特許第6220382号(P6220382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6220382ドアに輸送用クッションが取り付けられたウェーハ容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6220382
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】ドアに輸送用クッションが取り付けられたウェーハ容器
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20171016BHJP
   B65D 85/86 20060101ALI20171016BHJP
【FI】
   H01L21/68 T
   B65D85/38 D
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-510512(P2015-510512)
(86)(22)【出願日】2013年5月6日
(65)【公表番号】特表2015-517730(P2015-517730A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】US2013039769
(87)【国際公開番号】WO2013166515
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2016年5月6日
(31)【優先権主張番号】61/643,158
(32)【優先日】2012年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バリー・グレガーソン
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−060994(JP,A)
【文献】 特開2012−004380(JP,A)
【文献】 特開2000−021966(JP,A)
【文献】 特開2004−304122(JP,A)
【文献】 特開2011−233934(JP,A)
【文献】 特開2000−159288(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0295638(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 85/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径ウェーハを搬送するための着脱式ウェーハクッションを備えたクッション付きウェーハ容器システムであって、
半導体ウェーハを複数枚収容できるよう構成された前面開口と後壁のあるウェーハ容器収容部があって、この収容部にウェーハの縁を受ける複数の挿入部が形成されたウェーハ支持部材が複数設けられ、各ウェーハの外周に第1、第2、第3、第4の象限を定めたときこのウェーハ支持部材がウェーハの第1象限の外周の第1部分と第4象限の外周の第1部分を支持するようになっており、
ウェーハ収容部の前面開口に取り付けられるよう構成された前側と裏側のある前面ドアがあって、その裏側がウェーハ収容部の内部に面しており、
前面ドアの裏側の中央部に主ウェーハクッションが設けられており、この主ウェーハクッションに複数のウェーハ溝が形成され、この溝でウェーハの第1象限の外周の第2部分と第4象限の外周の第2部分を受け入れて支持できるようになっており、主ウェーハクッションの溝がそれぞれウェーハ支持部材の挿入部と一直線上に並んでおり、
前面ドアの裏側に主ウェーハクッションの第1側面と隣接させて取り付けることのできる主ウェーハクッションとは別体の第1の着脱式ウェーハクッションがあって、この第1の着脱式ウェーハクッションに主ウェーハクッションの溝およびウェーハ支持部材の挿入部と一直線上に並ぶ複数のウェーハ受け溝が形成されており、この第1の着脱式ウェーハクッションでウェーハの第1象限の外周の第3部分を支持できるように構成されており、
前面ドアの裏側に主ウェーハクッションの第2側面と隣接させて取り付けることのできる主ウェーハクッションとは別体の第2の着脱式ウェーハクッションがあって、この第2の着脱式ウェーハクッションに主ウェーハクッションの溝およびウェーハ支持部材の挿入部と一直線上に並ぶ複数のウェーハ受け溝が形成されており、この第2の着脱式ウェーハクッションでウェーハの第4象限の外周の第3部分を支持できるように構成されていることを特徴とするウェーハ容器システム。
【請求項2】
請求項1のシステムであって、第1象限の外周に第4の支持されていない部分があり、この第4の支持されていない部分の周長が第1の着脱式ウェーハクッションで支持される第3部分の周長よりも短いことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1のシステムであって、第1の着脱式ウェーハクッションの溝の頂点に複数のウェーハ当接部が形成されており、ウェーハ収容部が輸送のため縦向きの姿勢にされたときに複数枚のウェーハの縁をこのウェーハ当接部でそれぞれ受けることができるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1のシステムであって、第1の着脱式ウェーハクッションがドアの裏側に取り付けるための複数の取り付け突出片を備えていることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4のシステムであって、複数の取り付け突出片がドアの縦方向の隔壁にある複数の穴に取り付けられることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1のシステムであって、第1の着脱式ウェーハクッションの前面が主ウェーハクッションの横の余白部に隣接して平行になることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1のシステムであって、ウェーハ収容部の後壁に後側の着脱式ウェーハクッションが取り付けられ、ウェーハの一部を受けて支持できるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1のシステムであって、第1の着脱式ウェーハクッションがドアの裏側に着脱可能に取り付けられていることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1のシステムであって、ウェーハの第1象限と第4象限において、ウェーハの外周のうち主クッションやウェーハ支持部材で支持されていない部分の半分以上を第1と第2の着脱式クッションで支持できるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項10】
