(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明にかかる超音波モータ30の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態を適用した光学装置としてのカメラ1の構成図である。
カメラ1は、カメラボディ10と、レンズ鏡筒20とを備えている。レンズ鏡筒20は、カメラボディ10に着脱可能な交換レンズである。なお、本実施形態では、レンズ鏡筒20が交換可能な例を示したが、これに限らず、例えば、カメラボディとレンズ鏡筒が一体型のカメラであってもよい。
【0011】
カメラボディ10は、撮像素子11と、制御装置12と、AFセンサ13、スピーカ25、選択部26(選択スイッチ)等を備えている。
撮像素子11は、レンズ鏡筒20によってその撮像面に結像された画像を電気信号に変換して出力する、たとえば、CCDやCMOS等の光電変換素子である。
制御装置12は、レンズ鏡筒20におけるフォーカス群の移動量演算や、当該カメラ1全体の制御を行う。
AFセンサ13は、焦点検出を行うためのたとえばCCDラインセンサ等である。
マイクロフォン25は、録画モードで電源がオンされると並行して音声データの取得を行い、動画データと関連付けられて取り込みを行う。
選択部26は、静止画撮影モード、動画撮影モードを選択する機能を有するスイッチであり、使用者のON/OFFによって、選択可能である。
【0012】
レンズ鏡筒20は、合焦レンズ21を含む図示しないレンズ群からなる結像光学系と、内設された合焦レンズ21を移動操作するカム筒22と、カム筒22を回転駆動する超音波モータ30(振動アクチュエータ)と、合焦レンズ21の位置や速度を検出する検出部23と、を備えている。
【0013】
超音波モータ30は、合焦レンズ21を駆動する駆動源である。超音波モータ30の出力ギア150の回転力はアイドルギア24を介してカム筒22に伝えられ、カム筒22は回転によって内設された合焦レンズ21を移動駆動するようになっている。この超音波モータ30は、カメラ1の制御装置12から入力される合焦指令に基づいて駆動する。この超音波モータ30については、後に詳述する。
【0014】
検出部23は、光学式エンコーダや磁気エンコーダ等により構成され、合焦レンズ21の位置や速度を検出する。本実施例では、カム筒22の位置や速度を検出することにより、合焦レンズ21の位置や速度を検出している。
【0015】
そして、上記のように構成されたカメラ1は、レンズ鏡筒20における合焦レンズ21を含む結像光学系によって、カメラボディ10における撮像素子11の撮像面に被写体像が結像される。そして、撮像素子11によって、結像された被写体像が電気信号に変換され、その信号をA/D変換及び画像処理して画像データを得る(撮影する)。
これらカメラ1における撮影に係る一連の動作は、カメラボディ10が備える制御装置12によって制御される。また、制御装置12は、撮影時においては、AFセンサ13の検知情報に基づいてレンズ鏡筒20の超音波モータ30を駆動させ、焦点調節を行う。
【0016】
つぎに、
図2及び
図3を参照して、超音波モータ30について詳細に説明する。
図2は、超音波モータ30におけるモータ本体100の縦断面図である。
図3は、超音波モータ30のブロック構成図である。
超音波モータ30は、進行波型のモータ本体100と、駆動回路200と、により構成されている。
モータ本体100は、振動子110、移動子120、出力軸130、加圧部140、出力ギア150等を備え、振動子110側を固定とし、移動子120を回転駆動する形態となっている。
【0017】
振動子110は、弾性体111と、弾性体111に接合された圧電体(第1電気機械変換素子)112とを有する略円環形状の部材である。
弾性体111は、共振先鋭度が大きな金属材料によって形成され、その形状は、略円環形状である。この弾性体111は、櫛歯部111a、ベース部111b、フランジ部111cを有する。
【0018】
櫛歯部111aは、圧電体112が接合される面とは反対側の面に、複数の溝を切って形成され、この櫛歯部111aの先端面は、移動子120に加圧接触され、移動子120を駆動する駆動面111dとなる。この駆動面111dには、Ni‐P(ニッケル‐リン)メッキ等の潤滑性の表面処理が施されている。
