特許第6222072号(P6222072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧

特許6222072水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法、及びスパッタリングターゲットの製造方法
<>
  • 特許6222072-水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法、及びスパッタリングターゲットの製造方法 図000005
  • 特許6222072-水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法、及びスパッタリングターゲットの製造方法 図000006
  • 特許6222072-水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法、及びスパッタリングターゲットの製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222072
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法、及びスパッタリングターゲットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/08 20060101AFI20171023BHJP
   C25B 15/02 20060101ALI20171023BHJP
   C25B 1/00 20060101ALI20171023BHJP
   C25B 9/00 20060101ALI20171023BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20171023BHJP
   C01G 15/00 20060101ALI20171023BHJP
   C01G 19/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   C25B15/08 302
   C25B15/02 302
   C25B1/00 Z
   C25B9/00 Z
   C23C14/34 A
   C01G15/00 B
   C01G19/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-257776(P2014-257776)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-117928(P2016-117928A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2016年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(72)【発明者】
【氏名】森本 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】加茂 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】菅本 憲明
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/015032(WO,A1)
【文献】 実開平03−089166(JP,U)
【文献】 特開昭58−073785(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/192650(WO,A1)
【文献】 特開平06−199523(JP,A)
【文献】 特開昭60−121292(JP,A)
【文献】 特開2014−074224(JP,A)
【文献】 特開2003−201572(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0051966(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00−9/20
C25B 13/00−15/08
C01G 15/00
C01G 19/00−19/08
C23C 14/00−14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジウム又はスズを電解して水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を生成する電解装置であって、
電解液を貯留し、複数の電極が所定の間隔で平行に設けられる電解槽と、
上記電解液を調整する調整槽と、
上記電極の鉛直方向へ多段に上記電解槽の一の槽壁付近に設けられ、少なくとも上記電極間に該電極の幅方向と平行に電解液を噴流する供給ノズルと、
上記供給ノズルと対向する位置に、上記電極の鉛直方向へ多段に上記電解槽の槽壁付近に設けられる吸引ノズルとを備え、
上記供給ノズルを介して上記調整槽から上記電解液を供給して上記調整槽側に向って上
記電極の幅方向と平行に上記電解液を噴流させ、上記吸引ノズルを介して該電解液を吸引することで直線状に該電解液の層流を形成し該電解液を該調整槽へ移送させることにより、該電解槽と該調整槽間で該電解液を循環させることを特徴とする水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置。
【請求項2】
上記電解槽に設けられる上記吸引ノズルから上記調整槽に上記電解液を移送させる電解液の循環量が、電解電流1Aあたり0.03L/min/A〜電解電流1Aあたり0.10L/min/Aに制御されることを特徴とする請求項に記載の水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置。
【請求項3】
上記電解槽から上記調整槽に上記電解液をオーバーフローさせるために、該電解槽の該調整槽側の槽壁の上端縁に排水口が設けられ、
上記排水口から上記電解液がオーバーフローして上記調整槽に該電解液を移送させる量と上記電解液の循環量とを合計した電解液の総給液量が、該電解液の循環量に対して110%〜160%に制御されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置。
【請求項4】
上記電解槽に対する上記調整槽の容積比が、0.1以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置。
【請求項5】
インジウム又はスズをアノードとして、電解により水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を製造する水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法であって、
請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の電解装置を用いることを特徴とする水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法。
【請求項6】
上記アノードが上記インジウムの場合、上記電解液として0.1mol/L〜2.0mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液を使用すると共に、該電解液のpHを2.5〜4.0、液温を20℃〜60℃、且つ電極電流密度を4A/dm〜20A/dmの範囲に制御することを特徴とする請求項に記載の水酸化インジウム粉の製造方法。
【請求項7】
上記アノードが上記スズの場合、上記電解液として0.1mol/L〜2.0mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液を使用すると共に、該電解液のpHを2.5〜8.0、液温を20℃〜60℃、且つ電極電流密度を4A/dm〜20A/dmの範囲に制御することを特徴とする請求項に記載の水酸化スズ粉の製造方法。
【請求項8】
請求項乃至請求項の何れか1項に記載の水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法によって得られた水酸化インジウム粉及び/又は水酸化スズ粉を用いて、スパッタリングターゲットを製造することを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法、及びスパッタリングターゲットの製造方法に関する。特に、粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を作製することが可能な水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置、その電解装置を用いた水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法、及び水酸化インジウム粉及び/又は水酸化スズ粉を用いた高密度のスパッタリングターゲットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池やタッチパネル等の用途として透明導電膜の利用が増えており、それに伴って、スパッタリングターゲット等において透明導電膜を形成するための材料の需要が増加している。透明導電膜を形成するための材料には、酸化インジウム系焼結材料が主に使用されており、主原料として酸化インジウム粉が使用されている。スパッタリングターゲットに使用される酸化インジウム粉は、高密度のターゲットを得るために出来るだけ粒度分布の幅が狭いことが望ましい。
【0003】
酸化インジウム粉の製造方法では、主に、硝酸インジウム水溶液や塩化インジウム水溶液等の酸性水溶液を、アンモニア水等のアルカリ性水溶液で中和して生じる水酸化インジウムの沈澱物を乾燥して仮焼する、いわゆる中和法によって酸化インジウム粉が得られている。
【0004】
特許文献1には、中和法により得られる酸化インジウム粉の凝集を抑制するために、70℃〜95℃という高温の硝酸インジウム水溶液にアルカリ性水溶液を添加することで、針状の水酸化インジウム粉を得る方法が提案されている。この方法では、針状の水酸化インジウムを仮焼することで、凝集の少ない酸化インジウム粉を得ることができる。
【0005】
しかしながら、中和法で製造した酸化インジウム粉には、粒径や粒度分布の幅が不均一となり易く、スパッタリングターゲットを製造すると、その密度が高くならず密度にばらつきが生じるという問題や、スパッタリングの際に異常放電が生じ易いといった問題がある。また、中和法では、酸化インジウム粉を製造した後、大量の窒素を含む排水が発生するため、排水処理コストが大きくなるという問題がある。
【0006】
このような問題を改善する方法として、特許文献2には、金属インジウムを電解処理することで水酸化インジウムの沈澱を生じさせ、これを仮焼して酸化インジウム粉を製造する方法、いわゆる電解法が提案されている。また、特許文献3には、特許文献2と同様に、スズを電解処理することで水酸化スズの沈澱を生じさせ、これを仮焼して酸化スズ粉を製造する方法が提案されている。電解法では、中和法に比べて、酸化インジウム粉や酸化スズ粉を製造した後の窒素排水量を格段に少なくすることができる以外に、酸化インジウム粉や酸化スズ粉の粒径を均一化することができる。
【0007】
しかしながら、電解法を用いて得られる水酸化インジウム粉は、電解液のpHが中性に近いことから、非常に微細であり凝集しやすいという問題がある。これを仮焼して得られる酸化インジウム粉は、一次粒子径が比較的均一であるものの、それら粒子が強く凝集した凝集粉が得られやすくなる。従って、この酸化インジウム粉には、凝集によって粒度分布の幅が広くなるため、スパッタリングターゲットの高密度化が阻害されるという問題がある。
【0008】
