特許第6221285号(P6221285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221285
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】回路部材の接続方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/14 20060101AFI20171023BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   H05K1/14 J
   H05K3/32 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-58054(P2013-58054)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-183266(P2014-183266A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】有福 征宏
(72)【発明者】
【氏名】川上 晋
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−253282(JP,A)
【文献】 特開2009−194359(JP,A)
【文献】 特開2011−233528(JP,A)
【文献】 特開2007−041389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/14
H05K 3/32 〜 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
突出量が3μm以下の電極が形成された第1の回路部材及び第2の回路部材を、導電粒子及び接着剤成分を含む異方導電性接着剤を介して接続する回路部材の接続方法であって、
前記異方導電性接着剤の前記接着剤成分として光硬化型樹脂を用い、
前記電極同士が対向するように前記異方導電性接着剤を挟んで前記第1の回路部材と前記第2の回路部材とを積層し、
前記異方導電性接着剤に熱を付与しながら前記第1の回路部材と前記第2の回路部材とに積層方向の圧力を付与し、その後に前記異方導電性接着剤に光を照射することによって、前記異方導電性接着剤の粘度を瞬時に上昇させて前記第1の回路部材と前記第2の回路部材との接合を完了させることを特徴とする回路部材の接続方法。
【請求項2】
前記第1の回路部材の電極と前記第2の回路部材の電極との間の間隔が前記導電粒子の径の1.5倍以下となるように前記電極同士を対向させることを特徴とする請求項1記載の回路部材の接続方法。
【請求項3】
前記第1の回路部材と前記第2の回路部材との積層方向から見て中央部分に位置する前記異方導電性接着剤が、前記熱及び前記圧力の付与によって流動を開始した後に前記異方導電性接着剤に光を照射することを特徴とする請求項1又は2記載の回路部材の接続方法。
【請求項4】
前記熱及び前記圧力の付与から1秒以上経過した後に前記異方導電性接着剤に光を照射することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の回路部材の接続方法。
【請求項5】
前記第1の回路部材及び前記第2の回路部材の少なくとも一方の基板に光透過性を有する部材を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の回路部材の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路部材の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶ディスプレイ等の基板とICチップやFCP(フレキシブル印刷配線板)といった回路部材との接続には、接着剤中に導電粒子を分散させた異方導電性接着剤が用いられている(例えば特許文献1,2参照)。回路部材を基板に実装するにあたり、従前のワイヤーボンディングに代えて、電極をフェイスダウンで直接接続する接続方法が採用されてきている。かかる接続方法では、異方導電性接着剤を介して回路部材の電極と基板の電極とを対向させ、回路部材と基板とに圧力を付与しながら熱で異方導電性接着剤を硬化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−253217号公報
