特許第6221289号(P6221289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6221289エポキシ樹脂、エポキシ樹脂の製造方法、エポキシ樹脂組成物、その硬化物、及び放熱樹脂材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221289
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂、エポキシ樹脂の製造方法、エポキシ樹脂組成物、その硬化物、及び放熱樹脂材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/04 20060101AFI20171023BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20171023BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20171023BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20171023BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20171023BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20171023BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   C08G59/04
   C08L63/00 C
   C08J5/24CFC
   H01L23/36 M
   H01L23/30 R
   H05K1/03 610L
【請求項の数】7
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-62040(P2013-62040)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-185271(P2014-185271A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】有田 和郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悦子
【審査官】 江間 正起
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−278129(JP,A)
【文献】 特開2012−111807(JP,A)
【文献】 特開2006−124420(JP,A)
【文献】 特開2006−335796(JP,A)
【文献】 特開2009−242572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/04−59/08
C08J 5/24
C08L 63/00−63/10
H01L 23/29
H01L 23/31
H01L 23/373
H05K 1/03−1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】
[式中、Aはそれぞれ独立に直鎖又は分岐のアルキレン基であり、Qはそれぞれ独立に下記一般式(i)
【化2】
〈式中、Yはそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、又はフェニル基の何れかであり、jはそれぞれ独立に0〜4の整数を、kは1〜3の整数を表わす。〉
で表される基であり、
lは1〜10の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは0〜3の整数であり、Gはグリシジル基を表す。]
で表わされる分子構造を有し、
エポキシ当量が300〜500g/当量の範囲であり、且つ結晶性を有し、走査示差熱分析での融点が50℃から150℃の範囲である
ことを特徴とするエポキシ樹脂。
【請求項2】
前記一般式(I)中、Aで表される直鎖又は分岐のアルキレン基が、炭素原子数2〜8の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、lの値が1〜3の範囲である請求項1記載のエポキシ樹脂。
【請求項3】
前記一般式(I)中のQが下記式(i−2)
【化3】
である請求項1〜の何れか1項記載のエポキシ樹脂
【請求項4】
請求項1〜の何れか一つに記載のエポキシ樹脂と硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項6】
請求項1〜の何れか一つに記載のエポキシ樹脂、硬化剤、及び無機質充填剤を含有し、前記無機質充填剤の割合が20〜95質量%の範囲にある放熱樹脂材料。
【請求項7】
前記無機質充填剤が、窒化ホウ素、酸化アルミニウム又は窒化アルミニウムである請求項6記載の放熱樹脂材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱材料として有用なエポキシ樹脂、該エポキシ樹脂の製造方法、エポキシ樹脂組成物、その硬化物、放熱樹脂材料、半導体封止材料、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及びその硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は、耐熱性、耐湿性などの諸物性に優れることから、半導体封止材やプリント回路基板等の電子部品、電子部品分野、導電ペーストなどの導電性接着剤、その他接着剤、複合材料用マトリックス、塗料、フォトレジスト材料、顕色材料等で広く用いられている。
【0003】
これら各種用途の中でも昨今特に注目を集めているのが、直流を交流に変換したり、電流の流れや電圧の上げ下げをきめ細かく制御したりするための半導体装置であり、パワー半導体やパワーデバイス、パワーモジュールなどと呼ばれている。パワー半導体は電力の高効率化や省エネルギーに不可欠な技術であり、特に電気自動車などのモーター制御や、太陽光発電や風力発電などの電源制御など、その用途は日々拡大している。
【0004】
このようなパワー半導体の課題は、非常に大きな発熱をいかに効率よく放熱するかにあり、その放熱効率の律速となっているのが、半導体部分とヒートシンク間の接触熱抵抗を低減することを目的とした放熱材用接着剤(TIM)にある。TIMは主に無機充填材とマトリックス樹脂からなり、これまでTIMのマトリックス樹脂にはシリコーン系の熱伝導グリースが用いられてきた。しかしながら、半導体装置の高密化や制御する電力量の増加に伴い、熱伝導性や耐熱分解性、基材への密着性等の各種性能の要求レベルは益々高まってきており、従来型のシリコーン系熱伝導グリースでは対応が困難な状況となってきている。
【0005】
TIMに対する要求特性は、大きく分けて(1)発熱体から放熱部材に効率よく熱を伝えること、(2)発熱体及び放熱部材の熱変形に柔軟に追従することの2点にある。従来型のエポキシ樹脂は耐熱性に重点を置いて開発されたものが多く、比較的剛直な骨格を有することから熱伝導性は十分なものではなく、また、柔軟性にも劣るものであった。一方、柔軟性に優れる高分子材料はフォノン散乱が大きいことから熱伝導性に劣るものであり、TIM用として最適な高熱伝導性エポキシ樹脂の開発が期待されていた。
【0006】
無機充填材と複合化させた場合の熱伝導性に優れる樹脂材料として、例えば、下記一般式(3)又は一般式(4)で表わされるエポキシ樹脂が提案されている(下記特許文献1参照)。
【0007】
【化1】
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、Xは、単結合、−CH=CH−基、−COO−基、−CONH−基または−CO−基を表わし、Yは、水素原子またはメチル基を表わす。pは0から6の数、qは1から18の数である。)
【0010】
このようなエポキシ樹脂は従来のエポキシ樹脂と比較して熱伝導性に優れるものの、そのレベルは十分なものではなく、また、基材密着性や、柔軟性、耐熱性等の諸物性にも劣るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−242572
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って本発明が解決しようとする課題は、熱伝導性が高く、基材密着性や柔軟性、耐熱性にも優れ、TIM用マトリックス樹脂やその他電子機器材料として有用なエポキシ樹脂、該エポキシ樹脂の製造方法、エポキシ樹脂組成物、その硬化物、及び放熱樹脂材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、下記一般式(I)
【0014】
【化3】
[式中、Aはそれぞれ独立に直鎖又は分岐のアルキレン基であり、Qはそれぞれ独立に芳香核を複数個含有する有機基であり、lは1〜10の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは0〜3の整数であり、Gはグリシジル基を表す。]
