(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の生体分子アレイの処理方法、生体分子アレイのスクリーニング方法、生体分子アレイ用筺体、バイオアッセイ装置及びスクリーニング装置の実施形態を、
図1ないし
図44を参照して説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、バイオチップ(生体分子アレイ)を用いた生体分子のスクリーニング装置SCの概略的な構成図である。スクリーニング装置SCは、プレアッセイ部PAと、アッセイ部(バイオアッセイ装置)ASと、計測部(検出装置)MSと、受渡部TR1、TR2とを備えている。
【0016】
なお、プレアッセイ部PAは、アッセイ部AS及び計測部MSを有する処理ユニットとは別の場所(別の処理ユニット)に設置される構成であってもよい。この構成の場合、プレアッセイ部PAの処理が完了したバイオチップがアッセイ部ASに供給される。本実施形態では、上述したプレアッセイ部PA、アッセイ部AS、及び計測部MSによってバイオチップが一連で自動的に処理される。
【0017】
プレアッセイ部PAは、実装部1、マーキング部2、受渡部3を備えている。
図2は、プレアッセイ部PAの概略構成図である。実装部1は、バイオチップ(生体分子アレイ)50をアレイボックス(生体分子アレイ用筺体)20に実装するものであり、マニピュレータ(例、コンピュータ制御で自動駆動可能な機械的な腕)11と、アーム12を備えるロボット装置13とを備えている。
【0018】
バイオチップ50は、後述する検体に含まれる標的と特異的に反応可能な生体分子51を基板52の一方側(
図1では上側;以下、生体分子側と称する)に備えている。バイオチップ50は、例えば、1〜10mm四方の基板の上に、複数の生体分子が積層されることで構成されたプローブ(スポット)が多数形成されたものである。バイオチップ50は、例えば、シリコンウエハ上にスポットを形成した後、シリコンウエハをダイシングして個片化することで形成される。なお、プローブは、例えば、シリコンウエハ上に所定の生体分子形成材料を配置する工程と、マスクを介して生体分子形成材料に所定波長の光を選択的に照射する露光工程と、を複数回繰り返すことにより、複数の生体分子を積層することで形成される。このようにして形成された生体分子は、測定対象の蛍光標識された検体と特異的な反応をすることで検体と結合し、所定の光(励起光)の照明によって所定の蛍光を発生させる。
【0019】
アレイボックス20は、バイオチップ50を生体分子側から支持可能な第1ボックス30と、バイオチップ50を基板52の他方側(以下、基板側と称する)から支持可能な第2ボックス40とを備えている。
【0020】
第1ボックス30は、第2ボックス40と対向する側に開口部を備える、例えば、矩形枠状(有底角筒状)に形成されたボックス本体31と、ボックス本体31の側壁31a間に架設された支持壁部32とを備えている。支持壁部32は、第2ボックス40との対向面32aを欠落させた形状の支持凹部33を複数備えている。各支持凹部33は、対向面32aに開口する第1凹部33aと、当該第1凹部33aに開口する有底の第2凹部33bとを備えている。第1凹部33aは、基板52の厚さよりも浅く、且つ基板52を外周側から保持可能な大きさ、形状に形成されている。第2凹部33bは、バイオチップ50が第1凹部33aに挿入された際に、第1凹部33aの底部33cにバイオチップ50の周縁部が係合可能な大きさ、形状に形成されている。第2凹部33bの深さは、バイオチップ50の周縁部が第1凹部33aの底部33cに係合した際にも、生体分子51(プローブ)が底部に接触せず、且つ、支持凹部33が上方に向けて開口した状態でバイオチップ50の周縁部が第1凹部33aの底部33cに係合し第2凹部33bに所定量の検体を注入(分注)した際に、生体分子51が検体と接触するように設定されている。
【0021】
第2ボックス40は、第1ボックス30と対向する側が開口するボックス本体41と、ボックス本体41内に設けられた支持壁部42とを備えている。ボックス本体41は、ボックス本体31の側壁31aの外周面と嵌合する側壁41aを備えている。支持壁部42は、第1ボックス30との対向面42aを欠落させた形状の支持凹部43を複数備えている。支持凹部43は、第1ボックス30と第2ボックス40とが側壁31a、41aにおいて嵌合し、対向面32a、42aが当接したときに、支持凹部33と協働してバイオチップ50を密閉状態で保持する保持空間を形成するものであって(
図4参照)、バイオチップ50の厚さと略同一の深さで形成されている。支持凹部43は、基板52を外周側から保持可能な大きさ、形状に形成されている。支持凹部43の側面は、底部から開口部側に向かうに従って漸次拡径するテーパ形状に形成されている。
【0022】
マニピュレータ11には、駆動装置14及び吸着装置15が接続されている。駆動装置14は、例えば、3次元ロボット装置等で構成されており、制御装置CONTの制御によりマニピュレータ11を、例えば、鉛直方向に延在する姿勢を維持した状態で水平面に沿った方向及び鉛直方向に移動させる。吸着装置15は、例えば、負圧吸引装置で構成され、マニピュレータ11の先端(例、下端)に備えられた脱着可能なノズル16からの負圧吸引を制御装置CONTの制御(例、作動と作動停止との間で負圧吸引が制御される)によって切り替えることにより、ノズル16におけるバイオチップ50の吸着保持と吸着保持解除とを切り替える。
【0023】
ロボット装置13は、制御装置CONTの制御下で、水平面に沿った2軸方向、鉛直方向と平行な1軸方向、及びこれら3軸の各軸周りの回転方向に移動可能なアーム12を備えている。アーム12は、制御装置CONTの制御下で、挟持幅を調整自在な一対のアーム片12aを備えている。
【0024】
マーキング部2は、
図7に示すように、バイオチップ50の基板側の面(例、基板面、下面)又はバイオチップ50の側面に生体分子51に関する情報、製造元に関する情報、検査機関に関する情報等の識別情報を、文字、数字、記号、図形、バーコード等を適宜用いて形成する処理が行われるものであって、レーザーマーカー等のマーキング装置21と、上記マニピュレータ11、駆動装置14及び吸着装置15と同様の構成を備える移載装置22(
図1参照)とが備えられている。本実施形態におけるマーキング部2は、
図1で説明した第1ボックス30を、支持凹部33が上方に向くように載置し、基板52を露出させた状態で支持凹部33に支持されたバイオチップ50に対して識別情報を形成する構成とされている。
【0025】
