(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0032】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を
図1〜
図10に基づいて説明する。
【0033】
図1には、第1の実施形態の露光装置100の概略構成が示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、すなわちいわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる)である。この露光装置100は、照明系10、マスクとしてのレチクルRを保持するレチクルステージRST、投影ユニットPU、ウエハステージWST1,WST2を有するウエハステージ装置50、第1、第2のマーク検出系としてのオフアクシス・アライメント系ALG1,ALG2、及びこれらの制御系等を備えている。ウエハステージWST1、WST2上には、基板としてのウエハが載置されるようになっている。
図1では、ウエハステージWST1上にウエハW1が載置され、ウエハステージWST2上にウエハW2が載置されている。
【0034】
前記照明系10は、例えば特開2001−313250号公報及びこれに対応する米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、光源、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、ビームスプリッタ、リレーレンズ、可変NDフィルタ、レチクルブラインド等(いずれも不図示)を含んで構成されている。この照明系10では、レチクルブラインドで規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域をエネルギビームとしての照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとしては、一例としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。また、オプティカルインテグレータとしては、フライアイレンズ、ロッドインテグレータ(内面反射型インテグレータ)あるいは回折光学素子などを用いることができる。この他、照明系10として、例えば特開平6−349701号公報及びこれに対応する米国特許第5,534,970号などに開示される構成を採用しても良い。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記各公報及び対応する米国特許出願公開明細書又は米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
【0035】
前記レチクルステージRST上には、回路パターンなどがそのパターン面(
図1における下面)に形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動部11(
図1では図示せず
図5参照)によって、照明系10の光軸(後述する投影光学系PLの光軸AXに一致)に垂直なXY平面内で微少駆動可能であるとともに、所定の走査方向(ここでは
図1における紙面直交方向であるY軸方向とする)に指定された走査速度で駆動可能となっている。
【0036】
レチクルステージRSTのステージ移動面内の位置は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)116によって、移動鏡15を介して、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出される。ここで、実際には、レチクルステージRST上にはY軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡とX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とが設けられ、これらの移動鏡に対応してレチクルY干渉計とレチクルX干渉計とが設けられているが、
図1ではこれらが代表的に移動鏡15、レチクル干渉計116として示されている。なお、例えば、レチクルステージRSTの端面を鏡面加工して反射面(上述のX移動鏡、Y移動鏡の反射面に相当)を形成しても良い。また、レチクルステージRSTの走査方向(本実施形態ではY軸方向)の位置検出に用いられるX軸方向に伸びた反射面の代わりに、少なくとも1つのコーナーキューブ型ミラー(例えばレトロリフレクタ)を用いても良い。ここで、レチクルY干渉計とレチクルX干渉計の一方、例えばレチクルY干渉計は、測長軸を2軸有する2軸干渉計であり、このレチクルY干渉計の計測値に基づきレチクルステージRSTのY位置に加え、Z軸回りの回転方向(θz方向)の回転も計測できるようになっている。
【0037】
レチクル干渉計116の計測値は、主制御装置20(
図1では不図示、
図5参照)に送られ、主制御装置20では、このレチクル干渉計116の計測値に基づいてレチクルステージRSTのX、Y、θz方向の位置を算出するとともに、この算出結果に基づいてレチクルステージ駆動部11を制御することで、レチクルステージRSTの位置(及び速度)を制御する。
【0038】
レチクルRの上方には、投影光学系PLを介してレチクルR上のレチクルマークと対応する基準マーク板上の基準マークとを同時に観察するための露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)アライメント系から成る一対のレチクルアライメント検出系R
Aa,RAbがX軸方向に所定距離隔てて設けられている。これらのレチクルアライメント検出系RAa,RAbとしては、例えば特開平7−176468号公報及びこれに対応する米国特許第5,646,413号などに開示されるものと同様の構成のものが用いら
れている。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び対応米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
【0039】
前記投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの
図1における下方に配置されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、該鏡筒40内に所定の位置関係で保持された複数の光学素子から成る投影光学系PLとを含んで構成されている。投影光学系PLとしては、例えばZ軸方向の共通の光軸AXを有する複数のレンズ(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられている。この投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍あるいは1/8倍)を有する。このため、照明系10からの照明光ILによってレチクルRの照明領域が照明されると、このレチクルRを通過した照明光ILにより、投影ユニットPU(投影光学系PL)を介してその照明領域内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハ上に形成される。
【0040】
なお、本実施形態の露光装置100では、後述するように液浸法を適用した露光が行われるため、開口数NAが実質的に増大することに伴いレチクル側の開口が大きくなる。このため、レンズのみで構成する屈折光学系においては、ペッツヴァルの条件を満足することが困難となり、投影光学系が大型化する傾向にある。かかる投影光学系の大型化を避けるために、ミラーとレンズとを含んで構成される反射屈折系(カタディ・オプトリック系)を用いても良い。
【0041】
また、本実施形態では、投影光学系PLを構成する最も像面側(ウエハ側)のレンズ(以下、「先端レンズ」と呼ぶ)91とウエハステージWST1又はWST2上のウエハとの間(又は先端レンズ91とウエハステージWST1又はWST2との間)に局所的に液体を供給するための液体給排システム32が設けられている。
図1では、この液体給排ユニットを構成するノズルが、液体給排システム32として代表的に示されている。なお、液体給排システム32の構成等については、後述する。
【0042】
前記ウエハステージ装置50は、ベース盤12と、該ベース盤12の上面の上方に配置されたウエハステージWST1、WST2と、これらのウエハステージWST1、WST2の位置を計測する干渉計18、16を含む位置計測装置としての干渉計システム118(
図5参照)と、ウエハステージWST1、WST2を駆動するウエハステージ駆動部124(
図5参照)と、を備えている。
【0043】
ウエハステージWST1、WST2の底面には、不図示の非接触軸受け、例えば真空予圧型空気静圧軸受け(以下、「エアパッド」と呼ぶ)が複数ヶ所に設けられており、これらのエアパッドからベース盤12の上面に向けて噴出された加圧空気の静圧により、ベース盤12の上面の上方にウエハステージWST1、WST2が数μm程度のクリアランスを介して非接触で浮上支持されている。また、ウエハステージWST1、WST2は、ウエハステージ駆動部124によって、X軸方向(
図1における紙面内左右方向)及びY軸方向(
図1における紙面直交方向)に独立して2次元方向に駆動可能に構成されている。
【0044】
ベース盤12上には、
図2の平面図に示されるように、X軸方向に延びる一対のX固定子としてのX軸リニアガイド86、87がY軸方向に所定間隔を隔てて配置されている。これらのX軸リニアガイド86、87は、例えばX軸方向に沿って所定間隔でかつ交互に配置されたN極磁石とS極磁石の複数の組から成る永久磁石群を内蔵する磁極ユニットによって構成されている。これらのX軸リニアガイド86、87の上方には、各2つのスライダ82,84及び83,85が、対応するX軸リニアガイド86、87を上方から取り囲む状態で非接触で設けられている。すなわち、合計4つのスライダ82、84、83、
85は、X軸リニアガイド86又は87を上方及び側方から囲むような断面逆U字状の形状を有し、対応するX軸リニアガイド86又は87に対して不図示のエアパッドをそれぞれ介して例えば数μm程度のクリアランスを介して浮上支持されている。スライダ82、84、83、85のそれぞれは、例えばX軸方向に沿って所定間隔で配置された電機子コイルをそれぞれ内蔵する電機子ユニットによって構成されている。すなわち、本実施形態では、電機子ユニットから成るスライダ82、84と磁極ユニットから成るX軸リニアガイド86とによって、ムービングコイル型のX軸リニアモータがそれぞれ構成されている。同様にスライダ83、85とX軸リニアガイド87とによって、ムービングコイル型のX軸リニアモータがそれぞれ構成されている。以下においては、上記4つのX軸リニアモータのそれぞれを、それぞれの可動子を構成するスライダ82、84、83、85と同一の符号を用いて、適宜、X軸リニアモータ82、X軸リニアモータ84、X軸リニアモータ83、及びX軸リニアモータ85と呼ぶものとする。
【0045】
上記4つのX軸リニアモータのうち、2つのX軸リニアモータ82、83を構成するスライダは、Y軸方向に延びるY固定子としてのY軸リニアガイド80の長手方向の一端と他端にそれぞれ固定されている。また、残り2つのX軸リニアモータ84、85を構成するスライダは、Y軸方向に延びるY固定子としてのY軸リニアガイド81の一端と他端に固定されている。従って、Y軸リニアガイド80、81は、各一対のX軸リニアモータ82,83、84,85によって、X軸に沿ってそれぞれ駆動されるようになっている。
【0046】
前記Y軸リニアガイド80,81のそれぞれは、例えばY軸方向に沿って所定間隔で配置された電機子コイルをそれぞれ内蔵する電機子ユニットによって構成されている。
【0047】
一方のY軸リニアガイド81は、ウエハステージWST1に形成された開口に挿入状態で設けられている。このウエハステージWST1の上記開口の内部には、例えばY軸方向に沿って所定間隔でかつ交互に配置されたN極磁石とS極磁石の複数の組から成る永久磁石群を有する磁極ユニットが設けられている。この磁極ユニットとY軸リニアガイド81とによって、ウエハステージWST1をY軸方向に駆動するムービングマグネット型のY軸リニアモータが構成されている。同様に、他方のY軸リニアガイド80は、ウエハステージWST2に形成された開口に挿入状態で設けられている。このウエハステージWST2の上記開口の内部には、ウエハステージWST1側と同様の磁極ユニットが設けられている。この磁極ユニットとY軸リニアガイド80とによって、ウエハステージWST2をY軸方向に駆動するムービングマグネット型のY軸リニアモータが構成されている。以下においては、適宜、これらのY軸リニアモータを、それぞれの固定子を構成するリニアガイド81、80と同一の符号を用いて、Y軸リニアモータ81、Y軸リニアモータ80と呼ぶものとする。
【0048】
本実施形態では、X軸リニアモータ82〜85及びY軸リニアモータ80,81を含んで
図5に示されるウエハステージ駆動部124が構成されている。このウエハステージ駆動部124を構成する上記各リニアモータが、
図5に示される主制御装置20によって制御されるようになっている。
【0049】
なお、一対のX軸リニアモータ84,85(又は82,83)がそれぞれ発生する推力を僅かに異ならせることで、ウエハステージWST1(又はWST2)のヨーイングの制御が可能である。
【0050】
本実施形態では、ウエハステージWST1,WST2のそれぞれは、単一のステージとして図示されているが、実際には、Y軸リニアモータ81,80によってそれぞれ駆動されるステージ本体と、該ステージ本体の上部にZ・レベリング駆動機構(例えばボイスコイルモータなど)を介して搭載され、ウエハステージ本体に対してZ軸方向及びX軸回り
の回転方向(θx方向)、Y軸回りの回転方向(θy方向)に相対的に微小駆動されるウエハテーブルと、を備えている。
【0051】
前記ウエハステージWST1上(より正確にはウエハテーブル上)には、
図1に示されるように、ウエハW1を真空吸着等によって保持するウエハホルダH1が設けられている。このウエハホルダH1は、
図3の斜視図に示されるように、平面視(上方から見て)略正方形の本体部70と、この本体部70に上方から重なるようにウエハW1の載置される領域の周囲に配置された4枚の補助プレート72a〜72dと、を備えている。これらの補助プレート72a〜72dの表面は、ウエハW1表面とほぼ同一の高さとされている。なお、補助プレート72a〜72dは、一つの部材で構成しても良い。また、投影光学系PLの像面側に液体Lqを保持可能であれば、ウエハ表面と補助プレート表面との間に段差があっても良い。
【0052】
ウエハステージWST1の上面には、X軸方向の一端(+X側端)にX軸に直交する反射面を有するX移動鏡17XがY軸方向に延設され、Y軸方向の一端(+Y側端)にY軸に直交する反射面を有するY移動鏡17YがX軸方向に延設されている。これらの移動鏡17X,17Yの各反射面には、
図2に示されるように、後述する干渉計システム118(
図5参照)を構成する干渉計からの干渉計ビーム(測長ビーム)が投射され、その反射光を各干渉計で受光することにより、各移動鏡反射面の基準位置(一般には投影ユニットPU側面や、アライメント系ALG1の側面に固定ミラーを配置し、そこを基準面とする)からの変位が計測され、これにより、ウエハステージWST1の2次元位置が計測されるようになっている。移動鏡17X,17Yの上面もウエハW1とほぼ同一の高さ(面一)にしておくのが望ましい。
【0053】
ここで、
図3に示されるように、補助プレート72a〜72dのそれぞれとウエハW1との間には、隙間Dが存在するが、隙間Dの寸法は、0.1〜1mm以下になるように設定されている。また、ウエハW1には、その一部にノッチ(V字状の切欠き)が存在するが、このノッチの寸法も1mm程度であるから、図示は省略されている。
【0054】
また、補助プレート72aには、その一部に円形開口が形成され、その開口内に、基準マーク板FM1が嵌め込まれている。基準マーク板FM1はその表面が、補助プレート72aとほぼ同一面とされている。基準マーク板FM1の表面には、少なくとも一対のレチクルアライメント用の第1基準マーク及び後述するようにアライメント系ALG1により検出される第2基準マーク(いずれも不図示)等が形成されている。
【0055】
前記ウエハステージWST2上(より正確にはウエハテーブル上)には、
図1に示されるように、ウエハW2を真空吸着等によって保持するウエハホルダH2が設けられている。このウエハホルダH2は、前述したウエハホルダH1と同様に構成されている。従って、このウエハホルダH2を構成する1つの補助プレートの一部に形成された円形開口内には、基準マーク板FM2(
図1では不図示、
図2参照)が嵌め込まれている。
【0056】
また、ウエハステージWST2の上面には、X軸方向の一端(−X側端)にX軸に直交する反射面を有するX移動鏡117XがY軸方向に延設され、Y軸方向の一端(+Y側端)にY軸に直交する反射面を有するY移動鏡117YがX軸方向に延設されている。これらの移動鏡117X,117Yの各反射面には、
