(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の保護粘着フィルムは、ハードコートフィルム(A)の少なくとも一方の面側に、厚さ15μm以上の粘着剤層(B)を有する総厚さ150μm以上の保護粘着フィルムであって、前記ハードコートフィルム(A)が、厚さ130μm以上の樹脂フィルム(a1)の少なくとも一方の面側にハードコート層(a2)を有するものであり、かつ、前記ハードコート層(a2)の表面に稜間角136°のビッカース圧子を荷重1mNで押し込んで測定されるマルテンス硬さが250N/mm
2以上であることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の保護粘着フィルムとしては、前記保護粘着フィルムの表面の傷つきを防止し、かつ、光学フィルム等の被着体の表面に、直接、貼付した場合であっても、光学フィルムの傷つきや変形(凹み等)を防止するうえで、総厚さ150μm以上のものを使用する。前記保護粘着フィルムは、もっぱら前記情報表示装置の表面を保護するための粘着フィルムとして好適に使用することができ、いわゆるインセル型及びオンセル型の情報表示装置の表面を構成する偏光板等の光学フィルムを保護するための粘着フィルムとしてより好適に使用することができる。
【0018】
前記保護粘着フィルムとしては、150μm〜500μmの厚さのものを使用することが好ましく、150μm〜400μmの厚さのものを使用することがより好ましく、150μm〜350μmの厚さのものを使用することが、前記光学フィルムの表面に、直接、貼付した場合であっても、光学フィルムの傷つきを防止でき、かつ、携帯電子端末等の最終製品の薄型化及び軽量化に貢献できるためさらに好ましい。
【0019】
前記保護粘着フィルムを構成するハードコートフィルム(A)としては、厚さ130μm以上の樹脂フィルム(a1)の少なくとも一方の面側にハードコート層(a2)を有するものを使用する。
【0020】
前記ハードコートフィルム(A)としては、前記樹脂フィルム(a1)の片面側に、直接または他の層を介して、前記ハードコート層(a2)が設けられたものを使用することが好ましく、前記樹脂フィルム(a1)の片面に、直接、前記ハードコート層(a2)が設けられたものを使用することが、携帯電子端末等の薄型化及び軽量化を図るうえでより好ましい。
【0021】
また、前記ハードコートフィルム(A)としては、前記ハードコート層(a2)の表面に稜間角136°のビッカース圧子を荷重1mNで押し込んで測定されるマルテンス硬さが250N/mm
2以上であるものを使用する。ここで、前記マルテンス硬さが250N/mm
2未満であるハードコートフィルムを用いて製造した保護粘着フィルムは、その表面硬度が著しく低下するため、前記課題を解決できない場合がある。
【0022】
-
前記マルテンス硬さは、250N/mm
2〜800N/mm
2の範囲であることが好ましく、250N/mm
2〜500N/mm
2の範囲であることがより好ましく、250N/mm
2〜450N/mm
2の範囲であることが、ハードコートフィルム(A)の傷つきを防止でき、かつ、光学フィルム等に、直接、貼付した場合であっても、切断加工時のクラックを効果的に抑制できるため好ましい。
【0023】
ここで、前記マルテンス硬さは、前記樹脂フィルム(a1)の片面または両面にハードコート層(a2)が設けられたハードコートフィルム(A)を用意し、それを平滑なガラス板の表面に、前記ハードコート層(a2)が上面となるように置き、その表面(ハードコート層(a2)からなる面)に稜間角136°のビッカース圧子を荷重1mNで押し込んで測定される値を指す。
【0024】
また、前記ハードコートフィルム(A)としては、それを構成するハードコート層(a2)からなる表面の鉛筆硬度が、3H以上であるものを使用することが好ましく、4H以上であるものを使用することが、前記ハードコートフィルム(A)に粘着剤層(B)を積層し保護粘着フィルムとした場合であっても、その表面硬度の低下を抑制でき、その結果、ハードコートフィルム(A)の傷つき防止と、光学フィルム等の変形や傷つきの防止とをより高いレベルで両立できるため好ましい。
【0025】
前記ハードコートフィルム(A)を構成する樹脂フィルム(a1)としては、厚さ130μm以上のものを使用する。これにより、光学フィルム等に、直接、貼付した場合であっても、光学フィルムの傷つきを効果的に防止できる保護粘着フィルムを得ることができる。
【0026】
前記厚さは、130μm〜300μmの範囲であることが好ましく、150μm〜250μmの範囲であることが、光学フィルム等に、直接、貼付した場合であっても、光学フィルムの傷つきを効果的に防止できる保護粘着フィルムを得るうえでより好ましい。
【0027】
前記樹脂フィルム(a1)としては、前記ハードコートフィルム(A)のマルテンス硬さを250N/mm
2以上に設計できる樹脂フィルムを適宜選択し使用することができる。
【0028】
前記樹脂フィルム(a1)としては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム等を使用することができる。
【0029】
前記樹脂フィルム(a1)としては、3GPa〜15GPaの範囲の弾性率を有するものを選択し使用することが、マルテンス硬さが250N/mm
2以上のハードコートフィルム(A)を得るうえで好ましく、また、保護粘着フィルムを使用する際に、前記樹脂フィルムが変形しにくく、保護粘着フィルムの表面硬度の低下を効果的に抑制することができるため好ましい。また、前記範囲の弾性率を有する樹脂フィルム(a1)を用いることによって、最終的に得られる保護粘着フィルムが比較的柔軟となり、その結果、前記保護粘着フィルムを、例えば穏やかな曲面部等に貼付する際に、前記曲面部へ追従しやすいため好ましい。
【0030】
前記樹脂フィルム(a1)としては、透明性の高いものを使用することが、前記保護粘着フィルムを情報表示装置であるディスプレイの表面に設置した場合であっても、良好な視認性を確保できるため好ましい。前記樹脂フィルム(a1)の全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0031】
前記樹脂フィルム(a1)としては、ハードコート層(a2)との密着性をより一層向上させることを目的として、プライマー層が設けられたものを使用することができる。
【0032】
また、前記樹脂フィルム(a1)としては、前記ハードコート層(a2)や粘着剤層(B)との密着性をより一層向上させることを目的として、サンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、コロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線照射処理、酸化処理などの表面処理が施されたものを使用することができる。
【0033】
前記樹脂フィルム(a1)としては、帯電防止剤等を含有する樹脂フィルムを使用することができる。
【0034】
前記帯電防止剤としては、例えばノニオン系帯電防止剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸グリセリンエステル、アルキルポリエチレンイミン等を挙げることができる。カチオン系帯電防止剤としては、アルキルアミン塩、アルキル第4級アンモニウム塩、アルキルイミダゾリン誘導体等を挙げることができる。また、エチレンオキサイドを骨格に持つアクリレート化合物なども使用することができる。
【0035】
また、前記帯電防止剤としては、導電性高分子としてポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン及びこれらの誘導体を使用することができる。金属酸化物としてアンチモンドープ型酸化錫(ATO)、錫ドープ型酸化インジウム(ITO)、アルミニウムドープ型酸化亜鉛、アンチモン副酸化物などを使用することができる。また、前記帯電防止剤としては、その他にリチウムイオンなどの金属イオンを混合するイオン伝導型の帯電防止剤も用いることができる。
【0036】
