(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらのジルコニア焼結体に対して、市場からは更なる焼結密度の向上、機械的強度の向上や耐水熱劣化特性が向上し、より鮮やかな着色のジルコニア焼結体が求められていた。
【0010】
そこで、本発明は、上記のような従来方法における課題を解消し、焼結体密度及び強度が高く、審美性の高いピンク色ジルコニア焼結体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ジルコニア焼結体の安定化剤及び着色剤の種類及び含有量を調整すると焼結体のピンク色調と強度を両立したジルコニア焼結体が常圧焼結によって得られることを見出し、本発明を完成するに到ったものである。
【0012】
即ち、本発明は、エルビア(Er
2O
3)のみ、又は、イットリア(Y
2O
3)及びエルビア(Er
2O
3)で安定化され、更にアルミナを0.005wt%以上0.2wt%未満含有するジルコニア焼結体であって、エルビアのみで安定化されたジルコニア焼結体においては、該焼結体中にエルビアを2mol%以上4mol%未満含み、エルビア及びイットリアで安定化されたジルコニア焼結体においては、該焼結体中にエルビアを0.1mol%以上2mol%未満、イットリアを1mol%以上4mol%未満含み、ジルコニア焼結体のJISZ8729に規定された色彩パラメーターの明度L
*が58〜75、a
*が3〜20、b
*が−8〜−4であることを特徴とするピンク色ジルコニア焼結体に関する。
【0013】
以下、本発明のピンク色ジルコニア焼結体をさらに詳細に説明する。
【0014】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体は、エルビア(Er
2O
3)のみ、又はイットリア(Y
2O
3)及びエルビア(Er
2O
3)で安定化されたジルコニア焼結体である。エルビアのみで安定化されたジルコニア焼結体においては、該焼結体中にエルビアを2mol%以上4mol%未満含むものである。
【0015】
エルビアの含有量が2mol%未満では、強度が低下し、結晶相が不安定となり、含有量が4mol%以上では強度が低下してしまう。
【0016】
一方、イットリア(Y
2O
3)及びエルビア(Er
2O
3)で安定化されたジルコニア焼結体においては、該焼結体中にエルビアを0.1mol%以上2mol%未満含み、イットリアを1mol%以上4mol%未満を含むものである。
【0017】
エルビアの含有量が0.1mol%未満では、ピンク色調のジルコニア焼結体が得られ難く、含有量が2mol%以上では強度が低下してしまう。
【0018】
また、イットリアの含有量が1mol%未満では、強度が低下し、結晶相が不安定となり、含有量が4mol%以上では強度が低下してしまう。
【0019】
尚、エルビアは安定化剤としてだけでなく着色剤として機能し、イットリアは安定化剤としてのみ機能する。
【0020】
エルビアをジルコニア焼結体中に生成させる為に用いるエルビウム化合物としては特に限定はなく、例えば、塩化エルビウム、硝酸エルビウムのような可溶性化合物や酸化エルビウムのような不溶性化合物が挙げられる。エルビウム化合物はジルコニアゾルに添加して溶解させることが好ましい。その理由は、ジルコニア粉末の粉砕時にエルビウム化合物を添加すると、凝集物が残存するため、局所的に粒子が異常成長し、焼結体密度の低い、或いは強度の低いジルコニア焼結体となるからである。
【0021】
イットリアをジルコニア焼結体中に生成させる為に用いるイットリウム化合物としては特に限定はなく、例えば、塩化イットリウム、硝酸イットリウムのような可溶性化合物や酸化イットリウムのような不溶性化合物が挙げられる。イットリウム化合物はジルコニアゾルに添加して溶解させることが好ましい。その理由は、ジルコニア粉末の粉砕時にイットリウム化合物を添加すると、凝集物が残存するため、局所的に粒子が異常成長し、焼結体密度の低い、或いは強度の低いジルコニア焼結体となるからである。
【0022】
エルビウム化合物が均一に溶解していれば、イットリウム化合物と共に安定化剤として含有しても良い。エルビウム化合物のみで安定化したジルコニア粉末を他のイットリウム化合物で安定化したジルコニア粉末と混合して用いても良い。