図2に示されるように、後述する干渉計システム118を構成する干渉計からの干渉計ビーム(測長ビーム)が投射され、その反射光を各干渉計で受光することにより、各移動鏡反射面の基準位置からの変位が計測され、これにより、ウエハステージWST2の2次元位置が計測されるようになっている。
【0057】
なお、例えば、ウエハステージWST1、WST2の端面を鏡面加工して反射面(前述
した移動鏡17X、17Y、117X、117Yの反射面に相当)を形成しても良い。
【0058】
また、ウエハステージWST1、WST2の相互に対向する側の面、例えばウエハステージWST1の−X側面には、その全面に渡って、
図10に示されるように、シール部材93が貼付されている。このシール部材93としては、例えばフッ素ゴム等から成る弾性シール部材が用いられる。
【0059】
なお、ウエハステージWST1の−X側面の代わりに、ウエハステージWST2の+X側面にシール部材93を貼付しても良いし、ウエハステージWST1の−X側面及びウエハステージWST2の+X側面の両方にシール部材93を貼付しても良い。
【0060】
図1に戻り、投影ユニットPUの+X側、−X側にそれぞれ同一距離隔てた位置に、前述したオフアクシス・アライメント系(以下、「アライメント系」と略述する)ALG1、ALG2が、それぞれ配置されている。これらのアライメント系ALG1、ALG2は、実際には、投影ユニットPUを保持する保持部材に取り付けられている。これらのアライメント系ALG1,ALG2としては、例えばウエハ上のレジストを感光させないブロードバンドな検出光束を対象マークに照射し、その対象マークからの反射光により受光面に結像された対象マークの像と不図示の指標(アライメント系ALG1,ALG2内に設けられた指標板上の指標パターン)の像とを撮像素子(CCD等)を用いて撮像し、それらの撮像信号を出力する画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系のセンサが用いられている。なお、アライメント系ALG1,ALG2としては、FIA系に限らず、コヒーレントな検出光を対象マークに照射し、その対象マークから発生する散乱光又は回折光を検出する、あるいはその対象マークから発生する2つの回折光(例えば同次数の回折光、あるいは同方向に回折する回折光)を干渉させて検出するアライメントセンサを単独であるいは適宜組み合わせて用いることは勿論可能である。
【0061】
本実施形態では、アライメント系ALG1は、ウエハステージWST1上のウエハW1に形成されたアライメントマーク及び基準マーク板FM1上に形成された基準マークの位置計測等に用いられる。また、アライメント系ALG2は、ウエハステージWST2上のウエハW2に形成されたアライメントマーク及び基準マーク板FM2上に形成された基準マークの位置計測等に用いられる。
【0062】
これらのアライメント系ALG1,ALG2からの情報は、
図5に示されるように、主制御装置20に供給されるようになっている。
【0063】
次に、干渉計システム118の構成等について、
図2を参照して説明する。この
図2に示されるように、干渉計システム118は、投影光学系PLの投影中心(光軸AX)、アライメント系ALG1,ALG2、それぞれの検出中心を通るY軸に平行な測長軸BI2Y、BI3Y、BI1Yをそれぞれ有する3つのY軸干渉計46、48、44と、投影光学系PLの投影中心(光軸AX)及びアライメント系ALG1,ALG2の検出中心を結ぶX軸に平行な測長軸BI1X,BI2Xをそれぞれ有する2つのX軸干渉計16、18を有している。
【0064】
ここで、ウエハステージWST1が投影光学系PLの光軸直下の位置近傍の領域(第1領域)にあり、そのウエハステージWST1上のウエハに対する露光が行われるときには、X軸干渉計18、Y軸干渉計46によってウエハステージWST1の位置が管理される。以下においては、このX軸干渉計18、Y軸干渉計46それぞれの測長軸によって規定される座標系を第1露光座標系と呼ぶ。
【0065】
また、ウエハステージWST2が投影光学系PLが上記第1領域にあり、そのウエハス
テージWST2上のウエハに対する露光が行われるときには、X軸干渉計16、Y軸干渉計46によってウエハステージWST1の位置が管理される。以下においては、このX軸干渉計16、Y軸干渉計46それぞれの測長軸によって規定される座標系を第2露光座標系と呼ぶ。
【0066】
また、ウエハステージWST1が、アライメント系ALG1の検出中心直下の位置の近傍の領域(第2領域)にあり、そのウエハステージWST1上のウエハに形成されたアライメントマークの検出、例えば後述するウエハアライメントなどが行われるときには、X軸干渉計18、Y軸干渉計48によってウエハステージWST1の位置が管理される。以下においては、このX軸干渉計18、Y軸干渉計48それぞれの測長軸によって規定される座標系を第1アライメント座標系と呼ぶ。
【0067】
また、ウエハステージWST2が、アライメント系ALG2の検出中心直下の位置の近傍の領域(第3領域)にあり、そのウエハステージWST2上のウエハに形成されたアライメントマークの検出、例えば後述するウエハアライメントなどが行われるときには、X軸干渉計16、Y軸干渉計44によってウエハステージWST2の位置が管理される。以下においては、このX軸干渉計16、Y軸干渉計44それぞれの測長軸によって規定される座標系を第2アライメント座標系と呼ぶ。
【0068】
上記の説明からわかるように、本実施形態では、X軸干渉計18、16からの干渉計ビームは、ウエハステージWST1、WST2の移動範囲の全域で常にウエハステージWST1、WST2の移動鏡17X,117Xに、それぞれ当たるようになっている。従って、X軸方向については、投影光学系PLを用いた露光時、アライメント系ALG1、ALG2の使用時等いずれのときにもウエハステージWST1、WST2の位置は、X軸干渉計18、16によって管理される。これらのX軸干渉計18、16は、Y軸方向及びZ軸方向に関して離間した少なくとも3本の光軸を有する多軸干渉計であり、各光軸の出力値は独立に計測できるようになっている。従って、これらのX軸干渉計18、16では、ウエハステージWST1、WST2のX軸方向の位置計測以外に、Y軸回りの回転量(ローリング量)及びZ軸回りの回転量(ヨーイング量)の計測が可能となっている。
【0069】
また、上記Y軸干渉計44,46,48は、例えばZ軸方向に関して離間した各2本の光軸を有する2軸干渉計であり、各光軸の出力値は独立に計測できるようになっている。従って、これらのY軸干渉計44,46,48では、ウエハステージWST1又はWST2のY軸方向の位置計測以外に、X軸回りの回転量(ピッチング量)の計測が可能となっている。
【0070】
また、上述の多軸干渉計は45°傾いてウエハステージWST1,WST2に設置される反射面を介して、投影光学系PLが載置される架台(不図示)に設置される反射面にレーザビームを照射し、投影光学系PLの光軸方向(Z軸方向)に関する相対位置情報を検出するようにしても良い。
【0071】
次に、前記液体給排システム32について、
図4に基づいて説明する。この液体給排システム32は、液体供給装置5、液体回収装置6、液体供給装置5に接続された供給管21,22,27,28、及び液体回収装置6に接続された回収管23,24,29,30等を備えている。
【0072】
前記液体供給装置5は、液体のタンク、加圧ポンプ、温度制御装置、並びに供給管21,22,27,28それぞれに対する液体の供給・停止を制御するための複数のバルブ等を含んで構成されている。各バルブとしては、例えば液体の供給・停止のみならず、流量の調整も可能となるように、流量制御弁を用いることが望ましい。前記温度制御装置は、液体タンク内の液体の温度を、例えば投影ユニットPU等などから成る露光装置本体が収納されているチャンバ(不図示)内の温度と同程度の温度に調整する。
【0073】
前記供給管21は、その一端が液体供給装置5に接続され、その他端が3つに分岐して、各分岐端に先細ノズルから成る供給ノズル21a、21b、21cがそれぞれ形成され(あるいは設けられ)ている。これらの供給ノズル21a、21b、21cの先端は、前述の先端レンズ91(
図1参照)の近傍に位置し、X軸方向に所定間隔を隔ててかつ露光領域IA(前述のスリット上の照明領域と共役な像面上の領域)の+Y側に近接して配置されている。供給ノズル21aを中心として、供給ノズル21b、21cがほぼ左右対称に配置されている。
【0074】
前記供給管22は、その一端が液体供給装置5に接続され、その他端が3つに分岐して、各分岐端に先細ノズルから成る供給ノズル22a、22b、22cがそれぞれ形成され(あるいは設けられ)ている。これらの供給ノズル22a、22b、22cの先端は、先端レンズ91の近傍に位置し、X軸方向に所定間隔を隔ててかつ露光領域IAの−Y側に近接して配置されている。この場合、供給ノズル22a、22b、22cは、露光領域IAを挟んで供給ノズル21a、21b、21cに対向して配置されている。
【0075】
前記供給管27は、その一端が液体供給装置5に接続され、その他端に先細ノズルから成る供給ノズル27aが形成され(あるいは設けられ)ている。この供給ノズル27aの先端は、先端レンズ91の近傍に位置し、露光領域IAの−X側に近接して配置されている。
【0076】
前記供給管28は、その一端が液体供給装置5に接続され、その他端に先細ノズルから成る供給ノズル28aが形成され(あるいは設けられ)ている。この供給ノズル28aの先端は、先端レンズ91の近傍に位置し、露光領域IAの+X側に近接して、かつ露光領域IAを挟んで供給ノズル27aに対向して配置されている。
【0077】
なお、液体を供給するためのタンク、加圧ポンプ、温度制御装置、バルブなどは、その全てを露光装置100で備えている必要はなく、少なくとも一部を露光装置100が設置される工場などの設備で代替することもできる。
【0078】
前記液体回収装置6は、液体のタンク及び吸引ポンプ、並びに回収管23,24,29,30それぞれを介した液体の回収・停止を制御するための複数のバルブ等を含んで構成されている。各バルブとしては、前述した液体供給装置5側のバルブに対応して流量制御弁を用いることが望ましい。
【0079】
前記回収管23は、その一端が液体回収装置6に接続され、その他端が二股に分岐して、各分岐端に末広ノズルから成る回収ノズル23a,23bがそれぞれ形成され(あるいは設けられ)ている。この場合、回収ノズル23a,23bは、供給ノズル22a〜22cの間に交互に配置されている。回収ノズル23a,23bそれぞれの先端及び供給ノズル22a、22b、22cそれぞれの先端は、X軸に平行な同一直線上にほぼ沿って配置されている。
【0080】
前記回収管24は、その一端が液体回収装置6に接続され、その他端が二股に分岐して、各分岐端に末広ノズルから成る回収ノズル24a,24bがそれぞれ形成され(あるいは設けられ)ている。この場合、回収ノズル24a,24bは、供給ノズル21a〜21cの間に交互に、かつ露光領域IAを挟んで回収ノズル23a,23bに、それぞれ対向して配置されている。回収ノズル24a,24bそれぞれの先端及び供給ノズル21a、21b、21cそれぞれの先端は、X軸に平行な同一直線上にほぼ沿って配置されている。
【0081】
前記回収管29は、その一端が液体回収装置6に接続され、その他端が二股に分岐して、各分岐端に末広ノズルから成る回収ノズル29a,29bがそれぞれ形成され(あるいは設けられ)ている。これらの回収ノズル29a,29bは、供給ノズル28aを挟んで配置されている。回収ノズル29a、29b及び供給ノズル28aそれぞれの先端は、Y軸に平行な同一直線上にほぼ沿って配置されている。
【0082】
前記回収管30は、その一端が液体回収装置6に接続され、その他端が二股に分岐して、各分岐端に末広ノズルから成る回収ノズル30a,30bがそれぞれ形成され(あるいは設けられ)ている。これらの回収ノズル30a,30bは、供給ノズル27aを挟んで、かつ露光領域IAを挟んで回収ノズル29a,29bにそれぞれ対向して配置されている。回収ノズル30a、30b及び供給ノズル27aそれぞれの先端は、Y軸に平行な同一直線上にほぼ沿って配置されている。
【0083】
なお、液体を回収するためのタンク、吸引ポンプ、バルブなどは、その全てを露光装置100で備えている必要はなく、少なくとも一部を露光装置100が設置される工場などの設備で代替することもできる。
【0084】
本実施形態では、上記液体として、ArFエキシマレーザ光(波長193nmの光)が透過する超純水(以下、特に必要な場合を除いて、単に「水」と記述する)を用いるものとする。超純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できると共に、ウエハ上に塗布されるレジスト(感光剤)や光学レンズ等に対する悪影響がない利点がある。また、超純水は環境に対する悪影響がないと共に、不純物の含有量が極めて低いため、ウエハの表面及び先端レンズ91の表面を洗浄する作用も期待できる。
【0085】
ArFエキシマレーザ光に対する水の屈折率nは、ほぼ1.44である。この水の中では、照明光ILの波長は、193nm×1/n=約134nmに短波長化される。
【0086】
前記液体供給装置5及び液体回収装置6は、それぞれコントローラを具備しており、それぞれのコントローラは、主制御装置20によって制御されるようになっている(
図5参照)。例えば、
図4中の実線矢印Aで示す方向(−Y方向)にウエハW1(又はW2)を移動させる際には、液体供給装置5のコントローラは、主制御装置20からの指示に応じ、供給管21に接続されたバルブを所定開度で開き、その他のバルブを全閉にして、供給管21に設けられた供給ノズル21a〜21cを介して先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間に−Y方向に向かって水を供給する。また、このとき、液体回収装置6のコントローラは、主制御装置20からの指示に応じ、回収管23に接続されたバルブを所定開度で開き、その他のバルブを全閉にして、回収ノズル23a,23bを介して先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間から液体回収装置6の内部に水を回収する。このとき、主制御装置20は、先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間に供給ノズル21a〜21cから−Y方向に向かって供給される水の量と、回収ノズル23a,23bを介して回収される水の量とが常に等しくなるように、液体供給装置5、液体回収装置6に対して指令を与える。従って、先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間に、一定量の水Lq(
図1参照)が保持される。この場合、先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間に保持された水Lqは、常に入れ替わっている。
【0087】
また、
図4中に点線矢印A’で示す方向(+Y方向)にウエハW1(又はW2)を移動させる際には、液体供給装置5のコントローラは、主制御装置20からの指示に応じ、供給管22に接続されたバルブを所定開度で開き、その他のバルブを全閉にして、供給管22に設けられた供給ノズル22a〜22cを介して先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間に+Y方向に向かって水を供給する。また、このとき、液体回収装置6のコントローラは、主制御装置20からの指示に応じ、回収管24に接続されたバルブを所定開度で開き、その他のバルブを全閉にして、回収ノズル24a,24bを介して先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間から液体回収装置6の内部に水を回収する。このとき、主制御装置20は、先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間に供給ノズル22a〜22cから+Y方向に向かって供される水の量と、回収ノズル24a,24bを介して回収される水の量とが常に等しくなるように、液体供給装置5、液体回収装置6に対して指令を与える。従って、先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間に、一定量の水Lq(
図1参照)が保持される。この場合、先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間に保持された水Lqは、常に入れ替わっている。
【0088】
このように、本実施形態では、露光領域IAを挟んでY軸方向の一側と他側に、互いに組を成す供給ノズル群と回収ノズル群とがそれぞれ設けられているため、ウエハを+Y方向、又は−Y方向のどちらに移動する場合にも、ウエハW1(又はW2)と先端レンズ91との間には水が安定して満たされ続ける。すなわち、いわゆるプラススキャン及びマイナススキャンのいずれの場合にも、先端レンズ91とウエハとの間に安定して水を保持することができるようになっている。
