特許第6221327号(P6221327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221327
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】撮像素子およびカメラ
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/34 20060101AFI20171023BHJP
   G02B 7/28 20060101ALI20171023BHJP
   G03B 13/36 20060101ALI20171023BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20171023BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20171023BHJP
【FI】
   G02B7/34
   G02B7/28 N
   G03B13/36
   H04N5/232 120
   H04N5/369 600
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-94144(P2013-94144)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-215526(P2014-215526A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100078189
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆男
(72)【発明者】
【氏名】中島 聖生
【審査官】 登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−057067(JP,A)
【文献】 特開2007−004471(JP,A)
【文献】 特開2011−103335(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0053354(US,A1)
【文献】 特開2008−258474(JP,A)
【文献】 特開2010−237401(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0245656(US,A1)
【文献】 特開2007−067075(JP,A)
【文献】 特開2012−189878(JP,A)
【文献】 特開2007−281296(JP,A)
【文献】 特開平10−074926(JP,A)
【文献】 特開2012−123404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/34
G02B 7/28
G03B 13/36
H04N 5/232
H04N 5/369
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元状に配置された複数の第1の光電変換部と、
光の入射方向から見て、前記第1の光電変換部の横に配置された複数のマイクロレンズと、
二次元状に配置され、前記マイクロレンズを透過した光を受光する複数の第2の光電変換部と、を備え、
前記第1の光電変換部は、前記マイクロレンズと略同一面上に配置される撮像素子。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像素子において、
前記第1の光電変換部は、前記マイクロレンズが配置された面に配置される撮像素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の撮像素子において、
前記第2の光電変換部は、前記マイクロレンズの焦点面に配置される撮像素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の撮像素子において、
透明基板をさらに備え、
前記第1の光電変換部と前記マイクロレンズとは、前記透明基板の第1の面に設けられ、
前記第2の光電変換部は、前記透明基板における前記第1の面と対向する第2の面に設けられる撮像素子。
【請求項5】
請求項4に記載の撮像素子において、
前記透明基板の厚さは、前記マイクロレンズの焦点距離に対応する撮像素子。
【請求項6】
透明基板と、
前記透明基板の光が入射する第1の面に配置された複数の第1の光電変換部と、
