特許第6221382号(P6221382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221382
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20171023BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20171023BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   C08G59/68
   H01L23/30 R
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-126048(P2013-126048)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2015-941(P2015-941A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 英俊
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
【審査官】 亀谷 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−248831(JP,A)
【文献】 特開平04−236216(JP,A)
【文献】 特開平04−258625(JP,A)
【文献】 特開平03−239718(JP,A)
【文献】 特開2006−265415(JP,A)
【文献】 特開2006−036936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 63/00−63/10
H01L 23/28−23/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、(B)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂と、(C)下記一般式(I)で示されるホスフィン化合物を含む硬化促進剤と、(D)無機充填剤と、を含有し、
(C)下記一般式(I)において、ベンゼン環の水酸基の置換位置がリン原子に対してパラ位であるエポキシ樹脂組成物。
【化1】

〔式(I)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表し、mは1〜3の整数を表す。〕
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂が、ビフェニレン型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(B)フェノール樹脂が、ビフェニレン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型樹脂、及びトリフェニルメタン型フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のフェノール樹脂を含む請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
(A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂を含み、(B)フェノール樹脂が、ビフェニレン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂及びノボラック型フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のフェノール樹脂を含む請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
素子と、
前記素子を封止する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物と、
を有する電子部品装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、成形材料、積層板用及び接着剤用材料等の分野において、エポキシ樹脂が広範囲で使用されている。これらの分野では、生産性向上の観点から速硬化性が要求されるため、エポキシ樹脂組成物には硬化反応を促進する化合物、すなわち硬化促進剤が一般に用いられている。また、トランジスタ、IC(Integrated Circuit)等の電子部品の素子に関する封止技術の分野でも、エポキシ樹脂をベースとした組成物が広く用いられている。その理由は、エポキシ樹脂が成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性においてバランスがとれているためである。特に、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とフェノールノボラック硬化剤との組合せは、上記諸特性において優れたバランスを有するため、IC封止用成形材料のベース樹脂として主流になっている。そして、そのようなエポキシ樹脂組成物においても、一般に、3級アミン、4級アンモニウム、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、イミダゾール等の窒素含有化合物;及びホスフィン類、ホスホニウム塩等のリン化合物が硬化促進剤として使用されている。
【0003】
しかしながら、これらの硬化促進剤を用いた場合、エポキシ樹脂組成物の保存安定性が低く、樹脂組成物の保管、輸送等を低温で行う必要があり、コスト高の原因となっている。このような問題から保存安定性に優れた硬化促進剤の開発が望まれている。
【0004】
エポキシ樹脂組成物の保存安定性を向上させるため、テトラ置換ホスホニウムテトラ置換ボレート(例えば、特許文献1〜3参照)等を用いる化学的方法、及びマイクロカプセル化(例えば、特許文献4及び5参照)等の物理的方法による潜在化が提案されている。
【0005】
また、はんだ耐熱性及び耐湿信頼性を向上させるため、低分子量のエポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂及び硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを用いるエポキシ樹脂組成物が開発されている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭49−118798号公報