で表わされる分子構造を有するエポキシ樹脂は、配向性が高いことから硬化物における熱伝導性が高く、更に基材密着性や柔軟性、耐熱性にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、下記一般式(I)
【0016】
【化4】
[式中、Aはそれぞれ独立に直鎖又は分岐のアルキレン基であり、Qはそれぞれ独立に芳香核を複数個含有する有機基であり、lは1〜10の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは0〜3の整数であり、Gはグリシジル基を表す。]
で表わされる分子構造を有することを特徴とするエポキシ樹脂に関する。
【0017】
本発明は更に、炭素原子数2〜7の直鎖または分岐のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、或いは炭素原子数が2〜7の直鎖または分岐のアルキレン基を有するポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテルと、下記一般式(1)
【0018】
【化5】
[式中、Yはそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、又はフェニル基の何れかであり、Xは単結合、−O−基、−CO−基、−COO−基、−CH=CH−基、−C≡C−基、−N=N−基、−CONH−基、−CH=C(CH)−基、−CH=C(CN)−基、−CH=N−基、又は−CH=CH−CO−基の何れかであり、jはそれぞれ独立に0〜4の整数を、kは1〜3の整数を表わす。]
又は下記一般式(2)
【0019】
【化6】
[式中、Zはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8の炭化水素基または炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表わす。]
で表わされるジオール化合物(a)とを反応させ、得られたフェノール樹脂をエピハロヒドリンと反応させることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法に関する。
【0020】
本発明は更に、前記製造方法により製造されるエポキシ樹脂に関する。
【0021】
本発明は更に、前記エポキシ樹脂と硬化剤とを含有するエポキシ樹脂組成物に関する。
【0022】
本発明は更に、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物に関する。
【0023】
本発明は更に、前記エポキシ樹脂、硬化剤、及び無機質充填材を含有し、前記無機質充填剤の割合が20〜95質量%の範囲にある放熱材料に関する。
【0024】
本発明は更に、前記エポキシ樹脂、硬化剤、及び無機質充填材を含有し、前記無機質充填剤の割合が20〜95質量%の範囲にある半導体封止材料に関する。
【0025】
本発明は更に、前記エポキシ樹脂、硬化剤、及び有機溶媒を含有する組成物を補強基材に含浸した含浸基材を半硬化させて得られるプリプレグに関する。
【0026】
本発明は更に、前記エポキシ樹脂、硬化剤、及び有機溶媒を含有するワニスからなる板状賦形物と、板状賦形物の面に重ねた銅箔とを加熱加圧成型して得られる回路基板に関する。
【0027】
本発明は更に、前記エポキシ樹脂、硬化剤、及び有機溶媒を含有する組成物を基材フィルム上に塗布し、乾燥させて得られるビルドアップフィルムに関する。
【発明の効果】
【0028】
本発明に寄れば、熱伝導性が高く、基材密着性や柔軟性、耐熱性にも優れ、TIM用マトリックス樹脂やその他電子機器材料として有用なエポキシ樹脂、該エポキシ樹脂の製造方法、エポキシ樹脂組成物、その硬化物、及び放熱樹脂材料を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、実施例1で得たフェノール樹脂(1)のGPCチャートである。
図2図2は、実施例1で得たエポキシ樹脂(1)のGPCチャートである。
図3図3は、実施例1で得たエポキシ樹脂(1)のMSスペクトルである。
図4図4は、実施例1で得たエポキシ樹脂(1)のMSスペクトルである。
図5図5は、実施例1で得たエポキシ樹脂(1)のC13NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明のエポキシ樹脂は、下記一般式(I)
【0031】
【化7】
[式中、Aはそれぞれ独立に直鎖又は分岐のアルキレン基であり、Qはそれぞれ独立に芳香核を複数個含有する有機基であり、lは1〜10の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは0〜3の整数であり、Gはグリシジル基を表す。]
で表わされる分子構造を有することを特徴とする。
【0032】
前記一般式(I)中、括弧で囲われた−OA−で表されるオキシアルキレン構造部位は柔軟性に富む部位であり、該構造部位を分子構造中に導入することにより、熱伝導性や基材密着性、柔軟性に優れる樹脂となる。また、式中Qは芳香核を複数個含有する有機基であり、該芳香核含有構造を分子鎖の両端側に有する分子構造とすることにより分子の配向性が高まり、熱伝導性が向上する効果に加え耐熱性にも優れる樹脂となる。更に、分子構造中に複数存在する水酸基は樹脂の熱伝導性や基材密着性を一層向上させる効果を有する。即ち、本願発明のエポキシ樹脂は前記−OA−で表される柔軟構造と、Qで表される芳香核含有構造部位とが交互に並び、水酸基が複数個存在する分子構造有することにより、熱伝導性や基材密着性、柔軟性に優れる効果と耐熱性に優れる効果とを互いに損なうことなく、高いレベルで兼備することが出来る。
【0033】
前記一般式(I)中、Aはそれぞれ独立に直鎖又は分岐のアルキレン基である。中でも、熱伝導性や基材密着性、柔軟性に一層優れるエポキシ樹脂となることから、炭素原子数2〜8のアルキレン基であることが好ましく、具体的には、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ブタン−1,2−ジイル基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。更に、耐熱性及び耐熱分解性にも優れるエポキシ樹脂となることから、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基から選ばれる炭素原子数2〜8の直鎖アルキレン基であることが好ましい。
【0034】
また、前記一般式(I)中lは−OA−で表されるオキシアルキレン基の繰り返し単位数を表し、1〜10の範囲の整数である。中でも、熱伝導性や基材密着性と耐熱性とのバランスに優れるエポキシ樹脂となることから、lの値が1〜3の範囲であることが好ましい。
【0035】
前記一般式(I)中、Qはそれぞれ独立に芳香核を複数個含有する有機基であり、具体的には、下記一般式(i)
【0036】
【化8】
[式中、Yはそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、又はフェニル基の何れかであり、Xは単結合、−O−基、−CO−基、−COO−基、−CH=CH−基、−C≡C−基、−N=N−基、−CONH−基、−CH=C(CH)−基、−CH=C(CN)−基、−CH=N−基、又は−CH=CH−CO−基の何れかであり、jはそれぞれ独立に0〜4の整数を、kは1〜3の整数を表わす。]
で表される構造部位(i)、または下記一般式(ii)
【0037】
【化9】
[式中、Zはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8の炭化水素基または炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表わす。]
で表わされる構造部位(ii)の何れかで表される構造部位が挙げられる。
【0038】
前記一般式(i)で表される構造部位の中でも、熱伝導性や基材密着性と耐熱性とのバランスに優れることから、芳香核上の置換基を表すYを有しないもの、即ちjがゼロであるものが好ましく、芳香核構造部位の繰り返し単位数を表すkは1であることが好ましい。また、式中のXは単結合、−O−基、−CO−基の何れかであることが好ましい。
【0039】
一方、前記一般式(ii)で表される構造部位の中でも、熱伝導性や基材密着性と耐熱性とのバランスに優れることから、2つのZが共に水素原子であるものが好ましい。
【0040】
即ち、前記一般式(I)中のQは、下記一般式(i−1)〜(i−3)または(ii−1)
【0041】
【化10】
の何れかで表される構造部位であることが好ましい。
【0042】
