(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る発光装置の製造方法および発光装置の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については、原則として同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0013】
≪発光装置≫
はじめに、本発明の発光装置について説明する。
図1(a)、(b)に示すように、発光装置100は、ここでは、基材1と、基材1上に設けられた導電部材2a,2bと、導電部材2a,2b上に設けられたバンプ3a,3bと、バンプ3a,3b上に設けられた発光素子10と、発光素子10の表面および基板(実装基板)20の表面に設けられた蛍光体層40と、実装基板20上の蛍光体層40を被覆する被覆層50と、を主に備える。ここでは、基材1と、導電部材2a,2bとで、実装基板20を構成している。なお、本発明の構成を分かりやすく示すために、
図1(a)では、
図1(b)において図示している蛍光体層40および被覆層50の図示を省略している。
【0014】
(実装基板)
図1(a)、(b)に示すように、実装基板20は、発光素子10等の電子部品が実装される基板であり、ここでは、基材1と、基材1上に設けられた導電部材2a,2bと、を備える。
実装基板20(あるいは基材1)は、
図1(a)に示すように、ここでは矩形平板状に形成されている。なお、実装基板20(あるいは基材1)のサイズや形状は特に限定されず、発光素子10の数や配列間隔等、目的および用途に応じて適宜選択することができる。
【0015】
[基材]
基材1は、導電部材2a,2bを介して発光素子10等の電子部品が実装される部材である。
基材1の材料としては、絶縁性材料を用いることが好ましく、かつ、発光素子10から放出される光や外光等が透過しにくい材料を用いることが好ましい。また、ある程度の強度を有する材料を用いることが好ましい。具体的には、セラミックス(Al
2O
3、AlN等)あるいは樹脂、または、金属板の表面に絶縁層を設けた部材が挙げられる。セラミックスの中でも、低温焼結セラミックス(LTCC)は光反射率を高めやすいため、好ましく用いることができる。
【0016】
[導電部材]
導電部材2a,2bは、外部と、発光素子10等の電子部品とを電気的に接続し、これら電子部品に、外部からの電流(電力)を供給するための部材である。
導電部材2a,2bの材料は、上述の基材1として用いられる材料や、発光装置100の製造方法等によって適宜選択することができる。例えば、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄、ニッケル等の金属、または、鉄−ニッケル合金、りん青銅、鉄入り銅、モリブデン等が挙げられる。
【0017】
導電部材2a,2bは、放熱経路としての機能も有している。放熱性を高めるためには、広い面積で設けられることが好ましく、例えば、基材1が長方形の場合は基材1の短手方向に広い幅で設けられることが好ましい。なお、
図1(a)では紙面における上下方向に広い幅で設けられている。
【0018】
[バンプ]
バンプ3a,3bは、発光素子10の電極と導電部材2a,2bとを電気的に接続する部材である。
バンプとしては、従来公知のものを用いればよく、例えば、スタッドバンプやめっきバンプが挙げられる。スタッドバンプの材質としてはAuまたはその合金がよく用いられる。めっきバンプの材質としてはAuのみ、若しくはCu、またはNiをベースに表面をAuとした積層構造が用いられる。バンプ3a,3bの厚みとしては、例えば、10μm〜20μmである。
【0019】
[発光素子]
発光素子10は、例えば、発光面と反対側の面(
図1(b)ではバンプ3a,3bが接続する側の面)に正と負の電極パッドを有し、バンプ3a,3bを介して導電部材2a,2bと接続されて基材1上(実装基板20上)に実装されている。ここでは、n側電極が、バンプ3aを介して負極である導電部材2aと接続され、p側電極が、バンプ3b,3bを介して正極である導電部材2bと接続されている。なお、発光面とは、実装基板20に実装したときに、基材1と対向する側の面と反対側で、発光装置100の光取り出し方向側の面である。
【0020】
発光素子10としては、上面に辺部を有する形状、例えば略直方体形状で、n層とp層と発光を行う活性層とを備える半導体層を成長基板上に有する発光ダイオードを用いることができる。発光素子10は、任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色(波長430nm〜490nmの光)、緑色(波長490nm〜570nmの光)の発光素子10としては、ZnSe、窒化物系半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)、GaP等を用いることができる。また、赤色(波長620nm〜750nmの光)の発光素子10としては、GaAlAs、AlInGaP等を用いることができる。