【特許文献2】特開平9−328535号公報
【特許文献3】特開平11−5829号公報
【特許文献4】特開平8−337633号公報
【特許文献5】特開平9−77959号公報
【特許文献6】特公平7−78108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のテトラ置換ホスホニウムテトラ置換ボレート等を用いる化学的方法及びマイクロカプセル化等の物理的方法は、エポキシ樹脂組成物の保存安定性が向上するものの、保存安定性と速硬化性の両立を満足するものではなかった。特に、マイクロカプセル化の手法の場合、エポキシ樹脂組成物の製造工程においてマイクロカプセルが壊れる可能性があり、全く潜在性を示さなくなる場合がある。一方で、製造工程で壊れない程にマイクロカプセルを頑丈にした場合は、硬化反応においてゆっくりとマイクロカプセルが壊れるため速硬化性に問題があった。このような状況から、実用上重要な速硬化性を優先させる観点から、マイクロカプセル化した硬化促進剤を用いた上で、マイクロカプセルを壊さないようにエポキシ樹脂組成物の保管、輸送等を低温で行っているのが現状である。また、特許文献6のエポキシ樹脂組成物では良好な保存安定性を発現させることは困難であった。
【0008】
上述のように、これまでの硬化促進剤ではエポキシ樹脂組成物の保存安定性を解決することができず、保存安定性が良好となる硬化促進剤の開発が望まれている。
したがって、本発明は、保存安定性に優れるエポキシ樹脂組成物、及び前記エポキシ樹脂組成物により封止された素子を備える電子部品装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、分子内にヒドロキシ基を有するホスフィンを硬化促進剤として用いることにより、保存安定性に優れるエポキシ樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下の通りである。
【0010】
<1> (A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、(B)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂と、(C)下記一般式(I)で示されるホスフィン化合物を含む硬化促進剤と、(D)無機充填剤と、を含有するエポキシ樹脂組成物。
【0011】
【化1】
【0012】
式(I)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表し、mは1〜3の整数を表す。
【0013】
<2> (A)エポキシ樹脂が、ビフェニレン型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む前記<1>に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0014】
<3> (B)フェノール樹脂が、ビフェニレン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型樹脂、及びトリフェニルメタン型フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のフェノール樹脂を含む前記<1>又は<2>に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0015】
<4> (A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂を含み、(B)フェノール樹脂が、ビフェニレン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂及びノボラック型フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のフェノール樹脂を含む前記<1>に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0016】
<5> 素子と、前記素子を封止する前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物と、を有する電子部品装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、保存安定性に優れるエポキシ樹脂組成物、及びこのエポキシ樹脂組成物により封止された素子を備える電子部品装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。更に本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
<エポキシ樹脂組成物>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、(B)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂と、(C)下記一般式(I)で示されるホスフィン化合物を含む硬化促進剤と、(D)無機充填剤と、を含有する。
【0020】
【化2】
【0021】
式(I)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表し、mは1〜3の整数を表す。
【0022】
エポキシ樹脂組成物が、分子内にヒドロキシ基を有するホスフィンを硬化促進剤として含有することで、保存安定性に優れる理由は、以下のように考えることができる。
ヒドロキシ基が離離してイオンとなっていない場合、ヒドロキシ基は強い誘起効果を示すとされている。この誘起効果によりリン原子の求核性が低下し、硬化反応が進行しづらくなるため、良好な保存安定性を発現すると考えられる。
【0023】
[(A)エポキシ樹脂]
(A)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含む。1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、ビフェニレン型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。ここで挙げたエポキシ樹脂を、特定エポキシ樹脂ともいう。特定エポキシ樹脂は、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