ウェーハクッションキットであって、
半導体ウェーハを複数枚収容できるよう構成された前面開口と後壁のあるウェーハ容器収容部があって、この収容部にウェーハの縁を受ける複数の挿入部が形成されたウェーハ支持部材が複数設けられており、
ウェーハ収容部の前面開口に取り付けられるよう構成された前側と裏側のある前面ドアがあって、その裏側がウェーハ収容部の内部に面しており、その前面ドアの裏側には主ウェーハクッションを備えており、
前面ドアの裏側に着脱可能に取り付けることでき、主ウェーハクッションとは別体の第1のウェーハクッションがあって、この第1のウェーハクッションに複数枚のウェーハの縁を受け入れるための複数のウェーハ溝が形成され、この主ウェーハクッションの溝がそれぞれウェーハ支持部材の挿入部と一直線上に並んでおり、この第1のウェーハクッションで複数枚のウェーハを水平状態で受けて支持できるように構成されており、
前面ドアの裏側に着脱可能に取り付けることでき、主ウェーハクッションとは別体ののウェーハクッションがあって、この第のウェーハクッションに複数枚のウェーハの縁を受け入れるための複数のウェーハ溝が形成され、この主ウェーハクッションの溝がそれぞれウェーハ支持部材の挿入部と一直線上に並んでおり、この第のウェーハクッションで複数枚のウェーハを立てた状態で受けて支持できるように構成されており、
前面ドアに第1のウェーハクッションと第2のウェーハクッションのいずれかを取り付けることができるように構成されていることを特徴とするウェーハクッションキット。
【請求項11】
請求項10のウェーハクッションキットであって、第1ウェーハクッションが複数枚のウェーハの縁を受けるための複数の第1当接部を備え、第2のウェーハクッションが複数枚のウェーハの縁を受けるための複数の第2当接部を備えていることを特徴とするウェーハクッションキット。
【請求項12】
請求項11のウェーハクッションキットであって、各ウェーハの外周のうち、第1ウェーハクッションの第1当接部が受ける部分よりも、第2のウェーハクッションの第2当接部が受ける部分のほうが長いことを特徴とするウェーハクッションキット。
【請求項13】
請求項10のウェーハクッションキットであって、第2ウェーハクッションがドアの中央から横方向に、第1ウェーハクッションが横に張り出す距離よりも長く張り出していることを特徴とするウェーハクッションキット。
【請求項14】
請求項10のウェーハクッションキットであって、ウェーハ収容部の後壁に取り付けられるように構成された後側ウェーハクッションをさらに備えていることを特徴とするウェーハクッションキット。
【請求項15】
大径で水平型ウェーハ容器をウェーハ輸送容器に転換する方法であって、加工プロセス中にウェーハを支持できるように構成された主ウェーハクッションがウェーハ容器のドアの中央に取り付けられており、
ウェーハ容器の収容部からウェーハ容器のドアを取り外す過程を含み、
ドアの第1部分に第1の着脱式ウェーハクッションを主ウェーハクッションの第1側面と隣接させて取り付ける過程を含み、第1の着脱式ウェーハクッションが主ウェーハクッションとは別体であり
ドアの第2部分に第2の着脱式ウェーハクッションを主ウェーハクッションの第2側面と隣接させて取り付ける過程をみ、第2の着脱式ウェーハクッションが主ウェーハクッションとは別体であることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2012年5月4日に出願した「ドアに輸送用クッションが取り付けられたウェーハ容器」と題する米国仮出願第61/643158号の優先権を主張し、その全文を本明細書に参照援用する。
【0002】
本発明は、半導体ウェーハ等の繊細な基板用の容器と、特にそのような容器のウェーハクッションに関するものである。
【背景技術】
【0003】
コンピュータチップなどの集積回路は半導体ウェーハから製造される。このウェーハは、集積回路を製造する過程で多くの工程を経る。これは一般的に、複数枚のウェーハを処理のためにひとつの場所から別の場所に搬送することが伴う。処理手順の一部として、ウェーハは容器に入れて一時的に保管したり、別の工場やエンドユーザに輸送することもある。このような施設内、施設間の移動があると、ウェーハをだめにする可能性のある汚染物質や物理的な衝撃が生じたり、そうした汚染物質や衝撃にウェーハがさらされたりすることがある。このような状態がウェーハに与える悪影響を低減するため、汚染物質の生成をできるだけ抑えるとともにウェーハを物理的な衝撃から隔離できる特殊な容器が開発されてきた。
【0004】
プラスチック製容器は、処理工程の間に、ウェーハを搬送・保管するための数十年間使用されてきた。このような容器は、処理設備だけでなく、容器を搬送する設備・ロボットとの接触部の許容範囲が高度に制御されている。ネジ等の金属製の固定具は取り付け、取り外し時に粒子生成を引き起こす可能性があるため、こうしたプラスチック容器には金属製の固定具を使わずに着脱できるような部品を使用するのが望ましい。
【0005】
他にも半導体ウェーハを搬送・保管する容器に必要となる望ましい特性としては、軽量、剛性、清潔で、ガスの排出量が限られており、製造の費用効果が高いことがある。容器が閉じている時は、ウェーハが気密状態、あるいは気密に近い状態に隔離される。簡単に言えば、こういった容器はウェーハを清浄でかつ汚染や損傷のない状態に維持できる必要がある。さらに搬送容器は、容器の上部に来たロボットフランジによって搬送容器を持ち上げられるなど、ロボットによる過酷な取り扱いの間もその機能を維持できる必要がある。