【0023】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体は、JISZ8729に規定された色彩パラメーターの明度L
*が58〜75、a
*が3〜20、b
*が−8〜−4である。a
*値が3未満であると、鮮やかなピンク色調が得られ難い。審美性の点で、好ましいb
*値としては、−7〜−4である。
【0024】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体には、異常に成長した結晶粒子(異常成長粒子)が存在せず、均一な粒子径の結晶粒子によりジルコニア焼結体が構成されている。異常成長粒子とは平均粒子径の5倍以上のサイズとなった粒子のことであり、主に安定化剤の偏析により生成し易く、粒子の結晶相が立方晶(Cubic)となるために低強度の原因となり易い。
【0025】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体は、その結晶相が正方晶(Tetragonal)を含むことが好ましく、ジルコニア焼結体が正方晶の単相であることが特に好ましい。これにより機械的強度が高くなりやすい。本発明のピンク色ジルコニア焼結体は、3点曲げ強度が1000MPa以上であることが好ましく、1000MPa以上1300MPa以下である事が好ましい。
【0026】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体は、粒間に微細な気孔の存在による相対密度の低下及び水熱劣化の観点から、結晶粒径が0.35〜0.50μmであることが好ましい。
【0027】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体は厚さ1.0mmにおけるD65光源による全光線透過率が25%以上であることが好ましい。
【0028】
また、本発明のピンク色ジルコニア焼結体の相対密度は、99.80%以上が好ましく、特に好ましくは99.90%以上である。
【0029】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体は、さらにアルミナを含むものである。アルミナの含有量としては、0.005wt%以上0.2wt%未満であり、好ましくは0.005wt%以上、0.15wt%以下である。
【0030】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体中のアルミナ含有量が0.2wt%以上になると、高密度化が困難となり、又、透光性が得られ難くなる。一方、アルミナ含有量が0.005wt%未満では、耐水熱劣化特性が悪化してしまうおそれがある。
【0031】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体は、焼結体の水熱劣化性の観点から、140℃の熱水中に24時間浸漬させた後の単斜晶相の転移深さが0〜15μmであることが好ましく、より好ましくは0〜10μmである。ここで、単斜晶相の転移深さはジルコニア焼結体を切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することで結晶の転移の様子が観察できる。
【0032】
次に、本発明のピンク色ジルコニア焼結体の製造法を説明する。
【0033】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体の製造に用いるジルコニア粉末は、低温焼結及び粒子間の凝集力の観点から、BET比表面積が10〜15m
2/gの範囲であることが好ましく、特に11〜14m
2/gの範囲であることが好ましい。
【0034】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体の製造に用いるジルコニア粉末は、粉末の凝集性を高くする微小粒子の減少及び硬い凝集性の粒子を含む粗粒の減少の観点から、スラリーの平均粒径が0.4〜0.7μmの範囲内であることが好ましく、特に好ましくは0.4〜0.6μmである。また、ジルコニアスラリーの最大粒径が2.0μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.5μm以下である。
