(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反応性基含有アクリル樹脂(B−1)中の芳香族ビニル単量体単位の含有率が、前記反応性基含有アクリル樹脂(B−1)100質量%に対して0〜3質量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層フィルム。
前記樹脂組成物(B)が、(B−1)、(B−2)及び(B−3)の合計100質量%に対して、(B−1)を10〜90質量%、(B−2)を10〜90質量%、(B−3)を0〜80質量%含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[積層フィルム]
本発明に係る積層フィルムは、フッ素系樹脂を含有するフッ素系樹脂組成物(A)からなるフッ素系樹脂層(I)と、反応性基含有アクリル樹脂(B−1)を含有する樹脂組成物(B)からなるアクリル樹脂層(II)とを備える。ここで、アクリル樹脂層(II)を構成する樹脂組成物(B)に含まれる反応性基含有アクリル樹脂(B−1)は、基材との接着性を発現するための反応性置換基を有している。このため、本発明に係る積層フィルムを貼合用途に用いる場合には、樹脂組成物(B)からなるアクリル樹脂層(II)を被貼合体側に向けて貼合層とし、フッ素系樹脂組成物(A)からなるフッ素系樹脂層(I)を被貼合体とは反対側に向けて表面層とするのが好ましい。
【0028】
[フッ素系樹脂組成物(A)]
まず、フッ素系樹脂層(I)を構成するフッ素系樹脂組成物(A)について説明する。フッ素系樹脂組成物(A)は、例えば、フッ素系樹脂(A−1)と、熱可塑性重合体(A−2)と、添加剤(C)とを含有することができる。フッ素系樹脂組成物(A)は、(A−1)と(A−2)との合計100質量%に対して、(A−1)を50〜100質量%、(A−2)を0〜50質量%含み、更に、(A−1)と(A−2)との合計100質量部に対して、添加剤(C)を0〜20質量部含有することが好ましい。
【0029】
フッ素系樹脂(A−1)の含有率が50質量%以上であれば、フッ素系樹脂層(I)に耐薬品性が付与され、積層フィルム及び該積層フィルムを積層した成形品の耐薬品性が良好となる。熱可塑性重合体(A−2)の含有率が50質量%以下であれば、フッ素系樹脂層(I)に耐薬品性が付与され、積層フィルム及び該積層フィルムを積層した成形品の耐薬品性が良好となる。
【0030】
耐薬品性の観点からは、フッ素系樹脂(A−1)の含有率は高いほどよい。一方で、(A−1)にポリフッ化ビニリデン等の結晶性高分子を用いた場合、結晶化収縮又はアクリル樹脂層(II)との熱収縮率の差により積層フィルムにカールが生じて、取扱い性が低下する可能性がある。その場合、(A−2)を添加することでカールを抑制し積層フィルムの取扱い性を良好なものとすることができる。カール抑制の観点からは(A−2)の含有率が高いほどよい。また、(A−1)にポリフッ化ビニリデン等の比較的柔らかい樹脂を用い、(A−2)にポリメタクリル酸メチル等の比較的硬い樹脂を用いた場合、(A−2)を添加することで表面硬度が上昇し、耐傷付き性が向上する。耐傷付き性の観点からは、(A−2)の含有率が高いほどよい。更に、(A−1)にポリフッ化ビニリデン等の結晶性高分子を用いた場合、フィルムの透明性の低下、曇価の上昇、黄色度の上昇等、光学特性の低下が生じる可能性がある。その場合、(A−2)を添加することで、結晶化度を下げる又は結晶サイズを微細化することで、光学特性を改善することができる。
【0031】
耐薬品性の観点からは、フッ素系樹脂組成物(A)は、(A−1)と(A−2)との合計100質量%に対して、(A−1)を70〜100質量%、(A−2)を0〜30質量%含むことがより好ましい。
【0032】
カール抑制の観点からは、フッ素系樹脂組成物(A)は、(A−1)と(A−2)との合計100質量%に対して、(A−1)を50〜95質量%、(A−2)を5〜50質量%含むことがより好ましく、(A−1)を50〜85質量%、(A−2)を15〜50質量%含むことが更に好ましい。(A−2)の含有率が5質量%以上であれば、カールが抑制され積層フィルムの取扱い性が良好となる。
【0033】
耐傷付き性の観点からは、フッ素系樹脂組成物(A)は、(A−1)と(A−2)との合計100質量%に対して、(A−1)を50〜90質量%、(A−2)を10〜50質量%含むことがより好ましく、(A−1)を50〜75質量%、(A−2)を25〜50質量%含むことが更に好ましい。
【0034】
また、フッ素系樹脂組成物(A)は、(A−1)と(A−2)との合計100質量部に対して、添加剤(C)を0〜10質量部含有することがより好ましく、0〜3質量部含有することが更に好ましい。尚、フッ素系樹脂組成物(A)は、熱可塑性重合体(A−2)及び添加剤(C)を含まなくてもよい。
【0035】
[フッ素系樹脂(A−1)]
フッ素系樹脂(A−1)としては、フッ素置換基を有する単量体のホモポリマー又はコポリマーであれば特に限定されず、エチレン等の非フルオロポリマーを含んでもよい。
【0036】
フッ素置換基を有する単量体の例としては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、1,2−ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等のパーフルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロ(1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロブチルエチレン、3,3,3−トリフルオロプロペン、トリフルオロエチルメタクリレート等のフルオロアルキルメタクリレート、トリフルオロエチルアクリレート等のフルオロアルキルアクリレートが挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0037】
フッ素系樹脂(A−1)としては、耐薬品性及び入手の容易さから、フッ化ビニリデンのホモポリマー又はコポリマーが好ましく、ポリフッ化ビニリデンであるフッ化ビニリデンホモポリマーがより好ましい。具体的には、「KYNAR720」(商品名、アルケマ製)、「KYNAR740」(商品名、アルケマ製)、「KFポリマー T#850」(商品名、(株)クレハ製)、「KFポリマー T#1000」(商品名、(株)クレハ製)、「KFポリマー T#1100」(商品名、(株)クレハ製)が挙げられる。以上は何れもフッ化ビニリデンホモポリマーである。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0038】
溶融成形の容易さから、ASTM D1238に準拠し、230℃、5kgにて測定した場合のフッ素系樹脂(A−1)のMFR(メルトフローレート)は5〜50g/10分が好ましく、10〜30g/10分がより好ましい。該MFRの範囲を満たすフッ素系樹脂(A−1)としては、具体的には「KYNAR720」(商品名、アルケマ製)、「KFポリマー T#850」(商品名、(株)クレハ製)が挙げられる。
【0039】
フッ素系樹脂(A−1)の質量平均分子量は、100,000〜500,000が好ましい。尚、該質量平均分子量は後述する方法で、ジメチルホルムアミド溶液にて測定した値である。
【0040】
[熱可塑性重合体(A−2)]
熱可塑性重合体(A−2)は、フッ素系樹脂(A−1)以外の熱可塑性重合体であり、メタクリル酸アルキルエステルを主成分として含む単量体を重合して得られる重合体であることが好ましい。熱可塑性重合体(A−2)としては、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体を重合して得られる重合体がより好ましい。例えば、熱可塑性重合体(A−2)としては、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル50〜99.9質量%、アクリル酸アルキルエステル0.1〜50質量%、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体0〜49.9質量%を含む単量体(合計100質量%)を重合して得られる重合体を用いることができる。尚、(メタ)アクリル酸はアクリル酸又はメタクリル酸を示す。
【0041】
前記メタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルが挙げられる。この中では、メタクリル酸メチルが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体としては、例えば、スチレン等の芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
熱可塑性重合体(A−2)の製造方法は、特に限定されず、例えば、懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の各種重合法を用いることができる。重合時に、連鎖移動剤、その他の重合助剤等を用いてもよい。連鎖移動剤は特に限定されないが、メルカプタン類が好ましい。
【0045】
熱可塑性重合体(A−2)の質量平均分子量は、フィルム原料樹脂の溶融時に適度な伸びが生じ、製膜性が良好である観点から、400,000未満であることが好ましい。また、該質量平均分子量は、フィルムが脆くならないためにフィルム製膜時及び取扱い時にフィルム切れが起きにくくなる観点から、10,000以上であることが好ましい。尚、該質量平均分子量は後述する方法により測定した値である。
【0046】
[添加剤(C)]
添加剤(C)は、フッ素系樹脂(A−1)及び熱可塑性重合体(A−2)以外の化合物であり、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃向上剤、発泡剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤が挙げられる。