前記透明基板の前記第1の面において前記第1の光電変換部とは異なる領域に配置された複数のマイクロレンズと、
前記透明基板の前記第1の面と対向する第2の面に配置され、前記マイクロレンズを透過した光を受光する複数の第2の光電変換部と、を備える撮像素子。
【請求項7】
請求項6に記載の撮像素子において、
前記透明基板は、前記第1の面と前記第2の面とが前記マイクロレンズの焦点距離を隔てて対向する撮像素子。
【請求項8】
複数の第1の光電変換部と、光の入射方向から見て前記第1の光電変換部と重ならない位置に配置された複数のマイクロレンズとが二次元状に配置される第1受光部と、
二次元状に配置され前記マイクロレンズを透過した光を受光する複数の第2の光電変換部を有する第2受光部と、
を備える撮像素子。
【請求項9】
結像光学系と、
請求項1から8のいずれか一項に記載の撮像素子と、
前記第1の光電変換部からの出力信号に基づいて、画像データを生成する第1の画像生成手段と、
前記第2の光電変換部からの出力信号に基づいて、前記結像光学系の焦点調節状態を位相差検出方式により検出する焦点検出手段と、
を備えるカメラ。
【請求項10】
請求項9に記載のカメラにおいて、
前記第2の光電変換部からの出力信号に基づいて、前記結像光学系の任意の像面における像の画像データを生成する第2の画像生成手段をさらに備えるカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子およびカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
位相差検出方式による焦点検出を行うカメラが知られている(特許文献1参照)。このカメラでは、画像用撮像素子とは、別に配置された焦点検出専用の撮像素子を用いて、焦点検出を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−11070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のように、画像用撮像素子と焦点検出専用の撮像素子とを別々に設ける場合、それぞれの位置調整が必要になってしまう。したがって、1つの撮像素子を用いて、撮像画像の生成および位相差検出方式による焦点検出の両方を行えることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様による撮像素子は、二次元状に配置された複数の第1の光電変換部と、光の入射方向から見て、前記第1の光電変換部の横に配置された複数のマイクロレンズと、二次元状に配置され、前記マイクロレンズを透過した光を受光する複数の第2の光電変換部と、を備え、前記第1の光電変換部は、前記マイクロレンズと略同一面上に配置される。
第2の態様による撮像素子は、透明基板と、前記透明基板の光が入射する第1の面に配置された複数の第1の光電変換部と、前記透明基板の前記第1の面において前記第1の光電変換部とは異なる領域に配置された複数のマイクロレンズと、前記透明基板の前記第1の面と対向する第2の面に配置され、前記マイクロレンズを透過した光を受光する複数の第2の光電変換部と、を備える。
第3の態様による撮像素子は、複数の第1の光電変換部と、光の入射方向から見て前記第1の光電変換部と重ならない位置に配置された複数のマイクロレンズとが二次元状に配置される第1受光部と、二次元状に配置され前記マイクロレンズを透過した光を受光する複数の第2の光電変換部を有する第2受光部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、1つの撮像素子を用いて、撮像画像の生成および位相差検出方式による焦点検出の両方を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施の形態によるデジタルカメラの構成を例示する図である。
図2】撮像素子の断面の構成を例示する図である。
図3】撮像素子の上面の構成を例示する図である。
図4】撮像素子の下面の構成を例示する図である。
図5】第2の画像生成処理を説明するための図である。
図6】変形例1における撮像素子の上面の構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態によるデジタルカメラの構成を例示する図である。デジタルカメラ1は、交換レンズ2とカメラボディ3から構成される。交換レンズ2は、マウント部4を介してカメラボディ3に装着される。