【特許文献2】特開2003−253239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、電子機器の小型化・薄型化の要求に伴い、回路部材の電極の間隔や電極幅が非常に小さくなってきている。また、コスト低減等の観点から、電極の薄化も顕著となってきており、電極の厚さが例えば3μm以下の極薄電極を用いた回路部材や、電極の一部又は全部を基板に埋没させることで電極の突出量を小さくした回路部材などが検討されている。
【0005】
しかしながら、電極の突出量が小さい回路部材を用いて接続を行う場合、圧力を付与したときの異方導電性接着剤の流動性が確保されにくいという問題があった。従来のように、一定の厚さの電極が形成されている場合には、電極自体が堰のような役割を果たし、圧力を付与したときに異方導電性接着剤が電極の側面に沿って流動する。これに対し、電極の突出量が小さい場合には、異方導電性接着剤の流動に方向性がなくなり、これに起因して流動性の低下が生じる。このため、従来の方法では、回路部材が導電粒子によって電気的に接続される前に異方導電性接着剤の硬化が生じ、良好な導通を確保することが困難となるおそれがあった。導通の確保のために、熱及び圧力の付与時間を長くすることも考えられるが、この場合、接続に要する時間が長くなってしまう問題が生じることとなる。
【0006】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、電極の突出量が小さい場合であっても導通を迅速かつ良好に確保できる回路部材の接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決のため、本発明に係る回路部材の接続方法は、突出量が3μm以下の電極が形成された第1の回路部材及び第2の回路部材を、導電粒子及び接着剤成分を含む異方導電性接着剤を介して接続する回路部材の接続方法であって、異方導電性接着剤の接着剤成分として光硬化型樹脂を用い、電極同士が対向するように異方導電性接着剤を挟んで第1の回路部材と第2の回路部材とを積層し、異方導電性接着剤に熱を付与しながら第1の回路部材と第2の回路部材とに積層方向の圧力を付与し、その後に異方導電性接着剤に光を照射することを特徴としている。
【0008】
この回路部材の接続方法では、異方導電性接着剤に熱を付与しながら第1の回路部材と第2の回路部材とに積層方向の圧力を付与し、その後に異方導電性接着剤に光を照射する。この方法では、熱及び圧力の付与によって、第1の回路部材と第2の回路部材との間の導通が確保されるまで異方導電性接着剤を十分に流動させた後、導通が確保されたタイミングで光の照射によって異方導電性接着剤の粘度を瞬時に上昇させて接合を完了させることができる。したがって、電極の突出量が小さい場合であっても導通を迅速かつ良好に確保できる。
【0009】
また、第1の回路部材の電極と第2の回路部材の電極との間の間隔が導電粒子の径の1.5倍以下となるように電極同士を対向させることが好ましい。この場合、圧力の付与によって第1の回路部材の電極と第2の回路部材の電極との間で導電粒子が十分に噛合し、より良好な導通を実現できる。
【0010】
また、第1の回路部材と第2の回路部材との積層方向から見て中央部分に位置する異方導電性接着剤が、熱及び圧力の付与によって流動を開始した後に異方導電性接着剤に光を照射することが好ましい。この場合、異方導電性接着剤を十分に流動させた後に異方導電性接着剤が硬化するので、導通を迅速かつ良好に確保できる。
【0011】
また、熱及び圧力の付与から1秒以上経過した後に異方導電性接着剤に光を照射することが好ましい。この場合、異方導電性接着剤を十分に流動させた後に異方導電性接着剤が硬化するので、導通を迅速かつ良好に確保できる。
【0012】
また、第1の回路部材及び第2の回路部材の少なくとも一方の基板に光透過性を有する部材を用いることが好ましい。こうすると、基板を通して異方導電性接着剤に光を簡便に照射できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る回路部材の接続方法によれば、電極の突出量が小さい場合であっても基板との導通を迅速かつ良好に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る回路部材の接続方法を適用して形成される接続構造体の一例を示す断面図である。
図2図1に示した接続構造体の接続部分の拡大断面図である。
図3】回路部材の接続工程を示す断面図である。
図4図3の後続の工程を示す断面図である。
図5図4の後続の工程を示す断面図である。
図6】熱及び圧力の付与のタイミングと光の照射のタイミングとの関係を示す図である。
図7】異方導電性接着剤の流動の様子を示す図である。
図8】従来の手法における回路部材の接合のタイミングを示す図である。
