(C1)とブテン(C2)のメチルピーク(methyl peak)を分離した後、これらを2Dピーク積分により含有量を測定することができるが、2Dピークは定量信頼性が確保されてはじめて意味があるため、分解能(resolution)が良いもののphase sensitive modeの
1H−
13C HSQC分光器よりは、感度(sensitivity)が良いmagnitude modeの
1H−
13C HMQC NMR分光器を用いる方がより好ましい。
【0032】
本発明によるポリオレフィン分枝の分析システムは、a)複数の分枝(branch)を含むポリオレフィンを含む試料に対して、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)分光器およびパルスプログラムを用いて前記複数の分枝(branch)のピークがそれぞれ分離されたスペクトルを得るピーク分離モジュールと、b)前記分離されたピークを用いて複数の分枝の含有比率を計算する計算モジュールとを備える。
【0033】
本発明によるポリオレフィン分枝の分析において、前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、およびLDPEのうちのいずれか1つであり、前記ポリオレフィンは、プロピレン(propylene)、ブテン(Butene)、ペンテン(Pentene)、ヘキセン(Hexene)、ヘプテン(Heptene)およびオクテン(Octene)分枝のうちの2以上の分枝(branch)を含むことができる。
【0034】
本発明によるポリオレフィン分枝の分析システムにおいて、前記複数の分枝(branch)を含むポリオレフィンがヘキセン(Hexene)、ヘプテン(Heptene)およびオクテン(Octene)分枝のうちの2以上の分枝(branch)を含む場合には、a)ピーク分離モジュールにおいて、パルスプログラムを用いて複数の分枝(branch)のスペクトルが互いに重なる(coupling)部分をホモデカップリング(Homo−decoupling)してピークをそれぞれ分離することができる。
【0035】
本発明によるポリオレフィン分枝の分析システムにおいて、前記複数の分枝(branch)を含むポリオレフィンがプロピレン(propylene)およびブテン(Butene)分枝を含む場合には、前記a)ピーク分離モジュールにおいて、パルスプログラムを用いてproton−carbon hetero correlation2D法による2次元のスペクトルを得た後、複数の分枝(branch)のスペクトルのピークをそれぞれ分離することができ、前記パルスプログラムは、
1H−
13C HMQCパルスプログラムまたは
1H−
13C HSQCパルスプログラムを用いることができる。この時、前記b)計算モジュールにおいて、前記複数の分枝の分離されたピークを積分した積分値でそれぞれの分枝の積分比を求めた後、積分比を用いてそれぞれのモル比を求めて複数の分枝の含有比率を計算する。
【0036】
本発明によるポリオレフィン分枝の分析システムにおいて、前記b)計算モジュールの複数の分枝の含有比率は、ポリオレフィンに含まれた炭素1000個あたりのそれぞれの分枝の個数を意味する。
【0037】
本発明によるポリオレフィン分枝の分析システムにおいて、前記b)計算モジュールの炭素1000個あたりのそれぞれの分枝の個数は、下記式1によって炭素1000個あたりのそれぞれの分枝の個数を計算することができる。
[式1]
炭素数1000個に対する分枝Aの個数=
=[モル比(分枝A)×1000]/[モル比(polyolefin)×l
PO+Σ(モル比(分枝k)×l
k)]
(式中、分枝kはポリオレフィンに含まれたそれぞれの分枝であり、l
kは分枝kモノマーの炭素数であり、l
POはポリオレフィン主鎖モノマーの炭素数である。)
【0038】
本発明において、モジュール(module)との用語は、特定の機能や動作を処理する1つの単位を意味し、これはハードウェアやソフトウェアまたはハードウェアおよびソフトウェアの結合で実現することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、下記に開示される本発明の実施例はあくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。本発明の範囲は特許請求の範囲に示されており、なおかつ特許請求の範囲の記録と均等な意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【0040】
実施例
実施例1:EHORのhexeneとocteneのメチルピーク(methyl peak)の分離
1−Hexeneと1−Octeneを含むpolyethylene(EHOR、BASELL社製品)を100℃でTCE−d
2溶媒に溶かして、10mg/mLの濃度の試料を用意した後、以下のような
1H−NMR実験条件で2分間測定した。
【0041】
NS:16、D1:3sec、P1:〜30゜Pulse width、Pulse program:zg、Temperature:100℃