【0009】
交換レンズ2は、レンズ制御部5、主レンズ9、ズームレンズ8、フォーカシングレンズ7、および絞り6を含む。主レンズ9、ズームレンズ8、およびフォーカシングレンズ7は、結像光学系を構成する。レンズ制御部5は、マイクロコンピュータとメモリなどで構成され、フォーカシングレンズ7と絞り6の駆動制御、絞り6の開口状態の検出、ズームレンズ8およびフォーカシングレンズ7の位置検出、後述するカメラボディ3側のボディ制御部14に対するレンズ情報の送信、ボディ制御部14からのカメラ情報の受信などを行う。
【0010】
カメラボディ3は、撮像素子12、撮像素子駆動制御部19、ボディ制御部14、液晶表示素子駆動回路15、液晶表示素子16、接眼レンズ17、および操作部材18などを含み、着脱可能なメモリカード20が装着されている。撮像素子12は、交換レンズ2の予定焦点面に配置されて交換レンズ2により結像される被写体像を撮像する。
【0011】
ボディ制御部14は、マイクロコンピュータとメモリなどで構成される。ボディ制御部14は、デジタルカメラ全体の動作制御を行う。ボディ制御部14とレンズ制御部5は、マウント部4の電気接点部13を介して通信を行うように構成される。
【0012】
撮像素子駆動制御部19は、ボディ制御部14からの指示に応じて撮像素子12で必要な制御信号を生成する。液晶表示素子駆動回路15は、ボディ制御部14からの指示に応じて液晶ビューファインダー(EVF:電子ビューファインダー)を構成する液晶表示素子16を駆動する。撮影者は、接眼レンズ17を介して液晶表示素子16に表示された像を観察する。メモリカード20は、画像データなどを格納記憶する記憶媒体である。
【0013】
交換レンズ2によって撮像素子12上に結像された被写体像は、撮像素子12によって光電変換される。撮像素子12は、撮像素子駆動制御部19からの制御信号によって光電変換信号の蓄積および信号読出しのタイミング(フレームレート)が制御される。撮像素子12からの出力信号は、不図示のA/D変換部でデジタルデータに変換され、ボディ制御部14へ送られる。
【0014】
ボディ制御部14は、撮像素子12からの所定の焦点検出エリアに対応する出力信号に基づいてデフォーカス量を算出し、このデフォーカス量をレンズ制御部5へ送る。レンズ制御部5は、ボディ制御部14から受信したデフォーカス量に基づいてフォーカシングレンズ駆動量を算出し、このレンズ駆動量に基づいてフォーカシングレンズ7を不図示のモーター等で駆動して合焦位置へ移動させる。
【0015】
また、ボディ制御部14は、撮影指示後に撮像素子12から出力された信号に基づいて記録用の画像データを生成する。ボディ制御部14は、生成した画像データをメモリカード20に格納するとともに液晶表示素子駆動回路15へ送り、液晶表示素子16に再生表示させる。
【0016】
なお、カメラボディ3にはシャッターボタン、焦点検出エリアの設定部材などを含む操作部材18が設けられている。ボディ制御部14は、これらの操作部材18からの操作信号を検出し、検出結果に応じた動作(撮影処理、焦点検出エリアの設定など)の制御を行う。
【0017】
<撮像素子の説明>
本実施形態は、撮像素子12に特徴を有するので、以降は撮像素子12を中心に説明する。図2は、撮像素子12の断面の構成を例示する図である。なお、図2では、撮像素子12の光入射側を上側とした状態を示している。このため、以下の説明では、撮像素子12の光入射側の方向を「上方」又は「上」とし、光入射側に対して反対側の方向を「下方」又は「下」とする。撮像素子12は、透明基板(SiO基板)31を有し、透明基板31の上面が交換レンズ2の予定焦点面に位置するように配置されている。
【0018】
透明基板31の上面には、複数の光電変換部(フォトダイオード)32が配置されている。以下、透明基板31の上面に配置された光電変換部32を、上側光電変換部32と呼ぶ。各上側光電変換部32の下側には配線層33が配置され、各上側光電変換部32の上側にはカラーフィルタ(不図示)が配置されている。
【0019】
また、透明基板31の上面には、複数のマイクロレンズ34が配置されている。マイクロレンズ34は、例えば凸レンズでなり、複数の上側光電変換部32の間に挟まれるようにして配置されている。すなわち、マイクロレンズ34は、光の入射方向から見て、上側光電変換部32の横に配置されており、マイクロレンズ34と上側光電変換部32とは、光の入射方向から見て、互いに重ならないように配置されている。また、透明基板31の厚さは、マイクロレンズ34の焦点距離と略同一の厚さで構成されている。したがって、透明基板31の下面がマイクロレンズ34の焦点面と略一致している。