受渡部3は、実装部1とマーキング部2との間でバイオチップ50の受渡処理が行われるものであって、例えば、
図7に示したマーキング部2と同様に、支持凹部33が上方に向くように第1ボックス30が載置される。
【0026】
図1に戻り、アッセイ部(バイオアッセイ装置)ASは、読取部4、分注装置(分注部)5、反応部6、洗浄部7、乾燥部8、受渡部9を備えている。読取部4は、
図8に示す撮像装置23と、上記プレアッセイ部PAの移載装置22と同様の構成を備える移載装置24(
図1参照)とを備えている。撮像装置24は、バイオチップ50の基板側の面に形成されたバイオチップ50の識別情報を撮像して読み取る装置であって、例えば、CCDカメラ等で構成される。撮像装置24を用いて識別情報を撮像することによって識別情報信号が生成され、該識別情報信号は制御装置CONTに出力される。本実施形態における撮像装置24は、
図1で説明した第1ボックス30を、支持凹部33が上方に向くように載置し、基板52を露出させた状態で支持凹部33に支持されたバイオチップ50に対して識別情報を撮像する構成とされている。
【0027】
分注装置5は、例えば検体53が分注された反応容器25を示した
図11のように、反応部6に配置される反応容器25に対して、マニピュレータ11を用いて生体分子51と特異的に反応可能な標的を含む検体53を注入(分注)する分注処理が行われるものである。
【0028】
反応部6は、バイオチップ50の生体分子51と検体に含まれる標的とを所定の温度条件下で反応させる反応処理が行われるものであって、例えば
図11に示すように、上記の反応容器25と、上述した脱着可能なノズル16を有するマニピュレータ11と駆動装置14と吸着装置15と同様の構成を備える吸着保持装置(吸着保持部)26とを備えている。なお、
図11に示す吸着保持装置26においては、マニピュレータ11のみを図示し、駆動装置14及び吸着装置15については図示を省略している(
図10及び
図12に示す吸着保持装置26においても同様である)。なお、反応容器25は、複数のウェルを有した構成であってもよい。また、本実施形態におけるノズル16は、バイオチップ50に直接的に接触して吸着しているが、吸着保護層のような膜を介してバイオチップ50を間接的に吸着してもよい。また、本実施形態におけるノズル16は、先端に吸着用の弾性部材が設けられてもよいし、先端が該弾性体で構成されてもよい。なお、本実施形態におけるノズル16又はノズル16の先端の弾性部材は、バイオチップ50の吸着面の面積に応じて、広い吸着口を有する構成であってもよい。
【0029】
洗浄部7は、バイオチップ50を洗浄する洗浄処理が行われるものであって、
図10に示すように、洗浄液28が貯溜された洗浄容器27を備えている。
【0030】
乾燥部8は、洗浄されたバイオチップ50の乾燥処理が行われるものであって、
図12に示すように、例えば乾燥用の気体を噴出する乾燥装置28を備えている。
【0031】
受渡部9は、読取部4と反応部6との間でバイオチップ50の受渡処理が行われるものであって、例えば、
図7に示したマーキング部2と同様に、支持凹部33が上方に向くように載置された第1ボックス30が用いられる(
図9参照)。
【0032】
次に、計測部MSは、
図13及び
図14に示すように、計測ステージSTと、撮像装置60と、吸着保持装置(吸着保持部)29とを備えている。吸着保持装置(吸着保持部)29は、上述の吸着保持装置26と同様の構成を備える。計測ステージSTは、制御装置CONTの制御下でXY平面に沿って移動可能である。計測ステージSTは、バイオチップ50の生体分子側の周縁部を下方から支持する支持台(アレイホルダ)61を備えている。支持台61には、バイオチップ50が支持された際に、計測対象となる生体分子51に臨んで開口するように鉛直方向に貫通する貫通孔61aが形成されている。
【0033】
撮像装置60は、例えば、光源、対物レンズを有する光学系、及びCCDカメラ等で構成されており、支持台(アレイホルダ)61の貫通孔61aの下方に配置されている。撮像装置60で生成された識別情報信号は、制御装置CONTに出力される。
【0034】
続いて、
図1の受渡部TR1は、マーキング部2と読取部4との間でバイオチップ50の受渡処理が行われるものである。受渡処理は、例えば、
図7に示したマーキング部2と同様に、支持凹部33が上方に向くように載置された第1ボックス30が用いられる(
図9参照)。
【0035】
図1の受渡部TR2は、反応部6と計測部MSとの間でバイオチップ50の受渡処理が行われるものであって、例えば、
図7に示したマーキング部2と同様に、支持凹部33が上方に向くように載置された第1ボックス30が用いられる。
【0036】
次に、上記のスクリーニング装置SCを用いて、生体分子アレイの処理方法を含むバイオチップ50のスクリーニングを行う方法について、
図15の工程図を参照して説明する。
本実施形態では、生体分子51を有するバイオチップ50の計測に関連する関連処理として、例えば、実装処理、マーキング処理、読取処理、分注処理、反応処理、洗浄処理、乾燥処理、計測処理(検出処理)及びこれらの処理の間でバイオチップ50を移送する移送処理が適宜行われる。以下、これらの処理について順次説明する。
【0037】
なお、以下の説明においては、マニピュレータ11の移動は、制御装置CONTが駆動装置14の作動を制御することで行われる。また、ノズル16におけるバイオチップ50の吸着保持及び保持解除は、制御装置CONTが吸着装置15の作動を制御することで行われる。これら制御装置CONTによる制御の記載は適宜省略する。同様に、ロボット装置13におけるアーム12の移動及び一対のアーム片12aの挟持幅調整は制御装置CONTにより制御されるが、これら制御装置CONTによる制御の記載についても適宜省略する。
【0038】
まず、実装処理では、
図2に示すように、マニピュレータ11によってバイオチップ50を吸着保持し、第2ボックス40におけるボックス本体41の支持凹部43に移送する。例えば、複数のバイオチップ50が一括的に形成されたウエハ(生体分子ウエハ)Wをダイシング処理して個片化されたバイオチップ50に対して、まず、マニピュレータ11をバイオチップ50の生体分子側と対向する位置まで移動させるとともに、吸着装置15の作動によりノズル16にバイオチップ50を吸着保持させる。次に、マニピュレータ11をボックス本体41の支持凹部43と対向する位置まで移動させた後に、
図3に示すように、支持凹部43にバイオチップ50を移送して、バイオチップ50への吸着保持を解除することによって基板52が支持壁部42に下方から支持され上方に生体分子51が露出された状態で第2ボックス40にバイオチップ50が実装される(ステップS101)。