【0035】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体の製造に用いるジルコニア粉末は、例えばジルコニウム塩水溶液の加水分解で得られる水和ジルコニアゾルを、乾燥,仮焼,粉砕して得ればよく、該ジルコニウム塩水溶液にアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物を加えた後に、反応率が98%以上になるまで加水分解を行って得られる水和ジルコニアゾルに、安定化剤及び着色剤の原料としてエルビニウム化合物のみか、イットリウム化合物及びエルビニウム化合物を添加することが好ましい。
【0036】
水和ジルコニアゾルの製造に用いるジルコニウム塩としては、オキシ塩化ジルコニウム,硝酸ジルコニル,塩化ジルコニウム,硫酸ジルコニウムなどが挙げられ、この他に水酸化ジルコニウムと酸との混合物を用いてもよい。ジルコニウム塩水溶液に加えるアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物としては、リチウム,ナトリウム,カリウム,マグネシウム,カルシウム等の水酸化物を挙げることができる。上記の水酸化物は、水溶液にして加えることが好ましい。
【0037】
上記で得られた水和ジルコニアゾルの乾燥粉を、粉末の凝集性を高くする微小粒子の減少及び硬い凝集性の粒子を含む粗粒の減少の観点から好ましくは1000〜1200℃、特に好ましくは1050〜1150℃の温度で仮焼することによってジルコニア粉末を得ることができる。
【0038】
次いで、上記で得られた仮焼粉をスラリーの平均粒径が0.4〜0.7μmの範囲にジルコニアボールを用いて湿式粉砕することが好ましい。
【0039】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体に含有させるアルミナの原料化合物としては、アルミナ、水和アルミナ、アルミナゾル、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどを使用することができる。着色元素化合物と同様に不溶性の化合物を使用することが好ましい。
【0040】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体の製造に用いるジルコニア粉末は、噴霧造粒粉末顆粒を用いることが好ましく、特に安定化剤及び着色剤としてのイットリア及びエルビア、添加剤としてのアルミナの他に有機バインダーを含む噴霧造粒粉末を用いてもよい。
【0041】
ジルコニア粉末をスラリーにして噴霧乾燥することにより、成形体を形成する際の流動性が高く、ジルコニア焼結体中に気泡が生成し難いものとなる。ジルコニア顆粒粉末の平均粒径は30〜80μm、軽装嵩密度が1.10〜1.40g/cm
3であることが好ましい。
【0042】
顆粒にバインダーを使用する場合、バインダーとしては、一般に用いられるポリビニルアルコール、ポリビニルブチラート、ワックス、アクリル系等のバインダーを挙げることができ、中でも分子中にカルボキシル基またはその誘導体(例えば、塩、特にアンモニウム塩など)を有するアクリル系のものが好ましい。このアクリル系のバインダーとして、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体やその誘導体を挙げることができる。バインダーの添加量は、ジルコニア粉末スラリー中のジルコニア粉末に対し0.5〜10重量%が好ましく、特に1〜5重量%が好ましい。
【0043】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体を得るには、当該ジルコニア粉末を通常のプレス成形(必要に応じて静水圧プレス(CIP処理))により相対密度50±5%程度の成形体として焼結することが好ましい。
【0044】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体の製造は、ジルコニア焼結体の相対密度及び水熱劣化特性の観点から、常圧下にて1350〜1450℃、特に1400℃で焼結することにより製造することが好ましい。