【0019】
ベース部111bは、弾性体111の周方向に連続した部分であり、ベース部111bの櫛歯部111aとは反対側の面に、圧電体112が接合されている。
フランジ部111cは、弾性体111の内径方向に突出した鍔状の部分であり、ベース部111bの厚さ方向の中央に配置されている。このフランジ部111cにより、振動子110は、固定部材101に固定されている。
【0020】
圧電体112は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する電気機械変換素子であり、例えば、圧電素子や電歪素子等が用いられる。圧電体112は、弾性体111の周方向に沿って2つの相(A相、B相)の電気信号が入力される範囲に分かれている。各相には、1/2波長毎に分極が交互となった要素が並べられており、A相とB相との間には1/4波長分間隔があくようにしてある。
【0021】
圧電体112には、その各相の電極に接続されたフレキシブルプリント基板102を介して後述する駆動回路200から所定の電圧及び周波数の駆動信号が供給されるようになっている。この駆動信号によって圧電体112が伸縮し、弾性体111の駆動面111dに進行波を生ずる。本実施例では、4波の進行波が発生する。
【0022】
移動子120は、アルミニウム等の軽金属によって形成され、弾性体111の駆動面111dに生じる進行波によって回転駆動される部材である。移動子120は、振動子110(弾性体111の駆動面111d)と接触する摺動面120aの表面に、耐磨耗性向上のためのアルマイト等の表面処理が施されている。
【0023】
出力軸130は、略円柱形状の部材である。出力軸130は、一方の端部がゴム部材103を介して移動子120に接しており、移動子120と一体に回転するように設けられている。
ゴム部材103は、ゴムにより形成された略円環形状の部材である。このゴム部材103は、ゴムによる粘弾性で移動子120と出力軸130とを一体に回転可能とする機能と、移動子120からの振動を出力軸130へ伝えないように振動を吸収する機能とを有しており、ブチルゴム、シリコンゴム、プロピレンゴム等が用いられている。
【0024】
加圧部140は、コイルスプリング141と電気機械変換素子(第2電気機械変換素子)142とにより構成されており、後述する出力ギア150とベアリング受け104との間に配置されて振動子110と移動子120とを加圧接触させる加圧力を発生する。
【0025】
コイルスプリング141は、出力軸130の軸方向に所定量圧縮変形した状態で、電気機械変換素子142と出力ギア150との間に配置されている。
電気機械変換素子142は、印加電圧に応じて変位するたとえば圧電デバイスであって、その変位方向を出力軸130の軸方向としてコイルスプリング141とベアリング受け104との間に配置されている。
この電気機械変換素子142は、回転開始時及び回転停止時において、後述する駆動回路200におけるモータ制御部201によって印加電圧が制御されて伸縮する。なお、電気機械変換素子142は、圧電デバイスに限らず静電力デバイスや磁力デバイス等を用いても良い。
【0026】
加圧部140は、出力ギア150とベアリング受け104とが、出力軸130の軸方向において互いに離れるように作用する。その力は出力ギア150,出力軸130及びゴム部材103を介して移動子120を振動子110に圧接させる加圧力となる。
なお、加圧部140の構成は、これに限定されるものではなく、たとえば、圧電素子のみでコイルスプリングを備えない構成であっても良い。
【0027】
出力ギア150は、出力軸130のDカットに嵌まるように挿入され、Eリング等のストッパ106で固定され、回転方向及び軸方向に出力軸130と一体となるように設けられている。出力ギア150は、出力軸130の回転に伴って回転し、アイドルギア24(
図1参照)に駆動力を伝達する。
また、ベアリング受け104は、ベアリング105の内径側に配置され、ベアリング105は、固定部材101の内径側に配置された構造となっている。
【0028】
上記のように構成されたモータ本体100は、加圧部140により発生された加圧力で、移動子120が振動子110の駆動面111dに加圧接触し、後述する駆動回路200から振動子110に供給される駆動信号によって振動子110の櫛歯部111aに生ずる進行波で回転駆動される。