【0047】
これらの中では、添加剤(C)としては、フィルムの製膜性を確保する観点から加工助剤が好ましい。加工助剤は特に限定されないが、(A−2)以外の熱可塑性重合体からなる加工助剤が好ましく、メタクリル酸メチルと、メタクリル酸メチル以外の単量体とを重合して得られる重合体がより好ましい。
【0048】
加工助剤としては、例えば、メタクリル酸メチル50〜100質量%と、メタクリル酸メチル以外の単量体0〜50質量%との合計100質量%を重合して得られる重合体を用いることができる。加工助剤を用いることによってフィルムの製膜性が向上するため、特に高いレベルでの厚み精度や製膜速度が必要となる場合に有効である。
【0049】
熱可塑性重合体からなる加工助剤の質量平均分子量は、厚み精度が良好なフィルムが得られる観点から400,000以上であることが好ましく、500,000〜5,000,000がより好ましく、700,000〜2,000,000が更に好ましい。尚、質量平均分子量は後述する方法により求めた値である。
【0050】
メタクリル酸メチル以外の単量体としては、例えば、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
熱可塑性重合体からなる加工助剤の製造方法としては、乳化重合法が好ましい。熱可塑性重合体からなる加工助剤は、例えば乳化重合法によって製造した重合体ラテックスを、各種凝固剤により分離回収する、又は噴霧乾燥により固形分を分離回収することにより得ることができる。
【0052】
加工助剤の使用量は、フッ素系樹脂(A−1)と熱可塑性重合体(A−2)との合計100質量部に対して、0〜20質量部であることが好ましい。該使用量が20質量部以下である場合、フッ素系樹脂組成物(A)の粘度が適度となり、良好なフィルム製膜性が得られる。
【0053】
基材を保護するために耐候性を付与する観点から、添加剤(C)が紫外線吸収剤であることが好ましい。該紫外線吸収剤の分子量は、300以上が好ましく、400以上がより好ましい。該分子量が300以上である場合、射出成形金型内で真空成形又は圧空成形を施す際に紫外線吸収剤が揮発しにくく、金型汚れが発生しにくい。紫外線吸収剤の種類は特に限定されないが、分子量400以上のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、分子量400以上のトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。分子量400以上のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、市販品では、例えば「チヌビン234」(商品名、チバガイギー社製)、「アデカスタブLA−31」(商品名、(株)ADEKA製)が挙げられる。分子量400以上のトリアジン系紫外線吸収剤としては、市販品では、例えば「チヌビン1577」(商品名、チバガイギー社製)が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。該紫外線吸収剤の添加量は、耐候性の観点から、フッ素系樹脂(A−1)と熱可塑性重合体(A−2)との合計100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、0〜5質量部がより好ましい。紫外線吸収剤を添加すれば、耐候性が良好となるが、フッ素系樹脂(A−1)及び熱可塑性樹脂(A−2)との相溶性が不良な場合は外観が良好でなくなる場合があるため、紫外線吸収剤を添加しなくてもよい。
【0054】
また、耐候性をより向上させる観点から、添加剤(C)としてヒンダードアミン系安定剤等のラジカル捕捉剤を紫外線吸収剤と併用することが好ましい。該ラジカル捕捉剤としては、市販品では、例えば、「Chimassorb2020」(商品名、BASF製)、「アデカスタブ LA−57」、「アデカスタブ LA−62」、「アデカスタブ LA−67」、「アデカスタブ LA−63」、「アデカスタブ LA−68」(以上いずれも商品名、(株)ADEKA製);「サノールLS−770」、「サノールLS−765」、「サノールLS−292」、「サノールLS−2626」、「サノールLS−1114」、「サノールLS−744」(以上いずれも商品名、三共ライフテック(株)製)が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。該ラジカル捕捉剤の添加量は、耐ブリードアウト性の観点から、フッ素系樹脂(A−1)と熱可塑性重合体(A−2)との合計100質量部に対して、0〜10質量部が好ましく、0〜5質量部がより好ましい。ラジカル捕捉剤を添加すれば耐候性が良好となるが、フッ素系樹脂(A−1)及び熱可塑性樹脂(A−2)との相溶性が不良な場合は外観が良好でなくなる場合がある。またフッ素系樹脂(A−1)はヒンダードアミン系安定剤と反応して着色する場合がある。これらの観点から、ラジカル捕捉剤を添加しなくてもよい。
【0055】
[樹脂組成物(B)]
次に、アクリル樹脂層(II)を構成する樹脂組成物(B)について説明する。樹脂組成物(B)は、以下の(1)又は(2)で表現される。
【0056】
(1):反応性基含有アクリル樹脂(B−1)と、(B−1)以外のアクリルゴム粒子(B−2)と、(B−1)及び(B−2)以外の質量平均分子量が400,000未満である熱可塑性樹脂(B−3)との合計100質量%に対して、(B−1)を10〜100質量%、(B−2)を0〜90質量%、(B−3)を0〜90質量%含有し、更に、(B−1)、(B−2)及び(B−3)の合計100質量部に対して、(B−1)、(B−2)及び(B−3)以外の添加剤(C)を0〜50質量部含有し、反応性基含有アクリル樹脂(B−1)がアミノ基又はメチロール基に対する反応性置換基を有する単量体単位を含有し、樹脂組成物(B)100質量%に対する反応性置換基を有する単量体単位の含有率が4質量%以上である。
【0057】
(2):反応性基含有アクリル樹脂(B−1)と、(B−1)以外のアクリルゴム粒子(B−2)と、(B−1)及び(B−2)以外の質量平均分子量が400,000未満である熱可塑性樹脂(B−3)との合計100質量%に対して、(B−1)を10〜100質量%、(B−2)を0〜90質量%、(B−3)を0〜90質量%含有し、更に、(B−1)、(B−2)及び(B−3)の合計100質量部に対して、(B−1)、(B−2)及び(B−3)以外の添加剤(C)を0〜50質量部含有し、反応性基含有アクリル樹脂(B−1)が水酸基を有する単量体単位を含有し、樹脂組成物(B)の水酸基価が15〜300mgKOH/gである。
【0058】
前記(1)及び前記(2)において、樹脂組成物(B)は、接着性及びフィルム取扱い性、耐傷付き性の観点から、(B−1)、(B−2)及び(B−3)の合計100質量%に対して、(B−1)を10〜90質量%、(B−2)を10〜90質量%、(B−3)を0〜80質量%含有することが好ましく、(B−1)を20〜90質量%、(B−2)を10〜80質量%、(B−3)を0〜70質量%含有することがより好ましく、(B−1)を40〜90質量%、(B−2)を10〜60質量%、(B−3)を0〜50質量%含有することが更に好ましく、(B−1)を50〜90質量%、(B−2)を10〜50質量%、(B−3)を0〜40質量%含有することが特に好ましい。
【0059】
接着性の観点からは、(B−1)及び(B−2)が多いほど好ましい。(B−1)が多いほどアミノ基又はメチロール基に対する反応性置換基の含有率が増し、接着性が向上する。また、(B−2)が多いほど、アクリル樹脂層(II)内部での破壊が抑制されるために、接着性が向上する。フィルム取扱い性の観点からは、(B−2)が多いほど好ましい。(B−2)が多いほど、アクリル樹脂層(II)の靭性が向上し、積層フィルムの取り扱い性が良好となる。耐傷付き性の観点からは、(B−2)が少ないほど好ましい。(B−2)が少ないほど、鉛筆硬度が上昇し、耐傷付き性が向上する。
【0060】
また、樹脂組成物(B)は、(B−1)、(B−2)及び(B−3)の合計100質量部に対して、添加剤(C)を0〜10質量部含有することが好ましく、0.1〜5質量部含有することがより好ましく、0.1〜3質量部含有することが更に好ましい。
【0061】
尚、樹脂組成物(B)は、アクリルゴム粒子(B−2)、熱可塑性樹脂(B−3)及び添加剤(C)を含まなくてもよい。
【0062】
前記(1)では、反応性基含有アクリル樹脂(B−1)がアミノ基又はメチロール基に対する反応性置換基を有する単量体単位を含有し、その含有率は、樹脂組成物(B)100質量%に対して4質量%以上である。反応性置換基を有する単量体単位を4質量%以上含有することにより、良好な接着性が得られる。より良好な接着性を得る観点から、反応性置換基を有する単量体単位を5質量%以上含有することが好ましく、10質量%以上含有することがより好ましい。反応性置換基を有する単量体単位の含有率の上限は特に限定されないが、50質量%以下とすることができる。尚、この含有率は原料の仕込み量から算出した値である。
【0063】
前記(2)では、反応性基含有アクリル樹脂(B−1)が水酸基を有する単量体単位を含有し、樹脂組成物(B)の水酸基価が15〜300mgKOH/gである。該水酸基価が15mgKOH/g以上であることにより、良好な接着性が得られる。該水酸基価が300mgKOH/g以下であることにより、樹脂組成物(B)の吸水性が低下し、積層フィルム及び該積層フィルムを積層したメラミン化粧板の耐水性が向上する。接着性と耐水性の観点から、該水酸基価は20〜120mgKOH/gがより好ましく、25〜80mgKOH/gが更に好ましい。尚、該水酸基価は後述する方法により算出される値である。また、前記(1)においても、反応性基含有アクリル樹脂(B−1)が水酸基を有する単量体単位を含有し、樹脂組成物(B)の水酸基価が15〜300mgKOH/gであることが好ましく、該水酸基価は20〜120mgKOH/gがより好ましく、25〜80mgKOH/gが更に好ましい。
