(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221704
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】符号化装置及びブロックサイズ選択方法
(51)【国際特許分類】
H04N 19/119 20140101AFI20171023BHJP
H04N 19/14 20140101ALI20171023BHJP
H04N 19/176 20140101ALI20171023BHJP
【FI】
H04N19/119
H04N19/14
H04N19/176
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-252042(P2013-252042)
(22)【出願日】2013年12月5日
(65)【公開番号】特開2015-109586(P2015-109586A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTエレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148057
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 淑己
(72)【発明者】
【氏名】薛 永松
(72)【発明者】
【氏名】柳田 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】中村 健
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 裕江
【審査官】
堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−521178(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0286522(US,A1)
【文献】
国際公開第2008/126135(WO,A1)
【文献】
特開平09−130791(JP,A)
【文献】
特開平08−163557(JP,A)
【文献】
特開2013−162395(JP,A)
【文献】
特開平11−164305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N19/00−19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブロックサイズの1つを選択ブロックサイズとして選択するブロックサイズ選択部と、
前記選択ブロックサイズ単位で画像データを直交変換処理する直交変換部と、
前記直交変換部の出力データを量子化する量子化部と、
前記量子化部の出力データを符号化する符号化部とを備え、
前記ブロックサイズ選択部は、
前記複数のブロックサイズのうち最もサイズの小さい最小ブロックで前記画像データを分割して、前記最小ブロックごとに前記画像データの各画素の輝度値のバラツキを示すアクティビティを算出するアクティビティ算出部と、
各ブロックサイズに含まれる前記最小ブロックの前記アクティビティと前記アクティビティの平均値との差の平均を各ブロックサイズの分散値として算出する分散値算出部と、
前記分散値が所定の閾値より小さければ対応するブロックサイズを前記選択ブロックサイズとするサイズ選択部とを有することを特徴とする符号化装置。
【請求項2】
複数のブロックサイズの1つを映像符号化に用いる選択ブロックサイズとして選択するブロックサイズ選択方法であって、
アクティビティ算出部により、前記複数のブロックサイズのうち最もサイズの小さい最小ブロックで前記画像データを分割して、前記最小ブロックごとに前記画像データの各画素の輝度値のバラツキを示すアクティビティを算出するステップと、
分散値算出により、各ブロックサイズに含まれる前記最小ブロックの前記アクティビティと前記アクティビティの平均値との差の平均を各ブロックサイズの分散値として算出するステップと、
サイズ選択部により、各ブロックサイズの前記分散値が所定の閾値より小さければ対応するブロックサイズを前記選択ブロックサイズとするステップとを有することを特徴とするブロックサイズ選択方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HEVCにおけるブロックサイズ選択において演算量を低減させることができる符号化装置及びブロックサイズ選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
映像符号化においては全てのステップがブロック単位で行われる。H.264では、符号化の基本単位となるブロックのサイズは16x16の一種類である。一方、HEVCでは64x64、32x32、16x16、8x8の四種類である。
【0003】
HEVCの参照ソフトウェアモデルであるHMでは、全てのブロックサイズの分割方式に基づき仮符号化を行ない、その結果から符号量が一番少なくなるブロックサイズを選択する。この場合の演算量は1つの64x64ブロックに対し加算が4.5百万回、除算が9千回となる。
【0004】
先行技術として、H.264の16x16のブロックについて、8x8、4x4、2x2のサブブロックも含む複数のブロックサイズから最適なサイズを選択する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法をHEVCの64x64ブロックに適用すると、演算量は加算が2.5万回、乗除算が1.2万回となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−199963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先行技術はHMに比べると演算量を大幅に低減させることができる。しかし、依然として演算量は膨大である。HEVCにおけるブロックサイズ選択において演算量の一層の低減が望まれている。