【0089】
また、水がウエハW1(又はW2)上を流れるため、ウエハW1(又はW2)上に異物(レジストからの飛散粒子を含む)が付着している場合であっても、その異物を水により流し去ることができる。また、液体供給装置5により所定の温度に調整された水が供給され、かつこの水が常時入れ替わっているので、露光の際に照明光ILがウエハW1(又はW2)上に照射されても、ウエハと該ウエハ上を流れる水との間で熱交換が行われ、ウエハ表面の温度上昇を抑制することができる。また、本実施形態では、ウエハを移動させる方向と同じ方向に水が流れているため、異物や熱を吸収した液体を先端レンズの直下の露光領域に滞留させることなく回収することができる。
【0090】
また、
図4中に実線矢印Bで示される方向(+X方向)にウエハW1(又はW2)を移動させる際には、液体供給装置5のコントローラは、主制御装置20からの指示に応じ、供給管27に接続されたバルブを所定開度で開き、その他のバルブを全閉にして、供給管27に設けられた供給ノズル27aを介して先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間に+X方向に向かって水を供給する。また、このとき、液体回収装置6のコントローラは、主制御装置20からの指示に応じ、回収管29に接続されたバルブを所定開度で開き、その他のバルブを全閉にして、回収ノズル29a,29bを介して先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間から液体回収装置6の内部に水を回収する。このとき、主制御装置20は、先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間に供給ノズル27aから供される水の量と、回収ノズル29a,29bを介して回収される水の量とが等しくなるように、液体供給装置5、液体回収装置6に対して指令を与える。従って、先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間に、一定量の水Lq(
図1参照)が保持される。この場合、先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間に保持された水Lqは、常に入れ替わっている。
【0091】
また、
図4中に点線矢印B’で示される方向(−X方向)にウエハW1(又はW2)を移動させる際には、液体供給装置5のコントローラは、主制御装置20からの指示に応じ、供給管28に接続されたバルブを所定開度で開き、その他のバルブを全閉にして、供給管28に設けられた供給ノズル28aを介して先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間に−X方向に向かって水を供給する。また、このとき、液体回収装置6のコントローラは、主制御装置20からの指示に応じ、回収管30に接続されたバルブを所定開度で開き、その他のバルブを全閉にして、回収ノズル30a,30bを介して先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間から液体回収装置6の内部に水を回収する。このとき、主制御装置20は、先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間に供給ノズル28aから供される水の量と、回収ノズル30a,30bを介して回収される水の量とが等しくなるように、液体供給装置5、液体回収装置6に対して指令を与える。従って、先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間に、一定量の水Lq(
図1参照)が保持される。この場合、先端レンズ91とウエハW1(又はW2)との間に保持された水Lqは、常に入れ替わっている。
【0092】
これにより、ウエハW1(又はW2)をY軸方向に移動する場合と同様に、ウエハを+X方向、又は−X方向のどちらに移動する場合でも、ウエハと先端レンズ91との間には水が安定して満たされる。従って、いわゆるショット間ステッピングの際に、そのステッピング方向がいずれの方向であっても、ウエハと先端レンズ91との間に水を保持し続けることができる。
【0093】
なお、上では、ウエハと先端レンズとの間に水が保持される場合について説明したが、前述の如く、ウエハ表面とウエハホルダH1、H2の表面とはほぼ同一面となっているので、投影ユニットPU直下の露光領域IAに対応する位置にウエハホルダH1(又はH2)が位置する場合であっても、上記と同様に、水は先端レンズ91とウエハホルダH1(又はH2)、すなわち前述の補助プレートとの間に保持される。また、ステッピングの際に、ウエハと先端レンズ91との間に水を保持できる場合には、水の供給と回収を停止しても良い。
【0094】
なお、X軸方向、又はY軸方向から水の供給及び回収を行うノズルに加えて、例えば斜め方向から水の供給及び回収を行うためのノズルを設けても良い。
また、ウエハの移動方向とは無関係に、供給ノズル21a〜21c,22a〜22c,27a,28aから液体Lqを供給しつづけ、回収ノズル23a,23b,24a,24b,29a,29b,30a,30bから液体Lqを回収し続けるようにしても良い。また、液体給排システムは上述の
図4の形態に限られず、投影光学系PLの像面側に液浸領域を形成することができれば、いろいろな形態を適用することができる。
【0095】
本実施形態の露光装置100では、さらに投影ユニットPUを保持する不図示の保持部材には、照射系90a(
図1では不図示、
図5参照)及び受光系90b(
図1では不図示、
図5参照)から成る、例えば特開平6−283403号公報及びこれに対応する米国特許第5,448,332号等に開示されるものと同様の斜入射方式の多点焦点位置検出系が設けられている。照射系90aは、
図5の主制御装置20によってオンオフが制御される光源を有し、投影光学系PLの結像面に向けて多数のピンホール又はスリットの像を形成するための光束を射出する。この射出された光束は、投影ユニットPUの鏡筒に設けられた不図示のプリズム(照射系90a内の光学系の一部)を介してウエハ表面に光軸AXに対して斜め方向より照射される。一方、ウエハ表面で反射されたそれらの光束の反射光束は、投影ユニットPUの鏡筒に設けられた不図示の別のプリズム(受光系90b内の光学系の一部)で反射され、受光系90b内の受光素子によって受光される。
【0096】
この焦点位置検出系(90a,90b)の受光系90bの出力である焦点ずれ信号(デフォーカス信号)は、主制御装置20に供給されている。主制御装置20は、後述する走査露光時などに、受光系90bからの焦点ずれ信号(デフォーカス信号)、例えばSカーブ信号に基づいてウエハ表面のZ位置及びθx,θy回転を算出し、算出したウエハ表面のZ位置及びθx,θy回転がそれらの目標値に対する差が零となるように、すなわち焦点ずれが零となるように、ウエハステージ駆動部124を介してウエハステージWST1、WST2のZ軸方向への移動、及び2次元方向の傾斜(すなわち、θx,θy方向の回転)を制御することで、照明光ILの照射領域(前述の照明領域と共役な領域)内で投影光学系PLの結像面とウエハの表面とを実質的に合致させるオートフォーカス(自動焦点合わせ)及びオートレベリングを実行する。なお、本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記特開平6−283403号公報及び対応米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
なお焦点位置検出系は、ウエハ表面の位置情報を液体を介して検出するものであっても良いし、液体を介さずに検出するものであっても良い。また焦点位置検出系は、投影光学系PLの像面側でウエハ表面の位置情報を検出するものに限られず、投影光学系PLから離れた場所でウエハ表面の位置情報を検出するものであっても良い。
【0097】
図5には、本実施形態の露光装置100の制御系の主要な構成が示されている。この制御系は、装置全体を統括的に制御するマイクロコンピュータ(又はワークステーション)から成る主制御装置20を中心として構成されている。
【0098】
次に、本実施形態の露光装置100における露光の際の各部の動作を説明する。ここでは、
図2に示されるように、ウエハステージWST1側で露光が行われる場合について説明する。
【0099】
この露光動作の開始に際し、主制御装置20では、事前に行われた例えばエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)などのウエハアライメントの結果等に基づいて、干渉計18,46の計測値をモニタしつつ、X軸リニアモータ84,85及びY軸リニアモータ81を制御してウエハW1の第1ショット領域の露光のための走査開始位置(加速開始位置)にウエハステージWST1を移動する。この露光シーケンスでは、第1露光座標系上でウエハステージWST1の位置は管理される。
【0100】
次に、主制御装置20では、レチクルR(レチクルステージRST)とウエハW1(ウエハステージWST1)とのY軸方向に関する相対走査を開始する。この相対走査に際し、主制御装置20は、前述した干渉計18,46及びレチクル干渉計116の計測値をモニタしつつ、レチクルステージ駆動部11並びにY軸リニアモータ81(及びX軸リニアモータ84,85)を制御する。
【0101】
そして、両ステージRST,WST1がそれぞれの目標走査速度まで加速されると、主制御装置20では、不図示の光源(ArFエキシマレーザ装置)に指示を与えてパルス発光を開始させる。そして、両ステージRST,WST1が等速同期状態に達すると、照明系10からの照明光IL(紫外パルス光)によってレチクルRのパターン領域が照明され始め、走査露光が開始される。この走査露光開始に先立って、上述の如く、光源のパルス発光は開始されているが、主制御装置20により、照明系10内の可動レチクルブラインド(不図示)の所定のブレードがレチクルステージRSTと同期して移動されており、これによって走査露光の開始前にウエハW1に対して不要な露光が行われるのが防止されている。
【0102】
そして、レチクルRのパターン領域の異なる領域が照明光ILで逐次照明され、パターン領域全面に対する照明が完了することにより、ウエハW1上の第1ショット領域の走査露光が終了する。これにより、レチクルRのパターンが投影光学系PLを介してウエハW1上の第1ショット領域に縮小転写される。
【0103】
この場合、走査露光終了後においても、主制御装置20により、照明系10内の可動レチクルブラインド(不図示)がレチクルステージRSTと同期して移動されており、これによってウエハW1の不要な露光が防止されている。
【0104】
上述のようにして、第1ショット領域の走査露光が終了すると、主制御装置20により、X軸リニアモータ84,85及びY軸リニアモータ81を介してウエハステージWST1がX,Y軸方向にステップ移動され、第2ショット領域の露光のための加速開始位置(走査開始位置)に移動される。このショット間ステッピングの際に、主制御装置20では、干渉計18,46の計測値に基づいてウエハステージWST1のX,Y,θz方向の位置変位をリアルタイムに計測する。そして、この計測結果に基づき、主制御装置20では、ウエハステージWST1のXY位置変位が所定の状態になるようにウエハステージWST1の位置を制御する。また、主制御装置20ではウエハステージWST1のθz方向の変位の情報に基づいて、そのウエハ側の回転変位の誤差を補償するようにレチクルステージRST(レチクル微動ステージ)及びウエハステージWST1の少なくとも一方の回転を制御する。
【0105】
そして、ショット間ステッピングが終了すると、主制御装置20により、上述と同様に各部の動作が制御され、ウエハW1上の第2ショット領域に対して上記と同様の走査露光が行われる。
【0106】
このようにして、ウエハW1上のショット領域の走査露光と次ショット露光のためのショット間ステッピング動作とが繰り返し行われ、ウエハW1上の露光対象のショット領域全てにレチクルRのパターンが順次転写される。
【0107】
なお、上述したウエハW1に対するステップ・アンド・スキャン方式の露光動作中、ウエハW1の移動方向の変化に応じて、主制御装置20によって、液体給排システム32の液体供給装置5及び液体回収装置6の各バルブの開閉制御が前述したようにして行われることは勿論である。従って、上述したウエハW1に対するステップ・アンド・スキャン方式の露光動作中、先端レンズ91とウエハW1との間に常時一定量の水が安定して保持された状態が維持される。
【0108】
次に、2つのウエハステージWST1、WST2を用いた並行処理動作について、
図2及び
図6〜
図9を参照しつつ説明する。なお、以下の動作中、主制御装置20によって、投影ユニットPUの直下の第1領域に位置するウエハステージの移動方向に応じて、液体給排システム32の液体供給装置5及び液体回収装置6の各バルブの開閉制御が前述したようにして行われ、投影光学系PLの先端レンズ91の直下には常時水が満たされている。しかし、以下では、説明を分かり易くするため、液体供給装置5及び液体回収装置6の制御に関する説明は省略する。
【0109】
図2には、ウエハステージWST1上のウエハW1に対して前述するようにしてステップ・アンド・スキャン方式で露光が行われ、これと並行してウエハステージWST2側では、アライメント系ALG2の下方の第3領域でウエハW2に対するウエハアライメントが行われている状態が示されている。
【0110】
上述のようにして、ウエハW1に対してステップ・アンド・スキャン方式で露光が行われている間に、ウエハステージWST2側では、以下のような動作が行われている。
【0111】
すなわち、上記のウエハアライメントに先立って、左側ローディング位置において、不図示のウエハ搬送機構とウエハステージWST2との間でウエハ交換が行なわれる。ここで、左側ローディング位置とは、アライメント系ALG2の直下に基準マーク板FM2が位置する位置に定められているものとする。この場合、左側ローディングポジションで、アライメント系ALG2により基準マーク板FM2上の第2基準マークを検出する以前に、主制御装置20によりY軸干渉計44のリセットが実行されている。
【0112】
上記の第2基準マークの検出に際しては、主制御装置20では、アライメント系ALG2を用いて第2基準マークの画像を取り込み、その画像信号に所定の処理を施し、その処
理後の信号を解析することでアライメント系ALG2の指標中心を基準とする第2基準マークの位置を検出する。また、主制御装置20では、その第2基準マークの位置の検出結果とその検出時の干渉計16,44の計測結果とに基づいて、第2アライメント座標系上における第2基準マークの位置座標を算出する。
【0113】
次いで、主制御装置20では、前述の第2アライメント座標系上でウエハステージWST2のXY面内の位置を管理しつつ、アライメント系ALG2を用いてウエハW2上の特定の複数のショット領域(サンプルショット領域)に付設されたアライメントマーク(サンプルマーク)の位置情報(アライメント系ALG2の検出中心に対する位置情報)を検出することで、第2アライメント座標系上でのサンプルマークの位置情報を求める。次いで、主制御装置20は、その検出結果とその特定のショット領域の設計上の位置座標とに基づいて、例えば特開昭61−22249号公報及びこれに対応する米国特許第4,780,617号などに開示されているような統計演算を実行し、ウエハW2上の複数のショット領域の第2アライメント座標系上の位置座標を算出する。すなわち、このようにしてEGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)を行う。そして、主制御装置20では、ウエハW2上の複数のショット領域の第2アライメント座標系上の位置座標から前述した第2基準マークの位置座標を減算することで、複数のショット領域の位置座標を第2基準マークの位置を原点とする位置座標に変換する。なお、本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び対応米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
【0114】
上述した2つのウエハステージWST1,WST2上で並行して行なわれる露光シーケンスとウエハ交換・アライメントシーケンスとは、通常、ウエハ交換・アライメントシーケンスの方が先に終了する。このため、アライメントが終了したウエハステージWST2は、所定の待機位置で待ち状態となる。
【0115】
そして、ウエハステージWST1側において、ウエハW1に対する露光が終了した時点で、主制御装置20では、ウエハステージWST1、WST2を
図6に示される所定位置に向けてそれぞれ移動を開始する。
【0116】
そして、
図6に示される位置に、ウエハステージWST1、WST2を移動した後、主制御装置20では、ウエハステージWST1とウエハステージWST2とを+X方向に同時に駆動する動作を開始する。なお、