一方で、特許文献4には、電解法において、槽内の電解液のpHを均一化する目的で、電解液中に水酸化インジウムの沈澱を懸濁させた状態で撹拌して電解する方法が提案されている。
【0009】
しかしながら、特許文献4には、製造時間の経過と共に、液温やpH等の製造条件を一定に制御することが必ずしも容易ではなく、水酸化インジウムの粉末の諸特性のバラツキが発生する問題がある。
【0010】
また、特許文献5には、電解槽にノズルを配置し、このノズルの開口部より流出させた電解液を、電解槽中の各カソード板とアノード板の間で回流させ、水酸化インジウム又は水酸化インジウムを含む化合物を、電解液中に析出させる方法が提案されている。
【0011】
しかしながら、特許文献5には、電解液を回流させるために、高速な電解液供給速度が必要となるので、電解液の揮発やミストの飛散等により、電解装置周辺の環境の悪化や安全面での問題がある。
【0012】
更に、特許文献6には、電解法において、高密度のITOスパッタリングターゲット材料を得るための水酸化インジウム粉や水酸化スズ粉には、粒度を所定範囲にそろえることが提案されている。
【0013】
しかしながら、特許文献6の電解沈澱工程では、十分に粒度の揃った電解沈澱粉を得るための技術が提供されているとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平4−325415号公報
【特許文献2】特開平6−171937号公報
【特許文献3】特開平6−199523号公報
【特許文献4】特開平10−204669号公報
【特許文献5】特開2013−36074号公報
【特許文献6】特開平5−193939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を生成することが可能な水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、上述の電解装置を用いることによって、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を製造することが可能な水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法を提供することを目的とする。
【0017】
更に、本発明は、上述の製造方法により得られた水酸化インジウム粉及び/又は水酸化スズ粉を用いることによって、高密度のスパッタリングターゲットを製造することが可能なスパッタリングターゲットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した目的を達成するための本発明に係る水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置は、インジウム又はスズを電解して水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を生成する電解装置であって、電解液を貯留し、複数の電極が所定の間隔で平行に設けられる電解槽と、電解液を調整する調整槽と、電解槽の一の槽壁付近に設けられ、少なくとも電極間に電極の幅方向と平行に電解液を噴流する供給ノズルと、供給ノズルと対向する位置に電解槽の槽壁付近に設けられる吸引ノズルとを備え、供給ノズルを介して調整槽から電解液を供給して調整槽側に向って電極の幅方向と平行に電解液を噴流させ、吸引ノズルを介して電解液を吸引することで直線状に電解液の層流を形成し電解液を調整槽へ移送させることにより、電解槽と調整槽間で該電解液を循環させることを特徴とする。
【0019】
このようにすれば、電極間に電解液の層流を形成して電解液が循環され、電解液の組成、濃度、pH、液温等を均一にすることができるので、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を生成することができる。また、電極間に均等に電解液の層流を形成して電解液が循環されるので、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を生成することができる。さらに、電極間に電解液の層流を形成して電解液が循環され、電解槽内の液面及び槽底付近の電解液の組成、濃度、pH、液温等を効率的に均一にすることができるので、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を生成することができる。
【0024】
本発明の一態様では、電解槽に設けられる吸引ノズルから調整槽に電解液を移送させる電解液の循環量が、電解電流1Aあたり0.03L/min/A〜電解電流1Aあたり0.10L/min/Aに制御されることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、電解液のpHの上昇を抑制することができ、電極間に電解液の層流が直線状に形成され電解液が循環されるので、電解液の組成、濃度、pH、液温等を均一にすることができる。その結果、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を生成することができる。
【0026】
本発明の一態様では、電解槽から調整槽に電解液をオーバーフローさせるために、電解槽の調整槽側の槽壁の上端縁に排水口が設けられ、排水口から電解液がオーバーフローして調整槽に電解液を移送させる量と電解液の循環量とを合計した電解液の総給液量が、電解液の循環量に対して110%〜160%に制御されることが好ましい。
【0027】
このようにすれば、電解槽から排水口を介してオーバーフローした電解液を調整槽に移送させることにより、電極が浸漬するように電解槽の液面を一定に維持し、電解液のpH、組成、液温、濃度等を不均一となるのを効率的に抑制することができる。その結果、粒径が均一で粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を生成することができる。
【0028】
本発明の一態様では、電解槽に対する調整槽の容積比が0.1以上であることが好ましい。
【0029】
このようにすれば、電解液の組成、濃度、pHの均一制御をし易く、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を生成することができる。
【0030】
本発明に係る水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法は、インジウム又はスズをアノードとして、電解により水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を製造する水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法であって、上記水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置を用いることを特徴とする。
【0031】
このようにすれば、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を生成することができる。
【0032】
本発明の一態様では、アノードがインジウムの場合、電解液として0.1mol/L〜2.0mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液を使用すると共に、電解液のpHを2.5〜4.0、液温を20℃〜60℃、且つ電極電流密度を4A/dm〜20A/dmの範囲に制御することが好ましい。
【0033】
このようにすれば、水酸化インジウム粉の好適な溶解度に制御することができるので、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉を生成することができる。
【0034】
本発明の一態様では、アノードがスズの場合、電解液として0.1mol/L〜2.0mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液を使用すると共に、電解液のpHを2.5〜8.0、液温を20℃〜60℃、且つ電極電流密度を4A/dm〜20A/dmの範囲に制御することが好ましい。
【0035】
このようにすれば、水酸化スズ粉の好適な溶解度に制御することができるので、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅が狭い水酸化スズ粉を生成することができる。
【0036】
本発明に係るスパッタリングターゲットの製造方法は、上記水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法によって得られた水酸化インジウム粉及び/又は水酸化スズ粉を用いて、スパッタリングターゲットを製造することを特徴とする。
【0037】
このようにすれば、上述の製造方法により得られた水酸化インジウム粉及び/又は水酸化スズ粉を用いることによって、高密度のスパッタリングターゲットを製造することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、電極間に電解液の層流を形成して電解液が循環され、電解液の組成、濃度、pH、液温等を均一にすることができるので、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を得ることができる。また、本発明によれば、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉及び/又は水酸化スズ粉を用いることで、相対密度が高い焼結体を得ることができる。そして、本発明によれば、最終的に、相対密度が高い焼結体により高密度のスパッタリングターゲットを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明に係る電解装置の一実施の形態を示す電解装置の概略図である。
図2図1に示した電解装置の電解槽中に電極及び循環手段を配置した状態の概略を示すX−X′断面図である。
図3図1に示した電解装置の電解槽中の循環手段に含まれるノズルを模式的に示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明を適用した具体的な実施の形態(以下、「本実施の形態」という。)について、以下の順序で図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることが可能である。
【0041】
1.水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置
1−1.電解槽
1−2.調整槽
1−3.循環手段
2.水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法
2−1.電気分解工程
2−2.電解液分離工程
2−3.リパルプ洗浄工程
2−4.洗浄液脱水工程
2−5.乾燥工程
3.酸化インジウム粉又は酸化スズ粉の製造方法
4.スパッタリングターゲットの製造方法
【0042】
[1.水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置]
まず、本実施の形態に係る水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置について説明する。図1に示すように、電解装置1は、電解槽10と、調整槽20と、電解槽10と調整槽20間で電解液11を循環させる循環手段30とを備えている。循環手段30は、調整槽20から供給ポンプ31を介して供給ノズル32により電解液11を供給するための供給流路33と、吸引ノズル34により電解槽10から吸引ポンプ35を介して調整槽20に電解液11を移送させるための吸引流路36を備えている。
【0043】
