特許第6221854号(P6221854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6221854リチウムイオン電池、及びこれを用いた電子機器
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  • 特許6221854-リチウムイオン電池、及びこれを用いた電子機器 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221854
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池、及びこれを用いた電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0525 20100101AFI20171023BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20171023BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20171023BHJP
【FI】
   H01M10/0525
   H01M10/058
   H01M10/0566
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-48976(P2014-48976)
(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公開番号】特開2015-5496(P2015-5496A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年9月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-106159(P2013-106159)
(32)【優先日】2013年5月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】野末 満
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−155790(JP,A)
【文献】 特開2011−249269(JP,A)
【文献】 特開2003−077549(JP,A)
【文献】 特開2011−253677(JP,A)
【文献】 特開2011−210413(JP,A)
【文献】 特開2006−075870(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/090192(WO,A1)
【文献】 特開2006−216373(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/031981(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0525
H01M 10/0566
H01M 10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水系電解液が含浸された正極と負極とセパレータとの積層体が気密容器内に封入され、前記非水系電解液中のリチウムイオンが電気伝導を担うリチウムイオン電池であって、
前記気密容器内にCO及びCO吸着材が充填されており、
前記CO及びCO吸着材が、電気絶縁性の気液分離膜により前記非水系電解液と隔離されていることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項2】
前記CO及びCO吸着材が、有機系素材、無機系素材、または有機−無機複合素材であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項3】
前記CO及びCO吸着材が、無機多孔質材料、炭素系材料、有機ホスト化合物、多孔質有機金属複合材料、または塩基性材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池。
【請求項4】
前記CO及びCO吸着材が、ゼオライトであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のリチウムイオン電池。
【請求項5】
前記CO及びCO吸着材が、100〜3000m/gの比表面積を有することを特徴とする請求項又はに記載のリチウムイオン電池。
【請求項6】
前記CO及びCO吸着材が、3Å〜10Åの細孔径を有することを特徴とする請求項のいずれかに記載のリチウムイオン電池。
【請求項7】
前記CO及びCO吸着材が、Si/Al比が1〜5の範囲の元素構成比を有するゼオライトであることを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項8】