図6の状態では、ウエハステージWST1とウエハステージWST2とがウエハステージWST1に設けられた弾性シール部材93を介して接触している。
【0117】
このようにして、主制御装置20により、ウエハステージWST1、WST2が同時に駆動されると、
図6の状態では、投影ユニットPUの先端レンズ91とウエハW1との間に保持されていた水が、ウエハステージWST1、WST2の+X側への移動に伴って、ウエハW1→ウエハステージWST1(より具体的にはウエハホルダH1)→ウエハステージWST2(より具体的にはウエハホルダH2)上を順次移動する。なお、上記の移動の間中、ウエハステージWST1、WST2は
図6の状態と同様に弾性シール部材93を介して相互に接触する位置関係を保っている。
図7には、上記の移動の途中に水(液浸領域)がウエハステージWST1、WST2(ウエハホルダH1、H2)上に同時に存在するときの状態、すなわちウエハステージWST1上からウエハステージWST2上に水が渡される直前の状態が示されている。
【0118】
図7の状態から、更にウエハステージWST1,WST2が+X方向に同時に所定距離駆動されると、
図8に示されるように、ウエハステージWST2上の基準マーク板FM2を含む領域と先端レンズ91との間に水が保持された状態となる。これに先立って、主制
御装置20では、Y軸干渉計46からの干渉計ビームが移動鏡117Yに照射されるようになったいずれかの時点でY軸干渉計46のリセットを実行している。
【0119】
次いで、主制御装置20では、
図9に示される右側ローディング位置に向けてのウエハステージWST1の駆動を開始する。この右側ローディング位置は、アライメント系ALG1の直下に基準マーク板FM1が位置する位置に定められている。
【0120】
上記の右側ローディング位置に向けてのウエハステージWST1の移動開始と並行して、主制御装置20では、一対のレチクルアライメント系RAa,RAb(
図1参照)により照明光ILを用いて基準マーク板FM2上の一対の第1基準マークとそれに対応するレチクルR上のレチクルアライメントマークのウエハ面上投影像の相対位置検出を行なう。このとき、基準マーク板FM2上の一対の第1基準マーク及びレチクルアライメントマークの像の検出は、投影光学系PL及び水を介して行われる。
【0121】
そして、主制御装置20では、この検出された相対位置情報と、先に求めた第2基準マークに対するウエハW2上の各ショット領域の位置情報と、既知の第1基準マークと第2基準マークとの位置関係に基づいて、レチクルRのパターンの投影位置(投影光学系PLの投影中心)とウエハW2上の各ショット領域の相対位置関係を算出する。そして、その算出結果に基づいて、主制御装置20では、前述したウエハW1の場合と同様に、第2露光座標系上でウエハステージWST2の位置を管理しつつ、ステップ・アンド・スキャン方式でウエハW2上の各ショット領域にレチクルRのパターンを転写する。
【0122】
上記のウエハステージWST2側の動作と並行して、ウエハステージWST1側では、右側ローディングポジションで、不図示のウエハ搬送系との間でウエハ交換が行われ、このウエハ交換と同時又はその直後に主制御装置20によりアライメント系ALG1を用いて基準マーク板FM1上の第2基準マークの検出が行われる。主制御装置20では、この第2基準マークの検出に先立ってY軸干渉計48のリセットを実行している。その後、主制御装置20では、第1アライメント時座標系上でウエハステージWST1の位置を管理しつつ、ウエハW2に対してアライメント系ALG1を用いたEGAを行う。
【0123】
以後、主制御装置20により、上述したウエハステージWST1、WST2との並行動作が、繰り返し行われる。
【0124】
上述のウエハステージWST1とウエハステージWST2とを用いた並行処理に際し、一方のウエハステージ上のウエハに対する露光が終了し、他方のウエハステージ上のウエハに対する露光が開始されるまでの間に、一方のウエハステージが投影ユニットPUの直下にある状態(すなわち、一方のウエハステージ上に水が乗った状態)から、他方のウエハステージが投影ユニットPUの直下にある状態(すなわち、他方のステージ上に水が乗った状態)への遷移が行われるが、この際には、前述の如く、ウエハステージWST1、WST2がX軸方向に弾性シール部材93を介して接触した状態(
図10の状態)が維持される。このため、
図7に示されるように、ウエハステージWST1、WST2相互間に水(液浸領域)が跨るような状態であっても、ウエハステージWST1、WST2相互の間隙を介してステージの下方に水(液体)が漏れるのが、弾性シール部材93によって確実に阻止されている。
【0125】
なお、ウエハステージWST1及びウエハステージWST2の移動の途中で、ウエハステージWST1の移動鏡17YにY軸干渉計46、48のいずれからの干渉計ビームが当たらない状態(移動期間、移動区間)が存在し、また、ウエハステージWST2の移動鏡117YにY軸干渉計46、44のいずれからの干渉計ビームも当たらない状態(移動期間、移動区間)が存在するが、本実施形態では、このような場合の両ウエハステージWS
T1、WST2の位置は、不図示のリニアエンコーダによって管理されている。なお、リニアエンコーダでウエハステージの位置を管理しているとき、いずれかのY軸干渉計からの干渉計ビームが移動鏡17Y又は117Yに当たるようになった時点で、Y軸干渉計のリセットが主制御装置20によって実行される。
【0126】
これまでの説明から明らかなように、本実施形態では、ウエハステージ駆動部124によってステージ駆動系の少なくとも一部が構成されている。また、このステージ駆動系と、ウエハステージWST1、WST2とによってステージ装置の少なくとも一部が構成されている。
【0127】
以上詳細に説明したように、本実施形態の露光装置100及び該露光装置が備えるステージ装置、並びに該露光装置100で実行されるウエハステージWST1、WST2の駆動方法によると、液体(水)が供給される投影ユニットPU(投影光学系PL)直下の位置を含む第1領域に一方のウエハステージWST1(又はWST2)が位置する第1の状態から他方のウエハステージWST2(又はWST1)が第1領域に位置する第2の状態に遷移させる際に、ステージ駆動系(124など)により、ウエハステージWST1、WST2がX軸方向に関して弾性シール部材93を介して接触した状態を維持して、ウエハステージWST1、WST2がX軸方向に同時に駆動される。
【0128】
このため、投影光学系PL(投影ユニットPU)とその直下にある特定のウエハステージ(このステージは、移動に伴って一方のウエハステージから他方のウエハステージに切り換わる)との間に水を供給したままの状態で、両ウエハステージの間隙から水を漏らすことなく、一方のウエハステージWST1(又はWST2)が第1領域に位置する第1の状態から他方のウエハステージWST2(又はWST1)が第1領域に位置する第2の状態に遷移させることが可能となる。すなわち、一方のウエハステージ側で投影光学系PLと水(液体)とを介したウエハの露光動作が行われた後、他方のウエハステージ側で投影光学系PLと水とを介したウエハの露光動作を開始するまでの間に、一方のウエハステージと投影光学系PLとの間にウエハが保持された状態から他方のウエハステージと投影光学系PLとの間に水が保持された状態に、水の全回収、再度の供給という工程を経ることなく、遷移させることが可能となる。
【0129】
従って、一方のウエハステージ側での露光動作の終了から他方のウエハステージ側での露光動作開始までの時間を短縮(すなわち、液浸露光でない通常の露光装置(非液浸の露光装置)と同程度に維持)して、スループットの向上を図ることが可能となる。また、投影光学系PLの像面側には、水が常に存在するので、投影光学系PLの像面側の光学部材(例えば先端レンズ91及び前述した多点焦点位置検出系のプリズムなど)に、水染み(ウォーターマーク)が発生するのを効果的に防止することができ、長期に渡って、投影光学系PLの結像性能及び多点焦点位置検出系の検出精度を良好に維持することができる。
【0130】
また、前述した2つのウエハステージWST1、WST2での並行処理動作により、1つのウエハステージを用いて、ウエハ交換、ウエハアライメント及び露光動作を、シーケンシャルに行う従来のシングルウエハステージを備えた露光装置に比べてスループットの向上を図ることが可能である。
【0131】
また、液浸露光により、高解像度かつ空気中と比べて大焦点深度の露光を行うことで、レチクルRのパターンを精度良くウエハ上に転写することができ、例えばデバイスルールとして70〜100nm程度の微細パターンの転写を実現することができる。
【0132】
また、本実施形態では、ウエハステージWST1とウエハステージWST2とが弾性シール部材93を介して接触することから、両ウエハステージの間隙からの水漏れが抑制されるのに加え、弾性シール部材93の緩衝作用により、ウエハステージWST1とウエハステージWST2とが接触する際の衝撃を低減することができる。
【0133】
さらに、本実施形態では、ウエハステージWST1の−X側面及びウエハステージWST2の+X側面に干渉計用の移動鏡を設けないこととしているので、両ウエハステージがX軸方向に関して接近した状態であっても、両ウエハステージ上の移動鏡の反射面同士が近接して向かい合うことがないため、両ウエハステージの位置を、両ウエハステージのX軸方向への同時駆動の間中、干渉計システム118によりモニタすることが可能であるばかりでなく、移動鏡の反射面に水が付着するのを抑制することもできる。
【0134】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を
図11〜
図15(B)に基づいて説明する。ここで、前述した第1の実施形態と同一若しくは同等の部分については、同一の符号を用いるとともにその説明を簡略にし、若しくは省略するものとする。この第2の実施形態の露光装置では、ウエハステージ装置の構成等、及び2つのウエハステージを用いた並行処理動作が前述の第1の実施形態と異なる。また、マーク検出系が1つのみ設けられている点が、前述の第1の実施形態と異なる。その他の部分の構成等は、前述の第1の実施形態と同様になっている。従って、以下では重複説明を避ける観点から相違点を中心として説明する。
【0135】
図11には、本第2の実施形態の露光装置の制御系の構成が示されている。この
図11と
図5とを比べると、本第2の実施形態では、前述した第1の実施形態のウエハステージ駆動部124に代えて、ウエハステージ駆動部124Aが設けられている点が、前述の第1の実施形態と異なることがわかる。
【0136】
本第2の実施形態では、前述したウエハステージ装置50に代えて、
図12に示されるウエハステージ装置50’が設けられている。このウエハステージ装置50’は、
図12に示されるように、ベース盤12と、該ベース盤12の上面の上方(
図12における紙面手前側)に配置されたウエハステージWST1’及びウエハステージWST2’と、これらのウエハステージWST1’、WST2’の位置を計測する位置計測装置としての6つの干渉計151X
1、151X
2、151X
3、151X
4、151Y
1、151Y
2と、ウエハステージWST1’、WST2’を個別に駆動する平面視(上方から見て)略H字状の第1駆動部171、第2駆動部172と、第1接続機構195及び第2接続機構196(
図12では不図示、
図11参照)と、を備えている。
【0137】
ここで、上記6つの干渉計151X
1、151X
2、151X
3、151X
4、151Y
1
、151Y
2によって
図11の干渉計システム118Aが構成され、第1駆動部171、
第2駆動部172、第1接続機構195及び第2接続機構196を含んで、
図11のウエハステージ駆動部124Aが構成されている。
【0138】
前記第1駆動部171は、ウエハステージWST1’(又はWST2’)をX軸方向に駆動するリニアアクチュエータとしてのX軸リニアモータ136Xと、ウエハステージWST1’(又はWST2’)をX軸リニアモータ136Xと一体的に走査方向であるY軸方向に駆動する一対のY軸リニアモータ136Y
1、136Y
2とを備えている。
【0139】
前記X軸リニアモータ136Xは、X軸方向を長手方向とする固定子としてのX軸リニアガイド181と、該X軸リニアガイド181に沿ってX軸方向へ移動するX可動子179とを備えている。
【0140】
X軸リニアガイド181は、X軸方向に伸びる筐体と、その内部に所定間隔でX軸方向に沿って配設された複数の電機子コイルとを有する電機子ユニットから成る。このX軸リ
ニアガイド181の長手方向(X軸方向)の一端部には、一方のY軸リニアモータ136Y
1の可動子(Y可動子)184が固定され、他端部には他方のY軸リニアモータ136
Y
2の可動子(Y可動子)185が固定されている。
【0141】
前記X可動子179は、例えば、X軸リニアガイド181を四方から取り囲むような筒状の形状を有し、その内部にはYZ断面逆U字状の可動子ヨークが設けられている。この可動子ヨークには、その長手方向に沿って複数のN極永久磁石と複数のS極永久磁石とが交互に配置されている。このため、X可動子179の内部空間には、X軸方向に沿って交番磁界が形成されている。
【0142】
この場合、X可動子179と、X軸リニアガイド181との間の電磁相互作用により、X可動子179をX軸方向に駆動する駆動力(ローレンツ力)が発生するようになっている。すなわち、X軸リニアモータ136Xは、ムービングマグネット型の電磁力駆動方式のリニアモータである。
【0143】
X可動子179の−Y側面には、ウエハステージWST1’(又はWST2’)を接続する第1接続機構195(
図12では図示せず、
図11参照)が設けられている。この第1接続機構195としては、例えば電磁石の磁気的吸引力を利用するもの、あるいはウエハステージWST1’(又はWST2’)を機械的に係合する機構などを用いることができる。主制御装置20では、この第1接続機構195を制御してX可動子179にウエハステージWST1’(又はWST2’)を接続し、あるいはその接続を解除するようになっている。なお、接続状態では、ウエハステージWST1’(又はWST2’)がX可動子179によって片持ち支持された状態となる。
図12では、X可動子179がウエハステージWST1’を片持ち支持している状態が示されている。
【0144】
一方のY軸リニアモータ136Y
1は、Y軸方向に延設された固定子としてのY軸リニ
アガイド188と、該Y軸リニアガイド188に沿って移動するY可動子184とを備えている。前記Y軸リニアガイド188としては、前述のX軸リニアガイド181と同様に構成された電機子ユニットが用いられている。また、Y可動子184としては、XZ断面逆U字状の形状ではあるが、前述のX可動子179と同様に構成された磁極ユニットが用いられている。すなわち、Y軸リニアモータ136Y
1は、ムービングマグネット型の電
磁力駆動方式のリニアモータである。
【0145】
他方のY軸リニアモータ136Y
2は、Y軸方向に延設された固定子としてのY軸リニ
アガイド189と、該Y軸リニアガイド189に沿って移動するY可動子185とを備えている。このY軸リニアモータ136Y
2は、Y軸リニアモータ136Y
1と同様に構成されたムービングマグネット型の電磁力駆動方式のリニアモータである。
【0146】
また、前述のように、X軸リニアガイド181の両端部がY可動子184、185にそれぞれ固定されていることから、Y軸リニアモータ136Y
1,136Y
2がY軸方向の駆動力を発生すると、X軸リニアモータ136XとともにウエハステージWST1’(又はWST2’)がY軸方向に駆動されるようになっている。この場合、Y軸リニアモータ36Y
1,36Y
2の発生する駆動力を異ならせることにより、X軸リニアモータ36Xを介してウエハステージWST1’(又はWST2’)のZ軸回りの回転を制御することが可能となっている。
【0147】
前記第2駆動部172は、前述した第1駆動部171の−Y側に、
図12における紙面内でほぼ上下対称に配置されている。この第2駆動部172は、上記第1駆動部171と同様に構成されている。すなわち、この第2駆動部172は、X軸リニアガイド180及びX可動子178から構成されるリニアアクチュエータとしてのX軸リニアモータ138
Xと、X軸リニアガイド180の一端に設けられたY可動子182及びY軸リニアガイド186から構成されるY軸リニアモータ138Y
1と、X軸リニアガイド180の他端に
設けられたY可動子183及びY軸リニアガイド187から構成されるY軸リニアモータ138Y
2と、を備えている。
【0148】
X可動子178の+Y側面には、X可動子179と同様に、ウエハステージWST2’(又はWST1’)を接続する前述の第1の接続機構と同様の第2接続機構196(
図12では図示せず、
図11参照)が設けられている。主制御装置20では、この第2接続機構196を制御してX可動子178にウエハステージWST2’(又はWST1’)を接続し、あるいはその接続を解除するようになっている。
