(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2層のプリプレグ(X)の繊維方向が85〜95°であり、前記第4層のプリプレグ(X)の繊維方向が30〜60°であり、前記第5層のプリプレグ(X)の繊維方向が120〜150°である、請求項1に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
前記スタックとして、2つ以上の前記積層ユニットを含み、かつ厚さ方向に隣り合う前記積層ユニットの間に前記樹脂フィルム(Y)が挟まれるように積層されたスタックを用いる、請求項1又は2に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
前記スタックとして、同一の積層構成の2つの前記積層ユニットを含み、かつそれら積層ユニットが、それぞれの積層順序が厚さ方向において対称となるように積層されたスタックを用いる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
下記樹脂層A〜Eがこの順番に積層され、樹脂層A、B、D、Eのそれぞれの2層間において平面視で強化繊維の繊維方向がなす角度のうち、最小の角度が45°以下である繊維強化複合材料を得る、繊維強化複合材料の製造方法。
樹脂層A、B、D、E:前記プリプレグ(X)から形成され、一方向に引き揃えられた強化繊維を含む樹脂層。
樹脂層C:前記樹脂フィルム(Y)から形成され、一方向に引き揃えられた強化繊維を含まない樹脂層。
前記スタックにおける各プリプレグ(X)の繊維方向と、前記伸縮シートを緊張させる方向とがなす角度が15〜75°となるように、一方向以上の方向に前記伸縮シートを緊張させた状態で前記スタックを予備成形する、請求項13〜15のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、スタック中のプリプレグの繊維方向は、スタックを第1層側から平面視したときの左回りを正とする。
プリプレグの繊維方向とは、強化繊維が一方向に引き揃えられたUDプリプレグの場合はその強化繊維の配向方向とする。強化繊維が直交するように製織されたクロスプリプレグの場合は、その経糸の強化繊維の配向方向を繊維方向とする。その他の強化繊維布帛を基材としたプリプレグの場合は、プリプレグのシート面内における前記プリプレグを左右対称に2分する対称軸であって、繊維軸方向が当該対称軸の方向になっている強化繊維の成分が最大である対称軸の方向を繊維方向とする。
【0013】
[繊維強化複合材料の製造方法]
本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、連続して配列された複数本の強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸された複数のシート状のプリプレグ(X)が、繊維方向が異なるように積層されたスタックを、一対の型を備える成形型により立体形状に成形して繊維強化複合材料を得る方法である。本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、スタックを一度の圧縮成形で繊維強化複合材料とする方法であってもよく、スタックを予備成形してプリフォームとし、さらに前記プリフォームを圧縮成形して繊維強化複合材料を得る方法であってもよい。繊維蛇行やシワ等の外観不良を抑制しつつ、可展面ではない曲面を有する三次元曲面形状等の繊維強化複合材料を得やすい点では、スタックを予備成形してプリフォームとし、さらに前記プリフォームを圧縮成形して繊維強化複合材料を得る方法が好ましい。
【0014】
(スタック)
スタックは、連続して配列された複数本の強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸された複数のシート状のプリプレグ(X)が、繊維方向が異なるように積層されたものである。このようなスタックを用いることで、機械特性に優れた立体形状の繊維強化複合材料を製造することができる。
【0015】
スタックとしては、複数のプリプレグ(X)と、樹脂組成物からなる1つ以上の樹脂フィルム(Y)(ただし、プリプレグ(X)を除く。)とが積層されたスタックを用いることが好ましい。これにより、シワ等の外観不良が抑制された繊維強化複合材料をより短時間で製造することができる。
【0016】