【0020】
透明基板31の下面には、複数の光電変換部(フォトダイオード)35が配置されている。以下、透明基板31の下面に配置された光電変換部35を、下側光電変換部35と呼ぶ。各下側光電変換部35の下側には配線層36が配置されている。各マイクロレンズ34の間に入射した光束は、透明基板31の上面の上側光電変換部32および配線層33によって遮られるため、下側光電変換部35には入射しないようになっている。そのため、下側光電変換部35は、マイクロレンズ34を透過した光束のみを受光できるようになっている。また、下側光電変換部35は、透明基板31の下面上において、マイクロレンズ34を垂直に投影した範囲だけでなく、上側光電変換部32を垂直に投影した範囲にも配置することができるので、受光面積を広くすることができる。また、複数の上側光電変換部32に挟まれている分、各マイクロレンズ34同士の間隔が空いているので、透明基板31の下面において、交換レンズ2からの光束がマイクロレンズ34の口径よりも大きく広がる場合にも、隣接するマイクロレンズ34同士における透過光束の重複(クロストーク)を防止することができる。
【0021】
図3は、撮像素子12における透明基板31の上面の構成を例示する平面図である。ここでは、代表して8×8画素分を抜き出して図示している。透明基板31の上面における画素は、上側光電変換部32とカラーフィルタとで構成されている。具体的に、透明基板31の上面には、赤(R)成分の光を光電変換する画素(R画素)、緑(G)成分の光を光電変換する画素(G画素)、青(B)成分の光を光電変換する画素(B画素)の3種類が設けられている。R画素は、赤色成分の光のみを透過させるカラーフィルタと、該カラーフィルタの背後に配置された上側光電変換部32とから構成されている。G画素は、緑色成分の光のみを透過させるカラーフィルタと、該カラーフィルタの背後に配置された上側光電変換部32とから構成されている。B画素は、青色成分の光のみを透過させるカラーフィルタと、該カラーフィルタの背後に配置された上側光電変換部32とから構成されている。これらのR画素、G画素、およびB画素は、ベイヤー配列で配置されている。
【0022】
また、各画素は、略正方形状の一角が四分円形状に切りかかれた形状にレイアウトされている。左上がB画素、右上および左下がG画素、右下がR画素である4画素を1組とすると、これら1組の画素群の中央が円形に繰り抜かれた形状となっており、上述したマイクロレンズ34が配置されている。すなわち、マイクロレンズ34は、上がB画素、右上および左下がG画素、右下がR画素である4画素から構成される1組に対して、1つずつ設けられている。なお、マイクロレンズ34の開口部の大きさを調整することで、透明基板31の上面における各画素の受光面積を適宜調節することができる。
【0023】
図4は、撮像素子12における透明基板31の下面の構成を例示する平面図である。ここでは、代表して40×40個の下側光電変換部35を抜き出して図示している。各下側光電変換部35は、略正方形状にレイアウトされ、2次元状に配列されている。また、図4には、透明基板31の上面に配置されているマイクロレンズ34を透明基板31の下面に垂直に投影した範囲を点線で示している。図4に示すように、各マイクロレンズ34の背後には、複数の下側光電変換部35が配置されており、1つのマイクロレンズ34に対して10×10個の下側光電変換部35が設けられている。なお、1つのマイクロレンズ34に対して設けられる下側光電変換部35の数は、この本実施の形態の数に限定されない。また、本実施形態では、マイクロレンズ34と下側光電変換部35との間にはカラーフィルタが設けられていない。
【0024】
ところで、本実施形態のデジタルカメラ1では、撮像素子12を用いて、通常のカメラとしての機能を実現することもできるし、1回の撮影で得られたデータから撮影後に任意の距離にピントの合った画像を生成できるライトフィールドカメラとしての機能を実現することもできる。以下、これらの機能について説明する。
【0025】
<通常のカメラ機能>
まず、撮像素子12を用いて、通常のカメラ機能を実現する場合について説明する。この場合、ボディ制御部14は、撮像素子12の下側光電変換部35からの出力信号を用いて、交換レンズ2の焦点調節状態を検出する焦点検出処理を行い、交換レンズ2のピントを合わせる。そして、ボディ制御部14は、撮像素子12の上側光電変換部32からの出力信号を用いて通常の撮影画像データを生成する第1の画像生成処理を行う。