図9】接続構造体の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る回路部材の接続方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る回路部材の接続方法を適用して形成される接続構造体の一例を示す断面図である。同図に示すように、接続構造体1は、互いに対向する第1の回路部材2と第2の回路部材3とを異方導電性接着剤層4によって接合することによって構成されている。
【0017】
第1の回路部材2は、例えばICチップ、LSIチップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等といったチップ部品である。第1の回路部材2において、第2の回路部材3と対向する面は、実装面2aとなっている。実装面2aには、3μm以下の厚さで突出するバンプ電極5が所定の間隔で複数形成されている。第1の回路部材2の本体部6の形成材料には例えばシリコン等が用いられる。また、バンプ電極5の形成材料には例えばAu等が用いられる。バンプ電極5は、異方導電性接着剤層4に含有される導電粒子7よりも変形し易くなっていることが好ましい。
【0018】
第2の回路部材3は、例えば第1の回路部材2に電気的に接続される回路電極8を有する部材である。第2の回路部材3は、光透過性を有する基板9を有している。基板9としては、ガラス基板、ポリイミド基板、ポリエチレンテレフタラート基板、ポリカーボネート基板、ポリエチレンナフタレート基板、ガラス強化エポキシ基板、紙フェノール基板、セラミック基板、積層板が用いられる。これらの中でも、紫外光に対する透過性に優れるガラス基板、ポリエチレンテレフタラート基板、ポリカーボネート基板、ポリエチレンナフタレート基板を用いることが好ましい。
【0019】
基板9において、第1の回路部材2と対向する面は、実装面3aとなっている。実装面3aには、3μm以下の厚さで突出する回路電極8がバンプ電極5に対応する間隔で複数形成されている。回路電極8の表面は、例えば金、銀、錫、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金及びインジウム錫酸化物(ITO)から選ばれる1種或いは2種以上の材料で構成されている。
【0020】
異方導電性接着剤層4は、例えば光硬化性成分を含有する接着剤成分、及び導電粒子7を含んで形成される。光硬化性成分としては、光硬化性を示す樹脂であれば特に限定されないが、例えばアクリレート及びメタクリレート樹脂の光ラジカル発生剤による光ラジカル重合や、エポキシ樹脂及びオキセタンに代表される環状エーテル化合物の光酸発生剤による光カチオン重合、光塩基発生剤による光アニオン重合などを使用できる。また、熱ラジカル発生剤、熱塩基発生剤、熱酸発生剤を、光ラジカル発生剤、光塩基発生剤、光酸発生剤と併用することもできる。
【0021】
アクリレート及びメタクリレート樹脂としては、例えばエポキシアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエーテルアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー等の光重合性オリゴマーや、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート等の光重合性多官能アクリレートモノマー等のアクリル酸エステル、及びこれらと類似したメタクリル酸エステル等に代表される光重合型の樹脂が挙げられる。必要に応じてこれらの樹脂を単独あるいは混合して用いてもよい。接着剤硬化物の硬化収縮を抑制して柔軟性を与えるためには、ウレタンアクリレートオリゴマーを配合することが好ましい。
【0022】
また、上述した光重合性オリゴマーは高粘度であるため、粘度調整のために低粘度の光重合性多官能アクリレートモノマー等のモノマーを配合することが好ましい。環状エーテル化合物としては、例えばエポキシ系樹脂及びオキセタン化合物が好適に使用できる。エポキシ系樹脂としては、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型、脂環式等の液状又は固形のエポキシ樹脂を好適に使用できる。特に、脂環式エポキシ樹脂を使用した場合、紫外線照射で硬化させるときの硬化速度を上げることが可能となる。
【0023】
オキセタン化合物としては、例えばキシリレンジオキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタンビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル等を使用できる。