電解装置1は、調整槽20内の電解液11が供給ポンプ31の圧力により供給流路33に送液されて供給ノズル32から吐出されることで、電解液11を電解槽10内に供給することができる。電解槽10内へ電解液11が連続して供給された場合には、電解槽10内の電解液11が吸引ノズル34から吸引ポンプ35の圧力により調整槽20に排出され、電解装置1では、電解液11を電解槽10と調整槽20の間で循環させることが可能となる。
【0044】
なお、図1に示した電解装置1は、電解槽10と調整槽20とが一体となって1つの槽が構成されているが、これは、本実施の形態に係る水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置1の一実施の形態にすぎない。例えば、電解槽10と調整槽20とが別個であって、電解槽10から吸引ノズル34を介して電解液11を吸引して、吸引ポンプ35により調整槽20に移送することができるように、電解槽10と調整槽20とを隣接させた電解装置1とすることもできる。
【0045】
<1−1.電解槽>
次に、電解槽10について説明する。図2に示すように、電解槽10は、その槽内に複数のアノード(陽極)12とカソード(陰極)13とが、それぞれ配設されている。アノード12及びカソード13は、電解槽10の槽底14上に垂直にして配置されており、導線15a(例えば2芯VVケーブル、「JIS C 3342」、許容電流200A、公称断面積100mm)を用いて繋がれることで、図示しない整流器と結線することができる。また、カソード13は、互いに導線15bで電気的に接続されている。電解槽10の槽底14には、供給流路33を挿通させるために挿通口16が設けられており、図1に示すように、電解槽10の調整槽20側の槽壁17bには、電解液11がオーバーフローする際の流路となる排水口18が設けられている。
【0046】
電解槽10の形状は特に限定されず、一般的な直方体、立方体等の方形体等を適用することができ、槽内に配置する電極等の数や大きさ等を考慮して適宜決定される。また、電解槽10の四隅の形状は、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉が流動でき局所的な堆積が起こらないように、例えば角を丸くすることが好ましい。
【0047】
電解槽10の材質は、電解液11に溶解せず、かつ電解中の電解液11の液温以上の耐熱性を備えればよく、PVC(polyvinyl chloride)やPP(polypropylene)、ステンレス、チタン等を用いることができる。
【0048】
アノード12には、例えば金属インジウムや金属スズ等を用いる。使用する金属インジウムや金属スズ等は特に限定されないが、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉や、各水酸化物粉を焼成して得られる酸化インジウム粉又は酸化スズ粉への不純物の混入を抑制するため、高純度のものが望ましい。金属インジウムや金属スズとしては、純度99.9999%(通称6N品)が好適品として挙げることができる。
【0049】
アノード12の厚みは、極間距離が電解時間中で著しく変わらない程度にすることが好ましく、その取扱い時の重量からみても、いたずらに厚くすることは好ましくない。アノード12の大きさは、生産規模に応じて、又は目標の製造量に見合うように適宜決定してもよい。
【0050】
カソード13としては、導電性の金属やカーボン電極等が用いられ、例えば不溶性のチタンやステンレスや白金を用いることができ、チタンを白金でコーティングしたものであってもよく、アノード12と同じ材料を利用してもよい。カソード13の厚みは、電解装置1の大きさ等に応じて適宜変更することができ、カソード13の大きさは、生産規模に応じて、又は目標の製造量に見合うように適宜決定してもよい。
【0051】
アノード12及びカソード13の電極間距離は特に指定されないが、10mm〜50mmが望ましい。電極間距離が50mmより広くなると、電解液11の抵抗による電圧降下が発生し、液温上昇を生じさせるため好ましくない。一方、電極間距離が10mmより狭くなると、電極間での接触やショートが発生しやすくなるため好ましくない。従って、アノード12及びカソード13の電極間距離は、10mm〜50mmが好ましい。
【0052】
アノード12及びカソード13の配置は特に限定されず、一般的な電極の配置を採用することができる。例えば、電解装置1では、両極が互いに平行となるよう交互に配置することが好ましい。
【0053】
挿通口16は、調整槽20と反対側の槽壁17a付近の電解槽10の槽底14に設けられている。ただし、槽底14における挿通口16を配設する位置は、後述する循環手段30の設置状況等に応じて適宜変更することができる。挿通口16の形状は、挿通させる供給流路33の形状等に応じて適宜変更することができ、例えば、円形や楕円形等にすることができる。
【0054】
排水口18は、電解槽10の調整槽20側の槽壁17bの上端縁全体である。即ち、槽壁17bの上端縁が排水口18となることにより、槽壁17bの上端縁を電解液11が乗り越えて、電解槽10から調整槽20に電解液11をオーバーフローさせることができる。電解装置1では、排水口18を設けることにより、後述する供給ポンプ31と吸引ポンプ35の流量バランスを保つことができ、電解槽10内の電解液11の液面が上下するという問題が生じない。
【0055】
排水口18は、電解槽10の調整槽20側の槽壁17bの上端縁中央部に槽壁17bの一部を切り欠いて設けてもよい。この構成により、切り欠き部分から、電解液11が電解槽10から調整槽20に流れてオーバーフローさせることができる。切り欠いて設けられた排水口18は、槽壁17bの上端縁全体からオーバーフローさせる場合と比較して、電解液11の流れる量を安定させることができる。なお、切り欠き部分の形状は、電解液11をオーバーフローさせることができれば特に限定されず、例えばU字状、半円形、半楕円形、長方形状等の方形状等にすることができる。
【0056】
<1−2.調整槽>
次に、調整槽20について説明する。図1に示すように、調整槽20は、その槽内に、電解液11を貯留し、更に、電解液11を撹拌する撹拌棒21と、電解液11のpHを測定するpH電極22と、電解液11の液温を制御及び維持するヒーター23及び冷却器24と、電解液11のpHを制御及び維持する薬液タンク25及び薬液添加用の定量ポンプ26とを備えている。また、調整槽20の槽底27には、調整槽20から供給流路33に電解液11を送液する送液口28が設けられている。
【0057】
調整槽20の形状は特に限定されず、一般的な直方体、立方体等の方形体等を適用することができ、槽内に配置する各種機器等の数や大きさ等を考慮して適宜決定される。また、調整槽20の四隅の形状は、電解液11が流動でき電解液11のpHや液温等の局所的な偏在が起こらないように、例えば、角を丸くすることが好ましい。
【0058】
調整槽20は、電解槽10に対して調整槽20の容積比が0.1以上であることが好ましく、その容積比が1以上であることがより好ましい。電解槽10に対する調整槽20の容積比が0.1未満である場合には、電解液11のpHや液温等の均一制御が困難となり、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の粒度分布の幅が広くなるので好ましくない。
【0059】
調整槽20では、投入された電解液11が撹拌棒21により撹拌されて、電解液11のpHや液温等を均一にすることができる。この際、調整槽20内における電解液11のpH値は、pH電極22により測定され、測定されたpH値がフィードバックされて、薬液タンク25及び定量ポンプ26により所定の数値となるように調整される。調整槽20では、電解液11が所定のpH値となるように、薬液タンク25内のpH調整剤の添加量を定量ポンプ26の圧力により調整する。その結果、調整槽20では、電解液11について、所定のpH値に制御及び維持することができる。ここでは、pH調整剤として、例えば1N硝酸等を用いることができる。
【0060】
また、調整槽20内における電解液11の液温は、図示しない温度計により測定され、測定された液温がフィードバックされて、ヒーター23及び冷却器24により所定の温度となるように調整される。調整槽20では、ヒーター23及び冷却器24により電解液11を加熱又は冷却することで、電解液11の液温を制御及び維持することができる。
【0061】
送液口28は、調整槽20の槽底27の中央に設けられている。ただし、槽底27における送液口28を配設する位置は、電解装置1の設置状況等に応じて適宜変更することができ、例えば、送液口28を、挿通口16を配設する位置に応じて適宜変更することができる。送液口28の形状は、接続させる供給流路33の一方の先端部の形状等に応じて適宜変更することができ、例えば、円形や楕円形等にすることができる。
【0062】
<1−3.循環手段>
図1及び図2に示すように、循環手段30は、調整槽20から電解槽10に接続された供給流路33と、供給流路33に設けられた供給ポンプ31と、供給流路33に接続され複数の供給ノズル32が設けられる給液管37と、電解槽10から調整槽20に接続された吸引流路36と、吸引流路36に設けられる吸引ポンプ35と、吸引流路36に接続され複数の吸引ノズル34が設けられる吸引管と、吸引ノズル34から吸引された電解液11を調整槽20内へ移送する移送口38とを備えている。
【0063】
供給流路33は、調整槽20に貯留された電解液11を電解槽10に供給するための配管であり、電解液11により腐食されない材質からなるものである。供給流路33は、電解装置1の下側に設けられ、一方の端部が調整槽20の槽底27に設置された送液口28に接続されている。
【0064】
供給流路33は、電解槽10の槽底14に設置された挿通口16に挿通され、他方の端部が電解液11の液面から露出しないように長さが調整されている。電解槽10内の供給流路33には、複数の給液管37がそれぞれ接続されている。なお、供給流路33の設置位置は、電解装置1の設置状況等に応じて、例えば、挿通口16が電解槽10の槽壁17b〜17dの何れかに設けられた場合には、電解装置1の下側以外に適宜変更することができる。
【0065】
供給ポンプ31は、調整槽20でpHや液温等が調整された電解液11を、供給ポンプ31の圧力を調整することにより、送液口28から供給流路33へ送液し、給液管37を介して供給ノズル32から電解槽10内に供給するものである。
【0066】
本実施の形態では、供給ノズル32が少なくとも電極間に所定の間隔で電解槽10に複数設けられている。具体的には、複数の供給ノズル32は、電極と電解槽10の槽壁17bとの間にあって、電極間Aに差し込まれる位置となるように、給液管37にそれぞれ設けられている。更に、複数の供給ノズル32は、電極と電解槽10の槽壁17bの間にあって、電極と電解槽10の長手方向の両槽壁17c,17dとの間隙B,Cに差し込まれる位置となるように、給液管37にそれぞれ設けられていてもよい。
【0067】
この構成より、循環手段30では、供給ノズル32から吐出された電解液11を、電解槽10における電極間Aや間隙B,Cに、確実に供給することができる。更に、循環手段30では、供給ノズル32を上述した通りに配置することにより、電解槽10の槽壁17a側から調整槽20側に向かって一方向、即ち直線状(図1に示す電解槽10内の矢印の方向)に電解液11の層流を形成し、電解液11を送液することができる。即ち、循環手段30では、電解液11が、供給ノズル32から調整槽20に向かって電極間Aや間隙B,Cに噴流される。
【0068】
したがって、循環手段30では、上述した通りの構成により、電解液11が、電解槽10の槽壁17a側から調整槽20側に向かって流れ、例えば電解液11の液面に向かって流れることがないので、電解液11の直進性を確保することができる。更に、電解装置1では、電解液11の噴流が、電解液11の液面の方向に流れることがないので、電解液11の揮発やミストの飛散等を抑制することができ、電解装置1における周辺環境の悪化を防止して、安全性を確保することができる。
【0069】