【0045】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体は常圧焼結で得、焼結雰囲気としては還元性雰囲気でなければ特に制限は無く、酸素雰囲気、大気中焼結で良い。特に大気中で焼結することが好ましい。
【発明の効果】
【0046】
本発明のピンク色ジルコニア焼結体は、焼結体密度及び強度が高く、審美性の高いピンク色を呈し、本発明のピンク色ジルコニア焼結体用のジルコニア粉末は、常圧焼結でもHIP等の加圧焼結でも上記特徴を有するピンク色ジルコニア焼結体を製造できるものである。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
例中、ジルコニアスラリーの平均粒径は、マイクロトラック粒度分布計(Honeywell社製,型式:9320−HRA)を用いて測定した。試料の前処理条件としては、粉末を蒸留水に懸濁させ、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製,型式:US−150T)を用いて3分間分散させた。
【0049】
原料粉末の成形は、金型プレスにより圧力19.6MPaで行い、当該予備成形体をゴム型に入れて、圧力196MPaで冷間静水圧プレス(CIP)処理して成形体とした。得られた成形体は所定温度(保持時間2時間)に設定して焼結させた。
【0050】
ジルコニア焼結体の色調は、JISZ8729に規定された色彩パラメーターL
*、a
*、b
*を測定した。ジルコニア焼結体が透光性を有するため、色調の測定にはジルコニア焼結体厚さを2.8mmに統一し、鏡面に研磨した面を測定した。
【0051】
ジルコニア焼結体の密度は、アルキメデス法で測定した。
【0052】
ジルコニア焼結体の全光線透過率は、濁度計(日本電色工業(株)製、型式:NDH2000)を用いて、JIS K7361に準拠して光源D65で測定した。試料はジルコニア焼結体を両面研磨した厚み1mmの円盤形状のものを用いた。
【0053】
ジルコニア焼結体の結晶粒径は、鏡面研磨した焼結体を熱エッチング処理し、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)製、型式:JSM−6390LV)を用いてプラニメトリック法により算出した。具体的には、顕微鏡画像上に円を描いたとき、円内の粒子数ncと円周にかかった粒子数Niの合計が少なくとも100〜150個となるような円を描いて、または100個に満たない画像の場合には、粒子数の合計(nc+Ni)が少なくとも100〜150個となるように数視野の画像を用いて複数の円を描き、プラニメトリック法により結晶粒径を求めた。
【0054】
ジルコニア焼結体の3点曲げ強度は、JIS R1601に準拠して、3点曲げ測定法で評価した。
【0055】
水熱劣化特性は、得られたジルコニア焼結体の片面を鏡面研磨し、140℃の熱水中に24時間浸漬させ、生成する単斜晶相の転移深さを求めることによって評価した。
【0056】
転移深さとは浸漬処理したジルコニア焼結体を切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)製、型式:JSM−6390LV)で観察し、鏡面とした面から結晶組織が粗となった深さを観察することで求めた。
【0057】
なお、本発明におけるジルコニア粉末に係わる「スラリーの平均粒径」とは、体積基準で表される粒径分布の累積カーブが中央値(メディアン径;累積カーブの50%に対応する粒径)である粒子と同じ体積の球の直径をいい、レーザー回折法による粒径分布測定装置によって測定したものをいう。
【0058】
「安定化剤濃度」とは、安定化剤/(ZrO
2+安定化剤)の比率をモル%として表した値をいう。
【0059】
「添加物含有量」とは、添加物/(ZrO
2+安定化剤+添加物)の比率を重量%として表した値をいう。ここで、添加物は酸化物に換算した値である。
【0060】
「相対密度」とは、アルキメデス法により実測した密度ρとHIPしたジルコニア焼結体の密度ρ
0とを用いて、(ρ/ρ
0)×100の比率(%)に換算して表した値をいう。
【0061】
実施例1
