(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非水系電解液に難溶性のポリマーがエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとを3:7の体積比で混合した溶媒に24時間浸漬し浸漬前後の乾燥重量減少率が10質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の非水系二次電池負極用炭素材。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の内容を詳細に述べる。なお、以下に記載する発明構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの形態に特定されるものではない。
本発明の非水系二次電池負極用炭素材は非水系電解液に難溶性のポリマーが添着した鱗片状黒鉛質粒子(A)(本明細書では鱗片状黒鉛質粒子(A)ともいう)と、アスペクト比が1以上4以下である炭素質粒子(B)(本明細書では炭素質粒子(B)ともいう)を含有することを特徴とする。
以下、本発明に用いる鱗片状黒鉛質粒子(A)と、炭素質粒子(B)について説明する。
【0014】
[鱗片状黒鉛質粒子(A)]
本発明における鱗片状黒鉛質粒子に非水系電解液に難溶性のポリマーが添着した鱗片状黒鉛質粒子(A)について以下に説明する。
本発明の鱗片状黒鉛質粒子(A)は少なくとも非水系電解液に難溶性のポリマー(本明細書では単にポリマーともいう)と鱗片状黒鉛質粒子を含むものである。
【0015】
なお、本明細書において、非水系電解液に難溶性とはポリマーをエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとを3:7の体積比で混合した溶媒に24時間浸漬し浸漬前後の乾燥重量減少率が10質量%以下であることとする。
また、本明細書において、添着とは、鱗片状黒鉛質粒子の表面にポリマーが添着、付着、複合化した状態、鱗片状黒鉛質粒子の細孔内にポリマーが付着している状態等を表し、状態を観察するには、例えば、電界放射型走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線(SEM−EDX)分析、X線光電子分光法(XPS)分析等の手法を用いて粒子断面を観察することにより確認することができる。
鱗片状黒鉛質粒子(A)の形状は、一般的にはSEM写真等で観察すれば容易に判別できる。
【0016】
(鱗片状黒鉛質粒子(A)の特性)
本発明の鱗片状黒鉛質粒子(A)は、以下に記載の非水系電解液に難溶性のポリマーが鱗片状黒鉛質粒子に添着していれば特に制限はないが、鱗片状黒鉛質粒子(A)は以下のような特性を持つことが好ましい。
【0017】
(a)鱗片状黒鉛質粒子(A)の面間隔(d
002)
X線広角回折法による002面の面間隔(d
002)は、通常0.337nm以下、好ましくは0.336nm以下である。d値が大きすぎると結晶性が低下し、放電容量が低下する傾向がある。一方、下限値である0.3356nmは黒鉛の理論値である。
また、鱗片状黒鉛質粒子(A)の結晶子サイズ(Lc)は、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上の範囲である。この範囲を下回ると、結晶性が低下し、電池の放電容量が低下する傾向がある。
【0018】
(b)鱗片状黒鉛質粒子(A)の体積基準平均粒径d50
鱗片状黒鉛質粒子(A)の体積基準平均粒径d50(以下、平均粒径d50ともいう)は、通常2μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、また、通常30μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは8μm以下である。また、鱗片状黒鉛質粒子(A)の平均粒径d50は、通常、ポリマーと複合化される前の鱗片状黒鉛質粒子の平均粒径d50と同程度又はそれより大きくなる傾向がある。平均粒径d50が小さすぎると、比表面積が大きくなるため電解液の分解が増え、初期効率が低下する傾向がある。また、平均粒径が大きすぎると、総粒子が少なくなり炭素質粒子(B)の粒子間への存在割合が低下するため、導電パス切れ抑制効果の低減、サイクル特性の低下を招く傾向がある。
【0019】
なお粒径の測定方法は、界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液10mLに、炭素材0.01gを懸濁させ、市販のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置に導入し、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、測定装置における体積基準のメジアン径として測定したものを、本発明における体積基準平均粒径d50と定義する。
【0020】
(c)鱗片状黒鉛質粒子(A)のアスペクト比
鱗片状黒鉛質粒子(A)のアスペクト比は、通常5以上、好ましくは6以上、より好ま
しくは7以上、通常50以下、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、特に好ましくは10以下である。アスペクト比が小さすぎると、導電パス切れ抑制効果の低減、サイクル特性の低下を招く傾向がある。またアスペクト比が大きすぎると、電極とした際に粒子が集電対と平行方向に並ぶ傾向があるため、電極の厚み方向への連続した空隙が充分確保されず、厚み方向へのLiイオン移動性が低下し、急速充放電特性の低下を招く傾向がある。また、鱗片状黒鉛質粒子(A)のアスペクト比は、通常、ポリマーと複合化される前の鱗片状黒鉛質粒子のアスペクト比と同程度またはそれより小さくなる傾向がある。
アスペクト比は、後述の実施例に記載の測定法によって求めることができる。
【0021】
(d)鱗片状黒鉛質粒子(A)の円形度
鱗片状黒鉛質粒子(A)の円形度は、通常0.1以上、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.7以上である。また円形度は通常0.87以下、好ましくは0.85以下、より好ましくは0.83以下である。
円形度が小さすぎると、電極とした際に粒子が集電対と平行方向に並ぶ傾向があるため、電極の厚み方向への連続した空隙が充分確保されず、厚み方向へのLiイオン移動性が低下し、急速充放電特性の低下を招く傾向がある。円形度が大きすぎると導電パス切れ抑制効果の低減、サイクル特性の低下を招く傾向がある。
円形度は下記式1で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
【0022】
(式1)
円形度
=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)
円形度の値としては、後述の実施例に記載の測定法によって測定した値を用いる。
(e)鱗片状黒鉛質粒子(A)の表面官能基量
鱗片状黒鉛質粒子(A)は、下記式(2)で表される表面官能基量O/C値が通常2%以上であり、好ましくは3%、より好ましくは4%、一方通常30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。
【0023】
この表面官能基量O/C値が小さすぎると、ポリマー偏在、被覆不足であることを示しており、電解液接触防止効果が乏しくなり初期効率・サイクル特性が低下、ガス量が増大する傾向がある。一方、表面官能基量O/C値が大きすぎると、ポリマーの過剰被覆状態を示しており、抵抗の増大を招き、入出力特性が低下する傾向がある。
【0024】
式(2)
O/C値(%)={X線光電子分光法(XPS)分析におけるO1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたO原子濃度/XPS分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度}×100
本発明における表面官能基量O/C値はX線光電子分光法(XPS)を用いて以下のように測定することができる。
【0025】
X線光電子分光法測定としてX線光電子分光器を用い、測定対象を表面が平坦になるように試料台に載せ、アルミニウムのKα線をX線源とし、マルチプレックス測定により、C1s(280〜300eV)とO1s(525〜545eV)のスペクトルを測定する。得られたC1sのピークトップを284.3eVとして帯電補正し、C1sとO1sのスペクトルのピーク面積を求め、更に装置感度係数を掛けて、CとOの表面原子濃度をそれぞれ算出する。得られたそのOとCの原子濃度比O/C(O原子濃度/C原子濃度)を試料(鱗片状黒鉛質粒子(A))の表面官能基量O/C値と定義する。
【0026】
(f)鱗片状黒鉛質粒子(A)の平均粒径(d10)
鱗片状黒鉛質粒子(A)の体積基準で小さい粒子側から累積10%に相当する粒径d1
0は、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは1.5μm以上であり、また、通常15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは3μm以下である。また、鱗片状黒鉛質粒子(A)の平均粒径d10は、通常、ポリマーと複合化される前の鱗片状粒子の平均粒径d10と同程度又はそれより大きくなる傾向がある。
【0027】
平均粒径d10が小さすぎると、粒子の凝集傾向が強くなり、スラリー粘度上昇などの工程不都合の発生、非水系二次電池における電極強度の低下や初期充放電効率の低下を招く場合がある。平均粒径d10が大きすぎると高電流密度充放電特性の低下、低温入出力特性の低下、導電パス切れ抑制効果の低減によりサイクル特性の低下を招く場合がある。
平均粒径d10は、平均粒径d50測定の際と同様の方法で得られた粒度分布において、粒子の体積頻度(%)が小さい粒径から積算で10%となった値として定義される。
【0028】
(g)鱗片状黒鉛質粒子(A)の平均粒径d90
レーザー回折・散乱法により求めた鱗片状黒鉛質粒子(A)の平均粒径d90(体積基準で小さい粒子側から累計90%となる粒子径)は、通常3μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上であり、また、通常50μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。また、鱗片状黒鉛質粒子(A)の平均粒径d90は、通常、ポリマーと複合化される前の鱗片状黒鉛質粒子の平均粒径d90と同程度又はそれより大きくなる傾向がある。
【0029】
一般的に大粒径黒鉛は平均粒径d90が大きくなり、本発明の鱗片状黒鉛質粒子(A)を含むスラリーの塗布時の筋引きが起こりやすい傾向となる。黒鉛質粒子の平均粒径d90が極力大きくならないようにすることも、本発明の効果を発現するために重要である。
平均粒径d90が小さすぎると、非水系二次電池における電極強度の低下や初期充放電効率の低下を招く場合があり、大きすぎるとスラリーの塗布時の筋引きなどの工程不都合の発生、電池の高電流密度充放電特性の低下、低温入出力特性の低下を招く場合がある。
平均粒径d90は、平均粒径d50を測定する際と同様の方法で得られた粒度分布において、粒子の体積頻度%が小さい粒径から積算で90%となった値として定義される。
【0030】
(h)鱗片状黒鉛質粒子(A)のBET比表面積(SA)
鱗片状黒鉛質粒子(A)のBET法で測定した比表面積については、通常1m
2/g以上、好ましくは2m
2/g以上、より好ましくは3m
2/g以上である。また、通常20m
2/g以下、好ましくは15m
2/g以下、より好ましくは12m
2/g以下、更に好ましくは11m
2/g以下、特に好ましくは8m
2/g以下である。また、鱗片状黒鉛質粒子(A)の比表面積は、通常、ポリマーと複合化される前の鱗片状黒鉛質粒子の比表面積より小さくなる傾向がある。
【0031】
比表面積が小さすぎると、Liが出入りする部位が少なく、高速充放電特性及び出力特性に劣り、一方、比表面積が大きすぎると、活物質の電解液に対する活性が過剰になり、初期不可逆容量が大きくなるため、高容量電池を製造できない傾向がある。
なおBET比表面積の測定方法は、比表面積測定装置を用いて、窒素ガス吸着流通法によりBET1点法にて測定する。
