(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の視認性を向上させるために、LCD、PDP又はELなどの画像表示パネルと、その前面側(視認側)に配置する保護パネルやタッチパネル部材との間の空隙を、粘着シートや液状の接着剤等で充填し、入射光や表示画像からの出射光の空気層界面での反射を抑えることが行われている。
【0003】
このような画像表示装置用構成部材間の空隙を充填する方法として、紫外線硬化性樹脂を含む液状の接着樹脂組成物を該空隙に充填した後、紫外線を照射し硬化せしめる方法が知られている。
しかし、このような方法では、液を充填する際の作業が煩雑で生産性に劣るばかりか、印刷隠蔽層に隠蔽される部分など、紫外線の到達し難い箇所は液状組成物を硬化させることが困難であり、安定した品質を得ることが難しいという課題を抱えていた。
【0004】
また、画像表示装置用構成部材間の空隙を、粘着剤シートを用いて充填する方法も知られている。例えば特許文献1には、画像表示パネルに保護パネルやタッチパネル等の透明パネルを貼り合わせるのに好適に用いることができる透明粘着シートとして、異なる粘弾性挙動を有する第1粘着層及び第2粘着層をそれぞれ1層以上有し、且つ、これらの層を積層し一体化してなる構成を備えた粘着シートであって、周波数1Hzの温度分散で測定した動的剪断貯蔵弾性率G’の値が、特定の範囲内であることを特徴とする透明粘着シートが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、中間樹脂層(A)と、表裏面層としての感圧接着剤層(B)とを有する透明両面粘着シートであって、各層はいずれも、1種類以上の(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体をベース樹脂とする層であり、温度範囲0℃〜100℃において、周波数1Hzにおける中間樹脂層(A)の貯蔵剪断弾性率(G'(A))が、感圧接着剤層(B)より高く、且つ、シート全体の押込硬度(アスカーC2硬度)が10〜80であることを特徴とする透明両面粘着シートが開示されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、段差又は隆起を有する表面に適用可能な、薄い(例えば30〜50μm厚)粘着シートとして、紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーの(メタ)アクリル共重合体を含んでなる、紫外線架橋性粘着シートであって、紫外線架橋前の粘着シートの貯蔵弾性率が、30℃、1Hzにおいて、5.0×10
4Pa以上、1.0×10
6Pa以下、かつ80℃、1Hzにおいて、5.0×10
4Pa以下であり、さらに、紫外線架橋後の粘着シートの貯蔵弾性率が、130℃、1Hzにおいて、1.0×10
3Pa以上である、紫外線架橋性粘着シートが開示されている。
【0007】
また特許文献4には、紫外線硬化可能な粘着剤層を少なくとも1層以上有し、紫外線硬化前の状態で、(a)測定温度20℃、周波数1Hzでの貯蔵弾性率G'(1Hz)が5×10
3〜5×10
5Pa(パスカル)及び(b)基準温度20℃、周波数10
−7Hzでの貯蔵弾性率G’(10
−7Hz)が5×10
1〜5×10
3Paの粘弾性特性を有するとともに、紫外線硬化後の状態で、(c)測定温度20℃、周波数1Hzでの貯蔵弾性率G’(1Hz)が1×10
4〜1×10
6Pa(パスカル)及び(d)基準温度20℃、周波数10
−7Hzでの貯蔵弾性率G’(10
−7Hz)が1×10
4Pa以上の粘弾性特性を有する、中間膜用粘着シートについて開示されている。
【0008】
特許文献5には、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体に対して、光ラジカル開始剤の少なくとも水素引き抜きタイプ光ラジカル開始剤を0.01〜1.0重量%含有したことを特徴とするホットメルト型紫外線架橋透明粘着剤及びこの粘着剤を用いてなるホットメルト型紫外線架橋透明粘着シートについて開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の一例について説明するが、本発明が次に説明する実施形態に制限されるものではない。
【0019】
<本粘着シート>
本実施形態に係る画像表示装置用透明両面粘着シート(以下、「本粘着シート」と称する。)は、対面する2つの画像表示装置用構成部材を貼合するために使用する透明両面粘着シートであって、透明で且つ、表裏両面を粘着面としてなり、2つの画像表示装置用構成部材に貼合した状態で熱又は紫外線により、硬化させて使用することを特徴の一つとする透明両面粘着シートである。
【0020】