オキシ塩化ジルコニウム水溶液にエルビアを添加し、Er
2O
3濃度を2.0mol%としてから加水分解によって得られた水和ジルコニアゾルを乾燥させ、1100℃の仮焼温度で2時間仮焼した。
【0062】
得られた仮焼粉末を水洗処理したあとに、α−アルミナをアルミナ含有量で0.05wt%、及び蒸留水を加えてジルコニア濃度45重量%のスラリーにした。このスラリーを直径3mmのジルコニアボールを用いて、振動ミルで24時間粉砕処理した。
【0063】
得られたスラリーの平均粒径は0.41μm、最大粒径は≦1.5μmであった。乾燥したジルコニア粉末のBET比表面積は13m
2/gであった。得られたスラリーに有機バインダーを3wt%加えて、噴霧乾燥を行い平均粒径50μmのジルコニア顆粒粉末を得た。
【0064】
得られた顆粒粉末を一軸プレス(19.6MPa)で成形後、CIP(196MPa)成形し、焼結温度1450℃、昇温速度600℃/hr、保持2時間の条件で焼結させて(常圧焼結)ピンク色ジルコニア焼結体を製造した。
【0065】
実施例2
Er
2O
3濃度を3.0mol%とする以外は実施例1と同じ方法で粉砕スラリーを得た。
【0066】
得られたスラリーの平均粒径は0.43μm、最大粒径は≦1.5μmであった。乾燥したジルコニア粉末のBET比表面積は13m
2/gであった。得られたスラリーに有機バインダーを3wt%加えて、噴霧乾燥を行い平均粒径48μmのジルコニア顆粒粉末を得た。
【0067】
得られた顆粒粉末を一軸プレス(19.6MPa)で成形後、CIP(196MPa)成形し、焼結温度1450℃、昇温速度600℃/hr、保持2時間の条件で焼結させて(常圧焼結)ピンク色ジルコニア焼結体を製造した。
【0068】
実施例3
Er
2O
3濃度を3.2mol%とする以外は実施例1と同じ方法で粉砕スラリーを得た。
【0069】
得られたスラリーの平均粒径は0.42μm、最大粒径は≦1.5μmであった。乾燥したジルコニア粉末のBET比表面積は12m
2/gであった。得られたスラリーに有機バインダーを3wt%加えて、噴霧乾燥を行い平均粒径49μmのジルコニア顆粒粉末を得た。
【0070】
得られた顆粒粉末を一軸プレス(19.6MPa)で成形後、CIP(196MPa)成形し、焼結温度1400℃、昇温速度600℃/hr、保持2時間の条件で焼結させて(常圧焼結)ピンク色ジルコニア焼結体を製造した。
【0071】
実施例4
焼結温度を1450℃とする以外は実施例3と同じ方法でピンク色ジルコニア焼結体を製造した。
【0072】
比較例1
Er
2O
3濃度を4.0mol%とする以外は実施例1と同じ方法で粉砕スラリーを得た。
【0073】
得られたスラリーの平均粒径は0.42μm、最大粒径は≦1.5μmであった。乾燥したジルコニア粉末のBET比表面積は12m
2/gであった。得られたスラリーに有機バインダーを3wt%加えて、噴霧乾燥を行い平均粒径50μmのジルコニア顆粒粉末を得た。
【0074】
得られた顆粒粉末を一軸プレス(19.6MPa)で成形後、CIP(196MPa)成形し、焼結温度1450℃、昇温速度600℃/hr、保持2時間の条件で焼結させて(常圧焼結)ピンク色ジルコニア焼結体を製造した。
【0075】
得られたジルコニア焼結体は、強度の低い焼結体であった。
【0076】
比較例2
Er
2O
3濃度を5.0mol%とする以外は実施例1と同じ方法で粉砕スラリーを得た。
【0077】
得られたスラリーの平均粒径は0.42μm、最大粒径は≦1.5μmであった。乾燥したジルコニア粉末のBET比表面積は12m
2/gであった。得られたスラリーに有機バインダーを3wt%加えて、噴霧乾燥を行い平均粒径47μmのジルコニア顆粒粉末を得た。
【0078】
得られた顆粒粉末を一軸プレス(19.6MPa)で成形後、CIP(196MPa)成形し、焼結温度1450℃、昇温速度600℃/hr、保持2時間の条件で焼結させて(常圧焼結)ピンク色ジルコニア焼結体を製造した。
【0079】
得られたジルコニア焼結体は、強度の低い焼結体であった。
【0080】
比較例3
Er
2O
3濃度を1.5mol%とする以外は実施例1と同じ方法で粉砕スラリーを得た。
【0081】