また、循環手段30では、上述した通り、複数の供給ノズル32が給液管37にそれぞれ設けられていることで、全ての電極間Aや間隙B,Cに電解液11の噴流を流すことができる。この構成により、循環手段30では、供給ノズル32を単独で用いる場合と比較して、供給ポンプ31に負荷をかけることなく、電解槽10内全体の電解液11を、電解槽10の槽壁17a側から調整槽20側に向かって一方向に送液することができる。
【0070】
循環手段30では、供給ノズル32の形状は特に限定されることはないが、電解液11の噴流の直進性と速度を確保するために、必要に応じて供給ノズル32の噴出口の形状や直径寸法等を調整することが好ましい。電解液11の噴流の速度については、電解液11の供給量と水勢により制御することができる。即ち、循環手段30では、供給ポンプ31により電解液11の供給量を調整し、供給ノズル内径D(図3参照)を適宜変更することで、電解液11の噴流の速度を制御することができる。
【0071】
供給ノズル32から吐出する電解液11の供給量は、電解槽10の液面を一定に維持できる程度に電解槽10の吸引ノズル34から電解液11を吸引する循環量よりも多ければよく、特に限定されるものではない。なお、循環量とは、電解槽10の調整槽20側の槽壁17b付近に設けられる吸引ノズル34から調整槽20に電解液11を移送させる電解液の量(以下、「循環量」ともいう。)をいう。
【0072】
例えば、図3に示すように、供給ノズル32は、所定の供給ノズル内径Dと供給ノズル長さLで構成される突出管を有するものが好ましい。供給ノズル32の突出管においては、供給ノズル内径Dが3mm以上であることが好ましく、5mm〜10mmであることが特に好ましく、また、供給ノズル長さLが3mm〜20mmであることが好ましい。
【0073】
また、供給ノズル32は、電極の鉛直方向へ所定の間隔で多段に設けられることが好ましい。この構成より、上述した通りに形成された電解液11の噴流が、電極の鉛直方向へ所定の間隔で配置された各供給ノズル32から吐出され、それらが揃って調整槽20側に設けられる吸引ノズル34に向かって流れることで、電極間に均等に電解液11の層流が形成され電解液11が循環される。このため、電解槽10内の液面及び槽底14付近の電解液11の組成、濃度、pH、液温等を均一にすることができるので、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を生成することができる。
【0074】
即ち、循環手段30では、形成された電解液11の層流が、電極間Aや間隙B,Cを流れるので、電極間Aや間隙B,Cの電解液11の澱みが解消され、電解槽10内の電解液11の均一化を図り、生成される水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の粒度分布の幅の広がりを抑制することができる。なお、ここでいう電解液11の均一化とは、電極間Aや間隙B,Cにおいて、電解液11の組成、濃度、pH、液温等が略同一となることである。
【0075】
なお、電解装置1では、少なくとも電極間A内の電解液11が均一化されれば、電解槽10内の電解液11を均一化することができ、生成される水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の粒度分布の幅の広がりを抑制することができるので、供給ノズル32が、電極と電解槽10の槽壁17c,17dとの間にあって、電極間Aに差し込まれる位置となるように、給液管37にそれぞれ設けられていればよい。
【0076】
供給ノズル32の設置数は、設置するアノード12及びカソード13の数や電解槽10の大きさ等に応じて適宜変更され、特に限定されることはない。
【0077】
給液管37は、供給流路33を通って調整槽20から送液された電解液11を、電解槽10内へ供給するための配管であり、電解液11により腐食されない材質からなるものである。電解槽10内には、複数の給液管37が、電極の幅方向に所定の間隔で多段に配置されており、給液管37の一方の先端部が、それぞれ供給流路33に接続されている。この構成により、電解装置1では、供給流路33を通って調整槽20から送液された電解液11を、供給ノズル32を介して電解槽10内へ供給することができる。
【0078】
吸引流路36は、電解槽10から吸引ノズル34により吸引された電解液11を調整槽20に移送するための配管であり、電解液11により腐食されない材質からなるものである。吸引流路36は、電解装置1の上側に設けられ、吸引流路36の一方の端部には調整槽20の上部中央に移送口38が設けられる。
【0079】
吸引ポンプ35は、供給ノズル32から電解槽10に供給された電解液11を吸引ポンプ35の圧力を調整することにより、槽内の電解液11を吸引ノズル34から吸引流路36へ送液し、移送口38から調整槽20内に戻すものである。
【0080】
吸引ノズル34は、供給ノズル32が設けられる電解槽10の槽壁17a付近と対向する電解槽10の調整槽20側の槽壁17b付近に設けられている。これにより、吸引ノズル34が供給ノズル32と対向する位置に電解槽10の槽壁17b付近に設けられることで、供給ノズル32から電解液11を供給して、その供給された電解液11を吸引ノズル34から吸引するので、一方向に安定した層流を形成することができる。
【0081】
循環手段30では、吸引ノズル34の形状は特に限定されることはないが、供給ノズル32から供給される電解液11の噴流の直進性と速度を確保するために、必要に応じて吸引ノズル34の吸引口の形状や直径寸法等を調整することが好ましい。電解液11の吸引の速度については、電解液の循環量により制御することができる。即ち、循環手段30では、吸引ポンプ35により電解液の循環量を調整し、吸引ノズル内径を適宜変更することで、電解液11の吸引の速度を制御することができる。
【0082】
例えば、吸引ノズル34は、所定の吸引ノズル内径と吸引ノズル長さで構成される突出管を有するものが好ましい。吸引ノズル34の突出管においては、吸引ノズル内径が3mm以上であることが好ましく、5mm〜10mmであることが特に好ましく、また、吸引ノズル長さが3mm〜20mmであることが好ましい。
【0083】
ここで、吸引ノズル34は、電極の鉛直方向へ所定の間隔で多段に設けられることが好ましい。この構成により、電解槽10内の液面及び底部付近の電解液11を吸引ノズル34により吸引することで、調整槽20にその電解液11を調整することができるので、電解槽10内の液面及び底部付近の電解液11の組成、濃度、pH、液温等を均一にすることができる。その結果、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を生成することができる。なお、吸引ノズル34が、電極と電解槽10の槽壁17c,17dとの間にあって、電極間Aに差し込まれる位置となるように、図示しない吸引管にそれぞれ設けられていればよい。
【0084】
吸引ノズル34の設置数は、設置するアノード12及びカソード13の数や電解槽10の大きさ等に応じて適宜変更され、特に限定されることはない。
【0085】
吸引管は、吸引流路36を通って電解槽10から吸引された電解液11を、調整槽20内へ移送するための配管であり、電解液11により腐食されない材質からなるものである。電解槽10内には、複数の吸引管が、電極の高さ方向に所定の間隔で多段に配置されており、吸引管の一方の先端部が、それぞれ吸引流路36に接続されている。この構成により、電解装置1では、吸引流路36を通って電解槽10から吸引された電解液11を、移送口38を介して調整槽20内へ移送することができ、また、吸引ノズル34を電極の幅方向に対して所定の間隔で多段に配置される。
【0086】
吸引流路36が電解装置1の上側に配設され、この吸引流路36の一方の先端に設けられる移送口38は、調整槽20の上部中央になるように設けられている。ただし、上記移送口38を配設する位置は、電解装置1の設置状況に応じて適宜変更することができ、例えば、移送口38を、吸引流路36を配設する位置に応じて適宜変更することができる。移送口38の形状は、接続させる吸引流路36の一方の先端部の形状等に応じて適宜変更することができ、例えば、円形や楕円形等にすることができる。
【0087】
電解槽10では、供給ノズル32から電解液11を供給し、電解槽10の調整槽20側の槽壁17b付近に吸引ノズル34を設けることにより、直線流を促すことができるため層流を確保することができる。電極間を層流が形成されることにより、電解液11の澱みを解消し、電解槽10内の電解液11のpHや濃度、組成等は均一化される。電解液11の循環を行わない場合には、例えば、通電時間と共に電解槽10の液面付近と槽底14付近では、液温及びpHが不均一になる。それのみならず、発生した水酸化物沈殿粒子が速やかに電解槽10を拡散し調整槽20へ移動して、電解液11の液温やpH調整を施されても、極めて不均質な水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉が発生する。
【0088】
電解槽10の調整槽20側の槽壁17b付近に設けられる吸引ノズル34から調整槽20に電解液11を移送させる電解液の循環量が、電解電流1Aあたり0.03L/min/A〜電解電流1Aあたり0.10L/min/Aに制御されることが好ましい。これにより、電解液11のpHの上昇を抑制することができ、電極間に電解液11の層流が直線状に形成され電解液11が循環されるので、電解液11の組成、濃度、pH、液温等を均一にすることができる。このため、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を生成することができる。
【0089】
電解液の循環量が電解電流1Aあたり0.03L/min/A未満である場合には、電極周辺のpHが上昇してしまい、循環量が少なすぎるために電解槽10内で回流し水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉が凝集してしまう。この結果、粒径が均一で粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を生成することができない。一方、電解液11の循環量が電解電流1Aあたり0.10L/min/Aを超える場合には、調整槽20から電解槽10への供給する電解液11の量が足りずに、電解を中止せざるを得なくなる。したがって、電解液の循環量は、電解電流1Aあたり0.03L/min/A〜電解電流1Aあたり0.10L/min/Aに制御されることが好ましい。
【0090】
電解液11が電解槽10の調整槽20側の槽壁17bの上端縁に設けられる排水口18からオーバーフローして調整槽20に移送させる量と電解液の循環量とを合計した電解液の総給液量(以下、「総給液量」ともいう。)は、電解液の循環量に対して110%〜160%に制御されることが好ましい。これにより、オーバーフローした電解液11を調整槽20へ移送することができ、電解槽10からオーバーフローした電解液11を一切無駄にせず、電解槽10内の電解液11の液面を一定の高さに維持することができる。具体的に、電解液11の液面の一定の高さとは、電解槽10内に設置されている電極の上端よりも数cmほど高く、電極が浸漬している高さをいう。
【0091】
このように、電解槽10から排水口18を介してオーバーフローした電解液11を調整槽20に移送させることにより、電極が浸漬するように電解槽10内の電解液11の液面を一定に維持し、電解液のpH、組成、液温、濃度等を不均一となるのを効率的に抑制することができる。その結果、粒径が均一で粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を生成することができる。
【0092】