(平均粗さRa)
本粘着シートは、本粘着シートの表裏面に離型フィルムを積層してなる状態、及び、該離型フィルムを剥がし2つの画像表示装置用構成部材に貼合した状態において、特定の平均粗さRaを有し、かつ画像表示装置用構成部材への貼合前後における平均粗さRaの差が特定範囲にあるという表面特性を備えている。
なお平均粗さRaは、レーザー干渉計で得られる干渉縞画像を解析して求められる平均粗さをいい、より詳細には、実施例に記載の方法よって求められる値である。
【0021】
まず、本粘着シートは、表裏面に離型フィルムを積層してなる状態における平均粗さRaを(X)とした場合、次の(1)の条件を満足する表面形状を備えるのが好ましい。
(1)・・30nm≦(X)≦300nm
【0022】
(X)が30nm以上であることにより、巻物の状態や裁断し重ねた状態で離型フィルム付き透明両面粘着シートを保管した際などに、表面を保護する離型フィルム同士が膠着を起こすおそれがなく、また、(X)が300nm以下であることにより、離型フィルムを剥がし、画像表示装置用構成部材に積層した際に、厚みムラ由来の不均一な押圧によって部材を著しく変形させることがないから、好ましい。
同様の観点から、本粘着シートは、上記範囲の中でも40≦(X)或いは(X)≦250を満足するのがより一層好ましい。
【0023】
また、本粘着シートは、2つの画像表示装置用構成部材に貼合した状態における平均粗さRaを(Y)とした場合、次の(2)の条件を満足する表面形状を備えるのが好ましい。
(2)・・0nm≦(Y)≦130nm
【0024】
(Y)が130nm以下であれば、表示画像の外観を損なわない程度にまでムラを低減させることができる。
【0025】
さらに、本粘着シートは、上記(X)と(Y)との関係が次の(3)の条件を満足する表面形状を備えるのが好ましい。
(3)・・(X)−(Y)≧30nm
【0026】
(X)−(Y)が30nm以上であることにより、本粘着シート自身にムラがあっても被着面へ優れた追随性を持つばかりか、異物の噛み込みのあった場合や、画像表示装置用構成部材に段差がある場合といった変則的な被着面の形状にもなじみ易いという利点を有することができる。
【0027】
(平均粗さRaの調整方法)
本粘着シートの平均粗さRaを上記の範囲に調整する方法としては、(a)本粘着シートの表面の柔軟性を調整して被着部材への追随性に優れた表面物性を付与させる方法や、(b)本粘着シートを積層構成とし、中間樹脂層の硬さを調整して中間樹脂層の柔軟性によって被着体に応じて形状変化せしめる方法や、(c)シート成形時の支持体や被着部材の表面形状及び表面粗さを調整することで、本粘着シートの表面粗さを調整する方法などを挙げることができる。微細な表面形状への追従性や、適用可能な部材が多いという観点から、(a)の方法を採用することが好ましい。
このようにして、本粘着シートを作製することによって、画像表示装置用構成部材への貼合前後の状態で透明両面粘着シートの凹凸形状を所定の範囲とすることができる。
【0028】
<本粘着シートの物性>
本粘着シートは、2つの画像表示装置用構成部材に貼合した状態で、熱又は紫外線により硬化させて使用することが好ましい。よって、本粘着シートは、2つの画像表示装置用構成部材に貼合した状態において、熱又は紫外線により硬化できる性質を有している。
例えば、1次硬化させた本粘着シートを用いて2つの画像表示装置用構成部材に貼合した状態で、熱又は紫外線により2次硬化させて使用することができる。
本粘着シートは、このようにして使用されることで、画像表示装置用構成部材への貼合後の耐発泡性を損なうことなく、表示画面の外観不良を改善することができる。
【0029】
本粘着シートが、熱又は紫外線により硬化できる性質を有するためには、例えば、下記に示すように、光硬化型粘着剤組成物や熱硬化型粘着剤組成物により形成すればよい。
【0030】
(応力緩和特性)
本粘着シートは、次の(4)(5)で示されるような応力緩和特性を備えているのが好ましい。
すなわち、
(4)・・本粘着シートをせん断方向に10%歪をかけた10秒後の応力緩和率が60%以上である。
(5)・・30〜100℃の温度範囲において、周波数1Hzにて求める損失正接tanδが0.5以上である。
【0031】
本粘着シートが、(4)(5)で示されるようなこのような特性をもつことによって、画像表示装置構成部材に粘着シートを貼着する際に被着表面形状への優れた追随性を発揮し、シート自身の厚みムラや、噛み込んだ異物のほか、被着体に印刷段差等の凹凸がある場合においても光学的な歪無く貼合することができる。
このような観点から、本粘着シートをせん断方向に10%歪をかけた10秒後の応力緩和率は70%以上であるのがより好ましく、中でも75%以上であるのがさらに好ましい。