【0042】
以後、Homo−decoupling pulse programとしてBruker社s/w Topspin v3.2に含まれたzghd.3を用いて、次のような最適のデカップリングセンター(decoupling center)を見出した。
【0043】
まず、1−Hexeneと1−Octeneのメチルとカップリング(coupling)しているすぐ隣の2番目の位置のメチレン(CH2、
図2(b)の矢印部分)peakをdecouplingしてメチルピーク(methyl peak)のカップリングパターン(coupling pattern)を三重項(triplet)から一重項(singlet)に単純化させた。
【0044】
前記デカップリングセンター(Decoupling center)を1.30ppmから1.42ppmまで変更しながら最適の位置を探索した結果、1.38〜1.40ppmと確認され、より細かく探索した結果、デカップリングセンター(Decoupling center)が1.38ppmと1.39ppmの時には、hexeneとocteneの積分値比(ratio)の差がほとんどないが、デカップリングセンター(Decoupling center)が1.40ppmの場合は、約10%程度の差があることが分かった。したがって、ピーク形状(peak shape)などを考慮する場合は、EHORのデカップリングセンター(Decoupling center)は1.39ppmと決定した。
【0045】
以後、パルスプログラム(Pulse program)を用いて、デカップリングセンター(Decoupling center)値を1.39ppmとし、PLW24=26.4dB、P31=5msec、D31=0.5msec、cpdprg2=hdの条件で、1−Hexeneと1−Octeneの積分比を
図3のように求めた。
【0046】
積分比はHexene:Octene=1.00:0.83であり、積分比(ratio)はR
Hex=1.00/(1.00+0.83)、R
Oct=0.83/(1.00+0.83)で求めた。
【0047】
以後、前記試料の
1H−NMRピークを
図4のように求めた後、各領域の積分値を用いて、各ethylene、1−Hexeneと1−Octeneのモル比を次のように計算する。
Ethylene(モル比):1−hexene(モル比):1−octene(モル比)
=[A−((B×R
Hex)/3)×9−(B×R
Oct)×13]/4:(B×R
Hex)/3:(B×R
Oct)/3
【0048】
上記で求めたそれぞれのモル比を用いて、1−Hexeneの分枝(Branch)の個数を計算すれば次の通りである。
1−Hexeneの分枝(Branch)の個数
=[モル比(1−hexene)×1000]/[モル比(ethylene)×2+モル比(1−hexene)×6+モル比(1−octene)×8]
1−Octeneの分枝(Branch)の個数
=[モル比(1−Octene)×1000]/[モル比(ethylene)×2+モル比(1−hexene)×6+モル比(1−octene)×8]
【0049】
このように求めた、モル比、重量%比、炭素1000個あたりの1−Hexeneの分枝(Branch)の個数および炭素1000個あたりの1−Hexeneの分枝(Branch)の個数を、下記表1に示した。
【表1】
【0050】
実施例2:EHBPRのpropyleneとbuteneのメチルピーク(methyl peak)の分離
propyleneとbuteneを含むpolyethylene(EHBPR、DNP社製品)を100℃でTCE−d
2溶媒に溶かして、10mg/mLの濃度の試料を用意した後、以下のような
1H−NMR実験条件で2分間測定した。
【0051】
NS:16、D1:3sec、P1:〜30゜Pulse width、Pulse program:zg、Temperature:100℃
【0052】
以後、proton−carbon hetero correlation 2D pulse programとしてBruker社s/w Topspin v3.2に含まれたhsqcedetgp(HSQC、FnMODE=echo−antiecho)、hmqcgpqf(HMQC、FnMODE=QF)を用いて、次のようなパラメータで分析した。
cnst2[J(XH)=145Hz]、ns=4、d1=1.5sec、TD=1K×128
【0053】
前記2D Pulse program hsqcedetgp(HSQC、Phase sensitive&CHn editing mode、FnMODE=echo−antiecho)、hmqcgpqf(HMQC、Magnitude mode、FnMODE=QF)を用いて比較した結果は、
図5(a)の通りである。
13C−NMRにおける各モノマーのmethyl peaksの積分値が真値と仮定する時、HSQCとHMQCの2Dpeaksと比較した結果、HSQCとHMQCにおけるbuteneとpropyleneのmethyl peakの積分値は約10%前後で格別の差を見せなかった。また、前記propyleneとbuteneを含むpolyethylene(EHBPR)を