電解液の総給液量が電解液の循環量に対して110%未満である場合には、電解槽10の電解液11の液面の高さが低下し、電解を中止せざるを得ない。一方、電解液の総給液量が電解液の循環量に対して160%を超える場合には、電解液11が電解槽10から調整槽20以外にオーバーフローしてしまい、電解を中止せざるを得ない。したがって、電解液の総給液量は、電解液の循環量に対して110%〜160%に制御されることが好ましい。
【0093】
以上で説明した通り、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置1は、供給ノズル32を介して調整槽20から電解液11を供給して調整槽20側に向って電極の幅方向と平行に電解液11を噴流させ、吸引ノズル34を介して電解液11を吸引して調整槽20へ移送させることにより、電解槽10と調整槽20間で電解液11を循環させる。そして、電極間の幅方向と平行に電解液11の層流が形成され電解液11が循環されるので、電解装置1全体の電解液11の組成、濃度、pH、液温等を均一化することができる。その結果、電解液11の均一化を図ることにより、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を生成することができる。
【0094】
また、電解装置1では、供給ノズル32から調整槽20側に向って電極と平行に電解液11を噴流させることができるので、電解液11の揮発やミストの飛散等を抑制することができ、電解装置1における周辺環境の悪化を防止して、安全性を確保することができる。
【0095】
更に、電解装置1では、循環手段30において複数且つ多段に設けられた供給ノズル32により、電極間Aや電極と電解槽壁との間隙B,Cに上述の電解液11の噴流を層流として供給することができるので、電極間Aや電極と電解槽壁との間隙B,Cの電解液の澱みが解消され、電解槽10内の電解液11の均一化を図り、生成される水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の粒度分布の幅の広がりを抑制することができる。
【0096】
[2.水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法]
本実施の形態に係る水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法(以下、単に「水酸化物の製造方法」ともいう。)では、上述した通りの水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解装置を用いることにより、電解法を利用して、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を得る。なお、ここでは、図1に示す電解装置1を用いた場合を例に挙げて説明する。
【0097】
水酸化物の製造方法は、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を含む電解液11(以下、「電解スラリー」ともいう。)を得る電気分解工程と、電解スラリーから電解液11を固液分離する電解液分離工程と、電解スラリーに電解液11を加えてリパルプ洗浄し、洗浄スラリーを得るリパルプ洗浄工程と、得られた洗浄スラリーから洗浄液を脱水して水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を得る洗浄液脱水工程と、得られた水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を乾燥する乾燥工程とを有している。以下、各工程の詳細について、それぞれ説明する。
【0098】
<2−1.電気分解工程>
電気分解工程では、金属インジウム又は金属スズをアノード(陽極)12とし、対極のカソード(陰極)13に導電性の金属やカーボン電極等を使用し、アノード12及びカソード13を電解液11に浸漬して両極間に電位差を発生させて、電流を生じさせることでアノード12が溶解し、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉が晶析して、電解スラリーを生成する。
【0099】
(電解液)
電解液11としては、水溶性の硝酸塩、硫酸塩、塩化物塩等の一般的な電解質塩の水溶液を用いることができる。電気分解工程では、それらの中でも、硝酸アンモニウムが好ましい。硝酸アンモニウムは、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を沈殿した後の乾燥、仮焼後に硝酸イオン及びアンモニウムイオンが窒素化合物として除去されて不純物として残らず、生成される水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の純度を高め、且つコストを削減することができる。
【0100】
電気分解工程では、生成された水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の溶解度が10−6mol/L〜10−3mol/Lとなるように、電解液11を調整することが好ましい。電気分解工程では、生成された水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の溶解度を10−6mol/L〜10−3mol/Lの範囲内とすることで、適度に水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の一次粒子の成長が促進される。これにより、電気分解工程では、一次粒子の凝集が抑制されるため、粒度分布の幅が広くならず、粒度分布の幅が狭く、粒径が均一な水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を得ることができる。
【0101】
水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の溶解度が10−6mol/L未満の場合には、アノード12から溶け出した金属イオンが核化しやすくなるため、一次粒子径が微細化し過ぎてしまう。その場合には、後の水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の分離回収が困難となるため好ましくない。
【0102】
一方、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の溶解度が10−3mol/Lを超える場合には、粒子成長の促進により一次粒子径が大きくなるため、粒子を成長させるほど、成長する粒子と成長しない粒子の間で粒子径の違いが大きくなる。粒子径の違いは、凝集の度合いに影響を与えるため、結果として水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の粒度分布の幅が広くなってしまう。水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の粒度分布の幅が広くなると、これらを仮焼して得られる酸化インジウム粉又は酸化スズ粉の粒度分布の幅も広くなり、これを焼結して得られるスパッタリングターゲットは高密度となり難いため好ましくない。
【0103】
したがって、電解液11は、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の溶解度が10−6mol/L〜10−3mol/Lの範囲が好ましく、硝酸アンモニウム水溶液の濃度、pH、液温等によって水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の溶解度を制御することができる。このように、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の好適な溶解度に制御できるので、粒径が均一で粒度分布の幅が狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を得ることができる。
【0104】
電解液11の濃度は、0.1mol/L〜2.0mol/Lに調整することが好ましい。電解液11の濃度が0.1mol/L未満である場合には、電解時の電圧上昇が大きくなり、通電部が発熱したり、電力コストが高くなったりする等の問題が生じるため好ましくない。一方、電解液11の濃度が2.0mol/Lを超える場合には、電解によって水酸化インジウム粒子又は水酸化スズ粒子が粗大化し、粒径のばらつきが大きくなるため好ましくない。
【0105】
電気分解工程において、水酸化インジウム粉を得る場合には、電解液11のpHを2.5〜4.0に調整することが好ましい。電解液11のpHが2.5未満である場合には、水酸化インジウム粉の沈澱が生じない。一方、電解液11のpHが4.0を超える場合には、水酸化インジウム粉の析出が速すぎて電解液11の濃度が不均一のまま沈澱が形成されるため、水酸化インジウム粉の粒度分布の幅が広くなり、水酸化インジウム粉の粒度分布の幅を小さく制御することができない。
【0106】
電気分解工程において、水酸化スズ粉を得る場合には、電解液11のpHを2.5〜8.0に調整することが好ましい。電解液11のpHが2.5未満である場合には、水酸化スズ粉の沈澱が生じない。一方、電解液11のpHが8.0を超える場合には、水酸化スズ粉の析出が速すぎて電解液11の濃度が不均一のまま沈澱が形成されるため、水酸化スズ粉の粒度分布の幅が広くなり、水酸化スズ粉の粒度分布の幅を小さく制御することができない。
【0107】
電解液11の液温は、20℃〜60℃に調整することが好ましい。電解液11の液温が20℃未満である場合には、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の析出が遅すぎる。一方、電解液11の液温が60℃を超える場合には、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉が析出するのが速すぎて電解液11の濃度が不均一のまま沈澱が形成されるため、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の粒度分布の幅が広がる。
【0108】
(電流密度)
電解時の電流密度は、4A/dm〜20A/dmに調整することが好ましい。これにより、広範囲の電流密度とすることができる。電解時の電流密度が4A/dm未満である場合には、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の生産効率が低下してしまう。一方、電解時の電流密度が20A/dmを超える場合には、電解液11の上昇や、アノード12(例えば、金属インジウム)の表面に不動態化して電解し難くなる等の問題が生じるので好ましくない。
【0109】
(電気分解)
電気分解工程では、図1に示す通りに電解装置1を整備し、電解槽10及び調整槽20に電解液11を投入して電解を開始する。
【0110】
また、電気分解工程では、電解中に電解槽10の電解液11を調整槽20で調整し、循環手段30によって、供給流路33から給液管37を通って供給ノズル32から電解槽10内へ供給する。電気分解工程では、循環手段30によって電解液11を電解槽10内へ供給する際には、複数の供給ノズル32から、電解槽10の槽壁17b付近にある吸引ノズル34から吸引ポンプ35を介して調整槽20へ向かって電解液11が移送され、電極間A及び電極と電解槽10の槽壁17c,17dとの間隙B,Cに、電解液11の複数の噴流の集合(層流)を形成する。
【0111】
電気分解工程では、電解液11が調整槽20から電解槽10内に供給されることにより、その電解液11を、電解槽10から吸引し、且つ電解槽10の槽壁17bの上端縁に設けられる排水口18からオーバーフローさせることにより、電解液11が調整槽20に戻される。
【0112】
