特許第6222013号(P6222013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222013
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】抵抗率制御方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20171023BHJP
   C30B 15/04 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   C30B29/06 502H
   C30B15/04
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-175999(P2014-175999)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-50140(P2016-50140A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2016年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】星 亮二
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 洋之
(72)【発明者】
【氏名】高野 清隆
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−309693(JP,A)
【文献】 特開昭62−226897(JP,A)
【文献】 特開2012−148949(JP,A)
【文献】 特開平09−221382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/06
C30B 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CZ法によってシリコン単結晶を育成する際に、育成されるシリコン単結晶の抵抗率をドーパントによって制御する方法であって、
前記シリコン単結晶が所定の導電型を有するように主ドーパントを初期ドーピングする工程と、
前記シリコン単結晶を育成しながら、(結晶化した重量)/(初期シリコン原料の重量)で表される固化率に応じて、前記主ドーパントと反対の導電型を有する副ドーパントを、連続的又は断続的に追加ドープする工程と
を有し、
前記追加ドープする工程において、前記固化率が所定値α以上のときに前記副ドーパントを追加ドープし、前記固化率が前記所定値αになる前には前記副ドーパントをドープせず、
前記所定値αは、前記主ドーパントの偏析係数をkとしたときに、k/4≦α≦2k(ただし、2k>1の場合は、k/4≦α≦1)の範囲であることを特徴とする抵抗率制御方法。
【請求項2】
前記副ドーパントの偏析係数が、前記主ドーパントの偏析係数よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の抵抗率制御方法。
【請求項3】
1本目のシリコン単結晶を育成した後、原料を追加チャージして2本目以降のシリコン単結晶の育成を繰り返す工程をさらに有し、
前記2本目以降のシリコン単結晶の育成を繰り返す工程は、
それまでのシリコン単結晶の育成において追加ドープされた前記副ドーパントの量を考慮して、前記主ドーパントを加える段階と、
シリコン単結晶を育成しながら、前記固化率が前記所定値αになる前には前記副ドーパントをドープしないで、前記固化率が前記所定値α以上になった後に、前記固化率に応じて、前記副ドーパントを連続的または断続的に追加ドープする段階と
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の抵抗率制御方法。
【請求項4】
前記所定値αは、その固化率に対応する直胴長さで有転位化してスリップバックしても製品が取れる固化率値以上であり、かつ、シリコン単結晶の育成開始前までに加えられたドーパントだけでシリコン単結晶の抵抗率が所定の規格を満たす固化率値以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の抵抗率制御方法。
【請求項5】
前記副ドーパントを含むシリコン細棒、又は、前記副ドーパントを含むシリコン結晶を粒状に砕いたドープ剤を、育成中のシリコン結晶とルツボ壁との間の領域のシリコン融液へ挿入又は投入することで、前記副ドーパントを追加ドープすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の抵抗率制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CZ法によって育成されるシリコン単結晶の抵抗率制御方法、及び、この抵抗率制御方法を用いて抵抗率が制御されたn型シリコン単結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などパワー用などに用いられるスイッチングデバイスでは主にn型結晶が用いられる。従来は抵抗率制御が比較的容易なEPW(エピタキシャルウェーハ)やFZ−PW(FZ法により製造されたウェーハ)が用いられてきた。しかしEPWはCZ−PW(CZ法により製造されたウェーハ)に比較して余分な工程(エピタキシャル成長工程)が含まれるため高価なウェーハであるし、FZ法は結晶径を大きくすることが容易ではないという問題があり、CZ−PWにエピタキシャル層を積まずにそのまま使うCZ−PWが注目されつつある。しかしCZ法により製造されたシリコン単結晶では偏析現象があり軸方向(引き上げ軸方向)の抵抗率分布を均一にすることが難しい。