前記CO及びCO吸着材が、A型、X型あるいはLSX型のゼオライトであることを特徴とする請求項又はに記載のリチウムイオン電池。
【請求項9】
前記CO及びCO吸着材が、Liでイオン交換されたLSX型のゼオライトであることを特徴とする請求項又はに記載のリチウムイオン電池。
【請求項10】
前記CO及びCO吸着材が、Caでイオン交換されたA型のゼオライトであることを特徴とする請求項又はに記載のリチウムイオン電池。
【請求項11】
前記請求項1〜10のいずれかに記載のリチウムイオン電池を内蔵したことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液が含浸された電極シートとセパレータの積層体が気密容器内に封入されたリチウムイオン電池に関し、特に電池内部で発生するCOやCOなどのガス成分による内圧上昇を抑制する機能を備えたリチウムイオン電池に関する。また、本発明は、このリチウムイオン電池を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量、高出力タイプのリチウムイオン電池が実用化されている。このリチウムイオン電池は、大容量、高出力であるがゆえに従来の二次電池よりも高い安全性、安定性が求められる。
【0003】
このリチウムイオン電池は、正極体及び負極体が電解液とともに気密容器内に封入され、電解液中のリチウムイオンが電気伝導を担うものであり、電極シートとセパレータとの積層体を、角型の場合にはサンドイッチ状に、円筒型の場合にはロール状にそれぞれ形成し、集電体としての正極体及び負極体のリード部を各々の端子に接続する。そして、上述したような各種形態の積層体をそれぞれの対応する形状の気密容器に収容した後、気密容器の開口部から電解液を注入して積層体に電解液を含浸し、正極体及び負極体の先端を外部に露出した状態で電池容器を封入した構造を有するのが一般的である。
【0004】
上記リチウムイオン電池に用いられる電解液としては、炭酸エチレンなどを含有する非水系電解液が用いられるが、リチウムイオン電池のエネルギー密度を向上させるためには使用可能電圧を高めることが有効であることから、特に高い電圧で充放電可能な炭酸エステル系電解液が広く用いられている。
【0005】
このような非水系電解液を使用したリチウムイオン電池では、非水系電解液中に含まれる炭酸エステルが長期間の使用における充放電の繰り返し、過充電、あるいは短絡等の異常時の電池内部の温度上昇に起因して、劣化や電気分解をおこす。これにより電池内部でCOやCOなどのガスが発生し、内圧が上昇して気密容器が変形し、内部抵抗が増大する等の不具合を生じる虞があった。そこで、これらのガスを吸収あるいは抑制するための技術が種々提案されている。
【0006】
このようなガスを吸収したり抑制したりするためのものとして、特許文献1〜3には、電解液中にガスの発生を少なくするための添加剤を添加する技術が開示されている。また、特許文献4には、水酸化リチウムなどの水酸化物を主成分とする吸収材によりCOを吸収させる構造を有する電気二重層キャパシタが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−235591号公報
【特許文献2】特開平06−267593号公報
【特許文献3】再表2010/147236号公報
【特許文献4】特開2003−197487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3に記載された電解液中に添加剤を添加する技術では、COやCOなどのガスの発生の抑制効果が十分でない、という問題点がある。また、特許文献4に記載の技術では、ある程度のCOなど吸収効果を有するが、COの吸収性が期待できないという問題点がある。また、水酸化リチウムなどのアルカリ水酸化物と非水系電解液とが接触すると、水酸化物が非水系電解液に溶解してしまう、という問題点がある。さらに、アルカリ水酸化物はCOと反応すると水分を生じて腐食性が増大する虞もある。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、異常時や長期間の使用時に電池内部で発生するCOやCOなどのガス成分の吸収機能を有し、性能維持特性に優れたリチウムイオン電池を提供することを目的とする。また、本発明は、このリチウムイオンを内蔵した安全性に優れた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、非水系電解液が含浸された正極と負極とセパレータの積層体が気密容器内に封入され、前記非水系電解液中のリチウムイオンが電気伝導を担うリチウムイオン電池であって、前記気密容器内にCO及びCO吸着材が充填されていることを特徴とするリチウムイオン電池を提供する(発明1)。
【0011】