前記ハードコートフィルム(A)を構成するハードコート層(a2)としては、前記したとおり、前記ハードコート層(a2)の表面に稜間角136°のビッカース圧子を荷重1mNで押し込んで測定されるマルテンス硬さが250N/mm
2以上となりうるものを使用する。
【0037】
前記ハードコート層(a2)としては、各種ハードコート剤を用いて形成される硬化物層が挙げられ、例えば活性エネルギー線硬化性組成物を含有するハードコート剤を用いて形成された層が挙げられる。
【0038】
前記ハードコート層(a2)としては、3μm〜25μmの厚さのものを使用することが好ましく、4μm〜20μmの厚さのものを使用することがより好ましく、5μm〜16μmの厚さのものを使用することが、ハードコートフィルム(A)の傷つきを防止でき、かつ、光学フィルム等に、直接、貼付した場合であっても、光学フィルムの傷つきを効果的に防止できる保護フィルムを得ることができ、前記ハードコート層(a2)が形成される際の、ハードコート剤の硬化収縮に起因したハードコートフィルム(A)及び保護粘着フィルムの反りの発生を防止するうえでさらに好ましい。
【0039】
前記ハードコート層(a2)の形成に使用可能なハードコート剤としては、前記した範囲のマルテンス硬さを備えたハードコートフィルム(A)を得るうえで、(メタ)アクリレートを含有するハードコート剤を使用することが好ましく、前記ハードコート剤の硬化収縮を抑制し、かつ、高い表面硬度と耐久性とに優れたハードコート層を形成するうえで、ウレタン(メタ)アクリレート(X)を含有するハードコート剤を使用することがより好ましい。
【0040】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)としては、各種ウレタン(メタ)アクリレートを使用することができ、なかでも、分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートを使用することが、マルテンス硬さが250N/mm
2以上のハードコートフィルム(A)を得るうえで好ましい。
【0041】
前記分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えばポリイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応させて得られるものを使用することが好ましい。
【0042】
前記ポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2−メチル−1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ジイソシアナトシクロヘキサンなどの脂環式ポリイソシアネートなどを使用することができる。
【0043】
前記ポリイソシアネートとしては、前記脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネートの3量体を使用することもできる。
【0044】
前記ポリイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートであるノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートを使用することが、マルテンス硬さが250N/mm
2以上のハードコートフィルム(A)を得るうえで好ましく、ハードコートフィルム(A)の傷つきを防止でき、かつ、光学フィルム等に、直接、貼付した場合であっても、光学フィルムの傷つきをより効果的に防止できるため好ましい。
【0045】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)の製造に使用可能な前記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどを単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0046】
前記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを使用することが、耐擦傷性などの耐久性により一層優れたハードコート層(a2)を備えたハードコートフィルムを得るうえで好ましい。
【0047】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)は、前記ポリイソシアネートと前記水酸基を有する(メタ)アクリレートとを、ウレタン化触媒の存在下、常法でウレタン化反応させることによって製造することができる。
【0048】
前記ウレタン化触媒としては、例えば、ピリジン、ピロール、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミンなどのアミン化合物;トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィンなどのリン化合物;ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫などの有機錫化合物、オクチル酸亜鉛などの有機亜鉛化合物を使用することができる。
【0049】
前記方法で得られたウレタン(メタ)アクリレート(X)は、1種を単独で使用、または2種以上を組み合わせ使用することができる。
【0050】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)としては、前記ポリイソシアネートとしてノルボルナンジイソシアネートを用いて得られたウレタンアクリレートと、前記ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートを用いて得られたウレタンアクリレートとを組み合わせ使用することが、マルテンス硬さが250N/mm
2以上のハードコートフィルム(A)を得るうえで好ましく、ハードコートフィルム(A)の傷つきを防止でき、かつ、光学フィルム等に、直接、貼付した場合であっても、光学フィルムの傷つきをより効果的に防止できるため好ましい。
【0051】
また、前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)としては、ビス((メタ)アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート等のイソシアヌレートを用いて得られたウレタン(メタ)アクリレートを、前記したウレタン(メタ)アクリレートと組み合わせ使用することが、マルテンス硬さが250N/mm
2以上のハードコートフィルム(A)を得るうえで好ましく、ハードコートフィルム(A)の傷つきを防止でき、かつ、光学フィルム等に、直接、貼付した場合であっても、光学フィルムの傷つきをより効果的に防止できるため好ましい。
【0052】
前記したような組み合わせのウレタン(メタ)アクリレートを使用することで、前記した範囲のマルテンス硬さを備え、前記硬化収縮によるハードコートフィルムの反りを効果的に抑制でき、かつ、高い表面硬度と耐久性とに優れたハードコートフィルムを得ることができる。
【0053】
前記ハードコート層(a2)の形成に使用可能なハードコート剤としては、前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)以外のその他の(メタ)アクリレートを含有するものを使用することができる。
【0054】
前記その他の(メタ)アクリレートとしては、例えば分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(Y)が挙げられる。
【0055】
前記多官能(メタ)アクリレート(Y)としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0056】
前記多官能(メタ)アクリレート(Y)としては、前記ハードコート層(a2)の耐擦傷性などの耐久性をより一層向上させるうえで、その(メタ)アクリロイル基当量が50g/eq.〜200g/eq.の範囲のものを使用することが好ましく、70g/eq.〜150g/eq.の範囲のものを使用することがより好ましく、80g/eq.〜120g/eq.の範囲のものを使用することがさらに好ましい。前記範囲の(メタ)アクリロイル基当量を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(アクロイル基当量:88g/eq.)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(アクロイル基当量:118g/eq.)などが挙げられる。