【0003】
これを解決できる方法として、特許文献1、2に、主ドーパントと主ドーパントと反対極性で偏析係数の小さい副ドーパントを添加する(すなわち、カウンタードープする)方法が開示されている。この方法を用いることによって、CZ単結晶の軸方向抵抗率分布を改善することが可能である。ただし、n型結晶の製造において最も良く用いられるドーパントはリン(P)であり、その偏析係数は0.35程度である。これに対して反対極性であってリン(P)の偏析係数より偏析係数が小さい元素はGa、In、Alなどである。これらの元素は重金属であり、例えば酸化膜中に含まれると、酸化膜の電気的特性が劣化するとの報告もあり、デバイス特性にどう影響するかよく判っていない。このため、p型ドーパントとしてはB(ボロン)が主流であり、デバイスを作製する上で広く用いられている元素なので、可能であれば反対極性の元素としてボロン(B)を用いることが好ましい。しかしボロン(B)の偏析係数は0.78程度と、リン(P)より偏析係数が大きく、上述の技術を用いることができない。
【0004】
この点を解決可能な手段として、特許文献3に、主ドーパントのリン(P)に対してボロン(B)を連続的に添加する方法が開示されている。この方法を用いれば主ドーパントをリン(P)とし、副ドーパントをボロン(B)としたカウンタードープにより軸方向抵抗率分布を改善したn型結晶を製造可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−128591号公報
【特許文献2】特開2004−307305号公報
【特許文献3】特開平3−247585号公報
【特許文献4】特開平10−029894号公報
【特許文献5】特開平6−234592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に開示された方法では単結晶が有転位化してしまった場合に、再溶融できないという問題があった。通常CZ法(MCZ法を含む)における単結晶製造では、何らかの要因で単結晶化が阻害され、有転位化が発生してしまうことが、しばしば起こる。有転位化が発生すると、有転位部で発生した転位が、すでに単結晶化しているがまだ高温の状態にある部分に滑っていくスリップバックと呼ばれる現象が起こる。このため、有転位化が発生した長さからスリップバックした長さを差し引いた長さしか、単結晶を得ることができない。更に結晶のトップ部は抵抗率以外の品質、例えば酸素濃度やGrown−in欠陥特性などが、規格値に入らない部分があるので、一般的にトップ部からある程度の長さ以上の部分が製品向けに設定されている。従って、結晶が比較的短い長さで有転位化が発生した場合には、トップ部の製品に向かない部分と、スリップバックとによって、全く製品が取れないことになる。このため、有転位化した結晶を原料融液(シリコン融液)中に沈めて再溶融してしまい、再度単結晶製造をやり直すことが行われている。特許文献3の方法を用いた場合、有転位化が発生した時点では、すでに反対極性のドーパントが結晶及び原料融液中に含まれているので、これを再溶融してしまうと、主ドーパントが不足した状態となってしまい、製品を得ることができなくなる。従って、有転位化した部分までを原料融液から切り離して取り出し、廃棄処分することとなり、歩留まりが大きく低下するという問題点があった。
【0007】
その他に、特許文献4ではルツボの底部に反対極性のドーパントを収容しておき、抵抗率が下がってしまう前にこれらを溶出させる方法が開示されている。しかしこの方法は、固化率や結晶長さに対して制御するのではなく、ルツボの溶解量に対して制御するものである。ルツボの溶解は再溶融中においても進行してしまうので、再溶融してしまうと添加すべきドーパントが狙いの位置より早く溶け出してしまうことになり、抵抗率が高くなってしまう。従って、この方法においてもやはり再溶融することはできない。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、CZ法においてシリコン単結晶育成中に有転位化が生じても歩留まりの低下を抑制することができ、かつ、シリコン単結晶の抵抗率を精度よく制御することができる抵抗率制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、CZ法によってシリコン単結晶を育成する際に、育成されるシリコン単結晶の抵抗率をドーパントによって制御する方法であって、前記シリコン単結晶が所定の導電型を有するように主ドーパントを初期ドーピングする工程と、前記シリコン単結晶を育成しながら、(結晶化した重量)/(初期シリコン原料の重量)で表される固化率に応じて、前記主ドーパントと反対の導電型を有する副ドーパントを、連続的又は断続的に追加ドープする工程とを有し、前記追加ドープする工程において、前記固化率が所定値α以上のときに前記副ドーパントを追加ドープし、前記固化率が前記所定値αになる前には前記副ドーパントをドープしないことを特徴とする抵抗率制御方法を提供する。