図12では、ウエハステージWST2’がX可動子178に接続され片持ち支持された状態が示されている。
【0149】
前記ウエハステージWST1’は、前述した第1の実施形態のウエハステージWST1を構成するステージ本体とは異なり磁極ユニット部分が設けられていないステージ本体と、該ステージ本体の上面に不図示のZ・チルト駆動機構を介して設けられた前述のウエハステージWST1を構成するウエハテーブルと同様のウエハテーブルとから構成されている。このウエハテーブルの上面には、±Y側端部及び+X側端部近傍に+Y移動鏡47Y
1、−Y移動鏡47Y
2、+X移動鏡47Xが設けられている。
【0150】
前記ウエハステージWST2’は、上記ウエハステージWST1’と同様に構成されている。このウエハステージWST2’を構成するウエハテーブルの上面には、±Y側端部及び−X側端部近傍に+Y移動鏡49Y
1、−Y移動鏡49Y
2、−X移動鏡49Xが設けられている。
【0151】
なお、本第2の実施形態においても、ウエハステージWST1’の移動鏡が近傍に配置されていない側面(−X側面)、及びウエハステージWST2’の移動鏡が近傍に配置されていない側面(+X側面)の少なくとも一方には、
図10に示される弾性シール部材93と同様の弾性シール部材が設けられている。
【0152】
また、
図12に示されるように、投影光学系PLの−Y側に所定距離隔てて、マーク検出系としてのアライメント系ALGが設けられている。
【0153】
前記干渉計システム118Aは、
図12に示されるように、投影光学系PLの投影中心(光軸)とアライメント系ALGの検出中心とを結ぶY軸に平行な測長軸を有する2つのY軸干渉計151Y
1,151Y
2と、投影光学系PLの投影中心(光軸)で干渉計151Y1の測長軸と垂直に交差するX軸に平行な測長軸をそれぞれ有する2つのX軸干渉計1
51X
1,151X
2と、アライメント系ALGの検出中心で干渉計151Y
2の測長軸と
垂直に交差するX軸に平行な測長軸をそれぞれ有する2つのX軸干渉計151X
3,15
1X
4とを有している。
【0154】
4つのX軸干渉計151X
1〜151X
4は、Y軸方向及びZ軸方向に関して離間した少なくとも3本の光軸を有する多軸干渉計であり、各光軸の出力値は独立に計測できるようになっている。従って、これらのX軸干渉計151X
1〜151X
4では、ウエハステージWST1’又はWST2’のX軸方向の位置計測以外に、Y軸回りの回転量(ローリング量)及びZ軸回りの回転量(ヨーイング量)の計測が可能となっている。
【0155】
上記2つのY軸干渉計151Y
1,151Y
2は、例えばZ軸方向に関して離間した各2本の光軸を有する2軸干渉計であり、各光軸の出力値は独立に計測できるようになっている。従って、これらのY軸干渉計151Y
1,151Y
2では、ウエハステージWST1’又はWST2’のY軸方向の位置計測以外に、X軸回りの回転量(ピッチング量)の計測が可能となっている。
【0156】
この場合、ウエハステージWST1’が投影光学系PLの光軸の直下の位置の近傍の領域(第1領域)にあり、そのウエハステージWST1’上のウエハ(
図12ではウエハW1)に対する露光が行われる場合などには、X軸干渉計151X
1、Y軸干渉計151Y
1それぞれの測長軸によって規定される第1露光座標系上でウエハステージWST1’のXY平面内の位置が管理される。
【0157】
また、ウエハステージWST2’が投影光学系PLの光軸の直下の位置の近傍の領域(第1領域)にあり、そのウエハステージWST2’上のウエハ(
図12ではウエハW2)に対する露光が行われる場合などには、X軸干渉計151X
2、Y軸干渉計151Y
1それぞれの測長軸によって規定される第2露光座標系上でウエハステージWST2’のXY平面内の位置が管理される。
【0158】
また、ウエハステージWST1’がアライメント系ALGの直下の位置近傍の領域(第2領域)にあり、そのウエハステージWST1’上のウエハ(
図12ではウエハW1)に対するアライメント(EGA)が行われる場合などには、X軸干渉計151X
3、Y軸干
渉計151Y
2それぞれの測長軸によって規定される第1アライメント座標系上でウエハ
ステージWST1’のXY平面内の位置が管理される。
【0159】
更に、ウエハステージWST2’がアライメント系ALGの直下の位置近傍の領域(第2領域)にあり、そのウエハステージWST2’上のウエハ(
図12ではウエハW2)に対するアライメント(EGA)が行われる場合などには、X軸干渉計151X
4、Y軸干
渉計151Y
2それぞれの測長軸によって規定される第2アライメント座標系上でウエハ
ステージWST2’のXY平面内の位置が管理される。
【0160】
その他の構成部分は、液体給排システム32を含め前述した第1の実施形態と同様に構成されている。
【0161】
次に、本第2の実施形態の露光装置で行われる、一方のウエハステージ上のウエハに対する露光動作と、他方のウエハステージ上のウエハに対するアライメント動作等との並行処理動作を含む、一連の動作について、
図12〜
図15(B)に基づいて、説明する。なお、以下の動作中、主制御装置20によって、投影光学系PLの直下の第1領域に位置するウエハステージの移動方向に応じて、液体給排システム32の液体供給装置5及び液体回収装置6の各バルブの開閉制御が前述したようにして行われ、投影光学系PLの先端レンズ91の直下には常時水が満たされている。しかし、以下では、説明を分かり易くするため、液体供給装置5及び液体回収装置6の制御に関する説明は省略する。
【0162】
なお、ウエハステージWST1’又はWST2’の移動の途中で、X軸干渉計又はY軸干渉計からの干渉計ビームが、移動鏡に当たらなくなり、干渉計によるウエハステージの位置管理が困難になる区間が存在する。このような場合のウエハステージの位置は、不図示のリニアエンコーダによって管理され、そのようにリニアエンコーダでウエハステージの位置を管理しているとき、所望の干渉計からの干渉計ビームが移動鏡に当たるようになった時点でその干渉計のリセットが主制御装置20によって実行される。しかし、以下では、説明の煩雑化を防止するため、リニアエンコーダによるウエハステージの位置計測及び干渉計のリセットに関する説明は省略する。
【0163】
図12には、ウエハステージWST1’上に載置されたウエハW1に対して前述の第1の実施形態と同様にしてステップ・アンド・スキャン方式で露光が行われ、これと並行してウエハステージWST2’側では、アライメント系ALGの下方の第2領域でウエハW
2に対するウエハアライメントが行われている状態が示されている。
【0164】
なお、上記のウエハW1に対する露光動作は、主制御装置20が、前述した第1露光座標系上でウエハステージWST1’の位置を管理しつつ、前述したX軸リニアモータ136X、一対のY軸リニアモータ136Y
1,136Y
2を駆動制御することによってウエハステージWST1’を移動しつつ行われる。
【0165】
ウエハステージWST1’側でウエハW1に対してステップ・アンド・スキャン方式で露光が行われている間に、ウエハステージWST2’側では、以下のような動作が行われている。
【0166】
すなわち、上記のウエハアライメントに先立って、所定のローディング位置において、不図示のウエハ搬送機構とウエハステージWST2’との間でウエハ交換が行なわれる。
【0167】
ウエハ交換後、主制御装置20は、前述の第2アライメント座標系上でウエハステージWST2’のXY面内の位置を管理しつつ、アライメント系ALGを用いてウエハW2上の特定の複数のサンプルショット領域に付設されたサンプルマークの位置情報を検出を含む、前述したEGAを実行して、ウエハW2上の複数のショット領域の第2アライメント座標系上における位置座標を算出する。なお、
図12には、サンプルマークの位置情報検出時の状態が示されている。また、主制御装置20は、サンプルマークの位置情報の検出に前後して、ウエハステージWST2’上の基準マーク板FM2に形成された第2基準マークの位置情報を検出している。そして、主制御装置20は、先に求めたウエハW2上の複数のショット領域の第2アライメント座標系上における位置座標を、第2基準マークの位置を原点とする位置座標に変換する。
【0168】
なお、上記のウエハアライメントの際などのウエハステージWST2’の移動は、主制御装置20が、前述したX軸リニアモータ138X、一対のY軸リニアモータ138Y
1
,138Y
2を駆動制御することによって行われる。
【0169】
上述したウエハステージWST2’上のウエハW2に対するウエハアライメント動作と、ウエハステージWST1’上のウエハW1に対する露光動作とでは、通常は、ウエハアライメント動作の方が先に終了する。そこで、主制御装置20は、ウエハアライメントの終了後、X軸リニアモータ138X、一対のY軸リニアモータ138Y
1,138Y
2を介してウエハステージWST2’を
図13(A)に示される所定の待機位置に移動させ、その位置で待機させる。
【0170】
その後、ウエハステージWST1’上のウエハW1に対する露光動作が終了すると、主制御装置20は、X軸リニアモータ136X及び一対のY軸リニアモータ136Y
1,1
36Y
2を介してウエハステージWST1’を
図13(A)に示される位置に移動させる
。なお、ウエハW1に対する露光終了位置は、この
図13(A)の位置の近傍に設定することが望ましい。
【0171】
ウエハステージWST1’を
図13(A)に示される位置まで移動した後、主制御装置20は、X軸リニアモータ138X及び一対のY軸リニアモータ138Y
1,138Y
2を介してウエハステージWST2’を、
図13(B)に示される位置に移動させる。この
図13(B)の位置にウエハステージWST2’が移動した状態では、ウエハステージWST1’とウエハステージWST2’とが前述の第1の実施形態と同様に弾性シール部材を介して接触した状態となっている。
【0172】
次いで、主制御装置20は、X軸リニアモータ136X及び一対のY軸リニアモータ1
36Y
1,136Y
2、並びにX軸リニアモータ138X及び一対のY軸リニアモータ138Y
1,138Y
2を制御して、ウエハステージWST1’とウエハステージWST2’とを+X方向に同時に移動させる。
図14(A)には、このようにして両ウエハステージWST1’、WST2’が
図13(B)の状態から+X方向に同時に移動し、ウエハステージWST2’上の基準マーク板FM2を含む領域と先端レンズ91との間に水が保持された状態が示されている。
【0173】
図13(B)の状態では、投影ユニットPUの先端レンズ91とウエハW1との間に保持されていた水が、ウエハステージWST1’、WST2’の+X側への移動に伴って、ウエハW1→ウエハステージWST1’→ウエハステージWST2’上を順次移動する。なお、上記の移動の間中、ウエハステージWST1’、WST2’は弾性シール部材93を介して相互に接触する位置関係を保っている。
【0174】
次いで、主制御装置20は、前述した第1接続機構195によるX可動子179とウエハステージWST1’との接続状態、及び第2接続機構196によるX可動子178とウエハステージWST2’との接続状態を、ともに解除した後、X可動子179を+Y方向へ、X可動子178を−Y方向へ僅かに駆動する。
図14(B)には、このX可動子179、178の駆動後の状態が示されている。
【0175】
なお、
図14(B)の状態では、ウエハステージWST1’,WST2’は、それぞれの底面(−Z側の面)に設けられた不図示のエアパッドにより、ベース盤12上に浮上支持されるようになっている。但し、これに限らず、ウエハステージWST1’,WST2’側若しくはベース盤12側に出没自在の支持脚を設けて、ウエハステージWST1’,WST2’とX可動子179,178との接続が解除される直前に支持脚によりウエハステージWST1’,WST2’をベース盤12の上方に安定して支持するようにしても良い。
【0176】
次いで、主制御装置20は、Y軸リニアモータ136Y
1,136Y
2、X軸リニアモータ136Xを介してX可動子179を駆動し、ウエハステージWST2’に接続可能な位置に移動させるとともに、Y軸リニアモータ138Y
1,138Y
2、X軸リニアモータ138Xを介してX可動子178を駆動し、ウエハステージWST1’に接続可能な位置に移動させる。このとき、各X可動子の位置は、不図示のエンコーダにより管理されている。
【0177】
図15(A)には、上記のようにして、X可動子179を駆動し、ウエハステージWST2’に接続可能な位置に移動し、X可動子178を駆動し、ウエハステージWST1’に接続可能な位置に移動した状態が示されている。その後、主制御装置20は、第1接続機構195を介してX可動子179にウエハステージWST2’を接続するとともに、第2接続機構196を介してX可動子178にウエハステージWST1’を接続する。なお、Y軸方向への移動無しに、X可動子178,179のX方向への移動とウエハステージWST1,WST2の脱着を行うようにしても良い。
【0178】
このようにして、X可動子179にウエハステージWST2’を接続し、X可動子178にウエハステージWST1’を接続した後、主制御装置20は、前述の第2露光座標系上でウエハステージWST2’の位置を管理しつつ、基準マーク板FM2上の一対の第1基準マークとレチクルR上の一対のレチクルアライメントマークとを前述のレチクルアライメント系RAa,RAbを用いて計測する。そして、その計測結果と先に行われたウエハアライメントの結果とに基づいてウエハW2上の第1番目のショット領域の露光のための加速開始位置にウエハステージWST2’を移動させる。その後は、主制御装置20が、第2露光座標系上でウエハステージWST2’の位置を管理しつつ、X軸リニアモータ136X及び一対のY軸リニアモータ136Y
1、136Y
2を介してウエハステージWST2’が駆動制御され、ウエハW2に対するステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が前述の第1の実施形態と同様にして行われる。
【0179】
この一方、主制御装置20は、Y軸リニアモータ138Y
1,138Y
2、及びX軸リニアモータ138Xを介して、ウエハステージWST1’をローディング位置に向けて移動させる。この移動中のウエハステージWST1’の位置は、前述の第1アライメント座標系上で管理される。そして、ローディング位置で、ウエハステージWST1’上の露光済みのウエハW1と次の露光対象であるウエハとの交換が行われた後、主制御装置20では、新たなウエハに対してウエハアライメント動作を上述と同様にして行う。
【0180】
そして、ウエハステージWST1’におけるウエハアライメントが終了し、ウエハステージWST2’における露光動作が終了した段階で、ウエハステージWST1’とウエハステージWST2’とは上述した経路と全く逆の経路を辿って、再び
図12の状態に戻るようになっている。
【0181】
このようにして、本第2の実施形態の露光装置では、ウエハステージWST1’,WST2’の切り換え(スイッチング)を行いつつ、一方のウエハステージ上のウエハに対する露光動作と、他方のウエハステージ上でのウエハ交換及びウエハアライメント動作とが、同時並行処理にて行われる。
【0182】
これまでの説明から明らかなように、本第2の実施形態では、ウエハステージ駆動部124A及び主制御装置20を含んでステージ駆動系が構成されている。また、このステージ駆動系と、ウエハステージWST1’、WST2’とを含んでステージ装置が構成されている。また、第1接続機構195、第2接続機構196、Y軸リニアモータ136Y
1〜136Y
4、X軸リニアモータ136X,138X及びこれらを制御する主制御装置20を含んで切り換え装置が構成されている。
【0183】
以上詳細に説明したように、本第2の実施形態の露光装置及び該露光装置が備えるステージ装置、並びに該露光装置で実行されるウエハステージWST1’,WST2’の駆動方法によると、液体が供給される投影光学系PL直下の第1領域に一方のウエハステージWST1’(又はWST2’)が位置する第1の状態から他方のウエハステージWST2’(又はWST1’)が第1領域に位置する第2の状態に遷移させる際に、ステージ駆動系(20、124A)により、ウエハステージWST1’、WST2’がX軸方向(前記第1領域とアライメント系ALG直下の位置近傍の第2領域が並ぶY軸方向に交差する方向)に関して弾性シール部材93を介して接触した状態を維持して、ウエハステージWST1’、WST2’がX軸方向に同時に駆動される。
【0184】