【0032】
(i)鱗片状黒鉛質粒子(A)のタップ密度
鱗片状黒鉛質粒子(A)のタップ密度は、通常0.05g/cm
3以上、0.1g/cm
3以上が好ましく、0.2g/cm
3以上がより好ましい。また、通常1.5g/cm
3以下、1.0g/cm
3以下が好ましく、0.6g/cm
3以下がより好ましい。タップ密度が低すぎると、高速充放電特性に劣り、タップ密度が高すぎると、導電パス切れ抑制効果の低減によりサイクル特性の低下を招く場合がある。
【0033】
また、鱗片状黒鉛質粒子(A)のタップ密度は、通常、ポリマーと複合化される前の鱗片状黒鉛質粒子のタップ密度と同程度またはそれより小さくなる傾向がある。
本発明において、タップ密度は、粉体密度測定器を用い、直径1.6cm、体積容量20cm
3の円筒状タップセルに、目開き300μmの篩を通して、試料(鱗片状黒鉛質粒子(A))を落下させて、セルに満杯に充填した後、ストローク長10mmのタップを1000回行なって、その時の体積と試料の重量から求めた密度をタップ密度として定義する。
【0034】
(j)鱗片状黒鉛質粒子(A)の水銀圧入法による細孔径10nm〜100000nmの範囲の細孔容積
鱗片状黒鉛質粒子(A)の水銀圧入法による細孔径10nm〜100000nmの範囲の細孔容積は、通常1mL/g以下、好ましくは、0.9mL/g以下、より好ましくは0.8mL/g以下であり、通常、0.05mL/g以上、好ましくは、0.1mL/g以上、より好ましくは0.15mL/g以上である。全細孔容積が上記範囲を下回ると、非水系電解液の浸入可能な空隙が少なくなり易く、急速充放電をさせた時にリチウムイオンの挿入脱離が間に合わなくなり、それに伴いリチウム金属が析出しサイクル特性が悪化する傾向がある。一方、上記範囲を上回ると、極板作製時にバインダが空隙に吸収され易くなることに伴う極板強度の低下、電解液との接触が増えることによる副反応の増大に伴う初期効率の低下を招く傾向がある。
【0035】
(k)鱗片状黒鉛質粒子(A)の水銀圧入法による細孔径80nm〜900nmの範囲の微細孔容積
鱗片状黒鉛質粒子(A)の細孔径80nm〜900nmの範囲の微細孔容積は、水銀圧入法(水銀ポロシメトリー)を用いて測定した値であり、通常0.08mL/g以上、好ましくは0.1mL/g以上、より好ましくは0.15mL/g以上、更に好ましくは0.3mL/g以上である。また、通常1mL/g以下であり、好ましくは0.8mL/g以下、更に好ましくは0.5mL/g以下である。
【0036】
細孔径80nm〜900nmの範囲の微細孔容積が上記範囲を下回ると、非水系二次電池の充放電の際に電解液の移動が十分円滑に行われず、急速充放電をさせた時にリチウムイオンの挿入脱離が間に合わなくなり、それに伴いリチウム金属が析出しサイクル特性が悪化する傾向がある。一方、上記範囲を上回ると、極板作製時にバインダが空隙に吸収され易くなり、それに伴い極板強度の低下や初期効率の低下を招く傾向がある。
【0037】
上記水銀ポロシメトリー用の装置として、水銀ポロシメータ(オートポア9520:マイクロメリテックス社製)を用いることができる。試料(鱗片状黒鉛質粒子(A))を0.2g前後の値となるように秤量し、パウダー用セルに封入し、室温、真空下(50μmHg以下)にて10分間脱気して前処理を実施する。
引き続き、4psia(約28kPa)に減圧して前記セルに水銀を導入し、圧力を4psia(約28kPa)から40000psia(約280MPa)までステップ状に昇圧させた後、25psia(約170kPa)まで降圧させる。
【0038】
昇圧時のステップ数は80点以上とし、各ステップでは10秒の平衡時間の後、水銀圧入量を測定する。こうして得られた水銀圧入曲線からWashburnの式を用い、細孔分布を算出する。
なお、水銀の表面張力(γ)は485dyne/cm、接触角(ψ)は140°として算出する。平均細孔径は、累計細孔体積が50%となるときの細孔径として定義する。
【0039】
(l)鱗片状黒鉛質粒子(A)の窒素吸着法による細孔径1nm〜30nmの範囲の微
細孔容積
鱗片状黒鉛質粒子(A)の細孔径1nm〜30nmの範囲の微細孔容積は、窒素吸着法のBJH法解析を用いて測定した値であり、通常0.001mL/g以上、好ましくは0.002mL/g以上、通常0.1mL/g以下、好ましくは0.03mL/g以下、より好ましくは0.01mL/g以下、更に好ましくは0.008mL/g以下である。
【0040】
細孔径1nm〜30nmの範囲の微細孔容積が上記範囲を下回ると、非水系二次電池を充放電させた時にリチウムイオンの挿入脱離が間に合わなくなることにより入出力特性が悪化する傾向があり、またそれに伴いリチウム金属が析出しサイクル特性が悪化する傾向がある。一方、上記範囲を上回ると、電解液との副反応が増加し初期効率の低下を招く傾向がある。また極板作製時にバインダが空隙に吸収され易くなり、それに伴い極板強度の低下や初期効率の低下を招く傾向がある。
【0041】
上記、窒素吸着法測定装置として、オートソーブ(カンタークローム社)を用いることができる。試料をパウダー用セルに封入し、350℃、真空下(1.3Pa以下)にて2時間前処理を実施した後、液体窒素温度下で吸着等温線(吸着ガス:窒素)を測定する。
得られた吸着等温線を用いてBJH解析により微細孔分布を求め、そこから細孔径1nm〜30nmの範囲の微細孔容積を算出する。
【0042】
<非水系電解液に難溶性のポリマー>
本発明の鱗片状黒鉛質粒子(A)の構成成分である非水系電解液に難溶性のポリマーについて説明する。
非水系電解液に難溶性のポリマーは、非水系電解液に難溶性であり、鱗片状黒鉛質粒子と複合化できるものであればどのようなポリマーを用いてもよいが、通常イオン性基を有するポリマーである。また、好ましくはπ共役構造を有するポリマーである。π共役構造を有するポリマーは、該ポリマーのπ共役構造が鱗片状黒鉛質粒子のベーサル面とπ―π相互作用によって引きつけられるため、効果的に被覆するものと考えられ、リチウムイオン二次電池とした場合に鱗片状黒鉛質粒子のベーサル面と非水系電解液との反応が起きるのを抑制し、ガスの発生を効果的に抑制する。
【0043】
また、ポリマーの中でも、イオン性基をもつポリマーが好ましく、本発明でいう前記イオン性基とは、水中でアニオン又はカチオンを生じうる基である。具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基及びこれらの塩が挙げられる。前記塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。これらの中でも、リチウムイオン二次電池とした場合の初期不可逆容量の観点から、スルホン酸基及びそのリチウム塩もしくはナトリウム塩が好ましい。
【0044】
また、前記π共役構造を有する化合物とは、π電子を持つ原子が環状に並んだ構造を持つ不飽和環状化合物であって、ヒュッケル則を満たし、π電子が環上で非局在化し、環が平面構造をとっているものである。
このようなπ共役構造を有する化合物としては、芳香環を持つ化合物が挙げられる。具体的には、単環の5員環であるフラン、ピロール、イミダゾール、チオフェン、ホスホール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール;単環の6員環であるベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン;二環の5員環+6員環であるベンゾフラン、イソベンゾフラン、インドール、イソインドール、ベンゾチオフェン、ベンゾホスホール、ベンゾイミダゾール、プリン、インダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール;二環の6員環+6員環であるナフタレン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン;多環のアントラセン、ピレン等の骨格を有する環が挙げられる。
【0045】
これらの中でも、非水系二次電池用の負極に用いた場合にガスの発生を抑制する観点から、ベンゼン又はナフタレンが好ましい。
また、ポリマーの電気伝導率は、25℃において通常0.1S/cm以下、好ましくは0.01S/cm以下、より好ましくは0.001S/cm以下であることを特徴とする。また、通常0S/cmより大きい。電気伝導率が大きすぎる場合、電解液の副反応が起こり初期効率低下、ガス発生量増大、サイクル特性低下を招く恐れがある。
【0046】
例えば、電気伝導率は、ガラス基板上にてスピンコータ成膜やドロップキャスト成膜などの成膜法によって、フィルムを作製し、そのフィルム厚みと四端子法にて測定された表面抵抗値を掛け合わせた値の逆数から算出することができる。
フィルム厚みはKLA製段差・表面粗さ・微細形状測定装置テンコールαステップ型、四端子法による表面抵抗値は三菱化学アナリテック製ロレスタGP MCP−T610型
にて、それぞれ測定することができる。
【0047】
また、ポリマーの重量平均分子量は特に制限されないが、通常500以上、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上、更に好ましくは2500以上である。一方前記重量平均分子量は、通常100万以下、好ましくは50万以下、より好ましくは30万以下、更に好ましくは20万以下である。なお、本明細書において重量平均分子量とは、溶媒THFのGPCにより測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量あるいは、溶媒が水系あるいはDMFあるいはDMSOのGPCにより測定した標準ポリエチレングリコール換算の重量平均分子量である。
【0048】
当該ポリマーを構成する構造単位となるモノマーとしては、イオン性基を有するモノマー、芳香環を有するモノマーが挙げられる。また、イオン性基と芳香環とを共に有するモノマーであってもよい。
この場合、前記ポリマーは、イオン性基を有し芳香環を有さないモノマーと、芳香環を有しイオン性基を有さないモノマーとの共重合体であってもよいし、イオン性基と芳香環を共に有するモノマーの重合体であってもよい。また、イオン性基を有するモノマーの重合体と芳香環を有するモノマーの重合体の混合物であってもよい。
【0049】
中でも、電解液中における鱗片状黒鉛粒子(A)に被覆されているポリマーの安定性の点から、ポリマーはイオン性基と芳香環とを共に有するモノマーの重合体であることが好ましい。
なお、前記モノマーが有するイオン性基としては、上述したイオン性基と同様であるが、中でもカルボン酸基、スルホン酸基又はそれらの塩が電池内での安定性と抵抗上昇抑制の点から好ましい。
【0050】
イオン性基と芳香環とを有するモノマーの例としては、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、アニリン、アニリンスルホン酸、アニリンスルホン酸の塩、安息香酸ビニル及び安息香酸ビニルの塩等が挙げられる。
イオン性基を有し、芳香環を有さないモノマーの例としては、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸リチウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸リチウム、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸リチウム等が挙げられる。
【0051】
芳香環を有し、イオン性基を有さないモノマーの例としては、スチレン、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート等が挙げられる。
このようなモノマーに由来する構造単位を含むポリマーの具体的な例としては、スチレン−ビニルスルホン酸共重合体、スチレン−ビニルスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−ビニルスルホン酸リチウム共重合体、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスル
ホン酸リチウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリアニリンスルホン酸、ポリアニリンスルホン酸リチウム、ポリアニリンスルホン酸ナトリウム、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸リチウム共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、ポリビニル安息香酸、ポリビニル安息香酸リチウム、ポリビニル安息香酸ナトリウム、スチレン−ビニル安息香酸共重合体、スチレン−ビニル安息香酸リチウム共重合体、スチレン−ビニル安息香酸ナトリウム共重合体等が挙げられる。
【0052】
ガスの発生を効果的に抑制する観点から、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸リチウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸リチウム共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、ポリビニル安息香酸、ポリビニル安息香酸リチウム、ポリビニル安息香酸ナトリウム、スチレン−ビニル安息香酸共重合体、スチレン−ビニル安息香酸リチウム共重合体及びスチレン−ビニル安息香酸ナトリウム共重合体が好ましい。
【0053】
さらに、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸リチウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、スチレン−スチレンスルホン酸リチウム共重合体及びスチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体がより好ましい。
中でも、ポリスチレンスルホン酸リチウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、スチレン−スチレンスルホン酸リチウム共重合体及びスチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体が活物質表面、特には黒鉛ベーサル面への吸着性が高いため特に好ましい。
以上説明したポリマーは、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法により合成することもでき、本発明において1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0054】
<ポリマー複合化前の鱗片状黒鉛質粒子>
本発明の鱗片状黒鉛質粒子(A)の原料となる、ポリマー複合化前の鱗片状黒鉛質粒子(本明細書では、単に鱗片状黒鉛粒子ともいう)としては、天然黒鉛、人造黒鉛の何れを用いてもよい。黒鉛としては、不純物の少ないものが好ましく、必要に応じて種々の精製処理を施して用いる。
【0055】
鱗片状黒鉛質粒子の形状は特に制限されず、薄片状、繊維状、不定形粒子などから適宜選択して用いることができるが、好ましくは薄片状である。
前記天然黒鉛としては、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土壌黒鉛等が挙げられる。前記鱗状黒鉛の産地は、主にスリランカであり、前記鱗片状黒鉛の産地は、マダガスカル、中国、ブラジル、ウクライナ、カナダ等であり、前記土壌黒鉛の主な産地は、朝鮮半島、中国、メキシコ等である。
【0056】
これらの天然黒鉛の中で、土壌黒鉛は一般に粒径が小さいうえ、純度が低い。これに対して、鱗片状黒鉛や鱗状黒鉛は、黒鉛化度が高く不純物量が低い等の長所があるため、本発明において好ましく使用することができる。
また上記人造黒鉛としては、ピッチ原料を高温熱処理して製造した、コークス、ニードルコークス、高密度炭素材料等の黒鉛質粒子が挙げられる。
【0057】
人造黒鉛の具体例としては、コールタールピッチ、石炭系重質油、常圧残油、石油系重質油、芳香族炭化水素、窒素含有環状化合物、硫黄含有環状化合物、ポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、天然高分子、ポリフェニレンサイルファイド、ポリフェニレンオキシド、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂などの有機物を、通常2500℃以上、3200℃以下の範囲の温度で焼成し、黒鉛化したものが挙げられる。
本発明に用いる鱗片状黒鉛質粒子は、黒鉛化されている鱗片状の炭素粒子であれば特に限定はないが、上述したように天然黒鉛、人造黒鉛、並びにコークス粉、ニードルコークス粉、及び樹脂等の黒鉛化物の粉体等を用いることができる。これらのうち、鱗片状天然黒鉛が放電容量の高さ、製造の容易といった面から好ましい。
【0058】
(鱗片状黒鉛質粒子の物性)
本発明における鱗片状黒鉛質粒子は、次に示す物性の何れか1つ又は複数を満たしていることが好ましい。本発明においては、かかる物性を示す鱗片状黒鉛質粒子1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。
【0059】
(a)鱗片状黒鉛質粒子の体積基準平均粒径d50
鱗片状黒鉛質粒子の平均粒径d50は通常2μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、また、通常30μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは8μm以下である。平均粒径d50が小さすぎると、比表面積が大きくなるため初期電解液との分解が増え、初期効率が低下する傾向がある。また、平均粒径が大きすぎると、総粒子が少なくなり炭素質粒子(B)の粒子間への存在割合が低下するため、導電パス切れ抑制効果の低減、サイクル特性の低下を招く傾向がある。
【0060】
(b)鱗片状黒鉛質粒子の平均粒径(d10)
鱗片状黒鉛質粒子の体積基準で小さい粒子側から累積10%に相当する粒径d10は、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは1.5μm以上であり、また、通常15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは3μm以下である。
【0061】
平均粒径d10が小さすぎると、粒子の凝集傾向が強くなり、スラリー粘度上昇などの工程不都合の発生、非水系二次電池における電極強度の低下や初期充放電効率の低下を招く場合がある。平均粒径d10が大きすぎると高電流密度充放電特性の低下、低温入出力特性の低下、導電パス切れ抑制効果の低減によりサイクル特性の低下を招く場合がある。
【0062】
(c)鱗片状黒鉛質粒子の平均粒径d90
レーザー回折・散乱法により求めた鱗片状黒鉛質粒子の平均粒径d90(体積基準で小さい粒子側から累計90%となる粒子径)は、通常3μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上であり、また、通常50μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。
【0063】
一般的に大粒径黒鉛は平均粒径d90が大きくなり、本発明の鱗片状黒鉛質粒子を含むスラリーの塗布時の筋引きが起こりやすい傾向となる。なお、本発明の効果を発現するためには、黒鉛質粒子の平均粒径d90が極力大きくならないようにすることが効果的である。
平均粒径d90が小さすぎると、非水系二次電池における電極強度の低下や初期充放電効率の低下を招く場合があり、大きすぎるとスラリーの塗布時の筋引きなどの工程不都合の発生、電池の高電流密度充放電特性の低下、低温入出力特性の低下する傾向がある。
【0064】
(d)鱗片状黒鉛質粒子のBET比表面積(SA)
鱗片状黒鉛質粒子のBET法で測定した比表面積については、通常3m
2/g以上、好ましくは4m
2/g以上である。また、通常30m
2/g以下、好ましくは25m
2/g以下、より好ましくは20m
2/g以下、更に好ましくは15m
2/g以下、特に好ましくは10m
2/g以下である。
比表面積が小さすぎると、Liが出入りする部位が少なく、高速充放電特性及び出力特
性に劣り、一方、比表面積が大きすぎると、活物質の電解液に対する活性が過剰になり、初期不可逆容量が大きくなるため、高容量電池を製造できない傾向がある。
【0065】
(e)鱗片状黒鉛質粒子のタップ密度
鱗片状黒鉛質粒子のタップ密度は、通常0.05g/cm
3以上、0.1g/cm
3以上が好ましく、0.2g/cm
3以上がより好ましい。また、通常1.5g/cm
3以下、1.0g/cm
3以下が好ましく、0.6g/cm
3以下がより好ましい。タップ密度が低すぎると、高速充放電特性に劣り、タップ密度が高すぎると、導電パス切れ抑制効果の低減によりサイクル特性の低下を招く場合がある。
【0066】
(f)鱗片状黒鉛質粒子のアスペクト比
鱗片状黒鉛質粒子のアスペクト比は、通常5以上、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、通常50以下、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、特に好ましくは10以下である。アスペクト比が小さすぎると、導電パス切れ抑制効果の低減、サイクル特性の低下を招く傾向がある。またアスペクト比が大きすぎると、電極とした際に粒子が集電対と平行方向に並ぶ傾向があるため、電極の厚み方向への連続した空隙が充分確保されず、厚み方向へのLiイオン移動性が低下し、急速充放電特性の低下を招く傾向がある。
【0067】
(g)鱗片状黒鉛質粒子の円形度
鱗片状黒鉛質粒子の円形度は、通常0.1以上、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.7以上である。また円形度は通常0.87以下、好ましくは0.85以下、より好ましくは0.83以下である。
円形度が小さすぎると、電極とした際に粒子が集電対と平行方向に並ぶ傾向があるため、電極の厚み方向への連続した空隙が充分確保されず、厚み方向へのLiイオン移動性が低下し、急速充放電特性の低下を招く傾向がある。円形度が大きすぎると導電パス切れ抑制効果の低減、サイクル特性の低下を招く傾向がある。
【0068】
(h)鱗片状黒鉛質粒子のラマンスペクトル(Raman)スペクトル
鱗片状黒鉛質粒子のラマンR値は、通常0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、通常0.7以下、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5以下がより好ましい。ラマンR値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎてLi挿入サイト数が減り、急速充放電特性の低下を招く傾向がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が乱れ、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下やガス発生の増加を招く傾向がある。
【0069】
(i)鱗片状黒鉛質粒子の水銀圧入法による10nm〜100000nmの範囲の細孔容積
鱗片状黒鉛質粒子の水銀圧入法による10nm〜100000nmの範囲の細孔容積は、通常1.2mL/g以下、好ましくは、1mL/g以下、より好ましくは0.9mL/g以下であり、通常、0.1mL/g以上、好ましくは、0.15mL/g以上、より好ましくは0.2mL/g以上である。全細孔容積が上記範囲を下回ると、非水系電解液の浸入可能な空隙が少なくなり易く、急速充放電をさせた時にリチウムイオンの挿入脱離が間に合わなくなり、それに伴いリチウム金属が析出しサイクル特性が悪化する傾向がある。一方、上記範囲を上回ると、極板作製時にバインダが空隙に吸収され易くなり、それに伴い極板強度の低下を招く傾向がある。
【0070】
(j)鱗片状黒鉛質粒子の水銀圧入法による細孔径80nm〜900nmの範囲の微細孔容積
鱗片状黒鉛質粒子の細孔径80nm〜900nmの範囲の微細孔容積は、水銀圧入法(
水銀ポロシメトリー)を用いて測定した値であり、通常0.08mL/g以上、好ましくは0.1mL/g以上、より好ましくは0.15mL/g以上、更に好ましくは0.3mL/g以上である。また、通常1mL/g以下であり、好ましくは0.8mL/g以下、更に好ましくは0.5mL/g以下である。