【0064】
樹脂組成物(B)のゲル分率は、0〜80%が好ましい。ゲル分率が高いほどフィルムの靭性が向上し、フィルムの取扱い性や製膜性が改善する。また、ゲル分率が低いほど樹脂の熱劣化異物の生成が抑制され、フィルム外観が良好となる。フィルム靭性の観点からは、ゲル分率が10〜80%であることがより好ましく、30〜80%が更に好ましい。また、フィルム外観の観点からは、ゲル分率が0〜50%であることがより好ましく、0〜40%が更に好ましい。
【0065】
反応性基含有アクリル樹脂(B−1)のガラス転移温度(Tg)は0〜90℃が好ましく、15〜80℃がより好ましく、20〜75℃が更に好ましく、25〜70℃が特に好ましい。該Tgが0℃以上である場合、製造時又は取扱い時におけるフィルム同士の張り付きを防止することができ、作業性が良好である。また、本発明に係る積層フィルムを使用したメラミン化粧板の耐熱性が良好である。また、該Tgが90℃以下である場合、メラミン基材との接着性がより良好となる。尚、該Tgは、反応性基含有アクリル樹脂(B−1)を構成する成分の単独重合体のTgの数値を用い、Fox式により求めることができる。Fox式を以下に示す。
【0066】
1/(273+Tg)=Σ(w
i/(273+Tg
i))
式中、Tgは共重合体(または、その混合物)のTg(℃)、w
iは単量体iの質量分率、Tg
iは単量体iを重合して得られる単独重合体のTg(℃)である。
【0067】
ここで、単独重合体のTgの数値としては、POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION(WILEY INTERSCIENCE)に記載の数値、又は、モノマーメーカーのカタログ値を用いる。尚、単量体が架橋性単量体を含有する場合には、架橋性単量体を除いた単量体について、Tgを求めることとする。
【0068】
[反応性基含有アクリル樹脂(B−1)]
反応性基含有アクリル樹脂(B−1)は、前記(1)又は(2)における特定の反応性置換基を有する単量体単位を含有すれば、特に限定されない。反応性基含有アクリル樹脂(B−1)は、例えば、反応性置換基を有する単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、並びに反応性置換基を有する単量体単位及び芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を含有することができる。具体的には、反応性基含有アクリル樹脂(B−1)は、反応性置換基を有する単量体単位4〜100質量%、芳香族ビニル単量体単位0〜3質量%、並びに反応性置換基を有する単量体単位及び芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位0〜96質量%の合計100質量%を含有することができる。
【0069】
反応性基含有アクリル樹脂(B−1)は、水酸基等のアミノ基又はメチロール基に対する反応性置換基を有する単量体単位を含有するため、メチロールメラミン及びその誘導体を含む材料、具体的には、メラミン化粧板のメラミン樹脂、又は、その前駆体と接触させた状態で加熱反応させることで、メラミン化粧板と接着することができる。
【0070】
前記アミノ基又はメチロール基に対する反応性置換基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、酸無水物基、イミド基、エポキシ基が挙げられる。反応性基含有アクリル樹脂(B−1)は、これらの反応性置換基を一種有していてもよく、二種以上有していてもよい。前記反応性置換基の反応温度は、触媒の有無やpH値等により異なるが、50〜200℃が好ましく、110〜170℃がより好ましい。メラミン化粧板は、通常110〜170℃の温度で作製されるため、反応温度が110〜170℃であれば、本発明に係る積層フィルムをメラミン基材と積層して加熱することで、メラミン化粧版の作製と同時に本発明に係る積層フィルムをメラミン基材と充分に接着させることができる。
【0071】
反応性置換基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等の水酸基を有する単量体;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルオキシアルキルカルボン酸、(メタ)アクリロイルオキシ芳香族カルボン酸等のカルボキシル基を有する単量体;(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル等のアミノ基を有する単量体;(メタ)アクリル酸アルキルアミドアルキルエステル等のアミド基を有する単量体;無水マレイン酸等の酸無水物単量体;マレイミド、アルキルマレイミド等のマレイミド単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有単量体が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記反応性置換基を有する単量体としては、接着性の観点から、反応性置換基として水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、又はエポキシ基を有する単量体であることが好ましい。また、前記反応性置換基を有する単量体としては、反応性置換基として水酸基、カルボキシル基、又はエポキシ基を有する単量体であることが、酸無水物等の加水分解性部位を有さず、乳化重合、懸濁重合等の水系重合において効率的に重合体を製造することができるため、より好ましい。また、前記反応性置換基を有する単量体としては、溶融成形時の架橋防止の観点から、反応性置換基として水酸基を有する単量体であることが更に好ましい。また、前記反応性置換基を有する単量体としては、溶融成形時の架橋を特に低減する観点から、反応性置換基として2級水酸基を有する単量体であることが特に好ましい。
【0072】
反応性置換基として水酸基を有する単量体としては、具体的には、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシ−1−メチルエチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシ−1−メチルエチル、アクリル酸ヒドロキシブチルが好ましい。特に、溶融成形時の架橋反応によりフィルム外観が不良となることを防ぐことができる点で、反応性置換基として水酸基を有する単量体としては、2級水酸基を持つ、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル又はアクリル酸2−ヒドロキシプロピルがより好ましい。更に、メタクリル酸メチル等のその他の単量体との共重合性が良好である点で、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルが特に好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
反応性置換基を有する単量体の使用量は特に限定されないが、反応性基含有アクリル樹脂(B−1)に対し4〜100質量%が好ましい。また、該使用量は、接着性と副反応防止の観点から、4〜80質量%がより好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。該使用量が4質量%以上である場合、接着性がより良好となる。また、該使用量が80質量%以下である場合、非反応性モノマーを20質量%以上併用することで、反応性置換基による副反応を抑制することができる。また、反応性置換基を有する単量体が水溶性である場合、非水溶性モノマーを併用することで水への溶解を抑制することができ、乳化重合、懸濁重合等の水系重合において効率的に重合体を製造することができる。
【0074】
芳香族ビニル単量体の使用量は、反応性基含有アクリル樹脂(B−1)100質量%に対して0〜3質量%であることが好ましい。該使用量が3質量%以下であれば、得られる積層フィルム及びメラミン化粧板の耐候性が良好となる。該使用量は0〜1質量%がより好ましく、0〜0.1質量%がより好ましい。尚、該使用量は少ない方が好ましく、0質量%でもよい。
【0075】
反応性置換基を有する単量体及び芳香族ビニル単量体以外の単量体としては、熱可塑性重合体(A−2)の重合に用いる単量体と同様の単量体を用いることができる。しかしながら、後述するアクリルゴム粒子(B−2)、熱可塑性樹脂(B−3)との相溶性や、フッ素系樹脂層(I)との密着性の観点から、アクリル系単量体、特にメタクリル酸メチルが好ましい。反応性置換基を有する単量体及び芳香族ビニル単量体以外の単量体の使用量は、反応性置換基による架橋等の反応を抑制する観点から、反応性基含有アクリル樹脂(B−1)に対して0〜96質量%であることが好ましく、20〜96質量%であることがより好ましい。尚、該使用量は0質量%でもよい。
【0076】
反応性基含有アクリル樹脂(B−1)の製造方法は特に限定されず、例えば、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、溶液重合等の各種重合法を用いることができる。但し、反応性置換基を有する単量体として、酸無水物、イミド構造を有する単量体を用いる場合には、重合時に加水分解が生じるため、懸濁重合や乳化重合などの水系重合で製造することはできない。重合時には、連鎖移動剤、その他の重合助剤等を使用してもよい。連鎖移動剤としては特に限定されないが、メルカプタン類が好ましい。
【0077】
[アクリルゴム粒子(B−2)]
アクリルゴム粒子(B−2)は、反応性基含有アクリル樹脂(B−1)以外のアクリルゴム粒子であり、内層としての弾性共重合体(b−1)を含む層上に、外層としての硬質重合体(b−2)を含む層が形成された2層以上の多層構造を有するアクリルゴム粒子であることが好ましい。
【0078】