また、30〜100℃の温度範囲において、周波数1Hzにて求める損失正接tanδが0.55以上であるのがより好ましく、中でも0.6以上であるのがさらに好ましい。
【0032】
<粘着剤組成物>
本粘着シートを形成するのに好適に用いることができる構成材料の一例(以下、「本粘着剤組成物」と称する。)について説明する。ただし、あくまでも一例であって、これに限定されるものではない。
【0033】
本粘着剤組成物としては、所定範囲の分子量を有するベースポリマーと、光架橋開始剤と、必要に応じて架橋剤とを含む光硬化型粘着剤組成物や、ベースポリマーと熱架橋剤とを含む熱硬化型粘着剤組成物が好ましい。
【0034】
(ベースポリマー)
本粘着剤組成物のベースポリマーは、粘着性、透明性及び耐候性などの観点から、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(共重合体を含む意で、以下「アクリル酸エステル系(共)重合体」と称する。)であるのが好ましい。
ベース樹脂としてのアクリル酸エステル系(共)重合体は、これを調整するために用いるアクリルモノマーやメタクリルモノマーの種類、組成比率、さらには重合条件等を適宜選択することによって、ガラス転移温度(Tg)や分子量等の物性を適宜調整して製造することが可能である。
【0035】
アクリル酸エステル(共)重合体を構成するアクリルモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート等を主原料として挙げることができる。
これらの他に、凝集力付与や極性付与等の目的に応じて、さまざまな官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを上記アクリルモノマーと共重合させてもよい。
当該官能基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、グリシジルアクリレート、N−置換アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、含フッ素アルキルアクリレート、オルガノシロキシ基含有アクリレートなどを挙げることができる。
この他にも、上記アクリルモノマーやメタクリルモノマーと共重合可能な酢酸ビニルやアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル等の各種ビニルモノマーも適宜重合に用いることができる。
【0036】
本粘着剤組成物はシート状に成形した後、1次硬化させた段階で、適当な粘着力を有し、かつ、被着体表面の凹凸や異物に追随できる柔軟性を有しているのが好ましい。
ベースポリマーの分子量が大きすぎても、小さ過ぎても本発明の効果を発揮することができない。
ベースポリマーの分子量が小さ過ぎると、貼合前の硬化(架橋)時に、粘着力を発揮しなかったり、柔らか過ぎてハンドリング性に劣っていたりする可能性があり、逆に分子量が大き過ぎると、貼合前の硬化(架橋)段階で硬くなり、被着体表面の凹凸や異物に追随できない可能性がある。
よって、かかる観点から、ベースポリマーの質量平均分子量は10万〜70万、特に20万以上或いは60万以下、中でも特に25万以上或いは50万以下であるアクリル酸エステル系(共)重合体を用いるのが好ましい。
【0037】
その中でも、質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が5〜10、中でも6以上或いは9以下のアクリル酸エステル系(共)重合体を用いるのがさらに好ましい。質量平均分子量/数平均分子量が大きいということは、分子量分布が広いことを意味しており、この値が5〜10程度に大きければ、低分子量成分及び高分子量成分のそれぞれが流動性や粘濡れ性、凝集力といった分子量見合いの性能に寄与するため、分子量分布が狭い(均一の)ものより、加工性や粘着性能が良くなる傾向がある。
【0038】
(架橋剤)
アクリル酸エステル系(共)重合体を架橋する際に用いる架橋剤としては、例えば(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0039】
架橋剤の量は、ベースポリマー100質量部に対して0〜30質量部、特に20質量部以下、中でも10質量部以下、その中でも特に5質量部以下とするのが好ましい。
【0040】
(架橋開始剤)
本粘着剤組成物に用いる架橋開始剤としては、分子間水素引抜型光重合性開始剤(「水素引抜型光開始剤」とも称する)を特に好ましい一例として挙げることができる。
【0041】