【0071】
細孔径80nm〜900nmの範囲の微細孔容積が上記範囲を下回ると、非水系二次電池の充放電の際に電解液の移動が十分円滑に行われず、急速充放電をさせた時にリチウムイオンの挿入脱離が間に合わなくなり、それに伴いリチウム金属が析出しサイクル特性が悪化する傾向がある。一方、上記範囲を上回ると、極板作製時にバインダが空隙に吸収され易くなり、それに伴い極板強度の低下や初期効率の低下を招く傾向がある。
【0072】
(J)鱗片状黒鉛質粒子の窒素吸着法による細孔径1nm〜30nmの範囲の微細孔容積
鱗片状黒鉛質粒子の細孔径1nm〜30nmの範囲の微細孔容積は、窒素吸着法のBJH法解析を用いて測定した値であり、通常0.001mL/g以上、好ましくは0.002mL/g以上、通常好ましくは0.1mL/g以下、好ましくは0.03mL/g以下、より好ましくは0.01mL/g以下、更に好ましくは0.008mL/g以下である。
【0073】
細孔径1nm〜30nmの範囲の微細孔容積が上記範囲を下回ると、非水系二次電池を充放電させた時にリチウムイオンの挿入脱離が間に合わなくなることにより入出力特性が悪化する傾向があり、またそれに伴いリチウム金属が析出しサイクル特性が悪化する傾向がある。一方、上記範囲を上回ると、電解液との副反応が増加し初期効率の低下を招く傾向がある。また極板作製時にバインダが空隙に吸収され易くなり、それに伴い極板強度の低下や初期効率の低下を招く傾向がある。
【0074】
(k)鱗片状黒鉛質粒子のX線パラメータ
X線広角回折法による002面の面間隔(d
002)は、通常0.337nm以下、好ましくは0.336nm以下である。d値が大きすぎると結晶性が低下し、放電容量が低下する傾向がある。一方、下限値である0.3356nmは黒鉛の理論値である。
また、ポリマーが複合化される前の鱗片状黒鉛質粒子の結晶子サイズ(Lc)は、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上の範囲である。この範囲を下回ると、結晶性が低下し、電池の放電容量が低下する傾向がある。
【0075】
(l)鱗片状黒鉛質粒子の表面官能基量
鱗片状黒鉛質粒子は、上記式(1)で表される表面官能基量O/C値が通常1%以上であり、好ましくは1.5%、より好ましくは2%、更に好ましくは2.5%以下、一方通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下である。
この表面官能基量O/C値が小さすぎると、難溶性のポリマーとの相互作用が弱くなり、ポリマーがはがれやすくなり、初期効率の低下、ガスの増大、サイクル特性の低下を招く場合がある。また、電極の剥離強度が低下し、工程性の悪化に繋がる場合がある。一方表面官能基量O/C値が大きすぎると、O/C値の調整が困難となり、製造処理を長時間行う必要が生じたり、工程数を増加させる必要が生じたりする傾向があり、生産性の低下やコストの上昇を招く虞がある。
【0076】
[鱗片状黒鉛質粒子(A)の製造方法]
本発明の鱗片状黒鉛質粒子(A)は、少なくとも非水系電解液に難溶性のポリマーが添着された鱗片状黒鉛質粒子であれば、その製造方法は特に限定されないが、例えば以下の3つの手法が挙げられる。
【0077】
<手法(i)>
例えば、ポリマーを有機溶媒あるいは水、もしくは有機溶媒/水の混合溶媒に溶解させ、その溶液を鱗片状黒鉛質粒子と混合した後、加熱あるいは/及び減圧によって乾燥する工程が挙げられる。
なお、使用する溶媒は、ポリマーが溶解すれば、特に限定されないが、好ましくは水やエチルメチルケトン、トルエン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、メタノール等が挙げられる。中でも水、エチルメチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、メタノールがコストや乾燥のし易さからより好ましい。
【0078】
鱗片状黒鉛質粒子とポリマーの溶液濃度は通常70質量%以下で、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。この範囲から外れると、鱗片状黒鉛質粒子の細孔にポリマー溶液が十分に浸透せず、含有されたポリマーが不均一に存在し、効果が出にくい傾向がある。上記乾燥(加熱)温度については、通常300℃以下、250℃以下が好ましい。また、通常50℃以上、100℃以上が好ましい。この温度以上では、ポリマーが一部分解したり、鱗片状黒鉛質粒子とポリマーの相互作用が弱くなり比表面積の低減・サイクル特性の向上・充電速度の短縮等の効果が低減してしまう傾向がある。一方で、この温度以下では十分な速度で溶媒が乾燥しないという理由で、溶媒残存による電池性能が低下する傾向がある。
また、鱗片状黒鉛質粒子とポリマーの溶液について減圧により乾燥を行なう場合、圧力は、ゲージ圧表記で通常0MPa以下、−0.2MPa以上である。この範囲であれば、比較的効率よく乾燥を行うことができる。圧力は、好ましくは−0.03MPa以下であり、また、好ましくは−0.15MPa以上である。
【0079】
<手法(ii)>
また、ポリマーが添着された鱗片状黒鉛質粒子(A)を製造するための別の手法(ii)としては、例えば、ポリマーが鱗片状黒鉛表面への吸着性を有することを利用し、ポリマーの溶液中に鱗片状黒鉛を入れて攪拌し、ろ過により余分なポリマー溶液を除去した後、乾燥することにより鱗片状黒鉛とポリマーを複合化させる工程も挙げられる。更に乾燥後、加熱処理をすることが好ましい。
上記ポリマーの溶液濃度の測定方法としては、水溶液である場合は例えばザルトリウス水分計MA45などの水分計で測定する方法、有機溶媒溶液である場合は、溶液をアルミカップ等の容器に入れて真空乾燥機中で溶媒を飛ばす操作前後の重量差によって元の濃度を算出する方法等が挙げられる。
【0080】
<手法(iii)>
また、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)を用いた手法を用いてもよい。
鱗片状黒鉛質粒子とポリマー粉末とを混合した粉末をメカノケミカル処理することにより、鱗片状黒鉛質粒子表面にポリマー粒子を複合化する工程が上げられる。メカノケミカル処理に用いる好ましい装置として、例えば、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)等が挙げられる。これらの中で、メカノフュージョンシステムが好ましい。
手法(i)〜(iii)では、簡便さという点で手法(i)がより好ましい。
【0081】
(鱗片状黒鉛質粒子(A)に対するポリマーの添着量)
鱗片状黒鉛質粒子(A)に対するポリマーの添着量は、鱗片状黒鉛質粒子に対して通常0.01質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上である。また通常10質量%以下であり、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.6質量%以下が更に好ましい。非水系電解液に難溶性のポリマーの添着量が多すぎると、充放電容量の低下、電荷移動抵抗
の上昇により入出力特性の低下を招く傾向があり、非水系電解液に難溶性のポリマーの添着量が少なすぎると、電解液の副反応抑制効果に乏しく、初期充放電効率の低下、サイクル特性の低下を招く傾向がある。
【0082】
鱗片状黒鉛質粒子(A)におけるポリマーの添着量は、製造時にポリマーを含んだ溶液を乾燥させた場合、原則として製造時におけるポリマーの添加量とするが、例えば、濾過を行ない鱗片状黒鉛粒子(A)に付着していないポリマーを除いた場合は、得られた炭素材料のTG−DTA分析における重量減少、又は濾液に含まれるポリマーの量から算出することができる。
上述の確認方法は、鱗片状黒鉛質粒子(A)が製造された時点でも良いし、負極、電池として製造された製品から検出しても良い。
【0083】
[炭素質粒子(B)]
本発明の炭素質粒子(B)は、アスペクト比が1以上4以下の炭素質粒子である。中でも1.5以上が好ましく、1.6以上がより好ましく、1.7以上が特に好ましい。一方、3以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2以下が特に好ましい。
アスペクト比が小さすぎると、導電パス切れ抑制効果の低減、サイクル特性の低下を招く。またアスペクト比が大きすぎると、電極とした際に粒子が集電対と平行方向に並ぶ傾向があるため、電極の厚み方向への連続した空隙が充分確保されず、厚み方向へのLiイオン移動性が低下し、急速充放電特性の低下を招く。
【0084】
(炭素質粒子(B)の特性)
また、本発明の炭素質粒子(B)は以下に記載の物性を具備することが好ましい。
【0085】
(a)X線パラメータ
炭素質粒子(B)の、X線広角回折法による002面の面間隔(d
002)は、通常0.337nm以下、好ましくは0.336nm以下である。d002値が大きすぎるということは結晶性が低いことを示し、非水系二次電池とした場合に初期不可逆容量が増加する場合がある。一方、黒鉛の002面の面間隔の理論値は0.3356nmであるため、前記d値は通常0.3356nm以上である。
また、炭素質粒子(B)の結晶子サイズ(Lc)は、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上の範囲である。この範囲を下回ると、結晶性が低下し、電池の放電容量が低下する傾向がある。なお、Lcの下限は黒鉛の理論値である。
【0086】
(b)体積基準平均粒径(d50)
炭素質粒子(B)の平均粒径(メジアン径)は通常50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下であり、通常1μm以上、好ましくは、4μm以上、より好ましくは10μm以上である。平均粒径d50が小さすぎると、比表面積が大きくなるため電解液の分解が増え、初期効率が低下する傾向があり、平均粒径d50が大きすぎると急速充放電特性の低下を招く傾向がある。
【0087】
(c)平均粒径d10
炭素質粒子(B)の体積基準で測定した粒径の、小さい粒子側から累積10%に相当する粒径(d10)は通常1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上であり、また、通常50μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。
d10が小さすぎると、粒子の凝集傾向が強くなり、スラリー粘度上昇などの工程不都合の発生、非水系二次電池における電極強度の低下や初期充放電効率が低下する傾向がある。d10が大きすぎると高電流密度充放電特性の低下、低温入出力特性が低下する傾向
がある。
【0088】
(d)平均粒径d90
炭素質粒子(B)の体積基準で測定した粒径の、小さい粒子側から累積90%に相当する粒径(d90)は通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。
d90が小さすぎると、非水系二次電池における電極強度の低下や初期充放電効率の低下を招く場合があり、大きすぎるとスラリーの塗布時の筋引きなどの工程不都合の発生、高電流密度充放電特性の低下、低温入出力特性の低下を招く場合がある。
【0089】
(e)BET法による比表面積
炭素質粒子(B)のBET法による比表面積は通常0.5m
2/g以上、好ましくは1m
2/g以上、より好ましくは2m
2/g以上、更に好ましくは3m
2/g以上である。また、通常15m
2/g以下、好ましくは10m
2/g以下、より好ましくは8m
2/g以下、更に好ましくは7m
2/g以下、特に好ましくは6m
2/g以下である。比表面積が大きすぎると負極活物質として用いた時に電解液に露出した部分と電解液との反応性が増加し、初期効率の低下、ガス発生量の増大を招きやすく、好ましい電池が得られにくい傾向がある。比表面積が小さすぎるとLiが出入りする部位が少なく、高速充放電特性及び出力特性に劣る傾向がある。
【0090】
(f)タップ密度
炭素質粒子(B)のタップ密度は、0.8g/cm
3以上が好ましく、0.9g/cm
3以上がより好ましく、0.95g/cm
3以上が更に好ましい。また、通常1.8g/cm