複数のプリプレグ(X)と1つ以上の樹脂フィルム(Y)とが積層されたスタックとしては、プリプレグ(X)/プリプレグ(X)/樹脂フィルム(Y)/プリプレグ(X)/プリプレグ(X)の5層構成の積層ユニットを含むスタックが好ましい。前記積層ユニットにおいては、第1層のプリプレグ(X)の繊維方向を0°としたとき、第2層、第4層及び第5層のプリプレグ(X)の繊維方向がそれぞれ15〜165°であり、かつ各層の繊維方向が異なっている。このような積層ユニットを含むスタックを用いることで、強化繊維が疑似等方に配列した、優れた機械特性と優れた外観が両立された立体形状の繊維強化複合材料を製造することができる。
【0017】
積層ユニットにおいては、第2層のプリプレグ(X)の繊維方向が85〜95°であり、第4層のプリプレグ(X)の繊維方向が30〜60°であり、第5層のプリプレグ(X)の繊維方向が120〜150°であることがより好ましい。すなわち、[0°/θ1/樹脂フィルム(Y)/θ2/θ3](ただし、θ1〜θ3は第1層のプリプレグ(X)の繊維方向を0°としたときの第2層、第4層及び第5層のプリプレグ(X)の繊維方向であり、θ1=85〜95°、θ2=30〜60°、θ3=120〜150°である。)の積層構成の積層ユニットがより好ましい。
なお、[0°/θ1/樹脂フィルム(Y)/θ2/θ3]における0°は、繊維方向が0°のプリプレグ(X)を意味する。θ1、θ2及びθ3も同様に、それぞれ繊維方向がθ1、θ2、θ3のプリプレグ(X)を意味する。
【0018】
第2層のプリプレグ(X)の繊維方向の角度θ1は、シワ等の外観不良を抑制しつつ、優れた機械特性と優れた外観が両立された立体形状の繊維強化複合材料を得やすい点から、85〜95°が好ましく、87.5〜92.5°がより好ましく、90°が特に好ましい。
【0019】
第4層のプリプレグ(X)の繊維方向の角度θ2は、シワ等の外観不良を抑制しつつ、優れた機械特性と優れた外観が両立された立体形状の繊維強化複合材料を得やすい点から、30〜60°が好ましく、40〜50°がより好ましく、45°が特に好ましい。
【0020】
第5層のプリプレグ(X)の繊維方向の角度θ3は、シワ等の外観不良を抑制しつつ、優れた機械特性と優れた外観が両立された立体形状の繊維強化複合材料を得やすい点から、120〜150°が好ましく、130〜140°がより好ましく、135°が特に好ましい。
また、θ2及びθ3が前記範囲内であれば、第4層及び第5層の部分をせん断変形させやすく、4軸に強化繊維が配向されている積層ユニットを含むスタックであってもシワの発生を抑制しつつ容易に成形することができる。また、得られる繊維強化複合材料には、4軸方向に強化繊維が比較的均等に配向されるため、機械特性を均等にすることができる。
【0021】
第4層の繊維方向と第5層の繊維方向の角度の差は、90°であることがより好ましい。これにより、第4層及び第5層の部分をせん断変形させやすくなり、シワの発生を抑制しつつ機械特性に優れた繊維強化複後材料を容易に製造できる。
【0022】
積層ユニットとしては、繊維強化複合材料の機械特性が最も均等になることから、
図1、及び
図2A〜
図2Dに示すように、積層構成が[0°/90°/樹脂フィルム(Y)/45°/135°]である積層ユニット1が特に好ましい。すなわち、第1層から順にプリプレグ(X)2、プリプレグ(X)3、樹脂フィルム(Y)4、プリプレグ(X)5及びプリプレグ(X)6が積層され、プリプレグ(X)3の繊維方向であるθ1が90°、プリプレグ(X)5の繊維方向であるθ2が45°、プリプレグ(X)6の繊維方向であるθ3が135°である積層ユニット1が特に好ましい。
なお、
図2A〜
図2Dにおける破線は強化繊維の繊維方向を意味する。
【0023】
スタックとしては、積層ユニットの単体であってもよく、積層ユニットを2つ以上含むものであってもよい。スタックとしては、2つ以上の積層ユニットを含む場合、厚さ方向に隣り合う積層ユニットの間に樹脂フィルム(Y)が挟まれるように積層されたスタックとしてもよい。この場合、積層ユニット内に用いる樹脂フィルム(Y)の厚みと、積層ユニット間に用いる樹脂フィルム(Y)の厚みとは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0024】