【0024】
光ラジカル発生剤としては、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル等のベンゾインエーテル、ベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のベンジルケタール、ベンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン類及びその誘導体、チオキサントン類、ビイミダゾール類等が挙げられる。これらの光開始剤に、必要に応じてアミン類、イオウ化合物、リン化合物等の増感剤を任意の比で添加してもよい。この際、用いる光源の波長や所望の硬化特性等に応じて最適な光ラジカル発生剤を選択する必要がある。
【0025】
光塩基発生剤は、紫外線や可視光などの光照射によって分子構造が変化し、或いは分子内で開裂が起こることによって、速やかに1種類以上の塩基性物質又は塩基性物質に類似する物質を生成する化合物である。ここでいう塩基性物質は、1級アミン類、2級アミン類、3級アミン類、並びにこれらのアミン類が1分子中に2個以上存在するポリアミン類及びその誘導体、イミダゾール類、ピリジン類、モルホリン類及びその誘導体である。また、2種類以上の光照射によって塩基性物質を発生する化合物を併用してもよい。
【0026】
また、α−アミノアセトフェノン骨格を有する化合物を好適に用いることができる。当該骨格を有する化合物は、分子中にベンゾインエーテル結合を有しているため、光照射によって分子内で容易に開裂し、これが塩基性物質として作用する。α−アミノアセトフェノン骨格を有する化合物の具体例としては、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン(チバスペシャリティケミカルズ社製:イルガキュア369)や、4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン(チバスペシャリティケミカルズ社製:イルガキュア907)などの市販の化合物、又はその溶液が挙げられる。
【0027】
光酸発生剤は、光照射によって酸を発生する化合物であれば、特に制限無く公知の化合物を使用することができる。光酸発生剤としては、例えばアリールジアゾニウム塩誘導体、ジアリールヨードニウム塩誘導体、トリアリールスルホニウム塩誘導体、トリアルキルスルホニウム塩誘導体、アリールジアルキルスルホニウム塩誘導体、トリアリールセレノニウム塩誘導体、トリアリールスルホキソニウム塩誘導体、アリーロキシジアリールスルホキソニウム塩誘導体、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩誘導体等のオニウム塩や、鉄−アレーン錯体を用いることができる。
【0028】
また、トリアリールシリルパーオキサイド誘導体、アシルシラン誘導体、α−スルホニロキシケトン誘導体、α−ヒドロキシメチルベンゾイン誘導体、ニトロベンジルエステル誘導体、α−スルホニルアセトフェノン誘導体など、光照射又は加熱によって有機酸を発生する化合物を使用することができる。特に、光照射又は加熱時の酸発生効率の観点から、旭電化工業株式会社アデカオプトマーSPシリーズ、旭電化工業株式会社アデカオプトンCPシリーズ、UnionCarbide社製CyracureUVIシリーズ、チバスペシャリティケミカルズ社製Irgacureシリーズを用いることが好ましい。さらに、必要に応じて、アントラセンやチオキサントン誘導体に代表される公知の一重項増感剤や三重項増感剤を併用できる。
【0029】
光ラジカル発生剤、光塩基発生剤、光酸発生剤の配合量は、接着剤組成物100重量%中、0.01重量部〜30重量部で配合することが好ましい。0.01重量部未満では硬化不足となり、接着力が低下するおそれがある。また、30重量部を超えると、比較的低分子量物が多くなるため、硬化性成分が表面に染み出して接着力が低下するおそれがある。
【0030】
接続構造体1において、導電粒子7は、図2に示すように、僅かに扁平に変形しつつ、第1の回路部材2のバンプ電極5と第2の回路部材3の回路電極8とに食い込むようにしてバンプ電極5と回路電極8との間に介在している。これにより、第1の回路部材2のバンプ電極5と第2の回路部材3の回路電極8との間の電気的な接続が実現されると同時に、バンプ電極5,5間の電気的な絶縁及び回路電極8,8間の電気的な絶縁が実現されている。
【0031】