そして、モータ本体100は、この移動子120の回転を、ゴム部材103及び出力軸130を介して出力ギア150から出力する。
【0029】
移動子120の回転速度(すなわちモータ本体100の出力回転数)は、駆動回路200から供給される駆動信号の周波数の変更によって変化する。この駆動信号の周波数、電圧は、駆動回路200のモータ制御部201によって制御される。つまり、モータ本体100の回転速度は、駆動回路200のモータ制御部201によって制御されるようになっている。
また、加圧部140による移動子120の振動子110への加圧力は、モータ制御部201によって制御される。
【0030】
つぎに、超音波モータ30における駆動回路200について説明する。
図3に示すように、駆動回路200は、モータ制御部201と、発振部202と、移相部203と、増幅部204と、を備えている。
【0031】
モータ制御部201は、レンズ鏡筒20内又はカメラ1本体の制御装置12からの駆動指令と、検出部23による合焦レンズ21の位置等と、に基づいて、モータ本体100を回転制御する。
すなわち、モータ制御部201は、検出部23からの位置検出信号と、制御装置12から指令された目標位置情報と、に基づいて、モータ本体100に出力する駆動信号の周波数を制御する。
さらに、モータ制御部201は、モータ本体100の回転開始時及び回転停止時、さらには通常駆動時において、加圧部140の圧電素子への印加電圧を変化させて移動子120の振動子110への加圧力を変化させ、これによって回転開始及び回転停止を円滑に行わせる制御(以下、回転開始制御、回転停止制御と呼ぶ)を行う。
【0032】
発振部202は、モータ制御部201の指令により、所定の周波数の駆動信号を発生する。この周波数は、モータ制御部201の指令によって可変である。
移相部203は、発振部202で発生した駆動信号を位相の異なる2つの駆動信号(A相及びB相)に分ける。2つの駆動信号の位相差は本実施形態において90度である。
【0033】
増幅部204は、移相部203によって分けられた2つの駆動信号をA相増幅部204AとB相増幅部204Bとでそれぞれ所望の電圧に昇圧する。
増幅部204によって増幅された駆動信号は、モータ本体100の圧電体112に印加される。
【0034】
上記構成の駆動回路200は、以下のようにモータ本体100を駆動する。
カメラボディ10における制御装置12からモータ制御部201に合焦レンズ21の移動目標位置が入力されると、モータ制御部201は、入力された目標位置と検出部23から入力された合焦レンズ21の位置情報とに基づいて、モータ本体100の駆動量を演算する。
モータ制御部201は、発振部202から交流の駆動信号を発生させ、この駆動信号から移相部203が位相差のある駆動信号(A相及びB相)を生成し、増幅部204によりそれぞれ所望の電圧に増幅する。
【0035】
2相の駆動信号は、モータ本体100の圧電体112のそれぞれA相とB相とに印加される。
これにより、モータ本体100は、圧電体112が励振されて弾性体111にA相とB相とで位置的な位相が1/4波長ずれた4次の曲げ振動が発生し、2つの曲げ振動は合成されて4波の進行波となる。進行波の波頭には楕円運動が生じ、この楕円運動によって、弾性体111の駆動面111dに加圧接触された移動子120を進行波の進行方向とは逆方向に摩擦駆動する。すなわち、移動子120が回転し、出力ギア150から回転力を出力する。
【0036】
移動子120の通常回転速度制御は、前述したように、モータ制御部201によって、駆動信号の周波数を変化させて行なう。
【0037】
図4は、
図2の構成で示される超音波モータの共振特性を説明する図である。
図4左から最初のインピーダンス上昇ピークは、実際の駆動に使用する振動モードであり、fnは、この振動モードにおける共振周波数を示している。
【0038】
また、
図4におけるfn+1右側のインピーダンス上昇ピークは、駆動に使用する振動モードと隣接する高次モードで、fn+1は、この駆動モードにおける共振周波数を示している。なお、高次モードは、駆動には使用しない。
【0039】