前記一般式(I)中、mは1〜5の整数であり、nは0〜3の整数である。中でも、熱伝導性や基材密着性に優れる効果に加え、融点及び粘度が低く、溶剤溶解性にも優れるエポキシ樹脂となることから、mの値が1〜3の範囲であり、nの値が0又は1であることが好ましい。また、本発明のエポキシ樹脂は、前記一般式(I)中のm及びnの値が異なる複数の成分を含有する分子量分布を有するものである。これらm及びnの値が異なる各成分の存在はGC−MS、LC−MS、MALDI−MS、TOF−MS等の質量分析にて確認することが出来る。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂は、熱伝導性や基材密着性に優れる効果に加え、融点及び粘度が低く、溶剤溶解性にも優れるエポキシ樹脂となることから、下記一般式(II)
【0044】
【化11】
[式中、Yはそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、又はフェニル基の何れかであり、Xは単結合、−O−基、−CO−基、−COO−基、−CH=CH−基、−C≡C−基、−N=N−基、−CONH−基、−CH=C(CH)−基、−CH=C(CN)−基、−CH=N−基、又は−CH=CH−CO−基の何れかであり、jはそれぞれ独立に0〜4の整数を、kは1〜3の整数を表わす。]又は、下記一般式(III)
【0045】
【化12】
[式中、Zはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8の炭化水素基または炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表わす。]
で表される芳香核含有ジグリシジルエーテル化合物を含有していても良く、この場合、該ジグリシジルエーテル化合物の含有量はエポキシ樹脂中5〜30質量%の範囲であることが好ましい。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂は、熱伝導性や耐熱性が高く、かつ、硬化性にも優れるものとなることから、そのエポキシ当量が300〜500g/当量の範囲であることが好ましく、300〜450g/当量の範囲であることがより好ましい。
【0047】
また、本発明のエポキシ樹脂は、より熱伝導性が高く耐熱性にも優れる硬化物が得られることから、結晶性を有するものであることが好ましい。エポキシ樹脂の結晶性の有無は走査示差熱分析で結晶の融解に伴う吸熱ピークを融点として観測することにより確認することができる。好ましいDSC融点は熱伝導性及び耐熱性に優れる硬化物が得られることから20℃から250℃の範囲であり、50℃から150℃の範囲であることがより好ましい。
【0048】
本発明のエポキシ樹脂はいずれの方法により製造されるものでも良い。このようなエポキシ樹脂の具体的な製造方法の一例として、例えば、炭素原子数2〜8の直鎖又は分岐のアルキレンジオールのジグリシジルエーテル、又は炭素原子数が2〜8の直鎖又は分岐のアルキレン基を有するポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル(以下、「ジグリシジルエーテル化合物(1a)」と略記する。)と、下記一般式(1)
【0049】
【化13】
{式中、Yはそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数1〜8の炭化水素基又は炭素原子数1〜8のアルコキシル基を表わし、Xは単結合、−O−基、−CH=CH−基、−CH=C(CH)−基、−CH=C(CN)−基、−C≡C−基、−CH=N−基、−CH=CH−CO−基、−N=N−基、−COO−基、−CONH−基または−CO−基を表わし、jはそれぞれ独立に0〜4の整数を、kは1〜3の整数を表わす。}
又は下記一般式(2)
【0050】
【化14】
{式中、Zはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8の炭化水素基または炭素原子数1〜8のアルコキシル基を表わす。}
で表わされるジオール化合物(1q)とを反応させてフェノール樹脂を得(工程1−1)、得られたフェノール樹脂をエピクロルヒドリンと反応させる(工程1−2)方法(以下「方法1」と略記する。)や、炭素原子数2〜8の直鎖又は分岐のアルキレンジオール、又は炭素原子数が2〜8の直鎖又は分岐のアルキレン基を有するポリオキシアルキレングリコール(以下、「ジオール化合物(2a)」と略記する。)と、下記一般式(3)
【0051】
【化15】
{式中、Yはそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数1〜8の炭化水素基又は炭素原子数1〜8のアルコキシル基を表わし、Xは単結合、−O−基、−CH=CH−基、−CH=C(CH)−基、−CH=C(CN)−基、−C≡C−基、−CH=N−基、−CH=CH−CO−基、−N=N−基、−COO−基、−CONH−基または−CO−基を表わし、jはそれぞれ独立に0〜4の整数を、kは1〜3の整数を表わす。}
又は下記一般式(4)
【0052】
【化16】
{式中、Zはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8の炭化水素基または炭素原子数1〜8のアルコキシル基を表わす。}
で表わされるジグリシジルエーテル化合物(2q)とを反応させる方法(以下「方法2」と略記する。)が挙げられる。
【0053】
まず、前記方法1について説明する。前記方法1で用いるジグリシジルエーテル化合物(1a)は、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3−プロパンジオールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,5−ペンタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,7−ヘプタンジオールジグリシジルエーテル、1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールジグリシジルエーテル化合物や、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジ(トリメチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリ(トリプロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジブチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。中でも、熱伝導性と耐熱性とのバランスに優れるエポキシ樹脂が得られることから、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3−プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,5−ペンタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,7−ヘプタンジオールジグリシジルエーテル、1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテルから選ばれる炭素原子数2〜8の直鎖のアルキレングリコールジグリシジルエーテル、又は、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテルであることが好ましい。
【0054】
前記ジオール化合物(1q)は、前記一般式(1)または(2)で表される化合物であり、前記一般式(1)で表される化合物の中でも、熱伝導性や基材密着性と耐熱性とのバランスに優れることから、芳香核上の置換基を表すYを有しないもの、即ちjがゼロであるものが好ましく、芳香核構造部位の繰り返し単位数を表すkは1であることが好ましい。また、式中のXは単結合、−O−基、−CO−基の何れかであることが好ましい。
【0055】
一方、前記一般式(2)で表される化合物の中でも、熱伝導性や基材密着性と耐熱性とのバランスに優れることから、2つのZが共に水素原子であるものが好ましい。
【0056】
即ち、前記ジオール化合物(1q)は、下記一般式(1−1)〜(1−3)または(2−1)
【0057】
【化17】
の何れかで表されるジオール化合物であることが好ましい。
【0058】
前記ジグリシジルエーテル化合物(1a)と前記ジオール化合物(1q)との反応は、例えば、必要に応じて触媒を用い、100〜200℃の温度条件下で反応させる方法が挙げられる。
【0059】
ここで使用し得る触媒は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第三級アミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、イミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。中でも、反応効率に優れることから水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の金属水酸化物が好ましい。これらの触媒は水溶液として用いても良く、その使用量は、前記ジグリシジルエーテル(1a)と前記ジオール化合物(1q)との合計質量に対し、0.05〜3質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0060】