このため、投影光学系PLとその直下にある特定のウエハステージ(このウエハステージは、移動に伴って一方のウエハステージから他方のウエハステージに切り換わる)との間に水(液体)を供給(保持)したままの状態で、両ウエハステージの間隙から液体を漏らすことなく、一方のウエハステージWST1’(又はWST2’)が第1領域に位置する第1の状態から他方のウエハステージWST2’(又はWST1’)が第1領域に位置する第2の状態に遷移させることが可能となる。すなわち、一方のウエハステージ側で投影光学系PLと水とを介したウエハの露光動作が行われた後、他方のウエハステージ側で投影光学系PLと水(液体)とを介したウエハの露光動作を開始するまでの間に、一方のウエハステージと投影光学系PLとの間に水が保持された状態から他方のウエハステージと投影光学系PLとの間に水が保持された状態に、水の全回収、再度の供給という工程を経ることなく、遷移させることが可能となる。従って、一方のウエハステージ側での露光動作の終了から他方のウエハステージ側での露光動作開始までの時間を短縮(すなわち、
液浸露光でない通常の露光装置(非液浸の露光装置)と同程度に維持)して、スループットの向上を図ることが可能となる。また、投影光学系PLの像面側には、水が常に存在するので、前述した第1の実施形態と同様の理由により、長期に渡って、投影光学系PLの結像性能及び多点焦点位置検出系の検出精度を良好に維持することができる。
【0185】
また、前述した2つのウエハステージWST1’、WST2’での並行処理動作により、1つのウエハステージを用いて、ウエハ交換、ウエハアライメント及び露光動作を、シーケンシャルに行う従来のシングルウエハステージを備えた露光装置に比べてスループットの向上を図ることが可能である。
【0186】
また、本第2の実施形態の露光装置においても、液浸露光により、高解像度かつ空気中と比べて大焦点深度の露光を行うことで、レチクルRのパターンを精度良くウエハ上に転写することができる。
【0187】
また、本第2の実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様の理由により、両ウエハステージの間隙からの水漏れが抑制されるのに加え、ウエハステージWST1’とウエハステージWST2’とが接触する際の衝撃を低減することができる。
【0188】
さらに、本第2の実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様に、ウエハステージWST1’の−X側面及びウエハステージWST2’の+X側面に干渉計用の移動鏡を設けないこととしているので、両ウエハステージがX軸方向に関して接近した状態であっても、両ウエハステージ上の移動鏡の反射面同士が近接して向かい合うことがないため、両ウエハステージの位置を干渉計システム118Aにより前述した両ウエハステージのX軸方向への同時駆動の間中モニタすることが可能である。また、移動鏡の反射面に水が付着するのを抑制することもできる。
【0189】
なお、上記第2の実施形態では、ウエハステージWST1’、WST2’上に3つの移動鏡をそれぞれ配置し、干渉計を6つ配置することとしたが、移動鏡及び干渉計の配置は上記第2の実施形態の配置に限られるものではない。例えば、両ウエハステージ上に2つの移動鏡をそれぞれ配置することとし、これら2つの移動鏡を用いた両ウエハステージの位置計測ができるような干渉計配置を採用することとしても良い。
【0190】
また、上記第2実施形態においては、先端レンズ91の下に保持された水が、一方のステージ上から他方のステージ上に移動した後に、X可動子178,179による持ち替えを行っているが、一方のステージ上から他方のステージ上に水が移動する前に、X可動子178,179による持ち替えを行うようにしても良い。
【0191】
《第3の実施形態》
次に、本発明の第3の実施形態について、
図16〜
図18(B)に基づいて説明する。ここで、前述した第1の実施形態と同一若しくは同等の部分については、同一の符号を用いるとともにその説明を簡略にし、若しくは省略するものとする。この第3の実施形態の露光装置では、ウエハステージ装置の構成等が前述した第1の実施形態と異なるのみで、その他の部分の構成は、同様になっている。従って、以下では重複説明を避ける観点から相違点を中心として説明する。
【0192】
本第3の実施形態のウエハステージ装置50”は、
図16に示されるように、前述した第1の実施形態の露光装置を構成するウエハステージ装置50と異なり、ウエハを搭載可能なウエハステージWSTと、計測専用の計測ステージMSTとを備えている。
【0193】
これらウエハステージWST及び計測ステージMSTは、前述した第1の実施形態にお
けるウエハステージWST1及びウエハステージWST2に対応し、第1の実施形態と同様のウエハステージ駆動部(80〜87)により2次元面内で駆動されるようになっている。
【0194】
また、投影光学系PL(投影ユニットPUの鏡筒)の近傍には、アライメント系ALGが1つのみ設けられている。なお、投影ユニットPUとアライメント系ALGとは、実際には、
図16に示されるように入れ子状態となっている。すなわち、投影ユニットPUの下端部近傍の他の部分より小径に形成された部分の外側(先端レンズの周囲の部分)で投影ユニットPUの大径部の下方の部分にアライメント系ALGの少なくとも下端部が位置している。
【0195】
前記計測ステージMSTの上面には、各種計測用部材が設けられている。この計測用部材としては、例えば、特開平5−21314号公報及びこれに対応する米国特許第5,243,195号などに開示される複数の基準マークが形成された基準マーク板や投影光学系PLを介して照明光ILを受光するセンサなどが含まれている。センサとしては、例えば特開平11−16816号公報及びこれに対応する米国特許出願公開第2002/0061469号明細書などに開示される投影光学系PLの像面上で照明光ILを受光する所定面積の受光部を有する照度モニタや、特開昭57−117238号公報及びこれに対応する米国特許第4,465,368号などに開示される投影光学系PLの像面上で照明光ILを受光するピンホール状の受光部を有する照度むらセンサ、特開2002−14005号公報及びこれに対応する米国特許出願公開第2002/0041377号明細書などに開示される投影光学系PLにより投影されるパターンの空間像(投影像)の光強度を計測する空間像計測器などを採用することができる。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記各公報及び対応する米国特許出願公開明細書又は米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。なお、計測ステージMSTに搭載される計測用部材は、ここで列挙したものに限られず、必要に応じて各種の計測用部材を搭載することができる。
【0196】
なお、本実施形態では、投影光学系PLと水とを介して露光光(照明光)ILによりウエハWを露光する液浸露光が行われるのに対応して、照明光ILを用いる計測に使用される上記の照度モニタ、照度むらセンサ、空間像計測器では、投影光学系PL及び水を介して照明光ILを受光することとなる。また、各センサは、例えば光学系などの一部だけが計測ステージMSTに搭載されていても良いし、センサ全体を計測ステージMSTに配置するようにしても良い。またウエハステージWSTには、計測用の部材を搭載しても良いし、搭載してなくても良い。
【0197】
また、本第3の実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様に、ウエハステージWSTの−X側面と計測ステージMST+X側面の少なくとも一方に、
図10の弾性シール部材93と同様の弾性シール部材が設けられている。
【0198】
以下、本第3の実施形態の露光装置が備えるウエハステージWSTと計測ステージMSTとを用いた並行処理動作について、
図16〜
図18(B)に基づいて説明する。なお、本第3の実施形態に係る露光装置においても、第1の実施形態と同様の干渉計システムが設けられ、ウエハステージWSTと計測ステージMSTの位置が、第1の実施形態と同様に管理されている。以下の説明では、重複説明を避けるため、干渉計システムによる両ステージの位置管理に関する記載は省略するものとする。なお、以下の動作中、主制御装置20によって、投影ユニットPUの直下の第1領域に位置するステージの移動方向に応じて、液体給排システム32の液体供給装置5及び液体回収装置6の各バルブの開閉制御が前述したようにして行われ、投影光学系PLの先端レンズ91の直下には常時水が満たされている。しかし、以下では、説明を分かり易くするため、液体供給装置5及び液体回収
装置6の制御に関する説明は省略する。
【0199】
図16には、ウエハステージWST上のウエハWに対するステップ・アンド・スキャン方式の露光が前述の第1実施形態と同様にして行われている状態が示されている。このとき、計測ステージMSTは、ウエハステージWSTと衝突しない所定の待機位置にて待機している。
【0200】
そして、ウエハステージWST側で、例えば1ロット(1ロットは25枚又は50枚)のウエハWに対する露光が終了した段階で、主制御装置20は、計測ステージMSTを
図17(A)に示される位置まで移動させる。この
図17(A)の状態では、計測ステージMSTとウエハステージWSTとは、前記弾性シール部材を介して接触している。
【0201】
次に、主制御装置20は、ウエハステージWSTと計測ステージMSTのX軸方向の位置関係を保ちつつ、両ステージWST、MSTを+X方向に同時に駆動する動作を開始する。
【0202】
このようにして、主制御装置20により、ウエハステージWST、計測ステージMSTが同時に駆動されると、
図17(A)の状態では、投影ユニットPUの先端レンズ91とウエハWとの間に保持されていた水が、ウエハステージWST、計測ステージMSTの+X側への移動に伴って、ウエハW→ウエハステージWST→計測ステージMST上を順次移動する。なお、上記の移動の間中、ウエハステージWST、計測ステージMSTは
図17(A)の状態と同様に弾性シール部材を介して相互に接触する位置関係を保っている。
図17(B)には、上記の移動の途中に水(液浸領域)がウエハステージWST、計測ステージMST上に同時に跨って存在するときの状態、すなわちウエハステージWST上から計測ステージMST上に水が渡される直前の状態が示されている。
【0203】
図17(B)の状態から、更にウエハステージWST,計測ステージMSTが+X方向に同時に所定距離駆動されると、
図18(A)に示されるように、計測ステージMSTと先端レンズ91との間に水が保持された状態となる。
【0204】
次いで、主制御装置20は、ウエハステージWSTを所定のウエハ交換位置に移動させるとともにウエハの交換を行い、これと並行して、計測ステージMSTを用いた所定の計測を必要に応じて実行する。この計測としては、例えばレチクルステージRST上のレチクル交換後に行われる、アライメント系ALGのベースライン計測が一例として挙げられる。具体的には、主制御装置20では、計測ステージMST上に設けられた基準マーク板FM上の一対の第1基準マークと対応するレチクル上のレチクルアライメントマークを前述のレチクルアライメント系RAa、RAbを用いて同時に検出して一対の第1基準マークと対応するレチクルアライメントマークの位置関係を検出する。これと同時に、主制御装置20では、上記基準マーク板FM上の第2基準マークをアライメント系ALGで検出することで、アライメント系ALGの検出中心と第2基準マークとの位置関係を検出する。そして、主制御装置20は、上記一対の第1基準マークと対応するレチクルアライメントマークの位置関係とアライメント系ALGの検出中心と第2基準マークとの位置関係と、既知の一対の第1基準マークと第2基準マークとの位置関係とに基づいて、投影光学系PLによるレチクルパターンの投影中心(投影位置)とアライメント系ALGの検出中心(検出位置)との距離、すなわちアライメント系ALGのベースラインを求める。なお、このときの状態が、
図18(B)に示されている。
【0205】
なお、上記のアライメント系ALGのベースラインの計測とともに、レチクル上にレチクルアライメントマークを複数対形成し、これに対応して基準マーク板FM上に複数対の第1基準マークを形成しておき、少なくとも2対の第1基準マークと対応するレチクルア
ライメントマークとの相対位置を、レチクルステージRST、計測ステージMSTを移動しつつ、レチクルアライメント系RAa、RAbを用いて計測することで、いわゆるレチクルアライメントが行われる。
【0206】
この場合、レチクルアライメント系RAa,RAbを用いたマークの検出は、投影光学系PL及び水を介して行われる。
【0207】
そして、上述した両ステージWST、MST上における作業が終了した段階で、主制御装置20は、例えば計測ステージMSTとウエハステージWSTとを、弾性シール部材を介して接触させた状態を維持したまま、XY面内で駆動し、前述と同様にして交換後のウエハWに対してウエハアライメント、すなわちアライメント系ALGによる交換後のウエハW上のアライメントマークの検出を行い、ウエハW上の複数のショット領域の位置座標を算出する。
【0208】
その後、主制御装置20では、先程とは逆にウエハステージWSTと計測ステージMSTのX軸方向の位置関係を保ちつつ、両ステージWST、MSTを−X方向に同時に駆動して、ウエハステージWST(ウエハW)を投影光学系PLの下方に移動させた後、すなわち液浸領域が計測ステージMST上からウエハステージWST(又はウエハW)上に移動した後に、計測ステージMSTを所定の位置に退避させる。
【0209】
その後、主制御装置20では、ウエハWに対してステップ・アンド・スキャン方式の露光動作を実行し、ウエハW上の複数のショット領域にレチクルパターンを順次転写する。なお、ウエハW上の各ショット領域の露光のための加速開始位置へのウエハステージWSTの移動は、上記のウエハアライメントの結果得られたウエハW上の複数のショット領域の位置座標と、直前に計測したベースラインとに基づいて行われる。
【0210】
なお、上記の説明では、計測動作として、ベースライン計測を行う場合について説明したが、これに限らず、計測ステージMSTを用いて、照度計測、照度むら計測、空間像計計測などを、例えばウエハ交換と並行して行い、その計測結果を使って、その後に行われるウエハWの露光に反映させるようにしても良い。また、計測ステージMSTに搭載されるセンサは、上述のものに限られず、例えば波面計測を行うセンサなどを設けても良い。
【0211】
また、上述の第3の実施形態においては、1つのロットのウエハWに対する露光が終了したときに、ウエハステージWSTと計測ステージMSTとを接触させて移動し、投影光学系PLと計測ステージMSTとの間に水を保持するように説明しているが、各ウエハの交換毎に上記動作を行なって投影光学系PLと計測ステージMSTとの間に水を保持するようにした方が良いことは言うまでもない。また、ベースラインなどの計測は、先に述べたように1つのロットの露光が終了する毎に行っても良いし、ウエハ交換毎、あるいは所定枚数のウエハの露光完了後に行うようにしても良い。
【0212】
これまでの説明から明らかなように、本第3の実施形態では、第1の実施形態と同様に、ウエハステージ駆動部(80〜87)によってステージ駆動系の少なくとも一部が構成されている。また、このステージ駆動系とウエハステージWSTと計測ステージMSTとによってステージ装置の少なくとも一部が構成されている。
【0213】
以上説明したように、本第3の実施形態の露光装置及び該露光装置が備えるステージ装置によると、ウエハステージWST(又は計測ステージMST)が、液体(水)が供給される投影光学系PL直下の第1領域に位置する第1の状態から計測ステージMST(又はウエハステージWST)が第1領域に位置する第2の状態に遷移させる際に、上記のステージ駆動系により、両ステージがX軸方向に関して弾性シール部材を介して接触した状態を維持して、ウエハステージWST、計測ステージMSTがX軸方向に同時に駆動される。このため、投影光学系PLとその直下にある特定のステージ(このステージは、移動に伴って一方のステージから他方のステージに切り換わる)との間に水(液体)を供給したままの状態で、両ステージの間隙から液体を漏らすことなく、一方のステージが第1領域に位置する第1の状態から他方のステージが前記第1領域に位置する第2の状態に遷移させることが可能となる。すなわち、ウエハステージWST側で投影光学系PLと水(液体)とを介した露光動作が行われた後、計測ステージMST側で投影光学系PLの直下で計測を開始するまでの間に、ウエハステージWSTと投影光学系PLとの間に水が保持された状態から計測ステージMSTと投影光学系PLとの間に水が保持された状態に、水の全回収、再度の供給という工程を経ることなく、遷移させることが可能となる。また、計測ステージMSTによる計測の終了後、ウエハステージWSTによる露光を開始するまでについても同様である。
【0214】
従って、ウエハステージWST側での露光動作の終了から計測ステージMST側での計測動作開始までの時間、及び計測ステージMST側での計測終了からウエハステージWST側での露光動作の開始までの時間を短縮(すなわち、液浸露光でない通常の露光装置(非液浸の露光装置)と同程度に維持)して、スループットの向上を図ることが可能となる。また、投影光学系PLの像面側には、水(液体)が常に存在するので、前述した水染み(ウォーターマーク)が発生するのを効果的に防止することができる。
【0215】
