特許第6221145号(P6221145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221145
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】タッチパネル検査装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   G06F3/041 660
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-257327(P2013-257327)
(22)【出願日】2013年12月12日
(65)【公開番号】特開2015-35200(P2015-35200A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年11月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-144841(P2013-144841)
(32)【優先日】2013年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392019709
【氏名又は名称】日本電産リード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】山下 宗寛
【審査官】 萩島 豪
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−44730(JP,A)
【文献】 特開2011−76341(JP,A)
【文献】 特開2010−086026(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/121862(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/125725(WO,A1)
【文献】 特開2011−138469(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0157066(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041 − 3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象であるタッチパネルの表面に接近又は接触可能な複数の電極と、
所定の信号を出力する信号源と、
前記複数の電極のそれぞれに対応して設けられたスイッチと、
を備え、
各スイッチは、対応する電極が前記信号源に接続された状態と、当該電極がグランドに接続された状態と、を切り換え可能に構成されていることを特徴とするタッチパネル検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のタッチパネル検査装置であって、
前記複数のスイッチを制御する制御部を備え、
前記制御部は、各電極が、前記信号源又はグランドの何れか一方に接続された状態となるように、各スイッチを制御することを特徴とするタッチパネル検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載のタッチパネル検査装置であって、
検査対象であるタッチパネルの電極に流れた電流を検出する電流検出部と、
前記タッチパネルの表面に前記複数の電極を接近又は接触させ、前記制御部が各スイッチを制御した状態で、前記電流検出部によって電流を検出し、検出した電流に基づいて当該タッチパネルの良否を判定する判定部と、
を備えることを特徴とするタッチパネル検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載のタッチパネル検査装置であって、
前記電流検出部による電流の検出は、前記タッチパネルの電極に信号を印加せずに行うことを特徴とするタッチパネル検査装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のタッチパネル検査装置であって、
検査対象のタッチパネルの電極の長手方向に沿って配置された一群の電極を備え、
前記判定部は、
前記一群の電極のうち1つ又は複数の電極を前記信号源に接続し、このとき前記電流検出部で検出された電流に基づいて、前記検査対象の電極の太り又は細りを判定することを特徴とするタッチパネル検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載のタッチパネル検査装置であって、
前記判定部は、
前記一群の電極のうち1つ又は複数の電極を前記信号源に接続したときに検出された電流に基づいて、当該電極と、前記検査対象の電極と、の間の静電容量を算出するとともに、
当該算出した静電容量と、規定の静電容量と、を比較することにより、前記検査対象の電極の太り又は細りを判定することを特徴とするタッチパネル検査装置。
【請求項7】
請求項5に記載のタッチパネル検査装置であって、
前記判定部は、
前記一群の電極のうち1つ又は複数の電極を前記信号源に接続したときに検出された電流に基づいて、当該電極と、前記検査対象の電極と、の間の静電容量を算出するとともに、
前記信号源に接続する電極の数を異ならせて、前記静電容量の算出を複数回行い、
前記信号源に接続した電極の数と、前記算出した静電容量と、の関係に基づいて、前記検査対象の電極の太り又は細りを判定することを特徴とするタッチパネル検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルの検査装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、いわゆる投影型静電容量方式と呼ばれるタッチパネルが知られている。図4の模式図に示すように、この種のタッチパネル10は、複数の第1透明電極11と、複数の第2透明電極12を備えている。
【0003】