(A)エポキシ樹脂は、特定エポキシ樹脂以外のその他のエポキシ樹脂を含有してもよい。その他のエポキシ樹脂としては、当該分野で通常用いられるエポキシ樹脂を挙げることができ、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0025】
(A)エポキシ樹脂として特定エポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂全量中の特定エポキシ樹脂の総含有率は、特定エポキシ樹脂のそれぞれの性能を発揮する観点から、60質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
【0026】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、90g/eq〜500g/eqであることが好ましく、140g/eq〜450g/eqであることがより好ましく、190g/eq〜400g/eqであることが更に好ましい。
【0027】
エポキシ樹脂の融点又は軟化点は、50℃〜240℃であることが好ましく、65℃〜220℃であることがより好ましく、80℃〜200℃であることが更に好ましい。
【0028】
[(B)フェノール樹脂]
硬化剤として、(B)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂を用いる。このようなフェノール樹脂としては、ビフェニレン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合樹脂、及びトリフェニルメタン型フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。ここで挙げたフェノール樹脂を、特定フェノール樹脂ともいう。特定フェノール樹脂は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(B)フェノール樹脂は、特定フェノール樹脂以外のその他のフェノール樹脂を含有してもよい。その他のフェノール樹脂としては、当該分野で通常用いられるフェノール樹脂を挙げることができる。
【0030】
(B)フェノール樹脂として特定フェノール樹脂を用いる場合、特定フェノール樹脂のそれぞれの性能を発揮する観点から、フェノール樹脂全量中の特定フェノール樹脂の総含有率は、60質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
【0031】
フェノール樹脂の水酸基当量は、70g/eq〜300g/eqであることが好ましく、120g/eq〜250g/eqであることがより好ましく、170g/eq〜200g/eqであることが更に好ましい。
【0032】
フェノール樹脂の融点又は軟化点は、50℃〜130℃であることが好ましく、60℃〜110℃であることがより好ましく、70℃〜90℃であることが更に好ましい。
【0033】
(A)エポキシ樹脂と(B)フェノール樹脂との含有比率は、エポキシ樹脂のエポキシ当量に対するフェノール樹脂の水酸基当量の比率(水酸基当量/エポキシ当量)が0.5〜2の範囲となるように設定されることが好ましく、より好ましくは0.7〜1.5、更に好ましくは0.8〜1.3である。前記比率が0.5以上であると、エポキシ樹脂の硬化が充分となり、硬化物の耐熱性、耐湿性、及び電気特性に優れる傾向がある。また、前記比率が2以下であると、硬化樹脂中に残存するフェノール性水酸基の量が抑えられ、電気特性及び耐湿性に優れる傾向がある。
【0034】
(A)エポキシ樹脂と(B)フェノール樹脂との組み合わせの例としては、以下が挙げられる。
(A)エポキシ樹脂が、ビフェニレン型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を含み、(B)フェノール樹脂が、ビフェニレン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型樹脂、及びトリフェニルメタン型フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のフェノール樹脂を含む。
(A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂を含み、(B)フェノール樹脂が、ビフェニレン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂及びノボラック型フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のフェノール樹脂を含む。
【0035】
[(C)硬化促進剤]
(C)硬化促進剤は、下記一般式(I)で示されるホスフィン化合物を含む。
【0036】
【化3】
【0037】
式(I)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。mは1〜3の整数を表す。
【0038】
式(I)におけるR及びRで表されるアルキル基の炭素数は、1〜12であり、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜6が更に好ましい。
及びRで表されるアルコキシ基の炭素数は、1〜12であり、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜6が更に好ましい。
【0039】
また、式(I)におけるR及びRで表されるアルキル基及びアルコキシ基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。
【0040】
式(I)におけるR及びRで表されるアルキル基及びアルコキシ基は、置換基を有していてもよい。前記置換基としては、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子等が挙げられる。R及びRで表されるアルキル基及びアルコキシ基は、無置換であることが好ましい。
【0041】
式(I)におけるR及びRは、水素原子であることが好ましい。
【0042】
式(I)において、mは1〜3の整数を表し、保存安定性の観点からは、mは2又は3が好ましく、3がより好ましい。
【0043】
硬化促進剤としては、前記一般式(I)で示されるホスフィン化合物のほかに、従来公知のその他の硬化促進剤を併用してもよい。その他の硬化促進剤としては、当該技術分野で通常用いられているものを適宜選択して使用することができる。全硬化促進剤中の前記一般式(I)で示されるホスフィン化合物の含有率は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが更に好ましい。