【0010】
このように、固化率が所定値α以上のときに前記副ドーパントを追加ドープし、前記固化率が前記所定値αになる前には前記副ドーパントをドープしないことで、シリコン単結晶の育成において固化率が所定値αになるまでは、有転位化が生じたとしても、再溶融することができ、また、固化率が所定値αになった後に有転位化が生じたとしても、シリコン単結晶の育成がある程度すすんでいるので、有転位化が発生した単結晶トップからの長さからスリップバックした長さを差し引いた長さで単結晶が得られ、歩留まりの低下を抑制することができる。また、固化率に応じて副ドーパントを追加ドープしているので、シリコン単結晶の抵抗率を精度よく制御することができる。
【0011】
このとき、前記副ドーパントの偏析係数が、前記主ドーパントの偏析係数よりも大きいことが好ましい。
偏析係数が上記のような関係にある場合に、本発明を好適に適用することができる。
【0012】
このとき、1本目のシリコン単結晶を育成した後、原料を追加チャージして2本目以降のシリコン単結晶の育成を繰り返す工程をさらに有し、前記2本目以降のシリコン単結晶の育成を繰り返す工程は、それまでのシリコン単結晶の育成において追加ドープされた前記副ドーパントの量を考慮して、前記主ドーパントを加える段階と、シリコン単結晶を育成しながら、前記固化率が前記所定値αになる前には前記副ドーパントをドープしないで、前記固化率が前記所定値α以上になった後に、前記固化率に応じて、前記副ドーパントを連続的または断続的に追加ドープする段階とを有することが好ましい。
【0013】
このように、1つのルツボから複数本のシリコン単結晶を育成するマルチプーリング法においても、本発明を適用することができる。
【0014】
このとき、前記所定値αは、その固化率に対応する直胴長さで有転位化してスリップバックしても製品が取れる固化率値以上であり、かつ、シリコン単結晶の育成開始前までに加えられたドーパントだけでシリコン単結晶の抵抗率が所定の規格を満たす固化率値以下であることが好ましい。
所定値αがこのような範囲であれば、歩留まりの低下を確実に抑制することができる。
【0015】
このとき、前記所定値αは、前記主ドーパントの偏析係数をkとしたときに、k/4≦α≦2k(ただし、2k>1の場合は、k/4≦α≦1)の範囲であることが好ましい。
所定値αがこのような範囲であれば、歩留まり低下を確実に抑制することができる。
【0016】
このとき、前記副ドーパントを含むシリコン細棒、又は、前記副ドーパントを含むシリコン結晶を粒状に砕いたドープ剤を、育成中のシリコン結晶とルツボ壁との間の領域のシリコン融液へ挿入又は投入することで、前記副ドーパントを追加ドープすることができる。
副ドーパントを追加ドープする方法として、このような方法を好適に用いることができる。
【0017】
また、本発明は、上記の抵抗率制御方法を用いて抵抗率が制御され、前記主ドーパントがP(リン)であり、前記副ドーパントがB(ボロン)であり、シリコン結晶中のリン濃度Nとシリコン結晶中のボロン濃度Nとの差N−Nが、1.4×1012atoms/cm以上、1.4×1015atoms/cm以下であり、抵抗率が3Ω・cm以上、3000Ω・cm以下であることを特徴とするn型シリコン単結晶を提供する。
【0018】
このようなn型シリコン単結晶であれば、高品質であり、良好な歩留まりで製造されたものとすることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、シリコン単結晶育成中に有転位化が生じても歩留まりの低下を抑制することができ、かつ、シリコン単結晶の抵抗率を精度よく制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の抵抗率制御方法の実施態様の一例を示すフロー図である。
図2】本発明の抵抗率制御方法を実施するときに用いられる単結晶育成装置の一例を示す図である。
図3】実施例1で育成したシリコン単結晶の抵抗率と固化率との関係を示すグラフである。
図4】実施例2で育成したシリコン単結晶の抵抗率と固化率との関係を示すグラフである。
図5】比較例で育成しようとしたシリコン単結晶の抵抗率と固化率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