3以下、1.5g/cm
3以下が好ましく、1.3g/cm
3以下がより好ましい
タップ密度が0.8g/cm
3以上であるということは、炭素質粒子(B)が球状を呈していることを示す指標の一つである。タップ密度が0.8g/cm
3より小さいというのは、炭素質粒子(B)の原料である球形炭素材が充分な球形粒子となっていないことを示す指標の一つである。タップ密度が0.8g/cm
3より小さいと、電極内で充分な連続空隙が確保されず、空隙に保持された電解液内のLiイオンの移動性が落ちることで、急速充放電特性が低下する傾向がある。
【0091】
(g)円形度
炭素質粒子(B)の円形度は、通常0.88以上、より好ましくは0.9以上、更に好ましくは0.92以上である。また、円形度は通常1以下、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.97以下である。円形度が小さすぎると、非水系二次電池の高電流密度充放電特性が低下する傾向がある。
【0092】
(h)ラマンR値
炭素質粒子(B)のラマンR値は通常1以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下であり、通常0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.25以上である。ラマンR値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎてLi挿入サイト数が減り、急速充放電特性の低下を招く傾向がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が乱れ、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下やガス発生の増加を招く傾向がある。
【0093】
(i)細孔容積
炭素質粒子(B)の水銀圧入法による10nm〜100000nmの範囲の細孔容積は、通常1.0mL/g以下、好ましくは、0.9mL/g以下、より好ましくは0.8mL/g以下であり、通常、0.05mL/g以上、好ましくは、0.1mL/g以上、よ
り好ましくは0.15mL/g以上である。全細孔容積が上記範囲を下回ると、非水系電解液の浸入可能な空隙が少なくなり易く、急速充放電をさせた時にリチウムイオンの挿入脱離が間に合わなくなり、それに伴いリチウム金属が析出しサイクル特性が悪化する傾向がある。一方、上記範囲を上回ると、極板作製時にバインダが空隙に吸収され易くなり、それに伴い極板強度の低下を招く傾向がある。
【0094】
(j)炭素質粒子(B)の水銀圧入法による細孔径80nm〜900nmの範囲の微細孔容積
炭素質粒子(B)の細孔径80nm〜900nmの範囲の微細孔容積は、水銀圧入法(水銀ポロシメトリー)を用いて測定した値であり、通常0.08mL/g以上、好ましくは0.1mL/g以上、より好ましくは0.15mL/g以上、更に好ましくは0.3mL/g以上である。また、通常1mL/g以下であり、好ましくは0.8mL/g以下、更に好ましくは0.5mL/g以下である。
【0095】
細孔径80nm〜900nmの範囲の微細孔容積が上記範囲を下回ると、非水系二次電池の充放電の際に電解液の移動が十分円滑に行われず、急速充放電をさせた時にリチウムイオンの挿入脱離が間に合わなくなり、それに伴いリチウム金属が析出しサイクル特性が悪化する傾向がある。一方、上記範囲を上回ると、極板作製時にバインダが空隙に吸収され易くなり、それに伴い極板強度の低下や初期効率の低下を招く傾向がある。
【0096】
<炭素質粒子(B)の製造方法>
本発明の炭素質粒子(B)としては、アスペクト比が1以上4以下であれば特に限定されないが、黒鉛、非晶質炭素、黒鉛化度の小さい炭素質物に代表される種々の炭素材料が挙げられ、中でも黒鉛が好ましく用いられる。本発明ではこれらを単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。また、これら炭素質粒子(B)は非晶質炭素、黒鉛化物、酸化物やその他の金属と複合化したものを用いてもよい。
【0097】
黒鉛は、商業的に容易に入手可能であり、理論上372mAh/gの高い充放電容量を有し、さらには他の負極用活物質を用いた場合と比較して、高電流密度での充放電特性の改善効果が大きく見込めるため、好ましい。なかでも黒鉛は不純物の少ないものが好ましく、必要に応じて、公知である種々の精製処理を施して用いることができる。黒鉛の種類としては、天然黒鉛、人造黒鉛等が挙げられるが、天然黒鉛がより好ましい。
【0098】
人造黒鉛としては、例えば、コールタールピッチ、石炭系重質油、常圧残油、石油系重質油、芳香族炭化水素、窒素含有環状化合物、硫黄含有環状化合物、ポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、天然高分子、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂などの有機物を焼成し、黒鉛化したものが挙げられる。
焼成温度は、2500℃以上、3200℃以下の範囲とすることができ、焼成の際、珪素含有化合物やホウ素含有化合物などを黒鉛化触媒として用いることもできる。
非晶質炭素としては、例えば、バルクメソフェーズを焼成した粒子や、炭素前駆体を不融化処理し、焼成した粒子が挙げられる。
【0099】
黒鉛化度の小さい炭素質物としては、有機物を通常2500℃未満の温度で焼成したものが挙げられる。有機物としては、コールタールピッチ、乾留液化油などの石炭系重質油;常圧残油、減圧残油などの直留系重質油;原油、ナフサなどの熱分解時に副生するエチレンタール等の分解系重質油などの石油系重質油;アセナフチレン、デカシクレン、アントラセンなどの芳香族炭化水素;フェナジンやアクリジンなどの窒素含有環状化合物;チオフェンなどの硫黄含有環状化合物;アダマンタンなどの脂肪族環状化合物;ビフェニル
、テルフェニルなどのポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラールなどのポリビニルエステル類、ポリビニルアルコールなどの熱可塑性高分子などが挙げられる。
【0100】
前記炭素質物の黒鉛化度の程度に応じて、焼成温度は600℃以上とすることができ、好ましくは900℃以上、より好ましくは950℃以上であり、通常2500℃未満とすることができ、好ましくは2000℃以下、より好ましくは1400℃以下の範囲である。
焼成の際、有機物に燐酸、ホウ酸、塩酸などの酸類、水酸化ナトリウム等のアルカリ類などを混合することもできる。
【0101】
炭素質粒子(B)は、原料炭素材料に金属粒子、及び金属酸化物粒子等の粒子を任意の組み合わせで適宜混合して用いても良い。また、個々の粒子中に複数の材料が混在するものであってもよい。例えば、黒鉛の表面を黒鉛化度の小さい炭素材で被覆した構造の炭素質粒子や、炭素材を適当な有機物で集合させ再黒鉛化した粒子でも良い。更に、前記複合粒子中にSn、Si、Al、Biなどの、Liと合金化が可能な金属を含んでいても良い。
【0102】
(炭素質粒子(B)の球形化処理)
アスペクト比が1以上4以下である炭素質粒子(B)を得るには、例えば、原料炭素材料に対し球形化処理を行う方法が挙げられる。以下に、球形化処理を行う方法について記載するが、この方法に限定されるものではない。
球形化処理に用いる装置としては、例えば、衝撃力を主体に、黒鉛炭素質物粒子の相互作用も含めた圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を繰り返し粒子に与える装置を用いることができる。
【0103】
具体的には、ケーシング内部に多数のブレードを設置したローターを有し、そのローターが高速回転することによって、内部に導入された炭素材料に対して衝撃圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を与え、表面処理を行なう装置が好ましい。また、黒鉛を循環させることによって機械的作用を繰り返し与える機構を有するものであるのが好ましい。
炭素材料に機械的作用を与える好ましい装置としては、例えば、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロン(アーステクニカ社製)、CFミル(宇部興産社製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)等が挙げられる。これらの中で、奈良機械製作所社製のハイブリダイゼーションシステムが好ましい。
【0104】
前記装置を用いて処理する場合、例えば、回転するローターの周速度は通常30〜100m/秒であり、40〜100m/秒にするのが好ましく、50〜100m/秒にするのがより好ましい。また、炭素材料に機械的作用を与える処理は、単に黒鉛を通過させるだけでも可能であるが、黒鉛を30秒以上装置内を循環又は滞留させて処理するのが好ましく、1分以上装置内を循環又は滞留させて処理するのがより好ましい。
【0105】
(炭素質物を被覆した炭素質粒子(B))
本発明に使用される炭素質粒子(B)は、炭素質物でその表面の少なくとも一部が被覆されたものを用いてもよい。
なお、前記炭素質物としては、後述するその製造方法における加熱の温度の相違によって、非晶質炭素及び黒鉛化物が挙げられる。ここでいう非晶質炭素とはd値が通常0.34nm以上の炭素のことであり結晶性が低い。一方、黒鉛質物とはd値が0.34nm未満の黒鉛のことであり結晶性が高い。
【0106】
具体的には、前記炭素質物は、その炭素前駆体を後述するような加熱処理する方法で得ることができる。前記炭素前駆体として、以下の(a)又は(b)に記載の炭素材が好ましい。
(a)石炭系重質油、直流系重質油、分解系石油重質油、芳香族炭化水素、N環化合物、S環化合物、ポリフェニレン、有機合成高分子、天然高分子、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選ばれた炭化可能な有機物
【0107】
(b)炭化可能な有機物を低分子有機溶媒に溶解させたもの
前記石炭系重質油としては、軟ピッチから硬ピッチまでのコールタールピッチ、乾留液化油等が好ましく、前記直流系重質油としては、常圧残油、減圧残油等が好ましく、前記分解系石油重質油としては、原油、ナフサ等の熱分解時に副生するエチレンタール等が好ましく、前記芳香族炭化水素としては、アセナフチレン、デカシクレン、アントラセン、フェナントレン等が好ましく、前記N環化合物としては、フェナジン、アクリジン等が好ましく、前記S環化合物としては、チオフェン、ビチオフェン等が好ましく、前記ポリフェニレンとしては、ビフェニル、テルフェニル等が好ましく、前記有機合成高分子としては、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、これらのものの不溶化処理品、ポリアクリロニトリル、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリスチレン等が好ましく、前記天然高分子としては、セルロース、リグニン、マンナン、ポリガラクトウロン酸、キトサン、サッカロース等の多糖類等が好ましく、前記熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド等が好ましく、前記熱硬化性樹脂としては、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等が好ましい。
また、前記炭素前駆体は、ベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液等の炭化物であってもよい。
また、これらは1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。
【0108】
(被覆処理)
被覆処理においては、特に限定されないが、例えば、上述した炭素材料を芯材とし、炭素質物を得るための炭素前駆体を被覆原料として用い、これらを混合又は被覆した後、これらを焼成することで、炭素質物で被覆された炭素質粒子(B)を得ることができる。また、球形化処理していない炭素材料を芯材とし、炭素質物を得るための炭素前駆体を被覆原料として用い、これらを混合した後球形化処理し焼成してもよいし、焼成後に球形化処理を行ってもよい。
【0109】