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的はブロックサイズ選択において演算量を低減させることができる符号化装置及びブロックサイズ選択方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る符号化装置は、複数のブロックサイズの1つを選択ブロックサイズとして選択するブロックサイズ選択部と、前記選択ブロックサイズ単位で画像データを直交変換処理する直交変換部と、前記直交変換部の出力データを量子化する量子化部と、前記量子化部の出力データを符号化する符号化部とを備え、前記ブロックサイズ選択部は、前記複数のブロックサイズのうち最もサイズの小さい最小ブロックで前記画像データを分割して、前記最小ブロックごとに前記画像データの各画素の輝度値のバラツキを示すアクティビティを算出するアクティビティ算出部と、各ブロックサイズに含まれる前記最小ブロックの前記アクティビティと前記アクティビティの平均値との差の平均を各ブロックサイズの分散値として算出する分散値算出部と、前記分散値が所定の閾値より小さければ対応するブロックサイズを前記選択ブロックサイズとするサイズ選択部とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ブロックサイズ選択において演算量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る符号化装置を示す図である。
【
図2】64x64ブロックにおけるブロックサイズ選択方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る符号化装置及びブロックサイズ選択方法について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る符号化装置を示す図である。
【0012】
ブロックサイズ選択部1は、複数のブロックサイズの1つを映像符号化に用いる選択ブロックサイズとして選択する。直交変換部2は、選択ブロックサイズ単位で画像データを直交変換処理する。量子化部3は直交変換部2の出力データを量子化する。符号化部4は量子化部3の出力データを符号化する。
【0013】
ブロックサイズ選択部1において、アクティビティ算出部5は、複数のブロックサイズのうち最もサイズの小さい8x8ブロック(最小ブロック)で画像データを分割して、8x8ブロックごとにアクティビティ(activity)を下記の数式1に基づいて算出する。アクティビティは8x8ブロックにおける画像データの各画素の輝度値のバラツキを示す指標である。なお、アクティビティは量子化部3による量子化の際のQP値を求めるときに使用するパラメータだが、ここで先行して計算しておく。
【0015】
分散値算出部6は、各ブロックサイズに含まれる8x8ブロックのアクティビティとアクティビティの平均値との差の平均を各ブロックサイズの分散値として算出する。なお、8x8ブロックの分散値は上記のアクティビティに1/64を掛けたものとなる。
【0016】
具体的には、64x64ブロックの分散値bunsan64を下記の数式2に基づいて算出する。bunsan64は64x64ブロックにおける64個の8x8ブロックのアクティビティのばらつきを表す指標となる。マトリクスの1つの小正方形は1つの8x8ブロックを表し、全体は64x64ブロックを表す。
【0018】
同様に、32x32ブロックの分散値bunsan32を下記の数式3に基づいて算出する。bunsan32は32x32ブロックにおける16個の8x8ブロックのアクティビティのばらつきを表す指標となる。マトリクスの1つの小正方形は1つの8x8ブロックを表し、全体は32x32ブロックを表す。
【0020】
同様に16x16ブロックの分散値bunsan16を下記の数式4に基づいて算出する。bunsan16は16x16ブロックにおける4個の8x8ブロックのアクティビティのばらつきを表す指標となる。マトリクスの1つの小正方形は1つの8x8ブロックを表し、全体は16x16ブロックを表す。
【0022】
サイズ選択部7は、分散値が所定の閾値より小さければ対応するブロックサイズを選択ブロックサイズとする。
図2は、64x64ブロックにおけるブロックサイズ選択方法のフローチャートである。種々テストデータに適用した結果、閾値a,b,cとして、画面全体8x8ブロックのアクティビティ平均値の1〜10倍の数値を採用すればよいことを見出している。
【0023】
まず、64x64ブロックの分散値bunsan64を算出する(ステップS1)。bunsan64を閾値cと比較し(ステップS2)、cより小さい場合には、この64x64ブロックのサイズが64x64に決まり(ステップS3)、処理が終了する。
【0024】
ステップS2においてbunsan64がc以上の場合には、64x64ブロックを細分化し、32x32ブロックの番号を1にする(ステップS4)。32x32ブロックの番号をチェックして(ステップS5)、4以下の場合には32x32ブロックの分散値bunsan32を算出する(ステップS6)。bunsan32を閾値bと比較し(ステップS7)、bより小さい場合には、この32x32ブロックのサイズが32x32に決まる(ステップS8)。そして、32x32ブロックの番号を加算して(ステップS9)、ステップS5に戻り、32x32ブロックの番号が4より大きい場合には処理が終了する。
【0025】
ステップS7においてbunsan32がb以上の場合には、32x32ブロックを細分化し、16x16ブロックの番号を1にする(ステップS10)。16x16ブロックの番号をチェックして(ステップS11)、4以下の場合には16x16ブロックの分散値bunsan16を算出する(ステップS12)。bunsan16を閾値aと比較し(ステップS13)、aより小さい場合には、この16x16ブロックのサイズが16x16に決まる(ステップS14)。そして、16x16ブロックの番号を加算して(ステップS15)、ステップSS11に戻り、16x16ブロックの番号が4より大きい場合にはステップS9に移行する。ステップS13においてbunsan16がa以上の場合には、この16x16ブロックのサイズが4つの8x8に決まり(ステップS16)、ステップS15に移行する。
【0026】
本実施の形態に係る符号化装置及びブロックサイズ選択方法の演算量は加算1.7万回、除算1百回となる。そのうち、アクティビティを求めるために必要な演算量は加算1.6万回、除算64回であるため、ブロックサイズを求めるための演算量については大幅に低減させることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 ブロックサイズ選択部、2 直交変換部、3 量子化部、4 符号化部、5 アクティビティ算出部、6 分散値算出部、7 サイズ選択部