【0006】
前面開口ウェーハ容器は、300mmの大径ウェーハを搬送・保管する場合の業界標準となっている。このような容器では、前面のドアを収容部のドア枠内にラッチで止めて、ウェーハがロボットで挿入されたり取り出されたりする際に通る前面の出し入れ用開口を閉じることができるようになっている。ウェーハが容器に完全に格納されたら、ドアを収容部のドア枠に嵌め込みラッチを掛けてそこに止める。ドアが装着されるとドアに付いているクッションがウェーハを上方、下方、内方に拘束する。
【0007】
半導体産業は現在、さらに大きな直径450mmのウェーハを使用する傾向にある。大径のウェーハは費用効果が大きいが、同時にもろさが増加し重さが大きくなり、プラスチック製の容器内で大径ウェーハを取り扱ったり保管したりすることに伴う未発見の問題もある。上面、下面、側面、前面、背面のプラスチックの面積が広がるのに伴い、たわみやこれに関連する問題は悪化してくるが、シールが不均一であったり容器表面がたわんでドアとドア枠との界面が歪んだりすることによるドアのシール問題もまた悪化してくる。
【0008】
施設間で輸送するとき、それも容器を個別に輸送する場合は特に、ウェーハ容器が物理的な衝撃を受ける可能性があるという特有の問題が発生する。ウェーハ容器のなかでも特に300mmと450mmのウェーハなどの大径ウェーハ用のものは、通常、棚の上にウェーハを支持・緩衝して、各ウェーハの面が大体水平となるように設計されている。しかし個別に輸送する場合、ウェーハ容器がひっくり返されたりしてウェーハが水平にならないような姿勢に置かれることがある。また容器は取り扱いの際にかなりの衝撃荷重を受けることがある。こういった荷重は8Gを超えることや20G以上に達することもあり、適切に支持あるいは拘束されていないウェーハは破損する可能性がある。
【0009】
ウェーハ容器の搬送中にウェーハが破損するというこの問題に対する以前からの試みは、密封されたウェーハ容器の外側に外部緩衝材や梱包を追加で設けるものであった。この従来の試みはある程度は成功しているが、容器を搬送する際にウェーハが損傷するという問題に完全には対処できていない。
【0010】
当業界で必要とされているのは、通常の輸送条件で物理的衝撃に対する耐久性が高くウェーハ支持性能の良好なウェーハ容器である。
【発明の概要】
【0011】
本発明の各種実施例は、通常の輸送条件で物理的衝撃に対する耐久性が高くウェーハ支持性能の良好なウェーハ容器のための当業界の需要に応える。この問題は特に直径450mm以上のウェーハ用の容器で発生する。
【0012】
ひとつの実施例として、ウェーハ容器の前面ドアの内側面にある通常の主ウェーハクッションの両横に着脱式輸送用クッションを設ける。この輸送用クッションは、容器内のウェーハの前縁に対し、離れた位置でのさらなる支えとなる。ここで開示している着脱式輸送用クッションを含め、この輸送用クッションによれば、ウェーハ容器の物理的衝撃に対する耐久性が従来技術のウェーハ容器の倍以上に向上する。これにより、SEMI標準規格E159でいう二次梱包の中での緩衝要件が緩和できるとともに自動化に伴う機能が完全なものになる。
【0013】
ひとつの実施例として、特許請求する本発明は、大径ウェーハを搬送するための着脱式ウェーハクッションを備えたクッション付きウェーハ容器システムを含む。このシステムには、半導体ウェーハを複数枚収容できるよう構成された前面開口と後壁のあるウェーハ容器収容部があって、この収容部にウェーハの縁を受ける複数の挿入部が形成されたウェーハ支持部材が複数設けられ、各ウェーハの外周に第1、第2、第3、第4の象限を定めたときこのウェーハ支持部材がウェーハの第1象限の外周の第1部分と第4象限の外周の第1部分を支持するようになっており、ウェーハ収容部の前面開口に取り付けられるよう構成された前側と裏側のある前面ドアがあって、その裏側がウェーハ収容部の内部に面しており、前面ドアの裏側の中央部に主ウェーハクッションが設けられており、この主ウェーハクッションに複数のウェーハ溝が形成され、この溝でウェーハの第1象限の外周の第2部分と第4象限の外周の第2部分を受け入れて支持できるようになっており、主ウェーハクッションの溝がそれぞれウェーハ支持部材の挿入部と一直線上に並んでおり、前面ドアの裏側に主ウェーハクッションの第1側面と隣接させて取り付けることのできる第1の着脱式ウェーハクッションがあって、この第1の着脱式ウェーハクッションに主ウェーハクッションの溝およびウェーハ支持部材の挿入部と一直線上に並ぶ複数のウェーハ受け溝が形成されており、この第1の着脱式ウェーハクッションでウェーハの第1象限の外周の第3部分を支持できるように構成されており、前面ドアの裏側に主ウェーハクッションの第2側面と隣接させて取り付けることのできる第2の着脱式ウェーハクッションがあって、この第2の着脱式ウェーハクッションに主ウェーハクッションの溝およびウェーハ支持部材の挿入部と一直線上に並ぶ複数のウェーハ受け溝が形成されており、この第2の着脱式ウェーハクッションでウェーハの第4象限の外周の第3部分を支持できるように構成されている。
【0014】
別の実施例として、特許請求する本発明は、大径ウェーハ容器のドアの裏側に取り付けられ、輸送中にウェーハ容器内のウェーハを支持するための着脱式ウェーハクッションを含む。この着脱式ウェーハクッションには、ウェーハの縁を受けることのできる複数の溝が形成された第1本体部があって、この溝の中にウェーハ当接部が形成され、ウェーハ収容部が輸送のため縦向きの姿勢にされたときにこのウェーハ当接部でウェーハの縁を受けるよう構成されており、第1本体部から外方に張り出す複数の第1取り付け突出片が第1本体部の長さ方向に分散配置されており、この取り付け突出片の先端がドアの裏側にある穴に嵌合できるように構成されている。
【0015】