各第1透明電極11は、細長く形成され、互いに平行に並べて配置されている。また、各第2透明電極12は、細長く形成され、互いに平行に並べて配置されている。透明電極11,12は、例えば酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide、ITO)を用いて成膜して形成することができる。
【0004】
第1透明電極11及び第2透明電極12は、タッチパネル10の厚み方向で見たときに、互いに交差するよう配置される。また、第1透明電極11と第2透明電極12は、タッチパネル10の厚み方向で所定の隙間を挟んで対向するように配置されている。これにより、第1透明電極11と第2透明電極12の交差部分に一種のコンデンサが形成されている。
【0005】
人体の指(又はスタイラスペンなど)をタッチパネル10の表面に接近又は接触させると、指(又はスタイラスペン)と、透明電極11,12との間で静電容量結合が生じ、上記コンデンサの静電容量が変化する。タッチパネル10は、この静電容量の変化を検出することにより、当該タッチパネル10に指(又はスタイラスペン)が触れた位置を検出することができる。
【0006】
図8は、この種のタッチパネルを検査する検査装置として従来から知られている構成を模式的に示したものである。図8の検査装置は、検査対象のタッチパネル10の表面に接近又は接触させて移動可能な導電性物体13と、検査回路16と、を備えている。
【0007】
導電性物体13は、例えば金属等からなる棒状の部材であり、接地されている。この導電性物体13をタッチパネル10に接近又は接触させると、当該導電性物体13と透明電極11,12の間で静電容量結合を生じる。従って、導電性物体13をタッチパネル10に接近又は接触させることにより、指(あるいはスタイラスペンなど)によってタッチパネル10が実際にタッチされた状態を模擬できる。このように、導電性物体13は、「疑似指」と呼ぶことができるものである。
【0008】
検査回路16は、所定の信号を出力する信号源15と、透明電極11,12に流れた電流を検出する電流検出部14と、を備えている。何れかの透明電極11,12に対して信号源15による信号を印加するとともに、第1透明電極11及び第2透明電極12に流れた電流を電流検出部14で検出すれば、前記静電容量の変化を求めることができる。
【0009】
従って、図8に示した検査装置によるタッチパネル10の検査は、概略的には以下のように行う。即ち、疑似指13をタッチパネル10の表面の所定の位置に接触又は接近させた状態で、各透明電極11,12に信号を印加する。このとき各透明電極11,12に流れた電流を電流検出部14で検出し、検出された電流に基づいて、各透明電極11,12の間の静電容量の変化を求める。そして、静電容量の変化が生じた透明電極11,12の位置と、実際に疑似指13を接触(又は接近)させた位置と、が一致しているかどうかを調べることにより、当該タッチパネル10によってタッチを正常に検出できることを確認する。
【0010】
疑似指13をタッチパネル10表面の各部に移動させ、上記検査を繰り返し行うことにより、タッチパネル10の各部においてタッチを正常に検出できるか否かを検査できる。また、疑似指13を移動させながら上記検査を行えば、指(又はスタイラスペン)を移動させる操作(いわゆるスワイプ操作)を模擬した検査を行うことも可能である。
【0011】
しかしながら、図8の従来の検査装置は、疑似指13を物理的に移動させながら検査を行うため、検査に時間を要するという問題がある。また、疑似指13をタッチパネル10に接触させて移動させた場合は、タッチパネル10が傷つくおそれがある。また、疑似指13を物理的に移動させるための駆動機構が必要となるため、検査装置が大型化及び複雑化する。
【0012】
これに関し、特許文献1は、疑似指の移動を電気的に行う構成を開示している。この特許文献1に記載の検査装置100を、図9に示す。特許文献1の検査装置100は、絶縁基板108と、当該絶縁基板108のタッチパネル側の面に形成されている複数の電極105と、複数の電極105をそれぞれ独立に接地させるスイッチ109と、を備えている。なお、図示の都合上、図9では、一部のスイッチ109のみを図示している。実際の検査装置100においては、全ての電極105それぞれに対応してスイッチ109が設けられている。
【0013】
図9に示した検査装置100において、何れかのスイッチ109がONにされた場合、当該スイッチ109に対応する電極105は接地される。接地された電極105は、図8の疑似指13と同様にふるまう。従って、図9の検査装置100を、図8の疑似指13の代わりに用いることができる。図9の検査装置100において、ONにするスイッチ109を順次切り換えていくことにより、接地される電極105(疑似指としてふるまう電極)の位置を次々と移動させることができる。これにより、図8の疑似指13を移動させるのと同等の検査を、図9の検査装置100によって行うことができる。
【0014】
特許文献1は、検査装置100を上記のような構成とすることにより、タッチパネルの傷発生を抑制しつつ検査時間を短縮できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2010−44730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
図9に示した特許文献1の検査装置100において、各電極105は、浮遊容量C1を有している。また、各スイッチ109は、OFFの状態では接点間容量(接点間の静電容量)C2を有している。従って、スイッチ109がOFFの状態では、当該スイッチ109及び電極105によって、容量C1+C2のコンデンサが構成されることになる。容量C1+C2のコンデンサがタッチパネルの近くに存在することになるので、タッチパネルにとってはノイズとなる。しかもこのコンデンサは接地されていないので、電位不定である。
【0017】
このように、図9の検査装置100では、スイッチ109をOFFにした場合には、容量C1+C2で電位不定のコンデンサが必然的に形成され、タッチパネルにとってノイズとなる。このため、図9の検査装置100では、疑似指の移動を理想的に実現することができず、タッチパネル10の検査精度(S/N比)が悪いという問題がある。