【0026】
まず、焦点検出処理について説明する。本実施形態の焦点検出処理は、撮像素子12の下側光電変換部35からの出力信号を用いて、瞳分割型位相差検出方式により行われる。
【0027】
上述したように、撮像素子12では、各マイクロレンズ34の焦点面に、複数の下側光電変換部35が設けられている。各マイクロレンズ34に対応する下側光電変換部35は、各マイクロレンズ34によって交換レンズ2の射出瞳上に投影される。交換レンズ2の射出瞳面の異なる領域を通過した光束は、各マイクロレンズ34を介して異なる下側光電変換部35へそれぞれ導かれる。例えば、交換レンズ2の射出瞳面の縦方向の一対の領域を通過した光束は、一対の縦方向の下側光電変換部35の列に導かれる。したがって、この一対の縦方向の下側光電変換部35の列からの出力に基づいて、この一対の光束による被写体像の位置ずれ量を検出し、この位置ずれ量に基づいて交換レンズ2のデフォーカス量を検出できる。なお、瞳分割型位相差検出方式によるデフォーカス量の演算方法は、周知であるため、詳細の説明は省略する。
【0028】
また、各マイクロレンズ34では、複数の下側光電変換部35が2次元マトリクス状に配置されているため、横方向および斜め方向についても一対の光束による被写体像の位置ずれ量を検出してデフォーカス量を検出できる。
【0029】
さらに、マイクロレンズ34は、撮像素子12における透明基板31の上面全体に散らばって配置されているため、撮影画面の全体に亘ってデフォーカス量を検出することができる。
【0030】
次に、第1の画像生成処理について説明する。上述したように、透明基板31の上面は、交換レンズ2の予定焦点面に配置されており、透明基板31の上面には、交換レンズ2による被写体像が結像される。透明基板31の上面に配置された上側光電変換部32は、この交換レンズ2により結像された被写体像を撮像する。また、透明基板31の上面の画素(上側光電変換部32により構成される画素)は、ベイヤー配列で配置されている。したがって、第1の画像生成処理において、ボディ制御部14は、撮像素子12における上側光電変換部32の出力信号からベイヤー配列の画像信号を取得する。
【0031】
ボディ制御部14は、取得したベイヤー配列の画像信号において、各画素で不足する色成分を隣接する画素からの信号を用いて補間処理によって生成する。たとえば、G画素の場合、R画像信号およびB画像信号が存在しないので、周辺の画素の信号を用いて色補間処理を行う。このようなベイヤー配列における色補間処理は周知であるので、詳細な説明は省略する。ボディ制御部14は、この色補間処理によって、透明基板31の上面に配置された画素数でなるカラー画像データ(RGB)を生成する。ボディ制御部14は、このようにして得られたカラー画像データを用いて、例えば、記録用画像のファイルを生成し、メモリカード20に記録する。
【0032】
本実施形態の撮像素子12は、撮像面の一部に焦点検出専用の画素を配置した撮像素子とは異なり、撮像用の画素(上側光電変換部32で構成される画素)の抜けがない。そのため、第1の画像生成処理において、撮像用の画素の抜けを補間する補間処理を行う必要がないので、補間処理による画質の低下がなく、且つ簡易な処理で撮像画像を生成することができる。
【0033】
<ライトフィールドカメラ機能>
次に、撮像素子12を用いて、ライトフィールドカメラ機能を実現する場合について説明する。この場合、ボディ制御部14は、撮像素子12の下側光電変換部35からの出力信号を用いて、任意の距離にピントの合った画像を生成する第2の画像生成処理を行う。本実施形態のデジタルカメラ1では、ユーザは、操作部材18を介して、どの被写体位置(距離)にピントの合った画像を生成するのかを指定することができるようになっている。このような画像の生成方法としては、例えば、特開2007−4471号公報に記載されている方法を用いる。
【0034】
具体的に、第2の画像生成処理の原理を、図5を用いて説明する。ここでは、一例として、1つの画素が、1つのマイクロレンズ34に対応するものとして説明する。なお、本実施形態の撮像素子12では、上述したように1つのマイクロレンズ34に対して10×10個の下側光電変換部35が設けられているが、図5では、図示の都合上、1つのマイクロレンズ34に対応する下側光電変換部35の数を5個として記載している。