かかる発明(発明1)によれば、CO及びCO吸着材が、COやCOなどのガス成分を迅速かつ高い吸収率で吸収するので、電池容量の減少を抑制しつつ、リチウムイオン電池の異常時などこれらのガス成分の発生による内圧上昇に伴う気密容器の変形を緩和し、電池の内部抵抗の増加を抑制することができる。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記CO及びCO吸着材が、電気絶縁性の気液分離膜により前記非水系電解液と隔離されているのが好ましい(発明2)。
【0013】
かかる発明(発明2)によれば、リチウムイオン電池から発生するCO、COなどのガス成分と、非水系電解液とを気液分離膜により分離し、ガス成分側にCO及びCO吸着材を配置することにより、COやCOなどのガス成分を選択的に吸収することができ、非水系電解液の減少を最小限に留めることができる。この結果、リチウムイオン電池の容量の低下を抑制することができる。さらに、非水系電解液とCO及びCO吸着材とが直接接触しないので、CO及びCO吸着材のガス吸収性能を保持することも可能となる。
【0014】
上記発明(発明1,2)においては、前記CO及びCO吸着材が、有機系素材、無機系素材、または有機−無機複合素材であるのが好ましい(発明3)。
【0015】
かかる発明(発明3)によれば、これらのCO及びCO吸着材は、CO、COなどのガス成分を迅速に、かつ高い吸収率で吸収するので、リチウムイオン電池の異常時などこれらのガス成分による内圧上昇に伴う気密容器の変形を緩和し、電池の内部抵抗の増加を抑制することができる。
【0016】
上記発明(発明1〜3)においては、前記CO及びCO吸着材が、無機多孔質材料、炭素系材料、有機ホスト化合物、多孔質有機金属複合材料、または塩基性材料であるのが好ましい(発明4)。特に、前記CO及びCO吸着材が、ゼオライトであるのが好ましい(発明5)。
【0017】
かかる発明(発明4,5)によれば、これらのCO及びCO吸着材は、CO、COなどのガス成分を迅速に、かつ高い吸収率で吸収するので、リチウムイオン電池の異常時などこれらのガス成分による内圧上昇に伴う気密容器の変形を緩和し、電池の内部抵抗の増加を抑制することができる。しかも、CO及びCO吸着材の量が少なくて済むので、リチウムイオン電池のコンパクト化を図ることができる。
【0018】
上記発明(発明4,5)においては、前記CO及びCO吸着材が、100〜3000m/gの比表面積を有するのが好ましい(発明6)。
【0019】
かかる発明(発明6)によれば、CO及びCO吸着材と、CO、COなどのガス成分との接触面積を十分に確保することができるので、高い吸収率を維持することができる。
【0020】
上記発明(発明4〜6)においては、前記CO及びCO吸着材が、3Å〜10Åの細孔径を有するのが好ましい(発明7)。
【0021】
かかる発明(発明7)によれば、CO及びCO吸着材がCO、COなどのガス成分を細孔内に捕捉してより迅速にこれらのガスを吸収することができる。
【0022】
上記発明(発明5)においては、前記CO及びCO吸着材が、Si/Al比が1〜5の範囲の元素構成比を有するのが好ましい(発明8)。また、前記CO及びCO吸着材が、A型、X型あるいはLSX型のゼオライトを用いることができる(発明9)。特に前記CO及びCO吸着材が、Liでイオン交換されたLSX型のゼオライトであるのが好ましい(発明10)。
【0023】
かかる発明(発明8〜10)によれば、電解液の蒸気やその他の分解ガス等をより迅速に、かつ高い吸収率で吸収することができる。
【0024】
上記発明(発明5、8、9)においては、前記CO及びCO吸着材が、Caでイオン交換されたA型のゼオライトであるのが好ましい(発明11)。
【0025】
かかる発明(発明11)によれば、ゼオライトは水分を吸収すると、CO及びCOの吸収性能が大幅に低減するが、Ca交換されたA型ゼオライトは、加熱乾燥などにより再生することで、CO及びCOの吸収性能が大幅に回復し、耐久性を向上することができる。
【0026】
第二に本発明は、発明1〜101いずれかに記載のリチウムイオン電池を内蔵したことを特徴とする電子機器を提供する(発明12)。
【0027】
かかる発明(発明12)によれば、リチウムイオン電池の容量低下を抑制しつつ非水系電解液の分解によって発生するCO及びCOなどのガス量を低減させて電池容器の変形を抑制し、リチウムイオン電池による悪影響を排除した電子機器とすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、リチウムイオン電池の前記電池容器内にCO及びCO吸着材を充填しているので、リチウムイオン電池に使用される非水電解液から生じるガスのうち、発生量の多いCO、COを低減することが可能であり、性能維持率の高いリチウムイオン電池とするこができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る非水系電解液型リチウムイオン電池の内部構造を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。ただし、この実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