【0018】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、タッチパネルを傷つけることなく、高速検査可能であり、しかも検査精度を向上させた検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0019】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0020】
本願発明の観点によれば、以下のタッチパネル検査装置が提供される。即ち、このタッチパネル検査装置は、複数の電極と、信号源と、スイッチと、を備える。前記複数の電極は、検査対象であるタッチパネルの表面に接近又は接触可能である。前記信号源は、所定の信号を出力する。前記スイッチは、前記複数の電極のそれぞれに対応して設けられる。そして、各スイッチは、対応する電極が前記信号源に接続された状態と、当該電極がグランドに接続された状態と、を切り換え可能に構成されている。
【0021】
この構成によれば、各電極は、信号源又はグランドの何れかに接続された状態を採り得るので、スイッチの接点を必ず閉じた状態とすることができる。従って、スイッチの接点が離れた状態(スイッチOFFの状態)を回避し、当該スイッチに接点間容量が発生することを防ぐことができる。また、各電極が信号源又はグランドの何れかに必ず接続された状態とすることができるので、当該電極がどこにも接続されずに電位不定となる状態を回避できる。これにより、従来の構成に比べてS/N比を向上させ、検査精度を向上させることができる。
【0022】
上記のタッチパネル検査装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、このタッチパネル検査装置は、前記複数のスイッチを制御する制御部を備える。前記制御部は、各電極が、前記信号源又はグランドの何れか一方に接続された状態となるように、各スイッチを制御する。
【0023】
制御部がこのようにスイッチを制御することにより、各電極が、信号源又はグランドの何れかに一方に必ず接続された状態となる。これにより、スイッチの接点間容量が発生することを確実に防ぐとともに、電極が電位不定となる状況を確実に回避できる。
【0024】
上記のタッチパネル検査装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、このタッチパネル検査装置は、電流検出部と、判定部と、を備える。前記電流検出部は、検査対象であるタッチパネルの電極に流れた電流を検出する。前記判定部は、前記タッチパネルの表面に前記複数の電極を接近又は接触させ、前記制御部が各スイッチを制御した状態で、前記電流検出部によって電流を検出し、検出した電流に基づいて当該タッチパネルの良否を判定する。
【0025】
このように構成された検査装置により、電極を疑似指として機能させ、タッチパネルの検査を精度良く行うことができる。
【0026】
上記のタッチパネル検査装置において、前記電流検出部による電流の検出は、前記タッチパネルの電極に信号を印加せずに行うことができる。
【0027】
即ち、上記発明の構成においては、タッチパネルに接近(又は接触)させる電極に信号が印加されるので、タッチパネル側の電極に信号を印加する必要が無い。従って、上記のように、タッチパネルの電極に信号を印加しなくても、当該タッチパネルの検査を行うことができる。
【0028】
上記のタッチパネル検査装置は、検査対象のタッチパネルの電極の長手方向に沿って配置された一群の電極を備えることが好ましい。このタッチパネル検査装置によれば、以下のような検査を行うことができる。即ち、前記判定部は、前記一群の電極のうち1つ又は複数の電極を前記信号源に接続し、このとき前記電流検出部で検出された電流に基づいて、前記検査対象の電極の太り又は細りを判定する。
【0029】
このように、本願発明のタッチパネル検査装置によれば、検査対象の電極の太り又は細りを判定する検査も行うことができる。
【0030】
上記のタッチパネル検査装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記判定部は、前記一群の電極のうち1つ又は複数の電極を前記信号源に接続したときに検出された電流に基づいて、当該電極と、前記検査対象の電極と、の間の静電容量を算出する。そして、前記判定部は、前記算出した静電容量と、規定の静電容量と、を比較することにより、前記検査対象の電極の太り又は細りを判定する。
【0031】
即ち、タッチパネル検査装置の電極と、検査対象の電極と、の間には、一種のコンデンサが形成される。検査対象の電極に細りや太りがあった場合には、上記コンデンサの静電容量が、規定の値からズレる。そこで、上記コンデンサの静電容量を求め、規定の静電容量と比較することにより、検査対象の電極の細りや太りを判定することができる。
【0032】
上記のタッチパネル検査装置は、以下のように構成することもできる。即ち、前記判定部は、前記信号源に接続する電極の数を異ならせて、前記静電容量の算出を複数回行う。そして、前記判定部は、前記信号源に接続した電極の数と、前記算出した静電容量と、の関係に基づいて、前記検査対象の電極の太り又は細りを判定する。
【0033】
例えば、タッチパネル検査装置の電極が全て同じサイズであり、かつ検査対象の電極が一様な太さであれば、信号源に接続する電極の数に応じて上記コンデンサの静電容量が線形に増大するはずである。逆に、検査対象の電極に太りや細りがある場合には、信号源に接続した電極の数と、上記コンデンサの静電容量と、が線形の関係にならない。このように、信号源に接続した電極の数と、上記コンデンサの静電容量と、の関係に基づいて、検査対象の電極の細りや太りを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施形態に係る検査装置を示す模式的な斜視図。