【0035】
図5(a)は、交換レンズ2による結像面からの距離(像面のずれ量)がhである像面paにピントが合った撮像画像を生成する原理を説明する図である。図5(a)において、像面paの像位置50に対応する交換レンズ2からの入射光束51〜55は、それぞれマイクロレンズ34を通過した後、画素71a〜71eの下側光電変換部a1,b2,c3,d4,e5においてそれぞれ受光される。したがって、下側光電変換部a1,b2,c3,d4およびe5の出力信号を合成することで、像面paの像位置50に対応する画素71cの画像信号を生成することができる。他の像位置についても同様にして出力信号を合成し、対応する画素の画像信号を生成することで、像面paにピントが合った撮像画像を生成することができる。
【0036】
また、図5(b)は、交換レンズ2による結像面からの距離(像面のずれ量)が0である像面pbにピントが合った撮像画像、すなわち結像面の撮像画像を生成する原理を説明する図である。図5(b)において、像面pbの像位置60に対応する交換レンズ2からの入射光束61〜65は、それぞれマイクロレンズ34を通過した後、画素71cの下側光電変換部c1,c2,c3,c4,c5においてそれぞれ受光される。したがって、下側光電変換部c1,c2,c3,c4およびc5の出力信号を合成することで、像面pbの像位置60に対応する画素61cの画像信号を生成することができる。他の像位置についても同様にして出力信号を合成し、対応する画素の画像信号を生成することで、像面pbにピントが合った撮像画像を生成することができる。
【0037】
このようにして、ボディ制御部14は、結像面からの距離(像面のずれ量)に応じて、下側光電変換部35からの出力信号を適宜選択して合成し、各画素の画像信号を生成することで、任意の距離の像面にピントの合った撮像画像を生成する。
【0038】
なお、図5(a),(b)では、ユーザにより指定された像面の位置が結像面よりも前側(交換レンズ2に近い位置)にある場合の撮像画像の生成方法を説明したが、指定像面の位置が結像面よりも後側(交換レンズ2から遠い位置)にある場合にも、同様にして撮像画像を生成することができる。
【0039】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)撮像素子12は、二次元状に配置された複数の上側光電変換部32と、光の入射方向から見て、上側光電変換部32の横に配置された複数のマイクロレンズ34と、二次元状に配置され、マイクロレンズ34を透過した光を受光する複数の下側光電変換部35と、を備える。これにより、デジタルカメラ1のボディ制御部14は、上側光電変換部32からの出力信号に基づいて画像データを生成することができ、下側光電変換部35からの出力信号に基づいて、交換レンズ2の焦点調節状態を位相差検出方式により検出することができる。したがって、画像生成用の撮像素子と焦点検出用の撮像素子とを別々に設ける場合のような製造時の高度な位置合わせを必要とせず、1つの撮像素子12の出力信号を用いて、撮像画像の生成と位相差検出方式による焦点検出とを両方行うことができる。また、デジタルカメラ1のボディ制御部14は、下側光電変換部35からの出力信号に基づいて、交換レンズ2の任意の像面における像の画像データを生成することもできる。したがって、1つの撮像素子12を用いて、通常のカメラ機能を実現することもできるし、ライトフィールドカメラ機能を実現することもできる。また、従来のライトフィールドカメラで通常の撮像画像を生成する場合には、計算量が多くなってしまう。これに対して、本実施形態の撮像素子12では、通常の撮像画像については、上側光電変換部32からの出力信号に基づいて生成することができるので、計算量は従来の方法と同等である。
【0040】
(2)上記(1)の撮像素子12において、マイクロレンズ34と下側光電変換部35との間にはカラーフィルタが設けられていないように構成した。この場合、第2の画像生成処理により生成される撮像画像は、モノクロの画像となるが、カラーフィルタで吸収されない分、下側光電変換部35で受光する光量が多くなるので、焦点検出処理における焦点検出精度を高めることができる。
【0041】
(変形例1)