スタックとしては、同一の積層構成の2つの積層ユニットを含み、かつそれら積層ユニットが、それぞれの積層順序が厚さ方向において対称となるように積層されたスタックでもよい。すなわち、スタックとしては、二つの積層ユニットを含み、一方の積層ユニットの積層順序と他方の積層ユニットの積層順序とが互いの積層面に対して鏡面対称となっているスタックでもよい。具体的には、例えば、[0°/θ1/樹脂フィルム(Y)/θ2/θ3/樹脂フィルム(Y)/θ3/θ2/樹脂フィルム(Y)/θ1/0°)]の積層構成のスタックとしてもよい。また、積層ユニット間の樹脂フィルム(Y)がないスタックであってもよく、例えば[0°/θ1/樹脂フィルム(Y)/θ2/θ3/θ3/θ2/樹脂フィルム(Y)/θ1/0°)]の積層構成のスタックとしてもよい。
また、スタックとしては、[0°/θ1/樹脂フィルム(Y)/θ2/θ3/θ2/樹脂フィルム(Y)/θ1/0°]の積層構成のスタックとしてもよい。
【0025】
<プリプレグ(X)>
スタックに用いるプリプレグ(X)は、連続して配列された複数本の強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸されたシート状のプリプレグである。
プリプレグ(X)の形態は、強化繊維が一方向に引き揃えられたUDプリプレグであってもよく、強化繊維が直交するように製織されたクロスプリプレグであってもよい。また、プリプレグ(X)は、その他のバイアスクロス、3軸クロス、Multi−axial Warp Knit等の強化繊維布帛を基材としたプリプレグであってもよい。
【0026】
プリプレグ(X)の厚みは、0.03〜1.0mmが好ましく、0.1〜0.5mmがより好ましい。スタックに用いる複数のプリプレグ(X)の厚みは、全て同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。後述の積層ユニットを含むスタックにおいては、せん断変形の制御が容易になる点から、第1層及び第2層のプリプレグ(X)は同じ厚さであることが好ましく、また第4層及び第5層のプリプレグ(X)は同じ厚さであることが好ましい。
【0027】
プリプレグ(X)に用いる強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、高強度ポリエステル繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、窒化珪素繊維、ナイロン繊維等が挙げられる。これらの中でも、比強度及び比弾性に優れることから、炭素繊維が好ましい。
【0028】
マトリックス樹脂組成物としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等を含むものが挙げられる。これらの中でも、硬化後の強度を高くできることから、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物が好ましい。
【0029】
<樹脂フィルム(Y)>
スタックに用いる樹脂フィルム(Y)を形成する樹脂組成物としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等を含むものが挙げられる。これらの中でも、硬化後の強度を高くできることから、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物が好ましい。樹脂フィルム(Y)を形成する樹脂組成物は、プリプレグ(X)を形成するマトリクス樹脂組成物と同じであってもよく、異なっていてもよい。得られる繊維強化複合材料を構成する各層の間の密着性の観点では、プリプレグ(X)に含まれるマトリックス樹脂組成物と同一の樹脂組成の樹脂フィルム(Y)を用いることが好ましい。
【0030】
樹脂フィルム(Y)としては、上記の樹脂組成物に強化繊維の短繊維が分散されたシートモールディングコンパウンド(SMC)を使用することもできる。SMCに用いる強化繊維の種類としては、例えば、プリプレグ(X)で挙げたものと同じものが挙げられる。このSMCの使用によって、成形時の軟化性を保持しながら、得られる繊維強化複合材料の機械特性をより向上させること可能である。
【0031】
樹脂フィルム(Y)は、樹脂フィルム(Y)を境に分けられたプリプレグ(X)の積層部分(対部分)が、それぞれ成形時に互いの影響を受けることなく動くことができるように、プリフォームや繊維強化複合材料の成形時の温度条件において軟化することが好ましい。
【0032】