図2】疑似指プレートの平面図。
図3】タッチパネル検査装置によってタッチパネルの検査を行っている様子を示す模式的な側面断面図。
図4】検査対象のタッチパネルの模式的な平面図。
図5】透明電極に太りや細りがある場合を説明する図。
図6】変形例の検査方法を説明する模式的な側面断面図。
図7】透明電極の別の形態を示す平面図。
図8】従来の検査装置の模式的な斜視図。
図9】特許文献1の検査装置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0036】
本実施形態の検査装置20が検査対象としているタッチパネル10は、いわゆる投影型静電容量方式に構成されている。このタッチパネル10は、図4に示すように、複数の細長い第1透明電極11と、複数の細長い第2透明電極12と、を備えた一般的な構成である。複数の第1透明電極11は、互いに平行に並べて配置されている。また、複数の第2透明電極12も、互いに平行に並べて配置されている。第1透明電極11と第2透明電極は、タッチパネル10の厚み方向で隙間を空けて配置されている。また、第1透明電極11と第2透明電極は、タッチパネル10の厚み方向で見たときに、交差するように配置されている。なお、投影型静電容量方式のタッチパネル10の構成は公知であるので、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0037】
図1に示すように、検査装置20は、タッチパネル保持部(図略)と、電流検出部と、疑似指プレート22と、制御部23と、を主に備えている。
【0038】
制御部23は、CPU、ROM、RAMなどを備えたコンピュータとして構成されており、検査装置20の各部の動作を制御できるように構成されている。
【0039】
図略のタッチパネル保持部は、検査対象のタッチパネル10を、所定の姿勢で保持できるように構成されている。
【0040】
電流検出部は、検査対象のタッチパネル10の各透明電極11,12に流れた電流を検出できるように構成されている。本実施形態の電流検出部は、図1に示すように、第1電流計21aと、第2電流計21bと、第1切換スイッチ24aと、第2切換スイッチ24bと、を備えている。
【0041】
第1切換スイッチ24aは、タッチパネル10が備える複数の第1透明電極11と、第1電流計21aの正側の端子と、の間に配置されたスイッチである。この第1切換スイッチ24aは、複数の第1透明電極のなかの任意の第1透明電極11と、第1電流計21aの正側の端子と、のあいだの接続/非接続を、任意に切換可能に構成されている。なお、第1電流計21aの負側の端子は、接地されている。
【0042】
第2切換スイッチ24bは、タッチパネル10が備える複数の第2透明電極12と、第2電流計21bの正側の端子と、の間に配置されたスイッチである。この第2切換スイッチ24bは、複数の第2透明電極のなかの任意の第2透明電極12と、第2電流計21bの正側の端子と、のあいだの接続/非接続を、任意に切換可能に構成されている。なお、第2電流計21bの負側の端子は、接地されている。
【0043】
切換スイッチ24a,24bのON/OFFの切り換えは、制御部23によって制御されている。また、電流計21a,21bの検出結果は、制御部23に出力される。
【0044】
以上の構成で、制御部23は、切換スイッチ24a,24bを制御することにより、何れか1つの任意の第1透明電極11に流れた電流と、何れか1つの任意の第2透明電極12に流れた電流と、を検出できる。従って、制御部23は、切換スイッチ24a,24bを順次切り換えていくことにより、タッチパネル10が備える全ての透明電極11,12それぞれについて、流れた電流の大きさを順次検出していくことができる。
【0045】
疑似指プレート22は、保持板25と、複数の疑似指電極26と、を備えている。疑似指プレート22の平面図を図2に示す。
【0046】
保持板25は、絶縁体からなる平板状の部材である。図1に示すように、保持板25は、検査対象のタッチパネル10と平行に配置される。
【0047】
複数の疑似指電極26は、保持板25のタッチパネル10側を向く側の面に配置されている。本実施形態の各疑似指電極26は、金属製の薄板ないし薄膜であり、図2に示すように、厚み方向で見たときの形状が円形に形成されている。疑似指電極26は、例えば、タッチパネル10にタッチされる指先や、スライラスペンのペン先と同程度のサイズの円形とすることができる。また、本実施形態において、複数の疑似指電極26は、図2に示すように、保持板25の一側の面に均一に敷き詰められるようにして、等間隔で整列して配置されている。
【0048】
図1に示すように、保持板25は、疑似指電極26が配置された側の面が、検査対象のタッチパネル10に対向するように配置される。図1の太線の矢印で示すように保持板25をタッチパネル10に近づけることにより、複数の疑似指電極26を、タッチパネル10の表面に接触させることができる。疑似指電極26がタッチパネル10の表面に接触している様子を、図3に示す。
【0049】
検査装置20は、所定の信号を出力する信号源27を有している。信号源27が出力する信号は特に限定されないが、例えば所定周期の正弦波信号やパルス信号などの交流信号とすることができる。
【0050】
また、検査装置20は、グランドライン28を備えている。グランドライン28は、接地されている。
【0051】
検査装置20は、疑似指切換スイッチ29を備えている。疑似指切換スイッチ29は、複数のスイッチ30から構成されている。各スイッチ30は、複数の疑似指電極26それぞれに対応して設けられている。なお、図1及び図2は、図面を簡略化するために、大部分のスイッチ30を省略している。実際の検査装置20では、全ての疑似指電極26それぞれに対応して、スイッチ30が設けられている。
【0052】
各スイッチ30は、対応する疑似指電極26が信号源27に接続された状態と、当該疑似指電極26がグランドライン28に接続された状態と、を切り換え可能に構成されている。疑似指電極26を信号源27に接続することにより、当該疑似指電極26に対して信号源27からの信号が印加される。また、疑似指電極26をグランドライン28に接続することにより、当該疑似指電極26が接地される。