特に、アクリルゴム粒子(B−2)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として得られる1層又は2層以上の構造を有する内層としての弾性共重合体(b−1)を含む層上に、メタクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体をグラフト重合して得られる1層又は2層以上の構造を有する外層としての硬質重合体(b−2)を含む層が形成された、2層以上の多層構造を有するアクリルゴム粒子であることが好ましい。
【0079】
また、アクリルゴム粒子(B−2)は、弾性共重合体(b−1)を含む層と硬質重合体(b−2)を含む層との間に、中間重合体(b−3)を含む層を1層以上備えていてもよい。
【0080】
アクリルゴム粒子(B−2)中の弾性共重合体(b−1)の含有率は、10〜90質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましい。アクリルゴム粒子(B−2)中の硬質重合体(b−2)の含有率は、10〜90質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。アクリルゴム粒子(B−2)中の中間重合体(b−3)の含有率は、0〜35質量%が好ましく、0〜20質量%がより好ましい。中間重合体(b−3)の含有率が35質量%以下の場合、最終重合体のバランスが良好である。
【0081】
弾性共重合体(b−1)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む単量体組成物を重合して得られる重合体であることが好ましい。弾性共重合体(b−1)は、アクリル酸アルキルエステルを含む単量体組成物を重合して得られる重合体であることがより好ましい。
【0082】
該単量体組成物は、更に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体、架橋性単量体を含んでもよい。例えば、弾性共重合体(b−1)に用いる単量体は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル及び炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを80〜100質量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体を0〜20質量%、並びに、架橋性単量体を0〜10質量%含むことができる(合計100質量%)。
【0083】
炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチルが好ましく、Tgの低いアクリル酸アルキルエステルがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
前記アクリル酸アルキルエステルは、弾性共重合体(b−1)を構成する単量体の主成分として用いられる。具体的には、アクリル酸アルキルエステルの使用量は、弾性共重合体(b−1)を構成する全単量体に対し30〜99.9質量%が好ましい。該使用量が30質量%以上である場合、フィルムの成形性が良好である。該使用量は50〜95質量%がより好ましい。
【0085】
尚、該使用量の範囲は、弾性共重合体(b−1)が2層以上の構造を有する場合には、弾性共重合体(b−1)の全体としてのアクリル酸アルキルエステルの使用量を示す。例えば、弾性共重合体(b−1)をハード芯構造にする場合には、1層目(芯部)のアクリル酸アルキルエステルの使用量を30質量%未満にすることもできる。
【0086】
炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。メタクリル酸アルキルエステルの使用量は、弾性共重合体(b−1)を構成する全単量体に対し0〜69.9質量%が好ましく、0〜40質量%がより好ましい。
【0087】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体としては、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な、他のビニル単量体が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体としては、例えば、スチレン、アクリロニトリルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体を用いる場合、その使用量は、弾性共重合体(b−1)を構成する全単量体に対し0〜69.9質量%が好ましく、0〜20質量%がより好ましい。
【0088】
前記架橋性単量体としては、例えば、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジメタクリル酸プロピレングリコール、グラフト交叉剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。架橋性単量体の使用量は、弾性共重合体(b−1)を構成する全単量体に対し0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。アクリルゴム粒子(B−2)の安定性の点で、架橋性単量体としてグラフト交叉剤を用いることが好ましい。
【0089】
前記グラフト交叉剤としては、例えば、α,β−不飽和カルボン酸又は不飽和ジカルボン酸のアリルエステル、メタリルエステル又はクロチルエステル;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが挙げられる。これらの中では、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等のアリルエステルが好ましく、メタクリル酸アリルが優れた効果を有するためより好ましい。
【0090】
このようなグラフト交叉剤は、主として、そのエステルの共役不飽和結合が、アリル基、メタリル基又はクロチル基よりもはるかに早く反応し、化学的に結合する。そして、遅く反応するアリル基、メタリル基又はクロチル基の大部分は、次層重合体の重合中に有効に働き、隣接二層間にグラフト結合を与える。
【0091】
硬質重合体(b−2)は、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体を重合して得られる重合体であることが好ましい。例えば、硬質重合体(b−2)は、弾性共重合体(b−1)の存在下、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル51〜100質量%、及び、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、又は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体0〜49質量%からなる単量体を重合して得られる。炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体としては、弾性共重合体(b−1)の重合に用いる単量体と同様の単量体を用いることができる。
【0092】
中間重合体(b−3)としては、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体、架橋性単量体を含む単量体組成物を重合して得られる重合体が好ましい。中間重合体(b−3)としては、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体、架橋性単量体を含む単量体組成物を重合して得られる重合体がより好ましい。例えば、中間重合体(b−3)としては、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルを10〜90質量%、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを90〜10質量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体を0〜20質量%、及び、架橋性単量体を0〜10質量%含むことができる(合計100質量%)。
【0093】
中間重合体(b−3)に用いる各単量体は、弾性共重合体(b−1)の重合に用いる単量体と同様の単量体を用いることができる。また、中間重合体(b−3)におけるアクリル酸アルキルエステルの含有率(モノマー構成比率)は、弾性共重合体(b−1)におけるアクリル酸アルキルエステルの含有率よりも低く、硬質重合体(b−2)におけるアクリル酸アルキルエステルの含有率よりも高いことが好ましい。
【0094】
アクリルゴム粒子(B−2)の平均粒子径は、0.01〜0.5μmが好ましく、0.08〜0.3μmがより好ましい。特に製膜性、フィルム靭性、引張伸度の観点から、該平均粒子径は0.08μm以上が好ましい。尚、該平均粒子径は、後述する方法により測定した値である。
【0095】
アクリルゴム粒子(B−2)の製造方法としては、特に限定されない。弾性共重合体(b−1)及び硬質重合体(b−2)の製造方法としては、例えば、乳化重合法を用いることができる。また、乳化重合後、最外層を構成する重合体の重合時に、懸濁重合系に転換させる乳化懸濁重合によっても製造できる。重合温度は、用いる重合開始剤の種類や量によって適宜選択されるが、40〜120℃が好ましく、60〜95℃がより好ましい。重合開始剤としては、公知の重合開始剤を使用できる。重合開始剤は、水相及び単量体相のいずれか一方、又は双方に添加することができる。
【0096】
乳化重合法に使用できる乳化剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤が挙げられるが、アニオン系界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等のカルボン酸塩系界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩系界面活性剤;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸ナトリウム等の燐酸エステル塩系界面活性剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0097】