【0021】
なお、蛍光物質を用いた発光装置100とする場合には、その蛍光物質を効率良く励起できる短波長の発光が可能な窒化物半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に用いられる。そして、活性層の材料やその混晶を調整することによって、発光波長を種々選択することができる。さらに、これら以外の材料からなる発光素子10を用いることもできる。なお、用いる発光素子10の成分組成や発光色、大きさ、個数等は、目的に応じて適宜選択することができる。
発光素子10は、光取り出し面側にサファイア等の透光性の基板を有することが好ましい。また、可視光領域の光だけでなく、紫外線や赤外線を出力する発光素子10とすることもできる。
なお、発光装置100は、青色発光素子と、黄色蛍光体とを組み合わせることで、白色LED素子とすることができる。
【0022】
そして、本発明において、発光素子10は成長基板を有さないように構成することもできる。例えば、成長基板上にn層、活性層およびp層からなる半導体層を成長させた後に、例えば、レーザーリフトオフ法、メートル法(MeTRe法;Mechanical Transfer using a Release layer)やケミカルリフトオフ法などにより、成長基板を半導体層から剥離して除去するようにしてもよい。
【0023】
[蛍光体層]
蛍光体層40は、発光素子10および実装基板20の表面に形成された、蛍光体を含む層であり、発光素子10および実装基板20の表面を被覆するものである。蛍光体層40は、発光素子10の表面に形成されていればよいが、前記した背景技術の項目で説明したとおり、蛍光体層40は実装基板20の表面にも不可避的に形成されてしまう。そのため、蛍光体層40は、ここでは発光素子10が載置された部位以外の実装基板20の表面にも形成されている。ただし、実装基板20上の蛍光体層40の面積は少ないほど好ましい。
【0024】
蛍光体層40は、例えば、蛍光体と樹脂と溶剤とを混合したスラリーをスプレーにより塗布することで形成される。なお、蛍光体層40は樹脂等と混合されたものであってもよく、蛍光体のみで形成されたものであってもよい。なお、
図1(b)において、蛍光体層40は図示しない樹脂等を含んでいるものとする。蛍光体層40が樹脂を含むことで、蛍光体が発光素子10の表面に固着しやすくなる。
蛍光体層の厚みとしては、例えば10〜200μmがあげられる。
蛍光体層40を構成する蛍光体は、波長変換部材として発光素子10からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長を有する光を発する蛍光部材である。
【0025】
蛍光体の材料としては、例えばイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)系蛍光体や、Eu,Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される、窒化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体等を用いることができる。例えば、青色発光素子においては、緑色乃至黄色を発光するYAG系蛍光体、LuAG系蛍光体、M
2SiO
4:Eu(MはSr,Ca,Ba等)のシリケート蛍光体との組み合わせや、更に演色性を高めるために、赤色を発光する蛍光体として、(Sr,Ca)AlSiN
3:EuのようなSCASN系蛍光体、CaAlSiN
3:EuのようなCASN系蛍光体や、SrAlSiN
3:Eu、KSF蛍光体等が所望の色調に適した組み合わせや配合比で用いられる。
【0026】
蛍光体層40は、発光素子10および実装基板20の表面に略均一な厚みで形成された複数の層からなる。後記するように、蛍光体層40はスプレーにより形成されるため、複数の層が積層された構造となる。層数は、例えば1〜20、1つの層の厚さは、例えば5〜20μmとすることができる。なお、蛍光体層40を構成する各層の厚みは均一であることが好ましいが、誤差程度の微小な違いや蛍光体の粒径に起因する凹凸があってもよい。ただし、蛍光体層40を構成する各層の厚みが、それぞれ異なるものであっても問題ない。蛍光体層40を複数の層を積層して形成することで、色調歩留まりを向上させることができる。
【0027】