導電粒子7としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン、又はガラス、セラミック、プラスチックの非導電粒子にAu、Ag、白金等の貴金属類を被覆した粒子が使用される。金属粒子の場合には表面の酸化を抑えるため、貴金属類で被覆したものが好ましい。かかる粒子のなかで、プラスチックを核体としてAu、Ag等で被覆した粒子や熱溶融金属粒子は、接続時の加熱加圧によって変形し易い。したがって、バンプ電極5及び回路電極8の高さバラツキが吸収され、接触面積が増加して信頼性が向上するので好ましい。貴金属類の被覆層の厚さは、100Å以上、好ましくは300Å以上であれば、良好な接続が得られる。
【0032】
また、導電粒子7のめっき最外層の表面に、粒径が20nm〜500nm程度の絶縁微粒子が配置されていることが好ましい。絶縁微粒子は、有機化合物、無機酸化物のいずれであってもよく、両方を混合したものであってもよい。絶縁微粒子の粒径は、BET法による比表面積換算法、又はX線小角散乱法によって測定可能である。平均粒径が20nm未満である場合、絶縁性微粒子が絶縁膜として作用せずに回路電極8,8間の一部が短絡するおそれがある。一方、平均粒径が500nmを超えると、バンプ電極5,5間で十分な導電性が得られなくなるおそれがある。
【0033】
導電粒子7は、接着剤成分100体積に対して、例えば0.1〜50体積%、より好ましくは0.1〜10体積%の範囲で用途により適宜配合される。これにより、バンプ電極5と回路電極8との間に十分な数の導電粒子7を介在させることができる。
【0034】
また、異方導電性接着剤層4の厚みは、例えば2μm〜50μmであることが好ましい。異方導電性接着剤層4の厚みが2μm未満の場合、第1の回路部材2と第2の回路部材3との間の異方導電性接着剤層4が充填不足となるおそれがある。一方、異方導電性接着剤層4の厚みが50μmを超えると、第1の回路部材2と第2の回路部材3との間の導通の確保が困難となるおそれがある。
【0035】
続いて、上述した接続構造体1の形成に用いる回路部材の接続方法について説明する。
【0036】
接続構造体1の形成にあたっては、まず、図3に示すように、第2の回路部材3の実装面3a側に異方導電性接着剤層4を配置する。異方導電性接着剤層4の配置は、異方導電性フィルムのラミネートによって実施してもよく、異方導電性ペーストの塗布によって実施してもよい。次に、バンプ電極5と回路電極8とが対向するように、異方導電性接着剤層4を挟んで第1の回路部材2を第2の回路部材3上に積層し、積層体10を得る。このとき、バンプ電極5と回路電極8との間の間隔が導電粒子7の径の1.5倍以下となるようにバンプ電極5と回路電極8とを対向させることが好ましい。なお、ここでの導電粒子7の径とは、例えば導電粒子7の平均粒径を指す。
【0037】
第1の回路部材2を第2の回路部材3上に積層した後、熱圧着装置を用い、図4に示すように、異方導電性接着剤層4に熱11を付与しながら第1の回路部材2と第2の回路部材3とに積層方向の圧力12を付与し、積層体10の熱圧着を開始する。これにより、異方導電性接着剤層4の接着剤成分が流動して第1の回路部材2と第2の回路部材3との間の間隔が狭まり、バンプ電極5と回路電極8とに挟まれて導電粒子7が扁平に変形しながらバンプ電極5及び回路電極8のそれぞれに食い込み、バンプ電極5と回路電極8との間の導通が確保される。
【0038】
その後、図5に示すように、積層体10に向けて光13を照射する。光13としては、例えば紫外光を用いることができる。光13の照射により、異方導電性接着剤層4の接着剤成分が硬化し、バンプ電極5と回路電極8との間の導通が確保されたタイミングで第1の回路部材2と第2の回路部材3とが接合される。これにより、図1に示した接続構造体1が形成される。
【0039】
接着剤成分の硬化に用いる光13としては、紫外線のほか、例えば水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ等を用いることができる。硬化反応としてラジカル反応を用いた場合、酸素が反応禁止剤として作用するので、光照射の雰囲気中の酸素量は光硬化性樹脂の硬化に影響を与える。このことは、光硬化性樹脂、光開始剤、増感剤等の種類や濃度にも大きく左右されるので、個々の配合系で詳細に検討する必要がある。
【0040】
また、異方導電性接着剤層4に対する光13の照射方法は、例えば第2の回路部材3の基板9に光を入射させる方法が挙げられる。基板9は、光透過性を有しているため、基板9に光を入射させることで異方導電性接着剤層4への光の照射を効率良く実施できる。この場合、熱圧着装置において、積層体10の載置面を光反射面とし、第2の回路部材3の基板9を光反射面と対向させて載置面に載置するようにしてもよい。こうすると、光反射面によって異方導電性接着剤層4への光13の入射をより均一化させることができる。