別の実施例として、特許請求する本発明は、ウェーハクッションキットを含む。このウェーハクッションキットには、半導体ウェーハを複数枚収容できるよう構成された前面開口と後壁のあるウェーハ容器収容部があって、この収容部にウェーハの縁を受ける複数の挿入部が形成されたウェーハ支持部材が複数設けられており、ウェーハ収容部の前面開口に取り付けられるよう構成された前側と裏側のある前面ドアがあって、その裏側がウェーハ収容部の内部に面しており、前面ドアの裏側に着脱可能に取り付けることのできる第1のウェーハクッションがあって、この第1のウェーハクッションに複数枚のウェーハの縁を受け入れるための複数のウェーハ溝が形成され、この主ウェーハクッションの溝がそれぞれウェーハ支持部材の挿入部と一直線上に並んでおり、この第1のウェーハクッションで複数枚のウェーハを水平状態で受けて支持できるように構成されており、前面ドアの裏側に着脱可能に取り付けることのできる第1のウェーハクッションがあって、この第1のウェーハクッションに複数枚のウェーハの縁を受け入れるための複数のウェーハ溝が形成され、この主ウェーハクッションの溝がそれぞれウェーハ支持部材の挿入部と一直線上に並んでおり、この第1のウェーハクッションで複数枚のウェーハを立てた状態で受けて支持できるように構成されており、前面ドアに第1のウェーハクッションと第2のウェーハクッションのいずれかを取り付けることができるように構成されている。
【0016】
別の実施例として、特許請求する本発明は、大径で水平型ウェーハ容器をウェーハ輸送容器に転換する方法を含む。この方法は、加工プロセス中にウェーハを支持できるように構成された主ウェーハクッションがウェーハ容器のドアの中央に取り付けられており、ウェーハ容器の収容部からウェーハ容器のドアを取り外す過程と、ドアの第1部分に第1の着脱式ウェーハクッションを主ウェーハクッションの第1側面と隣接させて取り付ける過程と、ドアの第2部分に第2の着脱式ウェーハクッションを主ウェーハクッションの第2側面と隣接させて取り付ける過程とが含まれる。
【0017】
別の実施例として、特許請求する本発明は、大径・水平型ウェーハ容器をウェーハ輸送容器に転換する方法を含む。この方法は、ウェーハ容器の収容部からウェーハ容器のドアを取り外す過程と、ウェーハ容器のドアから主ウェーハクッションを取り外す過程と、ドアに着脱式ウェーハクッションを取り付けて主ウェーハクッションの代わりとする過程とを含み、ウェーハ容器内に収容される複数枚のウェーハのそれぞれの外周のうちこの着脱式ウェーハクッションで受けることのできる部分を大きくする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
添付の図面に関連する様々な実施例についての以下の詳細な説明を考慮すれば、本発明の実施例をさらに完全に理解することができる。
図1図1は、本発明のひとつの実施例となる着脱式輸送用クッションを備えた前面開口ウェーハ容器の分解正面斜視図である。
図2図2は、本発明のひとつの実施例となる前面開口ウェーハ容器に二次梱包部材を設けた分解斜視図である。
図3図3は、図1のウェーハ容器の前面ドアとウェーハ支持部材の斜視図である。
図4図4は、図1のウェーハ容器の着脱式輸送用クッションを備えた前面ドア構造の分解斜視図である。
図5図5は、主ウェーハクッションを備えたウェーハ容器のドアの上面図である。
図6図6は、図5のドアに本発明のひとつの実施例となる着脱式ウェーハクッションとウェーハの入ったウェーハ収容部とを付け足した上面図である。
図7図7は、図6のクッションを備えたドアを図6の収容部に取り付けた上面図である。
図8図8は、主ウェーハクッションを備えたウェーハ容器のドアの上面図である。
図9図9は、図8のドアの主ウェーハクッションを本発明のひとつの実施例となる拡張型の着脱式ウェーハクッションに置き換えた上面図である。
図10図10は、図9のクッションを備えたドアを図9の収容部に取り付けた上面図である。
図11図11は、主ウェーハクッションを備えたウェーハ容器のドアの上面図である。
図12図12は、図11のドアに本発明のひとつの実施例となる着脱式ウェーハクッションとウェーハの入ったウェーハ収容部とを付け足した上面図である。
図13図13は、図12のクッションを備えたドアを図12の収容部に取り付け、後壁に本発明のひとつの実施例となる左右一対の後側ウェーハクッションを取り付けたものの上面図である。
図14図14は、主ウェーハクッションを備えたウェーハ容器のドアの上面図である。
図15図15は、図14のドアの主ウェーハクッションを本発明のひとつの実施例となる拡張型の着脱式ウェーハクッションに置き換えた上面図である。
図16図16は、図15のクッションを有するドアを図15の収容部に取り付け、後壁に本発明のひとつの実施例となる後側ウェーハクッションを取り付けたものの上面図である。
図17図17は、ウェーハを例示的に周方向にいくつかの領域に分割し、本発明のひとつの実施例となるウェーハ搬送容器に入れて支持させた上面図を表す。
図18図18は、本発明のひとつの実施例となるウェーハクッションキットを示す。
図19-20】図19図20は、本発明の実施例となる着脱式輸送用クッションを備えていない従来のウェーハ容器を用いて行った脆弱性試験のグラフによる結果を示す。
図21-22】図21図22は、本発明のひとつの実施例となる着脱式輸送用クッションを備えたウェーハ容器を用いて行った脆弱性試験のグラフによる結果を示す。
【0019】
本発明は様々な修正や代替形態が可能であるが、その詳細は図面に例として示したほか、以下で詳細に説明する。その意図は本発明をここに説明する特定の実施例に限定するものではないばかりか、本発明の趣旨および範囲に含まれるすべての修正、均等物、代替物を包含させるものと理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本出願の目的では相対的な方向を「x」「y」「z」を用いて説明することがあるが、容器の各部品に対するこれらの呼称は図1の一部に示した方向指示と一致させているつもりである。前面、背面ないし後面、側面、上部、下部などの相対的な向きに関する用語は、特許請求する本発明の実施例に関連して以下でも説明しており、特に図1を参照している。
【0021】