【0057】
前記多官能(メタ)アクリレート(Y)は、前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)と組み合わせ使用することが好ましい。
【0058】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)と前記多官能(メタ)アクリレート(Y)との質量比[(X)/(Y)]は、前記した範囲のマルテンス硬さを備えたハードコートフィルム(A)を形成し、ハードコート層(a2)の耐擦傷性などの耐久性をより一層向上するうえで、90/10〜10/90の範囲であることが好ましく、80/20〜20/80の範囲であることがより好ましく、75/25〜25/75の範囲であることがさらに好ましい。
【0059】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)と前記多官能(メタ)アクリレート(Y)との合計使用量は、前記ハードコート剤の不揮発分100質量部に対し、10質量部〜99.95質量部であることが好ましく、20質量部〜99.5質量部であることが好ましい。
【0060】
前記ハードコート層(a2)の形成に使用可能なハードコート剤としては、前記したもののほかに、本発明の効果を損なわない範囲で、分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有するモノ(メタ)アクリレート、分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有するジ(メタ)アクリレートなどのその他の(メタ)アクリレートを含有するものを使用することができる。それらは、前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)及び前記多官能(メタ)アクリレート(Y)の合計100質量部に対して、40質量部以下で使用することが好ましく、20質量部以下で使用することがより好ましい。
【0061】
前記ハードコート層(a2)の形成に使用可能なハードコート剤としては、活性エネルギー線を照射することによって硬化反応を開始しうる光重合開始剤を含有するものを使用することができる。
【0062】
前記光重合開始剤としては、分子内開裂型光重合開始剤及び水素引き抜き型光重合開始剤が挙げられる。分子内開裂型光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノンなどのアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステルなどが挙げられる。
【0063】
一方、水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系化合物;ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンなどのアミノベンゾフェノン系化合物;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルサルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルサルフォニル)プロパン−1−オンなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0064】
また、前記ハードコート剤としては、光増感剤を含有するものを使用することができる。
【0065】
前記光増感剤としては、例えば、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリブチルアミンなどの3級アミン化合物、o−トリルチオ尿素などの尿素化合物、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネートなどの硫黄化合物等を使用することができる。
【0066】
前記光重合開始剤及び光増感剤の使用量は、前記ハードコート剤の不揮発成分100質量部に対し、各々0.05質量部〜20質量部であることが好ましく、0.5質量部〜10質量部であることがより好ましい。なお、前記活性エネルギー線として電子線、α線、β線、γ線などの電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤や光増感剤を使用する必要はない。
【0067】
前記ハードコート剤としては、溶媒を含有するものを使用することができる。
【0068】
前記溶媒としては、例えば、アセトン、イソブチルアルコール、2−プロパノール、イソペンチルアルコール、エチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−ノルマル−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、オルト−ジクロルべンゼン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソペンチル、酢酸エチル、酢酸ノルマル−ブチル、酢酸ノルマル−プロピル、酢酸ノルマル−ペンチル、酢酸メチル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、ジクロルメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、スチレン、テトラクロルエチレン、テトラヒドロフラン、1,1,1−トリクロルエタン、トルエン、ノルマルヘキサン、1−ブタノール、2−ブタノール、メタノール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノン、メチル−ノルマル−ブチルケトン等を、単独または2種以上組合せ使用することができる。
【0069】
前記ハードコート剤としては、耐汚染性や耐指紋性等を付与する目的で、フッ素原子及びケイ素原子を有する活性エネルギー線硬化性化合物(Z)を含有する防汚剤を使用することができる。
【0070】
前記フッ素原子及びケイ素原子を有する活性エネルギー線硬化性化合物(Z)としては、例えばフルオロカーボン鎖、シロキサン鎖、または、ハイドロカーボン鎖等を有する化合物を使用することができる。特に、活性エネルギー線硬化性化合物(Z)としては、フルオロカーボン鎖、シロキサン鎖のいずれか一方または両方を有するものを使用することができる。
【0071】
前記活性エネルギー線硬化性化合物(Z)としては、フルオロカーボン鎖としてポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有し、かつ、シクロポリシロキサン構造を有するものを使用することが好ましく、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端に2価の連結基を介してシクロポリシロキサン構造が結合し、前記シクロポリシロキサン構造に2価の連結基を介して(メタ)アクリロイル基が結合した構造を有する化合物(z1)を使用することが好ましい。
【0072】
前記化合物(z1)が有するポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖としては、炭素原子数1〜3個の2価フッ化炭素基と酸素原子が交互に連結した構造を有するものが挙げられる。炭素原子数1〜3個の2価フッ化炭素基は、1種類であっても2種類以上の組み合わせであってもよく、具体的には、下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0074】
(上記一般式(1)中、Xは下記式(1−1)〜(1−5)であり、Xが下記式(1−1)〜(1−5)のいずれか1種類のものであっても良いし、また、下記式(1−1)〜(1−5)のうち、2種類以上のものがランダム状又はブロック状に存在していてもよい。また、nは繰り返し単位を表す2〜200の整数である。)
【0076】