前記ジグリシジルエーテル化合物(1a)と前記ジオール化合物(1q)との反応割合は、所望の分子構造を有するエポキシ樹脂が効率的に生成することから、前記ジグリシジルエーテル(1a)中のグリシジル基1当量に対し、前記ジオール化合物(1q)中の水酸基が1.2〜3当量の範囲となる割合であることが好ましい。
【0061】
上記反応は無溶媒条件下で行っても良いし、適宜有機溶媒を用いても良い。有機溶媒を用いる場合、反応に不活性な溶媒であれば特に制限されないが、副生成物の生成が抑制されることから親水性溶媒が好ましい。親水性溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール溶媒や、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メトキシメチルエーテル、ジエトキシエタンの如きエーテル溶媒等が挙げられ、それぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これら有機溶媒を用いる場合の使用量は、反応が効率的に進行することから、前記ジオール化合物(1q)と前記ジグリシジルエーテル化合物(1a)との合計質量に対して0.5〜5重量%の範囲で用いることが好ましい。
【0062】
反応終了後は反応液をそのまま工程1−2に用いても良いし、反応生成物を水洗して取りだした後、これを工程1−2に用いても良い。反応生成物を水洗する場合には、まず、第1リン酸ソーダ等を用いて中和処理を行った後、反応生成物を水洗し、加熱減圧下、蒸留によって未反応原料と低極性溶媒を留去する。このようにして得られるフェノール樹脂は、具体的には下記構造式(IV)
【0063】
【化18】
[式中、Aはそれぞれ独立に直鎖又は分岐のアルキレン基であり、Qはそれぞれ独立に芳香核を複数個含有する有機基であり、lは1〜10の整数であり、mは1〜5の整数である。]
で表すことができる。
【0064】
エポキシ樹脂の前駆体である前記フェノール樹脂は、前記一般式(IV)中のmの値が異なる複数の成分を含有する分子量分布を有するものであり、その平均値は0.4〜1の範囲であることが好ましい。
【0065】
前記一般式(IV)で表されるフェノール樹脂中のmの平均値は、以下のような方法により求めることができる。
[一般式(IV)中のmの平均値の求め方]
下記条件でのGPC測定により得られるm=1、2、3、4、5それぞれの場合に対応するスチレン換算分子量(αm)の値と、m=1、2、3、4、5それぞれの場合に対応する理論分子量(βm)との比率(βm/αm)をそれぞれ求め、これら(βm/αm)の平均値を求める。GPC測定の結果得られる数平均分子量(Mn)に、この平均値を掛け合わせた値を平均分子量とし、この平均分子量に相当するmの値を算出する。
【0066】
(GPC測定条件)
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折径)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアル
に準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィ
ルターでろ過したもの(50μl)。
【0067】
次いで、得られたフェノール樹脂をエピハロヒドリンと反応させる工程1−2は、具体的には、フェノール樹脂が有するフェノール性水酸基のモル数に対し、エピハロヒドリンを2〜10倍量(モル基準)となる割合で添加し、更に、フェノール性水酸基のモル数に対し0.9〜2.0倍量(モル基準)の塩基性触媒を一括添加または徐々に添加しながら20〜120℃の温度で0.5〜10時間反応させる方法が挙げられる。この塩基性触媒は固形でもその水溶液を使用してもよく、水溶液を使用する場合は、連続的に添加すると共に、反応混合物中から減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、更に分液して水は除去しエピハロヒドリンは反応混合物中に連続的に戻す方法でもよい。
【0068】
なお、工業生産を行う際、エポキシ化合物生産の初バッチでは仕込みに用いるエピハロヒドリン類の全てが新しいものであるが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリン類と、反応で消費される分で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリン類とを併用することが好ましい。この時、使用するエピハロヒドリンは特に限定されないが、例えばエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。なかでも工業的入手が容易なことからエピクロルヒドリンが好ましい。
【0069】
工程1−2で用いる塩基性触媒は、工程1−1と同様に、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特にエポキシ化反応の触媒活性に優れる点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。
【0070】
また、工程1−2は有機溶媒中で行うことにより、エポキシ樹脂の合成における反応速度を高めることができる。ここで用いる有機溶媒は特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール性溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ溶媒、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜2種以上を併用してもよい。
【0071】
工程1−2の終了後は、反応生成物を水洗した後、加熱減圧下、蒸留によって未反応のエピハロヒドリンや併用した有機溶媒を留去する。また、加水分解性ハロゲンのより少ないエポキシ化合物とするために、前記水洗工程を行う前に未反応のエピハロヒドリンや併用した有機溶媒を留去し、得られた粗生成物をトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に再溶解して、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて追反応させることもできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ粗生成物100質量部に対して0.1〜3.0質量部となる割合であることが好ましい。追反応終了後は、生成した塩を濾過や水洗などの方法により除去し、更に、加熱減圧下でトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより、目的とするエポキシ樹脂を得ることができる。
【0072】
前記方法1により得られるエポキシ樹脂は前記一般式(I)で表される分子構造を有し、該一般式(I)中のnの値が異なる複数の成分を含有するものとなる。エポキシ樹脂におけるnの値の平均値は、熱伝導性や基材密着性に優れる効果に加え、融点及び粘度が低く、溶剤溶解性にも優れるエポキシ樹脂となることから、0.05〜0.5の範囲であることが好ましい。
【0073】
前記一般式(I)で表されるフェノール樹脂中のnの平均値は、先で求めた前駆体フェノール樹脂を表す前記一般式(IV)中のmの平均値を元に、前記一般式(IV)中のmの値と同様の方法により求めることが出来る。即ち、前記一般式(I)中のmの値を前記一般式(IV)について求めたmの平均値とし、前記条件でのGPC測定により得られるn=0、1、2、3それぞれの場合に対応するスチレン換算分子量(αm)の値と、n=0、1、2、3それぞれの場合に対応する理論分子量(βm)との比率(βm/αm)をそれぞれ求め、これら(βm/αm)の平均値を求める。GPC測定の結果得られる数平均分子量(Mn)に、この平均値を掛け合わせた値を平均分子量とし、この平均分子量に相当するnの値を算出する。
【0074】
また、本発明のエポキシ樹脂が前記方法1により製造されるものである場合、前記一般式(I)中の水酸基の一部乃至全部がグリシジルエーテル化された化合物を一部含有していても良い。
【0075】