図1を参照すると、前面開口ウェーハ容器20は概して収容部22と前面ドア24から構成される。収容部22は概して上壁26、底壁27、側壁28(左壁)、側壁30(右壁)、後方あるいは後壁32、そして前面開口36を形成するドア枠34を備えている。また、ドア枠34の上面42と底面46のそれぞれにラッチボルト用凹部56が形成されている。ラッチボルト用凹部56はそれぞれ隆起部58に囲まれている。ドア枠34の内縁57には外側に面するロック溝55が形成されている。収容部22の中には、複数の挿入部62にウェーハを受け入れることのできるウェーハ支持構造体60を設けてもよい。当技術分野で知られているように、収容部22の頂部と底部の外側の面にはそれぞれロボットで持ち上げるためのフランジ64とキネマティックカップリング66を設けてもよい。
【0022】
前面ドア24は概して裏側70、表側72、外周上面74、外周側面76、78、外周底面80のある本体部68を備えている。表側72には一対のラッチ凹部(図示せず)が形成されており、前面パネル82によって覆われている。ラッチ凹部はそれぞれキーで操作可能なラッチ機構(図示せず)を受け入れるようになっており、キーを前面パネル82の鍵穴84に挿入し随意にラッチボルト86を前進させたり後退させたりすることで、収容部22のラッチボルト用凹部56に係合させ、前面ドア24をドア枠34に固定できるようになっている。このラッチ機構は概して米国特許第4995430号、第7182203号、第7168587号のいずれかに開示されている通りに構成することができる。これらの特許はすべて本出願の所有者が所有するものであり、すべて本明細書に参照援用する。
【0023】
特許請求する本発明のウェーハ容器20、ウェーハ、着脱式クッションなどの様々な構成部材の向きを説明する目的で、本明細書を通して「前」「後」「上」「底」「側」(右側と左側を含む)などのような用語を使用する。このような相対的な位置に関する用語はそこで説明しているウェーハ容器20の壁や開口と整合しており、例えば「前」は前面開口36の向かう方向あるいはその付近の位置を示すものと理解されたい。
【0024】
図2に示すように、ウェーハ容器20は個別に二次梱包87に入れて輸送することができる。二次梱包87は、一般的に段ボール箱87Aと緩衝材87B、87Cを含んでいてもよい。図に示しているように、輸送時に、前面ドア24が設計通りの水平方向ではなく上を向いていることによってウェーハ容器20内のウェーハの支持構造とウェーハに加わる応力が変わる可能性がある。
【0025】
図3図4には、前面ドア24の裏側70が描かれている。裏側70には二つの主ウェーハクッション88、90が前面ドア24の中心縦軸93について対称的に固定されている。各主ウェーハクッション88、90にはウェーハ96を受ける溝92が複数形成されており、そのそれぞれが一つ一つの挿入部62に位置合わせされていることにより、ドア24がドア枠34内に収まったときにひとつの挿入部62内に入って止まっているウェーハの前縁がひとつの溝92に受け入れられるようになっている。二つの主ウェーハクッション88、90は別体の構造としてもよいが、一体化して二つのクッション部88、90を備えたひとつの主ウェーハクッションとしてもよい。
【0026】
本発明のひとつの実施例では、図3図4に示すように、前面ドア24の後側70に二つの着脱式輸送用クッション94が、左右各側で主ウェーハクッション88、90の隣に受けられる。各輸送用クッション94は概して本体部分96とそこから突き出た取り付け用突出片98とを備えている。各本体部分96はドア24の後側に沿って上下方向に延びており、ウェーハ受け溝99が形成され、ウェーハ当接部101を備えている。ウェーハ当接部101は本体部96のうちウェーハ受け溝の「V」字の頂点を成す部分であり、ウェーハが輸送のための縦向きの姿勢でウェーハ容器20内に置かれたときにウェーハと接触する。各取り付け用突出片98の先端部100は、前面ドア24の裏側70の縦仕切り104にある穴102で一つ一つ受けられる。各輸送用クッション94は、ウェーハ受け溝92が主ウェーハクッション88、90のウェーハ受け溝99と位置を合わせて一直線に揃った状態となるよう、先頭の縁106を主ウェーハクッション88、90の横の余白部108の隣に平行に支持させる。
【0027】
使用時には、着脱式輸送用クッション94が前面ドア24の後側70に組み付けられた状態で、各挿入部62で複数のウェーハ(図示せず)を受け入れることができ、前面ドア24を収容部22のドア枠34に嵌め込むことができる。各ウェーハの前側の縁は、主ウェーハクッション88、90のひとつのウェーハ受け溝92に入って緩衝されるとともに各輸送用クッション94のウェーハ受け溝99内に入って緩衝される。このため、ウェーハはウェーハ容器20の標準的なドア24では通常支持されないような箇所でも支持される。これにより二次梱包の中での衝撃緩和要件が軽減され、SEMI E159で定められているところの自動化と完全な機能を可能にする。クッションは、底面を三角形状ないしV字状とし弾性のある柔軟な樹脂で形成することができる。図示したようにV字の一方の脚94.1はウェーハの曲線に沿った弓形であり、他方の脚94.2は、挿入部102と既存のウェーハクッションの縁領域102.1との間にクッションを固定する二つの脚を圧縮するのが容易になるよう湾曲させてもよい。クッションはばね付勢式とすることにより固定できる。例えば、突出片98.1とこれに対応する脚98.2とを互いの方向に撓ませ、ドアにある差し込み領域98.3の中に差し込んだ後に解放する。このばね力によってクッションは所定の位置に保持される。
【0028】
また、着脱式輸送用クッション94は必要に応じて組み付け、取り外しができるものと理解できるであろう。このように、着脱式輸送用クッション94は、ウェーハの入った容器20をある施設から別の施設へ輸送し、大きな物理的な衝撃荷重を受ける可能性のある場合に組み付けることができる。逆に、容器が施設内だけで扱う予定であって大きな衝撃荷重を受けたり普通でない姿勢になったりする可能性がない場合には着脱式輸送用クッション94を取り外すことによって、輸送用クッション94が施設内の容器20の自動操作に干渉する可能性を防いで、容器20の汎用性を高めることができる。