上述のように、CZ−PWにエピタキシャル層を積まずにそのまま使うCZ−PWが注目されつつあるが、CZ法により製造されたシリコン単結晶では偏析現象があり軸方向(引き上げ軸方向)の抵抗率分布を均一にすることが難しい。一方、特許文献3に、連続的に主ドーパントPに対してBを連続的に添加する方法が開示されおり、この方法を用いれば主ドーパントをPとし、副ドーパントをBとしたカウンタードープにより軸方向抵抗率分布を改善したn型結晶を製造可能である。しかしながら、特許文献3に開示された方法では単結晶が有転位化してしまった場合に、再溶融できないという問題があった。すなわち、特許文献3の方法を用いた場合、有転位化が発生した時点では、すでに反対極性の副ドーパントが結晶及び原料融液中に含まれているので、これを再溶融してしまうと、主ドーパントが不足した状態となってしまい、製品を得ることができなくなる。従って、有転位化した部分までを原料融液から切り離して、取り出し廃棄処分することとなり、歩留まりが大きく低下するという問題点があった。
【0023】
そこで、発明者らは、シリコン単結晶育成中に有転位化が生じても歩留まりの低下を抑制することができ、かつ、シリコン単結晶の抵抗率を精度よく制御することができる抵抗率制御方法について鋭意検討を重ねた。その結果、固化率が所定値α以上のときに前記副ドーパントを追加ドープし、前記固化率が前記所定値αになる前には前記副ドーパントをドープしないことで、シリコン単結晶の育成において固化率が所定値αになるまでは、有転位化が生じたとしても、再溶融することができ、また、固化率が所定値αになった後に有転位化が生じたとしても、シリコン単結晶の育成がある程度すすんでいるので、有転位化が発生した単結晶トップからの長さからスリップバックした長さを差し引いた長さで単結晶が得られ、歩留まりの低下を抑制することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0024】
ここで偏析現象と固化率に関して簡単に説明する。シリコンが固化(結晶化)する際には、融液中の不純物は結晶中に取り込まれにくい。この時の融液中の不純物濃度に対する結晶中に取り込まれる不純物濃度の比、すなわち、(結晶中に取り込まれる不純物濃度)/(融液中の不純物濃度)を偏析係数kという。従って、ある瞬間の結晶中の不純物濃度Cはその時の融液中の不純物濃度CとC=k×Cという関係である。kは一般に1より小さい値であり、従って結晶中に取り込まれる不純物濃度は、融液中の不純物濃度よりも低い。結晶成長は連続的に行なわれるので不純物は融液中に多く残されることとなり、融液中の不純物濃度は徐々に高くなる。これに伴い結晶中の不純物濃度も高くなり、その濃度Cを、初期の原料の重量に対する結晶化した重量を比率で表した固化率x、初期の融液中不純物濃度CL0を用いるとC(x)=CL0×k×(1−x)(k−1)と表される。従って、結晶の長さが長くなり固化率xが大きくなるに伴って、結晶中の不純物濃度は高くなり、抵抗率が低下する。この抵抗率が低下して、規格を下回ってしまうのを防ぐために、連続的または断続的に固化率に対して副ドーパントのドープ量を適切な量に調整しながら追加ドープすることが必要である。しかしながら、副ドーパントを投入してしまうと、有転位化した際に再溶融できなくなってしまうので、固化率が所定値αになるまでは、副ドーパントを投入しないことが必要である。
【0025】
なお、このような単結晶育成中に連続的または断続的に副ドーパントを追加する方法を適用するのは、副ドーパントの偏析係数が主ドーパントの偏析係数よりも大きい場合により適している。もちろん、主ドーパントと反対極性を持つ副ドーパントの偏析係数が、主ドーパントの偏析係数より小さい場合にも本発明を適用することは可能である。しかしながら、単結晶の育成中に副ドーパントを追加ドープすることは、その行為によって有転位化を引き起こす危険性も持っている。特許文献1−2には、副ドーパントの偏析係数が主ドーパントの偏析係数より小さい場合、副ドーパントを初期にのみ投入しても、軸方向の均一性を高められることが開示されている。そのため、本発明を適用する対象として、抵抗率の制御がより難しい、副ドーパントの偏析係数が主ドーパントの偏析係数よりも大きい場合がより適している。また、主ドーパントとして、リン(P)を用いた場合に、偏析係数がリン(P)より大きく、重金属ではないボロン(B)を副ドーパントとして用いることができる点でも、本発明を適用する対象として、副ドーパントの偏析係数が主ドーパントの偏析係数よりも大きい場合がより適している。
【0026】
以下、図2を参照しながら、本発明の抵抗率制御方法を実施するときに用いられるCZ単結晶育成装置の一例を説明する。
【0027】
図2に示すように、CZ単結晶育成装置100は、原料多結晶シリコンを収容して溶融するための部材や、熱を遮断するための断熱部材などを有しており、これらは、メインチャンバー1内に収容されている。メインチャンバー1の天井部(トップチャンバー11)に、そこから上に延びる引き上げチャンバー2が連接されており、この上部に単結晶棒(シリコン単結晶)3をワイヤーで引上げる機構(不図示)が設けられている。