具体的には、積層構成が[0°/θ1/樹脂フィルム(Y)/θ2/θ3]である積層ユニットを含むスタックを成形する場合、[0°/θ1]の積層構成である第1層及び第2層の対部分と、[θ2/θ3]の積層構成である第4層及び第5層の対部分とが、成形時に互いの影響受けることなく、互いに独立して動くことができるように、樹脂フィルム(Y)が軟化することが好ましい。これにより、予備成形時や圧縮成形時に、第1層及び第2層の対部分は、45°及び135°方向に多少伸ばしたり、突っ張らせたりしてせん断変形しやすくなる。また、第4層及び第5層の対部分は、(θ3−θ2)/2方向及び(θ3−θ2)/2+90°方向に多少伸ばしたり、突っ張らせたりしてせん断変形しやすくなる。その結果、4軸以上に強化繊維が配向されているスタックであってもシワを発生させることなく容易に成形することが可能となる。
【0033】
樹脂フィルム(Y)をプリプレグ(X)のマトリックス樹脂組成物と異なる樹脂組成の樹脂フィルムとすることにより、第1層及び第2層の対部分と第4層及び第5層の対部分とが、成形時に互いの影響を受けることなく、互いに独立して動く独立性の程度を制御することもできる。
【0034】
樹脂フィルム(Y)の厚みは、0.1〜1.0mmが好ましく、0.15〜0.7mmがより好ましい。樹脂フィルム(Y)の厚みが前記下限値以上であれば、第1層及び第2層の対部分と第4層及び第5層の対部分のそれぞれが、互いの影響を受けることなく独立して動く自由度が向上する。樹脂フィルム(Y)の厚みが前記上限値以下であれば、シワの発生を抑制できる。スタック中に用いる樹脂フィルム(Y)の厚みは、全て同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0035】
(製造方法)
繊維強化複合材料の製造方法としては、例えば、以下の工程(1)〜(6)を有する方法が挙げられる。
(1)プリプレグ(X)2枚を、一方の繊維方向を0°とし、もう一枚のプリプレグ(X)の繊維方向がθ1となるように積層する。ただし、θ1は85〜95°とする。
(2)工程(1)で得た積層体における繊維方向がθ1のプリプレグ(X)上に、樹脂フィルム(Y)を積層する。
(3)工程(2)で積層した樹脂フィルム(Y)上に、繊維方向がθ2となるようにプリプレグ(X)を積層し、さらに繊維方向がθ3となるようにプリプレグ(X)を積層し、5層構成の積層ユニットとする。ただし、θ2は30〜60°、θ4は120〜150°とする。
(4)必要に応じて積層ユニットと樹脂フィルム(Y)を重ねてスタックとする。
(5)工程(4)で得たスタックを予備成形してプリフォームを得る。
(6)工程(5)で得たプリフォームを一対の型を備える成形型にて圧縮成形し、立体形状を有する繊維強化複合材料を得る。
【0036】
工程(1)〜(4)においてスタックを形成する際、最終的に得られる繊維強化複合材料の機械特性の低下を抑制しやすいことから、層間のエアーを排除できるようにプリプレグ(X)及び樹脂フィルム(Y)を積層することが好ましい。エアーを排除する方法としては、例えば、形成したスタックを平面型で挟圧してスタック内部に含まれるエアーを取り除く方法、スタックをバギングフィルムで覆い、前記バギングフィルム内を真空脱気する方法(以下、「真空バッグ法」という。)等が挙げられる。なかでも、エアーを効率的に排除できることから真空バッグ法が好ましい。
【0037】
工程(1)〜(4)は一つの例であり、個々のプリプレグ(X)及び樹脂フィルム(Y)を積層する手順は問わない。また、工程(4)は、スタックが1つの積層ユニットからなる場合は省略される。
【0038】
工程(5)においてスタックを予備成形してプリフォームを得る方法としては、例えば、人手によりスタックを成形型に押し付けるように貼り込む方法、成形型にスタックを配置し、その上にゴム膜等を配置した後に内部を真空引きしてスタックを成形型に圧着させる方法、一対の型(雌雄型)からなる成形型によりスタックを挟圧する方法等が挙げられる。なかでも、予備成形が短時間で行えることから、成形型でスタックを挟圧する方法が好ましい。この場合、後述のように樹脂製又はゴム製の伸縮シートを利用することがより好ましい。
なお、雄雌型とは、一方の型の凸部又は凹部に、他方の凹部又は凸部が対応する一対の型のことを意味する。
【0039】
予備成形に用いる成形型は、最終的に得る繊維強化複合材料の形状に対応していればよく、繊維強化複合材料の形状に相補的な形状になっている必要はない。予備成形に用いる成形型の材質としては、特に限定されず、金属、ケミカルウッド等が挙げられる。なかでも、材料が安価であること、及び加工が容易であることから、ケミカルウッドが好ましい。