図1は本実施形態のリチウムイオン電池を示す縦断面図である。図1において、リチウムイオン電池Eは、正極端子1及び負極端子2と、気密容器たる電池ケース(筐体)3と、この電池ケース3の外周面に必要に応じて形成された防爆弁(図示せず)とを備え、電池ケース3の内部に電極体10を収納する。電極体10は、正極集電体11及び正極用電極板12と、負極集電体13及び負極用電極板14とを有し、正極用電極板12と負極用電極板14とは、それぞれセパレータ15を介して積層した構造を有する。そして、正極端子1は正極用電極板12に、負極端子2は負極用電極板14にそれぞれ電気的に接続されている。筐体としての電池ケース3は、例えば、アルミニウム製またはステンレス製の角型電池槽缶であり、気密性を有している。
【0032】
正極用電極板12は、両面に正極合剤を保持させた集電体である。例えば、その集電体は厚さ約20μmのアルミニウム箔であり、ペースト状の正極合剤は、遷移金属のリチウム含有酸化物であるリチウムコバルト酸化物(LiCoO)に結着材としてポリフッ化ビニリデンと導電材としてアセチレンブラックとを添加後混練したものである。そして、正極用電極板12は、このペースト状の正極合剤をアルミニウム箔の両面に塗布後、乾燥、圧延、帯状に切断の手順で得られる。
【0033】
負極用電極板14は、両面に負極合剤を保持させた集電体である。例えば、その集電体は厚さ10μmの銅箔であり、ペースト状の負極合剤は、グラファイト粉末に結着材としてポリフッ化ビニリデンを添加後混練したものである。そして、負極用電極板14はこのペースト状の負極合剤を銅箔の両面に塗布後、乾燥、圧延、帯状に切断の手順で得られる。
【0034】
セパレータ15としては、多孔膜を用いる。例えば、セパレータ15は、ポリエチレン製微多孔膜を用いることができる。また、セパレータに含浸させる非水系電解液としては、リチウムイオンの伝導性を有する非水系有機電解液が好ましく、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)などの環状カーボネートと、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネートとの混合溶液が好ましく、必要に応じて、電解質として六フッ化リン酸リチウムなどのリチウム塩が溶解したものである。例えば、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジメチルカーボネート(DMC)を1:1:1の割合で混合した混合液、あるいはプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)を1:1:1の割合で混合した混合液に1mol/Lの六フッ化リン酸リチウムを添加したものを用いることができる。
【0035】
このようなリチウムイオン電池Eの電池ケース(筐体)3内の空隙部に、CO及びCO吸着材を設置する。本実施形態においてCO及びCO吸着材とは、電解液の分解によって発生するCO及び/又はCOを吸着する機能を有するものであればよく、いずれか一方の特定のガスにのみ作用してもよい。また、CO、COなどのガス成分を細孔内部で物理吸着するものや、分子間相互作用や、結晶格子の隙間の影響によりCO、COなどのガス成分を包接するものであってもよい。
【0036】
本実施形態において用いるCO及びCO吸着材の具体例としては、無機多孔質材料などの無機系素材、炭素系材料、有機ホスト化合物、多孔質有機金属複合材料などの有機系素材が挙げられる。
【0037】
無機多孔質材料としては、多孔質シリカ、金属ポーラス構造体、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ゼオライト、活性アルミナ、酸化チタン、アパタイト、多孔質ガラス、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム等が好適である。
【0038】
炭素系材料としては、粒状活性炭、繊維状活性炭、シート状活性炭、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、ナノカーボン等が好適である。
【0039】
有機ホスト化合物としては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、カリックスアレン類、尿素、デオキシコール酸、コール酸、1,1,6,6−テトラフェニルヘキサ−2,4−ジイン−1,6−ジオール等のアセチレンアルコール類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビスフェノール類、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類、ビス−β−ナフトール等のナフトール類、ジフェン酸ビス(ジシクロヘキシルアミド)等のカルボン酸アミド類、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン等のヒドロキノン類、キチン、キトサン等が好適である。