前記ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖としては、前記したなかでも、前記式(1−1)で表されるパーフルオロメチレン基と、前記式(1−2)で表されるパーフルオロエチレン基とによって構成されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖であることが、防汚性と滑り性を向上させるうえで好ましい。
【0077】
前記式(1−1)で表されるパーフルオロメチレン基と、前記式(1−2)で表されるパーフルオロエチレン基とのモル比率[前記式(1−1)で表されるパーフルオロメチレン基/前記式(1−2)で表されるパーフルオロエチレン基]は、1/10〜10/1の範囲であることが好ましい。また、前記一般式(1)中のnの値は、2〜200の範囲であることが好ましく、10〜100の範囲であることがより好ましく、20〜80の範囲であることがさらに好ましい。
【0078】
前記化合物(z1)が有するシクロポリシロキサン構造としては、例えば、下記一般式(2)で表される構造が挙げられる。
【0080】
(上記一般式(2)中、R
1はメチル基であり、R
3はポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖と結合する2価の有機基であり、R
4は(メタ)アクリロイル基を有する1価の有機基である。また、mは2〜5の整数である。)
【0081】
前記シクロポリシロキサン構造としては、前記したなかでも、上記一般式(2)中のmが3であるシクロテトラシロキサン構造であることが好ましい。
【0082】
前記ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とシクロポリシロキサン構造とを結合する2価の連結基としては、2価の有機基であれば特に限定されないが、例えば、下記一般式(3)で表されるものが挙げられる。
【0084】
(上記一般式(3)中、Yは炭素原子数1〜6のアルキレン基である。)
【0085】
また、前記シクロポリシロキサン構造と(メタ)アクリロイル基とを結合する2価の連結基としては、2価の有機基であれば特に限定されないが、例えば、下記一般式(4)で表されるものが挙げられる。
【0087】
(上記一般式(4)中、Z
1、Z
2及びZ
3は、それぞれ独立に炭素原子数1〜6のアルキレン基である。)
【0088】
前記化合物(z1)は、例えば、下記の(1)〜(3)の工程を経ることによって製造することができる。
(1)ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端にアリル基を有する化合物とヒドロシリル基を有するシクロポリシロキサン化合物とを白金系触媒存在下で反応させ、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端にシクロポリシロキサン構造を有する化合物を得る工程。
(2)(1)で得られた化合物とアリルオキシアルカノールとを白金系触媒存在下で反応させ、(1)で得られた化合物のシクロポリシロキサン構造部位に水酸基を付加する工程。
(3)(2)で付加した水酸基にイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを反応させ、(メタ)アクリロイル基を導入する工程。
【0089】
前記方法で得られた化合物(z1)等の活性エネルギー線硬化性化合物(Z)は、前記ハードコート剤の不揮発分100質量部に対して0.05質量部〜5質量部の範囲で含まれることが好ましく、0.1質量部〜2質量部の範囲で含まれることが、より一層優れた表面硬度と防汚性とを両立するうえでより好ましい。
【0090】
また、前記ハードコート剤としては、必要に応じて、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、シリカビーズ、有機ビーズなどの添加剤;酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモンなどの無機系充填剤などを含有するものを使用することができる。
【0091】
本発明で使用するハードコートフィルム(A)は、例えば前記樹脂フィルム(a1)の片面または両面に、前記ハードコート剤を塗布し硬化させハードコート層(a2)を形成することによって製造することができる。
【0092】
前記ハードコート剤を前記樹脂フィルム(a1)に塗布する方法としては、例えば、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、かけ渡しコート、ディップコート、スピンナーコート、ホイーラーコート、刷毛塗り、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート等を用いる方法、オフセット印刷法、活版印刷法等の印刷法で塗布する方法が挙げられる。
【0093】
前記ハードコート剤を前記樹脂フィルム(a1)に塗布する方法としては、前記したなかでも、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、ワイヤーバーコート、フローコート等を用いる方法が、より均一な厚さのハードコート層(a2)を形成するできるため好ましい。
【0094】
前記ハードコート剤を硬化させる方法としては、例えば前記ハードコート剤が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)や多官能(メタ)アクリレート(Y)や活性エネルギー線硬化性化合物(Z)等の活性エネルギー線硬化性組成物を含有するものであれば、前記ハードコート剤を塗布し乾燥させた塗布面に活性エネルギー線を照射し硬化させる方法が挙げられる。
【0095】
前記活性エネルギー線としては、例えば紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線が挙げられる。
【0096】
前記活性エネルギー線を照射する装置としては、例えば紫外線であれば、その発生源として低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ(フュージョンランプ)、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光、LEDなどが挙げられる。
【0097】
前記紫外線を照射することでハードコート層(a2)を形成する場合、前記紫外線の照射は、ラジカル重合の酸素阻害を抑制するうえで、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0098】
また、前記ハードコート層(a2)を形成する際には、必要に応じて、前記活性エネルギー線を照射した後、加熱等してもよく、また、加熱後に、活性エネルギー線を照射してもよい。
【0099】
次に、本発明の保護粘着フィルムを構成する粘着剤層(B)について説明する。
【0100】
前記粘着剤層(B)としては、偏光板等の被着体に対して好適な接着力を有し、ハードコートフィルム(A)の傷つきを防止でき、かつ、光学フィルム等に、直接、貼付した場合であっても、それらの傷つきをより効果的に防止するうえで、厚さ15μm以上のものを使用する。
【0101】
前記粘着剤層(B)としては、15μm〜150μmの範囲の厚さを有するものを使用することが好ましく、20μm〜140μmの範囲の厚さを有するものを使用することがより好ましく、20μm〜130μmの範囲の厚さを有するものを使用することがより好ましく、20μm〜110μmの範囲の厚さを有するものを使用することがさらに好ましく、20μm〜60μmの範囲の厚さを有するものを使用することがさらに好ましく、20μm〜45μmの範囲の厚さを有するものを使用することが、光学フィルム等の被着体に対して好適な接着力を有し、かつ、高い表面硬度を備えた保護粘着フィルムを得るうえでさらに好ましい。
【0102】
本発明が解決しようとする上記課題は、単に、前記粘着剤層(B)の厚さを15μm以上に設定することによって解決できるのではなく、特定のマルテンス硬さを備えた前記ハードコートフィルム(A)や、保護粘着フィルムの総厚さ等の技術事項と組み合わせることによって、はじめて解決できるものである。