【0040】
予備成形においては、必要に応じてスタックを加熱することが好ましい。これにより、プリプレグ(X)や樹脂フィルム(Y)が軟化する。例えば、積層構成が[0°/θ1/樹脂フィルム(Y)/θ2/θ3]である積層ユニットを予備成形する際、プリプレグ(X)及び樹脂フィルム(Y)の軟化により、第1層及び第2層の対部分と第4層及び第5層の対部分それぞれが、互いの影響を受けずに独立して動きやすくなり、それぞれ独立にせん断変形する自由度が増す。その結果、4軸以上に強化繊維が配向されているスタックでもシワを発生させることなく予備成形することが容易になる。
スタックの加熱方式としては、例えば、熱風式、赤外線式等が挙げられる。加熱方式としては、迅速に積層体を加熱できる点から、赤外線式が好ましい。
【0041】
工程(6)では、例えば、工程(5)で得たプリフォームを繊維強化複合材料の形状に応じたクリアランスが設定されている成形型内に設置し、プレス機を用いて所定の温度、圧力で加熱加圧することでプリフォームを硬化させ、繊維強化複合材料を得る。
その際、成形型は所定の温度に調温しておき、圧縮成形した後、その温度のまま繊維強化複合材料を取り出すことが好ましい。これにより、成形型の昇降温を行う必要がなくなり、成形サイクルを高めることができ、生産性が高まる。
【0042】
本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、工程(5)の予備成形を行わずにスタックを圧縮成形して繊維強化複合材料を得る方法であってもよい。
【0043】
本発明によって製造する繊維強化複合材料の形状としては、特に限定されない。繊維強化複合材料の形状としては、例えば、
図3A〜
図3Cに例示した繊維強化複合材料30や、
図4に例示した繊維強化複合材料40のような、平面状のスタックの成形時に各層にせん断変形を伴う、平面展開できない曲面(複数の平面の組み合わせを含む)を有する形状、すなわち三次元曲面形状が挙げられる。また、繊維強化複合材料の形状は、せん断変形させることなく折り曲げたりすることで成形できるような平面展開可能な曲面の形状であってもよい。本発明の製造方法は、三次元曲面形状の繊維強化複合材料の製造、すなわちスタックを平面に展開できない形状に成形する場合に特に有効である。
【0044】
プリフォーム及び繊維強化複合材料においては、スタックの第1層の繊維方向である0°方向はどの方向に向いていてもよく、任意に設定できる。
【0045】
積層ユニットを含むスタックを用いた製造方法で得られる繊維強化複合材料としては、下記樹脂層A〜Eがこの順番に積層され、樹脂層A、B、D、Eのそれぞれの2層間において平面視で強化繊維の繊維方向がなす角度のうち、最小の角度が45°以下であるものが好ましい。
樹脂層A、B、D、E:一方向に引き揃えられた強化繊維を含む樹脂層。
樹脂層C:一方向に引き揃えられた強化繊維を含まない樹脂層。
【0046】
樹脂層A、B、D、Eのそれぞれの2層間において平面視で強化繊維の繊維方向がなす角度のうち、最小の角度とは、以下の角度α1〜α6のうち最も小さい角度である。
角度α1:樹脂層Aの強化繊維の繊維方向と樹脂層Bの強化繊維の繊維方向とがなす角度。
角度α2:樹脂層Aの強化繊維の繊維方向と樹脂層Dの強化繊維の繊維方向とがなす角度。
角度α3:樹脂層Aの強化繊維の繊維方向と樹脂層Eの強化繊維の繊維方向とがなす角度。
角度α4:樹脂層Bの強化繊維の繊維方向と樹脂層Dの強化繊維の繊維方向とがなす角度。
角度α5:樹脂層Bの強化繊維の繊維方向と樹脂層Eの強化繊維の繊維方向とがなす角度。
角度α6:樹脂層Dの強化繊維の繊維方向と樹脂層Eの強化繊維の繊維方向とがなす角度。
【0047】
この繊維強化複合材料は、一方向に引き揃えられた強化繊維を含まない樹脂層Cを有するため、優れた外観を有するとともに、複雑な立体形状を有することができるものである。
【0048】
前記樹脂層A〜Eを有する繊維強化複合材料としては、より優れた機械特性が得られる点から、樹脂層Aの強化繊維の繊維方向を0°としたとき、樹脂層B、樹脂層D及び樹脂層Eの強化繊維の繊維方向がそれぞれ15〜165°であることが好ましい。
また、角度α1〜α6のうち最小の角度は、より優れた機械特性が得られる点から、15〜45°が好ましい。
【0049】
