(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記工程(1)の後、反応液を冷却して、前記式(III)で示されるエーテル化合物の結晶を析出させる工程(2)を有する、請求項1に記載のエーテル化合物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を、1)前記式(III)で示されるエーテル化合物の製造方法、及び、2)重合性化合物の製造方法、に項分けして詳細に説明する。
【0024】
1)前記式(III)で示されるエーテル化合物の製造方法
本発明の前記式(III)で示されるエーテル化合物の製造方法は、前記式(I)で示されるハイドロキノン化合物(以下、「ハイドロキノン化合物」ということがある。)と、前記式(II)で示されるヒドロキシル基含有エーテル化剤(以下、「ヒドロキシル基含有エーテル化剤」ということがある。)とを、アルカリ性水溶液と疎水性有機溶媒からなる二相系で、相間移動触媒及び親水性有機溶媒の非存在下に反応させる工程(1)を有する。
【0025】
本発明に用いるハイドロキノン化合物は、前記式(I)で示される化合物である。
式(I)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、−C(=O)−O−R’で示される基、又は−C(=O)−R’で示される基を表す。
R’は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0026】
前記R
1〜R
4の、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。これらの置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;等が挙げられる。
【0027】
前記R’の、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基の、アルキル基とその置換基としては、それぞれ、R
1〜R
4の、炭素数1〜6のアルキル基とその置換基として示したものと同様のものが挙げられる。
【0028】
これらの中でも、本発明においては、用いるハイドロキノン化合物として、R
1〜R
4が、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基であるものが好ましく、すべてが水素原子であるものがより好ましい。
【0029】
本発明に用いるヒドロキシル基含有エーテル化剤は、前記式(II)で示される化合物である。
式(II)中、R
5は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基を表し、Xは脱離基を表す。
【0030】
前記R
5の、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基の炭素数1〜20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。これらの置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基等が挙げられる。
【0031】
前記Xの脱離基は特に限定されず、有機化学の分野における一般的な脱離基が挙げられる。なかでも、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;−OSO
2R”(R”は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。)で示される基;が好ましい。
R”の、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基の、アルキル基とその置換基としては、それぞれ、R
1〜R
4の、炭素数1〜6のアルキル基とその置換基として示したものと同様のものが挙げられる。
R”の、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基の炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。これらの置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;等が挙げられる。
【0032】
これらの中でも、本発明においては、ヒドロキシル基含有エーテル化剤としては、R
5が炭素数1〜10のアルキレン基であり、Xがハロゲン原子であるものが好ましく、R
5がヘキサメチレン基であり、Xが塩素原子であるものが特に好ましい。
【0033】
ハイドロキノン化合物とヒドロキシル基含有エーテル化剤の使用割合は、ヒドロキシル基含有エーテル化剤1モルに対して、ハイドロキノン化合物が、好ましくは1.0〜5.0モル、より好ましくは1.2〜1.5モルである。
ハイドロキノン化合物の使用割合が少なすぎると、ジエーテル化物の生成量が多くなり、モノエーテル化物の収率及び純度が低下する傾向がある。一方、ハイドロキノン化合物の使用割合が多すぎると、反応後に精製処理を効率よく行うことが困難になる傾向がある。