【0103】
前記粘着剤層(B)は、周波数1Hzでの動的粘弾性スペクトルにおける20℃での貯蔵弾性率が1.0×10
5Pa〜5.0×10
5Paであることが好ましく、1.5×10
5Pa〜4.5×10
5Paであることがより好ましく、2.0×10
5Pa〜4.0×10
5Paであることが、保護粘着フィルムの高い表面硬度を維持でき、例えば、保護粘着フィルムの表面にタッチ入力や衝撃などにより局所的な圧力が生じた場合であっても、光学フィルム等の被着体へのダメージを緩和することができ、偏光板等の変形や凹みを効果的に防止することができるためさらに好ましい。
【0104】
前記粘着剤層(B)は、粘着剤を塗布等することによって形成することができる。前記粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を使用することができる。
【0105】
なかでも、前記粘着剤としては、アクリル系重合体を含有するアクリル系粘着剤を使用することが、前記ハードコートフィルム(A)との密着性や、透明性、耐候性などをより一層向上できるため好ましい。
【0106】
前記アクリル系重合体としては、(メタ)アクリル単量体を重合して得られるものを使用することができる。前記(メタ)アクリル単量体としては、例えば(メタ)アクリレートが挙げられ、炭素原子数2〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを含有するものを使用することが好ましい。
【0107】
前記炭素原子数2〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレートなどが挙げられる。
【0108】
前記の(メタ)アクリレートとしては、前記したなかでも、炭素原子数4〜9のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、炭素原子数4〜9のアルキル基を有するアルキルアクリレートを使用することがより好ましい。
【0109】
前記炭素原子数4〜9のアルキル基を有するアルキルアクリレートとしては、n−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、エチルアクリレートが、好適な粘着力を確保しやすいためさらに好ましい。
【0110】
前記炭素原子数2〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートは、前記(メタ)アクリル単量体の全量100質量部に対して90質量部〜99質量部の範囲で使用することが好ましく、90質量部〜96質量部の範囲で使用することが好適な粘着力を確保しやすいためより好ましい。
【0111】
前記アクリル系重合体としては、例えば水酸基、カルボキシル基、アミド基などの極性基を有するものを使用することができる。
【0112】
前記アクリル系重合体は、例えば水酸基、カルボキシル基、アミド基などの極性基を有する(メタ)アクリル単量体を含有する(メタ)アクリル単量体を重合することによって製造することができる。
【0113】
前記水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのなかでも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0114】
前記カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、アクリル酸又はメタクリル酸の2量体、エチレンオキサイド変性コハク酸アクリレートなどが挙げられる。これらのなかでも、アクリル酸を使用することが好ましい。
【0115】
前記アミド基を有する(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−(パーヒドロフタルイミド−N−イル)エチルアクリレートなどが挙げられる。これらのなかでも、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリンを使用することが好ましい。
【0116】
前記その他の極性基を有するビニル系単量体としては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
【0117】
極性基を有する(メタ)アクリル単量体は、前記アクリル系重合体の製造に使用する(メタ)アクリル単量体の全量に対して0.1質量%〜20質量%の範囲で使用することが好ましく、1質量%〜13質量%の範囲で使用することがより好ましく、1.5質量%〜8質量%の範囲で使用することが、凝集力、保持力、接着性を好適な範囲に調整しやすいためさらに好ましい。
【0118】
前記アクリル系重合体の重量平均分子量は40万〜140万であることが好ましく、60万〜120万であることがより好ましい。当該重量平均分子量とすることで、接着力を特定範囲に調整しやすく、保護粘着フィルムとした際に、衝撃やタッチ入力時などの局所的な圧力を好適に緩和しやすい。
【0119】
なお、前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定することができる。より具体的には、GPC測定装置として、東ソー株式会社製「SC8020」を用いて、ポリスチレン換算値により、次のGPC測定条件で測定して求めることができる。
(GPCの測定条件)
・サンプル濃度:0.5質量%(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:100μL
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:1.0mL/min
・カラム温度(測定温度):40℃
・カラム:東ソー株式会社製「TSKgel GMHHR−H」
・検出器:示差屈折
【0120】
前記粘着剤としては、より一層凝集力を高めるうえで、前記アクリル系重合体などのほかに、架橋剤を含有するものを使用することが好ましい。
【0121】
前記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、キレート系架橋剤などが挙げられる。
【0122】
前記架橋剤は、形成される粘着剤層のゲル分率が25質量%〜85質量%となる範囲で使用することが好ましく、ゲル分率が40質量%〜80質量%となる範囲で使用することがより好ましく、50質量%〜75質量%となる範囲で使用することが、本発明の保護粘着フィルムを偏光板などの被着体に貼付した際の表面鉛筆硬度の低下を抑制することができ、接着性も十分なものとすることができる。なお、本発明におけるゲル分率は、養生後の粘着剤層をトルエン中に浸漬し、24時間放置後に残った不溶分の乾燥後の質量を測定し、元の質量に対して百分率で表したものである。
【0123】
前記粘着剤としては、より一層接着力を高めるうえで、粘着付与樹脂を含有するものを使用することができる。
【0124】
前記粘着付与樹脂は、前記アクリル系重合体100質量部に対して、10質量部〜60質量部の範囲で使用することが好ましい。さらに接着性を重視する場合は、20質量部〜50質量部の範囲で添加するのが好ましい。
【0125】
前記粘着剤としては、前記以外に公知慣用の添加剤を含有するものを使用することができる。
【0126】
前記添加剤としては、例えばガラス基材や金属部材への接着性を向上させたい場合には、粘着剤100質量部に対して、0.001質量部〜0.005質量部の範囲でシランカップリング剤を添加することが好ましい。さらに、必要に応じて、その他の添加剤として、可塑剤、軟化剤、充填剤、顔料、難燃剤などを添加することもできる。
【0127】
本発明の保護粘着フィルムは、前記方法で製造したハードコートフィルム(A)の片面または両面、好ましくは片面に、直接、前記粘着剤を塗布及び乾燥等し粘着剤層(B)を形成することによって製造することができる。
【0128】
また、本発明の保護粘着フィルムは、前記方法で製造したハードコートフィルム(A)の片面または両面、好ましくは片面に、予め離型ライナーの表面に前記粘着剤を塗布し乾燥等して得た粘着剤層(B)を転写することによって製造することができる。
【0129】