【0041】
図6に示すように、熱11及び圧力12の付与のタイミングを時刻tとし、光13の照射のタイミングを時刻tとした場合、時刻tは、第1の回路部材2と第2の回路部材3との積層方向から見て中央部分に位置する異方導電性接着剤(図7参照)が、熱11及び圧力12の付与によって流動を開始した時刻とすることが好ましい。異方導電性接着剤の流動の確認にあたっては、例えば熱圧着装置のステージを耐熱性及び剛性を有する透明物質(例えば石英)で構成し、ステージの下方に拡大レンズを備えたビデオカメラを設置することで観察が可能となる。また、時刻tは、異方導電性接着剤の流動が開始する時刻を予め実験的に求め、tから所定時間経過した時刻をtとしてもよい。この場合の時刻tは、時刻tから1秒以上経過した後であることが好ましい。
【0042】
従来、一定の厚さの電極が回路部材に形成されている場合には、電極自体が堰のような役割を果たし、圧力を付与したときに異方導電性接着剤が電極の側面に沿って流動していた。これに対し、電極の突出量が3μm以下となる場合には、図7に示すように、異方導電性接着剤の流動に方向性がなくなり、これに起因して流動性の低下が生じるという問題があった。この場合、端部側の異方導電性接着剤が十分に排除された後でなければ中央側の異方導電性接着剤が流動せず、中央側に行くほど異方導電性接着剤の流動性が低下する傾向があった。
【0043】
従来のように熱圧着のみによって回路部材同士を接合しようとする際、一定の厚さの電極を有する回路部材を接合する場合には、図8に示すように、異方導電性接着剤の粘度が一旦低下して再び上昇する温度Tで回路部材の接合を完了できたが、電極の突出量が3μm以下となる場合には、中央側の異方導電性接着剤が流動するのを待つ必要があるため、回路部材が導電粒子によって電気的に接続される前に異方導電性接着剤が硬化する温度Tに達してしまい、良好な導通を確保することが困難となるおそれがあった。
【0044】
これに対し、本実施形態に係る回路部材の接続方法では、異方導電性接着剤層4に熱11を付与しながら第1の回路部材2と第2の回路部材3とに積層方向の圧力12を付与し、その後に異方導電性接着剤層4に光13を照射する。この方法では、熱11及び圧力12の付与によって、第1の回路部材2と第2の回路部材3との間の導通が確保されるまで異方導電性接着剤層4を十分に流動させた後、導通が確保されたタイミングで光13の照射によって異方導電性接着剤層4の粘度を瞬時に上昇させて接合を完了させることができる。したがって、バンプ電極5及び回路電極8の突出量が小さい場合であっても導通を迅速かつ良好に確保できる。
【0045】
また、本実施形態では、第1の回路部材2のバンプ電極5と第2の回路部材3の回路電極8との間の間隔が導電粒子7の径の1.5倍以下となるようにバンプ電極5と回路電極8とを対向させている。したがって、圧力12の付与によってバンプ電極5と回路電極8との間で導電粒子7が十分に噛合し、より良好な導通を実現できる。
【0046】
また、本実施形態では、第1の回路部材2と第2の回路部材3との積層方向から見て中央部分に位置する異方導電性接着剤が、熱11及び圧力12の付与によって流動を開始した後、又は、熱11及び圧力12の付与から1秒以上経過した後に異方導電性接着剤層4に光13を照射している。これにより、異方導電性接着剤を十分に流動させた後に異方導電性接着剤層4が硬化するので、導通を迅速かつ良好に確保できる。
【0047】
また、本実施形態では、第2の回路部材3の基板9として光透過性を有する部材を用いている。これにより、基板9を通して異方導電性接着剤層4に光13を簡便に照射できる。
【0048】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、バンプ電極5及び回路電極8が実装面2a,3aからそれぞれ突出している形態を例示したが、本発明は、例えば図9に示す接続構造体21のように、バンプ電極5及び回路電極8が実装面2a,3aに埋没している形態についても適用可能である。この場合であっても、熱11及び圧力12の付与後に光13を異方導電性接着剤層4に照射することで、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0049】
1,21…接続構造体、2…第1の回路部材、3…第2の回路部材、4…異方導電性接着剤層、5…バンプ電極、6…回路電極、7…導電粒子、9…基板、11…熱、12…圧力、13…光。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9