電気分解工程では、電解槽10の調整槽20側の槽壁17b付近に設けられる吸引ノズル34から吸引ポンプ35によって吸引流路36を介して電解槽10内の電解液11を調整槽20に移送し、且つ電解槽10の槽壁17bの上端縁に設けられる排水口18を介して電解槽10内の電解液11をオーバーフローさせて移送され、調整槽20でpHや液温等を調整し、調整済みの電解液11を供給ポンプ31によって供給流路33を介して再び電解槽10内へ供給ノズル32から供給し、これを連続的に行うことで、循環手段30で電解液11を電解装置1内に循環させる。
【0113】
電気分解工程では、電解が終了した後に、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を含む電解スラリーが得られる。
【0114】
電気分解工程では、電解槽10内の電解液11は、電解による通電時間の経過と共に、その組成、濃度、pH、液温等が変化する。より詳細には、時間の経過と共に電解槽10の液面付近と槽底14付近における電解液11の組成、濃度、pH、液温等が不均一となり、生成する水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の粒径に差異が発生する。
【0115】
つまり、調整槽20において、電解液11のpHや液温に関する制御及び維持が適切に行われない場合には、生成される水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の粒度分布の幅が広くなってしまう。
【0116】
そこで、電気分解工程では、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の粒度分布の幅の広がりを抑制するために、循環手段30により、電極間Aや電極と電解槽10の槽壁17c,17dとの間隙B,Cに電解液の層流を形成すると共に、電解液を循環させる。
【0117】
その結果、電気分解工程では、形成された電解液11の層流により、電極間A及び間隙B,Cの電解液11の澱みを解消して組成、濃度、pH、液温等を均一にすることができる。更に、電気分解工程では、循環手段30で、電解液11の層流の形成と共に、電解液11を電解装置1内に循環させることで、電解装置1内全体の電解液11の組成、濃度、pH、液温等の均一化を図ることができ、粒度分布の幅の狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を含む電解スラリーを生成することができる。
【0118】
<2−2.電解液分離工程>
次に、電解液分離工程では、上述した電気分解工程により得られた電解スラリーから、電解液11と水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を含むケーキとを固液分離する。
【0119】
電解液分離工程では、電解スラリーから電解液11を分離するために、微細な粉末であっても目詰まりを起こし難く、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の回収効率が高いクロスフロー方式のロータリーフィルタを使用する。ロータリーフィルタで使用するろ布は、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の回収率を高めるため、できるだけ通気度が小さい方が望ましい。特に、電解液分離工程では、通気度が0.3cm/sec/cm以下のものが好ましい。
【0120】
<2−3.リパルプ洗浄工程>
次に、リパルプ洗浄工程では、電解液分離工程で得られた水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を含むケーキには電解液11が含まれるため、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉に洗浄液を加えて水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉をリパルプ洗浄し、洗浄スラリーを得る。
【0121】
リパルプ洗浄に使用する洗浄液は、不純物が少ない方が望ましいため、純水を用いる。リパルプ洗浄工程では、特に、「JIS K0557」に規定されたA2グレード以上の洗浄液であることが望ましい。A2グレード以下の洗浄液を用いる場合には、シリカ等の不純物が混入し、生成された水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を使用したスパッタリングターゲットを作製する際に問題となるため、好ましくない。
【0122】
リパルプ洗浄工程では、ケーキ中に含まれる水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉1kgに対して5L〜20Lの純水を用いて洗浄することが望ましい。使用する純水の量が5Lより少ない場合には、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉内に、電解液成分である硝酸アンモニウム等が多く残留してしまい、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の乾燥時や、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を仮焼し、酸化インジウム粉又は酸化スズ粉を得る際に、火災が発生する危険性が高くなる。一方、リパルプ洗浄工程では、20Lの純水を使用すれば洗浄できるため、20Lよりも多く純水を使用すると、洗浄後の排水処理量が増加し、コストアップとなってしまう。
【0123】
リパルプ洗浄工程では、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を含むケーキに洗浄液を加えて必要に応じて撹拌を行う。リパルプ洗浄工程では、リパルプ洗浄を1回以上行うことによって、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を含むケーキ中の電解液11を除去でき、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を含むケーキを洗浄して、洗浄スラリーを得ることができる。
【0124】
<2−4.洗浄液脱水工程>
洗浄液脱水工程では、リパルプ洗浄工程で得られた洗浄スラリーから洗浄液を脱水し、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を得る。
【0125】
脱水には、微細な粉末であっても目詰まりを起こし難く回収効率の高いクロスフロー方式のロータリーフィルタを使用する。
【0126】
また、電解液11や洗浄液を再利用する場合には、洗浄液脱水工程では、洗浄スラリーを脱水して得られた洗浄液を加熱して所定の時間減圧蒸留し、濃縮液を得る。次に、洗浄液脱水工程では、得られた濃縮液を電解液分離工程により分離された電解液11と混合し、電気分解工程で使用した電解液11と同じ濃度やpH等になるように、純水を添加して調整する。その後、洗浄液脱水工程では、純水を添加して調整した電解液11を再び調整槽20に投入し、供給ポンプ31により供給流路33を介して電解槽に供給する。
【0127】
その結果、電気分解工程では、洗浄液脱水工程において再生した電解液11を用いて、新たな電解を行うことができる。また、電解液11や洗浄液を再利用することで、電解液を廃液として廃棄することがなくなり、廃液処理に伴うコストを削減することができ、更に、電解液11の損失を抑制できると共に、環境への負荷を抑制することができる。
【0128】
<2−5.乾燥工程>
乾燥工程では、洗浄液脱水工程で得られた水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を乾燥する。
【0129】
乾燥工程では、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の乾燥方法は特に限定されるものではなく、例えば、スプレードライヤ、空気対流型乾燥炉、赤外線乾燥炉等の乾燥機を用いて乾燥することができる。これらの中では、特に、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅の狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を得るという観点から、スプレードライヤにて噴霧乾燥することが好ましい。
【0130】
乾燥条件は、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉に含まれる水分を除去できれば特に限定されないが、例えば、乾燥温度を80℃〜150℃の範囲とすることが好ましい。乾燥温度が80℃よりも低い場合には、乾燥が不十分となり、150℃よりも高い場合には、水酸化インジウム又は水酸化スズから酸化インジウム又は酸化スズに変化してしまう。また、乾燥時間は、温度により異なるが、約10時間〜24時間程度である。
【0131】
以上で説明した通り、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法では、上述した通りの本実施の形態に係る電解装置を用いることで、粒径が均一で粒度分布の幅の狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を得ることができる。
【0132】
[3.酸化インジウム粉又は酸化スズ粉の製造方法]
酸化インジウム粉又は酸化スズ粉の製造方法では、上述した通りの乾燥工程により得られた乾燥後の水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を仮焼して、酸化インジウム粉又は酸化スズ粉を生成する。
【0133】
酸化インジウム粉又は酸化スズ粉の製造方法では、これらの仮焼条件は、得られた水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉に応じて適宜決定するが、例えば、仮焼温度が600℃〜800℃、仮焼時間が1時間〜10時間で行うことが好ましい。
【0134】
酸化インジウム粉又は酸化スズ粉の製造方法では、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の仮焼温度が600℃よりも低いと、酸化インジウム粉又は酸化スズ粉のBET値が15m/gを超えてしまい、一次粒子が小さすぎるために、凝集性を有する粉末となる。これにより、得られた酸化インジウム粉又は酸化スズ粉では、高密度の焼結材料、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)焼結材料を得ることができない。
【0135】
一方、酸化インジウム粉又は酸化スズ粉の製造方法では、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の仮焼温度が800℃より高いと、酸化インジウム粉又は酸化スズ粉のBET値が10m/g未満になり、一次粒子径が大きくなり、粒子間に生じる空孔も大きくなるため、焼結性が低下する。これにより、得られた酸化インジウム粉又は酸化スズ粉では、高密度の焼結材料を得ることができない。
【0136】
従って、酸化インジウム粉又は酸化スズ粉の製造方法では、高密度の焼結材料を得るために、仮焼温度を600℃〜800℃の範囲とすることが好ましい。
【0137】
酸化インジウム粉又は酸化スズ粉の製造方法では、得られた酸化インジウム粉又は酸化スズ粉において、比表面積のBET値が、10m/g〜15m/gの範囲内に制御されており、粒度分布の累積粒度10%径(D10)が0.2μm以上、累積粒度90%径(D90)が2.7μm以下である。このような酸化インジウム粉又は酸化スズ粉は、比表面積が制御されていることから、分散性が良く、凝集が少ないため、高密度の焼結材料を生成することができる。
【0138】