【0029】
図5から図7には、着脱式輸送用クッション94をドア24とウェーハ容器20に取り付けたものが平面図で示されている。
【0030】
特に図5には、ウェーハクッション88、90が組み付けられた前面ドア24の上面図が示されている。ウェーハクッション88、90は前面ドア24の裏側70にあり、そのうちウェーハクッション88が中心から外れた位置すなわちドア24の右側にあり、ウェーハクッション90も中心から外れた位置すなわちドア24の左側にある。この図では、左右の着脱式クッション94が示されていない。この主クッション88、90のみが設けられたドア24は、加工施設内で用いるためのドア24の典型的な構成となる。
【0031】
図6には、主クッション88、90と二組の着脱式クッション94の両方を備えた変更版のドア24が、ウェーハ容器20に取り付ける前の状態で示されている。着脱式クッション94aと着脱式クッション94bからなるクッション94は、主クッション88、90と区別するために破線で示している。右側の着脱式クッション94aは前面ドア24に、右側の主ウェーハクッション88に隣接して取り付けられている。左側の着脱式クッション94bは前面ドア24に、左側の主ウェーハクッション90に隣接して取り付けられている。本体部分96はドア24から外方へ張り出している。このような形状はウェーハを施設間で搬送するときやウェーハを輸送するときなどに使用することができる。
【0032】
ドア24は収容部22に取り付けるためウェーハ収容部22の正面に向けられる。収容部22の中にはウェーハ150が一枚描かれている。
【0033】
図7では、主クッション88、90と着脱式クッション94a、94bの両方が設けられたドア24が、ウェーハ収容部22に結合されている。主クッション88、90は着脱式クッション94a、94bがないときと同じようにウェーハ150の縁に係合する。これに加えて、左側の着脱式クッション94bがウェーハ150の縁に左側で係合するのに対し、右側の着脱式クッション94aはウェーハ150の縁に右側で係合する。このため、着脱式クッション94a、94bはウェーハ150のうち主クッション88、90にもウェーハ支持構造60にも支持されない部分の支えとなり、ウェーハ容器22の中のウェーハ150の安全性が高まる。
【0034】
収容部22のウェーハ支持部材60は依然として収容部の左右両側においてウェーハ150の大部分を支え、主ウェーハクッションは前側においてウェーハ150の一部を支える。そして前側の左右にある着脱式の部分がウェーハ150の追加の支えとなって、以前は支えられていなかったウェーハ支持部材60と主ウェーハクッション88、90の間の領域においてウェーハ150を支える。
【0035】
これに代わる実施例として、既存の主ウェーハクッション88、90を着脱式クッション94で補う代わりに、特許請求する本発明の実施例では上述の主ウェーハクッション88、90と着脱式クッション94とを組み合わせて用いるのと同等のクッション性が得られるようなひとつの一体型の着脱式ウェーハクッション160用いる。
【0036】
図8から図10には、着脱式ウェーハクッション160の実施例を説明・図示している。
【0037】
図8には、主クッション88、90が設けられた標準的な前面ドア24を図示している。図示したように、クッション88、90は、単一のユニットとして着脱可能な、ひとつの一体型のクッションのセットとしてもよい。
【0038】
図9には、修正版の前面ドア24とウェーハ収容部22が描かれている。この修正版の前面ドア24はもはや主クッション88、90を備えていない。主クッション88、90は取り外され、拡張型の着脱式クッション160に置き換えられている。
【0039】
拡張型の着脱式クッション160は前面ドア24の裏側70に支持される。拡張型の着脱式クッション160は、主クッション88、90と同様に、同じ構造を用いてドア24に取り付けられるよう構成される。ひとつの実施例として、クッション160はドア24の突起と凹部と結合する突起部と凹部を備えたものとする。
【0040】
拡張型の着脱式クッション160には右側部分162、左側部分164、中央部分166がある。右側部分162は、上述の着脱式クッション94aと実質同じである。左側部分164は上述の着脱式クッション94bと実質同じである。中央部分166は主クッション88、90と実質同じである。
【0041】
このように、拡張型の着脱式クッション160は図10に示すように中心軸93(図3図4も参照)から左右に張り出しており、ウェーハ150の大部分を連続的に支えられるようになる。
【0042】
拡張型の着脱式クッション160は別体型の対応物に対しいくつか改良点がある。一体型の構造であるため、着脱式クッション94の先頭の縁106が主ウェーハクッション88、90の横の余白部108に出会う場所など、クッション体どうしの間には隙間が空かない。拡張型クッション160の一体構造によってそういった隙間がなくなるだけでなく、この隙間がないことによりクッション間の溝の位置合わせに関連したすべての問題を回避できる。
【0043】
輸送中は拡張型のクッション160がウェーハ150の支えとなる。加工設備などの目的地に到着したときに、ドア24を取り外すこともできるし、拡張型の着脱式クッション160をドア24から取り外すこともできるし、残りの加工工程に備えて主クッション88、90を組み付けることもできる。プロセスを繰り返すため、またウェーハ150の輸送を容易にするために、必要に応じて拡張型の着脱式クッション160を主クッション88、90の代わりに用いることもできる。
【0044】
別の実施例として、本発明の緩衝システムの実施例では、図11から図16に示すように前側クッションに加えて着脱式後側クッションなどの着脱式後部クッションを用いてもよい。後部着脱式ウェーハクッションを付け足すと、ウェーハ150をほぼその全周にわたって支えることが可能となる。
【0045】
図11から図13には、後側中央のクッションスペーサ170を含む前後両方のクッションを備えた緩衝システムの実施例を示す。