【0053】
疑似指切換スイッチ29が備える各スイッチ30の切り換えは、制御部23によって制御されている。制御部23は、疑似指切換スイッチ29を制御することにより、任意の疑似指電極26を、信号源27に接続することができる。
【0054】
続いて、本実施形態の検査装置20によるタッチパネル10の検査について説明する。
【0055】
本実施形態の検査装置20によるタッチパネル10の検査は、当該タッチパネル10の透明電極11,12と、疑似指プレート22の疑似指電極26と、が静電容量結合できるように疑似指プレート22を配置した状態で行う。具体的には、図3に示すように、タッチパネル10の表面に各疑似指電極26を接触させるようにして、疑似指プレート22を配置する。
【0056】
制御部23は、疑似指切換スイッチ29を適宜制御することにより、所定の疑似指電極26を、信号源27に接続する。信号源27に接続された疑似指電極26の電位は、当該信号源27が出力する信号に応じて変化する。
【0057】
疑似指電極26の電位が変化した場合、当該疑似指電極26の位置に対応した透明電極11、12においては、静電容量結合を介して電流が誘起される。従って、仮にタッチパネル10が正常であれば、電流が流れた透明電極11,12を検出することにより、電位が変化した疑似指電極26(信号源27に接続されている疑似指電極26)の位置を検出することができる。
【0058】
制御部23は、電流検出部が検出した電流に基づいて、電流が流れた透明電極11,12を特定し、これに基づいて、電位が変化した疑似指電極26(信号源27に接続されている疑似指電極26)の位置を検出するように構成されている。そして、制御部23は、検出した疑似指電極26の位置が、スイッチ30を介して実際に信号源27に接続されている疑似指電極26の位置と一致しているかどうかを調べる。両者が一致していれば、制御部23は、タッチパネル10によって疑似指電極26の位置を正常に検出できていると判断する。このように、本実施形態の制御部23は、タッチパネル10の良否を判定する判定部としての機能も有している。
【0059】
このように、本実施形態の検査装置20においては、「信号源27に接続された疑似指電極26」が、「疑似指」としてふるまう。従って、制御部23は、疑似指切換スイッチ29を適宜制御して、信号源27に接続する疑似指電極26を順次切り換えていくことにより、指の移動を模擬した検査を行うことができる。
【0060】
制御部23には、疑似指切換スイッチ29をどのように切り換えるかを記憶した検査パターンが、予め記憶されている。制御部23は、この検査パターンに従って、タッチパネル10の検査を行う。
【0061】
ところで前述のように、従来の検査装置(図8)では、疑似指13の位置を検出するために、タッチパネル10の透明電極11,12に信号を印加して電流を流す必要があった。この点、本実施形態では、疑似指電極26に信号を印加し、これによって透明電極11,12に電流を誘起させる構成である。このため、本実施形態では、透明電極11,12にわざわざ信号を印加する必要がない。そこで本実施形態では、従来の検査装置(図8)が備えていた信号源15は省略し、透明電極11,12には信号を印加しない構成としている。
【0062】
なお、従来の検査装置(図8)では、タッチパネル10の透明電極11,12に信号を印加することにより、「接地された導電性物体13」を「疑似指」として検出することができたのである。しかし本実施形態の検査装置20では、タッチパネル10の透明電極11,12には信号を印加しないので、「接地された導電性物体」がタッチパネル10の近くにあったとしても検出されない。従って、本実施形態の検査装置20による検査において、接地された(グランドライン28に接続された)疑似指電極26は、タッチパネル10の検査に何ら影響を及ぼさないと考えて良い。
【0063】
そして、本実施形態のスイッチ30は、疑似指電極26が、信号源27にもグランドライン28にも接続されていない状態(疑似指電極26が浮いた状態)とならないように構成されている。また、本実施形態の制御部23は、信号源27に接続しない疑似指電極26は、必ずグランドライン28に接続するように、疑似指切換スイッチ29を制御するように構成されている。
【0064】
つまり、本実施形態では、スイッチ30の接点が離れた状態(スイッチOFFの状態)にならないように構成されている。なお、従来の検査装置(図9)のスイッチ109では、接点が離れた状態(スイッチOFFの状態)が存在していたので、当該スイッチ109の接点間容量が問題となっていた。これに対し、本実施形態の検査装置20のスイッチ30では、スイッチOFFの状態が生じないように構成しているので、接点間容量が発生することを防いでいる。
【0065】
また、従来の検査装置(図9)の電極105は、浮遊容量C1を有していた。このため、電極105がどこにも接続されていない状態(電極105が浮いた状態)になると、電位不定となり、ノイズの原因になっていた。この点、本実施形態の検査装置20においても、疑似指電極26は浮遊容量を有している。しかしながら、本実施形態の疑似指電極26は、信号源27又はグランドライン28の何れか一方に、必ず接続される。従って、本実施形態の疑似指電極26は、電位不定となることがない。
【0066】
以上のように、本実施形態の検査装置20のスイッチ30は、従来の検査装置(図9)のスイッチ109のようにOFFとなることがなく、疑似指電極26が電位不定となることもない。従って、従来の検査装置(図9)においてスイッチ109がOFFのときに容量C1+C2で電位不定のコンデンサが形成されてしまう、という問題は、本実施形態の検査装置20には存在しない。
【0067】
このように、本実施形態の検査装置20によれば、従来の検査装置(図9)の問題であったノイズの影響を除去し、疑似指の移動を理想的に実現できる。これにより、本実施形態の検査装置20は、精度の高い(S/N比の良い)検査を行うことができる。