また、本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、繊維蛇行やシワ等の外観不良を抑制しやすい点から、以下の方法が好ましい。プリプレグ(X)が繊維方向が異なるように積層されたスタックを、一対の型を備える成形型により立体形状の繊維強化複合材料を製造するに際して、前記の一対の型のうちの一方の型と前記スタックとの間に、樹脂製又はゴム製の伸縮シートを特定の方向に緊張させながら配置した状態で前記一対の型を近接させ、前記一対の型によって前記伸縮シートを引き延ばしながら前記スタックを成形する。
【0050】
本実施形態の繊維強化複合材料の製造方法は、プリプレグ(X)を含むスタックを圧縮成形して繊維強化複合材料を得るのに先立って、一対の型を備える成形型により前記スタックを予備成形してプリフォームを製造するのに適した方法である。
また、本実施形態の繊維強化複合材料の製造方法は、前記した樹脂フィルム(Y)を含むスタックを用いる方法と組み合わせることもできる。
【0051】
本実施形態においては、成形型の一対の型のうちの一方の型とスタックとの間に、樹脂製又はゴム製の伸縮シートを特定の方向に緊張させながら配置した状態で一対の型を近接させ、前記一対の型によって伸縮シートを引き延ばしながらスタックを成形する。このように、成形の際に伸縮シートが引き延ばされることで、スタックが前記伸縮シートの延びに追従して成形型の外側に向かって引っ張られる。これにより、スタック中の強化繊維が、強化繊維が配向していない方向への変形にも追従しやすくなることで、プリフォームや強化繊維複合材料に繊維蛇行やシワの発生等の外観不良が発生することが抑制される。
【0052】
本実施形態の製造方法の一態様としては、例えば、成形型における一対の型として、スタックを挟み込んで加圧することで所望の形状に成形できる成形面を備える上型と下型を用いて、以下のように成形を行う態様が挙げられる。下型の成形面における上型に対向する部分に伸縮シートが部分的に接するように、伸縮シートを緊張させながら配置し、前記伸縮シート上に前記スタックを配置した状態で、上型と下型とを近接させてスタックを成形する。このような態様は、スタックの成形がより安定して行え、プリフォームや強化繊維複合材料に繊維蛇行やシワの発生等の外観不良が発生することを抑制しやすい。
【0053】
本実施形態においては、スタックよりもサイズの大きい伸縮シートを用いることが好ましい。この場合、成形型における伸縮シートに近い側の型に関しては、伸縮シートを充分に引き延ばすために、平面視でスタックを成形する成形面の外側にも伸縮シートが接する平面領域を備えることが好ましい。
【0054】
本実施形態の強化繊維複合材料の製造方法においては、成形時のスタックにおいて特に大きなせん断変形がかかる部分に伸縮シートを配置して成形を行うことが好ましい。具体的には、目的のプリフォームの形状の三次元CADデータに基づいて成形シミュレーションを行い、算出された応力値(Von Mises Stress)が100MPa以上となる部分に伸縮シートを配置して成形を行うことが好ましい。成形シミュレーションには、例えば、非線形解析ソフト(Livermore Softtware Techology Corporation社製、製品名:LS−DYNA)を用いることができる。
【0055】
本発明の製造方法の具体例として、例えば、
図5に例示した成形型100を用いる態様について説明する。成形型100は、プリフォームの製造に用いられる。
成形型100は、下型110と、上型112と、を備える。この例の成形型においては、下型110は固定型であり、上型112は可動型である。
【0056】
下型110は、平面視形状が略長方形の本体部114と、本体部114の上面に長さ方向に並んで設けられた2つの凸部116,118とを備えている。下型110の本体部114の上面における凸部116と凸部118の間には凹部120が形成されている。凸部116は、平面視形状が矩形状で、かつ正面視形状が台形状であり、四角錐の上部が水平に切り欠かれたような形状になっている。凸部118の形状は凸部116の形状と同様になっている。
【0057】
下型110においては、凸部116の正面側の表面と上面における凹部120寄りの部分、凹部120の表面、本体部114における凹部120に対応する部分、及び凸部118の正面側の表面と上面における凹部120寄りの部分が、スタックを成形する成形面122となっている。
下型110には複数のネジ穴111が設けられている。