【0028】
メインチャンバー1内には、溶融された原料融液(シリコン融液)4を収容する石英ルツボ5とその石英ルツボ5を支持する黒鉛ルツボ6が設けられ、これらのルツボ5、6は駆動機構(不図示)によって回転昇降自在にルツボ軸で支持されている。そして、ルツボ5、6を囲繞するように、原料を溶融させるための加熱ヒーター7が配置されている。この加熱ヒーター7の外側には、断熱部材8がその周囲を取り囲むように設けられている。
【0029】
また、引上げチャンバー2の上部にガス導入口10が設けられており、アルゴンガス等の不活性ガスが導入され、メインチャンバー1の下部のガス流出口9から排出されるようになっている。さらに原料融液4と対向するように遮熱部材13が設けられ、原料融液4の表面からの輻射をカットするとともに原料融液4の表面を保温するようにしている。
【0030】
さらに、原料融液4の上方には、ガスパージ筒12が設けられ、ガス導入口10から導入された不活性ガスにより単結晶棒3の周囲をパージすることができる構成になっている。
【0031】
トップチャンバー11には、細棒挿入機14が設けられ、副ドーパントを追加ドープするときに、副ドーパントを含む細棒結晶(シリコン細棒)15を原料融液4中に挿入できる構成になっている。
【0032】
次に、図1−2を参照しながら、本発明の抵抗率制御方法を説明する。
まず、シリコン単結晶が所定の導電型を有するように主ドーパントを初期ドーピングする(図1のS11参照)。
【0033】
具体的には、シリコン単結晶3の育成を開始する前に、シリコン単結晶3が所定の導電型を有するように主ドーパントを原料融液4の中に投入する。主ドーパントは、n型シリコン単結晶を育成する場合は、例えばリン(P)を用いることができる。
【0034】
次に、(結晶化した重量)/(初期シリコン原料の重量)で表される固化率が所定値αになるまで、主ドーパントと反対の導電性を有する副ドーパントを追加ドープせずに、シリコン単結晶を育成する(図1のS12参照)。
【0035】
具体的には、固化率が所定値αになるまで、すなわち、シリコン単結晶3の直胴部Aの長さがLαになるまで副ドーパントを追加せずに、シリコン単結晶3を育成する。ここで、Lαは、固化率が所定値αのときのシリコン単結晶3の直胴部長さである。シリコン単結晶3の直胴部Aの長さがLαになるまでは、副ドーパントを追加ドープしていないので、それまでに有転位化が生じたとしても、再溶融してシリコン単結晶3の育成をやり直すことができる。
なお、シリコン単結晶3の育成は、CZ法を用いて行われる。ここでCZ法とは、磁場を印加するいわゆるMCZ法も含むものとする。
【0036】
次に、固化率が所定値αになった後に、固化率に応じて、副ドーパントを連続的又は断続的に追加ドープしながら、シリコン単結晶を育成する(図1のS13参照)。
【0037】
具体的には、固化率が所定値αになった後に、すなわち、シリコン単結晶3の直胴部Aの長さがLαになった後に、固化率(すなわち、直胴部分の長さ)に応じて、副ドーパントを連続的又は断続的に追加ドープしながら、シリコン単結晶3を育成する。副ドーパントは、主ドーパントとしてリン(P)を用いた場合には、例えば、ボロン(B)を用いることができる。シリコン単結晶3の直胴部分Aの長さがLαになった後は、有転位化が生じたとしても、シリコン単結晶の育成がある程度すすんでいるので、その時点でシリコン単結晶3の育成を終了させ、有転位化が発生したシリコン単結晶3のトップからの長さからスリップバックした長さを差し引いた長さで単結晶を得ることができる。
【0038】
この場合、副ドーパントの偏析係数が、主ドーパントの偏析係数よりも大きいことが好ましい。
偏析係数が上記のような関係にある場合に、本発明を好適に適用することができる。
【0039】
1本目のシリコン単結晶を育成した後、ルツボに原料を追加チャージして2本目以降のシリコン単結晶の育成を繰り返す工程をさらに有し、2本目以降のシリコン単結晶の育成を繰り返す工程は、それまでのシリコン単結晶の育成において追加ドープされた副ドーパントの量を考慮して、主ドーパントを加える段階と、シリコン単結晶を育成しながら、固化率が所定値αになる前には副ドーパントをドープしないで、固化率が所定値α以上になった後に、固化率に応じて、副ドーパントを連続的または断続的に追加ドープする段階とを有することが好ましい。
このように、1つのルツボから原料を追加チャージすることで複数本のシリコン単結晶を育成するマルチプーリング法において本発明を適用する場合、2本目以降のシリコン単結晶の育成を開始する時点で、原料融液4の中に副ドーパントが含まれているので、これから育成する単結晶には、主ドーパントと反対の導電型を有するドーパントが単結晶トップから含まれてしまう。そこで単結晶トップで含まれる副ドーパントの濃度、つまり副ドーパントの原料融液4中の濃度に副ドーパントの偏析係数を掛けた分の濃度を相殺する分の主ドーパントを追加した上で、狙うべき抵抗率に相当する主ドーパントの量に調整する必要がある。