【0034】
本発明において、ハイドロキノン化合物とヒドロキシル基含有エーテル化剤との反応(ハイドロキノン化合物のモノエーテル化反応)は、アルカリ性水溶液と疎水性有機溶媒との二相系で行われる。本発明によれば、モノエーテル化物の更なるエーテル化反応を防ぐことができ、ジエーテル化物の生成を抑制できると考えられる。また、水溶液の液性をアルカリ性にすることで、反応の進行に伴って生成する酸を中和し、ハイドロキノン化合物のモノエーテル化を効率よく行うことができる。
【0035】
アルカリ性水溶液は、金属炭酸塩、金属炭酸水素塩、及び金属水酸化物等の無機塩基を水に溶解させることで得られる。
金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;等が挙げられる。
金属炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸水素塩;等が挙げられる。
金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;等が挙げられる。
無機塩基は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、無機塩基としては、モノエーテル化物を収率よく得られることから、金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムがより好ましい。
【0036】
アルカリ性水溶液中の無機塩基の含有量は、ヒドロキシル基含有エーテル化剤1モルに対して、好ましくは1.00〜2.00モル、より好ましくは1.05〜1.30モルである。
無機塩基の含有量が少なすぎると、モノエーテル化物の収率が低下したり、反応速度が遅くなったり、未反応のヒドロキシル基含有エーテル化剤が多量に残存したりするおそれがある。一方、無機塩基の使用量が多すぎると、反応後に中和する工程が別途必要になる。
【0037】
アルカリ性水溶液の使用量は、ハイドロキノン化合物及びヒドロキシル基含有エーテル化剤が溶解する量であれば、特に制限されない。
アルカリ性水溶液の使用量は、ヒドロキシル基含有エーテル化剤1重量部に対して、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは3〜6重量部である。
アルカリ性水溶液の使用量が多すぎると、反応速度が遅くなったり、生産性が低下したりするおそれがある。一方、アルカリ性水溶液の使用量が少なすぎると、原料化合物等が析出したり、溶液の粘度が上がり反応速度が低下したりするおそれがある。
【0038】
疎水性有機溶媒は、25℃の水100gに対する溶解度が、10(g/100g−H
2O)以下の有機溶媒をいう。
疎水性有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アニソール、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶媒;1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール等の炭素数4以上のアルコール系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
疎水性有機溶媒は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、疎水性有機溶媒としては、水との共沸点が高く、高温で反応を行うことができること、モノエーテル化物を選択的に得られ易いこと、経済的に優れること等の理由から、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、又は炭素数4以上のアルコール系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、アニソール、シクロペンチルメチルエーテル、又は1−ヘキサノールがより好ましい。
【0039】
疎水性有機溶媒の使用量は、ヒドロキシル基含有エーテル化剤1重量部に対して、好ましくは0.2〜10重量部、より好ましくは0.5〜2重量部である。
疎水性有機溶媒の使用量が多すぎると、反応速度が遅くなったり、生産性が低下したりするおそれがある。一方、疎水性有機溶媒の使用量が少なすぎると、疎水性有機溶媒を用いる効果が得られにくくなり、モノエーテル化物を選択的に合成することが困難になるおそれがある。
【0040】
本発明において、ハイドロキノン化合物とヒドロキシル基含有エーテル化剤との反応は、相間移動触媒及び親水性有機溶媒の非存在下に行われる。ここで、「相間移動触媒及び親水性有機溶媒の非存在下」とは、本発明の効果を妨げるような量の相間移動触媒や親水性有機溶媒が系内に存在していないことを意味する。具体的には、例えば、相間移動触媒と親水性有機溶媒の総量が、アルカリ性水溶液と疎水性有機溶媒の合計に対して、0.01重量%以下、好ましくは0.001重量%以下の場合をいう。
【0041】