【0039】
所定個数(例えば3つ)のバイオチップ50の第2ボックス40への実装処理が完了した後、第2ボックス40と離間して配置された第1ボックス30をロボット装置13によって第2ボックス40の近傍に搬送する。搬送後、ロボット装置13は、第2ボックス40と第1ボックス30とを嵌合させる。例えば、
図2に示すように、ロボット装置13は、第1ボックス30のボックス本体31をアーム12により上方から挟持した状態で第1ボックス30を第2ボックス40と対向する位置に移動させる。その後に、ロボット装置13は第1ボックス30を下方へ移動させることにより、
図4に示すように、第1ボックス30の側壁31aが第2ボックス40の側壁41aの内周側に嵌合しボックス本体31とボックス本体41との位置合わせが行われる(ステップS102)。そして、対向面32a、42aが当接するまで第1ボックス30を移動させた後に、アーム12による挟持が解除されることにより、バイオチップ50は支持凹部33、43で形成された密閉状態の保持空間で保持される。
【0040】
次に、
図5に示すように、ロボット装置13は、第1ボックス30及び第2ボックス40をアーム12によって鉛直方向から挟持しながら水平方向と平行な軸周りに180度回転させる(すなわち反転させる)。これにより、バイオチップ50は、第2ボックス40の支持凹部43から第1ボックス30の支持凹部33に自重で移動する(ステップS103)。ステップS103によって、バイオチップ50は、その周縁部が支持凹部33の底部33cに支持された状態で、第1ボックス30に実装される。
【0041】
ステップS103の後、第2ボックス40がロボット装置13(アーム12)によって第1ボックス30から外される。そして、アーム12は、ボックス本体31を水平方向に挟持した状態で移動し、第1ボックス30を受渡部3に移載する。
【0042】
バイオチップ50が実装された第1ボックス30が受渡部3に移載された後、マーキング処理がバイオチップ50に実施される。
図7に示すように、マーキング装置21は、バイオチップ50(基板52)の基板側で露出する面に識別情報を形成する(ステップS104)。これにより、マーキング処理が完了する。
【0043】
上述したように、プレアッセイ部PAがアッセイ部AS及び計測部MSと別の場所(別の処理ユニット)に設置される場合には、バイオチップ50へのマーキング処理が完了した後、第1ボックス30に第2ボックス40を取り付けてバイオチップ50の保持空間の密封性を確保した状態で搬送し出荷する(ステップS105)。
【0044】
一方、本実施形態では、マーキング処理を行ったバイオチップ50に対する複数の処理を連続的に行うため、マーキング部2の第1ボックス30に支持されるバイオチップ50を移載装置22のマニピュレータ11を用いて吸着保持し、受渡部TR1に載置された第1ボックス30に移送する。受渡部TR1における第1ボックス30に移送されたバイオチップ50は、読取部4における移載装置24のマニピュレータ11により吸着保持され、
図8に示すように、読取部4に配置された第1ボックス30の支持凹部33に移送される。
【0045】
全て又は所定数のバイオチップ50が第1ボックス30に移送された後、識別情報の読取処理が行われる(ステップS106)。一例として、読取部4における撮像装置23は、バイオチップ50の基板側に形成された識別情報を撮像して読み取る。制御装置CONTは、撮像装置23により生成された識別情報信号から、アッセイ部ASにおける処理に用いるバイオチップ50であるか否かを判断する。制御装置CONTは、適正なバイオチップ50である場合には、次の処理へ移行し、適正なバイオチップ50でない場合には、例えば、エラーを発生させる処理を実行する。
【0046】
バイオチップ50が適正である場合には、バイオチップ50は受渡部9に載置された第1ボックス30に移送される。
【0047】
受渡部9に配置された第1ボックス30にバイオチップ50が移送されて、アッセイ部ASにおいて分注処理(ステップS107)及び洗浄処理が実施される(ステップS108)。一例として、反応部6に配置される反応容器25に対して分注装置5により、生体分子51と特異的に反応可能な標的を含む検体53(例えば蛍光色素などで標識された検体)が注入(分注)される(
図11参照)。そして、反応部6に設けられた吸着保持装置26のマニピュレータ11を用いてバイオチップ50を吸着保持した状態でバイオチップ50が洗浄部7へ移動され、洗浄部7は、
図10に示すように、洗浄部7の洗浄容器27に貯溜された洗浄液28にバイオチップ50を浸漬させて洗浄する。これにより、検体と生体分子との反応処理が行われる前にバイオチップ50に異物が付着していても、異物を除去することが可能となる。洗浄部7におけるバイオチップ50の洗浄において、洗浄容器27内の洗浄液28にバイオチップ50及びノズル16の少なくとも一部が浸漬されるが、効率やコストの観点からノズル16以外のマニピュレータ11は洗浄液28に浸漬されない。
【0048】
なお、分注処理は、バイオチップ50の識別情報の読取処理中や、洗浄処理中に併行して行うことが検査効率の向上させる観点から好適である。
【0049】
バイオチップ50に対する洗浄処理が完了した後、マニピュレータ11のノズル16によってバイオチップ50が吸着保持された状態で、上記の検体53が分注された反応容器25内にバイオチップ50が移送される(第1移送処理)。反応容器25内において、バイオチップ50がノズル16に吸着保持された状態で検体53にバイオチップ50が浸漬されることで、生体分子51と検体53に含まれる標的との反応処理が行われる(ステップS109)。例えば、マニピュレータ11が鉛直軸と平行な軸周りに回転されることによって検体53が反応容器25内で攪拌され、バイオチップ50と標的との反応処理が効率的に実施される。なお、上記の反応処理において、バイオチップ50及び吸着保持部26(この場合、ノズル16)の少なくとも一部が反応容器25内の検体53に浸されるが、効率やコストの観点からノズル16以外のマニピュレータ11は検体53に浸されない。例えば、別のバイオチップ50の生体分子51と別の検体53に含まれる標的との反応処理が上記の反応処理の後に続けて実施される場合、マニピュレータ11がノズル16を取り外して新しい清潔なノズル16を取り付けることによって、検査する検体53が変わる毎にマニピュレータ11やノズル16を洗浄する必要がなくなる。これによって、反応処理における効率が向上し、処理工程におけるコストが下がる。