光重合開始剤は、光照射によりラジカルを発生させて系中の重合反応の起点となる。(メタ)アクリル酸エステルやビニルエステル系中のラジカル発生機構は大きく2つに分類され、光重合開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させる分子内開裂型と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させる水素引抜型とに大別される。
【0042】
分子内開裂型は、光照射によってラジカルを発生する際に分解して別の化合物となるため、一度励起されると反応開始剤としての機能をもたなくなるのに対し、水素引抜型は、一度励起されても、開始剤のうち反応しなかったものは基底状態に戻るため、反応開始剤として再度利用可能である。このため、分子内開裂型の光重合開始剤と比較して、水素引抜型の光重合開始剤は、紫外線によって組成物を1次硬化した後も、系中に活性種として残存し易い。よって、貼合後に紫外線を照射し、さらに架橋(2次硬化)させる際の反応開始剤として用いることができる。更に、水素引抜型の光重合開始剤は、分子内開裂型と比較して、低分子量の分解生成物が少なく、分解物由来のアウトガスや溶出物の発生が少ないという点でも優れている。
【0043】
水素引抜型光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ジベンゾスベロン等のベンゾフェノン系化合物を挙げることができる。
その他にも、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2ーイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物や、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキンン等のアントラキノン系化合物や、ベンジルやカンファーキノンなどのα−ジカルボニル系化合物を挙げることができる。
これらは二種類以上の組み合わせからなる混合成分として用いることもできる。但し、水素引抜型の光開始剤として前記に挙げた物質に限定するものではない。また、分子内開裂型の光重合開始剤を種々の割合で併用してもよい。
【0044】
光重合開始剤の添加量は、特に制限されるものではなく、一般的にはベース樹脂100質量部に対し0.1〜10質量部、特に0.2質量部以上或いは5質量部以下、その中でも0.5質量部以上或いは3質量部以下の割合で調整するのが好ましい。但し、他の要素とのバランスでこの範囲を超えてもよい。
【0045】
(熱架橋剤)
熱架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等を挙げることができ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0046】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えばトリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマーおよびこれらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンなどと付加したイソシアネート化合物や、イソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、さらには公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなど付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートなどを挙げることができる。
前記で例示したイソシアネート化合物は、加工性や保管安定性を向上させる為にイソシアネート基を適当なブロック剤で保護していてもよい。
ブロック剤としては、例えばフェノール系、オキシム系、カプロラクタム系、メルカプタン系、イミド系、アミド系、イミダゾール系、アルコール系、活性メチレン系や各種アミン化合物が挙げられ、ブロック剤の解離温度や作業性に応じて公知のものを適宜選択することができる。
【0047】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリジル−m−キシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、m−N,N−ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N−ジグリシジルアニリンなどを挙げることができる。
【0048】
なお、これら架橋剤の含有量は、ベースポリマーの架橋性官能基導入量に対して、0.5〜2等量の範囲であることが好ましい。
【0049】
(その他)
アクリル酸エステル系(共)重合体を架橋する際には、必要に応じて各種添加剤を適宜添加してもよい。
【0050】
<積層構成>