焼成温度を、通常600℃以上、好ましくは700℃以上、より好ましくは900℃以上、通常2000℃以下、好ましくは1500℃以下、より好ましくは1200℃以下とすると炭素質物として非晶質炭素が得られ、通常2000℃以上、好ましくは2500℃以上、通常3200℃以下で熱処理を行うと炭素質物として黒鉛化物が得られる。
【0110】
(炭素質物の添着量)
本発明の炭素質粒子(B)における炭素質物の添着量は、芯材に対する炭素質物の被覆量を示すものであり、本発明においてこれは通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3%以上、特に好ましくは0.7質量%以上であり、また前記添着量は、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは7質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。
【0111】
添着量が多すぎると、非水系二次電池において高容量を達成する為に十分な圧力で圧延を行った場合に、炭素材にダメージが与えられて材料破壊が起こり、初期サイクル時充放電不可逆容量の増大、初期効率の低下を招く傾向がある。
一方、添着量が小さすぎると、被覆による効果が得られにくくなる傾向がある。すなわち、電池において電解液との副反応を十分に抑制できず、初期サイクル時充放電不可逆容量の増大、初期効率の低下を招く傾向がある。
【0112】
また、炭素質物の添着量は、材料焼成前後のサンプル質量より算出できる。なおこのとき、芯材の焼成前後質量変化はないものとして計算する。
w1を芯材の質量(kg)、w2を焼成後炭素質粒子(B)質量(kg)とすると、
炭素質物の添着量(質量%)=[(w2−w1)/w1]×100
として計算される。
【0113】
[非水系二次電池負極用炭素材]
本発明の負極材は、上記の鱗片状黒鉛質粒子(A)及び炭素質粒子(B)を含む混合炭素材である。
<鱗片状黒鉛質粒子(A)及び炭素質粒子(B)の混合割合>
本発明の負極材において、鱗片状黒鉛質粒子(A)及び炭素質粒子(B)の総量に対する鱗片状黒鉛質粒子(A)の質量割合は、通常0質量%より大きく、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、通常40質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、特に好ましくは6質量%以下である。
【0114】
鱗片状黒鉛質粒子(A)及び炭素質粒子(B)の総量に対する鱗片状黒鉛質粒子(A)の割合が多すぎると、初期効率の低下、極板強度の低下を招く傾向がある。また、鱗片状黒鉛質粒子(A)の割合が少なすぎると、鱗片状黒鉛質粒子(A)の特に導電パス切れ抑制効果の低減によりサイクル特性の低下を招く傾向がある。
なお、鱗片状黒鉛質粒子(A)及び炭素質粒子(B)が均一に混合されれば混合方法は特に制限はないが、例えば、回分方式の混合装置としては、2本の枠型が自転しつつ公転する構造の混合機;高速高剪断ミキサーであるディゾルバーや高粘度用のバタフライミキサーの様な、一枚のブレートがタンク内で撹拌・分散を行う構造の装置;半円筒状混合槽の側面に沿ってシグマ型などの撹拌翼が回転する構造を有する、いわゆるニーダー形式の装置;撹拌翼を3軸にしたトリミックスタイプの装置;容器内に回転ディスクと分散媒体を有するいわゆるビーズミル型式の装置などが用いられる。
【0115】
またシャフトによって回転されるパドルが内装された容器を有し、容器内壁面はパドルの回転の最外線に実質的に沿って、好ましくは長い双胴型に形成され、パドルは互いに対向する側面を摺動可能に咬合するようにシャフトの軸方向に多数対配列された構造の装置(例えば栗本鉄工所製のKRCリアクタ、SCプロセッサ、東芝機械セルマック社製のTEM、日本製鋼所製のTEX−Kなど);更には内部一本のシャフトと、シャフトに固定された複数のすき状又は鋸歯状のパドルが位相を変えて複数配置された容器を有し、その内壁面はパドルの回転の最外線に実質的に沿って、好ましくは円筒型に形成された構造の(外熱式)装置(例えばレーディゲ社製のレディゲミキサー、大平洋機工社製のフローシェアーミキサー、月島機械社製のDTドライヤーなど)を用いることもできる。連続方式で混合を行うには、パイプラインミキサーや連続式ビーズミルなどを用いればよい。
【0116】
<タップ密度>
本発明の負極材は、タップ密度は通常0.6g/cm
3以上、好ましくは0.7g/cm
3以上であり、一方、通常1.8g/cm
3以下、好ましくは1.5g/cm
3以下、さらに好ましくは1.3g/cm
3以下である。
タップ密度が上記範囲より小さいと、電極内で充分な連続空隙が確保されず、空隙に保持された電解液内のLiイオンの移動性が落ちることで、急速充放電特性が低下する傾向がある。
【0117】
<他の材料との混合>
本発明の負極材は、鱗片状黒鉛質粒子(A)及び/又は炭素質粒子(B)の何れか一種を単独で、又は二種以上を任意の組成及び組み合わせで併用して、非水系二次電池の負極材として好適に使用することができるが、一種又は二種以上を、他の一種又は二種以上のその他の材料と混合し、これを非水系二次電池、好ましくは非水系二次電池の負極材料として用いてもよい。
【0118】
上述の非水系二次電池負極用炭素材にその他炭素材料を混合する場合、非水系二次電池負極用炭素材及びその他炭素材料の総量に対する非水系二次電池負極用炭素材の混合割合は、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上、また、通常90質量%以下、好ましくは80質量%以下の範囲である。その他炭素材料の混合割合が、前記範囲を下回ると、添加した効果が現れ難い傾向がある。一方、前記範囲を上回ると、本発明の非水系二次電池負極用炭素材の特性が現れ難い傾向がある。
【0119】
その他の材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質被覆黒鉛、非晶質炭素、金属粒子、金属化合物の中から選ばれる材料を用いる。これらの材料は、何れかを一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び組成で併用してもよい。
天然黒鉛としては、例えば、高純度化した鱗片状黒鉛質粒子や鱗状黒鉛を用いることができる。天然黒鉛の体積基準平均粒径は、通常8μm以上、好ましくは12μm以上、また、通常60μm以下、好ましくは40μm以下の範囲である。天然黒鉛のBET比表面積は、通常3.5m
2/g以上、好ましくは、4.5m
2/g以上、また、通常8m
2/g
以下、好ましくは6m
2/g以下の範囲である。
【0120】
人造黒鉛としては、炭素材料を黒鉛化した粒子等が挙げられ、例えば、単一の黒鉛前駆体粒子を粉状のまま焼成、黒鉛化した粒子などを用いることができる。
非晶質被覆黒鉛としては、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛に非晶質前駆対を被覆、焼成した粒子や、天然黒鉛や人造黒鉛に非晶質をCVDにより被覆した粒子を用いることができる。
【0121】
非晶質炭素としては、例えば、バルクメソフェーズを焼成した粒子や、炭素化可能なピッチ等を不融化処理し、焼成した粒子を用いることができる。
非水系二次電池負極用炭素材とその他炭素材料との混合に用いる装置としては、特に制限はないが、例えば、回転型混合機の場合:円筒型混合機、双子円筒型混合機、二重円錐型混合機、正立方型混合機、鍬形混合機、固定型混合機の場合:螺旋型混合機、リボン型混合機、Muller型混合機、HelicalFlight型混合機、Pugmill型混合機、流動化型混合機等を用いることができる。
【0122】
金属粒子としては、例えば、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Ag、Si、Sn、Al、Zr、Cr、P、S、V、Mn、Nb、Mo、Cu、Zn、Ge、In、Ti等からなる群から選ばれる金属又はその化合物が好ましい。また、2種以上の金属からなる合金を使用しても良く、金属粒子が、2種以上の金属元素により形成された合金粒子であってもよい。これらの中でも、Si、Sn、As、Sb、Al、Zn及びWからなる群から選ばれる金属又はその化合物が好ましい。
【0123】
金属化合物としては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等が挙げられる。また、2種以上の金属からなる合金を使用しても良い。
この中でも、Si又はSi化合物が高容量化の点で、好ましい。Si化合物としては、具体的には、SiOx,SiNx,SiCx、SiZxOy(Z=C、N)などが挙げられ、好ましくは、一般式で表すとSiOxである。この一般式SiOxは、二酸化Si(
SiO
2)と金属Si(Si)とを原料として得られるが、そのxの値は通常0≦x<2である。SiOxは、黒鉛と比較して理論容量が大きく、更に非晶質SiあるいはナノサイズのSi結晶は、リチウムイオン等のアルカリイオンの出入りがしやすく、高容量を得ることが可能となる。
【0124】
具体的には、SiOxと表されるものであり、xは通常0≦x<2であり、より好ましくは、0.2以上、1.8以下、更に好ましくは、0.4以上、1.6以下、特に好ましくは、0.6以上、1,4以下である。この範囲であれば、高容量であると同時に、Li
と酸素との結合による不可逆容量を低減させることが可能となる。
<非水系二次電池用負極>
本発明はまた、本発明の非水系二次電池負極用炭素材を用いて形成される非水系二次電池用負極に関するものであり、例えば、リチウムイオン二次電池用負極が挙げられる。
【0125】
非水系二次電池用負極の製造方法や非水系二次電池用負極を構成する本発明の非水系二次電池負極用炭素材以外の材料の選択については、特に限定されない。
本発明の非水系二次電池用負極は、集電体と、集電体上に形成された活物質層とを備え、かつ前記活物質層が少なくとも本発明の非水系二次電池負極用炭素材を含有するものである。前記活物質層は、好ましくは、さらにバインダを含有する。
【0126】
バインダは、特に限定されないが、分子内にオレフィン性不飽和結合を有するものが好ましい。具体例としては、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体などが挙げられる。
このようなオレフィン性不飽和結合を有するバインダを用いることにより、活物質層の電解液に対する膨潤性を低減することができる。中でも入手の容易性から、スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。
【0127】
このような分子内にオレフィン性不飽和結合を有するバインダと、本発明の非水系二次電池負極用炭素材とを組み合わせて用いることにより、負極板の機械的強度を高くすることができる。負極板の機械的強度が高いと、充放電による負極の劣化が抑制され、サイクル寿命を長くすることができる。
分子内にオレフィン性不飽和結合を有するバインダは、分子量が大きいもの及び/又は不飽和結合の割合が大きいものが好ましい。
【0128】
バインダの分子量としては、重量平均分子量を通常1万以上とすることができ、また、通常100万以下とすることができる。この範囲であれば、機械的強度及び可撓性の両面を良好な範囲に制御できる。重量平均分子量は、好ましくは5万以上であり、また、好ましくは30万以下の範囲である。
バインダの分子内のオレフィン性不飽和結合の割合としては、全バインダ1g当たりのオレフィン性不飽和結合のモル数を通常2.5×10
−7モル以上とすることができ、また、通常5×10
−6モル以下とすることができる。この範囲であれば、強度向上効果が十分に得られ、可撓性も良好である。モル数は、好ましくは8×10
−7モル以上であり、また、好ましくは1×10
−6モル以下である。
【0129】
また、オレフィン性不飽和結合を有するバインダについては、その不飽和度を、通常15%以上、90%以下とすることができる。不飽和度は、好ましくは20%以上、より好ましくは40%以上であり、また、好ましくは80%以下である。本願明細書において、不飽和度とは、ポリマーの繰り返し単位に対する二重結合の割合(%)を表す。