【0050】
反応処理が完了した後、バイオチップ50はマニピュレータ11に吸着保持された状態で洗浄部7に移送され、再度の洗浄処理が反応後のバイオチップ50に対して行われる。そして、反応後のバイオチップ50が乾燥部8の乾燥装置28と対向する位置に移送され、乾燥処理が行われる(ステップS110)。乾燥処理が完了したバイオチップ50は、吸着保持装置26のマニピュレータ11に吸着保持された状態で、受渡部TR2(
図1参照)に載置された第1ボックス30に移送される。なお、上述の実施形態において、受渡部TR1や受渡部TR2などに配置される第1ボックス30は、前の処理工程において使用された第1ボックス30でもよいし、新しく用意された第1ボックス30でも良い。
【0051】
受渡部TR2における第1ボックス30に移送されたバイオチップ50は、計測部MSにおける吸着保持装置29のマニピュレータ11により吸着保持され、
図13に示すように、計測ステージSTに配された計測用所定位置である支持台61に移送される(第2移送処理)。その後、バイオチップ50の計測処理(検出処理)が実施される(ステップS111)。
【0052】
次に、バイオチップ50の計測処理(検出処理)の一例について
図14を参照して説明する。まず、基板52の生体分子側に設けられた指標マーク(不図示)を撮像装置60によって貫通孔61aを介して撮像することによって、支持台61に配置されたバイオチップ50に対する計測のアライメント(位置合わせ)が行われる。バイオチップ50のアライメントが完了した後、撮像装置60の焦点合わせ、及び生体分子51の撮像が順次行われる。また、撮像装置60の視野が複数の生体分子51の配置領域よりも狭い場合、制御装置CONTは、複数の生体分子51の配置領域を全て計測できるように、ステージSTの規則的な移動と複数の生体分子51の配置領域の撮像とを一連の動作として複数回実施する。制御装置CONTは、この一連の動作によって得られた複数の撮像結果を画像合成して計測結果を生成し、その計測結果に基づいて生体分子51と上記の標的との親和性(例えば、蛍光発生の有無や蛍光の強度などに基づく反応性や結合性など)を検出する。
【0053】
以上説明したように、本実施形態では、マニピュレータ11によりバイオチップ50を個別に吸着保持して、生体分子51の計測に関連する各種の関連処理を実施するため、複数のウェルを有するプレートを用いて計測を行う場合のように、計測に使用せずに無駄となるウェルが発生するというような問題を生じさせることなく効率的な計測・検出が可能となる。また、本実施形態では、反応容器25において検体53をマニピュレータ11により攪拌しているため、別途攪拌を行う機器を用意する必要がなくなり、装置の小型化や低価格化ができる。さらに、本実施形態では、マニピュレータ11におけるノズルがバイオチップ50の基板側の面を吸着して移送するため、吸着保持時に生体分子51に悪影響が及ぶことを回避できる。
【0054】
また、本実施形態では、上記関連処理を実施する前に、バイオチップ50の識別情報を読み取っているため、移送されたバイオチップ50が処理対象であることを容易に判別することができ、信頼性を高めることが可能となる。さらに、本実施形態では、生体分子ウエハWから個片化されたバイオチップ50が実装されるプレアッセイ部PAにおいて、上記識別情報をマーキングしているため、さらに信頼性を高めることができる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、生体分子アレイの処理方法、バイオチップ50のスクリーニング方法の第2実施形態について、
図16乃至
図28を参照して説明する。
これらの図において、
図1乃至
図15に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
上記第1実施形態では、アレイボックス20が直接バイオチップ50を支持し、また、マニピュレータ11がバイオチップ50を直接吸着保持する構成であるが、本実施形態ではバイオチップ50がアダプターに保持され、アレイボックス20がアダプターを支持する構成である。
【0057】
図17においては、バイオチップ50を保持するアダプター(保持部)70がアレイボックス(生体分子アレイ用筺体)120に支持される状態が示されている。
アダプター70は、軸部71とフランジ部72とを備えている。バイオチップ50は、軸部71の先端部に接着材により固定され保持されている。フランジ部72は、軸部71の径よりも大径に形成されている。フランジ部72は、軸部71の基端部に設けられている。
【0058】
アレイボックス120は、軸部71を保持可能な第1ボックス130と、フランジ部72を下方から支持可能な第2ボックス140とを備えている。
第1ボックス130は、第2ボックス140と対向する側が開口する、例えば、矩形枠状(有底角筒状)に形成されたボックス本体131と、ボックス本体131の側壁131a間に架設された支持壁部132とを備えている。第2ボックス140と対向する側の面132aにフランジ部72が係合した場合に、支持壁部132は、軸部71に保持されたバイオチップ50がボックス本体131の底壁134に当接しない位置に、設けられている。支持壁部132は、軸部71の外周面を保持する孔部133を備えている。孔部133は、支持壁部132を貫通して形成され、第2ボックス140と対向する側に向かって漸次拡径するテーパ形状を備えている。
【0059】
第2ボックス140は、第1ボックス130と対向する側が開口するボックス本体141と、ボックス本体141に設けられた支持凹部142とを備えている。ボックス本体141は、ボックス本体131の側壁131aの内周面と嵌合する側壁141aを備えている。側壁141aの高さは、フランジ部72を下方から支持した状態で側壁141aが第1ボックス130の支持壁部132に当接したときに、軸部71の先端部が孔部133に嵌合保持される値に設定される。また、側壁141aの高さは、軸部71が孔部133に嵌合する前に、ボックス本体131の側壁131aの内周面と嵌合する値に設定されている。
【0060】
支持凹部142は、設置されるアダプター70の数に応じて複数(
図17では3つ)設けられている。支持凹部142は、アダプター70が挿入されたときに、当該アダプター70が位置合わせして固定される位置合わせ部(不図示)を備えている。
【0061】
次に、上記構成で説明したスクリーニング装置SC、アダプター70及びアレイボックス120を用いて、生体分子アレイの処理方法を含むバイオチップ50のスクリーニングを行う方法について、