酸化インジウム粉又は酸化スズ粉の製造方法では、酸化インジウム粉又は酸化スズ粉をより所望の粒径とするために、必要に応じて解砕又は粉砕を行ってもよい。また、酸化インジウム粉又は酸化スズ粉の製造方法では、水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の電解の際に、電解液として硝酸アンモニウムを用いた場合には、硝酸アンモニウムの分解が生じ、酸化インジウム粉又は酸化スズ粉への混入を防止することができる。
【0139】
[4.スパッタリングターゲットの製造方法]
本実施の形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法では、上述した通りの酸化インジウム粉又は酸化スズ粉の製造方法により得られた酸化インジウム粉及び/又は酸化スズ粉を用いてスパッタリングターゲットを作製する。
【0140】
先ず、スパッタリングターゲットの製造方法では、酸化インジウム粉又は酸化スズ粉の製造方法で得られた酸化インジウム粉及び酸化スズ粉を、スパッタリングターゲットの他の原料と所定の割合で混合し、造粒粉を作製する。次に、スパッタリングターゲットの製造方法では、得られた造粒粉を用いて、例えば、コードプレス法により成型体を作製する。次に、スパッタリングターゲットの製造方法では、得られた成型体を、大気圧下で、例えば、1300℃〜1600℃の温度範囲内で焼結を行う。次に、スパッタリングターゲットの製造方法では、必要に応じて、得られた焼結体の平面や側面を研磨する等の加工を行う。そして、スパッタリングターゲットの製造方法では、加工後の焼結体を、Cu製のバッキングプレートにボンディングすることにより、酸化インジウムスズスパッタリングターゲット(ITOスパッタリングターゲット)を得ることができる。
【0141】
スパッタリングターゲットの製造方法では、原料となる酸化インジウム粉及び酸化スズ粉の比表面積が制御されており、分散性が良いものであるため、高密度の焼結体を得ることができ、スパッタリングターゲットの密度を高くすることできる。これにより、得られたスパッタリングターゲットは、加工中に割れ欠けが生じず、スパッタの際に異常放電が発生することも抑制できる。
【0142】
スパッタリングターゲットの製造方法では、酸化インジウム粉又は酸化スズ粉の製造方法で得られた酸化インジウム粉又は酸化スズ粉を、それぞれ単独で用いて、酸化インジウムスパッタリングターゲット又は酸化スズスパッタリングターゲットを作製してもよい。
【0143】
また、スパッタリングターゲットの製造方法では、ITOスパッタリングターゲットを作製する場合において、酸化インジウム粉又は酸化スズ粉の何れかについては、他の製造方法により得られたものを適用してもよいが、上述した通りの電解装置により製造した水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を用いて作製されたものを用いることが好ましい。
【0144】
以上で説明した通り、スパッタリングターゲットの製造方法では、上述した通りの本実施の形態に係る水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉の製造方法により得られた、粒径が均一で粒度分布の幅の狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を用いて作製した酸化インジウム粉及び/又は酸化スズ粉を、スパッタリングターゲットの原料として用いている。その結果、スパッタリングターゲットの製造方法では、相対密度が高い焼結体を得ることができ、最終的に、この焼結体により高密度のスパッタリングターゲットを作製することができる。
【実施例】
【0145】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0146】
[実施例1]
(1)電気分解工程
実施例1における電気分解工程では、図1に示す電解装置1を用いて水酸化インジウム粉を生成した。電解装置1は、縦100cm、横40cm、深さ50cmの200Lの電解槽10と、縦20cm、横40cm、深さ50cmの40Lの調整槽20と、を備え、電解槽10と調整槽20とは、隣接して設けられている。図1及び図2に示すように、電解装置1では、電解槽10と調整槽20とが供給流路33と吸引流路36により接続され、供給流路33は、供給ポンプ31と供給ノズル32が設けられた給液管37とを備えている。
【0147】
図2に示すように、電解槽10には、その槽内に、複数のアノード(陽極)12とカソード(陰極)13とがそれぞれ配置されている。実施例1では、アノード12には、純度99.9999%のインジウム金属を巾26cm、高さ40cm、厚み8mmの板状に成型したものを4枚準備し、カソード13には、巾26cm、高さ40cm、厚み4mmのチタン金属板を5枚準備した。
【0148】
図2に示すように、電解槽10内には、5枚のカソード13と4枚のアノード12とを、アノード12片面の電解面積が10.4dmになるよう、垂直にして両極が互いに平行となるよう交互に配置し、カソード13とアノード12と間の距離を2.0cmに調節した。そして、実施例1では、5枚のカソード13と4枚のアノード12とを、導線15aで電気的に接続した。
【0149】
また、図2に示すように、電解槽10には、槽底14より2cmの高さで電極の幅方向と平行に電解液11の液流を分散させるために供給ノズル32が設けられている。即ち供給ノズル32は4枚のアノード12に対して5枚のカソード13が交互に平行に配列しており、供給ノズル32は各電極間の中間に位置する。供給ノズル32は電極の浸漬する上点から電極下点までの間に、5個等間隔で配列している。供給ノズル32はアノード4枚とカソード5枚の計9枚の列に対して10列の供給ノズル32が配列する。したがって、電解液11は合計50個の供給ノズル32により均しく一定量で給液され電極間をほぼ層流として流れる。さらに、供給ノズル32を設けられる槽壁17aと対向する槽壁17b付近に吸引ノズル34を設けて、吸引ポンプ35で供給ノズル32から供給された電解液11を吸引ノズル34から吸引して調整槽20に移送し、且つ電解槽10からオーバーフローした電解液11を調整槽20に送液することにより、直線流及び層流をほぼ一定に維持するようになっている。
【0150】
供給ノズル32は、図3に示すように、供給ノズル内径Dが5mm、供給ノズル長さLが10mmで構成される突出管を有するものを使用した。また、図1に示すように、調整槽20及び電解槽10間には、吸引ノズル34から電解液11を吸引する吸引流路36を配置した。
【0151】
さらに、図1に示すように、調整槽20内は、電解液11を撹拌する撹拌棒21、pHを測定するpH電極22、電解液11の液温を制御及び維持するヒーター23及び冷却器24が設けられている。また、実施例1では、調整槽20に近接して、電解液11のpHを制御及び維持する薬液タンク25及び薬液添加用の定量ポンプ26が設けられている。
【0152】
電解装置1の調整槽20には、電解液11として、1.0mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液180Lが投入されている。実施例1では、調整槽20において、硝酸アンモニウム水溶液に対し1N硝酸を添加し、水素イオン濃度指数pHを4.0に調整した。電解液11のpHの測定は、調整槽20に取り付けたpH電極22を用いて行った。また、電解液11において、このpHを維持しつつ、更にヒーター23及び冷却器24を使用して、電解液11の温度を25℃に維持した。調整槽20では、撹拌棒21で槽内の電解液11を撹拌して電解液11の調整を行った。
【0153】
実施例1では、電解中は供給ポンプ31により、調整槽20内の電解液11を、供給流路33を介して給液管37へ送液し、更に、給液管37に設けられた供給ノズル32から噴射して電解槽10へ供給した。そして、吸引ポンプ35により、電解槽10内の電解液11を電解電流1Aあたりの電解液の循環量0.06L/min/A(循環量74.9L/min)で吸引流路36を介して調整槽20に移送し、且つ電解槽10からオーバーフローした電解液11を調整槽20に送液した。ここで、電解液の総給液量は、電解液の循環量に対して125%であった。また、電解槽10内の電解液11は、電解槽10の槽壁17b付近に設けられた吸引ノズル34から、吸引ポンプ35により吸引流路36を介して調整槽20に移送され、電解槽10及び調整槽20間を循環している。
【0154】
電解装置1では、電極電流密度を15A/dmに調節し、電解を6時間継続した。この電解により、電気分解工程では、水酸化インジウム粉を含む電解スラリーが得られた。
【0155】
(2)電解液分離工程
次に、実施例1における電解液分離工程では、電気分解工程で得られた水酸化インジウム粉を含む電解スラリーの固液分離を行った。電解液分離工程では、水酸化インジウム粉を含む電解スラリーの固液分離を行うに際して、ロータリーフィルタ(寿工業(株)製、RFU−02B)と、ろ布(KE−022、通気度0.1cm/sec/cm)を使用した。その結果、電解液分離工程では、固液分離により、水酸化インジウムを含むケーキと、分離された電解液11とが得られた。
【0156】
(3)リパルプ洗浄工程
次に、実施例1におけるリパルプ洗浄工程では、電解液分離工程で得られた水酸化インジウムを含むケーキを洗浄した。リパルプ洗浄工程では、水酸化インジウムを含むケーキに対して、純水を加えてステンレスバケツ容器で撹拌し、再分散した。次いで、リパルプ洗浄工程では、電解液分離工程と同様にして固液分離操作を行い、再び水酸化インジウムを含むケーキと、分離された洗浄液とが得られた。
【0157】
(4)洗浄液脱水工程
次に、実施例1における洗浄液脱水工程では、減圧蒸留装置(日鉄住友環境株式会社製、エコプリマ)を使用して、濃縮加熱用ヒーター釡(容量1m)に、リパルプ洗浄工程で得られた洗浄液100Lを仕込み、電気ヒーター100kW/hrで4時間減圧蒸留を実施し、濃縮液を得た。
【0158】
次に、洗浄液脱水工程では、得られた濃縮液を、電解液分離工程で得られた電解液11と混合し、電気分解工程で使用した電解液11の濃度やpH等と同じになるよう純水を添加して調整した後、再び調整槽20に入れて供給ポンプ31により供給流路33を介して電解槽10に供給し、新たな電解を行った。なお、洗浄液脱水工程までの工程において、電解液11は、廃液として廃棄されることはなかった。
【0159】
実施例1では、洗浄液脱水工程における操作を3回繰り返して、得られた水酸化インジウム粉を含む電解スラリーをサンプリングし、粒度分布をレーザー回折・散乱法(株式会社島津製作所製、SALD−2200)により測定した。
【0160】
(5)乾燥工程
実施例1では、洗浄液脱水工程により得られた水酸化インジウム粉を含む電解スラリーをスプレードライヤで噴霧乾燥した。実施例1では、乾燥した水酸化インジウム粉について、粒度分布を測定し、その結果を表1に示した。
【0161】
(6)酸化インジウム粉の製造工程
実施例1では、乾燥工程で乾燥した水酸化インジウム粉を、大気中700℃で焼成し、酸化インジウム粉を得た。実施例1では、得られた酸化インジウム粉の製造条件をまとめ、表1に示した。
【0162】
[実施例2]
実施例2では、調整槽20の液量を200Lとした以外は実施例1と同様にして、水酸化インジウム粉を作製し、その水酸化インジウム粉から酸化インジウム粉を作製した。なお、電解液の総給液量は、電解液の循環量に対して125%であった。また、実施例2では、作製した水酸化インジウム粉の粒度分布、及び酸化インジウム粉の製造条件をまとめ、表1に示した。
【0163】
[実施例3]
実施例3では、電解電流1Aあたりの電解液の循環量を0.035L/min/A(循環量43.8L/min)とした以外は実施例1と同様にして、水酸化インジウム粉を作製し、その水酸化インジウム粉から酸化インジウム粉を作製した。なお、電解液の総給液量は、電解液の循環量に対して125%であった。また、実施例3では、作製した水酸化インジウム粉の粒度分布、及び酸化インジウム粉の製造条件をまとめ、表1に示した。