13C−NMR分光器を用いて測定したスペクトルの積分値を
図5(c)に示しており、これを前記
図5(a)および
図5(b)の2Dピーク値と比較すると、ほぼ類似の値を有することが分かった。
【0054】
一方、前記
図5(a)で求めたbuteneとpropyleneの積分比は1.00:0.07であり、積分比(ratio)はR
Pr=1.00/(1.00+0.07)、R
Bu=0.07/(1.00+0.07)で求めた。
【0055】
以後、前記試料の
1H−NMRピークを
図6のように求めた後、各領域の積分値を用いて、各ethylene、1−hexene、1−buteneおよび1−propyleneのモル比を次のように計算する。
Ethylene(モル比):1−hexene(モル比):1−butene(モル比):1−propylene
=[A−(B/3)×9−((C×R
Bu)/3)×5−((C×R
Pr)/3)×3]/4:B/3:(C×R
Bu)/3:(C×R
Pr)/3
【0056】
上記で求めたそれぞれのモル比を用いて、1−Hexeneの分枝(Branch)の個数を計算すれば次の通りである。
1−Hexeneの分枝(Branch)の個数
=[モル比(1−hexene)×1000]/[モル比(ethylene)×2+モル比(1−hexene)×6+モル比(1−butene)×4+モル比(1−propylene)×3]
1−buteneの分枝(Branch)の個数
=[モル比(1−butene)×1000]/[モル比(ethylene)×2+モル比(1−hexene)×6+モル比(1−butene)×4+モル比(1−propylene)×3]
1−propyleneの分枝(Branch)の個数
=[モル比(1−propylene)×1000]/[モル比(ethylene)×2+モル比(1−hexene)×6+モル比(1−butene)×4+モル比(1−propylene)×3]
【0057】
このように求めた、モル比、重量%比、炭素1000個あたりの1−Hexeneの分枝(Branch)の個数、炭素1000個あたりの1−Buteneの分枝(Branch)の個数、および炭素1000個あたりの1−Propyleneの分枝(Branch)の個数を、下記表2に示した。
【0058】
【表2】
【0059】
実施例3:LDPEのhexene、hepteneおよびocteneのメチルピーク(methyl peak)の分離
propylene、butene、hexene、hepteneおよびocteneによる分枝がすべて存在する低密度ポリエチレンのLDPE(low density poly ethylene、エルジー化学社製品)に対して、hexene、heptene、octeneは実施例1の方法でそれぞれのmethyl peaks ratioを求め、propyleneとbuteneは実施例2の方法でそれぞれのmethyl peaks ratioを求める方式で2つの方法を混合した。
【0060】
実施例1のHomo−decouplingは、zghd.3[デカップリングセンター=1.40ppm、PLW24=26.4dB、CPDPRG2=hd、P31=variable(1〜5msec)、D31=0.5ms]を用い、実施例2のproton−carbon hetero correlation2Dは、hmqcgpqf[cnst2=145Hz、ns=4、d1=1.5sec、TD=1K×128]を用いた。
【0061】
hexene(C4)、heptene(C5)、octene(C6)は、ホモデカップリング(Homo−Decoupling)手法を適用して、
図7のようにそれぞれのメチルピーク(methyl peak)を分離して示した。
【0062】
実施例1に比べて、Hepteneが追加されて相対的に低い分解能を示したが、積分によりそれぞれのメチルピーク(methyl peak)の比(ratio)が十分に求められる程度に分離された。
【0063】
Propylene(C1)、Butene(C2)は、proton−carbon hetero correlation2D手法を適用して、
図8のようにそれぞれのメチルピークを分離して示した。
【0064】
これにより、前記LDPEの分枝に対する組成(重量%)および炭素1000個あたりのそれぞれの分枝(Branch)の個数は、下記表3の通りである。
【0065】
【表3】
【0066】
また、
13C−NMRを用いて分析した炭素1000個あたりのそれぞれの分枝(Branch)の個数と、実施例3でHomo−decouplingおよびHMQCを用いて分析した炭素1000個あたりのそれぞれの分枝(Branch)の個数とを比較した結果を、表4に示した。
【0067】
【表4】
【0068】
前記表4に示されているように、若干の差はあるものの、Homo−decouplingおよびHMQCを用いて分析した分枝(Branch)の含有量値が、
13C−NMRを用いて分析した結果と類似の値を示すことが分かった。