また、蛍光体層40は、発光素子10の表面を被覆するとともに、実装基板20の表面のうち、発光素子10が実装されていない部位に設けられている。ここで、「発光素子10が実装されていない部位」とは、実装基板20の表面における発光素子10の直下以外の部位をいう。すなわち、平面視において発光素子10の外側にあたる部位である。
【0028】
[被覆層]
被覆層50は、光反射性および/または遮光性の層であり、実装基板20上の蛍光体層40を被覆するものである。
被覆層50は、発光素子10からの光の少なくとも一部を反射させる光反射性の材料および遮光性の材料のうちの一種以上を含有している。光反射性の材料としては、例えば、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、ZrO
2、BaSO
4、MgO等が挙げられる。光反射性の材料は、これらのうちの一種以上を用いればよい。そして、遮光性の材料としては、カーボンブラック、濃色の樹脂材料等が挙げられる。遮光性の材料は、これらのうちの一種以上を用いればよい。
また、被覆層50には、光反射性の材料および/または遮光性の材料に加え、所望に応じてバインダー、着色剤、光拡散剤、フィラーを含有させることもできる。
また、被覆層50は、単一の部材で形成することもできるし、あるいは、2層以上の複数の層として形成することもできる。
【0029】
被覆層50は、ここでは導電部材2a,2b上の蛍光体層40の表面に設けられている。また、ここでは、実装基板20に設けられた蛍光体層40のうち、発光素子10により近い位置に被覆層50が設けられている。すなわち、被覆層50は、発光素子10の周囲に位置するように設けられている。なお、発光素子10の周囲とは、発光素子10の近傍のことであり、実装基板20上の蛍光体が発光することが防止されて、所望の点光源性が得られるような部位をいう。
導電部材2a,2b上の蛍光体層40の表面に被覆層50を設けることで、発光素子10の表面以外の発光素子10近傍で蛍光体が発光することが防止され、点光源性に優れた発光装置となる。また、被覆層50が光反射性である場合には、発光素子10近傍の反射率が向上する。これらの効果は、被覆層50がより発光素子10の近傍に設けられることでさらに向上する。 被覆層50の厚みとしては、例えば10〜30μmである。なお、被覆層50の厚みは、必ずしもバンプ3a,3bの厚みより厚い必要はない。
被覆層50は、導電部材2a,2b上に形成される場合には、絶縁性の材料であることが好ましい。
以上説明した発光素子10、蛍光体層40、被覆層50は、例えば
図3に示すように、透光性樹脂等の封止部材60で封止されることが好ましい。封止部材60の形状はどのようなものでもよく、発光装置に求められる特性に応じて、略直方体、半球形状、複数の半球を組み合わせた形状などを用いることができる。
【0030】
以上説明した本発明の発光装置100によれば、発光装置100を駆動したときに、発光素子10からあらゆる方向に進む光のうち、上方へ進む光は、発光装置100の上方の外部に取り出される。また、下方や横方向等に進む光は、被覆層50、基材1の表面、導電部材2a,2b、あるいはレジスト膜等で反射・散乱して、発光装置100の上方の外部に取り出されることになる。また、発光素子10近傍の蛍光体の発光を低減することができ、点光源性を向上させることができる。さらには、被覆層50が光反射性である場合には、発光素子10近傍の反射率を向上させることができ、光取り出し効率を向上させることができる。
【0031】
≪発光装置の製造方法≫
次に、本発明に係る発光装置の製造方法について、
図1、2を参照しながら説明する。
【0032】
本発明に係る発光装置100の製造方法は、ダイボンディング工程と、蛍光体層形成工程と、被覆層形成工程と、をこの順に含む。また、ここでは、ダイボンディング工程の前に、基板準備工程を含む。
以下、各工程について説明する。なお、発光装置の各部材の詳細については、前記した発光装置で説明したとおりであるので、ここでは、適宜説明を省略する。
【0033】
<基板準備工程>
基板準備工程は、導電部材2a,2bを備えた基板(実装基板)20を準備する工程であり、例えば、基材1上に導電部材2a,2bを形成する工程である。導電部材2a,2bの形成は従来公知の方法で行えばよく、例えば、めっき、蒸着、基材1への貼り付け等によって形成する。基材1への貼り付けの場合は、基材1と導電部材2a,2bとは、樹脂等の接着剤で接着させることができる。導電部材2a,2bは、導電部材2a,2bの材料を基材1の一面に形成した後に、エッチング等で成形してもよい。
【0034】
<ダイボンディング工程>
ダイボンディング工程は、実装基板20上に発光素子10を実装する工程である。このダイボンディング工程では、導電部材2a,2bの上面に発光素子10を実装する。