また、液浸露光により、高解像度かつ空気中と比べて大焦点深度の露光を行うことで、レチクルRのパターンを精度良くウエハ上に転写することができ、例えばデバイスルールとして70〜100nm程度の微細パターンの転写を実現することができる。またウエハの交換毎などに計測ステージMSTに搭載された計測用部材を使って各種の計測を行って、その後の露光動作に計測結果を反映させることができるので、常に高精度に調整された状態でウエハの露光を行うことができる。
【0216】
なお、計測ステージMSTを用いて行われる計測動作が照明光ILを用いないようなものであれば、計測ステージMST側の計測動作を、ウエハステージWST側のウエハWの露光動作と並行して行うことも可能である。
【0217】
また、上述の第3の実施形態においては、計測ステージMSTとウエハステージWSTとを弾性シール部材を介して接触させた状態でウエハアライメントを行っているが、ウエハアライメントを行う前に、2つのステージを接触させた状態で、ウエハステージWSTを投影光学系PL(及びアライメント系ALG)の下方に移動し、計測ステージMSTを退避させた後に、ウエハアライメントを行うようにしても良い。
【0218】
また、上述の第3の実施形態においては、基準マーク板FM上の第1基準マークと第2基準マークとが同時に計測できるようになっているが、第1基準マークと第2基準マークの一方を計測した後に、計測ステージMST上に水を保持した状態で計測ステージMSTを動かして他方を計測するようにしても良い。
【0219】
なお、上述の第1〜第3実施形態で使用される弾性シール部材としては、
図19(A)に示されるように、一方のステージ(ここでは、ステージWST2(WST2’、MST))の+X側面に断面略台形状の溝49を形成し、該溝49に埋め込み状態で取り付けられた弾性シール部材93’を採用することとしても良い。このようにしても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。この
図19(A)に示される構成についても、一方のステージのみでなく、両方のステージに設けることとしても良い。
【0220】
また、
図19(B)に示されるように、一方のステージ(ここでは、ステージWST1
(WST1’,WST))の+Z面に断面略台形状の溝49’を形成し、該溝49’に弾性シール部材93”を埋め込み状態で取り付け、他方のステージ(ここでは、ステージWST2(WST2’,MST))上面の+X側端部に平板94を設けることとしても良い。この場合、両ステージが接近した状態では、平板94が弾性シール部材93”に接触することで、
図19(B)に示されるように、水が両ステージの間から漏れ出さないようにすることが可能となっている。
【0221】
また、
図19(C)に示されるように、両ステージの対向する側面のそれぞれに例えばテフロン(登録商標)等により撥水コート95を施すことにより、両ステージの間隙への水の浸入及び漏水を防止することとしても良い。これにより、両ステージ間は非接触な状態が維持されるので、両ステージの接触によるステージの変形や位置制御精度の悪化などが引き起こされるおそれがない。
【0222】
なお、上記第1〜第3の実施形態では、弾性シール部材を設けることとしたが、弾性シール部材、その他の水漏れを抑制する抑制部材を、必ずしも設けなくても良い。この場合、一方のステージが投影ユニットPU直下にある状態から他方のステージが投影ユニットPU直下にある状態に遷移する間、両ステージが直接接触するようにしても良い。また、両ステージの材質、ステージの表面状態や形状、液体の種類等にもよるが、遷移の際に両ステージが近接した状態(例えば両ステージの間隔が2mm以下)であっても、液体の表面張力により液体が漏れないようであれば、撥水コートを施さなくても良い。要は、両ステージ間から液体が漏れないような位置関係を維持して、両ステージが遷移するようにすれば良い。また、遷移の際の両ステージの間隙への水(液体)の漏れ出しは、漏れ出し量がわずかであれば許容される場合もあり得るので、遷移の際の両ステージの間隔は、ステージの材質やステージ表面の状態や形状、液体の種類だけでなく、漏れ出しの許容量を考慮して決めるようにしても良い。
【0223】
また、上述の第1〜第3の実施形態においては、2つのステージの接触面には移動鏡の反射面が形成されていないが、これは必須要件ではなく、2つのステージの間隙から水の漏洩が防止されるならば、少なくとも一方のステージの接触面に移動鏡の反射面が形成されていても構わない。このような実施形態として、例えば、次に説明する第4の実施形態が考えられる。
【0224】
《第4の実施形態》
次に、本発明の第4の実施形態について、
図20〜
図23(B)に基づいて説明する。ここで、前述した第3の実施形態と同一若しくは同等の部分については、同一の符号を用いるとともにその説明を簡略にし、若しくは省略するものとする。この第4の実施形態の露光装置では、ウエハステージ装置の構成(干渉計の配置を含む)が前述した第3の実施形態と一部相違するのみで、その他の部分の構成等は、その第3の実施形態の装置と同様になっている。従って、以下では重複説明を避ける観点から相違点を中心として説明する。
【0225】
本第4の実施形態のウエハステージ装置150は、
図20に示されるように、ウエハを搭載可能なウエハステージWST’と、計測専用の計測ステージMST’と、6つのレーザ干渉計(以下、「干渉計」と略述する)IF1〜IF6を含んで構成される干渉計システムとを備えている。
【0226】
前記ウエハステージWST’は、
図21に示されるように、その−X側(計測ステージMST’に対向する側)の上端部の一部が他の部分より突出した板状の庇部111aとされている点、及びその+X側端面Se及び+Y側端面Sdに鏡面加工により形成された反射面が、前述の移動鏡に代えて設けられている点が、前述した第3の実施形態に係るウエ
ハステージWSTと相違するが、その他の部分は、ウエハステージWSTと同様に構成されている。また、このウエハステージWST’の上面は、ウエハWを載置した状態で、ウエハW表面及び庇部111aを含め、全面がほぼ面一(同一面)とされている。
【0227】
前記計測ステージMST’には、
図21に示されるように、その+X側(ウエハステージWST’に対向する側)に、前記庇部11aの先端部に所定のクリアランスを介して係合可能な段部111bをその上端部に有する突部111cが設けられている点、及びその−X側端面Sa、+Y側端面Sb、及び+X側の端面(突部111cの+X側の端面)Scに鏡面加工により形成された反射面が、前述の移動鏡に代えて設けられている点が、前述の第3の実施形態に係る計測ステージMSTとは相違するが、その他の部分は計測ステージMSTと同様に構成されている。この場合、
図21に示されるように、ウエハステージWST’の庇部11aと計測ステージMST’の段部111bとが係合した状態では、ウエハステージWST’の上面と計測ステージMST’の上面とで全体としてフルフラットな面を形成できるようになっている。
【0228】
本実施形態のウエハステージWST’及び計測ステージMST’は、前述した第3の実施形態に係るウエハステージWST及び計測ステージMSTと同様に、ウエハステージ駆動部(80〜87)により2次元面内で駆動されるようになっている。
【0229】
前記干渉計システムは、
図20に示されるように、投影光学系PLの投影中心(光軸AX)、アライメント系ALGそれぞれの検出中心、及び投影光学系PLの投影中心から所定距離−X方向に離れた位置をそれぞれ通るY軸に平行な測長軸をそれぞれ有する3つのY軸干渉計IF3、IF4、IF2と、投影光学系PLの投影中心(光軸AX)及びアライメント系ALGの検出中心を結ぶX軸に平行な測長軸をそれぞれ有する2つのX軸干渉計IF1、IF5と、投影光学系PLの投影中心から所定距離−Y方向に離れた位置を通るX軸方向に平行な測長軸を有する干渉計IF6とを有している。
【0230】
ここで、ウエハステージWST’が投影光学系PLの光軸直下の位置近傍の領域(第1領域)にあり、そのウエハステージWST’上のウエハに対する露光が行われるときには、X軸干渉計IF5、Y軸干渉計IF3によってウエハステージWST’の位置が管理される。以下においては、このX軸干渉計IF5、Y軸干渉計IF3それぞれの測長軸によって規定される座標系を露光座標系と呼ぶ。
【0231】
また、ウエハステージWST’が、アライメント系ALGの検出中心直下の位置の近傍の領域(第2領域)にあり、そのウエハステージWST’上のウエハに形成されたアライメントマークの検出、例えばウエハアライメントなどが行われるときには、X軸干渉計IF5、Y軸干渉計IF4によってウエハステージWST’の位置が管理される。以下においては、このX軸干渉計IF5、Y軸干渉計IF4それぞれの測長軸によって規定される座標系をアライメント座標系と呼ぶ。
【0232】
また、計測ステージMST’が、
図20に示されるような待機位置近傍の領域にあるときには、X軸干渉計IF1、Y軸干渉計IF2によって計測ステージMST’の位置が管理される。以下においては、このX軸干渉計IF1、Y軸干渉計IF2それぞれの測長軸によって規定される座標系を待機座標系と呼ぶ。
【0233】
X軸干渉計IF6は、ウエハの露光終了後のウエハ交換などの際に、ウエハステージWST’のX軸方向に関する位置を計測する。
【0234】
上記の説明からわかるように、本実施形態では、X軸干渉計IF5、IF1は、Y軸方向及びZ軸方向に関して離間した少なくとも3本の光軸を有する多軸干渉計であり、各光
軸の出力値は独立に計測できるようになっている。従って、これらのX軸干渉計IF5、IF1では、ウエハステージWST1’、計測ステージMST’のX軸方向の位置計測以外に、Y軸回りの回転量(ローリング量)及びZ軸回りの回転量(ヨーイング量)の計測が可能となっている。また、X軸干渉計IF6は、多軸干渉計でも良いし、光軸が1本の干渉計でも良い。
【0235】
また、上記Y軸干渉計IF2,IF3,IF4は、例えばZ軸方向に関して離間した各2本の光軸を有する2軸干渉計であり、各光軸の出力値は独立に計測できるようになっている。従って、これらのY軸干渉計IF2,IF3,IF4では、ウエハステージWST’又は計測ステージMST’のY軸方向の位置計測以外に、X軸回りの回転量(ピッチング量)の計測が可能となっている。
【0236】
以下、本第4の実施形態の露光装置が備えるウエハステージWST’と計測ステージMST’とを用いた並行処理動作について、
図20〜
図23(B)に基づいて説明する。なお、以下の動作中、主制御装置20によって、投影ユニットPUの直下の第1領域に位置するステージの移動方向に応じて、液体給排システム32の液体供給装置5及び液体回収装置6の各バルブの開閉制御が前述したようにして行われ、投影光学系PLの先端レンズ91の直下には常時水が満たされている。しかし、以下では、説明を分かり易くするため、液体供給装置5及び液体回収装置6の制御に関する説明は省略する。
【0237】
図20には、ウエハステージWST’上のウエハWに対するステップ・アンド・スキャン方式の露光が前述の第1実施形態と同様にして行われている状態が示されている。このとき、計測ステージMST’は、ウエハステージWST’と衝突しない所定の待機位置にて待機している。この場合、主制御装置20は、計測ステージMST’の位置を前述の待機座標系上で管理し、ウエハステージWST’の位置を前述の露光座標系上で管理している。
【0238】
そして、ウエハステージWST’側で、例えば1ロット(1ロットは25枚又は50枚)のウエハWに対する露光が終了した段階で、主制御装置20は、計測ステージMST’を
図22(A)に示される位置まで移動させる。この
図22(A)の状態では、計測ステージMST’とウエハステージWST’とは、
図21に示されるようにウエハステージWST’に設けられた庇部111aの−X側端面と計測ステージMST’の段部111bの−X側面とが近接(若しくは接触)した状態となっている。
【0239】
ここで、ウエハステージWST’側の庇部111aのX軸方向の幅寸法が、計測ステージMST’側の段部111bのX軸方向の幅寸法より大きく設定されているので、計測ステージMST’の鏡面加工された端面(反射面)ScとウエハステージWST’の庇部111aを除く−X側端面(−X側端面の庇部111a下方の部分)との接触を回避することができるようになっている。
【0240】
次に、主制御装置20は、ウエハステージWST’と計測ステージMST’とのX軸方向の位置関係を保ちつつ、両ステージWST’、MST’を+X方向に同時に駆動する動作を開始する。
【0241】
このようにして、主制御装置20により、ウエハステージWST’、計測ステージMST’が同時に駆動されると、
図22(A)の状態では、投影ユニットPUの先端レンズ91とウエハWとの間に保持されていた水が、ウエハステージWST’、計測ステージMST’の+X側への移動に伴って、ウエハW→ウエハステージWST’→計測ステージMST’上を順次移動する。なお、上記の移動の間中、ウエハステージWST’と計測ステージMST’とは
図21に示されるような位置関係を保っている。
図22(B)には、上記の移動の途中に水(液浸領域)がウエハステージWST’、計測ステージMST’上に同時に跨って存在するときの状態、すなわちウエハステージWST’上から計測ステージMST’上に水が渡される直前の状態が示されている。この状態においてもウエハステージWST’と計測ステージMSTは
図21に示されるような位置関係を保っている。
図21の状態において、ウエハステージWST’の庇部111aのエッジと庇部111aと対向する計測ステージMST’の上面のエッジとの隙間は、0.3mm以下に維持されているため、その隙間の上を水が移動しても、その隙間への水の浸入を防止することができる。この場合、庇部111aの上面と計測ステージMST’の上面の夫々を撥水性(水との接触角が80°以上)にすることによって、その隙間への水の浸入をより確実に防止することができる。なお、この移動の間に、干渉計IF2からの干渉計ビームは計測ステージMST’の端面Sbに当たらなくなるが、それとほぼ同時に(その直前又は直後に)干渉計IF3の干渉計ビームが計測ステージMST’の端面Sbに当たるようになるので、その時点で干渉計IF3のリセット(又はプリセット)が主制御装置20によって実行されている。
【0242】
図22(B)の状態から、更にウエハステージWST’,計測ステージMST’が+X方向に同時に所定距離駆動されると、
図23(A)に示されるように、計測ステージMST’と先端レンズ91との間に水が保持された状態となる。
【0243】
次いで、主制御装置20は、ウエハステージWST’を+X方向及び−Y方向に駆動するのと並行して、計測ステージMST’を+X方向及び+Y方向に駆動する。この駆動の間に、ウエハステージWST’の端面Seには、干渉計IF5からの干渉計ビームが当たらなくなり、干渉計IF6の干渉計ビームが当たるようになるので、主制御装置20では、両干渉計ビームが当たっている状態で、干渉計IF5の計測値を用いて、干渉計IF6をプリセットする。一方、計測ステージMST’の端面Sbに干渉計IF4からの干渉計ビームが当たるようになるので、主制御装置20では、両干渉計ビームが当たるようになったいずれかの時点で、干渉計IF3の計測値を用いて、干渉計IF4をプリセットする。また、計測ステージMST’の端面Scには、干渉計IF5からの干渉計ビームが当たるようになるので、主制御装置20は、干渉計IF5のリセット(又は干渉計IF1の計測値を考慮したプリセット)を実行する。
【0244】
このようにして、ウエハステージWST’が所定のウエハ交換位置にあるとともに、計測ステージMST’が投影光学系PLの直下に位置する、
図23(B)に示されるような両ステージの配置となる。なお、ウエハステージWST’では、干渉計IF4の干渉計ビームが当たらなくなると、干渉計システムによって、Y軸方向の位置が計測できなくなるが、不図示のリニアエンコーダ等によりウエハテージWST’のY位置を管理すれば良い。あるいは、ウエハステージWST’がウエハ交換位置にあるときにウエハステージWST’のY軸方向の位置を計測可能な干渉計を追加しても良い。
図23(B)に示される状態では、ウエハステージWST’側でウエハの交換を行い、これと並行して、計測ステージMST’側では所定の計測を必要に応じて実行する。この計測として、例えばレチクルステージRST上のレチクル交換後にアライメント系ALGのベースライン計測を、上記第3の実施形態と同様にして実行する。この場合、計測ステージMST’のX軸方向の位置は干渉計IF1よりも干渉計IF5を用いて計測するのが望ましい。ウエハWの露光中にウエハステージWST’のX軸方向の位置を計測する干渉計IF5を用いて計測ステージMST’の位置を計測しつつ、ベースライン計測を行うことで、そのベースライン(量)に基づくウエハWのアライメント(位置決め)を高精度に実行することができる。
【0245】
なお、上記第3実施形態と同様、上記のアライメント系ALGのベースラインの計測とともに、前述のレチクルアライメントが行われる。
【0246】