バインダとして、オレフィン性不飽和結合を有さないバインダも、使用することができる。分子内にオレフィン性不飽和結合を有するバインダとオレフィン性不飽和結合を有さ
ないバインダとを併用することによって、塗布性の向上等が期待できる。
【0130】
オレフィン性不飽和結合を有するバインダを100質量%とした場合、オレフィン性不飽和結合を有さないバインダの混合比率は、活物質層の強度が低下するのを抑制するため、通常150質量%以下とすることができ、好ましくは120質量%以下である。
オレフィン性不飽和結合を有さないバインダの例としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、澱粉、カラギーナン、プルラン、グアーガム、ザンサンガム(キサンタンガム)等の増粘多糖類;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル類;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のビニルアルコール類;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のポリ酸またはこれらの金属塩;ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのアルカン系ポリマーまたはこれらの共重合体などが挙げられる。
【0131】
活物質層には、負極の導電性を向上させるために、非水系電解液に難溶性のポリマーが添着した鱗片状黒鉛質粒子(A)以外にも、導電助剤を含有させてもよい。導電助剤は、特に限定されず、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック、平均粒径1μm以下のCu、Ni又はこれらの合金からなる微粉末などが挙げられる。
【0132】
導電助剤の添加量は、本発明の非水系二次電池負極用炭素材に対して、10質量%以下であることが好ましい。
本発明の非水系二次電池用負極は、本発明の非水系二次電池負極用炭素材と場合によりバインダ及び/又は導電助剤とを分散媒に分散させてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥することにより形成することができる。分散媒としては、アルコールなどの有機溶媒や、水を用いることができる。
【0133】
スラリーを塗布する集電体としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。具体的には、圧延銅箔、電解銅箔、ステンレス箔等の金属薄膜などが挙げられる。
集電体の厚さは通常4μm以上とすることができ、また、通常30μm以下とすることができる。厚さは、好ましくは6μm以上であり、また、好ましくは20μm以下である。
【0134】
スラリーを塗布、乾燥して得られる非水系二次電池負極用炭素材層(以下、単に「活物質層」と称することもある。)の厚さは、負極としての実用性及び高密度の電流値に対する十分なリチウムイオンの吸蔵・放出の機能の点から、通常5μm以上とすることができ、また、通常200μm以下とすることができる。好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であり、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下である。
【0135】
活物質層の厚さは、スラリーの塗布、乾燥後にプレスすることにより、上記範囲の厚さになるように調整してもよい。
活物質層における非水系二次電池負極用炭素材の密度は、用途により異なるものの、例えば車載用途やパワーツール用途などの入出力特性を重視する用途においては、通常1.1g/cm
3以上、1.65g/cm
3以下である。
【0136】
この範囲であれば、密度が低すぎることによる粒子同士の接触抵抗の増大を回避することができ、一方、密度が高すぎることによるレート特性の低下も抑制することができる。
密度は、好ましくは1.2g/cm
3以上、さらに好ましくは1.25g/cm
3以上である。
携帯電話やパソコンといった携帯機器用途などの容量を重視する用途では、通常1.4
5g/cm
3以上とすることができ、また、通常1.9g/cm
3以下とすることができる。
【0137】
この範囲であれば、密度が低すぎることによる単位体積あたりの電池の容量低下を回避することができ、一方、密度が高すぎることによるレート特性の低下も抑制することができる。
密度は、好ましくは1.55g/cm
3以上、さらに好ましくは1.65g/cm
3以上、特に好ましくは1.7g/cm
3以上である。
【0138】
<非水系二次電池>
本発明に係る非水系二次電池の基本的構成は、例えば、公知のリチウムイオン二次電池と同様とすることができ、通常、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備え、前記負極は上述した本発明に係る非水系二次電池用負極である。
<正極>
正極は、集電体と、集電体上に形成された活物質層とを備えることができる。活物質層は、正極用活物質の他に、好ましくはバインダを含有する。
【0139】
正極用活物質としては、リチウムイオンなどのアルカリ金属カチオンを充放電時に吸蔵、放出できる金属カルコゲン化合物などが挙げられる。中でもリチウムイオンを吸蔵・放出可能な金属カルコゲン化合物が好ましい。
金属カルコゲン化合物としては、バナジウム酸化物、モリブデン酸化物、マンガン酸化物、クロム酸化物、チタン酸化物、タングステン酸化物などの遷移金属酸化物;バナジウム硫化物、モリブデン硫化物、チタン硫化物、CuSなどの遷移金属硫化物;NiPS
3、FePS
3等の遷移金属のリン−硫黄化合物;VSe
2、NbSe
3などの遷移金属のセレン化合物;Fe
0.25V
0.75S
2、Na
0.1CrS
2などの遷移金属の複合酸化物;LiCoS
2、LiNiS
2などの遷移金属の複合硫化物等が挙げられる。
【0140】
中でも、リチウムイオンの吸蔵・放出の観点から、V
2O
5、V
5O
13、VO
2、Cr
2O
5、MnO
2、TiO
2、MoV
2O
8、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMn
2O
4、TiS
2、V
2S
5、Cr
0.25V
0.75S
2、Cr
0.5V
0.5S
2などが好ましく、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMn
2O
4や、これらの遷移金属の一部を他の金属で置換したリチウム遷移金属複合酸化物が特に好ましい。
【0141】
これらの正極活物質は、単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
正極用のバインダは、特に限定されず、公知のものを任意に選択して用いることができる。例としては、シリケート、水ガラス等の無機化合物や、テフロン(登録商標)、ポリフッ化ビニリデン等の不飽和結合を有さない樹脂などが挙げられる。中でも好ましいのは、酸化反応時に分解しにくいため、不飽和結合を有さない樹脂である。
【0142】
バインダの重量平均分子量は、通常1万以上とすることができ、また、通常300万以下とすることができる。重量平均分子量は、好ましくは10万以上であり、また、好ましくは100万以下である。
正極活物質層中には、正極の導電性を向上させるために、導電助剤を含有させてもよい。導電助剤は、特に限定されず、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉末、各種の金属の繊維、粉末、箔などが挙げられる。
【0143】
本発明の正極は、上述したような負極の製造方法と同様にして、活物質と、場合によりバインダ及び/又は導電助剤を分散媒に分散させてスラリーとし、これを集電体表面に塗布することにより形成することができる。正極の集電体は、特に限定されず、アルミニウム、ニッケル、ステンレススチール(SUS)などが挙げられる。
【0144】
<電解質>
電解質(「電解液」と称することもある。)は、特に限定されず、非水系溶媒に電解質としてリチウム塩を溶解させた非水系電解液や、該非水系電解液に有機高分子化合物等を添加することによりゲル状、ゴム状、または固体シート状にしたものなどが挙げられる。
非水系電解液に使用される非水系溶媒は、特に限定されず、公知の非水系溶媒を用いることができる。
例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類;1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類などが挙げられる。
【0145】
非水系溶媒は、単独でも、2種以上を併用してもよい。混合溶媒の場合は、環状カーボネートと鎖状カーボネートを含む混合溶媒の組み合わせが導電性と粘度のバランスから好ましく、環状カーボネートが、エチレンカーボネートであることが好ましい。
非水系電解液に使用されるリチウム塩も特に制限されず、公知のリチウム塩を用いることができる。例えば、LiCl、LiBrなどのハロゲン化物;LiClO
4、LiBrO
4、LiClO
4などの過ハロゲン酸塩;LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6などの無機フッ化物塩などの無機リチウム塩;LiCF
3SO
3、LiC
4F
9SO
3などのパーフルオロアルカンスルホン酸塩;Liトリフルオロメタンスルフォニルイミド((CF
3SO
2)
2NLi)などのパーフルオロアルカンスルホン酸イミド塩などの含フッ素有機リチウム塩などが挙げられる。中でもLiClO
4、LiPF
6、LiBF
4が好ましい。
【0146】
リチウム塩は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。非水系電解液中におけるリチウム塩の濃度は、0.5mol/L以上、2.0mol/L以下の範囲とすることができる。
上述の非水系電解液に有機高分子化合物を含ませることで、ゲル状、ゴム状、或いは固体シート状にして使用する場合、有機高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;ポリエピクロルヒドリン;ポリフォスファゼン;ポリシロキサン;ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物;ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート−co−メチルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン)等のポリマー共重合体などが挙げられる。
【0147】
上述の非水系電解液は、さらに被膜形成剤を含んでいてもよい。
被膜形成剤の具体例としては、ビニレンカーボネート、ビニルエチルカーボネート、メチルフェニルカーボネートなどのカーボネート化合物;エチレンサルファイド、プロピレンサルファイドなどのアルケンサルファイド;1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトンなどのスルトン化合物;マレイン酸無水物、コハク酸無水物などの酸無水物などが挙げられる。
【0148】
非水系電解液にはさらに、ジフェニルエーテル、シクロヘキシルベンゼン等の過充電防止剤が添加されていてもよい。
上記各種添加剤を用いる場合、初期不可逆容量の増加や低温特性、レート特性の低下等
、他の電池特性に悪影響を及ぼさないようにするために、添加剤の総含有量は非水系電解液全体に対して通常10質量%以下とすることができ、中でも8質量%以下、さらには5質量%以下、特に2質量%以下の範囲が好ましい。
【0149】
また、電解質として、リチウムイオン等のアルカリ金属カチオンの導電体である高分子固体電解質を用いることもできる。
高分子固体電解質としては、前述のポリエーテル系高分子化合物にLi塩を溶解させたものや、ポリエーテルの末端水酸基がアルコキシドに置換されているポリマーなどが挙げられる。
【0150】
<その他>
正極と負極との間には、通常、電極間の短絡を防止するために、多孔膜や不織布などの多孔性のセパレータを介在させることができ、非水系電解液は、多孔性のセパレータに含浸させて用いることが便利である。セパレータの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエーテルスルホンなどが用いられ、好ましくはポリオレフィンである。