【0044】
[(D)無機充填剤]
エポキシ樹脂組成物は、(D)無機充填剤を含有する。無機充填剤を含有することで、硬化物の熱線膨張係数、熱伝導率、弾性率等の向上を図ることができる。
【0045】
無機充填剤は、一般に封止用成形材料に用いられているものを適宜選択して使用することができ、特に限定されない。例えば、無機充填剤としては、溶融シリカ、結晶シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の粒子;これらを球形化したビーズなどが挙げられる。
【0046】
また、難燃効果のある無機充填剤を用いてもよい。難燃効果のある無機充填剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛との複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などの粒子が挙げられる。なかでも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカ粒子が、高熱伝導性の観点からはアルミナ粒子が好ましい。これらの無機充填剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
無機充填剤の含有率は、本発明の効果が得られれば特に制限はなく、エポキシ樹脂組成物の全量に対して55体積%〜90体積%の範囲であることが好ましい。無機充填剤の含有率が55体積%以上であると、硬化物の熱線膨張係数、熱伝導率、弾性率等に優れる傾向があり、90体積%以下であると、エポキシ樹脂組成物の粘度の上昇が抑えられて流動性に優れ、パッケージの成形が容易になる傾向がある。
【0048】
無機充填剤の平均粒子径は、1μm〜50μmが好ましく、10μm〜30μmがより好ましい。無機充填剤の平均粒子径が1μm以上であると、エポキシ樹脂組成物の粘度の上昇が抑えられやすく、50μm以下であると、エポキシ樹脂組成物と無機充填剤との混合性が向上し、硬化によって得られるパッケージが均質化する傾向があり、特性のばらつきが抑えられ、狭い領域への充填性が向上する傾向がある。
【0049】
流動性の観点からは、無機充填剤の粒子形状は角形より球形が好ましく、無機充填剤の粒度分布は広範囲に分布したものが好ましい。例えば、無機充填剤を75体積%以上含有する場合、その70質量%以上を球状粒子とし、この球状粒子の粒径は0.1μm〜80μmという広範囲に分布したものが好ましい。このような無機充填剤は最密充填構造を形成しやすいため、無機充填剤の含有率を増加させてもエポキシ樹脂組成物の粘度上昇が少なく、流動性に優れたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0050】
[陰イオン交換体]
エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて陰イオン交換体を含有してもよい。特に、エポキシ樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、陰イオン交換体を含有させることが好ましい。
【0051】
陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来から当該技術分野において一般に使用されるものが挙げられる。陰イオン交換体としては、下記式(II)で示されるようなハイドロサルタイト化合物;マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及びビスマスから選ばれる元素の含水酸化物;等が挙げられる。陰イオン交換体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO (II)
(0<X≦0.5、mは正の数)
【0053】
ハイドロサルタイト化合物は、ハロゲンイオンなどの陰イオンを構造中のCO3と置換することで捕捉し、結晶構造の中に取り込まれたハロゲンイオンは約350℃以上で結晶構造が破壊するまで脱離しない性質を持つ化合物である。このような性質を持つハイドロサルタイトを例示すれば、天然物として産出されるMg6Al(OH)16CO・4HO、合成品としてMg4.3Al(OH)12.6CO・mHO等が挙げられる。また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、(B)成分のフェノール樹脂の影響で、純粋を使用した硬化物の抽出液がpH3〜5と酸性を示す。したがって、本発明のエポキシ樹脂組成物は、両性金属であるアルミニウムに対しては腐食しやすい環境となるが、ハイドロサルタイト化合物は酸を吸着する作用も持つことから抽出液を中性に近づける作用もある。このハイドロサルタイト化合物の添加による作用効果により、アルミニウムの腐食を効果的に防ぐことができると推察できる。
【0054】
また、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマス及びアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物も、ハロゲンイオンを水酸化物イオンと置換することで捕捉でき、さらにこれらのイオン交換体は酸性側で優れたイオン交換能を示す。本発明のエポキシ樹脂組成物については、前述のように抽出液が酸性側となることから、これらの含水酸化物もアルミニウムの腐食防止に対し特に有効である。このような含水酸化物を例示すれば、MgO・HO、Al・nHO、ZrO・HO、Bi・HO、Sb・nHO等の含水酸化物が挙げられる。
【0055】
陰イオン交換体の含有率は、ハロゲンイオン等の陰イオンを捕捉できる充分な量であれば特に制限はない。エポキシ樹脂組成物が陰イオン交換体を含有する場合、(A)エポキシ樹脂に対する陰イオン交換体の含有率は、0.1質量%〜30質量%であることが好ましく、1質量%〜5質量%であることがより好ましい。
【0056】
[離型剤]
エポキシ樹脂組成物は、成形工程において金型に対する良好な離型性を発揮させる観点から、離型剤を含有してもよい。離型剤の種類は特に制限されず、当該技術分野において公知の離型剤が挙げられる。具体的に、離型剤としては、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、離型剤としては、酸化型又は非酸化型のポリオレフィン系ワックスが好ましい。
【0057】