【0040】
これらの有機ホスト化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上述の有機ホスト化合物は、無機系多孔質物質に担持させた有機−無機複合素材として使用することもできる。この場合、有機ホスト化合物を担持する多孔質物質としては、シリカ類、ゼオライト類、活性炭類の他に、粘土鉱物類、モンモリロナイト類等の層間化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
多孔質有機金属錯体としては、Metal−Organic Framworks(MOF)と呼ばれる多孔質有機金属錯体化合物、有機カルボン酸塩、有機ホウ素化合物、有機りん化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、有機ケイ素化合物、有機亜鉛化合物、有機マグネシウム化合物、有機インジウム化合物、有機スズ化合物、有機テルル化合物、有機ガリウム化合物等が好適である。
【0042】
これらのCO及びCO吸着材は単独で用いてもよいし、2種類以上の素材を併用してもよいが、ゼオライトが特に有効である。
【0043】
上述したようなCO及びCO吸着材は、100〜3000m/gの比表面積を有することが好ましい。比表面積が100m/g未満では、CO、COなどのガス成分との接触面積が小さく、十分な吸着性能を発揮することができない。一方、比表面積が3000m/gを超えてもCO、COの吸着性能の向上効果が得られないばかりか、CO及びCO吸着材の機械的強度が低下するため好ましくない。
【0044】
また、CO及びCO吸着材は、3Å以上10Å以下の細孔径を有することが好ましい。細孔容積が3Å未満の場合、細孔内へのCO、COなどのガス成分の侵入が困難となる。一方、細孔容積が10Åを超えると、CO、COの吸着力が弱くなってしまい、細孔内で最密に吸着できず、結果として吸着量が低下してしまうため好ましくない。
【0045】
さらに、CO及びCO吸着材がゼオライトの場合、Si/Al比が1〜5の範囲の元素構成比を有するものを使用するのが好ましい。Si/Al比が1未満のゼオライトは構造上不安定である一方、Si/Al比が5を超えるゼオライトはカチオン含有率が低く、CO、COの吸着量が低下するため好ましくない。
【0046】
なお、ゼオライトとしては、A型、X型あるいはLSX型のゼオライトを用いるのが好ましい。特にゼオライトのカチオン部分がLiでイオン交換されたLSX型あるいはA型のゼオライトやゼオライトのカチオン部分がCaでイオン交換されたA型のゼオライトが好ましく、より好ましくはCaでイオン交換されたA型のゼオライトである。
【0047】
電池ケース3内に収納されたCO及びCO吸着材は、リチウムイオン電池の組立段階における雰囲気中の湿度により水分を吸収することがありうる。そして、ゼオライトは、水分を吸収するとCO及びCOの吸収性能が大幅に低減し、その後加熱乾燥などにより再生してもCO及びCOの吸収性能は、完全には回復し難いという問題点がある。しかしながら、Caでイオン交換されたA型のゼオライトは、水分を含んだ後の加熱により水分を追い出すことによりス吸収性能を再生させることが可能であり、耐久性の向上したリチウムイオン電池とするのに好適である。
【0048】
また、COを主に吸収させたい場合には、COを中和的に吸収する機能を有する塩基性の素材を用いることもできる。この塩素系の素材としては、具体的には、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウムなどの金属炭酸水素塩、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ性水酸化物、その他アルカリ性の鉱物、有機物、多孔質材料などを挙げることができる。
【0049】
上述したような本実施形態のCO及びCO吸着材の形状については特に制約はなく、粉末状、顆粒状、ブロック状、錠剤状などあらゆる形態を適用することができる。ただし、取り扱い性を考慮し、ガス吸着性能に影響のない範囲で成形したものを用いることが好ましい。
【0050】
なお、水分によりガス吸収材の性能が低下するのを抑制することを目的として、CO及びCO吸着材100容積%に対して、水吸収材25〜75容積%程度配合することができる。この水吸収材としては、モレキュラシーブ等のゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、塩化カルシウム、五酸化二リンなどを用いることができるが、多孔質で吸収量が多いことからモレキュラシーブが好ましい。