相間移動触媒としては、有機合成化学における公知の触媒が挙げられる。例えば、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド等の第4級アンモニウムハライド類;テトラブチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド等の第4級ホスホニウムハライド類;15−クラウン−5,18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−24−クラウン−8、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6等のクラウンエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等のポリオキシアルキレングリコール類;等が挙げられる。
【0042】
親水性有機溶媒とは、25℃の水100gに対する溶解度が、10(g/100g−H
2O)を超える有機溶媒をいう。
親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノ−ル、イソプロパノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ等のアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン等のケトン系溶媒;等が挙げられる。
【0043】
ハイドロキノン化合物とヒドロキシル基含有エーテル化剤との反応は、具体的には、以下の方法により行うことができる。
まず、所定の反応器に、ハイドロキノン化合物、ヒドロキシル基含有エーテル化剤、アルカリ性水溶液、及び疎水性有機溶媒の所定量を入れる。これらを入れる順番は特に限定されない。アルカリ性水溶液は、予め調製したものを反応器に入れてもよく、蒸留水と塩基とを別々に反応器に加え、反応器内でアルカリ性水溶液を調製してもよい。無機塩基(又はアルカリ性水溶液)やヒドロキシル基含有エーテル化剤は、最初に全量を反応器に入れてもよく、複数回に分けて、反応が進行している途中で、反応器に少量ずつ添加してもよい。
【0044】
反応は、通常、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行う。
反応温度は特に限定されないが、通常、20〜200℃、好ましくは60〜150℃、より好ましくは80〜120℃である。水との共沸点まで反応温度を上げても反応が遅い場合は、オートクレーブ等を用いて加圧条件下で反応を行い、より高い反応温度で反応を行ってもよい。
反応時間は、反応温度等にもよるが、通常、1〜24時間である。
反応の進行状況は公知の分析手段(例えば、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー)により確認ことができる。これらの方法により所望の反応率の段階で反応を終了させることができる。
【0045】
上記方法により反応を行う場合、反応終了後、反応液(反応液の溶媒を留去して濃縮した濃縮液や、反応液に水を加えて希釈した希釈液を含む)を冷却することで、反応生成物である、モノエーテル化物を結晶として析出させることができる。したがって、例えば、反応液を冷却した後、ろ過により固液分離することにより、高純度のモノエーテル化物を効率よく単離することができる。
モノエーテル化物の収率は、通常、50%以上、好ましくは60%以上である。また、モノエーテル化物の純度(モノエーテル化物とジエーテル化物の合計に対するモノエーテル化物の割合)は、通常、70重量%以上、好ましくは80重量%以上である。
【0046】
得られたモノエーテル化物は、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の公知の方法によりさらに精製し、より高純度のモノエーテル化物を得ることができる。
モノエーテル化物の構造は、NMRスペクトル、IRスペクトル、マススペクトル等を測定したり、元素分析を行うことで決定することができる。
【0047】
本発明のエーテル化合物の製造方法により得られるモノエーテル化物は、重合性液晶化合物の製造中間体として有用である。例えば、後述するように、得られたモノエーテル化物とアクリル酸等を反応させることで高純度の重合性化合物を得ることができる。また、さらにこの重合性化合物を用いて、重合性液晶化合物を製造することができる。
【0048】
2)重合性化合物の製造方法
本発明の製造方法は、本発明のエーテル化合物の製造方法により得られた、前記式(III)で示されるエーテル化合物と、前記式(IV)で示されるカルボン酸化合物とを、酸触媒の存在下に反応させる工程(3)を有する、前記式(V)で示される重合性化合物の製造方法である。
工程(3)は、アルコール性水酸基を有する前記式(III)で示されるエーテル化合物とカルボキシル基を有する前記式(IV)で示されるカルボン酸化合物との脱水縮合反応により、式(V)で示される重合性化合物を得る工程である。
【0049】