次に、前記方法2について説明する。前記方法2で用いるジオール化合物(2a)は、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール等のアルキレングリコール化合物や、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジ(トリメチレングリコール)、ジプロピレングリコール、トリ(トリプロピレングリコール)、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。中でも、熱伝導性と耐熱性とのバランスに優れるエポキシ樹脂が得られることから、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオールから選ばれる炭素原子数2〜8の直鎖のアルキレングリコール、又は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールであることが好ましい。
【0076】
前記グリシジルエーテル化合物(2q)は、前記一般式(3)または(4)で表される化合物であり、前記一般式(3)で表される化合物の中でも、熱伝導性や基材密着性と耐熱性とのバランスに優れることから、芳香核上の置換基を表すYを有しないもの、即ちjがゼロであるものが好ましく、芳香核構造部位の繰り返し単位数を表すkは1であることが好ましい。また、式中のXは単結合、−O−基、−CO−基の何れかであることが好ましい。
【0077】
一方、前記一般式(4)で表される化合物の中でも、熱伝導性や基材密着性と耐熱性とのバランスに優れることから、2つのZが共に水素原子であるものが好ましい。
【0078】
即ち、前記グリシジルエーテル化合物(2q)は、下記一般式(3−1)〜(3−3)または(4−1)
【0079】
【化19】
の何れかで表されるジグリシジルエーテル化合物であることが好ましい。
【0080】
前記ジオール化合物(2a)と前記ジグリシジルエーテル化合物(2q)との反応は、先の方法1の工程1−1と同様の反応条件による方法が挙げられる。
【0081】
前記ジオール化合物(2a)と前記ジグリシジルエーテル化合物(2q)との反応割合は、所望の分子構造を有するエポキシ樹脂が得られやすいことから、前記ジオール化合物(2a)中の水酸基1当量に対し、前記ジグリシジルエーテル化合物(2q)中のグリシジル基が1.2〜3当量の範囲となる割合であることが好ましい。
【0082】
前記方法2により得られるエポキシ樹脂は前記一般式(I)で表される分子構造を有し、該一般式(I)中のnの値が0であるものとなる。前述の通り、エポキシ樹脂におけるmの値の平均値は、熱伝導性や基材密着性に優れる効果に加え、融点及び粘度が低く、溶剤溶解性にも優れるエポキシ樹脂となることから、0.4〜1の範囲であることが好ましい。なお、方法2で得られるエポキシ樹脂において、前記一般式(I)中のmの値は前記一般式(IV)中のmの値と同様の方法により求めることが出来る。即ち、前記条件でのGPC測定により得られるm=1、2、3、4、5それぞれの場合に対応するスチレン換算分子量(αm)の値と、n=1、2、3、4、5それぞれの場合に対応する理論分子量(βm)との比率(βm/αm)をそれぞれ求め、これら(βm/αm)の平均値を求める。GPC測定の結果得られる数平均分子量(Mn)に、この平均値を掛け合わせた値を平均分子量とし、この平均分子量に相当するmの値を算出する。
【0083】
前記方法1及び方法2の中でも、反応の進行が速く製造が簡便であることから、前記方法1により製造することが好ましい。
【0084】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記本発明のエポキシ樹脂と、硬化剤とを必須の成分とするものである。ここで用いる硬化剤は、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などの各種の公知の硬化剤が挙げられる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェニロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0085】
エポキシ樹脂組成物におけるエポキシ樹脂と硬化剤との配合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基と、硬化剤中の活性水素原子との当量比(エポキシ基/活性水素原子)が1/0.5〜1/1.5となる割合であることが、耐熱性に優れる硬化物となることから好ましい。
【0086】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記本発明のエポキシ樹脂以外のその他のエポキシ樹脂を含有しても良い。ここで用いるその他のエポキシ樹脂は、例えば、1,6−ジグリシジルオキシナフタレン、2,7−ジグリシジルオキシナフタレン、α−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、α−ナフトール/β−ナフトール共縮合型ノボラックのポリグリシジルエーテル、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシ−1−ナフチル)アルカン等のナフタレン骨格含有エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール系化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;リン原子含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0087】
これらその他のエポキシ樹脂の中でも、熱伝導性、基材密着性、及び耐熱性のいずれにも優れる硬化物が得られることからビスフェノール型エポキシ樹脂又はビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0088】
また、これらその他のエポキシ樹脂を用いる場合の使用量は、本発明が奏する効果が十分に発揮されることから、前記一般式(I)で表される本発明のエポキシ樹脂とその他のエポキシ樹脂との合計質量に対し、20〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0089】
このとき、前記硬化剤との配合量は、樹脂組成物中の全エポキシ成分中のエポキシ基と、硬化剤中の活性水素原子との当量比(エポキシ基/活性水素原子)が1/0.5〜1/1.5となる割合であることが、耐熱性に優れる硬化物となることから好ましい。
【0090】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は、更に無機質充填剤、難燃剤、硬化促進剤、有機溶剤、その他の添加剤を含んでいても良い。
【0091】
無機質充填剤は、例えば、溶融破砕シリカ粉末、溶融球状シリカ粉末、結晶シリカ粉末、二次凝集シリカ粉末の如きシリカ粉末;アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、クレイ、マイカ、ガラス繊維等の無機質充填材;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、マグネシア(酸化アルミニウム)、アルミナ(酸化アルミニウム)、結晶性シリカ(酸化ケイ素)、溶融シリカ(酸化ケイ素)等の熱伝導性フィラー等が挙げられる。これらの無機質充填剤は、樹脂とのヌレ性等を改善するために、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネート系カップリング剤などで表面処理を施されたものであっても良い。これら無機質充填剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0092】
無機質充填剤を用いる場合の割合は、用途によってそれぞれ適当な配合量が異なるが、例えば、放熱樹脂材料や半導体封止材料に用いる場合には、エポキシ樹脂組成物中20〜95質量%の範囲が好ましく、50〜95質量%の範囲がより好ましい。
【0093】
難燃剤は、例えば、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、複数種を併用しても良い。
【0094】
前記臭素系難燃剤は、例えばポリ臭素化ジフェニルオキシド、デカブロモジフェニルオキシド、トリス[3−ブロモ−2,2−ビス(ブロモメチル)プロピル]ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、テトラブロモフタル酸、テトラブロモビスフェノールAのビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、臭素化エポキシ樹脂、エチレン−ビス(テトラブロモフタルイミド)、オクタブロモジフェニルエーテル、1,2−ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ−ビスフェノールA、エチレンビス−(ジブロモ−ノルボルナンジカルボキシミド)、トリス−(2,3−ジブロモプロピル)−イソシアヌレート、エチレン−ビス−テトラブロモフタルイミド、などが挙げられる。臭素系難燃剤を併用する場合の使用割合は、高い難燃効果が得られることから、エポキシ樹脂組成物中の3〜20質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0095】