得られたスラリーの平均粒径は0.41μm、最大粒径は≦1.5μmであった。乾燥したジルコニア粉末のBET比表面積は13m
2/gであった。得られたスラリーに有機バインダーを3wt%加えて、噴霧乾燥を行い平均粒径47μmのジルコニア顆粒粉末を得た。
【0082】
得られた顆粒粉末を一軸プレス(19.6MPa)で成形後、CIP(196MPa)成形し、焼結温度1450℃、昇温速度600℃/hr、保持2時間の条件で焼結させて(常圧焼結)ピンク色ジルコニア焼結させた。
【0083】
しかしながら、成形体の形状を保たずに崩壊し、焼結しなかった。
【0084】
実施例5
オキシ塩化ジルコニウム水溶液にイットリア及びエルビアを添加し、Y
2O
3濃度を1.7mol%、Er
2O
3濃度を1.4mol%とする以外は実施例1と同じ方法で粉砕スラリーを得た。
【0085】
得られたスラリーの平均粒径は0.43μm、最大粒径は≦1.5μmであった。乾燥したジルコニア粉末のBET比表面積は13m
2/gであった。得られたスラリーに有機バインダーを3wt%加えて、噴霧乾燥を行い平均粒径50μmのジルコニア顆粒粉末を得た。
【0086】
得られた顆粒粉末を一軸プレス(19.6MPa)で成形後、CIP(196MPa)成形し、焼結温度1450℃、昇温速度600℃/hr、保持2時間の条件で焼結させて(常圧焼結)ピンク色ジルコニア焼結体を製造した。
【0087】
実施例6
オキシ塩化ジルコニウム水溶液にイットリア及びエルビアを添加し、Y
2O
3濃度を2.8mol%、Er
2O
3濃度を0.3mol%とする以外は実施例1と同じ方法で粉砕スラリーを得た。
【0088】
得られたスラリーの平均粒径は0.42μm、最大粒径は≦1.5μmであった。乾燥したジルコニア粉末のBET比表面積は14m
2/gであった。得られたスラリーに有機バインダーを3wt%加えて、噴霧乾燥を行い平均粒径48μmのジルコニア顆粒粉末を得た。
【0089】
得られた顆粒粉末を一軸プレス(19.6MPa)で成形後、CIP(196MPa)成形し、焼結温度1450℃、昇温速度600℃/hr、保持2時間の条件で焼結させて(常圧焼結)ピンク色ジルコニア焼結体を製造した。
【0090】
実施例7
α−アルミナをアルミナ含有量で0.10wt%添加したこと以外は実施例3と同じ方法でピンク色ジルコニア焼結体を製造した。
【0091】
実施例8
焼結温度を1450℃とする以外は実施例7と同じ方法でピンク色ジルコニア焼結体を製造した。
【0092】
実施例9
α−アルミナをアルミナ含有量で0.15wt%添加したこと以外は実施例3と同じ方法でピンク色ジルコニア焼結体を製造した。
【0093】
実施例10
焼結温度を1450℃とする以外は実施例9と同じ方法でピンク色ジルコニア焼結体を製造した。
【0094】
比較例4
α−アルミナを添加しなかったこと以外は実施例4と同じ方法でピンク色ジルコニア焼結体を製造した。
【0095】
得られたジルコニア焼結体は、耐水熱劣化特性の悪い焼結体であった。
【0096】
比較例5
α−アルミナをアルミナ含有量で0.25wt%添加したこと以外は実施例3と同じ方法でピンク色ジルコニア焼結体を製造した。
【0097】
得られたジルコニア焼結体は、密度の低い焼結体であった。
【0098】
比較例6
焼結温度を1450℃とする以外は比較例5と同じ方法でピンク色ジルコニア焼結体を製造した。
【0099】
得られたジルコニア焼結体は、密度の低い焼結体であった。
【0100】
実施例1〜10、比較例1〜6におけるエルビア量、イットリア量、アルミナ添加量、焼結温度、得られたジルコニア焼結体の実測密度、相対密度、D65光源での全光線透過率、JISZ8729に規定された色彩パラメーターの明度L
*値、a
*値、b
*値、3点曲げ強度、結晶粒径、140℃の熱水中に24時間浸漬させた後の単斜晶転移深さを以下の表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
この表から明らかな様に、実施例1〜10のピンク色ジルコニア焼結体は、L
*値が大きく明度が高く、a
*値が大きく鮮やかなピンク色であり、相対密度が99.80%以上と高く、且つ、強度が1100MPaと高いピンク色ジルコニア焼結体であり、装飾部材、電子機器の外装材としての利用が期待できる。