用いるエーテル化合物は、本発明のエーテル化合物の製造方法により得られた、前記式(III)で示される化合物である。
本発明に用いるエーテル化合物は純度が高いため、このエーテル化合物を用いることで、より高純度の重合性化合物を効率よく得ることができる。
【0050】
本発明に用いるカルボン酸化合物は、前記式(IV)で示される化合物である。
式(IV)中、Yは、水素原子、メチル基、又は塩素原子を表し、Yは水素原子が好ましい。
【0051】
用いる酸触媒としては、特に制限されないが、塩酸、硫酸、りん酸、硝酸等の鉱酸;リンタングステン酸等のヘテロポリ酸;パラトルエンスルホン酸等の有機酸;アンバーリスト(登録商標)、アンバーライト(登録商標)、ダウエックス(登録商標)等のスルホン酸型強酸性イオン交換樹脂;スルホン化テトラフルオロエチレン樹脂等のスルホン酸型フッ素化アルキレン樹脂;モルデナイト、ゼオライト等無機固体酸;等の従来公知のものが挙げられる。
酸触媒の使用量については必ずしも限定はないが、通常、前記式(III)で示されるエーテル化合物に対して、0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0052】
脱水縮合反応は、溶媒中で行うことができる。
用いる溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、1,3−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;及び、これらの2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
これらの中でも、芳香族炭化水素系溶媒が好ましく、トルエンがより好ましい。
【0053】
本発明の重合性化合物の製造方法において、目的物を収率良く得るためには、生成する水を系外に除去しながら、脱水縮合反応を行うことが好ましい。このような方法としては、例えば、ディーンスターク管等の装置を用いて、水を系外に除去しながら反応を行う方法;反応系にモレキュラーシーブ等の脱水剤を共存させて反応で生じた水を除去しながら反応を行う方法;ベンゼン等との共沸により水を系外に除去しながら反応を行う方法;オルトエステル、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド等を添加剤に用いて系内で生じた水を化学的に補足しながら反応を行う方法;等が挙げられる。
【0054】
脱水縮合反応は、エーテル化合物を安定化するために、酸化防止剤の存在下で行ってもよい。用いる酸化防止剤としては、2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−p−クレゾール)、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリス(ノニルフェニル)等が挙げられる。
酸化防止剤を用いる場合、その使用量は、エーテル化合物100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部、好ましくは、0.5〜5重量部である。
【0055】
反応温度は特に限定されないが、通常、20〜200℃、好ましくは40〜150℃、より好ましくは60〜100℃である。
【0056】
反応時間は反応温度等にもよるが、通常、1〜24時間である。
反応の進行状況は公知の分析手段(例えば、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー)により確認することができる。これらの方法により所望の反応率の段階で反応を終了させることができる。
【0057】
反応終了後においては、有機合成化学における通常の後処理操作を行い、所望により、反応生成物を蒸留法、カラムクロマトグラフィー法、再結晶化法等の公知の分離・精製手段により精製して、目的とする式(V)で示される重合性化合物を効率よく単離することができる。
【0058】
目的物の構造は、NMRスペクトル、IRスペクトル、マススペクトル等の分析手段を用いることにより同定し、確認することができる。
【0059】
本発明により得られる重合性化合物は、純度が高く、重合性液晶化合物の製造中間体として有用である。本発明の重合性化合物の製造方法によれば、このような重合性化合物を効率よく合成することができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。また、下記の実施例および比較例において、「部」および「%」は特に断りのない限り、重量基準である。
【0061】
以下の実施例1〜6及び比較例1〜5において、反応液の組成をガスクロマトグラフィーにより分析した。このとき、ドデカンを内部標準物質とした内部標準検量線法により、6−クロロヘキサノールの転化率(%)、目的物であるモノエーテル化物{4−[(6−ヒドロキシ−1−ヘキシル)オキシ]フェノール}の収率(%)、及び、モノエーテル化物とジエーテル化物の含有量比(モル比)を、それぞれ求めた。