このように主ドーパントの濃度が調整された原料融液から単結晶を引上げる際にも、固化率が一定値(α)以内では副ドーパントを追加ドープしないことが好ましい。それまでのシリコン結晶育成で追加した副ドーパントを相殺する分の主ドーパントが投入されているので、新たに副ドーパントを追加ドープしない間は(すなわち、固化率が所定値αになるまでは)、有転位化が生じても再溶融が可能である。固化率が所定値α以上になった後には、それまでにドープされている主ドーパント及び副ドーパントの量から求めた、固化率に応じた適正な量を連続的または断続的に追加ドープすることが好ましい。このようにすればその前の単結晶育成までに副ドーパントが追加されているマルチプーリング法であっても、抵抗率を正確に制御することができる。
【0040】
上記の固化率の所定値αは、その固化率に対応する直胴長さで有転位化してスリップバックしても製品が取れる固化率値以上であり、かつ、シリコン単結晶の育成開始前までに加えられたドーパントだけでシリコン単結晶の抵抗率が所定の規格を満たす固化率値以下であることが好ましい。
このように所定値αを設定すれば、副ドーパントを追加ドープしない間は、有転位化しても再溶融が可能である。また、副ドーパントを追加ドープした後に有転位化した場合にも、すでに製品が取れる長さ以上であるので結晶を取り出し製品を取ることができる。さらにはこの状態に更に原料を追加チャージして、次のシリコン単結晶の育成に進むこともできる。
【0041】
また、先に述べたように、副ドーパントを追加ドープした瞬間は有転位化を引きおこす可能性がある。追加ドープを開始した直後で副ドーパントがわずかな量しか投入されていない間であれば、再溶融することも可能である。例えば、その時点までに追加ドープされた副ドーパント量によって抵抗率が高くなる分を考慮しても、当初製品として取ることができる最もトップ側のシリコン単結晶の位置の抵抗率が規格内になる程度であれば、再溶融しても抵抗率に起因する歩留まり低下を起こすことはないので、再溶融可能である。
さらには、製品としてとることができる最もトップ側の位置の抵抗率は規格内に入らないが、抵抗率が規格内に入る領域が多少ずれる程度で、歩留まり低下量が少ないと判断されれば、副ドーパントを追加ドープした後であっても再溶融可能である。
【0042】
副ドーパントを追加ドープした後はもちろん、副ドーパントの追加ドープ開始前においても、有転位化した場合に、そのまま結晶を取り出すか、再溶融するか、この判断は歩留まりと生産性の総合的な判断で決めることができる。再溶融すれば歩留まりは低下しないが、再溶融に時間が掛かる分生産性は低下するからである。初めから追加ドープしてしまうと再溶融するという選択肢はありえないが、本発明を用いることで、結晶を取り出すか、再溶融するかの判断を可能とし、歩留まりと生産性との総合的な判断を可能とすることができる。従って、固化率の所定値αがこのような範囲であれば、歩留まり低下をより効率的に抑制することができる。
【0043】
固化率の所定値αは、主ドーパントの偏析係数をkとした場合に、k/4≦α≦2kの範囲(ただし2k>1の場合は、k/4≦α≦1)とすることができる。前述のように、固化率の所定値αとは、仮にその結晶長さで有転位化してスリップバックしても製品が取れる固化率以上であり、かつ結晶引上げ開始前までに投入されたドーパントだけで抵抗率が規格を満たす固化率以下であることが好ましい。抵抗率が規格を満たす固化率に対応するシリコン単結晶長さは、主ドーパントの偏析係数が大きければ長く、小さければ短くなる。従って固化率の所定値αは主ドーパントの偏析係数kにおおよそ比例する値となる。
しかしながら、これを具体的に表すことは難しい。なぜならその結晶の製品設計に依存するからである。例えばトップ側で酸素濃度や結晶欠陥等の結晶品質が規格に入る位置が直胴長さ10cmであったり30cmであったりする。この長さは抵抗率以外の品質の規格の厳しさに依存するからである。抵抗率は製品となる長さで規格に入るように調整するので、「単結晶引上げ開始前までに投入されたドーパントだけで抵抗率が規格を満たす固化率」は結局その結晶の製品設計に依存することとなり、一義的に決めることができない。そこでこの製品設計による前後のシフト分も考慮しておおよその値を設定すると、固化率の所定値αの範囲は、k/4≦α≦2kとなる。固化率の所定値αをk/4より大きい値とすれば、その固定率に対応するシリコン単結晶長さで有転位化してスリップバックしても製品が取れるようにすることができ、固化率の所定値αを2kより小さい値とすればシリコン単結晶育成開始前までに投入されたドーパントだけで抵抗率が規格を満たすことができる。
【0044】
固化率に応じた適切な量の副ドーパントを追加ドープする方法としては、副ドーパントを含むシリコン細棒を育成中のシリコン単結晶3とルツボ壁との間の原料融液4へ挿入する方法、又は、副ドーパントを含むシリコン結晶を粒状に砕いたドープ剤を育成中のシリコン単結晶3とルツボ壁との間の原料融液4へ投入する方法を用いることができる。