図16に示す工程図などを参照して説明する。まず、
図16及び
図18に示すように、開口部が上方に向くように載置された第2ボックス140の支持凹部142にアダプター70のフランジ部72が挿入され、アダプター70が第2ボックス140に対して位置合わせされて固定される(ステップS201)。
【0062】
次に、
図16及び
図19に示すように、位置合わせされたアダプター70の軸部71の先端面に接着材73が設けられる(ステップS202)。接着材73は、接着剤や両面テープ等である。
【0063】
次に、上記第1実施形態と同様に、生体分子ウエハW(
図2参照)をダイシング処理して個片化されたバイオチップ50は、マニピュレータ11のノズル16によって吸着保持され、
図16及び
図20に示すように、軸部71の先端面に載置される。これにより、バイオチップ50は、軸部71の先端面に接着固定される(ステップS203)。
【0064】
次に、
図17に示したように、第1実施形態で説明したアーム12(
図2参照)を用いて第1ボックス130が挟持されて移動され、
図17で示したように、第1ボックス130は第2ボックス140に取り付けられる。このとき、軸部71が孔部133に挿入される前に側壁131a、141aが嵌合することによって第1ボックス130と第2ボックス140とが位置合わせされ、軸部71は拡径するテーパ形状を有する孔部133に円滑に挿入されて保持される。
【0065】
図16及び
図21に示すように、第1ボックス130と第2ボックス140とが組み合わせた後、位置合わせ部によるアダプター70の固定を解除した状態で、上記アーム12により第1ボックス130と第2ボックス140との上下関係が反転させられる。これにより、チップアダプター70は、軸部71が孔部133に保持された状態で自重によりフランジ部72が支持壁部132の面132aに係合して支持される位置まで移動する(ステップS204)。
【0066】
この後、第1ボックス130に対して第2ボックス140が取り外される。
図16及び
図22に示すように、上方側にフランジ部72が露出させ、露出面にバイオチップ50の識別情報がマーキングされる(ステップS205)。
【0067】
図16及び
図23に示すように、バイオチップ50に対して連続的な処理が行われる場合、フランジ部72を露出させた後に、上述したマニピュレータ11のノズル16よりもバイオチップ50に対する吸着領域が広いノズル116を備えるマニピュレータ111によってフランジ72の露出面が吸着保持され、アダプター70を介してバイオチップ50が所定位置に移送される(ステップS206)。
【0068】
一方、バイオチップ50に対する連続的な処理が行われることがなくバイオチップ50が出荷される場合には、
図16及び
図24に示すように、第2ボックス140にフランジ部72の露出面に当接する弾性部材151を備える固定蓋150が第1ボックス130に取り付けられる。このようにして、バイオチップ50が梱包されて出荷される(ステップS207)。
【0069】
ステップS206の後、
図16及び
図25に示すように、マニピュレータ111のノズル116に吸着保持されたアダプター70は、軸部71の収容空間80aとフランジ部72が係合する係合面80bとを備える支持容器80に移送される。フランジ部72が係合面80bに係合された後、マニピュレータ111のノズル116によるフランジ部72に対する吸着保持が解除される。そして、例えば、
図8に示した撮像装置23によるバイオチップ50に関する識別情報の撮像・読み取りが行われる(ステップS208)。
【0070】
次に、バイオチップ50の識別情報の読み取り・確認が完了した後、
図16及び
図26に示すように、マニピュレータ111は、フランジ部72を吸着保持し、上記支持容器80と同様に、軸部71が収容される洗浄空間81aと、フランジ部72が係合する係合面81bとを備える洗浄容器81にアダプター70及びバイオチップ50を移送する。洗浄容器81内の洗浄空間81aに洗浄液28が貯溜されているため、マニピュレータ111は、上述した洗浄部7における洗浄処理と同様に、バイオチップ50を洗浄液28に浸漬して洗浄処理を実施する(ステップS209)。
【0071】
バイオチップ50の洗浄処理が完了した後、
図16及び
図27に示すように、マニピュレータ111は、フランジ部72を吸着保持し、上記洗浄容器81と同様に、軸部71が収容される反応空間82aと、フランジ部72が係合する係合面82bとを備える反応容器82にアダプター70及びバイオチップ50を移送する。反応容器82内の反応空間82aに検体53が貯溜されているため、上述した反応部6における反応処理と同様に、マニピュレータ111はアダプター70を介してバイオチップ50を検体53に浸漬させ反応処理を実施する(ステップS210)。
【0072】
また、バイオチップ50の反応処理が完了した後、マニピュレータ111は、フランジ部72を吸着保持し、再度洗浄容器81にバイオチップ50を移送して洗浄処理を実施する。そして、洗浄処理が実施された後に、マニピュレータ111は、フランジ部72を吸着保持した状態で、
図12で示した第1実施形態と同様に、乾燥部8にて乾燥装置28を用いてバイオチップ50に対して乾燥処理を実施する(ステップS211)。
【0073】
乾燥処理が完了した後、
図16及び
図28に示すように、マニピュレータ111は、吸着保持したアダプター70を、計測ステージSTに配された計測用所定位置である支持台161に移送する。支持台161は、アダプター70の軸部71を保持する孔部161aと、フランジ部72が係合する係合面161bとを備える。また、軸部71が孔部161aに挿入され、フランジ部72が係合面161bに係合された後、マニピュレータ111は、アダプター70に対する吸着保持を解除する。アダプター70が支持台161に支持された後、上記第1実施形態と同様に、基板52の生体分子側に設けられた指標マーク(不図示)を撮像装置60が撮像することによってバイオチップ50(生体分子51)に対するアライメント(位置合わせ)が行われ、撮像装置60の焦点合わせ、生体分子51の撮像・計測処理が行われる(ステップS212)。例えば、その計測結果に基づいて生体分子51と上記の標的との親和性(例えば、蛍光発生の有無や蛍光の強度などに基づく反応性や結合性など)が検出される。
【0074】