発光素子10の実装方法は、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法で行えばよい。例えばAu―Sn、Sn−Ag−Cu等の半田や、導電部材を含有したエポキシ樹脂等により、発光素子10と導電部材2a,2bとを接合すればよい。
【0035】
なお、本実施形態では、バンプ3aを介して、発光素子10のn側電極と導電部材2aとを接続し、バンプ3b,3bを介して、発光素子10のp側電極と導電部材2bとを接続するフリップチップで実装する。具体的には、バンプ3a,3bは、超音波接合により発光素子10の電極パッドおよび導電部材2a,2bに接着する。
【0036】
<蛍光体層形成工程>
蛍光体層形成工程は、発光素子10の実装後に、発光素子10および実装基板20の表面に、蛍光体を含む蛍光体層40をスプレーにより形成する工程である。
蛍光体層40を形成する方法としては、スプレーによる形成(スプレー法)を用いる。スプレー法を用いれば、発光素子10および実装基板20の表面に略均一な厚さに蛍光体層40を形成することができる。なお、塗布する材料として蛍光体を含むスラリーを用いると、材料の飛散が防止されてスプレーがしやすく、また、発光素子10に蛍光体が均一に付着しやすくなる。
【0037】
また、スプレー法としては、パルス式のスプレー法(以下、適宜、パルススプレー法という)を用いることが好ましい。パルススプレー法は、蛍光体等の粒子が混合された樹脂を、空気圧により間欠吐出(パルス式にスプレー)し、均一な粒子層を形成する技術である。
通常のスプレー法である連続塗布の場合は、塗布量が多くなって材料が飛散しやすいため、ノズル速度を速くする必要がある。一方、パルススプレー法は間欠吐出なので、単位時間当たりの塗布量が少なくノズルをゆっくり動かすことができ、発光素子10の側面や極小空間にも塗布液を塗りやすい。
【0038】
また、パルススプレー法は、(1)ターゲット塗布面に凹凸があっても均等に膜形成が可能である、(2)塗布液の付着性が高く、発光素子の辺部や側面にも塗布がしやすい、(3)微量の塗布による色調補正(色調を測定しながら塗布)が可能である、(4)蛍光体の種類を選ばず、部材選択性が広い、(5)高光質、色調の安定に優れた塗膜を形成できる(例えば、製造された発光装置の色バラつきの範囲を色調マクアダム2step(マクアダム3step内であれば、実質、色バラつきがない発光装置を量産することができる)に抑えることが可能である)などの利点を有する。
【0039】
次に、
図2を参照して、パルス式のスプレー装置(パルススプレー装置)の概略について説明する。
図2に示すように、パルススプレー装置30は、スラリーSLを貯蔵するシリンジ31,32と、シリンジ31,32同士を連結する配管33と、スラリーSLを射出するスプレーノズル34と、を主に備える。
【0040】
シリンジ31,32内部には、蛍光体の粒子と樹脂と溶剤とが混合されたスラリーSLが貯蔵されている。また、シリンジ31,32には、エアを送り込むためのエアコンプレッサ(図示省略)が接続されており、これにより、シリンジ31,32内部には、圧縮気体31b,32bが所定圧に保たれている。
また、シリンジ31,32内部には、スラリーSLと圧縮気体31b,32bとの間にプランジャー31a,32aが設けられている。プランジャー31a,32aは、スラリーSLと圧縮気体31b,32bを隔てさせるので、圧縮気体31b,32bのスラリーSLへの溶解を低減することができる。
スプレーノズル34には、液体通路としての配管33が接続されている。スプレーノズル34には、エアを送り込むためのエアコンプレッサ(図示省略)が接続されている。スプレーノズル34は角度調整も可能であり、載置台70に対して傾斜させることができるようになっている。
【0041】
スプレーを行う際には、まず、スプレーノズル34の吐出弁を閉じた状態で、エアコンプレッサからシリンジ31に所定の圧力でエアを送り込む。このエアの送入により、シリンジ31内部に充填されたスラリーSLが加圧され、流通路である配管33を介して、シリンジ32に向けて圧送される。その後、同様に、シリンジ32に所定の圧力でエアを送り込むと、シリンジ32内部に充填されたスラリーSLが加圧され、流通路である配管33を介して、シリンジ31に向けて圧送される。これを繰り返すことで、スラリーSLがシリンジ31,32間を移動しながら攪拌される。これにより、比重の大きい粒子の沈降を抑止することができ、粒子がスラリーSL中で分散した状態を保持することができる。
【0042】