前記ハードコートフィルム(A)が両面にハードコート層を有するものである場合、前記粘着剤層(B)はその一方の側のハードコート層の表面側に設けられていることが好ましい。また、前記ハードコートフィルム(A)が片面にハードコート層(a2)を有するものである場合、前記粘着剤層(B)は、前記ハードコート層(a2)が設けられていない側の前記樹脂フィルム(a1)の表面側に設けられていることが好ましい。
【0130】
本発明の保護粘着フィルムは、ハードコートフィルム(A)や粘着剤層(B)の物性値と厚さとを特定範囲に調整して組み合わせた構成とすることにより、保護粘着フィルムに対し衝撃やタッチ入力によって局所的な圧力がかかった場合にも、その応力を適切に緩和させることができるため、被着部材へのダメージを抑制することができ、かつ、保護粘着フィルムの表面硬度を損なうことがないため、高い傷付き防止性を実現できる。
【0131】
本発明の保護粘着フィルムは、高い表面硬度を有する。具体的には、保護粘着フィルムをガラス板に貼り付けた状態での、前記保護粘着保護フィルムの鉛筆硬度は、好ましくは2H以上、より好ましくは3H以上である。したがって、本発明の保護粘着フィルムは、主に、携帯電子端末の画像表示部の保護粘着フィルム、各種ディスプレイの保護粘着フィルムとして好適に使用することができる。
【0132】
本発明の積層体は、本発明の保護粘着フィルムと偏光板との積層体である。
【0133】
従来、主に情報表示装置の製造場面においては、保護粘着フィルムと偏光板とをガラス基材を介して積層する場合があった。
【0134】
しかし、前記ガラス基材は剛体であるため、上記積層体をロール状に巻き取ることできない等の課題があった。
【0135】
また、前記ガラス基材は、比較的厚く、重いため、情報表示装置の薄型化や軽量化を図ることができない場合があった。
【0136】
本発明の積層体は、従来の厚いガラス基材を使用せず、偏光板に、直接または柔軟な樹脂フィルムを介して、前記保護粘着フィルムを貼付したものであるため、ロール状等に巻き取ることができ、いわゆるロールトゥーロールで前記積層体を製造することができ、その生産効率を従来よりも向上させることができる。
【0137】
本発明に用いる偏光板としては、通常、偏光子の両面に偏光子保護層を積層した一般的なものを使用することができる。
【0138】
偏光子はポリビニルアルコール系樹脂を用いて得られるものを使用することができる。前記ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をけん化することによって製造することができる。
【0139】
偏光子は、例えば、製膜したポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させることによって製造することができる。
【0140】
また、偏光板は、前記で得た偏光子の両面に、接着剤層を介して、トリアセチルセルロースフィルム等の偏光子保護層を積層することによって製造することができる。
【0141】
前記二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料を用いることができる。二色性色素でポリビニルアルコール系樹脂フィルムを染色するには、これらの色素を含有する水溶液に前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬することでできる。二色性色素にヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。
【0142】
前記偏光子保護層としては、特に限定はされないが、ディスプレイ材料として使用することを想定したうえで、透明性に優れる樹脂を用いて得られるものを使用することが好ましい。
【0143】
前記偏光子保護層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィン系樹脂フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0144】
また、前記偏光子層の両面に偏光子保護層を形成する場合、それぞれの面に異なる樹脂から構成される偏光子保護層を形成することが可能である。例えば、前記偏光子層の片面にトリアセチルセルロースフィルムからなる偏光子保護層を形成し、もう一方の面に、シクロオレフィン系樹脂フィルムからなる偏光子保護層を形成することができる。
【0145】
前記偏光板としては、50μm〜200μmの厚さを有するものを使用することが、
情報表示装置や携帯電子端末の軽量化及び薄型化に貢献できるため好ましい。
【0146】
[情報表示装置及び携帯電子端末]
本発明の情報表示装置としては、例えば液晶ディスプレイモジュール(LCDモジュール)と本発明の保護粘着フィルムとが積層された装置が挙げられ、前記液晶ディスプレイモジュールを構成する偏光板の表面に前記保護粘着フィルムが直接積層された装置であることが好ましい。
【0147】
前記液晶ディスプレイモジュールとしては、例えばインセル型またはオンセル型のタッチパネル機能を備えた液晶ディスプレイモジュールを好適に使用することができる。前記インセル型またはオンセル型のタッチパネル機能を備えた液晶ディスプレイモジュールは、その情報表示部の最表面が偏光板である場合が多い。そのため、本発明の情報表示装置は、前記液晶ディスプレイモジュールを構成する前記偏光板の表面に、前記保護粘着フィルムが直接、貼付されたものであることが好ましい。
【0148】
前記保護粘着フィルムが偏光板に直接貼付された情報表示装置は、例えば携帯電子端末、大型ディスプレイ、車載用ディスプレイ等に好適に使用することができる。とりわけ、タッチパネル機能を有する場合が多い携帯電子端末や車載用ディスプレイに使用されることが好ましい。
【0149】
本発明の情報表示装置は、例えば予め製造された液晶ディスプレイモジュールと、前記保護粘着フィルムとを貼り合わせることによって製造することができる。
【0150】
また、本発明の情報表示装置は、前記保護粘着フィルム及び偏光板から構成される前記積層体と、液晶ディスプレイパネル(LCD)とを、例えば透明性の高い粘着テープで貼り合わせることによって製造することができる。前記積層体は、屈曲可能な程度の柔軟性を有するため、それを、一般に剛体である液晶ディスプレイパネルに貼り合わせる際に、それらの界面に気泡を巻き込みにくく、その結果、情報表示装置の生産効率を格段に向上させることができる。
【0151】
前記構成は、前記積層体からなる構成を有するため、その表層に傷が付きにくく、局所的な応力による偏光板の凹み等を生じにくい。そのため、前記構成は、落下等によって局所的な応力を受けやすい携帯電子端末に採用されることが好ましい。
【実施例】
【0152】
以下に実施例および比較例により本発明をより具体的に説明する。
【0153】
(合成例1:ウレタンアクリレート(A1)の合成)
攪拌機、ガス導入管、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、酢酸ブチル250質量部、ノルボルナンジイソシアネート206質量部、p−メトキシフェノール0.5質量部、ジブチル錫ジアセテート0.5質量部を仕込み、空気を吹き込みながら、70℃に昇温した後、ペンタエリスリトールトリアクリレート(以下、「PE3A」と省略。)とペンタエリスリトールテトラアクリレート(以下、「PE4A」と省略。)との混合物(質量比75/25の混合物)795質量部を1時間かけて滴下した。
【0154】
滴下終了後、70℃で3時間、前記反応を継続させ、さらにイソシアネート基を示す2250cm
−1の赤外線吸収スペクトルが消失するまで反応させることによって、ウレタンアクリレート(A1)とPE4Aとを含有する酢酸ブチル溶液(不揮発分80質量%、以下、「ウレタンアクリレート(A1)溶液」と省略。)を得た。前記ウレタンアクリレート(A1)の分子量(計算値)は802であった。
【0155】
(合成例2:ウレタンアクリレート(A2)の合成)
攪拌機、ガス導入管、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、酢酸ブチル254質量部、イソホロンジイソシアネート222質量部、p−メトキシフェノール0.5質量部、ジブチル錫ジアセテート0.5質量部を仕込み、70℃に昇温した後、PE3AとPE4Aとの混合物(質量比75/25の混合物)795質量部を1時間かけて滴下した。