このように、本実施形態では、上記第1実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、マニピュレータ111がフランジ部72を備えるアダプター70を介して間接的にバイオチップ50を移送、処理するため、バイオチップ50の基板側を直接的に吸着する場合と比較して大きな面積でアダプター70(ひいては、バイオチップ50)を吸着することが可能となる。そのため、本実施形態では、マニピュレータ111は、バイオチップ50を大きな吸着力で強固に、且つ安定して保持した状態で、バイオチップ50を所定位置に移送することやバイオチップ50を所定位置において反応処理を行うこと等が可能となる。また、本実施形態では、フランジ部72が係合した状態で処理を実施しているため、不測の事態が生じたことよってアダプター70に対する吸着が停止された場合、処理中のバイオチップ50が落下して生体分子51が損傷を受けることを低減できる。
【0075】
[第3実施形態]
次に、上述したスクリーニング装置SCを用いた、生体分子アレイの処理方法を含むバイオチップ50のスクリーニング方法の第3実施形態について、
図29乃至
図30を参照して説明する。
これらの図において、
図1乃至
図15に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0076】
第3実施形態は、第1実施形態と比較して反応処理及び計測処理の形態が異なっているため、これらの相違点について説明する。
図29は、第1ボックス30が反応容器として反応部6に設けられた図である。
反応部6における第1ボックス30は、支持凹部33が上方に開口するように配設されている。生体分子51と特異的に反応可能な検体53が支持凹部33における底部側の第2凹部33bに分注装置5によって分注される。例えば、バイオチップ50が底部33cに係合された状態で、バイオチップ50の生体分子51と接触可能な分量の検体53が第2凹部33bに分注される。
【0077】
上記構成では、吸着保持装置26におけるマニピュレータ11は、バイオチップ50の基板側を吸着保持しつつ、第1ボックス30における支持凹部33にバイオチップ50を移送する。これにより、基板52が底部33cに係合するとともに、生体分子51が検体53に接触することによって検体53に含まれる標的と生体分子51との反応処理が行われる。
【0078】
そして、反応処理、洗浄処理及び乾燥処理が完了したバイオチップ50は、
図30に示すように、吸着保持装置29におけるマニピュレータ11によって基板側を吸着保持され、基板52の生体分子側に設けられた指標マーク(不図示)を、撮像装置60によって撮像することによってバイオチップ50(生体分子51)に対するアライメント(位置合わせ)が行われる。このアライメントは、撮像装置60に対してマニピュレータ11を移動させること、又は、マニピュレータ11やバイオチップ50に対して撮像装置60を移動させることで可能である。次に、撮像装置60の焦点合わせ処理、生体分子51の撮像・計測処理が行われる。例えば、その計測結果に基づいて生体分子51と上記の標的との親和性(例えば、蛍光発生の有無や蛍光の強度などに基づく反応性や結合性など)が検出される。また、撮像装置60の視野が生体分子51の配置領域よりも狭い場合には、制御装置CONTは、生体分子51の配置領域の全てを網羅的に計測できるようにマニピュレータ11を移動させて複数回の撮像を実施し、各撮像結果を画像合成させる。また、本実施形態における計測部MSは、マニピュレータ11によってバイオチップ50が吸着保持された状態で、アライメントや生体分子51の計測処理(例、上記の標的と生体分子との親和性の検出)を行うことが可能である。
【0079】
このように、本実施形態においては、上記第1実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、第1ボックス30を反応部6において汎用的に使用することができる。また、本実施形態では、計測部MSにおいて、マニピュレータ11によって計測処理を実施することができ、装置の小型化、低価格化に寄与できる。
【0080】
[第4実施形態]
次に、スクリーニング装置SCを用いた、生体分子アレイの処理方法を含むバイオチップ50のスクリーニング方法の第4実施形態について、
図31などを参照して説明する。
これらの図において、
図1乃至
図15に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0081】
上記第1形態〜第3実施形態では、上述のスクリーニング装置SCは、例えば、マーキング部2、読取部4、分注装置5、反応部6、洗浄部7、乾燥部8、計測部MSの各関連処理部がマニピュレータ11を備える吸着保持装置を具備しており、各部の間に配設された受渡部を介してバイオチップ50を移送する構成である。本実施形態では、
図31に示すように、一基のマニピュレータを備える吸着保持装置80を用いて、バイオチップ50の移送が実施されるとともに、各関連処理部における処理が実施される場合について説明する。
【0082】
図31に示すように、本実施形態のスクリーニング装置SCは、上述したマニピュレータ11、駆動装置14及び吸着装置15と同様の構成を備える吸着保持部80を中心にして、マーキング部2、読取部4、分注装置5、反応部6、洗浄部7、乾燥部8、計測部MSの各々の関連処理部が吸着保持部80の周囲を取り囲むように環状に順次配設されている。
【0083】
吸着保持部80は、各関連処理部に対して前工程の処理が完了したバイオチップ50を吸着保持して移送し、吸着保持した状態で当該関連処理部における処理を行わせる。当該関連処理部における処理が完了した後、吸着保持部80は、バイオチップ50を吸着保持した状態で次の処理を行う関連処理部にバイオチップ50を移送し、バイオチップ50を吸着保持した状態で当該関連処理部における処理を行わせることを繰り返す。
【0084】
このように、本実施形態では、一基の吸着保持部80によってバイオチップ50を吸着保持した状態で関連処理を完了させることができるため、装置の大幅な小型化、低価格化が可能となる。
また、本実施形態では、吸着保持部80と各関連処理部との間に上述した受渡部を設けずに、吸着保持部80が各関連処理部にバイオチップ50を移送して各関連処理を実施させることにより、さらなる装置の小型化、低価格化が可能となる。また、例えば、別のバイオチップ50の生体分子51と別の検体53に含まれる標的との反応処理が上記の反応処理の後に続けて実施される場合、マニピュレータ11がノズル16を取り外して新しい清潔なノズル16を取り付けることによって、検査する検体53が変わる毎にマニピュレータ11やノズル16を洗浄する必要がなくなる。これによって、反応処理における効率が向上し、処理工程におけるコストが下がる。
【0085】