【0046】
特に図11図12では、上で図5から図7について説明したように、主クッション88、90を前側左右の着脱式スペーサクッション94a、94bで補っている。
【0047】
図13には、左右の後側ウェーハクッション170b、170が後壁32に取り付けられている。着脱式後側ウェーハクッション170a、170aを付け加えると、ウェーハ150のうち以前は支持されていなかった部分を支えて、収容部122の後部におけるウェーハ150の支持を向上する。この実施例では、前後両方のウェーハクッションを付け足すことでウェーハ150のほぼ全周が支持されている。
【0048】
図14から図16には、後側ウェーハクッション170を備えた緩衝システムの別の実施例が示されている。
【0049】
この緩衝システムの実施例は前後の緩衝システムが違うのを除けば図11から図13に示したものと実質同じである。図14から図16の実施例では、前側での緩衝が上述の通り単一のクッション160によってなされるのに対し、後側クッション170は後壁32の中央部にある一体型のクッションからなっている。図11から図13に示された実施例と同様に、図14から図16の実施例ではクッションシステムがウェーハ150に与える支持の程度が最大になる。
【0050】
図17には、ウェーハ容器22の中のウェーハ150が上面図で示されている。図17は描写と様々な構造によってウェーハ150のどの部分が支持されているかを説明するため、ウェーハ150の外周(円周)を4つの象限と複数の領域に分割する。ウェーハ150は形状が円であるため、ウェーハ150の外周上のある点aを0度として360度に分割することができる。向きを示す目的で、中央の縦軸であるY軸と、中央の横軸であるX軸とを図示している。また、ウェーハ150は外周でどのように支えられているかを説明する補助とするため、AからHの複数の領域にはA1からHの角度を対応させている。
【0051】
ウェーハの第1象限は0度から90度までと定め、A、B、C1の領域を含むものとする。ウェーハの第2象限は90度から180度までと定め、C2、D、E1の領域を含むものとする。ウェーハの第3象限は180度から270度までと定め、E2、F、G1の領域を含むものとする。ウェーハの第4象限は270度から360度までと定め、G2、H、A1の領域を含むものとする。
【0052】
特許請求する本発明の着脱式ウェーハクッションシステムが含まれていない典型的なウェーハ容器では、Aの領域が前側の主クッション90で支えられ、Cの領域が左側のウェーハ支持部材60で支えられ、Gの領域が右側のウェーハ支持部材60で支えられている。B、D、E、F、Hの領域は通常支えられていない。
【0053】
これに対し、前後の着脱式ウェーハクッションの様々な実施例を備えたウェーハ収納容器22では、以前は支えられていなかったB、D、E、F、Hの領域でもウェーハ150を支えることができる。
【0054】
Bの領域は左前側の着脱式ウェーハクッション94bで支えてもよい。D、E、Fの領域は後部ウェーハクッション170b、170aで支えてもよい(あるいはEの領域は後側のウェーハクッション170で支える)。Hの領域は右前側の着脱式ウェーハクッション94aで支えてもよい。別の実施例では、B、D、E、F、Hの各領域の半分以上をそれぞれ独自の着脱式ウェーハクッションで支える。別の実施例では、B、D、E、F、Hの各領域の実質全部をそれぞれ独自の着脱式ウェーハクッションで支える。別の実施例では、輸送および搬送の目的のために必要な支えを所望のレベルに応じて、B、D、E、F、Hのうちいくつかの領域を部分的に着脱式ウェーハクッションで支える。
【0055】
図示したように、A1の領域はウェーハ150の外周のうち0度から約25度の範囲に対応しており、角度A2が約25度となっている。ウェーハ150の外周のA1の領域は通常主ウェーハクッション90で支えられている。実施例によってはA1の領域を0度から約30度あるいは約35度までの範囲とする。
【0056】
外周のBの領域は、ウェーハ150の外周の約25度から約45度までの範囲に対応しており、角度B1が約20度となっている。前側の着脱式ウェーハクッション94bを備えていないウェーハ容器では、ウェーハ150のこの領域は通常支えられていないであろう。Bの領域はウェーハクッション94bで支えてもよいし、ウェーハクッション160で支えてもよい。
【0057】
外周のCの領域は、ウェーハ150の外周の約45度から約135度までの範囲に対応しており、角度C1、C2がそれぞれ約45度となっている。この領域は通常ウェーハ支持部材60で支えられる。
【0058】
外周のDの領域は、ウェーハ150の外周の約135度から約150度までの範囲に対応しており、角度D1が約20度となっている。前側の着脱式ウェーハクッション170bを備えていないウェーハ容器では、ウェーハ150のこの領域は通常支えられていないであろう。Bの領域はウェーハクッション170bで支えてもよいし、部分的にウェーハクッション170で支えてもよい。
【0059】
外周のEの領域は、ウェーハ150の外周の約155度から約205度までの範囲に対応しており、角度E1、E2がそれぞれ約25度となっている。前側の着脱式ウェーハクッション170、170bのいずれかを備えていないウェーハ容器では、ウェーハ150のこの領域は通常支えられていないであろう。Eの領域はウェーハクッション170、170a、170bの一部で支えてもよいし、全部で支えてもよい。
【0060】
外周のFの領域は、ウェーハ150の外周の約205度から約225度までの範囲に対応しており、角度F1が約20度となっている。前側の着脱式ウェーハクッション170a、170のいずれかを備えていないウェーハ容器では、ウェーハ150のこの領域は通常支えられていないであろう。Fの領域はウェーハクッション170bで支えることもできるし、部分的にウェーハクッション170で支えることもできる。
【0061】
外周のGの領域は、ウェーハ150の外周の約225度から約315度までの範囲に対応しており、角度G1、G2がそれぞれ約45度となっている。この領域は通常ウェーハ支持部材60で支えられる。