【0156】
滴下終了後、70℃で3時間、前記反応を継続させ、さらにイソシアネート基を示す2250cm
−1の赤外線吸収スペクトルが消失するまで反応させることによって、ウレタンアクリレート(A2)とPE4Aとを含有する酢酸ブチル溶液(不揮発分80質量%、以下、「ウレタンアクリレート(A2)溶液」と省略。)を得た。前記ウレタンアクリレート(A2)の分子量(計算値)は818であった。
【0157】
(合成例3:ウレタンアクリレート(A3)の合成)
攪拌機、ガス導入管、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、酢酸ブチル254質量部、イソホロンジイソシアネート222質量部、p−メトキシフェノール0.5質量部、ジブチル錫ジアセテート0.5質量部を仕込み、70℃に昇温した後、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート369質量部、及び、PE3AとPE4Aとの混合物(質量比75/25の混合物)398質量部を1時間かけて滴下した。
【0158】
滴下終了後、70℃で3時間、前記反応を継続させ、さらにイソシアネート基を示す2250cm
−1の赤外線吸収スペクトルが消失するまで反応させることによって、ウレタンアクリレート(A3)とPE4Aとを含有する酢酸ブチル溶液(不揮発分80質量%、以下、「ウレタンアクリレート(A3)溶液」と省略。)を得た。前記ウレタンアクリレート(A3)の分子量(計算値)は889であった。
【0159】
(調製例1:ハードコート剤(HC1)の調製)
合成例1で得られたウレタンアクリレート(A1)溶液31.3質量部、合成例2で得られたウレタンアクリレート(A2)溶液31.3質量部、合成例3で得られたウレタンアクリレート(A3)溶液25質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート/ジペンタエリスリトールペンタアクリレート=60/40(質量比))30質量部、反応性フッ素防汚剤(オプツールDAC−HP;ダイキン工業株式会社製、不揮発分20質量%)2.0質量部及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)4.5質量部を均一に攪拌した後、酢酸エチルで希釈して、不揮発分40質量%のハードコート剤(HC1)を調製した。
【0160】
(調製例2:ハードコート剤(HC2)の調製)
合成例1で得られたウレタンアクリレート(A1)溶液31.3質量部、合成例2で得られたウレタンアクリレート(A2)溶液31.3質量部、合成例3で得られたウレタンアクリレート(A3)溶液25質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート/ジペンタエリスリトールペンタアクリレート=60/40(質量比))105質量部、反応性フッ素防汚剤(オプツールDAC−HP;ダイキン工業株式会社製、不揮発分20質量%)2.0質量部及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)4.5質量部を均一に攪拌した後、酢酸エチルで希釈して、不揮発分40質量%のハードコート剤(HC2)を調製した。
【0161】
(製造例1)
SKダイン909A(綜研化学株式会社製、アクリル系粘着剤)100質量部と、コロネートL−45(日本ポリウレタン工業株式会社製、イソシアネート系架橋剤、固形分45質量%)0.7質量部とを混合し、15分攪拌することによって粘着剤を調製した。
【0162】
次に、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン化合物の剥離層を形成した剥離ライナーに、前記粘着剤を、乾燥後の厚さが25μmとなるように塗工し75℃で5分間乾燥することによって粘着剤層(1)を形成した。
【0163】
(製造例2)
粘着剤層の厚さを25μmから50μmに変更すること以外は、製造例1と同様の方法で粘着剤層(2)を得た。
【0164】
(製造例3)
粘着剤層の厚さを25μmから100μmに変更すること以外は、製造例1と同様の方法で粘着剤層(3)を得た。
【0165】
(製造例4)
粘着剤層の厚さを25μmから10μmに変更すること以外は、製造例1と同様の方法で粘着剤層(4)を得た。
【0166】
(製造例5)
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート24質量部、2−メトキシエチルアクリレート75質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2質量部、及び、酢酸エチル100質量部を混合し、反応容器内を窒素置換した後、80℃で8時間重合させることによって、重量平均分子量70万のアクリル共重合体を得た。
【0167】
次に、前記アクリル共重合体と酢酸エチルとを混合することによってアクリル共重合体の固形分が30質量%の粘着剤を得た。
【0168】
次に、上記粘着剤100質量部と、コロネートHX(日本ポリウレタン工業株式会社製、イソシアネート系架橋剤、固形分75質量%)0.1質量部とを混合し、15分攪拌したものを、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面にシリコーン化合物の剥離層を形成した剥離ライナーに、乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、75℃で5分間乾燥することによって粘着剤層(5)を形成した。
【0169】
(実施例1)
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製 コスモシャインA4300)の片面に、バーコーターを用いて前記ハードコート剤(1)を塗布し、80℃で90秒間乾燥した後、空気雰囲気下で紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製「F450」、ランプ:120W/cm、Hバルブ)を用い、照射光量0.5J/cm
2で紫外線を照射することによって、厚さが12μmのハードコート層を備えたハードコートフィルムを得た。
【0170】
次に、前記ハードコートフィルムの前記ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる面に、前記粘着剤層(1)を4kg/cmの加圧し貼り合わせ、40℃で2日間養生することによって、厚さ225μmの保護粘着フィルム(1)を得た。
【0171】
(実施例2)
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ250μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ287μmの保護粘着フィルム(2)を得た。
【0172】
(実施例3)
前記粘着剤層(1)の代わりに前記粘着剤層(2)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ250μmの保護粘着フィルム(3)を得た。
【0173】
(実施例4)
前記粘着剤層(1)の代わりに前記粘着剤層(3)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ300μmの保護粘着フィルム(4)を得た。
【0174】
(実施例5)
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ250μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用すること、及び、前記粘着剤層(1)の代わりに前記粘着剤層(2)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で厚さ312μmの保護粘着フィルム(5)を得た。
【0175】
(実施例6)