【0068】
以上で説明したように、本実施形態の検査装置20は、複数の疑似指電極26と、信号源27と、スイッチ30と、を備える。複数の疑似指電極26は、検査対象であるタッチパネル10の表面に接触可能である。信号源27は、所定の信号を出力する。スイッチ30は、複数の疑似指電極26のそれぞれに対応して設けられている。そして、各スイッチ30は、対応する疑似指電極26が信号源27に接続された状態と、当該疑似指電極26がグランドライン28に接続された状態と、を切り換え可能に構成されている。
【0069】
この構成によれば、各疑似指電極26は、信号源27又はグランドライン28の何れかに接続された状態を採り得るので、スイッチ30の接点を必ず閉じた状態とすることができる。従って、スイッチ30の接点が離れた状態(スイッチOFFの状態)を回避し、当該スイッチ30に接点間容量が発生することを防ぐことができる。また、各疑似指電極26が信号源27又はグランドライン28の何れかに必ず接続された状態とすることができるので、当該疑似指電極26がどこにも接続されずに電位不定となる状態を回避できる。これにより、従来の構成に比べてS/N比を向上させ、検査精度を向上させることができる。
【0070】
また、上記のように、本実施形態の検査装置20は、複数のスイッチ30を制御する制御部23を備えている。制御部23は、各疑似指電極26が、信号源27又はグランドライン28の何れか一方に接続された状態となるように、各スイッチ30を制御する。
【0071】
制御部23がこのようにスイッチ30を制御することにより、各疑似指電極26が、信号源27又はグランドライン28の何れかに一方に必ず接続された状態となる。これにより、スイッチ30の接点間容量が発生することを確実に防ぐとともに、疑似指電極26が電位不定となる状況を確実に回避できる。
【0072】
また、上記のように、本実施形態の検査装置20は、電流検出部を備える。電流検出部は、検査対象であるタッチパネル10の透明電極11,12に流れた電流を検出する。制御部23は、タッチパネル10の表面に複数の疑似指電極26を接触させ、各スイッチ30を制御した状態で、前記電流検出部によって電流を検出し、検出した電流に基づいて当該タッチパネル10の良否を判定する。
【0073】
このように構成された検査装置20により、疑似指電極26を疑似指として機能させ、タッチパネル10の検査を精度良く行うことができる。
【0074】
また、上記のように、本実施形態の検査装置20において、前記電流検出部による電流の検出は、タッチパネル10の透明電極11,12に信号を印加せずに行っている。
【0075】
即ち、上記実施形態の構成においては、タッチパネルに接触させる疑似指電極26に信号が印加されるので、タッチパネル側の透明電極11,12に信号を印加する必要が無い。従って、上記のように、タッチパネル10の透明電極11,12に信号を印加しなくても、当該タッチパネル10の検査を行うことができる。
【0076】
続いて、上記実施形態の変形例として、検査装置20による別の検査について説明する。
【0077】
上記で説明した検査は、疑似指プレート22を、従来の疑似指13(図8)の代わりとして利用するものである。従って、従来の疑似指13と同等の検査を行うことができる。しかしながら、本実施形態の疑似指プレート22を用いれば、従来の疑似指13ではできなかった別の種類の検査を行うことも可能である。
【0078】
まず、本変形例の検査方法の背景について簡単に説明する。前述のように、タッチパネル10は、細長い第1透明電極11(及び第2透明電極12)を複数平行に並べて備えている。通常、複数の第1透明電極11(及び第2透明電極12)は、同一の形状で形成されている。ところが、第1透明電極11(及び第2透明電極12)を形成する際のエッチングの多寡などによっては、第1透明電極11(又は第2透明電極12)が規定の形状で形成されない場合がある。
【0079】
例えば図5には、規定の幅よりも細く形成されてしまった第1透明電極11cや、規定の幅よりも太く形成されてしまった第1透明電極11dが示されている。また例えば、図5の第1透明電極11bは、その一部のみ、規定の幅より太くなっている。また、図5の第1透明電極11fは、その一部のみ、規定の幅より細くなっている。このように、透明電極の一部に細りや太りが生じる場合もある。透明電極が規定の形状に形成されていない場合(透明電極に太りや細りがある場合)は、そのタッチパネル10を不良と判定することが望まれる。
【0080】
そこで、本変形例の検査は、第1透明電極11又は第2透明電極の細りや太りを検出することを目的としたものである。なお、以下の説明では、第1透明電極11を検査する場合について述べるが、第2透明電極12についても同様の検査が可能であることをここで指摘しておく。
【0081】
続いて、本変形例の検査の原理について説明する。
【0082】
前述のように、上記実施形態の疑似指プレート22においては、複数の疑似指電極26が、保持板25の一側の面に均一に敷き詰められるようにして、等間隔で整列して配置されている。そこで、複数の疑似指電極26の中から、検査対象の第1透明電極11の長手方向に沿って配置されている一群の疑似指電極26を選択することが可能である。
【0083】
例えば図5においては、第1透明電極11aの長手方向に沿って配置されている6つの疑似指電極26が、点線で示されている。このように、ある透明電極の長手方向に沿って配置された一群の疑似指電極26を、以下では単に「疑似指電極群31」と呼ぶ。
【0084】
図6に示すように、検査対象の第1透明電極11と、当該第1透明電極11に対応した疑似指電極群31の各疑似指電極26と、の間には、一種のコンデンサが形成されている(以下、「コンデンサ」と言った場合には、検査対象の透明電極と、各疑似指電極26と、によって形成された仮想的なコンデンサを指す)。例えば図6の場合、疑似指電極群31と第1透明電極11の間には6つのコンデンサC11〜C16が形成されている。