そして、スラリーSLを塗布する場合には、スプレーノズル34の吐出弁を開け、エアコンプレッサからスプレーノズル34に所定の圧力で間欠的にエアを送り込む。このエアが送り込まれている時に、エアコンプレッサとスプレーノズル34の間に設けられたバルブを開くことによって、スラリーSLを間欠吐出することができる。これにより、スプレーノズル34の先端から、エアとともにスラリーSLが間欠的に噴射され、発光素子10にスプレー(符号SP)される。
【0043】
以下、
図2を参照してパルススプレー法を用いた蛍光体層の形成方法について説明する。
まず、蛍光体を混合させたスラリー(蛍光体スラリー)を用意する。蛍光体スラリーは、蛍光体と樹脂と溶剤とを混合させたものを用いることができ、例えば、蛍光体とシリコーン樹脂とn-ヘプタンとを混合したものである。蛍光体スラリーの調合比は、質量比で、蛍光体:樹脂:溶剤=2〜40:5〜20:10〜200とすることが好ましい。
このような調合比であれば、よりスプレーがしやすく、また、発光素子に蛍光体が均一に付着しやすくなる。なお、パルススプレー法以外のスプレー法においても、このような調合比を好適に適用できる。
次に、十分に攪拌混合させた蛍光体スラリーをパルススプレー装置30のシリンジ31,32に投入する。そして、蛍光体スラリーをシリンジ31,32間で移動させて攪拌し、パルススプレーにより塗布する。その際、蛍光体スラリーを発光素子10の上面および側面にできるだけ均等に塗布できるように、スプレーノズル34を移動させながら塗布する。
このように蛍光体スラリーを塗布した後、樹脂を仮硬化して、蛍光体の層を形成する。その層の上に、同様の方法で蛍光体スラリーを塗布し、仮硬化して、二層目の蛍光体層を形成する。これを繰り返し、所望の発光色が得られる厚みまで蛍光体の層を積層する。このようにして、複数の層からなる蛍光体層40が形成される。
【0044】
<被覆層形成工程>
被覆層形成工程は、実装基板20上の蛍光体層40の表面に、光反射性の材料および遮光性の材料のうちの一種以上を含む被覆層50を形成する工程である。
被覆層50を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、電着塗装法(電気沈着法)または静電塗装法によって形成することが好ましい。
【0045】
ここで、電着塗装法を用いた場合の被覆層形成工程について詳細に説明する。
電着塗装法では、光反射性および/または遮光性の材料を懸濁させた溶液を入れた電着槽に、一方の電極となる、発光素子10が実装された実装基板20と、他方の電極となる対電極とを浸漬させ、電極間に電圧を印加する。なお、実装基板20側には、光反射性および/または遮光性の材料が帯電する極性と異なる極性の電圧を印加する。これによって、光反射性および/または遮光性の材料が電気泳動して、実装基板20における、導電部材2a,2b上の蛍光体層40の表面に付着する。この際、発光素子10が絶縁体であれば、光反射性および/または遮光性の材料は発光素子10に付着しない。一方、発光素子10が導電体である場合は、発光素子10をマスクしたり、後記する他の方法を用いたりすればよい。被覆層50の厚さは、電極間に通電する電流および時間で定められるクーロン量を調整することで制御することができる。
この電着塗装法に用いる溶媒は、特に限定されないが、IPA(イソプロピルアルコール)などのアルコール系溶媒を好適に用いることができる。
【0046】
なお、被覆層50の形成は、電着塗装法、静電塗装法に限定されるものではなく、遠心沈降法やスプレー法を用いることもできる。また、前記した方法を組み合わせて用いることもできる。特に、被覆層50を導電部材2a,2bが形成されていない部位に形成する場合には、遠心沈降法やスプレー法を用いる。また、マスクを用いることで、不要な部位に被覆層50を形成させないようにすることができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。
すなわち、前記に示す発光装置の製造方法や発光装置の形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置の製造方法や発光装置を例示するものであって、本発明は、前記の製造方法や形態に限定するものではない。また、特許請求の範囲に示される部材等を、実施の形態の部材に特定するものではない。特に、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
以下、本発明の他の実施形態について説明する。
【0048】
[他の実施形態1]
図3に示すように、発光装置100Aは、導電部材2a,2bと発光素子10とが、接合部材80a,80bにより接合されている。
前記した発光装置100では、バンプ3a,3bを介して導電部材2a,2b上に発光素子10を載置した。しかしながら、