本粘着シートは、単一層からなるシートであっても、2層以上が積層してなる多層シートであってもよい。
【0051】
本粘着シートを多層の透明両面粘着シートとする場合には、すなわち、中間層と最外層とを備えた積層構成の透明両面粘着シートを形成する場合には、その最外層を、上述した本粘着剤組成物から形成することが好ましい。
【0052】
(厚み)
本粘着シートの厚みは、画像表示装置の薄肉化を妨げないという観点から、最大厚み部分の厚みが250μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
【0053】
<透明両面粘着シート付き画像表示装置用構成部材>
透明両面粘着シート付き画像表示装置用構成部材(以下、単に本粘着シート付画像表示装置用構成部材と称する。)は、上記の本粘着シートを画像表示装置用構成部材に貼合し、熱又は紫外線により硬化して得られる透明両面粘着シート付き構成部材であって、硬化後の状態において、以下の(6)及び(7)の性質を有する。
(6)・・JIS−Z−0237に準じた保持力測定において、SUS板に対する温度60℃でのズレ長さが2mm以下である。
(7)・・周波数1Hz、温度30℃〜100℃の範囲における損失正接tanδが0.6以下である。
【0054】
(保持力)
本粘着シートの硬化後の保持力、つまりは、本粘着シート付画像表示装置用構成部材における粘着シートの保持力は、JIS−Z−0237に準じた保持力測定において、SUS板に対する温度60℃でのズレ長さが2mm以下であることが好ましい。ズレ量が小さいほど、粘着シートの凝集力が高まり、長期保管や高温環境下における耐発泡信頼性が向上するなどの利点がある。
かかる観点から、本粘着シートの硬化後のズレ長さは短いほど好ましいが、2mm以下とすることで実使用に耐えうる耐発泡信頼性を得ることができる。
【0055】
本粘着シートの硬化後の損失正接(tanδ)、つまりは、本粘着シート付画像表示装置用構成部材における粘着シートの損失正接(tanδ)は、周波数1Hz、温度30℃〜100℃の範囲において、0.6以下であることが好ましい。損失正接(tanδ)が0.6以下であることにより、粘着シートの弾性が高く、被着部材からのアウトガス等によるガス圧抑制効果が得られるなどの利点がある。
【0056】
<画像表示装置>
本粘着シートは、2つの対面する画像表示装置用構成部材を有する画像表示装置に好適に使用することができる。
画像表示装置用構成部材としては、例えば、周縁部に枠状隠蔽印刷部が形成された構成を有する保護パネルなどの画像表示装置用構成部材を挙げることができる。
またその他にも、タッチパネル機能が一体化したタッチオンレンズ型の表面保護パネルを使用することもできる。
他方、これと貼合する画像表示装置用構成部材としては、例えば、タッチパネル、画像表示パネルなどを挙げることができる。
【0057】
前記画像表示パネルとしては、液晶層がガラス基板によっては挟持された構成を有する液晶パネルのほか、表面反射による画質の低下を防ぐために、液晶パネルの視認側に偏光フィルムが積層された構成を有するものなどを挙げることができる。
また、前記画像表示パネル内に、タッチパネルを組み込んだオンセル型のほか、液晶の画素の中にタッチセンサ機能を組み込んだインセル型の画像表示パネルを用いることもできる。
【0058】
上述したように、本粘着シートは、画像表示装置用構成部材との貼合後に耐発泡性を有し、かつ画像表示装置の表示画面にスジ状や斑模様等の不均一なムラが生じることがないという、相反する特性を有することから、画像表示パネルと積層して用いられることが好ましい。
かかる観点から、画像表示装置としては、前記対面する2つの画像表示装置用構成部材の一方の画像表示装置用構成部材が画像表示パネルであり、2つの画像表示装置用構成部材の間が、本粘着シートで充填されてなる構成を有することが好ましい。
【0059】
さらには、上記構成において、前記2つの画像表示装置用構成部材の他方が、タッチパネル又は表面保護パネルのいずれかであることがより好ましい。
【0060】
(貼合方法)
2つの画像表示装置用構成部材を貼合する方法としては、一方の画像表示装置構成部材に粘着シートをロール貼合した後、他方の画像表示装置構成部材を大気圧下でロール貼合したり、大気圧乃至減圧下において、対向したステージに各画像表示構成部材を固定し、部材同士を一体化したりする方法が挙げられる。
この際、本粘着シート及び画像表示装置構成部材を加熱しながら行うと更に好適である。加熱によって粘着シートが柔軟化するため、被着体に印刷段差等の凹凸がある場合や異物をかみこんだ場合における粘着シートの被着面への追随性が増し、貼合不良や凹凸への濡れ不足による残留気泡を抑制するという効果が得られる。かかる観点から、40℃〜100℃、さらに好ましくは60℃〜80℃に加熱することが好ましい。