【0051】
このCO及びCO吸着材は、電池ケース(筐体)3内にそのまま充填するよりも、非水系電解液とCO及びCO吸着材とが直接接触することがないように気液分離膜により隔離して設置するのが好ましい。このように非水系電解液とCO及びCO吸着材とを気液分離膜により隔離することにより、リチウムイオン電池から発生するCOやCOなどのガス成分は気液分離膜を透過するが、液体状態の非水系電解液は透過しないため、CO、COなどのガス成分を選択的に吸収することができ、非水系電解液の減少を最小限に留めることができる。
【0052】
上述した構成を有するリチウムイオン電池につき、その作用を説明する。リチウムイオン電池Eは長期間使用することで、リチウムイオン電池Eに含まれる非水系電解液が分解し、CO、COなどのガス成分が発生する。このCO、COなどのガス成分は電池ケース(筐体)3の内圧の上昇を引き起こすおそれがあるが、本実施形態においては、電池ケース(筐体)3内にCO及びCO吸着材を配置しているので、CO、COが吸収されるため電池ケース(筐体)3の内圧を過度に上昇させることがない。これらによりリチウムイオン電池の安全性の向上と長寿命化を達成することができる。
【0053】
以上、本発明について、添付図面を参照して説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば、リチウムイオン電池Eは、円筒形状であってもよく、さらにはリチウムイオン電池を、別途これを収容可能な電池ケースに収容して、この電池ケース内にガス吸収材を設けてもよい。
【実施例】
【0054】
以下の具体的実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
CO及びCO吸着材として、Liイオン交換したLSX型のゼオライトを用いて、窒素吸着法により、25℃、760mmHgにおけるCOおよびCOの平衡吸着量を測定した。この結果、CO吸着量は130mL/gであり、CO吸着量は52mL/gであった。
【0056】
(実施例2)
CO及びCO吸着材として、Caイオン交換したX型のゼオライトを用いて、窒素吸着法により、25℃、760mmHgにおけるCOおよびCOの平衡吸着量を測定した。この結果、CO吸着量は130mL/gであり、CO吸着量は38mL/gであった。
【0057】
(実施例3)
CO及びCO吸着材として、Naイオン交換したX型のゼオライトを用いて、窒素吸着法により、25℃、760mmHgにおけるCOおよびCOの平衡吸着量を測定した。この結果、CO吸着量は132mL/gであり、CO吸着量は27mL/gであった。
【0058】
(実施例4)
CO及びCO吸着材として、Caイオン交換したA型のゼオライトを用いて、窒素吸着法により、25℃、760mmHgにおけるCOおよびCOの平衡吸着量を測定した。この結果、CO吸着量は105mL/gであり、CO吸着量は31mL/gであった。
【0059】
(実施例5)
CO及びCO吸着材として、Naイオン交換したA型のゼオライトを用いて、窒素吸着法により、25℃、760mmHgにおけるCOおよびCOの平衡吸着量を測定した。この結果、CO吸着量は70mL/gであり、CO吸着量は19mL/gであった。
【0060】
(実施例6)
CO及びCO吸着材として、Hイオン交換したY型のゼオライトを用いて、窒素吸着法により、25℃、760mmHgにおけるCOおよびCOの平衡吸着量を測定した。この結果、CO吸着量は15mL/gであり、CO吸着量は2mL/gであった。
【0061】
(実施例7)
CO及びCO吸着材として、Caイオン交換したZSM−5型のゼオライトを用いて、窒素吸着法により、25℃、760mmHgにおけるCOおよびCOの平衡吸着量を測定した。この結果、CO吸着量は56mL/gであり、CO吸着量は10mL/gであった。
【0062】
上記実施例1〜5から明らかなように、LSX型、X型、A型のゼオライトを用いることで、実施例6,7よりもCO及びCOを多量に吸収することができることがわかる。
【0063】
(実施例8〜12)
(電解液との反応性試験)
本発明のリチウムイオン電池において、CO及びCO吸着材は、電池ケース内に置かれることになるため、電解液と反応性してガスを発生したり、発熱したりするものは好ましくない。そこで、以下の手順により各種ゼオライトと電解液との反応性試験を行った。なお、電解液としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)を1:1:1の割合で混合した混合液を用意した。
【0064】
乾燥窒素雰囲気で50mLのガス捕集ビンに試料(表1に示す各種ゼオライト)を5g入れ真空ポンプと接続し、3分間排気した後減圧状態で密栓した。次に乾燥窒素雰囲気でこのガス捕集ビンのセプタムキャップから、シリンジで電解液10mLを加え、発熱および気泡の発生の有無を確認した。さらに、乾燥窒素雰囲気で18時間保管した後、乾燥窒素雰囲気でガス捕集ビンを開放し、ガス捕集ビン内部のガスをガスクロマトグラフ(GC)で分析し、二酸化炭素及びエチレンの有無を確認した。結果を表1に示す。