【0164】
[実施例4]
実施例4では、電解電流1Aあたりの電解液の循環量を0.095L/min/A(循環量118.6L/min)とした以外は実施例1と同様にして、水酸化インジウム粉を作製し、その水酸化インジウム粉から酸化インジウム粉を作製した。なお、電解液の総給液量は、電解液の循環量に対して125%であった。また、実施例4では、作製した水酸化インジウム粉の粒度分布、及び酸化インジウム粉の製造条件をまとめ、表1に示した。
【0165】
[実施例5]
実施例5では、アノード12に純度99.99%の金属スズを使用し、電解液11のpHを7.0に調整した以外は実施例1と同様にして、水酸化スズ粉を作製し、その水酸化スズ粉から酸化スズ粉を作製した。なお、電解液の総給液量は、電解液の循環量に対して125%であった。また、実施例5では、作製した水酸化スズ粉の粒度分布、及び酸化スズ粉の製造条件をまとめ、表2に示した。
【0166】
[実施例6]
実施例6では、調整槽20の液量を200Lとした以外は実施例5と同様にして、水酸化スズ粉を作製し、その水酸化スズ粉から酸化スズ粉を作製した。なお、電解液の総給液量は、電解液の循環量に対して125%であった。また、実施例6では、作製した水酸化スズ粉の粒度分布、及び酸化スズ粉の製造条件をまとめ、表2に示した。
【0167】
[実施例7]
実施例7では、電解電流1Aあたりの電解液の循環量を0.035L/min/A(循環量43.8L/min)とした以外は実施例5と同様にして、水酸化スズ粉を作製し、その水酸化スズ粉から酸化スズ粉を作製した。なお、電解液の総給液量は、電解液の循環量に対して125%であった。また、実施例7では、作製した水酸化スズ粉の粒度分布、及び酸化スズ粉の製造条件をまとめ、表2に示した。
【0168】
[実施例8]
実施例8では、電解電流1Aあたりの電解液の循環量を0.095L/min/A(循環量118.6L/min)とした以外は実施例5と同様にして、水酸化スズ粉を作製し、その水酸化スズ粉から酸化スズ粉を作製した。なお、電解液の総給液量は、電解液の循環量に対して125%であった。また、実施例8では、作製した水酸化スズ粉の粒度分布、及び酸化スズ粉の製造条件をまとめ、表2に示した。
【0169】
[実施例9]
実施例9では、実施例1により得られた酸化インジウム粉990gと、実施例5により得られた酸化スズ粉10gを用い、混合コールドプレス法により成形体を形成した。次に、実施例9では、得られた成形体を、大気圧中において1400℃で30時間焼結し、酸化インジウム−酸化スズ系焼結体が得られた。実施例9では、得られた焼結体の相対密度をアルキメデス法により測定し、その結果を表3に示した。
【0170】
[実施例10]
実施例10では、実施例2により得られた酸化インジウム粉990gと、実施例6により得られた酸化スズ粉10gを用い、混合コールドプレス法により成形体を形成した。次に、実施例10では、得られた成形体を、大気圧中において1400℃で30時間焼結し、酸化インジウム−酸化スズ系焼結体が得られた。実施例10では、得られた焼結体の相対密度をアルキメデス法により測定し、その結果を表3に示した。
【0171】
[比較例1]
比較例1では、調整槽20を使用せず電解槽10のみで電解を実施し、撹拌棒21、pH電極22、ヒーター23及び冷却器24を、電解槽10内に設置した。比較例1では、電解槽10内の撹拌棒21の回転数を、60rpmとした以外は実施例1と同様にして、水酸化インジウム粉を作製し、その水酸化インジウム粉から酸化インジウム粉を作製した。また、比較例1では、作製した水酸化インジウム粉の粒度分布、及び酸化インジウム粉の製造条件をまとめ、表1に示した。
【0172】
[比較例2]
比較例2では、調整槽20を使用せず電解槽10のみで電解を実施し、撹拌棒21、pH電極22、ヒーター23及び冷却器24を、電解槽10内に設置した。比較例2では、電解槽10内の撹拌棒21の回転数を、300rpmとした以外は実施例1と同様にして、水酸化インジウム粉を作製し、その水酸化インジウム粉から酸化インジウム粉を作製した。また、比較例2では、作製した水酸化インジウム粉の粒度分布、及び酸化インジウム粉の製造条件をまとめ、表1に示した。
【0173】
[比較例3]
比較例3では、電解電流1Aあたりの電解液の循環量を0.02L/min/A(循環量25.0L/min)とした以外は実施例1と同様にして、水酸化インジウム粉を作製し、その水酸化インジウム粉から酸化インジウム粉を作製した。なお、電解液の総給液量は、電解液の循環量に対して125%であった。また、比較例3では、作製した水酸化インジウム粉の粒度分布、及び酸化インジウム粉の製造条件をまとめ、表1に示した。
【0174】
[比較例4]
比較例4では、電解電流1Aあたりの電解液の循環量を0.15L/min/A(循環量187.2L/min)とした以外は実施例1と同様にして、水酸化インジウム粉を作製し、その水酸化インジウム粉から酸化インジウム粉を作製した。なお、電解液の総給液量は、電解液の循環量に対して125%であった。また、比較例4では、作製した水酸化インジウム粉の粒度分布、及び酸化インジウム粉の製造条件をまとめ、表1に示した。
【0175】
[比較例5]
比較例5では、調整槽20を使用せず電解槽10のみで電解を実施し、撹拌棒21、pH電極22、ヒーター23及び冷却器24を、電解槽10内に設置した。比較例5では、電解槽10内の撹拌棒21の回転数を、60rpmとした以外は実施例5と同様にして、水酸化スズ粉を作製し、その水酸化スズ粉から酸化スズ粉を作製した。また、比較例5では、作製した水酸化スズ粉の粒度分布、及び酸化スズ粉の製造条件をまとめ、表2に示した。
【0176】
[比較例6]
比較例6では、調整槽20を使用せず電解槽10のみで電解を実施し、撹拌棒21、pH電極22、ヒーター23及び冷却器24を、電解槽10内に設置した。比較例6では、電解槽10内の撹拌棒21の回転数を、300rpmとした以外は実施例5と同様にして、水酸化スズ粉を作製し、その水酸化スズ粉から酸化スズ粉を作製した。また、比較例6では、作製した水酸化スズ粉の粒度分布、及び酸化スズ粉の製造条件をまとめ、表2に示した。
【0177】
[比較例7]
比較例7では、電解電流1Aあたりの電解液の循環量を0.02L/min/A(循環量25.0L/min)とした以外は実施例5と同様にして、水酸化スズ粉を作製し、その水酸化スズ粉から酸化スズ粉を作製した。なお、電解液の総給液量は、電解液の循環量に対して125%であった。また、比較例7では、作製した水酸化スズ粉の粒度分布、及び酸化スズ粉の製造条件をまとめ、表2に示した。
【0178】
[比較例8]
比較例8では、電解電流1Aあたりの電解液の循環量を0.15L/min/A(循環量187.2L/min)とした以外は実施例5と同様にして、水酸化スズ粉を作製し、その水酸化スズ粉から酸化スズ粉を作製した。なお、電解液の総給液量は、電解液の循環量に対して125%であった。また、比較例8では、作製した水酸化スズ粉の粒度分布、及び酸化スズ粉の製造条件をまとめ、表2に示した。
【0179】
[比較例9]
比較例9では、比較例1により得られた酸化インジウム粉990gと、比較例5により得られた酸化スズ粉10gを用い、混合コールドプレス法により成形体を形成した。次に、比較例9では、得られた成形体を、大気圧中において1400℃で30時間焼結し、酸化インジウム−酸化スズ系焼結体が得られた。比較例9では、得られた焼結体の相対密度をアルキメデス法により測定し、その結果を表3に示した。
【0180】
[比較例10]
比較例10では、比較例3により得られた酸化インジウム粉990gと、比較例7により得られた酸化スズ粉10gを用い、混合コールドプレス法により成形体を形成した。次に、比較例10では、得られた成形体を、大気圧中において1400℃で30時間焼結し、酸化インジウム−酸化スズ系焼結体が得られた。比較例10では、得られた焼結体の相対密度をアルキメデス法により測定し、その結果を表3に示した。
【0181】
【表1】
【0182】
【表2】
【0183】
【表3】
【0184】
表1に示す結果から、実施例1乃至実施例4では、最小径が0.3μm、最大径が1.1μmであり、極めて粒度分布の幅の狭い水酸化インジウム粉が得られることが分かった。
【0185】
一方、比較例1及び比較例2では、調整槽20を使用せず電解槽10のみで電解を行い、比較例3では、電解液の循環量の電解電流1Aあたり0.02L/min/A(循環量25.0L/min)で、それぞれ行った。その結果、表1に示す通り、比較例1乃至比較例3では、実施例1乃至実施例4より粒度分布の幅の広い水酸化インジウム粉が得られることが分かった。
【0186】
また、比較例4では、電解液の循環量の電解電流1Aあたり0.15L/min/A(循環量187.2L/min)で電解を行った。その結果、表1に示す通り、比較例4では、電解液の揮発やミストの飛散が激しく、電解を中止したため、水酸化インジウム粉を得ることができなかった。更に、比較例4では、電解液の揮発やミストの飛散等により、電解装置1周辺の環境の悪化や安全面での問題があることが分かった。
【0187】
表2に示す結果から、実施例5乃至実施例8では、最小径が0.3μm、最大径が3.3μmである、極めて粒度分布の幅の狭い水酸化スズ粉が得られることが分かった。
【0188】
一方、比較例5及び比較例6では、調整槽20を使用せず電解槽10のみで電解を行い、比較例7では、電解液の循環量の電解電流1Aあたり0.02L/min/A(循環量25.0L/min)で、それぞれ行った。その結果、表2に示す通り、比較例5乃至比較例7では、実施例5乃至実施例8より粒度分布の幅の広い水酸化スズ粉が得られることが分かった。
【0189】
また、比較例8では、電解液の循環量の電解電流1Aあたり0.15L/min/A(循環量187.2L/min)で電解を行った。その結果、表2に示す通り、比較例8では、電解液の揮発やミストの飛散が激しく、電解を中止したため、水酸化スズ粉を得ることができなかった。更に、比較例8では、電解液の揮発やミストの飛散等により、電解装置1周辺の環境の悪化や安全面での問題があることが分かった。
【0190】
表3に示す結果から、実施例9及び実施例10では、相対密度が90%以上の極めて高密度の焼結体が得られることが分かった。
【0191】
一方、比較例9及び比較例10では、粒度分布の幅の広い水酸化インジウム粉及び水酸化スズ粉を用いたことにより、酸化インジウム粉及び酸化スズ粉の粒度分布も広くなった。その結果、表3に示す通り、比較例9及び比較例10では、実施例9及び実施例10より相対密度の低い焼結体が得られることが分かった。
【0192】
実施例1乃至実施例10及び比較例1乃至比較例10の結果から、循環手段30を有する電解装置1を用いることで、電極間に電解液11の層流を形成して、その層流により電解液11が一定の流れで循環されるので、電解液11の組成、濃度、pH、液温等を均一にすることができる。このため、粒径の均一性に優れ、粒度分布の幅の狭い水酸化インジウム粉又は水酸化スズ粉を得ることができる。また、このような水酸化インジウム粉及び/又は水酸化スズ粉を用いることで、相対密度が高い酸化インジウム−酸化スズ系焼結体を得ることができ、最終的に、この焼結体により高密度のスパッタリングターゲットの作製が可能となる。
【符号の説明】
【0193】
1 電解装置、10 電解槽、11 電解液、12 アノード(陽極)、13 カソード(陰極)、14 槽底、15a,15b 導線、16 挿通口、17a,17b 槽壁、18 排水口、20 調整槽、21 撹拌棒、22 pH電極、23 ヒーター、24 冷却器、25 薬液タンク、26 定量ポンプ、27 槽底、28 送液口、30 循環手段、31 供給ポンプ、32 供給ノズル、33 供給流路、34 吸引ノズル、35 吸引ポンプ、36 吸引流路、37 給液管、38 移送口、A 電極間、B,C 間隙、D 供給ノズル内径、L 供給ノズル長さ
図1
図2
図3