なお、上述したように、各関連処理部の間に設けた受渡部を介してバイオチップ50が移送される手順や、吸着保持部80により各関連処理部に直接バイオチップ50が移送される手順の他に、各関連処理部において関連処理が施されたバイオチップ50が移送された第1ボックス30を、関連処理部の間に設けた上記アーム12を備えるロボット装置13がバイオチップ50を有する第1ボックス30を移送する手順としてもよい。この構成を採ることにより、各関連処理部に設けた吸着保持部(マニピュレータ11)の移動距離を短くすることができ、吸着保持部の小型化に寄与することができる。
【0086】
[第5実施形態]
次に、スクリーニング装置SCを用いた、生体分子アレイの処理方法を含むバイオチップ50のスクリーニング方法の第5実施形態について、
図32乃至
図36を参照して説明する。
これらの図において、
図1乃至
図15に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0087】
上記第1実施形態では、バイオチップ50がマニピュレータ11によって一つずつ移送されて関連処理が施される手順を例示したが、本実施形態では複数(ここでは3つ)のバイオチップ50がマニピュレータ11によって一体的で一括的に移送されて関連処理が施される例について説明する。
【0088】
図32は、一例として、受渡部3に配置された第1ボックス30と、第1ボックス30に対してバイオチップ50を移送する移載装置22とを示す図である。
移載装置22は、支持凹部33の配列ピッチに対応させて配置された複数(ここでは)3つのマニピュレータ11を備えている。3つのマニピュレータ11は、脱着可能なノズル16をそれぞれ備え、水平方向に延在するリジッドな懸架部18によって一括的(または一体的)に固定されている。
【0089】
図33は、一例として、洗浄部7に配置され洗浄液28をそれぞれ貯溜する複数(ここでは3つ)の洗浄容器27と、吸着保持装置26と、を示す図である。吸着保持装置26は、洗浄容器27の配列ピッチに対応させて配置された複数(ここでは3つ)のマニピュレータ11と、水平方向に延在し3つのマニピュレータ11を一括的に固定する懸架部18とを備えている。
【0090】
図34は、一例として、反応部6に配置され検体53をそれぞれ貯溜する複数(ここでは3つ)の反応容器25と、上記の吸着保持装置26と、を示す図である。反応容器25の配列ピッチは、3つのマニピュレータ11の配列ピッチに対応している。
【0091】
また、
図35は、一例として、乾燥部8に配置された複数(ここでは3つ)の乾燥装置28と、上記の吸着保持装置26とを示す図である。乾燥装置28の配列ピッチは、3つのマニピュレータ11の配列ピッチに対応している。
【0092】
図36は、一例として、計測部MSに配置された計測ステージSTと、吸着保持装置29と撮像装置60とを示す図である。計測ステージSTは、複数(ここでは3つ)のバイオチップ50の生体分子側の周縁部を下方から支持する複数の支持台61を備えている。支持台61には、バイオチップ50が支持された時に、計測対象となる生体分子51に臨んで開口するように鉛直方向に貫通する複数(ここでは3つ)の貫通孔61aが形成されている。吸着保持装置29は、バイオチップ50の支持部及び貫通孔61aの配列ピッチに対応させて配置された複数(ここでは3つ)のマニピュレータ11と、水平方向に延在し3つのマニピュレータ11を一括的に固定する懸架部18とを備えている。なお、
図36に示した撮像装置60は、検出するバイオチップ50の数に応じて、複数配置されてもよい。
【0093】
上記構成のスクリーニング装置SCにおいて、受渡部3における移載装置22による第1ボックス30との間のバイオチップ50の移送、洗浄部7における吸着保持装置26による洗浄容器27へのバイオチップ50の移送及び洗浄処理、反応部6における吸着保持装置26による反応容器25へのバイオチップ50の移送及び反応処理、乾燥部8における吸着保持装置26による乾燥装置28の処理位置へのバイオチップ50の移送及び乾燥処理、計測部MSにおける吸着保持装置29による支持台61へのバイオチップ50の移送、およびバイオチップ50の計測は、複数(ここでは3つ)のバイオチップ50に対して一括的に実施される。
従って、本実施形態では、多数のバイオチップ50に対するスクリーニング処理を短時間で実施することが可能である。
【0094】
[第6実施形態]
次に、スクリーニング装置SCを用いた、生体分子アレイの処理方法を含むバイオチップ50のスクリーニング方法の第6実施形態について、
図37乃至
図42を参照して説明する。
これらの図において、
図1乃至
図15に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0095】
本実施形態では、パイプライン方式を用いて3つのバイオチップ50A〜50Cを順次スクリーニング処理する場合について説明する。本実施形態では、受渡部9、反応部6、洗浄部7、乾燥部8、計測部MSに亘ってパイプライン方式によるスクリーニング処理について説明する。また、ここでは、一例として、反応部6に二つの反応容器25A、25Bが配設され、洗浄部7に二つの洗浄容器27A、27Bが配設され、反応処理が完了したバイオチップ50に対して直ちに乾燥処理が実施される。
【0096】
まず、
図37に示すように、受渡部9における第1ボックス30に実装されたバイオチップ50Aが吸着保持装置26のマニピュレータ11によって吸着保持して洗浄部7に移送され、バイオチップ50Aが洗浄部7における洗浄容器27Aの洗浄液28に浸漬される。次に、マニピュレータ11は洗浄容器27Aにおけるバイオチップ50Aへの吸着保持を解除し、
図38に示すように、吸着保持装置26のマニピュレータ11は第1ボックス30に実装されたバイオチップ50Bを吸着保持して移送し、洗浄部7における洗浄容器27Bの洗浄液28にバイオチップ50Bを浸漬する。なお、マニピュレータ11によるバイオチップ50Aとバイオチップ50Bとの上記の処理において、マニピュレータ11のノズル16は異物のコンタミの観点からそれらの処理前に交換又は洗浄してもよい。
【0097】
次に、
図39に示すように、マニピュレータ11は、洗浄処理が完了した洗浄容器27A内のバイオチップ50Aをマニピュレータ11で吸着保持して反応部6に移送し、反応部6における反応容器25Aの検体53にバイオチップ50Aを浸漬する。検体53にバイオチップ50Aを浸漬したマニピュレータ11は、バイオチップ50Aに対する吸着保持を解除した後に、第1ボックス30からバイオチップ50Cを吸着保持して洗浄部7に移送し、