【0151】
非水系二次電池の形態は特に限定されず、例えば、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ;ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ;ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等が挙げられる。また、これらの形態の電池を任意の外装ケースに収めることにより、コイン型、円筒型、角型等の任意の形状及び大きさにして用いることができる。
【0152】
非水系二次電池を組み立てる手順も特に限定されず、電池の構造に応じて適切な手順で組み立てることができる。例えば、外装ケース上に負極を乗せ、その上に電解液とセパレータを設け、さらに負極と対向するように正極を乗せて、ガスケット、封口板と共にかしめて電池にすることができる。
【0153】
<電池の性能>
上述のように作製した電池は以下の様な性能を示すものである。
初期効率は、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは91%以上、特に好ましくは92%以上である。また、放電容量は、通常200mAh/g以上、好ましくは300mAh/g、より好ましくは320mAh/g以上、更に好ましくは340mAh/g以上、特に好ましくは350mAh/g以上、最も好ましくは360mAh/g以上である。初期効率や放電容量が低すぎると、消費電力が大きな機器への適用や長時間の使用ができなくなる傾向がある。
【0154】
サイクル維持率は、通常70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。サイクル維持率が低すぎると、充放電を繰り返し、長い期間使用するような用途へ適さない。ここでサイクル維持率とは、1サイクル目の放電容量に対する、200サイクル目の放電容量のことを表す。
【実施例】
【0155】
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、各物性の測定方法は、上述した測定方法に準じるものとする。
<平均粒径>
粒径の測定方法は、界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(例として、ツィーン20(登録商標))の0.2質量%水溶液10mLに、炭素材0.01gを懸濁させ、市販のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「HORIBA製LA−
920」に導入し、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、測定装置における体積基準のメジアン径として測定し、本発明における体積基準平均粒径d50と定義した。
【0156】
<比表面積>
BET比表面積の測定方法は、例えば大倉理研社製比表面積測定装置「AMS8000」を用いて、窒素ガス吸着流通法によりBET1点法にて測定する。具体的には、試料(炭素材)0.4gをセルに充填し、350℃に加熱して前処理を行った後、液体窒素温度まで冷却して、窒素30%、He70%のガスを飽和吸着させ、その後室温まで加熱して脱着したガス量を計測し、得られた結果から、通常のBET法により比表面積を算出した。
【0157】
<タップ密度>
本発明において、タップ密度は、粉体密度測定器を用い、直径1.6cm、体積容量20cm
3の円筒状タップセルに、目開き300μmの篩を通して、原料炭素材を落下させて、セルに満杯に充填した後、ストローク長10mmのタップを1000回行なって、その時の体積と試料の重量から密度を求めた。
【0158】
<d
002、Lc>
炭素粉末に約15%のX線標準高純度シリコン粉末を加えて混合したものを
材料とし、グラファイトモノクロメーターで単色化したCuKα線を線源とし、反射式ディフラクトメーター法で広角X線回折曲線を測定し、学振法を用いて面間隔(d
002)及
び結晶子の大きさ(Lc)を求めた。
【0159】
<円形度>
フロー式粒子像分析装置(例えば、シスメックスインダストリアル社製FPIA)を用い、界面活性剤としてポリオキシエチレン(20)モノラウレートを使用し、分散媒としてイオン交換水を使用し、円相当径による円形度の算出を行うことで求められる。円相当径とは、撮影した粒子像と同じ投影面積を持つ円(相当円)の直径であり、円形度とは、相当円の周囲長を分子とし、撮影された粒子投影像の周囲長を分母とした比率である。円形度が1のときに理論的真球となる。測定した相当径が10〜40μmの範囲の粒子の円形度を平均し、本発明における円形度を求める。
【0160】
<アスペクト比>
負極材の樹脂包埋物又は負極を平板に対して垂直に研磨して、その断面写真を撮影し、ランダムに50個以上の粒子を抽出して、粒子の最長径(平板に対して平行方向)と最短径(平板に対して垂直方向)を画像解析により測定し、最長径/最短径の平均をアスペクト比とした。樹脂包埋又は極板化した粒子は、通常は平板に対して粒子の厚み方向が垂直に並ぶ傾向があることから、上記の方法より、粒子に特徴的な最長径と最短径を得ることが出来る。
【0161】
<初期効率の測定方法>
後述の方法で作製した非水系二次電池(2016コイン型電池)を用いて、下記の測定方法で電池充放電時の初期効率を測定した。
0.16mA/cm
2の電流密度でリチウム対極に対して5mVまで充電し、更に、5
mVの一定電圧で充電容量値が350mAh/gになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、0.33mA/cm
2の電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放
電を行なった。引き続き2、3回目は、同電流密度でcc−cv充電にて10mV、0.005Ccutにて充電し、放電は、全ての回で0.04Cで1.5Vまで放電した。この計3サイクルの充電容量と放電容量の差の和を不可逆容量として算出した。また、3サ
イクル目の放電容量を本材料の放電容量とし、本材料の放電容量/(本材料の放電容量+不可逆容量)を初期効率とした。
【0162】
<サイクル維持率の測定方法>
後述の方法で作製したラミネート型電池を、0.8Cで4.2Vまで充電、0.5Cで3・0Vまでの放電を繰り返し、1サイクル目の放電容量に対する200サイクル目の放電容量の比×100をサイクル維持率(%)とした。
【0163】
<電極シートの作製>
実施例又は比較例の黒鉛粒子を用い、活物質層密度1.60±0.03g/cm
3の活
物質層を有する極板を作製した。具体的には、負極材20.00±0.02gに、1質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム塩水溶液を20.00±0.02g(固形分換算で0.200g)、及び重量平均分子量27万のスチレン・ブタジエンゴム水性ディスパージョン0.50±0.05g(固形分換算で0.2g)を、キーエンス製ハイブリッドミキサーで5分間撹拌し、30秒脱泡してスラリーを得た。
【0164】
このスラリーを、集電体である厚さ18μmの銅箔上に、負極材料が14.5±0.3mg/cm
2付着するように、ドクターブレードを用いて幅5cmに塗布し、室温で風乾
を行った。更に110℃で30分乾燥後、直径20cmのローラを用いてロールプレスして、活物質層の密度が1.60±0.03g/cm
3になるよう調整し電極シートを得た
。
【0165】
<非水系二次電池(2016コイン型電池)の作製>
上記方法で作製した電極シートを直径12.5mmの円盤状に打ち抜き、リチウム金属箔を直径14mmの円板状に打ち抜き対極とした。両極の間には、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒(容積比=3:7)に、LiPF
6を1mol/
Lになるように溶解させた電解液を含浸させたセパレータ(多孔性ポリエチレンフィルム製)を置き、2016コイン型電池をそれぞれ作製した。
【0166】
<非水系二次電池(ラミネート型電池)の作製方法>
上記方法で作製した電極シートを4cm×3cmの正方形に切り出し負極とし、LiCoO
2からなる正極を同面積で切り出し、負極と正極の間にはセパレータ(多孔性ポリエチレンフィルム製)を置き、組み合わせた。エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒(容積比=3:7)に、LiPF
6を1mol/Lになるように溶解させ、更に添加剤としてビニレンカーボネートを1容積%添加した電解液を250μl注液してラミネート型電池を作製した。
【0167】
<炭素材料>
炭素質粒子(B):原料黒鉛として体積基準平均粒径(d50)が16.1μm、BET法比表面積(SA)が6.3m
2/g、タップ密度が0.98g/cm
3、円形度が0.94、アスペクト比が1.9の球形化処理された天然黒鉛に、非晶質炭素前駆体としてナフサ熱分解時に得られる石油系重質油を混合し、不活性ガス中で1300℃の熱処理を施した。得られた焼成物に粉砕・分級処理を行い、炭素質粒子(B)を得た。また、焼成収率から、得られた炭素質粒子(B)において、非晶質炭素の添着量は3質量%であることが確認された。前記測定法で粒径、SA、Tap密度、円形度、アスペクト比を測定した。結果を下記表1に示す。
【0168】
非水系電解液に難溶性のポリマーが添着した鱗片状黒鉛質粒子(A):原料黒鉛として鱗片状天然黒鉛粒子(体積基準平均粒径(d50)=5.1μm、BET法比表面積(SA)が14.7m
2/g、タップ密度=0.42g/cm
3、円形度=0.81、アスペ
クト比=8.3)を用い、鱗片状天然黒鉛粒子を50gとアルドリッチ製ポリスチレンスルホン酸リチウム30%水溶液(重量平均分子量:75000)0.83gに蒸留水49.17gを添加して希釈したもの)をオイルバスに浸したフラスコに入れた(鱗片状天然黒鉛粒子1:ポリスチレンスルホン酸リチウム=100:0.5)。攪拌しながらオイルバスを95℃に加温して溶媒を留去し、粉末状の鱗片状黒鉛質粒子(A)を得た。前記測定法で粒径、比表面積(SA)、Tap密度、円形度、アスペクト比を測定した。結果を下記表1に示す。
【0169】
[実施例1]
鱗片状黒鉛質粒子(A)及び炭素質粒子(B)の総量に対する鱗片状黒鉛質粒子(A)の質量割合が95質量%となるように、鱗片状黒鉛質粒子(A)と炭素質粒子(B)を混合してサンプルを得た。このサンプル及びそれから作成した非水系二次電池について、前記測定法で初期効率、サイクル維持率を測定した。結果を下記表2に示す。
【0170】
[比較例1]
炭素質粒子(B)をそのまま用いて実施例1と同様に電池特性の評価を行った。結果を下記表2に示す。
[比較例2]
鱗片状黒鉛質粒子及び炭素質粒子(B)の総量に対する鱗片状黒鉛質粒子の質量割合が95質量%となるように、鱗片状天然黒鉛粒子と炭素質粒子(B)を混合してサンプルを得た。このサンプルを用いて、実施例1と同様に電池特性の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0171】
【表1】
【0172】
【表2】
【0173】
表2から判るように、非水系電解液に難溶性のポリマーが添着した鱗片状黒鉛質粒子(A)と、炭素質粒子(B)を含む非水系二次電池負極用炭素材(実施例1)は炭素質粒子(B)のみからなる非水系二次電池負極材(比較例1)と比べ、サイクル維持率が高いことが確認された。この結果より、電解液に難溶性のポリマーが複合化した鱗片状黒鉛質粒子(A)は、導電助剤として好適な性質を有していることが判る。
【0174】
また、非水系電解液に難溶性のポリマーが複合化した鱗片状黒鉛(A)と、炭素質粒子(B)を含む非水系二次電池負極用炭素材(実施例1)は、鱗片状天然黒鉛と炭素質粒子(B)を含む非水系二次電池負極用炭素材(比較例2)と比べ、初期効率とサイクル維持率の両方が高いこと確認された。これは、非水系電解液に難溶性のポリマーを鱗片状黒鉛質粒子に複合化させることで、鱗片状黒鉛質粒子と電解液の接触を抑制し、SEI被膜及びガス発生を抑制したためと考えられる。