このような方法を用いれば、固化率に応じて適切な量を追加ドープすることが可能である。例えば、シリコン細棒15を育成中のシリコン単結晶3とルツボ壁との間の原料融液4へ挿入する場合には、炉内圧を保てるように密閉してトップチャンバー11に取り付けられ、結晶細棒をおおよそ上下方向に移動可能な可動装置(図2の細棒挿入機14)を用いることができる。これは特許文献5などで開示された技術を応用できる。
あるいは、副ドーパントを含むシリコン結晶を粒状に砕いたドープ剤を育成中のシリコン単結晶3とルツボ壁との間の原料融液4へ投入するように、炉内圧を保てるように密閉してトップチャンバー11に取り付けられ、粒状に砕いたドープ剤を育成中の単結晶とルツボ壁との間の原料融液4へ誘導する管を用いることができる。
副ドーパントを追加ドープする機構としては、粒状に砕いたドープ剤を原料融液4へ誘導する管が構造的に簡単であるが、粒状ドーパントを育成中の単結晶のそばに投入するため、粒状ドーパントが飛散あるいは浮遊して有転位化の可能性が高くなる。一方で、結晶細棒15を上下方向に移動可能な可動装置(細棒挿入機14)の設置は、コスト的には上記の誘導管より高いが、育成中の結晶のそばに結晶細棒を挿入しても育成中のシリコン単結晶3が有転位化しにくいという利点がある。
【0045】
上記で説明した本発明の抵抗率制御方法によれば、シリコン単結晶育成中に有転位化が発生しても歩留まりの低下を抑制することができ、かつ、シリコン単結晶の抵抗率を精度よく制御することができる。
【0046】
次に、本発明のn型シリコン単結晶について説明する。
本発明のn型シリコン単結晶は、上述のような抵抗率制御法を用いて製造され、主ドーパントとしてリン(P)を用い、副ドーパントとしてボロン(B)を用い、単結晶中のリン濃度Nとボロン濃度Nとの差N−Nが1.4×1012atoms/cm以上、1.4×1015atoms/cm以下であり、抵抗率が3Ω・cm以上、3000Ω・cm以下である。
このように、主ドーパントをリン(P)、副ドーパントをボロン(B)としたn型シリコン単結晶であれば、どちらの元素もデバイス製造にとって広く用いられている元素であり、予想外の不具合が出る可能性が少ない。特に高耐圧のパワー用の縦型デバイスでは、単結晶中に電流が流れ、また単結晶中に逆バイアスがかかるので、比較的高抵抗率で、かつ抵抗均一性が高い単結晶が望まれることから、単結晶中のリン濃度がボロン濃度より高く、その濃度の差が上記の範囲であり、抵抗率が上記の範囲であるn型シリコン単結晶が適している。また、本発明の抵抗率制御方法を用いれば、CZ法において単結晶のトップ部からボトム部までを、これらの範囲のうちの所望の濃度差および抵抗率に、ほぼ均一に制御することが可能である。従って本発明の抵抗率制御方法を用い、かつ、上記の範囲の中で抵抗率が狭い規格内に入るように制御されたシリコン単結晶は、パワーデバイスなど最新デバイスに最適なシリコン単結晶である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
図2に示したCZ単結晶育成装置100を用いて、n型で、抵抗率の規格が55−75Ω・cm、直径200mmのシリコン単結晶を育成した。原料シリコンの初期チャージ量200kgとし、約160kgのシリコン単結晶を育成した。単結晶トップ部は抵抗率以外の品質(例えば、酸素濃度、等)が入らない場合があるので、これを考慮して、直胴部分のトップから約20cm、固化率約0.09で抵抗率が規格内に入るように、リン(P)を主ドーパントとして初期ドープした。ドープ量は、リン濃度を4×1019atoms/cmとしたシリコン単結晶を粒状に砕いて用意したドープ剤0.82gとした。このドープ量であれば、副ドーパントの追加ドープをしなければ直胴部分の長さ約100cm、固化率約0.4まで抵抗率が規格内に入るものである。従って、直胴部分の長さがこれよりも短く、また、有転位化が発生した場合でも、製品が取れるような直胴部分の長さ85cm、固化率約0.34までシリコン単結晶を育成した時点で、副ドーパントの追加ドープを開始した。すなわち、上記で説明した固化率の所定値αは、約0.34であり、所定値αになるまでは、副ドーパントをドープしなかった。
【0049】
副ドーパントの追加ドープは、図2の細棒挿入機14の先端に細棒結晶15を取り付けて、細棒結晶15を原料融液4に挿入して行った。細棒結晶(シリコン細棒)15はボロン(B)をドープして育成した単結晶から直径約300mm、長さ約300mmで切り出した抵抗率が0.15Ωcmであるシリコン単結晶ブロックから、2cm×2cm×30cmの縦方向に角柱として切り出したものを用いた。細棒結晶の作製方法はこれに限るものではなく、例えばブロックから横方向に切り出せばより高い精度の抵抗率制御が可能となる。
【0050】