図5は、このモータの回転数/周波数特性を説明する図である。共振周波数fnに対し、右肩下がりの曲線になり、ある周波数f1で移動子120の回転が停止する。さらに高周波数側まで周波数を掃引していくと今度は隣接する振動モードの影響を受け、モータ100は、ある周波数f2で逆転駆動を始める。
【0040】
この場合における停止領域は、f1からf2までとなるが、f1及びf2は、モータのf−Nカーブや回転ムラなどの駆動特性やモータ毎の個体バラつきにより変化しやすく、停止領域の範囲をf1やf2をもとに設定すると個体によっては起動してしまうものが発生しやすい。よって、停止領域の範囲をf1やf2の設定によらず、停止することが必要となる。
【0041】
そこで本実施形態によれば、駆動信号により励起される圧電体112と圧電体112に接合され、励振によりある所望の振動モードの振動が励起されて駆動面に振動波を生じる弾性体111aとを有する振動子111と、弾性体111aの駆動面に加圧接触され、振動波によって駆動される移動子120と、を有する超音波モータ本体100を有し、入力信号の周波数によって移動子120の回転/停止を切り替える制御部(モータ制御部201)を有し、モータ制御部201は、移動子120が回転しない所定の周波数領域まで入力信号の周波数を掃引し、モータ本体100への通電を行った状態のまま、移動子120の停止を行う。
【0042】
モータ制御部201は、モータを停止保持する周波数範囲をfstop、モータの駆動に使用する振動モードの共振周波数をfn、fnに対し高周波数側に隣接した振動モードの共振周波数をfn+1とした場合、fstopは、下記の数式で設定された周波数範囲にて停止保持することで、モータ本体100への通電を行った状態のまま、移動子120の停止を行う。fstopは、モータ制御部201の記憶部に記憶される。
【0044】
カメラ1の制御装置12の選択部26は、動画撮影モードを選択中、モータ本体100の電源ON/OFFによってモータ騒音が生じて撮影動画画像に紛れ込んでしまう。カメラ1は、これを防止するため、モータ側で上記所定の周波数範囲に停止制御を行う。
【0045】
つまり、本出願人らによる実験によると、モータの共振特性における駆動に使用する振動モードの共振周波数fn、高周波数側に隣接する振動モードの共振周波数fn+1から計算される範囲内では、モータは安定的に停止していることが判明された。
【0046】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)モータ本体100ではモータへの通電をオン/オフすることにより起動/停止を行った場合、通電オン/オフのタイミングに伴いモータ側から異音が発生する問題があったが、本実施形態にかかる超音波モータ30によれば、モータ本体100の電源ON/OFFによって、騒音が生じてしまうことなく、モータの駆動音を低減できる。
(2)モータへの通電を行ったまま、モータに入力する二つの交番信号の位相差を連続的に制御する場合、通電したままモータを安定的に停止させる必要があるが、本実施形態にかかるモータ30によれば、モータの共振特性における駆動に使用する振動モードの共振周波数fn、高周波数側に隣接する振動モードの共振周波数fn+1から計算されるある範囲内でモータを停止させることで、停止領域の範囲をf1やf2の設定によらず、停止することが可能となる。つまり、モータの個体バラつきや駆動特性の影響等の外乱を受けずに安定して停止させることが可能となる。
(3)カメラ1は、本実施形態にかかるモータ30を有するので、選択部が動画撮影モードを選択し、使用者により動画撮影を実行中に、超音波モータが有する前記移動子の停止を行うことにより、騒音が生じてしまうことなく、動画撮影モード中の撮影に適している。
【0047】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、例えば、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態では、レンズ鏡筒3が交換レンズである例を示すが、これに限らず、例えば、カメラボディと一体型のレンズ鏡筒であってもよい。
(2)また、本実施形態では、超音波モータ30の配置順序は、上述の順序に限定されず逆の順序であってもよい。
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。