上述した実施の形態では、透明基板31の上面の画素(上側光電変換部32)が正方格子状に配置されている例について説明したが、これに限らなくてよく、例えば、ハニカム構造で配置されていてもよい。図6は、この場合の撮像素子12における透明基板31の上面の一例を示す図である。図6に示す撮像素子12において、各画素(上側光電変換部32)は、略正六角形形状を3等分した形状にレイアウトされており、1つの略正六角形は、R画素、G画素およびB画素がそれぞれ1個ずつの3画素で構成されている。この略正六角形を構成する3画素の組が、ハニカム構造で配置されている。また、R画素、G画素およびB画素は、同色の画素同士が隣接しないように配置されている。
【0042】
各マイクロレンズ34は、略正六角形を構成する画素の組6つに囲まれるようにして配置されている。なお、マイクロレンズ34は、画素数に対する割合としては、6個の画素に対して、1つずつ設けられている。また、マイクロレンズ34のみに着目すると、マイクロレンズ34は、一列ごとに半ピッチずれて配置されている。
【0043】
変形例1の撮像素子12において、ボディ制御部14は、上述した実施の形態と同様に、上側光電変換部32からの出力信号に基づいて第1の画像生成処理を行い、カラー画像データを生成する。なお、各画素において、不足する色成分の信号については、適宜補間処理を行えばよい。
【0044】
(変形例2)
上述した実施の形態では、マイクロレンズ34と上側光電変換部32とが同一面(透明基板31の上面)に配置されている例について説明した。しかしながら、必ずしもマイクロレンズ34と上側光電変換部32とが同一面に配置されていなくてもよく、多少ずれていてもよい。少なくとも、マイクロレンズ34は、光の入射方向から見て、上側光電変換部32の横に配置されていればよい。換言すれば、マイクロレンズ34と上側光電変換部32とは、光の入射方向から見て互いに重ならないように配置されていればよい。
【0045】
(変形例3)
上述した実施の形態では、マイクロレンズ34と下側光電変換部35との間にはカラーフィルタが設けられていない例について説明した。しかしながら、マイクロレンズ34と下側光電変換部35との間にカラーフィルタを配置するようにしてもよい。例えば、1つのマイクロレンズ34に対して、一つのカラーフィルタを設けるようにしてもよい。カラーフィルタの種類としては、例えばRGB3色であるとする。この場合、ボディ制御部14は、焦点検出処理において、RGB各色のデフォーカス量を算出する。これにより、RGB各色の色収差を検出することができる。また、この場合、ボディ制御部14は、第2の画像生成処理において、カラー画像データを生成することができる。また例えば、1つの下側光電変換部35に対して、一つのカラーフィルタを設けるようにしてもよい。
【0046】
(変形例4)
上述した実施の形態では、マイクロレンズ34が凸レンズである例について説明したが、これに限らなくてよく、マイクロレンズ34が凹レンズであってもよい。凹レンズのマイクロレンズ34については、透明基板31に対してエッチングを施すことにより形成することができるため、簡易に製造することができる。また、マイクロレンズ34は、回折レンズであってもよい。
【0047】
(変形例5)
デジタルカメラ1において、上記第2の画像生成処理を行わないように構成してもよい。この場合、下側光電変換部35からの出力信号を用いて焦点検出処理を行うことができればよい。すなわち、複数の下側光電変換部35において、交換レンズ2の射出瞳の異なる領域を透過した光束が、異なる下側光電変換部35で受光されるようにすればよいので、各マイクロレンズ34に対して、複数の下側光電変換部35が必ずしも2次元マトリクス状に配置されていなくてもよい。例えば、各マイクロレンズ34に対して複数の下側光電変換部35が偏って配置されていてもよいし、各マイクロレンズ34に対して1つの下側光電変換部35のみを設け、この下側光電変換部35の半分を遮光するようにしてもよい。
【0048】
また、変形例5において、撮影画面の全範囲においてデフォーカス量を検出する必要がなく、必要な位置でのみデフォーカス量を検出すればよい場合には、その位置に対応する位置にのみマイクロレンズ34を設けるようにしてもよい。
【0049】
以上の説明はあくまで一例であり、上記の実施形態の構成に何ら限定されるものではない。また、上記実施形態に各変形例の構成を適宜組み合わせてもかまわない。
【符号の説明】
【0050】
1…デジタルカメラ、2…交換レンズ、12…撮像素子、14…ボディ制御部、31…透明基板、32…上側光電変換部、34…マイクロレンズ、35…下側光電変換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6