乳化重合によって得られる重合体ラテックスは、例えば、目開きが100μm以下のフィルターで濾過し、その後、酸凝固法、塩凝固法、凍結凝固法、噴霧乾燥法等の方法により分離回収することができる。酸凝固法には、硫酸、塩酸、燐酸等の無機酸、酢酸等の有機酸を使用できる。塩凝固法には、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化カルシウム等の無機塩、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等の有機塩を使用できる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。分離回収した重合体に対し、更に、洗浄、脱水、乾燥等を行うことにより、アクリルゴム粒子(B−2)が得られる。
【0098】
[熱可塑性樹脂(B−3)]
熱可塑性樹脂(B−3)は、反応性基含有アクリル樹脂(B−1)及びアクリルゴム粒子(B−2)以外の質量平均分子量が400,000未満である熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えばフッ素系樹脂組成物(A)の調製に用いられる熱可塑性重合体(A−2)と同様のものを用いることができる。
【0099】
[添加剤(C)]
添加剤(C)としては、(B−1)、(B−2)及び(B−3)以外であれば、フッ素系樹脂組成物(A)の調製に用いられる添加剤(C)と同様のものを用いることができる。
【0100】
添加剤(C)としてヒンダードアミン系安定剤等のラジカル捕捉剤を添加すれば耐候性が良好となる。しかし、フッ素系樹脂(A−1)はヒンダードアミン系安定剤と反応して着色する場合があり、アクリル樹脂層(II)へ添加したヒンダードアミン系安定剤がフッ素系樹脂層(I)へ徐々に移行し、着色する場合があるため、ラジカル捕捉剤を添加しなくてもよい。
【0101】
前記フッ素系樹脂層(I)への移行は、高分子量のヒンダードアミン系安定剤を用いることで抑制することができる。ヒンダードアミン系安定剤の分子量は1000以上が好ましく、2000以上がより好ましい。分子量2000以上のヒンダードアミン系安定剤としては、Chimassorb2020(商品名、BASF製)が挙げられる。
【0102】
本発明に係る積層フィルムの厚さは、100μm以下が好ましく、10〜100μmがより好ましく、20〜75μmが更に好ましく、25〜60μmが特に好ましい。該厚さが10μm以上である場合、積層フィルムの製造が容易であり、得られるメラミン化粧板に充分な耐候性を付与することができる。一方、該厚さが100μm以下である場合、積層フィルムが適度な柔軟性を有するため、得られるメラミン化粧板を切断する際に剥離を防止することができる。また、単位面積あたりの質量の点で、経済的に有利である。更に、製膜性が安定して積層フィルムの製造が容易になる。更に、メラミン化粧板に積層した場合、化粧板の鉛筆硬度が上昇し、耐傷付き性が向上する。
【0103】
フッ素系樹脂層(I)の厚さは、0.5〜30μmが好ましく、2〜10μmがより好ましく、3〜7μmが更に好ましい。フッ素系樹脂層(I)の厚さが0.5μm以上である場合、得られるメラミン化粧板の耐薬品性が良好となる。また、フッ素系樹脂層(I)の厚さが30μm以下である場合、単位面積あたりの質量の点で、経済的に有利である。また、フッ素系樹脂層(I)とアクリル樹脂層(II)との熱収縮率が大きい場合、フッ素系樹脂層が薄いほど積層フィルムのカールが抑制され、取扱い性に優れる。
【0104】
アクリル樹脂層(II)の厚さは、99.5μm以下が好ましく、5〜90μmがより好ましく、10〜70μmが更に好ましく、20〜55μmが特に好ましい。アクリル樹脂層(II)の厚さが99.5μm以下であれば、単位面積あたりの質量の点で、経済的に有利である。また、アクリル樹脂層(II)の厚さが5μm以上であることにより、接着性が向上する。また、アクリル樹脂層(II)が厚いほど、低い紫外線吸収剤濃度で耐候性を付与することができ有利である。即ち、該厚さがこれらの範囲内である場合、充分な耐薬品性と接着性、耐候性を確保することができ、工業的利用価値が高い積層フィルムが得られる。
【0105】
本発明に係る積層フィルムの破断伸度は5%以上であることが、製膜性及びフィルム取扱い性の観点から好ましい。該破断伸度は、20%以上であることがより好ましく、100%以上であることが更に好ましい。該破断伸度の上限は特に限定されないが、例えば1000%以下であることができる。尚、該破断伸度は後述する方法により測定される値である。
【0106】
本発明に係る積層フィルムを製造する方法としては、生産性の観点から、フィードブロックダイ又はマルチマニホールドダイを介した共押出法により、フッ素系樹脂層(I)及びアクリル樹脂層(II)の積層構造を形成する方法が好ましい。また、フッ素系樹脂層(I)及びアクリル樹脂層(II)を、それぞれTダイを用いた溶融押出法等によりフィルム状に成形して、その2種のフィルムを熱ラミネート法により積層する方法を用いることもできる。更に、一方の樹脂層をフィルム状にし、その後他方の樹脂層を溶融押出法により積層する押出ラミネーション法を用いることもできる。溶融押出を行う場合には、表面欠陥の原因となる核や不純物を取り除くために、200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にある樹脂組成物を濾過しながら押出することもできる。
【0107】
更に、樹脂組成物(B)の熱劣化を防止する観点から、フィルム状に成形されたフッ素系樹脂層(I)上に、樹脂組成物(B)を含む溶液を塗布してアクリル樹脂層(II)を積層する塗工法を用いることが好ましい。例えば、樹脂組成物(B)を有機溶媒等の溶媒に溶解させた溶液を、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の印刷方法や、ブレードコート法、ロッドコート法等のコート法によりフッ素系樹脂層(I)上に塗工し、溶媒を除去するために加熱乾燥を行う方法が挙げられる。尚、フィルム状に成形されたアクリル樹脂層(II)上に、フッ素系樹脂組成物(A)を含む溶液を塗布してフッ素系樹脂層(I)を積層してもよい。
【0108】
前記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族系溶媒;ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒;フェノール、クレゾール等のフェノール系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸系溶媒;無水酢酸等の酸無水物系溶媒;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸ブチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶媒;エチルアミン、トルイジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の窒素含有溶媒;チオフェン、ジメチルスルホキシド等の硫黄含有溶媒;ジアセトンアルコール、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2−ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコール、2−アミノエタノール、アセトシアノヒドリン、ジエタノールアミン、モルホリン、1−アセトキシ−2−エトキシエタン、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン等の2種以上の官能基を有する溶媒及び水が挙げられる。中でも、溶解性の観点から、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0109】
塗料としての印刷適性又はコート適性に応じて、樹脂組成物に皮張り防止剤、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、消泡剤、レベリング剤等の溶液性状を改善するための添加剤を添加することができる。更に、樹脂組成物に体質顔料、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤等の塗膜性能を改善するための添加剤を添加することができる。
【0110】
[保護フィルム、メラミン化粧板表面保護用フィルム、メラミン化粧板]
本発明に係る積層フィルムは優れた接着性を有し、各種の基材に接着することができるため、保護フィルムとして好適に使用できる。特に、本発明に係る積層フィルムはメラミン樹脂に対して優れた接着性を示すため、メラミン化粧板表面保護用フィルムとして好適に使用できる。また、本発明に係るメラミン化粧板は、本発明に係る積層フィルムと、メラミン基材とが、フッ素系樹脂層(I)、アクリル樹脂層(II)、メラミン基材の順に積層されている。
【0111】
メラミン化粧板は、机、カウンター等の水平面、壁等の垂直面に使用されており、その構成、製造方法については、化粧板ハンドブック(新建材研究所、昭和48年発行)等に詳しく記載されている。これらのメラミン化粧板は、例えば、化粧板用の化粧紙にメラミン樹脂を含浸させ、乾燥したメラミン樹脂含浸紙と、芯材層である樹脂含浸コア紙とを積層し、更に必要に応じて、化粧紙の柄を保護する目的で、オーバーレイ紙にメラミン樹脂を含浸させ、乾燥したメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙と、反りを抑制する目的で最下層にバランス紙とを積層し、熱圧成形することによって得られる。