図3に示すように、接合部材80a,80bを用いて、共晶接合あるいは樹脂接合により、導電部材2a,2b上に発光素子10を載置してもよい。
共晶接合の材料としては、例えば、AuとSnとを主成分とする合金、AuとSiとを主成分とする合金、AuとGeとを主成分とする合金等が挙げられる。中でもAuSnが特に好ましい。また、樹脂接合の材料としては、導電性の材料を含有する樹脂を用いればよい。
【0049】
[他の実施形態2]
図4(a)、(b)に示すように、発光装置100Bは、基板(実装基板)20が、発光素子10が実装される実装部Aと、実装部Aの周囲を取り囲んで形成された溝部Gと、を有する。なお、実装基板20は、ここでは、基材1(1a,1b,1c)、および、導電部材2a,2b,2cからなるものである。また、本発明の構成を分かりやすく示すために、
図4(a)では、
図4(b)において図示している蛍光体層40および被覆層50の図示を省略している。ここで、実装部Aの周囲とは、発光素子10の四方を取り囲む、発光素子10近傍の部位である。また、本形態では、基材1cの部位も発光素子10の周囲であり、発光素子10の近傍に含まれるものである。
【0050】
このように、発光装置100Bは、発光素子10の周囲の実装基板20に溝部Gが形成されていることで、発光素子10の周囲がより発光しにくく、より点光源性に優れたものとなる。なお、発光装置100Bは、溝部Gの周囲の基材1c上における蛍光体層40の上面に被覆層50が形成されていることで、点光源性に優れるとともに被覆層50が光反射性である場合には、発光素子10近傍の反射率が向上したものとなる。
【0051】
実装部Aの上面の面積は特に規定されるものではなく、発光素子10の下面の面積と同等かそれ以下とすればよい。また、溝部Gのサイズは特に規定されるものではなく、発光素子10のサイズや実装基板20のサイズなどに応じて適宜調整すればよい。一例としては、深さが100〜500μm、幅が10〜100μmである。なお、溝部Gの形状も特に規定されるものではなく、例えば、実装部Aの周囲を円環状に囲む形状であってもよい。また、溝部Gは、実装部Aの周囲に断続的に設けられる、または実装部Aの周囲の一部に設けられていてもよい。また、溝部Gの位置も、発光素子10の周囲がより発光しにくい位置となるように適宜調整すればよい。また、溝部G内から実装部Aの上面にわたって被覆層50を形成してもよい。これにより、点光源性に優れるとともに、被覆層50が光反射性である場合には、発光素子10近傍の反射率が向上した発光装置とすることができる。
【0052】
このような実装基板20は、基板準備工程で作製することができる。このような実装基板20は、土台となる基材1aに、実装部A用の基材1bおよび外周の基材1cを積層し、基材1b上に導電部材2a,2b、基材1c上に導電部材2cを設けることで作製することができる。積層する基材同士は、例えば樹脂や半田ペーストなどの接合部材により接着させればよい。なお、1つの基材の一部を除去して溝部Gを形成し、その後、導電部材2a,2b,2cを形成することもできる。あるいは、溝部Gを形成する前の実装基板20の一部を除去して溝部Gを形成することもできる。
【0053】
また、基材1c上には、導電部材2cが形成され、この導電部材2c上の蛍光体層40の表面に被覆層50が形成されている。なお、ここでは、導電部材2c上の蛍光体層40の溝部G側の端部にも被覆層50が形成されている。しなしながら、導電部材2c上の蛍光体層40の表面にのみ被覆層50が形成されていても本発明の効果にさほど影響はないため、そのような形態であってもよい。さらには、溝部Gの底面に被覆層50が形成されていてもよい。そして、基材1b上の導電部材2a,2bと、基材1c上の導電部材2cとは、非導通であってもよい。
【0054】
[他の実施形態3]
さらに、前記した発光装置100Bにおいて、溝部Gに光反射性部材を埋設してもよい。
図5に示すように、発光装置100Cは、溝部G(
図4参照)に、光反射性部材90が埋設されている。このような形態であれば、溝部Gに付着した蛍光体が発光しないため、より点光源性に優れたものとなる。また、光反射性部材90により、より点光源性に優れたものとなるとともに、発光素子10近傍の反射率がさらに向上する。
【0055】
光反射性部材90の埋設は、蛍光体層形成工程の後に、溝部Gに光反射性部材を埋設する光反射性部材埋設工程により行うことができる。光反射性部材の埋設は、溝部Gに光反射性部材を注入することより行うことができる。なお、光反射性部材90の埋設は、蛍光体層形成工程の後、被覆層形成工程の前に行ってもよいし、被覆層形成工程の後に行ってもよい。溝部G内に被覆層50が形成されている場合には、光反射性部材は該被覆層50を被覆してもよい。