図40に示すように、洗浄部7における洗浄容器27Aの洗浄液28にバイオチップ50Cを浸漬する。そして、洗浄液28に浸漬したバイオチップ50Cに対する吸着保持を解除したマニピュレータ11は、洗浄処理が完了した洗浄容器27B内のバイオチップ50Bを吸着保持して反応部6に移送し、反応部6における反応容器25Bの検体53にバイオチップ50Bを浸漬する。
【0098】
次に、マニピュレータ11は、
図41に示すように、反応処理が完了したバイオチップ50Aを吸着保持して、乾燥部8における乾燥装置28と対向する位置にバイオチップ50Aを移送する。そして、乾燥処理が行われたバイオチップ50Aは、マニピュレータ11によって上述した計測部MSに移送されて計測処理が行われる。計測処理が完了したバイオチップ50Aは、マニピュレータ11によって保管用の第1ボックスに移送される。
【0099】
計測部MSへのバイオチップ50Aの移送処理が完了したマニピュレータ11は、バイオチップ50Aに対する吸着保持を解除した後に、洗浄処理が完了した洗浄容器27A内のバイオチップ50Cを吸着保持して反応部6に移送し、
図42に示すように、反応部6における反応容器25Aの検体53にバイオチップ50Cを浸漬する。次に、検体53に浸漬したバイオチップ50Cに対する吸着保持を解除したマニピュレータ11は、反応処理が完了した反応容器25B内のバイオチップ50Bを吸着保持して乾燥部8に移送し、乾燥部8における乾燥装置28と対向する位置にバイオチップ50Bを移送する。そして、乾燥処理が行われたバイオチップ50Bはマニピュレータ11によって上述した計測部MSに移送されて計測処理が行われる。なお、マニピュレータ11によるバイオチップ50Aとバイオチップ50Bとバイオチップ50Cとの上記の処理において、マニピュレータ11のノズル16は、検体のコンタミの観点から、それらの処理前に交換又は洗浄してもよい。交換又は洗浄したノズル16は、上述の関連処理において使用された後に廃棄されるため、消耗品である。
【0100】
この後、マニピュレータ11は、バイオチップ50C及び他のバイオチップ50Dなどについても、一つの処理が完了次第、順次、次工程の関連処理部にバイオチップ50を移送し、当該関連処理を行うことにより、マニピュレータ11を単一で用いた場合でも、効率的なスクリーニングを実行することが可能となる。
【0101】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0102】
例えば、上記実施形態では、アレイボックス20が複数(図では3つ)のバイオチップ50を支持可能として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば一つのバイオチップ50のみを支持可能な構成としてもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、バイオチップ50を負圧吸引にて吸着保持する構成を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、電磁石の磁力を用いた磁着保持や静電力を用いた静電保持のような吸着保持を行う構成であってもよい。
また、上記実施形態のマニピュレータ11は、バイオチップ50やアダプター70をノズル16によって吸着保持することができるため、バイオチップ50やアダプター70を容易にハンドリングできる。
【0104】
また、上記実施形態では、計測部MSを一基のみ設ける構成を例示したが、これに限定されるものではなく、複数のマニピュレータ11や複数の反応容器25などを用いた場合と同様に、独立して計測可能に計測部MSを複数設ける構成であってもよい。この場合、複数の計測部MSの間で計測結果に誤差が生じる可能性があるため、例えば、各計測部MSは、同じ計測対象に関して予め計測し、全計測結果から計測部MS毎の補正値を求める。実計測時には、各計測部MSは、各計測部MSで得られた計測結果を、各計測部MSに対応する補正値で補正すればよい。
【0105】
また、上記実施形態では、複数のマニピュレータ11が懸架部18によって一体的又は一括的に移動可能な構成を例示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、
図43に示すように、スクリーニングの進捗度合いや各関連処理(例、反応処理や計測処理)におけるバイオチップ50の処理速度などに応じて、それぞれのマニピュレータ11が互いに独立して3次元的(或いは、1次元的又は2次元的)に移動可能に設け、例えば上述した反応処理や計測処理、パイプライン方式のスクリーニングを実施する構成であってもよい。また、
図36に示した計測ステージSTに配置された複数の支持台61や
図44のような複数の撮像装置60は、スクリーニングの進捗度合いや各関連処理におけるバイオチップ50の処理速度などに応じて、互いに独立して3次元的(或いは、1次元的又は2次元的)に移動可能に設け、例えば上述したパイプライン方式のスクリーニングを実施する構成であってもよい。また、
図44に示すように、例えば、計測部(検出装置)MSは、懸架部18によって一体的に形成された複数のマニピュレータ11と、互いに独立して3次元的(或いは、1次元的又は2次元的)に移動可能な複数の撮像装置60と、を備える構成であってもよい。
図44のような構成においてバイオチップ50を計測する時、計測部(検出装置)MSは、撮像装置60を所定の方向に移動させることによって、バイオチップ50に対する計測のアライメントやフォーカス合わせが可能である。更に、例えば、計測部(検出装置)MSは、
図44の構成において懸架部18を
図43のように排除し、複数のマニピュレータ11及び複数の撮像装置60がそれぞれ独立して3次元的(或いは、1次元的又は2次元的)に移動可能な構成であってもよい。
さらに、上述したマニピュレータ11、実装部1、マーキング部2、読取部4、分注装置5、反応部6、洗浄部7、乾燥部8、計測部MS等からなる装置群を複数セット設けてスクリーニングを実施する構成であってもよい。このような構成では、例えば補助的なマニピュレータを用意するとともに、各装置群の負荷状況をモニターしておき、負荷が大きな装置群が発生した場合には補助マニピュレータが適宜当該装置群における移送を補助するような構成としてもよい。
また、上記実施形態におけるマニピュレータ11は、各関連処理(例、分注処理、反応処理、計測処理など)において、同じマニピュレータで兼用して用いられる構成でもよい。この場合、マニピュレータ11のノズル16は、検体又は異物のコンタミネーションの観点から、関連処理ごとに脱着して交換することが望ましい。