前記リン系難燃剤は無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物は、例えば、無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
【0096】
前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法は(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0097】
前記有機リン系化合は、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
【0098】
リン系難燃剤を使用する場合の配合量は、リン系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂組成物中、赤リンを難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量%の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は0.1〜10.0質量%の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量%の範囲で配合することが好ましい。
【0099】
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
【0100】
前記窒素系難燃剤は、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
【0101】
前記トリアジン化合物は、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(i)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(ii)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール系化合物と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン類およびホルムアルデヒドとの共縮合物、(iii)前記(ii)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂類との混合物、(iv)前記(ii)、(iii)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
【0102】
前記シアヌル酸化合物は、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等が挙げられる。
【0103】
前記窒素系難燃剤の配合量は、窒素系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂組成物中、0.05〜10質量%の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量%の範囲で配合することが好ましい。また、窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0104】
前記シリコーン系難燃剤は、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらシリコーン系難燃剤の配合量は、シリコーン系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂組成物中、0.05〜20質量%の範囲で配合することが好ましい。また、シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
【0105】
前記金属系難燃剤は、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム、及び複合金属水酸化物等の金属水酸化物;モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等の金属酸化物;炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等の金属炭酸塩化合物;アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等の金属粉;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物等が挙げられる。
【0106】
これら金属系難燃剤を併用する場合の配合量は、金属系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂組成物中、0.05〜20質量%の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量%の範囲で配合することが好ましい。
【0107】
前記有機金属塩系難燃剤は、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。これら有機金属塩系難燃剤を併用する場合の配合量は、有機金属塩系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂組成物中、0.005〜10質量%の範囲で配合することが好ましい。
【0108】
前記硬化促進剤は、本発明の効果を損なわない限り、公知の種々の硬化促進剤を併用でき、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に放熱樹脂材料や半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、イミダゾール化合物では2−エチル−4−メチルイミダゾール、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。また、これら硬化促進剤を併用する場合の使用割合は、エポキシ樹脂組成物0.1〜2質量%となる割合であることが好ましい。
【0109】
前記有機溶剤は、例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いてプリント配線基板用ワニス等を調整する場合などに用いることが好ましく、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。溶剤の種類や使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0110】
その他の添加剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤;カーボンブラック等の着色剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力成分;天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸またはその金属塩、パラフィン等の離型剤;酸化防止剤等が挙げられる。
【0111】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて他の熱硬化性樹脂と併用しても良い。ここで併用し得る他の熱硬化性樹脂は、例えばシアネートエステル化合物、ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、マレイミド化合物などが挙げられる。上記した他の熱硬化性樹脂を併用する場合、その使用量は、本発明が奏する効果が十分に発揮されることから、エポキシ樹脂組成物の総質量に対して1〜80重量%の範囲であることが好ましい。
【0112】
上記した各成分を均一に混合することにより得られる。エポキシ成分、硬化剤、更に必要により硬化促進剤の配合された本発明の硬化性組成物は、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。該硬化物は、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0113】
本発明のエポキシ樹脂組成物からなる硬化物は熱伝導率が高く、具体的には、4W/m・K〜6W/m・K程度の熱伝導率を発現することが出来る。
【0114】
本発明のエポキシ樹脂組成物はその硬化物が熱伝導性や基材密着性、柔軟性、耐熱性に優れることから各種電子材料用途に好適に用いることが出来、中でも、パワー半導体やパワーデバイス、パワーモジュール等の放熱部材用途に用いた場合に従来のエポキシ樹脂組成物と比較して高い性能を発現する。また、半導体封止材やプリント回路基板、ビルドアップフィルムや絶縁接着剤の他、導電性フィラーを混合することにより導電ペーストや導電性接着剤としての利用、複合材料用マトリックス、フォトレジスト材料、塗料、顕色材料等の各種用途にも用いることができる。