光反射性部材90の形成は、例えば、固定された実装基板20の上側において、実装基板20に対して上下方向あるいは水平方向等に移動(可動)させることができる樹脂吐出装置(図示省略)を用いて行うことができる(特開2009−182307号公報参照)。
【0056】
光反射性部材90の材料としては、絶縁材料を用いることが好ましい。また、ある程度の強度を確保するために、例えば熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。より具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、BTレジンや、PPAやシリコーン樹脂等が挙げられる。また、これらの母体となる樹脂に、発光素子10からの光を吸収しにくく、かつ母体となる樹脂に対する屈折率差の大きい反射部材(例えばTiO
2,Al
2O
3,ZrO
2,MgO)等の粉末を分散することで、効率よく光を反射させることができる。
【0057】
[その他]
例えば、導電部材2a,2bの表面には、導電部材2a,2bにおける光反射の効率を向上させる金属部材を設けてもよい。金属部材の材料としては、特に限定されないが、例えば、銀のみ、あるいは、銀と、銅、金、ロジウム等の高反射率の金属との合金、または、これら、銀や各合金を用いた多層膜等を用いることができる。金属部材を設ける方法としては、めっき法、スパッタ法、蒸着法、薄膜を接合させる方法等を用いることができる。
【0058】
また、基材1および/または導電部材2a,2bの表面に、基材1や導電部材2a,2bを保護するレジスト膜を設けても良い。レジスト膜は、光反射率を高める反射膜であることが好ましい。このような材料としては、酸化チタンを含有するシリコーン樹脂等の白色の絶縁性の材料を用いることができる。レジスト膜の形成は、印刷法を好適に用いることができる。
【0059】
また、発光装置100、100B、100Cは、基材1の上面と発光素子10との間に図示しないアンダーフィルを備えていてもよい。アンダーフィルを設けることにより、光取り出し効率等の光学特性を向上させたり、発光装置100、100B、100Cの放熱性が向上し、発光素子10と基材1との熱膨張や機械的な応力を緩和させたりすることができる。そのため、発光装置100、100B、100Cの信頼性を向上させることができる。アンダーフィルの材料は、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂である。
【0060】
また、発光装置100、100B、100Cは、ツェナーダイオード等の発光素子10を保護する保護素子を備えていてもよい。これにより、発光素子10の静電破壊を防止することができる。保護素子は、導電部材2a,2bに電気的に接続される必要があるため、保護素子を実装する工程は、蛍光体層形成工程および被覆層形成工程の前に行われることが好ましい。また、保護素子は蛍光体層40および/または被覆層50に被覆されていてもよい。これにより、保護素子による光の吸収を低減し、発光装置の光取出し効率を高めることができる。保護素子はダイボンディングとワイヤボンディングを組み合わせて実装されてもよく、フリップチップ実装されていてもよいが、発光素子10からの発光を阻害しにくくするため、ワイヤを用いずフリップチップ実装されていることが好ましい。
保護素子は、発光素子10から離間した位置に形成されることが好ましい。これにより、蛍光体層40が保護素子に付着しづらくなるため、蛍光体層40の上に形成される被覆部材の高さを低く抑えることができ、発光素子10からの発光を阻害しにくくすることができる。このような構成としては、例えば、導電部材2a,2bが発光素子10の近傍から延伸する延伸部を有しており、その延伸部に保護素子を実装した構成があげられる。
【0061】
その他、前記した実施形態では、発光装置100、100A、100B、100Cは、バンプ3a,3bあるいは接合部材80a,80bを備える構成としたが、これらを備えない状態のものを発光装置としてもよい。また、実装基板20は、基材1と導電部材2a,2bとからなる構成としたが、実装基板は、導電部材2a,2bのみで構成されていてもよい。
なお、前記したその他の形態については、発光装置100B、100Cの導電部材2cについても、導電部材2a,2bと同様の形態とすることができる。
【0062】
その他、発光装置の製造方法においては、本発明を行うにあたり、前記各工程の間あるいは前後に、前記した工程以外の工程を含めてもよい。例えば、基材を洗浄する基材洗浄工程や、ごみ等の不要物を除去する不要物除去工程や、バンプや発光素子の実装位置を調整する実装位置調整工程等、他の工程を含めてもよい。