ポリオレフィン系ワックスとしては、市販品ではヘキスト社製のH4、PE、PEDシリーズ等の数平均分子量が500〜10000程度の低分子量ポリエチレンなどが挙げられる。
【0058】
エポキシ樹脂組成物が離型剤としてポリオレフィン系ワックスを含有する場合、ポリオレフィン系ワックスの含有率としては、(A)エポキシ樹脂に対して0.01質量%〜10質量%が好ましく、0.1質量%〜5質量%がより好ましい。ポリオレフィン系ワックスの含有率が0.01質量%以上であると離型性が充分となる傾向があり、10質量%以下であると接着性が充分となる傾向がある。
また、ポリオレフィン系ワックスにその他の離型剤を併用する場合、その他の離型剤の含有率は、(A)エポキシ樹脂に対して0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.5質量%〜3質量%がより好ましい。
【0059】
[難燃剤]
エポキシ樹脂組成物は、難燃性を付与するために、必要に応じて難燃剤を含有してもよい。難燃剤の種類は特に制限されない。具体的に、難燃剤としては、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む公知の有機化合物又は無機化合物、金属水酸化物、アセナフチレン等が挙げられる。難燃剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
難燃剤の含有率は、難燃効果が達成されれば特に制限はない。エポキシ樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、難燃剤の含有率は、(A)エポキシ樹脂に対して、1質量%〜30質量%が好ましく、2質量%〜15質量%がより好ましい。
【0060】
[カップリング剤]
エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、樹脂成分と無機充填剤との接着性を高める観点から、カップリング剤を含有してもよい。カップリング剤の種類は、特に限定されない。カップリング剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン化合物、チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウム及びジルコニウム含有化合物などの公知のカップリング剤が挙げられる。これらのカップリング剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
エポキシ樹脂組成物がカップリング剤を含有する場合、カップリング剤の含有率は、(D)無機充填剤に対して0.05質量%〜5質量%であることが好ましく、0.1質量%〜2.5質量%がより好ましい。0.05質量%以上であるとフレームとの接着性が向上する傾向があり、5質量%以下であるとパッケージの成形性に優れる傾向がある。
【0062】
[応力緩和剤]
エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、シリコーンオイル、シリコーンゴム粒子等の応力緩和剤を含有してもよい。応力緩和剤を含有させることによって、パッケージの反り変形量及びパッケージクラックを低減させることが可能である。使用可能な応力緩和剤としては、当該技術分野で一般に用いられる公知の可とう剤(応力緩和剤)を適宜選択して使用することができる。
【0063】
一般に、使用されている可とう剤としては、シリコーン、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリブタジエン等の熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子;メタクリル酸メチル−スチレン−ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル−シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体等のコア−シェル構造を有するゴム粒子;などが挙げられる。応力緩和剤は、1種を単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、シリコーン系可とう剤が好ましく、シリコーン系可とう剤としては、エポキシ基を有するもの、アミノ基を有するもの、これらをポリエーテル変性したもの等が挙げられる。
【0064】
[着色剤等]
エポキシ樹脂組成物は、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の着色剤を含有してもよい。その他、必要に応じて、本発明による効果を低下させない範囲において種々の添加剤を含有してもよい。
【0065】
[エポキシ樹脂組成物の調製]
エポキシ樹脂組成物の調製には、各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いずれの手法を用いてもよい。一般的な手法として、所定の配合量の成分をミキサー等によって充分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。より具体的には、エポキシ樹脂組成物は、例えば、上述した成分の所定量を混合して攪拌し、予め70℃〜140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練した後、冷却し、粉砕する等の方法によって得ることができる。エポキシ樹脂組成物は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び質量でタブレット化すると取り扱いが容易になる。
【0066】
[電子部品装置]
本発明の電子部品装置は、素子と、前記素子を封止する前記エポキシ樹脂組成物の硬化物と、を有する。電子部品装置としては、例えば、支持部材に、能動素子、受動素子等の素子が搭載され、前記素子が本発明のエポキシ樹脂組成物によって封止されたものが挙げられる。前記支持部材としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等が挙げられる。前記能動素子としては、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等が挙げられる。前記受動素子としては、コンデンサ、抵抗体、コイル等が挙げられる。
【0067】