【0058】
上型112は、メイン型124と、サブ型126と、を備える。
メイン型124は、下型110との間にスタックを挟み込んだ状態で加圧して成形するための部材であって、上型112においてスタックに特に大きなせん断変形をかける部分である。メイン型124の下面側の部分には、下型110の成形面122における正面側の部分と相補的な凹凸形状の成形面128が形成されている。
【0059】
サブ型126は、メイン型124と共にスタックを成形するための部材であって、成形時に伸縮シート及びスタックがずれないように固定する固定用治具としても機能する部分である。サブ型126の下面型の部分には、下型110の成形面122における背面側の部分と相補的な凹凸形状の成形面130が形成されている。
サブ型126には、下型110に設けられたネジ穴111に対応する位置に複数の貫通穴127が設けられている。サブ型126を下型110に近接させた状態で、貫通穴127にネジ(図示しない)を通し、下型110に設けたネジ穴111に螺入して締めることで、サブ型126を下型110上で固定できるようになっている。
【0060】
成形型の型材としては、特に限定されず、例えば、金属、石膏、ケミカルウッド等が挙げられる。なかでも、コストと加工性の点から、ケミカルウッドが好ましい。
【0061】
成形型100を用いるプリフォームの製造は、例えば、以下の方法で行う。
図6に示すように、下型110上に、成形面122全体を覆うように伸縮シート10を配置する。次いで、伸縮シート10上にスタック12を配置した後、上型112におけるサブ型126を下型110の上面における背面側の部分に設置し、伸縮シート10及びスタック12をずれないように固定する。
【0062】
次いで、
図7に示すように、張力付与手段が備えるクランプ132,134によって伸縮シート10を把持して張力を付与し、凸部116と凸部118の上面に伸縮シート10が部分的に接するようにして伸縮シート10を緊張させる。
伸縮シートに張力を付与して緊張させる際には、伸縮シートを延伸することが好ましい。この場合の伸縮シートの延伸倍率は、成形時に下型110と上型112によって伸縮シートが引き延ばされたときに、その変形が前記伸縮シートの弾性領域を超えないように調節することが好ましい。これにより、プリフォームに繊維蛇行やシワの発生等の外観不良が発生することを抑制する効果が充分に得られやすくなる。
【0063】
伸縮シートに対して張力を付与する方向は、伸縮シートが均一に緊張し、伸縮シートにシワや弛緩部分が発生しないようにすることができれば、特に限定されない。例えば、
図7に示すような状態においては、伸縮シート10をクランプ132,134に固定し、
図7に記載された矢印の方向に、伸縮シート10を延伸するのが好ましい。
【0064】
また、伸縮シートに対して張力を付与する方向は、一対の型が合わさる方向に対して垂直な面の方向、すなわち、
図7のような場合では、下型110の凸部116及び凸部118の上面と伸縮シートとの接触面積がなるべく大きくなる方向(水平方向)にできるだけ近いことが好ましい。これにより、成形時に下型と上型によって伸縮シートが均一に引き伸ばされやすくなるため、プリフォームに繊維蛇行やシワの発生等の外観不良が発生することを抑制する効果が得られやすくなる。
この場合、伸縮シートに対して張力を付与する方向と、水平方向とがなす角度は、45°以下が好ましく、1°以下がより好ましい。
【0065】
次いで、スタック12を加熱し、スタック12に含有されているマトリクス樹脂組成物を軟化させる。このとき、伸縮シート10と下型110も同時に加熱されてもよい。
スタックの加熱温度は、マトリクス樹脂組成物が軟化する温度であればよく、マトリクス樹脂組成物の種類によっても異なるが、65〜80℃が好ましく、70〜75℃がより好ましい。スタックの加熱温度が下限値以上であれば、マトリクス樹脂組成物が軟化し、成形型に基づくプリフォームの形状の再現性が良好となる。スタックの加熱温度が上限値以下であれば、プリフォームの成形中にマトリクス樹脂組成物の硬化が開始することを抑制しやすい。
【0066】
スタックを加熱する方法は、特に限定されず、例えば、赤外線ヒータによる加熱、熱風加熱、プリプレグへの通電加熱等が挙げられる。
【0067】
次いで、