【0115】
パワーデバイス用の放熱部材としては、例えば、半導体装置とヒートシンク部材とを結合するための部材が挙げられる。この場合、放熱樹脂材料は本願のエポキシ樹脂と硬化剤、その他添加剤を主に含有するものでも良いし、放熱性をより高めるために無機質充填材を含有しても良い。或いは、無機質充填材を含有する放熱層と、金属基材への接着性を担保させるための接着層とを有する多層構造にしても良く、この場合、本願発明のエポキシ樹脂は熱伝導性と基材密着性との両方に優れることから、放熱層及び接着層の何れの用途にも好適に用いることが出来る。
【0116】
ここで用いる無機質充填材は、より放熱性に優れるものとして、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等が挙げられる。放熱樹脂材料における無機質充填材の充填量は、放熱性が高く、かつ、成形性や基材密着性にも優れることから、20〜95質量%の範囲であることが好ましい。該放熱樹脂材料は基材表面に直接塗布して製膜しても良いし、一度シート状に製膜してから用いても良い。製膜後の放熱部材の厚さは10〜400μm程度の厚さとすることにより、絶縁性と放熱性とのバランスに優れるものとなる。
【0117】
本発明のエポキシ樹脂組成物から半導体封止材料を製造するには、まず、前記エポキシ樹脂及び硬化剤を含有するエポキシ組成物に必要に応じて無機充填剤等を配合し、押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する。得られた半導体封止材料は液状のまま用いても一度フィルム化して用いても良く、フィルム化して用いる場合には、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、本発明の半導体封止材料をトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドンなどの有機溶媒に溶解し、プラネタリミキサやビーズミルを用いて混合することによってワニスを調製する。得られたワニスを、ナイフコーターやロールコーターを用いて、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート樹脂などのフィルム基材上に塗布した後、有機溶媒を乾燥除去することによって、フィルム上の半導体封止材料が得られる。
【0118】
本発明のエポキシ樹脂組成物をガラス繊維等の繊維状基材と複合させて複合材として用いる場合には、例えば、エポキシ樹脂および硬化剤を主成分としたエポキシ樹脂組成物を有機溶剤に溶解させたものを、シート状繊維基材に含浸し加熱乾燥させて、エポキシ樹脂を部分反応させて、プリプレグとすることができる。
【0119】
本発明のエポキシ樹脂組成物からプリント回路基板を製造するには、前記エポキシ樹脂及び硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物に有機溶剤を配合してワニス化した樹脂組成物を、補強基材に含浸し銅箔を重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。ここで使用し得る補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状の硬化性樹脂組成物を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得る。この時、用いる樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とするプリント回路基板を得ることができる。
【0120】
本発明のエポキシ樹脂組成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法は、例えば、ゴムやフィラーなどを適宜配合した当該エポキシ樹脂組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布したのち硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行い、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法は、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0121】
本発明のエポキシ樹脂組成物からビルドアップ用接着フィルムを製造する方法は、例えば、本発明の硬化性のエポキシ樹脂組成物を、基材フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
【0122】
本発明のエポキシ樹脂組成物をビルドアップ用接着フィルムに用いる場合、該接着フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。具体的には、ワニス状のエポキシ樹脂組成物を調製した後、基材フィルムの表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて硬化性樹脂組成物の層を形成させることにより製造することができる。
【実施例】
【0123】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。なお、実施例における、全ての部、パーセント、比などは、特に断りがない限り、質量基準である。なお、GPC、13C−NMR及びMSは以下の条件にて測定した。
【0124】
GPC:測定条件は以下の通り。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0125】
13C−NMR:測定条件は以下の通り。
装置:日本電子(株)製 AL−400
測定モード:SGNNE(NOE消去の1H完全デカップリング法)
溶媒 :ジメチルスルホキシド
パルス角度:45℃パルス
試料濃度 :30wt%
積算回数 :10000回
【0126】
MS:日本電子株式会社製 二重収束型質量分析装置 AX505H(FD505H)
【0127】
実施例1 エポキシ樹脂(1)の製造
[フェノール樹脂(1)の製造]
温度計、撹拌機を取り付けたフラスコに1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル(DIC株式会社製「EPICLON 726D」エポキシ当量124g/当量)744g(6当量)と4,4‘−ジヒドロキシジフェニルエーテル(水酸基当量101g/当量)1212g(12当量)を仕込み、140℃まで30分間要して昇温した後、4%水酸化ナトリウム水溶液5gを仕込んだ。その後、30分かけて150℃まで昇温し、150℃で3時間反応させた。反応後に中和量のリン酸ソーダを添加して、フェノール樹脂(1)1900gを得た。得られたフェノール樹脂(1)のGPCチャートを図1に示す。得られたフェノール樹脂(1)をMSにより分析したところ、下記一般式(III−1)
【0128】
【化20】
で表される分子構造において、mが1の場合の理論構造に相当するM+=634、及び、mが2の場合の理論構造に相当するM+=1066のピークが確認された。また、GPCチャートから算出されるフェノール性水酸基の水酸基当量は276g/当量、水酸基当量から算出される前記一般式(III−1)中のmの平均値は0.6であった。
【0129】
[エポキシ樹脂(1)の製造]
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに先で得たフェノール樹脂(1)276g(水酸基当量276g/当量)、エピクロルヒドリン1110g(12モル)、n−ブタノール222gを仕込み溶解させた。窒素ガスパージを施しながら65℃に昇温し、共沸する圧力まで減圧したのち、49%水酸化ナトリウム水溶液122g(1.5モル)を5時間かけて滴下した。更に0.5時間撹拌を続け、この間、共沸で留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離して水層を除去し、有機層を反応系内に戻しながら反応させた。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留して留去し、得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン1000gとn−ブタノール100gを加え溶解した。この溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液20gを添加して80℃で2時間反応させ、反応生成物を洗浄液のPHが中性となるまで水300gで水洗を3回繰り返した。次に共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に溶媒を減圧下で留去してエポキシ樹脂(1)300gを得た。このエポキシ樹脂(1)のGPCチャートを図2に、MSスペクトルを図2及び図3に、13C−NMRチャートを図4に示す。MSスペクトルからは、下記一般式(I−1)