より具体的には、例えば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部とをワイヤボンディング又はバンプで接続した後、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いてトランスファー成形等によって封止した、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Pacakage)等の一般的な樹脂封止型IC;テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明のエポキシ樹脂組成物で封止したTCP(Tape Carrier Package);配線板又はガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明のエポキシ樹脂組成物で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール;裏面に配線板接続用の端子を形成した有機基板の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明のエポキシ樹脂組成物で素子を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)等が挙げられる。また、プリント回路板にも本発明のエポキシ樹脂組成物は有効に使用できる。
【0068】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、電子部品装置を封止する方法としては、特に限定されるものではなく、当技術分野において公知の方法を適用することが可能である。例えば、低圧トランスファー成形法が一般的ではあるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
【0069】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、保存安定性に優れる。このようなエポキシ樹脂組成物を用いてIC、LSI等の電子部品装置を提供することが可能となり、その工業的価値は高い。
【実施例】
【0070】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
[実施例1]
以下に示す各種成分をそれぞれ表1に示す質量部で配合し、混練温度80℃、混練時間15分の条件下でロール混練を行うことによって、それぞれ実施例1〜7、比較例1〜5のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0072】
(エポキシ樹脂組成物の調製)
エポキシ樹脂として、以下を用意した。
・エポキシ樹脂1:エポキシ当量196g/eq、融点106℃のビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名YX−4000H)
・エポキシ樹脂2:エポキシ樹脂192g/eq、融点79℃のジフェニルメタン型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製、商品名YSLV−80XY)
・臭素化エポキシ樹脂:難燃効果のあるエポキシ樹脂として、エポキシ当量393g/eq、軟化点80℃、臭素含有量48質量%の臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂
【0073】
硬化剤として、以下を用意した。
・フェノール樹脂1:水酸基当量176g/eq、軟化点70℃のアラルキル型フェノール樹脂(三井化学株式会社製、商品名ミレックスXL−225)
・フェノール樹脂2:水酸基当量199g/eq、軟化点89℃のビフェニレン型フェノール樹脂(明和化成株式会社製、商品名MEH−7851)
・フェノール樹脂3:水酸基当量106g/eq、軟化点64℃のフェノールノボラック樹脂(明和化成株式会社製、商品名H−4)
【0074】
本発明に係る硬化促進剤として、下記に示す化合物を用意した。
・硬化促進剤1:下記化合物(iii)
・硬化促進剤2:下記化合物(iv)
・硬化促進剤3:下記化合物(v)
【0075】
【化4】
【0076】
また、比較の硬化促進剤として、以下を用意した。
・硬化促進剤A:トリフェニルホスフィン
・硬化促進剤B:トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物
【0077】
無機充填剤として、以下を用意した。
・溶融シリカ:アドマテックス社製SO−25R、平均粒子径0.6μm
・溶融シリカ:マイクロン社製S430、平均粒子径19μm
【0078】
その他、各種添加剤として、以下を用意した。
・カップリング剤:エポキシシラン(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
・着色剤:カーボンブラック(三菱化学株式会社製、商品名MA−100)
・離型剤:カルナバワックス(株式会社セラリカNODA製)
・難燃剤:三酸化アンチモン
【0079】
【表1】
【0080】
[エポキシ樹脂組成物の特性評価]
実施例1〜7、及び比較例1〜5によって得られたエポキシ樹脂組成物を以下に示す各種試験によって評価した。評価結果を表2に示す。尚、エポキシ樹脂組成物の成形は、トランスファー成形機を用い、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件下で行った。また、後硬化は175℃で6時間行った。
【0081】
(1)スパイラルフロー(流動性の指標)
EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、上記条件でエポキシ樹脂組成物を成形して流動距離(cm)を測定した。これを初期の流動距離(cm)とする。
【0082】
(2)スパイラルフロー残存率(保存安定性の指標)
25℃の恒温槽に72時間、168時間又は336時間放置したエポキシ樹脂組成物を上記(1)の条件で成形して流動距離(cm)を測定し、初期の流動距離(cm)に対する比率で残存率を求めた。
【0083】
(3)熱時硬度
エポキシ樹脂組成物を上記条件で直径50mm×厚さ3mmの円板に成形し、成形後直ちにショアD型硬度計を用いて測定した。
【0084】
【表2】
【0085】
表2に示されるように、本発明に係る硬化促進剤を含有する実施例1〜7は、常温(25℃)で放置した後のスパイラルフロー残存率が比較例1〜5に比べて高く、保存安定性に優れる結果となった。また、熱時硬度も実施例1〜7は比較例1〜5に比べ、高い結果となった。