【0085】
既に説明したように、スイッチ30を制御して疑似指電極26を信号源27に接続すれば、静電容量結合を介して第1透明電極11に電流が流れる。即ち、上記コンデンサに電流が流れることになる。このとき流れた電流は、第1電流計21aによって検出される。そして、このとき第1電流計21aで検出した電流に基づいて、前記コンデンサの容量を求めることができる。
【0086】
さて、コンデンサの容量は、誘電率と、極板間の距離と、極板面積と、によって決まる。ここでは誘電率は一定とみなす。また図6に示すように、第1透明電極11と、各疑似指電極26と、の距離は一定であるから、各コンデンサの極板間の距離は一定であるとみなせる。
【0087】
本実施形態では、各疑似指電極26は、全て同じ形状、同じサイズで形成されている。従って、各コンデンサの極板面積を決めるのは、もっぱら第1透明電極11の形状である。
【0088】
以上のことから、第1透明電極11の形状によって、各コンデンサの容量が決まることがわかる。即ち、仮に、第1透明電極11に太い部分があれば、その部分と、これに対応する疑似指電極26と、によって形成されるコンデンサの極板面積が大きくなる結果、当該コンデンサの容量が大きくなる。逆に、第1透明電極11に細い部分があれば、その部分と、これに対応する疑似指電極26と、によって形成されるコンデンサの極板面積が小さくなる結果、当該コンデンサの容量が小さくなる。このように、第1透明電極11の幅の大小によって、各コンデンサの容量が決まる。
【0089】
従って、各コンデンサの容量に基づいて、第1透明電極11の太りや細りを検出できる。
【0090】
以上が、本変形例の検査の原理である。続いて、本変形例の検査の具体的な方法について説明する。
【0091】
まず、制御部23は、複数の第1透明電極11の中から、検査対象の透明電極を選択する。
【0092】
続いて、制御部23は、疑似指プレート22が備える複数の疑似指電極26の中から、検査対象の第1透明電極の長手方向に沿って配置されている一群の疑似指電極26(疑似指電極群31)を選択する。
【0093】
制御部23は、スイッチ30を制御することにより、疑似指電極群31のうち1つ又は複数の疑似指電極26を信号源27に接続する。これにより、信号源27に接続された疑似指電極26と、検査対象の第1透明電極11と、によって形成されたコンデンサに電流が流れる。例えば、図6のようにスイッチ30を制御した場合、コンデンサC12及びC13に電流が流れる。
【0094】
続いて制御部23は、第1電流計21aで検出した電流に基づいて、前記コンデンサの容量を求める。なお、このとき求められる容量は、電流が流れているコンデンサの容量の合計となる。例えば図6の場合、コンデンサC12及びC13に電流が流れている。従って、制御部23は、第1電流計21aで検出した電流に基づいて、コンデンサC12及びC13の容量の合計を求めることができる。
【0095】
そして、制御部23は、求めたコンデンサの容量に基づいて、前記検査対象の第1透明電極11の細り又は太りを判定する。
【0096】
例えば図6の場合、コンデンサC12及びC13の容量の合計を求めているので、検査対象の第1透明電極11のうち、コンデンサC12,C13に対応した領域(図中の符号32で示す領域)の太り又は細りを判定できる。即ち、制御部23は、前記容量の合計が、規定の値よりも所定以上小さかった場合には、検査対象の第1透明電極11のうち、領域32の部分が規定の幅よりも細いと判定する。また、制御部23は、前記容量の合計が、規定の値よりも所定以上大きかった場合には、検査対象の第1透明電極11のうち、領域32の部分が規定の幅よりも太いと判定する。
【0097】
以上のようにして、制御部23は、検査対象の第1透明電極11のうち、電流を流したコンデンサに対応する領域の太り又は細りを判定できる。従って、制御部23は、スイッチ30を制御して、電流を流すコンデンサを切り替えることにより、検査対象の第1透明電極11のうち、任意の領域の太り又は細りを判定できる。もちろん、全てのコンデンサC1〜C6に電流を流せば(疑似指電極群31を構成する全ての疑似指電極26に電流を流せば)、検査対象の第1透明電極11の全体的な太り又は細りを判定できる。
【0098】
検査対象の第1透明電極11が、規定の幅よりも細い、又は太いと判定された場合、制御部23は、タッチパネル10を不良と判定する。このように、本変形例の制御部23も、タッチパネル10の良否を判定する判定部としての機能を有している。
【0099】
以上で説明したように、検査装置20は、検査対象のタッチパネル10の透明電極の長手方向に沿って配置された疑似指電極群31を備えている。そして、この変形例では、以下のような検査を行う。即ち、制御部23は、疑似指電極群31のうち1つ又は複数の疑似指電極26を信号源27に接続し、このとき第1電流計21aで検出された電流に基づいて、前記透明電極の太り又は細りを判定する。
【0100】
このように、本実施形態の検査装置20によれば、検査対象の透明電極の太り又は細りを判定する検査も行うことができる。
【0101】
また、上記変形例において、制御部23は、疑似指電極群31のうち1つ又は複数の疑似指電極26を信号源27に接続したときに検出された電流に基づいて、当該疑似指電極26と、検査対象の第1透明電極11と、の間の静電容量を算出している。そして、制御部23は、算出した静電容量と、規定の静電容量と、を比較することにより、前記検査対象の第1透明電極11の太り又は細りを判定する。
【0102】
即ち、検査装置20の疑似指電極26と、検査対象の第1透明電極11と、の間には、一種のコンデンサが形成される。検査対象の第1透明電極11に細りや太りがあった場合には、上記コンデンサの静電容量が、規定の値からズレる。そこで、上記コンデンサの静電容量を求め、規定の静電容量と比較することにより、検査対象の第1透明電極11の細りや太りを判定することができる。
【0103】