【0112】
前記メラミン樹脂含浸紙としては、例えば化粧板用の化粧紙にメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を含浸させ、乾燥した樹脂含浸紙を用いることができる。前記樹脂含浸コア紙としては、例えばクラフト紙、不織布、織布等に、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂又はこれらの混合物を主成分とする樹脂液と、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機充填材とを含むスラリーを含浸させ、乾燥した化粧板用のコア紙を使用できる。熱圧成形は、例えば、樹脂含浸コア紙及びメラミン樹脂含浸紙(メラミン基材)と、本発明に係る積層フィルムとを積層し、温度110〜170℃、圧力5〜10MPa、時間10〜90分の条件で行うことができる。
【0113】
本発明に係る積層フィルムをメラミン基材に貼合する際には、樹脂組成物(B)からなるアクリル樹脂層(II)をメラミン基材側に向けて接するようにして、熱融着させることが好ましい。この方法によれば、接着剤及び粘着剤を用いることなく貼合を行うことができる。貼合は連続的又は非連続的に行うことができ、例えば熱プレス法による非連続貼合法により行うことができる。特に、メラミン化粧板を作製する際、前述したようにメラミン基材と本発明に係る積層フィルムとを積層して熱圧成形すれば、メラミン化粧板作製と同時に積層フィルムを積層することができ、工程数が削減できるため有利である。
【0114】
一方、本発明に係る積層フィルムを使用せず、例えばアクリル樹脂層からなるフィルムを使用した場合、メラミン基材との接着性が低いため、接着剤やプライマーの使用が必要であり、コストが高くなり、生産性が大きく低下する。これに対して本発明に係る積層フィルムを用いる場合、接着剤やプライマーの使用が不要であるため、工数の削減が可能であり、コストが削減できるため、工業的に有利である。
【実施例】
【0115】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されない。実施例において「部」は「質量部」を表す。また、実施例中の略号は以下の通りである。
【0116】
MMA:メチルメタクリレート
MA:メチルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
St:スチレン
HPMA:2−ヒドロキシプロピルメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
HPA:2−ヒドロキシプロピルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
AMA:アリルメタクリレート
BDMA:1,3−ブチレングリコールジメタクリレート
CHP:クメンヒドロペルオキシド
t−BH:t−ブチルハイドロパーオキサイド
t−HH:t−ヘキシルハイドロパーオキサイド
LPO:n−ラウリルパーオキサイド
n−OM:n−オクチルメルカプタン
RS−610NA:モノ−n−ドデシルオキシテトラオキシエチレン燐酸ナトリウム(商品名:「フォスファノールRS−610NA」、東邦化学工業(株)製)
SSL:アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム塩(商品名:「ペレックスSSL」、花王社製)
LA−31:(株)ADEKA製、「アデカスタブLA−31RG」(商品名)
LA−57:(株)ADEKA製、「アデカスタブLA−57」(商品名)
Chimmasorb2020:BASF製、「Cimassorob2020」(商品名)
TV234:BASF製、「Tinuvin234」(商品名)
TV1600:BASF製、「Tinuvin1600」(商品名)
Irg1076:BASF製、「Irganox1076」(商品名)
T850:(株)クレハ製、「KFポリマー T#850」(商品名)
VH:三菱レイヨン(株)製、「アクリペットVH」(商品名)
MD:三菱レイヨン(株)製、「アクリペットMD」(商品名)。
【0117】
実施例における各種物性の測定は、以下の方法に従って実施した。
【0118】
(1)質量平均分子量(Mw)及び分子量分布
重合体の質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量を、以下の方法により求めた。重合体をテトラヒドロフランに溶解させた試料について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(機種名:「HLC−8200」、東ソー(株)製)、カラム(商品名:「TSK−GEL SUPER MULTIPORE HZ−H」、東ソー(株)製、内径4.6mm×長さ15cm×2本)、溶離液(テトラヒドロフラン)を用いて、温度40℃で測定を行った。標準ポリスチレンによる検量線から、質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量を求めた。更に、下記式により分子量分布を算出した。
【0119】
分子量分布=(質量平均分子量)/(数平均分子量)。
【0120】
(2)ガラス転移温度(Tg)
ポリマーハンドブック[Polymer HandBook(J.Brandrup,Interscience,1989)]に記載されている値又はモノマーメーカーのカタログ値を用いてFOXの式から算出した。
【0121】
(3)平均粒子径
アクリルゴム粒子(B−2)の平均粒子径は、乳化重合で得られた重合体のポリマーラテックスの最終粒子径を、光散乱光度計(製品名:「DLS−700」、大塚電子(株)製)を用い、動的光散乱法で測定した。
【0122】
(4)全光線透過率、曇価、黄色度、色差及び白度
全光線透過率はJIS K7361−1、曇価はJIS K7136、黄色度はJIS K7103、色差はJIS Z8730、白度はJIS Z8715に準拠して評価した。
【0123】
(5)メラミン基材硬化温度
DSC6200(製品名、SIIナノテクノロジー製)を用いて、メラミン基材を窒素気流下、25℃から200℃まで10℃/分で昇温した際の吸熱ピーク温度を測定して、メラミン基材硬化温度とした。
【0124】
(6)耐水白化性評価
CEN(欧州標準化委員会)規格、EN438−2に従い、100℃、2時間煮沸試験を実施し、煮沸試験前後の白度変化を測定した。
【0125】
(7)密着性評価
室温状態のメラミン化粧板に対し、カッターナイフにより1mm間隔で100マスの碁盤目の切り込みを入れ、セロハンテープ(ニチバン(株)製)で剥がれ性を確認した。この試験を前記煮沸試験前後に行い、マスが全く剥がれない場合を○、1個以上9個以下のマスが剥がれる場合を△、10個以上のマスが剥がれる場合を×と評価した。
【0126】
(8)フッ素系樹脂層(I)及びアクリル樹脂層(II)の厚さ
積層フィルムを適当な大きさに切り出し、反射分光膜厚計 FE3000(商品名、大塚電子(株)製)を用いて、フッ素系樹脂層(I)及びアクリル樹脂層(II)の厚さを測定した。
【0127】
(9)水酸基価
まず、以下の方法によりサンプルの酸価を求めた。サンプルをアセトンに溶解し、フェノールフタレインを指示薬として、0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定した。また、サンプルを使用しない他は同様の操作で空試験を実施し、以下の式から酸価を求めた。
【0128】
酸価=(A−B)×f×56.1×0.1/S
f:0.1mol/Lエタノール性水酸化カリウムの力価
S:サンプル量(g)
A:滴定に用いたエタノール性水酸化カリウム量(ml)
B:空試験に用いたエタノール性水酸化カリウム量(ml)。
【0129】
次に、サンプルを無水酢酸及びピリジンに溶解させ、アセチル化を行った後、フェノールフタレインを指示薬として、0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定した。また、サンプルを使用しない他は同様の操作で空試験を実施し、以下の式から水酸基価を求めた。
【0130】
水酸基価=(B−A)×f×56.1×0.5/S+酸価
f:0.5mol/Lエタノール性水酸化カリウムの力価
S:サンプル量(g)
A:滴定に用いたエタノール性水酸化カリウム量(ml)
B:空試験に用いたエタノール性水酸化カリウム量(ml)。
【0131】
(10)カールの評価
得られた積層フィルムを、20cm四方に切り出し、フッ素系樹脂層(I)を上面として平滑なガラス板上に置いて、25℃、湿度50%にて6時間保持し、フィルム端部の状態を目視観察した。端部がガラス面に接しているものを○、端部がガラス面から浮いているものを△、端部がカールして積層フィルム上面に接しているものを×とした。
【0132】
(11)アセトン試験
メラミン化粧板の表面にアセトンを滴下し、1分後に布で拭き取った後に外観を目視観察した。痕跡の無いものを「1」、微かに痕跡が見られたものを「2」、明確に痕跡があり、白化が見られたものを「3」、明確に痕跡があり、表面に僅かに凹凸が生じたものを「4」、表面に明確な凹凸が生じたものを「5」とした。
【0133】
(12)塗装試験
メラミン化粧板の表面を塗装スプレー(商品名:シリコンラッカースプレー 黒色、(株)カンペパピオ製)を用いて塗装した後、乾燥速度を調整するために、5分間塗装箇所にシャーレを裏向きに載せて密閉し、その後、室温で1時間以上乾燥させた。その後、拭き取りスプレー(商品名:KSR−300、ABC商会製)を用いて塗装を除去した後に外観を目視観察した。痕跡の無いものを「1」、微かに痕跡が見られたものを「2」、明確に痕跡が見られたものを「3」とした。
【0134】
(13)破断伸度