なお、6−クロロヘキサノールの転化率とは、反応に用いた6−クロロヘキサノール量に対する、反応に関わった6−クロロヘキサノール量をいい、モノエーテル化物の収率とは、反応に用いた6−クロロヘキサノール量(モル)に対する、生成したモノエーテル化物の量(モル)をいい、モノエーテル化物とジエーテル化物の含有量比(モル比)とは、反応液中に含まれるモノエーテル化物とジエーテル化物の割合をいう。
【0062】
ガスクロマトグラフィーの測定条件を以下に示す。
装置:アジレント社製GC6850
検出器:FID
カラム:HP−1(0.25mmID、0.25μmdf、30m長)(Agilent社製 19091Z−433)
カラム温度:80℃から300℃まで、10℃/分の昇温速度で昇温→300℃で3分
カラム入口圧力:89.2kPa
キャリアー(N
2)流量:1.0mL/分(28cm/秒)Constant Flow
インジェクション温度:250℃
スプリット比:50
検出器温度:300℃
検出器水素流量:40mL/分
検出器空気流量:450mL/分
【0063】
また、以下の実施例7において、モノエーテル化物とジエーテル化物の含有量比(モル比)と、6−[(4−ヒドロキシフェニル)オキシ]ヘキシルアクリレートの純度は高速液体クロマトグラフィーにて測定した。
高速液体クロマトグラフィーの測定条件を以下に示す。
装置:アジレント社製1200シリーズ
溶離液:アセトニトリル(液A)と0.1%トリフルオロ酢酸水溶液(液B)の混合液
(液Aと液Bの容積比変化、(液A:液B)が、70:30から95:5まで、5分で連続的に変化→95:5で15分保持
カラム;ZERBAX Eclipse XDB−C18(4.6mmφ×250mm長)(Agilent社製 990967−902)
温度:40℃
流速:1ml/分
検出UV波長:280nm
【0064】
〔実施例1〕
冷却器及び温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、ハイドロキノン29.01g(0.2635mmol)、6−クロロヘキサノール30g(0.2196mol)、蒸留水150g、及びトルエン30gを加えた。全容を攪拌しながら、さらに、水酸化ナトリウム9.22g(0.2306mol)を、内容物の温度が40℃を超えないように10分かけて少量ずつ加えた。水酸化ナトリウムの添加終了後、内容物を加熱し、還流条件下で10時間反応を行った。反応液の分析結果を第2表に示す。
【0065】
〔実施例2〜6〕
実施例1で用いたトルエンを、第1表に示す溶媒に変更したこと以外は、実施例1と同様の条件で反応を行った。反応液の分析結果を第2表に示す。第1表中、「CPME」とは、「シクロペンチルメチルエーテル」を表す。
【0066】
〔比較例1〕
実施例1で用いたトルエンを添加しないこと以外は、実施例1と同様の条件で反応を行った。反応液の分析結果を第2表に示す。
【0067】
〔比較例2〕
冷却器及び温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、ハイドロキノン29.01g(0.2635mol)、6−クロロヘキサノール30g(0.2196mol)、エタノール150gを加えた。全容を攪拌しながら、さらに、水酸化ナトリウム9.22g(0.2306mol)を、内容物の温度が40℃を超えないように10分かけて少量ずつ加えた。水酸化ナトリウムの添加終了後、内容物を加熱し、還流条件下で10時間反応を行った。反応液の分析結果を第2表に示す。
【0068】
〔比較例3〕
冷却器及び温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、ハイドロキノン29.01g(0.2635mol)、6−クロロヘキサノール30g(0.2196mol)、蒸留水24g、トルエン120g、メタノール30gを加えた。全容を攪拌しながら、さらに、水酸化ナトリウム9.22g(0.2306mol)を、内容物の温度が40℃を超えないように10分かけて少量ずつ加えた。水酸化ナトリウムの添加終了後、内容物を加熱し、還流条件下で10時間反応を行った。反応液の分析結果を第2表に示す。
【0069】
〔比較例4〕
冷却器及び温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、ハイドロキノン29.01g(0.2635mol)、6−クロロヘキサノール30g(0.2196mol)、蒸留水24g、トルエン120g、エチレングリコール30gを加えた。全容を攪拌しながらさらに、水酸化ナトリウム9.22g(0.2306mol)を、内容物の温度が40℃を超えないように10分かけて少量ずつ加えた。水酸化ナトリウムの添加終了後、内容物を加熱し、還流条件下で10時間反応を行った。反応液の分析結果を第2表に示す。
【0070】
〔比較例5〕