【0130】
【化21】
で表される分子構造において、m=1、n=0の場合の理論構造に相当するM+=746、及び、m=1、n=1の場合の理論構造に相当するM+=1178のピークが確認された。また、得られたエポキシ樹脂(1)は前記一般式(I−1)においてn=0、m=0の場合に相当する化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中n=0、m=0の化合物を20重量%の割合で含有するものであった。また、エポキシ樹脂(1)のエポキシ当量は394g/当量、DSC融点は80℃、エポキシ当量から算出される前記一般式(I−1)中のnの平均値は0.1であった。
【0131】
参考例 エポキシ樹脂(2)の製造
[フェノール樹脂(2)の製造]
実施例1の4,4‘−ジヒドロキシジフェニルエーテル(水酸基当量101g/当量)1212g(12当量)をテトラメチルビフェノール(水酸基当量121g/当量)1452g(12当量)に変更した以外は実施例1記載と同様の方法でフェノール樹脂(2)2100gを得た。得られたフェノール樹脂(2)のGPCチャートから算出されるフェノール性水酸基の水酸基当量は281g/当量、水酸基当量から算出される前記一般式(III)中のmに相当する値の平均値は0.6であった。
【0132】
[エポキシ樹脂(2)の製造]
実施例1のフェノール樹脂(1)276g(水酸基当量276g/当量)を、フェノール樹脂(2)281g(水酸基当量281g/当量)に変更した以外は実施例1記載と同様の方法でエポキシ樹脂(2)を320g得た。得られたエポキシ樹脂(2)は前記一般式(I)においてn=0、m=0の場合に相当する化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中n=0、m=0の化合物を21重量%の割合で含有するものであった。また、このエポキシ樹脂(2)のエポキシ当量は338g/当量、DSC融点は102℃、エポキシ当量から算出される前記一般式(I)中のnの平均値は0.2であった。
【0133】
比較製造例1 エポキシ樹脂(1’)の製造
[フェノール樹脂(1’)の製造]
実施例1の4,4‘−ジヒドロキシジフェニルエーテル(水酸基当量101g/当量)1212g(12当量)を、ビスフェノールA(水酸基当量114g/当量)1368g(12当量)に変更した以外は実施例1記載と同様の方法でフェノール樹脂(1’)を2000g得た。このフェノール樹脂(1’)のGPCチャートから算出される水酸基当量は262g/当量、水酸基当量から算出される前記一般式(III)中のmに相当する値の平均値は0.6であった。
【0134】
[エポキシ樹脂(1’)の製造]
実施例1のフェノール樹脂(1)276g(水酸基当量276g/当量)をフェノール樹脂(1’)262g(水酸基当量は262g/当量)に変更した以外は実施例1記載と同様の方法でエポキシ樹脂(1’)を380g得た。このエポキシ樹脂(1’)のエポキシ当量は350g/当量であった。
【0135】
比較製造例2 エポキシ樹脂(2’)の製造
温度計、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、99%メタノールを200g、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル404g(2モル)、1,6−ブロモ−ヘキサンを244g(1モル)仕込み、75℃の温度条件下で窒素を吹き込みながら撹拌し溶解した。その後、86%水酸化カリウム65g(1モル)を溶解させた99%エタノール溶液200gを30分間かけて添加し、更に撹拌しながら4時間加熱還流した。その後、室温に冷却して30%硫酸を用いて反応液を中和し、濾過、水洗、乾燥を行い、白色結晶を得た。次いで、温度計、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに上記で得られた白色結晶と、エピクロルヒドリン1110g、ジメチルスルホキシド222gを仕込み、内圧を約6kPaまで減圧した後、50℃で還流させながら、49%水酸化ナトリウム122gを5時間かけて滴下した。尚、反応中は水を系外に留去、除去しながら反応を行った。49%水酸化ナトリウムの滴下後、70℃に昇温し、同温度でさらに1時間還流させながら反応させた。反応終了後、メチルイソブチルケトン400gと水450gを加え、副生した塩化カリウム水溶液を棄却した。その後、水400gを用いてジメチルスルホキシドを洗浄除去した後、150℃まで昇温して、エピクロルヒドリンを減圧蒸留回収し、エポキシ当量380g/当量のエポキシ樹脂(2’)を300g得た。
【0136】
実施例3、4及び比較例1、2
先で得られたポキシ樹脂(1)、(2)、(1’)、(2’)につき、下記の条件で各種評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0137】
1.熱伝導性試験
[試験片の作成]
下記表1に記載の配合に従い、先で得たエポキシ樹脂(1)、(2)、(1’)又は(2’)に硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製「TD−2131」)と、硬化触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)とを配合し、更に無機質充填材として球状アルミナ(平均粒径12.2μm)を400g添加した。これをミキサーで十分に混合した後、100℃の温度条件下で5分間加熱し、冷却後に粉砕した。粉砕物を150℃で1時間、更に175℃で6時間加熱して硬化させ、板厚1.2mmの試験片を得た。試験片中の樹脂量は20質量%である。
【0138】
[熱伝導性の評価]
熱導率計(京都電子株式会社製「QTM−500」)を用いて非定常熱線法により試験片の熱伝統率を測定した。
【0139】
2.基材密着性、柔軟性、及び耐半田試験
[試験片の作成]
下記表1に記載の配合に従い、先で得たエポキシ樹脂(1)、(2)、(1’)又は(2’)に硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製「TD−2131」)と、硬化触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)とを配合し、更にメチルエチルケトンを加えて不揮発分が58質量%の樹脂組成物を調整した。得られた樹脂組成物を下記条件でプリプレグ化し、これを試験片とした。
基材:100μm 日東紡績株式会社製 プリント配線基板用ガラスクロス「2116」
プライ数:6
銅箔:18μm 日鉱金属株式会社製 TCR箔
プリプレグ化条件:160℃/2分
硬化条件:200℃、2.9MPa、2時間
成形後板厚:0.8mm、樹脂量40%
【0140】
[基材密着性の評価]
JIS−K6481に準拠し、ピール強度及び層間剥離強度を測定した。
【0141】
[柔軟性の評価]
試験片を25mm×75mmの大きさに切り出し、JIS−K6911に従って、島津製作所株式会社製の「AUTOGRAPH AG−I」を用いて3点曲げ伸び率を測定した。
【0142】
[耐半田性の評価]
各サンプルそれぞれ3個ずつ試験片を用意し、121℃プレッシャークッカー試験機に6時間放置した後、288℃半田浴に30秒浸漬し、膨れの有無を目視にて確認した。3つの試験片すべてにつき膨れの無いものを○、3つの試験片のうち一つでも膨れが生じたものを×とした。
【0143】
3.ガラス転移温度測定及び耐熱分解性試験
[試験片の作成]
下記表1に記載の配合に従い、先で得たエポキシ樹脂(1)、(2)、(1’)又は(2’)に硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製「TD−2131」)と、硬化触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)とを配合した。これをミキサーで十分に混合した後、100℃の温度条件下で5分間加熱し、冷却後に粉砕した。粉砕物を150℃で1時間、更に175℃で6時間加熱して硬化させ、板厚0.2mmの試験片を得た。
【0144】
[ガラス転移温度測定]
粘弾性測定装置(レオメトリック社製「固体粘弾性測定装置RSA II」、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/分)を用い、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として測定した。
【0145】
[耐熱分解性の評価]
質量が6mgとなる大きさに切り出した試験片を150℃で15分間保持した後、窒素ガスフロー条件下、毎分5℃で昇温し、質量の5%が減少した時の温度で評価した。
【0146】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5