得られた積層フィルムを、製膜方向を長辺として150mm×15mmに切り出し、オートグラフ引張試験機(商品名、島津製作所(株)製)を用いて、チャック間距離100mm、引張速度50mm/分にて引張試験を実施し、積層フィルムの破断伸度を測定した。
【0135】
(14)鉛筆硬度
得られた積層フィルムをアクリル樹脂板L001(商品名、三菱レイヨン(株)製)にアクリル樹脂層(II)が接するように積層し、熱プレスで接着した。得られた積層板を、JIS K−5600−5−4に従い、電動鉛筆引っかき硬度試験機553−M1(商品名、安田精機製作所製)及び、ユニ(商品名、三菱鉛筆(株)製)を用いて評価した。
【0136】
(15)耐候性評価
スーパーキセノンウェザーメーター SX75(商品名、スガ試験機(株)製)を用い、照射強度60W/m
2(300〜400nm)、フィルター#275にて、照射(63℃、50%RH)102分、照射+噴霧(95%RH)18分の、計120分を1サイクルとして、メラミン化粧板及び積層フィルム単独に対して、フッ素系樹脂層(I)側を試験面として、3000時間の試験を実施した。試験前後でのメラミン化粧板のフィルム密着性及び色差変化と積層フィルム単独での黄色度変化を、上記と同様に評価した。
【0137】
(16)積層フィルム外観
得られた積層フィルムをA4サイズに切り出し、メック(株)製フィッシュアイカウンターを用いて、表面積0.01mm
2以上のフィッシュアイを選択した後、顕微鏡観察により、選択したフィッシュアイのうち熱劣化に起因するもの、すなわち異物由来でないもの、言い換えると輪郭のないものを計数した。検査は0.04m
2実施し、1m
2あたりの数値に換算した。フィッシュアイ数が100個未満のものを「○」、100個以上500個未満のものを「△」、1000個以上のものを「×」とした。
【0138】
(17)ゲル分率
得られた樹脂組成物(B)0.5gにアセトン50mlを加え、65℃で4時間撹拌した。その後、4℃、14000rpmで30分間遠心分離し、上澄みを取り除いた後に再度アセトンを50ml加え、再度同条件で遠心分離した。上澄みを除いた後、沈降したゲル部分を8時間真空乾燥して質量を測定し、以下の式によりゲル分率を算出した。
【0139】
ゲル分率(%)=ゲル部分の質量(g)/0.5×100。
【0140】
<製造例1〜4:フッ素系樹脂組成物(A1)〜(A4)の製造>
製造例1では、フッ素系樹脂(A−1)としてT850を90部と、熱可塑性重合体(A−2)であるVH10部とを混合した重合体混合物100部に対し、添加剤(C)としてIrg1076を0.1部加え、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。次いで、これを35mmφのスクリュー型2軸押出機(L/D=26)を用いて、シリンダー温度200℃〜240℃、ダイ温度240℃の条件下で溶融混練し、ペレット化して、フッ素系樹脂層(I)用のフッ素系樹脂組成物(A1)を得た。
【0141】
また、製造例2〜4では、T850とVHの配合量を表1に示す値に変更した以外は、製造例1と同様にして、フッ素系樹脂層(I)用のアクリル樹脂組成物(A2)〜(A4)を得た。
【0142】
【表1】
【0143】
<製造例5〜10:反応性基含有アクリル樹脂(B−1A)〜(B−1F)の製造>
製造例5では、撹拌機、還流冷却器、及び窒素ガス導入口等の付いた反応容器内に、以下の成分の混合物を仕込んだ。
【0144】
MMA 70部
BA 15部
HPMA 15部
n−OM 0.17部
LPO 0.4部
メチルメタクリレート/メタクリル酸塩/メタクリル酸エチルスルホン酸塩の共重合体 0.02部
硫酸ナトリウム 0.3部
イオン交換水 145部。
【0145】
容器内を充分に窒素ガスで置換し、その後撹拌しながら75℃まで加熱し、窒素ガス気流中で重合反応を進行させた。2時間後に95℃に昇温して更に60分保持して重合を完結させた。得られた重合体ビーズを、脱水、乾燥して反応性基含有アクリル樹脂(B−1A)を得た。
【0146】
製造例6〜10では、用いる成分を表2に示す通りに変更した以外は、製造例5と同様にして、反応性基含有アクリル樹脂(B−1B)〜(B−1F)を得た。尚、表2には記載されていないが、LPO、メチルメタクリレート/メタクリル酸塩/メタクリル酸エチルスルホン酸塩の共重合体、硫酸ナトリウム及びイオン交換水の配合量は製造例5と同様である。
【0147】
【表2】
【0148】
<製造例11:アクリルゴム粒子(B−2A)の製造>
窒素雰囲気下、還流冷却器付き反応容器に脱イオン水206部を入れ、80℃に昇温した。以下に示す成分(i)を添加し、撹拌を行いながら以下に示す成分(ii)(弾性共重合体(b−1)用原料の一部)の1/10を仕込み、15分保持した。次いで、残りの成分(ii)を、水に対する単量体混合物の増加率が8質量%/時間となるように連続的に添加した。その後1時間保持して重合を行い、重合体ラテックスを得た。続いて、該重合体ラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部を加えた。その後15分保持し、窒素雰囲気下80℃で撹拌を行いながら、以下に示す成分(iii)(弾性共重合体(b−1)用原料の一部)を、水に対する単量体混合物の増加率が4質量%/時間となるように連続的に添加した。その後2時間保持して重合を行い、弾性共重合体(b−1)のラテックスを得た。
【0149】
この弾性共重合体(b−1)のラテックスに、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部を加えた。その後15分保持し、窒素雰囲気下80℃で撹拌を行いながら、以下に示す成分(iv)(硬質重合体(b−2)用原料)を、水に対する単量体混合物の増加率が10質量%/時間となるように連続的に添加した。その後1時間保持して重合を行い、アクリルゴム粒子(B−2A)のラテックスを得た。アクリルゴム粒子(B−2A)の平均粒子径は0.28μmであった。
【0150】
このアクリルゴム粒子(B−2A)のラテックスを、目開き50μmのフィルターで濾過した。次いで、酢酸カルシウムを用いて凝析、凝集、固化反応を行い、濾過、水洗し、乾燥してアクリルゴム粒子(B−2A)を得た。
【0151】
(i)
ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.4部
硫酸第一鉄 0.00004部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.00012部
(ii)
MMA 11.25部
BA 12.5部
St 1.25部
AMA 0.094部
BDMA 0.75部
t−BH 0.044部
RS−610NA 0.75部
(iii)
BA 30.9部
St 6.6部
AMA 0.66部
BDMA 0.09部
CHP 0.11部
RS−610NA 0.6部
(iv)
MMA 35.6部
MA 1.9部
n−OM 0.11部
t−BH 0.06部。
【0152】
<製造例12:アクリルゴム粒子(B−2B)の製造>
窒素雰囲気下、還流冷却器付き反応容器に脱イオン水153部を入れ、80℃に昇温した。以下に示す成分(i)を添加し、撹拌を行いながら以下に示す成分(ii)(弾性共重合体(b−1)用原料)を添加した。その後1時間保持して重合を行い、重合体ラテックスを得た。続いて、該重合体ラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1部を加えた。その後15分保持し、窒素雰囲気下80℃で撹拌を行いながら、以下に示す成分(iii)(硬質重合体(b−2)用原料)を添加した。その後1時間保持して重合を行い、アクリルゴム粒子(B−2B)のラテックスを得た。アクリルゴム粒子(B−2B)の平均粒子径は0.12μmであった。
【0153】
このアクリルゴム粒子(B−2B)のラテックスを、目開き50μmのフィルターで濾過した。次いで、酢酸カルシウムを用いて凝析、凝集、固化反応を行い、濾過、水洗し、乾燥してアクリルゴム粒子(B−2B)を得た。
【0154】
(i)
ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.4部
硫酸第一鉄 0.00004部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.00012部
(ii)
BA 50.9部
St 11.6部
AMA 0.56部
t−BH 0.19部
RS−610NA 1.0部
(iii)
MMA 35.6部
MA 1.9部
t−BH 0.056部
n−OM 0.16部
RS−610NA 0.25部。
【0155】
<製造例13:アクリルゴム粒子(B−2C)の製造>
下記成分(i)をホモミキサーにて10000rpmで5分間予備分散した後、ゴーリンホモジナイザーにより20MPaの圧力で乳化、分散させ、2EHAのプレエマルションを調製した。
【0156】
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、前記2EHAのプレエマルションを投入し、t−BH 0.5部を投入した後、窒素置換及び混合撹拌を行いながらフラスコ内の温度を50℃に昇温した。
【0157】
硫酸第一鉄0.002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.006部、ロンガリット0.26部及び蒸留水5部の混合液をフラスコ内に投入した。5時間放置し、重合を完了し、ラテックスを得た。
【0158】
ついで、前記フラスコとは別の、撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた第2の5口フラスコに、前記ラテックスを固形分換算で20部となるように投入し、SSLを固形分として0.7部投入し、更に蒸留水155部を投入した。ついで、下記成分(ii)を投入した。
【0159】