【0061】
<用語の説明>
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JISK6900)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0062】
本発明において、「A〜B」(A,Bは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「A以上B以下」の意と共に、「好ましくはAより大きい」及び「好ましくはBより小さい」の意を包含する。
また、本発明において、「A以上(A≦)」(Aは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはAより大きい(A<)」の意を包含し、「B以下(B≦)」(Bは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはBより小さい(B<)」の意を包含する。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
[実施例1]
2−エチルヘキシルアクリレート75質量部と、酢酸ビニル20質量部と、アクリル酸5質量部とをランダム共重合してなるアクリル酸エステル共重合体(Mw=440000 Mn=62000 Mw/Mn=8 理論Tg−50℃)1kgに対し、分子間水素引抜型光重合性開始剤として4−メチルベンゾフェノンを20g混合して粘着剤組成物を作成した。
片側面を剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製「MRA100」、厚み100μm)の当該片側面に、に、上記粘着剤組成物を厚みが150μmとなるようアプリケータにて塗布形成し、塗布した粘着材表面に、片側面を剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製「MFR75」 厚み75μm)の片側面を当接させるように被覆した。そして、表裏のポリエチレンテレフタレートフィルムを介して、粘着シートの両面に波長365nmの光線積算光量が1000mJ/cm
2となるよう紫外線を照射して粘着剤組成物を架橋させ、1次硬化シートとしての粘着シート1(厚み150μm)を作製した。
【0065】
[実施例2]
実施例1で用いたアクリル酸エステル共重合体1kgに対し、架橋剤としての紫外線硬化樹脂であるプロポキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート200gと、分子間水素引抜型光重合性開始剤としての4−メチルベンゾフェンン10gとを混合して中間層粘着剤組成物を調整した。
実施例1で作製した粘着剤組成物と上記中間層粘着剤組成物とを、〔粘着剤組成物/中間層粘着剤組成物/粘着剤組成物〕となるように共押出し、その一面に、片側面を剥離処理したポリエチレンテレフタレート(三菱樹脂製MRA100 厚み100μm)の当該片側面を積層し、共押出したシートの残る表面に、片側面を剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製「MRF75」、厚み75μm)の片側面を当接させるように被覆した。そして、表裏のポリエチレンテレフタレートフィルムを介して、粘着シートの両面に波長365nmの光線積算光量が1000mJ/cm
2となるよう紫外線を照射して粘着剤組成物を架橋させ、粘着剤組成物/中間層粘着剤組成物/粘着剤組成物=40μm/70μm/40μmからなる、1次硬化シートとしての多層粘着シート2(厚み150μm)を作製した。
【0066】
[比較例1]
実施例1における粘着剤組成物の代わりに、実施例2で用いた中間層粘着剤組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、1次硬化シートとしての粘着シート3を作製した。
【0067】
[比較例2]
接着樹脂としてメタクリル基含有イソプレンゴム23質量部、イソボルニルメタクリレート15質量部、2一ヒドロキシブチルメタクリレート5質量部、水添テルペン樹脂25質量部ならびにブタジエン重合体30質量部と、光重合開始剤としてモノアシルフォスフィンオキサイド2質量部からなる接着樹脂組成物を作製した。
【0068】
〔干渉計を用いた外観評価〕
先ず、1次硬化シートとしての粘着シート1〜3の表裏面にポリエチレンテレフタレートフィルム(離型フィルム)が積層した状態において、レーザー干渉計(フジノン株式会社製「F601直線偏光タイプ」)を用いて表面状態を観察し、得られた干渉縞画像(干渉縞)を、干渉縞解析ソフト(フジノン株式会社製「A1」)を用いて、粘着シート面内40mm×40mmについてハイパスフィルタ(20mm)を通して解析した。解析で得られる40mm×40mmの3次元形状から面内の平均粗さRaを求めて(X)とした。