副ドーパントの追加ドープは、固化率が約0.34、0.47、0.57、0.65、0.71の時点で、それぞれ細棒結晶(シリコン細棒)の重量約13、10、8.5、7、6g分を原料融液4に断続的に挿入して溶解することで行った。結果として得られた抵抗率の軸方向(すなわち、引き上げ軸方向)のプロファイル(すなわち、育成したシリコン単結晶の抵抗率と固化率との関係)を図3に示す。このとき、抵抗率から単結晶中のリン濃度Nとボロン濃度Nとの差N−Nは、5.5−7.1×1013atoms/cmである。実施例1において、直胴部分の長さ85cm(固化率約0.34)未満で有転位化が発生した場合であっても、再溶融して再製造することが可能である。そして、再溶融して再製造した場合であっても最終的には固化率約0.09から0.75まで規格内の抵抗率を得ることができた。副ドーパントを追加ドープしない場合には、抵抗率が規格内に入るのが固化率約0.09から0.4までであるので、副ドーパントを追加ドープしない場合と比較して約2倍の製品長さを得ることができた。
【0051】
(実施例2)
実施例1の結晶を育成した後、シリコン原料を約160kg追加チャージして原料の総重量を200kgとした。2本目のシリコン単結晶の育成においても、n型で、抵抗率の規格が55−75Ω・cm、直径200mmのシリコン単結晶を育成した。1本目のシリコン単結晶の育成終了時に残っていた原料融液4中のリン(P)濃度は1.7×1014atoms/cm、ボロン(B)濃度は6.7×1013atoms/cmと計算される。そこで、これを考慮して、直胴部分の長さ約20cm、固化率約0.09で抵抗率が規格内に入るように、リン(P)濃度を4×1019atoms/cmとしたシリコン結晶を粒状に砕いて用意したドープ剤を0.79gドープして、2本目のシリコン単結晶を育成するための原料融液を用意した。1本目のシリコン単結晶の育成でボロン(B)を追加ドープしているので、このまま追加ドープしないで抵抗率が規格を満たすのは、1本目よりもやや短い直胴部分の長さ95cm、固化率約0.38までである。そこで直胴部分の長さがこれよりも短く、また、有転位化が発生した場合でも、製品が取れる長さである直胴部分の長さ80cm、固化率約0.32となった時点から副ドーパントの追加ドープを開始した。すなわち、上記で説明した固化率の所定値αは、約0.32である。
【0052】
追加ドープは実施例1と同様に、図2の細棒挿入機14の先端に、抵抗率0.15Ω・cm、2cm×2cm×30cmの細棒結晶(シリコン細棒)15を取り付けて、これを原料融液4に挿入して行った。ただし実施例1とは異なり、連続的にボロン(B)をドープした。ドープ量は特許文献3を参考にして、{(1−x)(kp−1)−1+[1+kp×(1−x)(kp−1)]/kb}(ここで、kpはリンの偏析係数、kbはボロンの偏析係数、xは固化率である)に比例する量を追加ドープした。結果として得られた抵抗率の軸方向プロファイル(すなわち、育成したシリコン単結晶の抵抗率と固化率との関係)を図4に示す。このとき、抵抗率から単結晶中のリン濃度Nとボロン濃度Nとの差N−Nは、5.4−7.1×1013atoms/cmである。図4からわかるように、実施例2においては、非常に均一な抵抗率分布を得ることができた。
【0053】
(比較例)
副ドーパントの追加ドープをシリコン単結晶の直胴部分の育成開始とともに始めたことを除いては、実施例2と同様にしてシリコン単結晶の育成を行った。この設定であれば、図5に示すように単結晶トップ部から単結晶ボトム部までほぼフラットな抵抗率を得ることができる予定であった。しかしながら、直胴部分の長さ60cm、固化率0.24で有転位化が発生してしまった。そこで再溶融しようとしたが、再溶融後に再度結晶を育成した場合、結晶トップ部での抵抗率が約80Ω・cmとなってしまう計算となった。再度単結晶を引上げる際に、再度シリコン単結晶の直胴部分の育成開始とともに副ドーパントの追加ドープを始めたとすると、抵抗率が規格内のシリコン単結晶を全く得ることはできない。そこで、直胴部分の長さ60cm分約48kgのシリコン単結晶を原料融液から切り離しCZ単結晶製造装置から取り出した。取り出したシリコン単結晶には直胴部分のトップから長さ30cm近くまでスリップバックがあった。直胴部分のトップから20cm〜30cmの10cm分が製品として取れる可能性はあったが、ブロック長さが短く、加工ロス等を考慮すると、コストパフォーマンスが悪いので、廃棄処分とした。以上のように追加ドープをシリコン単結晶の直胴部分の育成開始とともに始めたことによって、48kg分の原料から製品が全く取れず、大きな歩留まり低下を招く結果となった。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0055】
1…メインチャンバー、 2…引き上げチャンバー、
3…単結晶棒(シリコン単結晶)、 4…原料融液(シリコン融液)、
5…石英ルツボ、 6…黒鉛ルツボ、 7…加熱ヒーター、 8…断熱部材、
9…ガス流出口、 10…ガス導入口、
11…トップチャンバー、 12…ガスパージ筒、 13…遮熱部材、
14…細棒挿入機、 15…細棒結晶(シリコン細棒)、
100…CZ単結晶育成装置、 A…直胴部分。
図1
図2
図3
図4
図5