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ250μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用すること、及び、前記粘着剤層(1)の代わりに前記粘着剤層(3)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ362μmの保護粘着フィルム(6)を得た。
【0176】
(実施例7)
前記ハードコート剤(1)の代わりにハードコート剤(2)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ225μmの保護粘着フィルム(7)を得た。
【0177】
(実施例8)
前記ハードコート剤(1)の代わりにハードコート剤(2)を用いること、及び、ハードコート層の厚さを12μmから6μmに変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ219μmの保護粘着フィルム(8)を得た。
【0178】
(実施例9)
前記粘着剤層(1)の代わりに粘着剤層(5)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ225μmの保護粘着フィルム(9)を得た。
【0179】
(実施例10)
ハードコート層の厚さを12μmから15μmに変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ228μmの保護粘着フィルム(10)を得た。
【0180】
(実施例11)
ハードコート層の厚さを12μmから6μmに変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ219μmの保護粘着フィルム(11)を得た。
【0181】
(実施例12)
ハードコート層の厚さを12μmから4μmに変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ217μmの保護粘着フィルム(12)を得た。
【0182】
(比較例1)
厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製 コスモシャインA4300)の片面に、バーコーターを用いて前記ハードコート剤(1)を塗布し、80℃で90秒間乾燥した後、空気雰囲気下で紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製「F450」、ランプ:120W/cm、Hバルブ)を用い、照射光量0.5J/cm
2で紫外線を照射することによって、厚さが12μmのハードコート層を備えたハードコートフィルムを得た。
【0183】
次に、前記ハードコートフィルムの前記ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる面に、前記粘着剤層(1)を4kg/cmの加圧し貼り合わせ、40℃で2日間養生することによって、厚さ162μmの保護粘着フィルム(13)を得た。
【0184】
(比較例2)
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ137μmの保護粘着フィルム(14)を得た。
【0185】
(比較例3)
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ112μmの保護粘着フィルム(15)を得た。
【0186】
(比較例4)
ハードコート層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ213μmの保護粘着フィルム(16)を得た。
【0187】
(比較例5)
ハードコート層の厚さを12μmから1μmに変更すること、及び、粘着剤層(1)の代わりに粘着剤層(4)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ214μmの保護粘着フィルム(17)を得た。
【0188】
(比較例6)
前記粘着剤層(1)の代わりに前記粘着剤層(4)を使用し、その厚さを25μmから10μmに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ210μmの保護粘着フィルム(18)を得た。
【0189】
上記実施例及び比較例にて得られた保護粘着フィルムについて以下の評価を行った。得られた結果を表1〜3に示す。
【0190】
(貯蔵弾性率の測定方法)
前記粘着剤層の貯蔵弾性率は、粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KSTD)を用いて測定した。具体的には、前記試験機の測定部である平行円盤の間に試験片を挟み込み、周波数1Hzで20℃での貯蔵弾性率(G’)を測定した。上記測定で使用する試験片としては、前記製造例で得た粘着剤層を厚さ1mm及び直径8mmの大きさからなる円状に裁断したものを使用した。
【0191】
(ハードコートフィルムのマルテンス硬さ)
粘着剤層を積層していないハードコートフィルムを、そのハードコート層が上になるようにガラス板の上に置き、4隅をセロハンテープで固定した。その後、フィッシャースコープHM2000Xyp(フィッシャーインストルメンツ社)を用いてハードコート層表面のマルテンス硬さを、稜間角136°のビッカース圧子を20秒間かけて1mN荷重に押し込んで測定した。
【0192】
保護粘着フィルムの表面鉛筆硬度及び応力緩和性を測定することによって、前記タッチ入力等に起因した偏光板等の損傷を防止できるか否かを評価した。
【0193】
(保護粘着フィルムの鉛筆硬度の測定)
上記の実施例及び比較例で得られた保護粘着フィルムをガラス板に貼り付け、その表面(ハードコート層)の鉛筆硬度を、JIS K 5600−5−4(1999年版)の規定に基づき、硬度H〜4Hの鉛筆と、株式会社井元製作所製の塗膜用鉛筆引掻き試験機(手動式)を用いて測定した。
【0194】
(応力緩和性1の評価)
保護粘着フィルムを構成する粘着剤層の表面に、偏光板の代替として、片面が黒マット面である厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせたものを試験片とした。前記貼付は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを構成する黒マット面が表側(前記粘着剤層の表面に接触しない側)となるように行った。
【0195】
次に、ガラス板上に、前記試験片を構成する保護粘着フィルムのハードコート層が上側になるように載置し、その4隅をセロハン粘着テープで固定した。
【0196】
次に、前記固定した試験片のハードコート層からなる面を、株式会社井元製作所製の塗膜用鉛筆引掻き試験機(手動式)を用いて、JIS K 5600−5−4(1999年版)の規定に倣った方法で、硬度4Hの鉛筆で引っ掻いた。
【0197】
前記鉛筆で引っ掻いた箇所の裏面にあたる、前記黒マット面を目視で観察し、その引っ掻き跡が見えるかどうかを観察した。評価は下記基準で行った。
【0198】
◎ 引っ掻き跡は全く観察されなかった。
【0199】
○ 引っ掻き跡に起因した薄白色の線が確認された。
【0200】
△ 引っ掻き跡に起因した白色の線が明確に確認された。
【0201】
× 引っ掻き跡に起因した凸形状の線が明確に確認された。
【0202】
(応力緩和性2の評価)
荷重を750gから1kgに変更したこと以外は、上記「(応力緩和性1の評価)」の欄に記載した方法と同様の方法及び基準で評価した。
【0203】
評価結果を、以下の表1〜3に示す。なお、表中のPETはポリエチレンテレフタレートを指す。
【0204】
【表1】
【0205】
【表2】
【0206】
【表3】
【0207】
上記表1〜3から明らかなように、本願発明の保護粘着フィルムは、好適な表面硬度を有しながらも優れた応力緩和性を実現できる。一方、比較例1〜3の保護粘着フィルムは、実施例1と同様のハードコート剤や粘着剤を使用しているにもかかわらず、本発明の構成を充足しないため、表面硬度または応力緩和性に劣るものであった。また、比較例4の保護粘着フィルムは、ハードコート層が無いため表面硬度が低いものであった。比較例5の保護粘着フィルムは、表面硬度、応力緩和性ともに劣るものであった。比較例6の保護粘着フィルムは、荷重が大きくなった場合に、応力緩和性の低下を引き起こした。