【0069】
次に、画像表示装置用構成部材のモデルとしてのソーダライムガラス(60mm×90mm×厚さ0.5mm)に、粘着シート1〜3の一方の剥離フィルムを剥がし、露出した粘着面をハンドローラにて貼着した。
次いで、残る剥離フィルムを剥がし、露出した粘着面に、やはり画像表示装置用構成部材のモデルとしてのソーダライムガラス(60mm×90mm×厚さ0.5mm)を、減圧下(絶対圧5kPa)にてプレス貼合した後、オートクレーブ処理(60℃、0.2MPa20分)を施して仕上げ貼着し、評価用積層体を作製した。
【0070】
比較例2の接着樹脂組成物については、一方のソーダライムガラス周縁部に幅3mm、厚さ150μmのシリコーンゴムを枠状に貼付して出来る枠内に接着樹脂を塗布し、その上から別のソーダライムガラスをロール圧着した。これに高圧水銀ランプを用いて波長365nmの積算光量が2000mJ/cm
2となるよう紫外線照射し接着樹脂を硬化せしめ、2次硬化後の評価用積層体を作製した。
【0071】
レーザー干渉計(フジノン株式会社製「F601直線偏光タイプ」)を用いて、前記評価用積層体を観察し、レーザー干渉計(フジノン株式会社製「F601直線偏光タイプ」)を用いて、前記評価用積層体の表面状態を観察し、得られた干渉縞画像(干渉縞)を、干渉縞解析ソフト(フジノン株式会社製「A1」)を用いて、積層体面内40mm×40mmについてハイパスフィルタ(20mm)を通して解析した。解析で得られる40mm×40mmの3次元形状から面内の平均粗さRaを求めて(Y)とした。
【0072】
〔応力緩和〕
実施例及び比較例で作製した粘着シート1〜3について、英弘精機株式会社製のレオメータ「MARS」を用いて、5%せん断ひずみをかけた直後の最大トルク(Tq
0)と5秒後のトルク(Tq
5)とを測定し、応力緩和率(%)を以下式にて求めた。
応力緩和率(%)=100×(1−T
5/T
0)
【0073】
〔保持力〕
実施例及び比較例で作製した粘着シート1〜3について、粘着材に365nmの紫外線が2000mJ到達するよう、剥離フィルム越しに高圧水銀ランプにて紫外線照射し、前記積層体における2次硬化後相当の粘着シートを作製した。
【0074】
上記粘着シートを50mm×100mmに裁断した後片面の剥離フィルムを剥がし、該粘着シートの片面が、裏打用のPETフィルム(厚さ38μm)に重なるようにハンドローラで貼着し、これを巾15mm×長さ100mmの短冊状に裁断して試験片とした。
次に、残る剥離フィルムを剥がして、垂直に立設したSUS板(厚さ120mm、5mm×1.5mm)に対して、試験片が20mmの長さだけ重なるようにしてハンドローラで貼着した。この時、透明両面粘着シートとSUS板の貼着面積は15mm×20mmとなる。
【0075】
その後、試験片を60℃の雰囲気下で15分養生させた後、試験片に4.9Nの錘を垂直方向に取り付けて掛けて60分間静置した後、SUSと試験片との貼着位置が下方にズレた長さ(mm)、すなわちズレ量を測定した。
【0076】
〔損失正接 Tanδ〕
実施例1〜2及び比較例1で作製した粘着シート1〜3、及び、保持力測定にて作製した2次硬化後相当の粘着シート1〜3を其々8枚積層して約1.2mm厚さに調整し、動的粘弾性を英弘精機株式会社製のレオメータ「MARS」を用いて剪断法で以下の条件にて測定した。
・治具:Φ20mmパラレルプレート
・周波数:1Hz
・温度:0〜100℃(昇温速度3℃/minで測定)
・歪角:0.1%
【0077】
【表1】
【0078】
上記の干渉計を用いた外観評価において、画像表示装置用構成部材のモデルとしてのソーダライムガラスに貼合せた後の状態を観察すると、実施例1及び2については、発泡は確認されず、またガラス面にスジ状や斑模様等の不均一なムラが生じることもなかった。
【0079】
このような実施例・比較例の結果、並びにこれまで発明者が行った試験結果より、画像表示装置用構成部材への貼合前後の状態で透明両面粘着シートの凹凸形状を所定の範囲に制御することで、より具体的には、上記の(X)が30nm〜300nmであり、(Y)が0nm〜130nmであり、(X)−(Y)が30nm以上とすることで、画像表示装置の外観不良を改善できることが分かった。そしてそのためには、画像表示装置用構成部材に貼り合わせた際に、透明両面粘着シート表面が構成部材の表面状態に追随して平坦化するよう、構成部材への貼合前の状態で透明両面粘着シートに柔軟性をもたせるであることが好ましいことであると考えられる。
さらに、構成部材への貼合後の耐発泡性を損なわない為には、貼合後に透明両面粘着シートを硬化させることが効果的であることが分かった。