フラスコ内を10分間撹拌し、成分(ii)を前記ラテックスの粒子に含浸させた。更にフラスコ内を10分間攪拌した後、フラスコ内の窒素置換を行い、フラスコ内の温度を50℃に昇温し、硫酸第一鉄0.002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.006部、ロンガリット0.26部及び蒸留水5部の混合液をフラスコ内に投入し、ラジカル重合を開始させた。フラスコ内の温度を70℃で2時間保持し、重合を完了して、2EHA単位を主成分とするゴムとBA単位を主成分とするゴムとのアクリル系複合ゴムラテックスを得た。
【0160】
ついで、前記アクリル系複合ゴムラテックスに、下記成分(iii)を、フラスコ内の温度を70℃に保ったまま30分間かけて滴下した。
【0161】
滴下終了後、フラスコ内の温度を70℃で4時間保持し、アクリルゴム粒子(B−2C)のラテックスを得た。
【0162】
得られたアクリルゴム粒子(B−2C)のラテックスを、7.5質量%酢酸カルシウム水溶液500質量部により凝析させ、90℃で熱処理固化した。その後凝固物を温水で洗浄し、更に乾燥してアクリルゴム粒子(B−2C)の粉体を得た。
【0163】
(i)
2EHA 99.5部
AMA 0.5部
SSL 2部(固形分換算)
蒸留水 195部
(ii)
BA 68部
AMA 1部
t−BH 0.24部
(iii)
MMA 11部
t−BH 0.1部。
【0164】
<製造例14:アクリルゴム粒子(B−2D)の製造>
攪拌機を備えた容器に脱イオン水8.5部を仕込んだ後、撹拌を行いながら以下に示す成分(ii)(弾性共重合体(b−1)用原料の一部)を加え、20分間攪拌を実施して乳化液を調製した。
【0165】
次に、冷却器付き重合容器内に脱イオン水191.5部、以下に示す成分(i)を投入し、70℃に昇温した。次いで、窒素下で攪拌しながら、調製した乳化液を8分間にわたって重合容器内に滴下した後、15分間反応を継続させた。
【0166】
続いて、以下に示す成分(iii)(弾性共重合体(b−1)用原料の一部)を、90分間にわたって前記重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、弾性共重合体(b−1)のラテックスを得た。尚、弾性共重合体(b−1)単独のTgは−48℃であった。
【0167】
続いて、以下に示す成分(iv)を、45分間にわたって前記重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、弾性共重合体(b−1)の上に中間重合体(b−3)を形成した。尚、中間重合体(b−3)単独のTgは20℃であった。
【0168】
続いて、以下に示す成分(v)を、140分間にわたって前記重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、中間重合体(b−3)の上に硬質重合体(b−2)を形成した。以上の工程により、アクリルゴム粒子(B−1D)100部を含むラテックスを得た。尚、硬質重合体(b−2)単独のTgは84℃であった。また、重合後に測定したアクリルゴム粒子(B−1D)の平均粒子径は0.12μmであった。
【0169】
このアクリルゴム粒子(B−1D)のラテックスを、目開き50μmのフィルターで濾過した。次いで、酢酸カルシウムを用いて凝析、凝集、固化反応を行い、濾過、水洗し、乾燥してアクリルゴム粒子(B−1D)を得た。
【0170】
(i)
ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.2部
硫酸第一鉄 0.0001部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.0003部
(ii)
MMA 0.3部
BA 4.5部
AMA 0.05部
BDMA 0.2部
CHP 0.025部
RS−610NA 1.1部
(iii)
MMA 1.5部
BA 22.5部
AMA 0.25部
BDMA 1.0部
CHP 0.016部
(iv)
MMA 6.0部
BA 4.0部
AMA 0.075部
CHP 0.013部
(v)
MMA 55.2部
BA 4.8部
n−OM 0.22部
t−BH 0.075部。
【0171】
<製造例15:熱可塑性重合体(C1)の製造>
反応容器内に窒素置換したイオン交換水200部を仕込み、乳化剤としてオレイン酸カリウム1部、過硫酸カリウム0.3部を仕込んだ。続いてMMA40部、BA10部、n−OM0.005部を仕込み、窒素雰囲気下65℃にて3時間撹拌し、重合を完結させた。引き続いて、MMA48部及びBA2部からなる単量体混合物を2時間にわたり滴下し、滴下終了後2時間保持し、重合を完結させた。得られたラテックスを0.25質量%硫酸水溶液に添加し、重合体を酸凝析し、その後脱水、水洗、乾燥し、粉体状で重合体を回収した。得られた熱可塑性重合体(C1)の質量平均分子量は1,000,000であった。
【0172】
<製造例16〜28:樹脂組成物(B1)〜(B13)の製造>
製造例16では、反応性基含有アクリル樹脂(B−1)として、製造例5の反応性基含有アクリル樹脂(B−1A)を100部、LA−31を2.1部、製造例15の熱可塑性重合体(C1)を2部、Chimassorb2020を0.45部、Irg1076を0.1部用い、これらをヘンシェルミキサーで混合した。次いで、これを35mmφのスクリュー型2軸押出機(L/D=26)を用いて、シリンダー温度200℃〜240℃、ダイ温度240℃の条件下で溶融混練し、ペレット化して、アクリル樹脂層(II)用の樹脂組成物(B1)を得た。
【0173】
製造例17〜28では、反応性基含有アクリル樹脂(B−1)、アクリルゴム粒子(B−2)、添加剤(C)として、表3に示す通りの材料を用いること以外は、製造例16と同様にして、アクリル樹脂層(II)用の樹脂組成物(B2)〜(B13)を得た。尚、表3において「反応性置換基を有する単量体単位の含有率」は、原料の仕込み量から算出した値である。
【0174】
【表3】
【0175】
<実施例1〜
14、16〜27
、参考例15:積層フィルム及びメラミン化粧板の作製>
実施例1では、T850、製造例17で得たアクリル樹脂層(II)用の樹脂組成物(B2)を80℃で一昼夜乾燥した。シリンダー温度を230℃に設定した30mmφの押出し機でT850を可塑化した。また、シリンダー温度を240℃に設定した400メッシュのスクリーンメッシュを設けた40mmφの押出し機で樹脂組成物(B2)を可塑化した。次いで、250℃に設定した2種2層用フィードブロックダイで、フッ素系樹脂層(I)側が鏡面冷却ロールに接するようにして、T850及び樹脂組成物(B2)を厚さ50μmの積層フィルムに製膜した。フッ素系樹脂層(I)及びアクリル樹脂層(II)の厚さはそれぞれ5μm及び45μmであった。
【0176】
更に、この積層フィルムのアクリル樹脂層(II)面側にメラミン基材を積層し、温度140℃、圧力4MPa、時間20分の条件でプレスしてメラミン化粧板を作製した。得られたメラミン化粧板の評価結果を表4に示す。使用したメラミン基材の硬化温度は94℃であった。
【0177】
また、実施例2〜
14、16〜27
、参考例15では、フッ素系樹脂層(I)用のフッ素系樹脂組成物(A)、アクリル樹脂層(II)用の樹脂組成物(B)として、表4及び表5に示す通りの材料を使用し、フッ素系樹脂層(I)及びアクリル樹脂層(II)の厚さを表4及び表5に示す通りとしたこと以外は、実施例1の操作と同様にして、積層フィルム及びメラミン化粧板を作製した。得られたメラミン化粧板の評価結果を表4及び表5に示す。
【0178】
<比較例1〜3>
フッ素系樹脂層(I)用のフッ素系樹脂組成物(A)、アクリル樹脂層(II)用の樹脂組成物(B)として、表5に示す通りの材料を使用し、フッ素系樹脂層(I)及びアクリル樹脂層(II)の厚さを表5に示す通りとしたこと以外は、実施例1と同様にして、積層フィルム及びメラミン化粧板を作製した。得られたメラミン化粧板の評価結果を表5に示す。比較例2はアクリル樹脂層(II)のみからなる単層のフィルムである。比較例3は積層フィルムを使用しなかった場合である。
【0179】
【表4】
【0180】
【表5】
【0181】
上記の実施例
、参考例及び製造例より、次のことが明らかとなった。実施例1〜
14、16〜27
、参考例15で得られた積層フィルムはメラミン基材との接着性に優れ、これらの積層フィルムを用いたメラミン化粧板は密着性評価で10個以上のマスが剥離することがなかった。更に、これらのメラミン化粧板は、耐薬品性に優れ、塗装試験の際にも外観の変化が抑制されていた。これらの積層フィルム及びメラミン化粧板は接着性及び耐薬品性が良好であり、工業的利用価値が高い。特に、フッ素系樹脂層(I)として、フッ素系樹脂含有率が95%以上である実施例1〜12では、アセトン試験の際にも外観の変化が抑制されており、工業的利用価値がより高い。また、フッ素系樹脂層(I)のフッ素樹脂含有率が95%未満である実施例13
、14、16〜27
、参考例15では、積層フィルムのカールが抑制されており、取扱い性が良好で、鉛筆硬度も高いことから耐傷付き性にも優れており、工業的利用価値がより高い。
【0182】
一方、比較例1で得られた積層フィルムは、樹脂組成物(B10)の反応性置換基を有する単量体単位の含有率が4質量%未満であり、かつ樹脂組成物(B10)の水酸基価が15mgKOH/g未満であるため、メラミン基材との接着性が低く、密着性評価で10個以上のマスが剥離した。該積層フィルムはメラミン化粧板に用いた際容易に剥離し、良好な品質のメラミン化粧板を得ることができなかった。また、比較例2で得られた単層のアクリル樹脂フィルムは、フッ素系樹脂層(I)を有さないため耐薬品性に劣った。
【0183】
この出願は、2014年11月4日に出願された日本出願特願2014−223955を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【0184】
以上、実施形態及び実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。