【0062】
外周のHの領域は、ウェーハ150の外周の約315度から約335度までの範囲に対応しており、角度H1が約20度となっている。前側の着脱式ウェーハクッション94aと160を備えていないウェーハ容器では、ウェーハ150のこの領域は通常支えられていないであろう。Hの領域はウェーハクッション94aと160のいずれで支えてもよい。
【0063】
外周のA2の領域は、ウェーハ150の外周の約335度から約360度までの範囲に対応しており、角度A1が約25度となっている。この領域は通常主クッション88で支えられる。
【0064】
上では図17に関しておおよその角度や領域を記載したが、特許請求する本発明の実施例は例示の目的のために設けており、ここで記載した角度と領域は変えてもよいと理解されたい。
【0065】
図18には、クッションキット180の実施例が示されている。ひとつの実施例としてのクッションキット180では、前側クッションと後側クッションの片方あるいは両方を用いることができる。このように、このクッションキット180には、主クッション88、90とともに右側の着脱式クッション94aと左側の着脱式クッション94bを備えた前側緩衝システムを用いることができる。別の実施例として、クッションキット180には、拡張型の着脱式クッション160からなる前側緩衝システムを用いることもできる。いずれの実施例でも、クッションキット180には後側クッション170をも用いることができる。
【0066】
上述のように、後側クッション170は主クッション88、90をドア24に取り付けたのと同様の方法でウェーハ収容部22の内部後壁32に取り付けてもよいし、スナップフィットやファスナーによるものなど当業者が知る別の方法で取り付けることもできる。
【0067】
いかなる組み合わせの前側と後側のクッションを用いても、安全で信頼性の高い輸送のためにウェーハ収納容器22内のウェーハ150を支持、緩衝することができる。
【0068】
上述のシステムと装置に加え、特許請求する本発明の実施例ではウェーハ容器内のウェーハのクッションに関連する様々な方法を用いることができる。これらの方法の一部は上述しており、いくつかは以下に、大径水平ウェーハ容器をウェーハ輸送容器に変換する方法を含む。
【0069】
このような実施例のひとつとして、大径ウェーハ容器22のドア24を収容部20から取り外す。着脱式ウェーハクッション94bをドア24と向きを揃える。左側の(部分的な)着脱式クッション94bを、ドア24の中央を外して左側に主クッション90に隣接させて取り付ける。右側の(部分的な)着脱式クッション94aを、ドア24の中央を外して右側に主クッション90に隣接させて取り付ける。ウェーハ受け溝99が主ウェーハクッション88、90のウェーハ受け溝92と位置を合わせて一直線に並べた状態となるよう、左右の着脱式クッション94a、94bの先頭の縁106を主ウェーハクッション88、90の横の余白部108に平行かつ隣接させて支持させる。
【0070】
別の実施例として、上記の方法は、さらに、ウェーハ収容部32の後壁32に後側の着脱式クッション180を取り付ける。
【0071】
さらに別の実施例として、方法は、左右の部分的な着脱式クッションを取り付ける代わりに、ドア90から中央の主クッション88、90を取り外し、ドア24の中央縦軸から左右に張り出す拡張型ないし完全型の着脱式クッション170を取り付ける。拡張型の着脱式クッション170は、単一のクッションとしても、クッションアセンブリとしてもよい。
【0072】
特許請求する本発明のシステム、装置、方法の実施例によれば、輸送中や取り扱い中にウェーハが破損や損傷するのを低減する。以下の図12から図15で説明するように、そのような改善は重要になりうる。
【0073】
破損が起きることなくウェーハが耐えることのできる臨界速度における最大加速度を破壊試験で測定して「脆弱性」を定義する。図19図20に示すように、着脱式輸送用クッション94を備えていない従来のウェーハ容器を用いて行った物理的衝撃試験によれば、標準設計されたウェーハ支持・保持システムに基づき、水平方向の衝撃に対してウェーハが破損する直前と直後におけるウェーハの脆弱性の値が8.31Gと16.26Gの間のどこかにあることがわかる。ウェーハ支持のための場所はSEMI標準規格E159によって行った。
【0074】
図21図22に示すように、着脱式輸送用クッション94を容器内に組み付けた状態で、図21図22に反映されている試験と同等かそれよりも厳しい衝撃条件(ボロフロートガラス製の試験用ウェーハを用いて容器を32インチの高さから落下させる)で物理的衝撃試験を行った。着脱式輸送用クッション94がある場合のウェーハの脆弱性の値は、故障や破損が起きる前にG値が21.74Gから25.87Gの間まで上昇しており、このため特に図2に示すようにウェーハ容器20を個別に包装して輸送する場合において従来の容器に対し大きな利点が得られる。
【0075】
以上の説明では、本発明の各種実施例を完全に理解してもらうため、多数の具体的な詳細を記載している。これらの具体的な詳細の一部あるいは全てがなくとも本明細書に開示したような各種実施例を実施することができることは当業者であれば明らかであろう。また別の例として、当業者に知られている構成要素は、本発明が不必要に不明瞭になるのを避けるため本明細書に詳細には記載していない。以上の説明では、各種実施例の構造と機能の詳細とともに各種実施例の多くの特徴と利点を記載しているが、この内容は例示に過ぎないものと理解されたい。その他の実施例であっても本発明の原理と趣旨を採用するものを構成することができる。このように本出願は本発明のいかなる改変あるいは変形をカバーすることを意図している。
【0076】
本発明の特許請求の範囲を解釈する目的では、「〜ための手段」「〜ための工程」という特定の用語を請求項に記載していない限り、35USC第112条第6項の規定を呼び起こすべきではないことを明示的に意図する。
図1
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