そして、上述した両ステージWST’、MST’上における作業が終了した段階で、主制御装置20は、例えば計測ステージMST’とウエハステージWSTと’を、
図23(A)の状態に戻し、ウエハステージWST’と計測ステージMST’とを近接(又は接触)させた状態を維持したまま、XY面内で駆動し、前述と同様にして交換後のウエハWに対してウエハアライメント、すなわちアライメント系ALGによる交換後のウエハW上のアライメントマークの検出を行い、ウエハW上の複数のショット領域の位置座標を算出する。なお、このウエハアライメントの際のウエハステージWST’の位置の管理は、前述したアライメント座標系上で管理される。
【0247】
その後、主制御装置20では、ウエハステージWST’と計測ステージMST’のX軸方向の位置関係を保ちつつ、先程とは逆に両ステージWST、MSTを−X方向に同時に駆動して、ウエハステージWST’(ウエハW)を投影光学系PLの下方に移動させた後、計測ステージMST’を所定の位置に退避させる。この間も干渉計システムにおける干渉計のプリセット等が前述とは逆の手順で行われる。
【0248】
その後、主制御装置20では、上記各実施形態と同様、ウエハWに対してステップ・アンド・スキャン方式の露光動作を実行し、ウエハW上の複数のショット領域にレチクルパターンを順次転写する。
【0249】
なお、上記の説明では、計測動作として、ベースライン計測を行う場合について説明したが、これに限らず、上記第3の実施形態と同様、照度計測、照度むら計測、空間像計計測などを行うこととしても良い。また上述の第3実施形態と同様、1ロットの露光完了後に限ることなく、所定枚数(例えば1枚)のウエハ交換毎に、各種の計測を必要に応じて実行することができる。また、計測ステージMST’に波面収差計測装置を搭載して、計測動作して投影光学系PLの波面収差を計測するようにしても良い。あるいは、計測ステージMST’に観察カメラを設置して投影光学系PLの像面側に形成されている液浸領域の状態をチェックしても良い。
【0250】
また、アライメント系ALGによる交換後のウエハWのアライメントマークの検出は、必ずしも、ウエハステージWST’と計測ステージMST’とが所定の近接状態を保ちながら実行する必要はなく、両ステージが離れた後にアライメントマークの検出を開始しても良いし、両ステージが近接した状態で一部のアライメントマークの検出を行った後に、両ステージを離間して、残りのアライメントマークの検出を行うようにしても良い。
【0251】
以上説明したように、本第4の実施形態の露光装置によると、上記第3の実施形態と同様に、ウエハステージWST’(又は計測ステージMST’)が、液体(水)が供給される投影光学系PL直下の第1領域に位置する第1の状態から計測ステージMST’(又はウエハステージWST’)が第1領域に位置する第2の状態に遷移させる際に、ステージ駆動系(ウエハステージ駆動部(80〜87)を含んで構成される)により、ウエハステージWST’側の庇部111aと計測ステージMST’側の段部111bとが係合状態とされ、ウエハステージWST’の上面と計測ステージMST’の上面とによってフルフラットな面が実現される。このため、投影光学系PLとその直下にある少なくとも一方のステージ(このステージは、移動に伴って一方のステージから他方のステージに切り換わる)との間に水(液体)を保持したままの状態で、両ステージの間隙から液体を漏らすことなく、一方のステージが第1領域に位置する第1の状態から他方のステージが前記第1領域に位置する第2の状態に遷移させることが可能となる。すなわち、ウエハステージWST’側で投影光学系PLと水(液体)とを介した露光動作が行われた後、計測ステージMST’側で投影光学系PLの直下で計測を開始するまでの間に、ウエハステージWST’と投影光学系PLとの間に水が保持された状態から計測ステージMST’と投影光学系PLとの間に水が保持された状態に、水の全回収、再度の供給という工程を経ることなく、遷移させることが可能となる。また、計測ステージMST’による計測の終了後、ウエハステージWST’による露光を開始するまでについても同様である。
【0252】
従って、ウエハステージWST’側での露光動作の終了から計測ステージMST’側での計測動作開始までの時間、及び計測ステージMST側での計測終了からウエハステージWST’側での露光動作の開始までの時間を短縮(すなわち、液浸露光でない通常の露光装置(非液浸の露光装置)と同程度に維持)して、スループットの向上を図ることが可能となる。また、投影光学系PLの像面側には、水(液体)が常に存在するので、前述した水染み(ウォーターマーク)が発生するのを効果的に防止することができる。
【0253】
また、本第4の実施形態では、ウエハステージWST’に庇部111aを設け、それと係合する段部111bを計測ステージMST’に設けているので、両ステージが対向する側の計測ステージMST’の端面Scに反射面を設けているにもかかわらず、支障なく、ウエハステージWST’と投影光学系PLとの間に水が保持された状態から計測ステージMST’と投影光学系PLとの間に水が保持された状態(又はその逆)に遷移させることが可能である。
【0254】
また、液浸露光により、高解像度かつ空気中と比べて大焦点深度の露光を行うことで、レチクルRのパターンを精度良くウエハ上に転写することができ、例えばデバイスルールとして70〜100nm程度の微細パターンの転写を実現することができる。
【0255】
なお、上記第4の実施形態では、ウエハステージWST’側に庇部111aが設けられ、計測ステージMST’側に段部111bを有する突部111cが設けられる場合について説明したが、本発明がこれに限られるものではなく、ウエハステージWST’側に段部を有する突部が設けられ、計測ステージMST’側に庇部が設けられても良い。また、上記第4の実施形態では、計測ステージMST’の+X側の端部が上端部に段部111bが形成された単一の突部111cで形成された場合について説明したが、これは、その突部111cの+X側の端面Scを反射面とする必要からこのようにしたものであるが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、反射面を形成する必要がないのであれば、突部111bに相当する部分は、上端部に庇部111aに所定のクリアランスを介して係合可能な段部が形成されていれば良く、残りの部分は如何なる形状であっても良い。同様に、ウエハステージWST’側には上端部に庇部111aが設けられていれば、残りの部分の形状は、如何なる形状であっても良い。
【0256】
また、上記第4の実施形態においては、庇部111aはウエハステージWST’に一体的に形成されているが、ウエハステージWST’の本体から着脱可能なプレート部材で庇部111aを形成しても良い。
【0257】
また、庇部111aと段部111bとが係合した状態で、庇部111aと段部111bとの間に弾性シール部材が介在するような位置に弾性シール部材を設ける構成を採用しても良い。すなわち、例えば、庇部111aの−X側端部に弾性シール部材を設けることで、ウエハステージWST’と計測ステージMST’との間の水漏れを完全に防止することができる。また、弾性シール部材を設けることにより、ウエハステージWST’と計測ステージMST’とが接触するような場合にも、その衝撃を低減することができる。勿論、弾性シール部材を計測ステージ側に設けることとしても良いし、弾性シール部材に代えて、ウエハステージと計測ステージとの少なくとも一方の、両ステージが対向する位置に、撥水コートを施すこととしても良い。
【0258】
なお、上記第4の実施形態のステージの一方に庇部を設け、他方に段部を設けるという概念は、2つのステージが計測ステージとウエハステージである場合のみならず、2つの
ステージがいずれもウエハステージである場合にも採用することができる。
【0259】
すなわち、例えば、上述した第1の実施形態(
図2参照)や第2の実施形態(
図12参照)のようなステージ装置の構成を採用する場合には、ウエハステージWST1とウエハステージWST2とのX軸方向に関する位置関係は変わらないので、
図24に示されるように、一方のウエハステージのX軸方向一側に庇部111a、他方のウエハステージのX軸方向他側に段部111bがその上端部に形成された突部111cを備える構成を採用することができる。
【0260】
また、例えば、
図25(A)に示されるような、ウエハステージWST1”、WST2”のX軸方向に関する位置関係が変更されるステージ装置を採用する場合、
図25(B)に示されるように、ウエハステージWST1”、WST2”のそれぞれが、庇部と段部を有する突部とを備える構成を採用する必要がある。このような構成を採用することにより、ウエハステージWST1”が−X側にあり、ウエハステージWST2”が+X側にある場合や、ウエハステージWST1”が+X側にあり、ウエハステージWST2”が−X側にある場合のいずれであっても、前述した第4の実施形態と同様、水漏れを抑制した状態で、一方のウエハステージ上に水が接触している状態から、他方のウエハステージ上に水が接触している状態に遷移させることができる。
【0261】
なお、上述の各実施形態においては、先端レンズ91の下に保持されている水が、一方のステージ上から他方のステージ上へ移動するときには、先端レンズ91の下に水を保持したまま、水の供給と回収を停止するようにしても良い。特に、水の供給によって水の圧力が高くなる場合には、2つのステージの間隙から水が漏れやすくなるので、水の供給と回収を停止しておくのが望ましい。
【0262】
なお、上記各実施形態では、液体として超純水(水)を用いるものとしたが、本発明がこれに限定されないことは勿論である。液体としては、化学的に安定で、照明光ILの透過率が高く安全な液体、例えばフッ素系不活性液体を使用しても良い。このフッ素系不活性液体としては、例えばフロリナート(米国スリーエム社の商品名)が使用できる。このフッ素系不活性液体は冷却効果の点でも優れている。また、液体として、照明光ILに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、また、投影光学系やウエハ表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油等)を使用することもできる。また、光源としてF2レーザを用いる場合には、液体として、フッ素系の液体(例えば、フォンブリンオイル)を使用することができる。
【0263】
また、上記各実施形態で、回収された液体を再利用するようにしても良く、この場合は回収された液体から不純物を除去するフィルタを液体回収装置、又は回収管等に設けておくことが望ましい。
【0264】
なお、上記実施形態では、投影光学系PLの最も像面側の光学素子が先端レンズ91であるものとしたが、その光学素子は、レンズに限られるものではなく、投影光学系PLの光学特性、例えば収差(球面収差、コマ収差等)の調整に用いる光学プレート(平行平面板等)であっても良いし、単なるカバーガラスであっても良い。投影光学系PLの最も像面側の光学素子(上記実施形態では先端レンズ91)は、照明光ILの照射によってレジストから発生する飛散粒子又は液体中の不純物の付着等に起因して液体(上記実施形態では水)に接触してその表面が汚れることがある。このため、その光学素子は、鏡筒40の最下部に着脱(交換)自在に固定することとし、定期的に交換することとしても良い。
【0265】
このような場合、液体に接触する光学素子がレンズであると、その交換部品のコストが高く、かつ交換に要する時間が長くなってしまい、メンテナンスコスト(ランニングコス
ト)の上昇やスループットの低下を招く。そこで、液体と接触する光学素子を、例えば先端レンズ91よりも安価な平行平面板とするようにしても良い。
【0266】
また、上記各実施形態において、液体(水)を流す範囲はレチクルのパターン像の投影領域(照明光ILの照射領域)の全域を覆うように設定されていれば良く、その大きさは任意で良いが、流速、流量等を制御する上で、照射領域よりも少し大きくしてその範囲をできる限り小さくしておくことが望ましい。
【0267】
また、上記各実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式等の走査型露光装置に本発明が適用された場合について説明したが、本発明の適用範囲がこれに限定されないことは勿論である。すなわちステップ・アンド・リピート方式の縮小投影露光装置にも本発明は好適に適用できる。
【0268】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0269】
また、上記各実施形態の露光装置の光源は、ArFエキシマレーザ光源に限らず、KrFエキシマレーザ光源、F2レーザ光源などのパルスレーザ光源や、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)などの輝線を発する超高圧水銀ランプなどを用いることも可能である。
【0270】
また、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、投影光学系の倍率は縮小系のみならず等倍および拡大系のいずれでも良い。
【0271】
《デバイス製造方法》
次に上記各実施形態の露光装置をリソグラフィ工程で使用するデバイスの製造方法の実施形態について説明する。
【0272】
図26には、デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートが示されている。
図26に示されるように、まず、ステップ201(設計ステップ)において、デバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップ202(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。一方、ステップ203(ウエハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
【0273】
次に、ステップ204(ウエハ処理ステップ)において、ステップ201〜ステップ203で用意したマスクとウエハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によってウエハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップ205(デバイス組立てステップ)において、ステップ204で処理されたウエハを用いてデバイス組立てを行う。このステップ205には、ダイシング工程、ボンディング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。
【0274】
最後に、ステップ206(検査ステップ)において、ステップ205で作成されたデバイスの動作確認テスト、耐久テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にデバイスが完成し、これが出荷される。
【0275】
図27には、半導体デバイスにおける、上記ステップ204の詳細なフロー例が示されている。
図27において、ステップ211(酸化ステップ)においてはウエハの表面を酸化させる。ステップ212(CVDステップ)においてはウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ213(電極形成ステップ)においてはウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ214(イオン打ち込みステップ)においてはウエハにイオンを打ち込む。以上のステップ211〜ステップ214それぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0276】
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップ215(レジスト形成ステップ)において、ウエハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップ216(露光ステップ)において、上で説明した露光装置によってマスクの回路パターンをウエハに転写する。次に、ステップ217(現像ステップ)においては露光されたウエハを現像し、ステップ218(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップ219(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。
【0277】
これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
【0278】
以上説明した本実施形態のデバイス製造方法を用いれば、露光工程(ステップ216)において上記各実施形態の露光装置を用いてエネルギビーム(照明光IL)によりウエハ(基板)を露光することで、ウエハ上にデバイスパターンを形成するので、高スループットかつ高精度な露光を長期に渡って実現することができる。従って、微細パターンが形成された高集積度のマイクロデバイスの生産性を向上することができる。