冷却器及び温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、ハイドロキノン29.01g(0.2635mol)、6−クロロヘキサノール30g(0.2196mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)3.54g(0.2196mol)、蒸留水150g、トルエン150gを加えた。全容を攪拌しながら、水酸化ナトリウム9.22g(0.2306mol)を、内容物の温度が40℃を超えないように10分かけて少量ずつ加えた。水酸化ナトリウムの添加終了後、内容物を加熱し、還流条件下で10時間反応を行った。反応液の分析結果を第2表に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
第1表及び第2表から、以下のことがわかる。
トルエン等の疎水性有機溶媒を用いた実施例1〜6においては、高収率かつ高純度でモノエーテル化物が得られる。
一方、疎水性有機溶媒を用いない比較例1においては、モノエーテル化物の選択性が低い。
また、溶媒としてエタノールのみを用いた比較例2、親水性溶媒であるエチレングリコールを含有する比較例4、相間移動触媒であるTBABを含有する比較例5においては、モノエーテル化物の収率も選択性も低い。
親水性溶媒であるメタノールを含有する比較例3においては、モノエーテル化物の収率が低い。
【0074】
〔実施例7〕
冷却器及び温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、ハイドロキノン104.77g(0.9515mol)、6−クロロヘキサノール100g(0.7320mol)、蒸留水500g、o−キシレン100gを加えた。全容を攪拌しながら、さらに、水酸化ナトリウム35.15g(0.8783mol)を、内容物の温度が40℃を超えないように20分かけて少量ずつ加えた。水酸化ナトリウムの添加終了後、内容物を加熱し、還流条件下(92℃)で10時間反応を行った。
反応終了後、反応液の温度を80℃に下げ、蒸留水200gを加えた後、反応液を10℃に冷却することで、結晶が析出した。析出した結晶をろ過により固液分離し、得られた結晶を蒸留水150gで洗浄し、褐色結晶203.0gを得た。
この褐色結晶の一部を用いて分析したところ、乾燥減量は、36.3%であった。また、高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、褐色結晶に含まれるモノエーテル化物とジエーテル化物の割合(モル比)は、(モノエーテル化物/ジエーテル化物)で、92.0/8.0であった。
【0075】
ディーンスターク管付き冷却器及び温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、上記の褐色結晶(固液分離し、蒸留水で洗浄した後のもの)157g、トルエン500g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール1.05g(0.00476mol)を加え、全容を撹拌し、溶液を得た。得られた溶液を加熱し、還流条件下、ディーンスターク管から水を除去することで、系内を脱水した。
その後、溶液を80℃に冷却し、メタンスルホン酸4.57g(0.0476mol)を加え、再度、還流条件(110℃)に加熱した。次いで、溶液に、アクリル酸47.98g(0.6658mol)を2時間かけて滴下しながら、生成する水を除去し、脱水反応を行った。アクリル酸の滴下後、2時間撹拌を続けた。次いで、反応液を30℃に冷却し、蒸留水500gを加え、全容を攪拌後、静置した。
有機層を分取し、得られた有機層に5%食塩水400gを加え、分液した。有機層を分取し、得られた有機層に活性炭10gを加え、全容を25℃で30分撹拌した後、ろ過することで活性炭を除去した。
得られたろ液に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール1.05g(0.00476mol)を加えた後、減圧下にてトルエン350gを留去し、溶液を濃縮した。得られた濃縮液に、n−ヘプタン300gを30分かけて滴下して結晶を析出させ、そのまま5℃に冷却した。ろ過により結晶を分取し、得られた結晶をトルエン66.7gとn−ヘプタン133.3gの混合液で洗浄した。次いで、結晶をトルエン144gに加え、40℃に加熱して結晶を溶解させた。得られた溶液に、n−ヘプタン216gを1時間かけて滴下して結晶を析出させ、そのまま5℃に冷却した。ろ過により結晶を分取し、得られた結晶をトルエン72gとn−ヘプタン144gの混合液で洗浄し、真空乾燥することで、白色個体として6−[(4−ヒドロキシフェニル)オキシ]ヘキシルアクリレートを86.4g(6−クロロヘキサノール基準の収率;58%)、純度95.1%で得た。
構造は
1H−NMRで同定した。
1H−NMR(500MHz、DMSO−d6、TMS、δppm):8.87(s、1H)、6.72(d、2H、J=9.0Hz)、6.65(d、2H、J=9.0Hz)、6.32(dd、1H、J=1.5Hz、17.5Hz)、6.17(dd、1H、J=10.0Hz、17.5Hz)、5.93(dd、1H、J=1.5Hz、10.0Hz)、4.11(t、2H、J=6.5Hz)、3.83(t、2H、J=6.5Hz)、1.56−1.72(m、4H)、1.31−1.47(m、4H)