なお、上記の検査方法では、第1透明電極11の太り又は細りを判定するために、コンデンサの容量を求めて、規定の値と比較する必要がある。従って、上記判定を正しく行うためには、規定の値を予め適切に設定しておく必要がある。そこで以下では、規定の値を用いずに、第1透明電極11の太り又は細りを判定する方法について説明する。
【0104】
図6において、仮に、第1透明電極11の幅が一定であれば、全てのコンデンサC11〜C16の容量は同じはずである。逆に、第1透明電極11の一部に、幅が細い部分、または太い部分があった場合、コンデンサC11〜C16の容量は全て同じにはならない。そこで、コンデンサC11〜C16の容量が同じか否かに基づいて、第1透明電極11の部分的な細り又は太りを判定することができる。
【0105】
例えば、制御部23は、スイッチ30を制御してコンデンサC11にのみ電流を流し、このとき流れた電流を第1電流計21aで検出して、これに基づいてコンデンサC11の容量を求める。次に、制御部23は、スイッチ30を制御してコンデンサC11及びC12に電流を流し、このとき流れた電流を第1電流計21aで検出して、これに基づいてコンデンサC11及びC12の容量の合計を求める……というように、電流を流すコンデンサの数を変化させながら、当該コンデンサの容量の合計を求めていく。ここで、仮に、コンデンサC11〜C16の容量が全て同じであれば、求めた容量と、電流を流したコンデンサの数(信号源27に接続した疑似指電極26の数)と、は線形の関係になる。
【0106】
そこで制御部23は、求めた容量と、電流を流したコンデンサの数(信号源27に接続した疑似指電極26の数)と、の関係を求める。求めた容量と、電流を流したコンデンサの数と、が線形の関係にある場合は、コンデンサC11〜C16の容量が全て同じであると判断できる。そこでこの場合、制御部23は、検査対象の第1透明電極11の幅は一定であると判定する。
【0107】
一方、求めた容量と、電流を流したコンデンサの数と、が線形の関係に無い場合、コンデンサC11〜C16の容量は同じではないと判断できる。そこでこの場合、制御部23は、検査対象の第1透明電極11は、部分的に細い部分又は太い部分を有していると判定する。
【0108】
この方法によれば、規定の値との比較を用いることなく、検査対象の第1透明電極11の部分的な細り又は太りを検出することができる。従って、規定の値を予め設定しておく必要がないので、判定が簡単になる。
【0109】
上記のように、この検査方法において、制御部23は、信号源27に接続する疑似指電極26の数を異ならせて、静電容量の算出を複数回行っている。そして、制御部23は、信号源27に接続した疑似指電極26の数と、算出した静電容量と、の関係に基づいて、検査対象の第1透明電極11の太り又は細りを判定する。
【0110】
このように、信号源27に接続した疑似指電極26の数と、上記コンデンサの静電容量と、の関係に基づいて、検査対象の第1透明電極11の細りや太りを判定することができる。
【0111】
なお、実際のタッチパネルの透明電極は、図4のように均一な幅を有しているとは限らず、例えば図7のように、菱形の電極が対角線方向に並べられて接続された形状とされる場合がある。このような透明電極の場合も、例えば図7の符号33で示すように、他の部分に比べて細く形成された箇所や、図7の符号34で示すように、他の部分に比べて太く形成された箇所が生じてしまう場合がある。このようなタイプの透明電極の細りや太りも、上記の方法によって判定できる。ただし、このタイプの透明電極の細りや太りを検査装置20で適切に判定するためには、図7の点線で示すように、各菱形に対応した位置に疑似指電極26が配置されていれば好適である。
【0112】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0113】
検査対象のタッチパネル10の構成は、特に限定されない。特に、タッチパネル10が備える透明電極11,12の数や形状、配置などは、図面に示したものに限らず、適宜変更することができる。
【0114】
上記実施形態では、タッチパネル10の表面に疑似指電極26を接触させるように疑似指プレート22を配置した状態で、検査を行うものとした。しかしこれに限らず、疑似指電極26と、タッチパネル10の表面と、の間に隙間を設けるように接近させた状態で(両者を接触させずに)検査を行うことも可能である。
【0115】
上記実施形態の説明において、疑似指電極26のサイズ及び形状を具体的に説明したが、これに限定されない。例えば疑似指電極26は、円形に限らず、四角形、六角形などとすることもできる。また、疑似指電極26のサイズは、指先やスタイラスペンのペン先よりも大きくても良いし、小さくても良い。また、図2には、複数の疑似指電極26を等間隔で配列して配置した構成を記載しているが、疑似指電極26は必ずしも等間隔で配置する必要はない。これ以外にも、疑似指電極26のサイズ、形状、配置等は適宜変更可能である。
【0116】
複数の疑似指電極26を、同時に信号源27に接続しても良い。これによれば、「疑似指」が複数存在する状況(例えばマルチタッチ操作)を模擬した検査を行うことができる。
【0117】
電流検出部は、上記実施形態の構成に限定されず、タッチパネル10の透明電極11,12に流れた電流を検出可能な構成であれば良い。例えば、タッチパネル10が備える各透明電極11,12それぞれに対して個別に電流計を接続する構成とすることができる。この場合、切換スイッチ24a,24bは省略できる。
【0118】
制御部23(判定部)がタッチパネル10の良否を判定する方法は、上記の方法に限らない。制御部23(判定部)は、電流検出部で検出された電流に基づいて、タッチパネル10の良否をさまざまな観点で判定できる。
【符号の説明】
【0119】
10 タッチパネル
11,12 透明電極
20 検査装置(タッチパネル検査装置)
23 制御部
26 疑似指電極(電極)
27 信号源
28 グランドライン(グランド)
30 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9