【0065】
また、実施例8〜12の各試料の25℃、760mmHgにおけるCOの吸着量を測定した結果を表1に合わせて示す。なお、COの吸着量は、以下の減圧試験法により測定した。
(1)使用器具
〈a〉真空デシケータ(容積1.37L)
〈b〉真空ポンプ
〈c〉圧力容器(真空デシケータと同容積で、圧力ゲージ付)
〈d〉圧力センサー(減圧表示可能なもので、〈a〉の真空デシケータに取り付ける。)
〈e〉データロガー
〈f〉シャーレ(金属製)
〈g〉COガス
〈h〉電子天秤
【0066】
(2)測定操作
まず、窒素パージされたグローブボックス内で、各試料を約5g採取し電子天秤で正確な質量を計測し、シャーレに取り分けた。この取り分けた試料をデシケータ内に速やかに持ち込み、デシケータに蓋をして、真空ポンプにてゲージ圧で100kPaまで減圧した。一方、圧力容器の内部をCOガスで完全に置換し、さらにゲージ圧で100kPaまで充填した。このときデシケータにおけるデータロガーの記録を開始した。続いて、真空デシケータと圧力容器を接続し、圧力容器のゲージが0kPaになるまでCOガスを真空デシケータ内に送り込み、この時点を吸収開始時間とした。そして、一定時間経過後のデータロガーの数値を読み取ることでCOガスの吸着量を計算した。
【0067】
ここで、COガスの吸着量は、1.37Lの容器内がCOガスで満たされていた場合に、半分のCOガスが吸収されたときについて考えると、685mLのCOガスが吸収されたことになる。この時、圧力は半分になるため、圧力センサーの値は、真空と大気圧の中間(101.3/2kPa)、すなわち50、56kPaとなることから、COガス吸収量をy(mL)、圧力センサーの値をx(kPa)として下記式(1)
y=−13.62x ・・・(1)
が導きだされるので、これに基づいて算出した。
【0068】
【表1】
【0069】
表1から明らかなとおり、実施例8(Caイオン交換A型ゼオライト)及び実施例10(Liイオン交換A型ゼオライト)は、優れた二酸化炭素吸着能を有するとともに電解液との反応性に乏しかった。これに対し、実施例9、11及び12のゼオライトは、二酸化炭素吸着能は優れているものの、電解液と反応して発熱、気泡、ガスなどを生じるものであった。これらの結果から、リチウムイオン電池用には、Caイオン交換A型ゼオライト及びLiイオン交換A型ゼオライトがより好適であることがわかった。
【0070】
(実施例13、14)
(水分吸収後の再生特性の確認試験)
前記実施例8〜12で好適な結果が得られたCaイオン交換A型ゼオライト(実施例13)及びLiイオン交換A型ゼオライト(実施例14)を試料として、それぞれステンレス製のバットに厚さ5mm程度に敷設し、電子天秤で正確な質量を計測した。この試料を25℃、50%RHの恒温槽内に12時間以上、試料重量が10%以上増加していることが確認できるまで放置して加湿した。このときのCOガスの吸着量を前記実施例8〜12と同様にして計測した結果を、あらかじめ測定しておいた初期の各試料のCOガスの吸着量とともに表2に示す。なお、ここで試料重量が10%以上の増加は、水分を20重量%以上含んでいることを意味する。
【0071】
次に、これらの試料を窒素パージ(毎分10L)された電気炉に投入し、300℃で1時間加熱して乾燥させ、取り出した後窒素パージしたグローブボックス内で常温まで冷却して試料を再生した。この再生試料のCOガスの吸着量を前記実施例8〜12と同様にして計測した結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
表2から明らかなとおり、Caイオン交換A型ゼオライトを用いた実施例13は、Liイオン交換A型ゼオライトを用いた実施例14と比べて、初期CO吸着量が高く、再生後はCO吸着能がほぼ回復していた。これに対し、実施例14は再生後のCO吸着能の回復がわずかであった。また、ゼオライトは、加湿によりCO吸着能をほぼ失うことがわかる。これらのことから、加湿後の再生能を重視する場合には、Caイオン交換A型ゼオライトが好適であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
上述したような本発明のリチウムイオン電池は、電池内部で発生したCO及びCOを吸収して、その容積を低減できるガス吸着材を備えているため、リチウムイオン電池の安全性を大幅に向上することができ、その産業上の利用可能性は極めて大きい。また、このようなリチウムイオン電池を内蔵した電子機器は、安全性に優れている。
【符号の説明】
【0075】
1…正極端子(正極)
2…負極端子(負極)
3…電池ケース(筐体)(気密容器)
11…正極集電体(正極)
13…負極集電体(負極)
E…リチウムイオン電池
図1