図8に示すように、スタック12が加熱された状態で、上型112におけるメイン型124を下型110の正面側の部分に近接させ、下型110と上型112で伸縮シート10及びスタック12を挟み込んで加圧して予備成形する。このとき、伸縮シート10を緊張させていることで、下型110と上型112によって伸縮シート10が引き延ばされながらスタック12が成形される。これにより、スタック12が伸縮シート10の延びに追従して型の外側(この例では型の前面側)に向かって引っ張られ、スタック12中の強化繊維が変形にも追従しやすくなる。そのため、得られるプリフォームに繊維蛇行やシワの発生等の外観不良が発生することが抑制される。
【0068】
スタックの予備成形時の面圧は、0.01〜0.1MPaが好ましく、0.03〜0.04MPaがより好ましい。面圧が下限値以上であれば、スタックが十分に形状追従できる。面圧が上限値以下であれば、予備成形の段階で強化繊維が広がることを抑制しやすい。
【0069】
成形後はプリフォーム20を冷却し、下型110から上型112を離した後に下型110から脱型することで、
図9に示すプリフォーム20が得られる。プリフォーム20の量産性を重視する場合は、これを脱型する際においても、伸縮シート10に付与した張力はそのまま保持するのが好ましい。一方、プリフォーム20の形状の精度を重視するような場合は、プリフォーム20を脱型する際において、伸縮シート10に付与した張力は、適宜解除してもよい。
下型から取り外す際のプリフォームの温度は、30℃以下が好ましく、23℃以下がより好ましい。
プリフォームを冷却する方法は、特に限定されず、例えば放冷によって冷却することができる。
【0070】
本実施形態においては、スタックにおける各プリプレグ(X)の繊維方向と、伸縮シートを緊張させる方向とがなす角度φが15〜75°となるように、一方向以上の方向に前記伸縮シートを緊張させた状態で前記スタックを成形することが好ましい。
【0071】
前記角度φを15°以上とすることで、最終的に得る繊維強化複合材料の形状が複雑であっても十分な成形性が得られやすい傾向にある。前記角度φは、より好ましくは30°以上である。
また、前記角度φを75°以下とすることで、スタックの成形時の強化繊維の蛇行やプリプレグの裂けを防ぎやすい傾向にある。前記角度φは、より好ましくは60°以下である。
【0072】
さらに、伸縮シートの利用する態様においては、スタックの成形時に伸縮シートの緊張状態が均一に維持されることがより好ましいため、二方向以上の方向に伸縮シートを緊張させた状態を保ちながら、スタックを成形することがより好ましい。
【0073】
なお、伸縮シートを用いた予備成形後のプリフォームの形状が完全には成形型の成形面の形状に沿わないことがあるが、このような場合には、必要に応じて、伸縮シートを用いた一度目の成形後の一次成形物を、伸縮シートを配置しない状態で一対の型により再び成形してプリフォームの形を整えてもよい。
例えば、成形型100を用いる場合、
図10に示すように、伸縮シート10を用いた成形後に下型110から脱型させた一次成形物20Aを、伸縮シート10を配置していない下型110上に配置する。次いで、上型112におけるサブ型126を下型110の上面における背面側の部分に設置し、一次成形物20Aをずれないように固定する。
【0074】
次いで、一次成形物20Aを加熱し、一次成形物20A中のマトリクス樹脂組成物を軟化させる。このとき、下型110も同時に加熱されてもよい。
一次成形物の加熱温度は、マトリクス樹脂組成物が軟化する温度であればよく、マトリクス樹脂組成物の種類によっても異なるが、65〜80℃が好ましく、70〜75℃がより好ましい。一次成形物の加熱温度が下限値以上であれば、マトリクス樹脂組成物が軟化し、成形型に基づくプリフォームの形状の再現性が良好となる。一次成形物の加熱温度が上限値以下であれば、プリフォームの成形中にマトリクス樹脂組成物の硬化が開始することを抑制しやすい。
一次成形物を加熱する方法は、特に限定されず、例えば、スタックの加熱方法と同じ方法が挙げられる。
【0075】
次いで、伸縮シート10を用いた一度目の成形の場合と同様に、一次成形物20Aが加熱された状態で、上型112におけるメイン型124を下型110の正面側の部分に近接させ、下型110と上型112で一次成形物20Aを挟み込んで加圧して成形する。
一次成形物の成形時の面圧は、0.01〜0.1MPaが好ましく、0.03〜0.04がより好ましい。面圧が下限値以上であれば、スタックが十分に形状追従できる。面圧が上限値以下であれば、予備成形の段階で強化繊維が広がることを抑制することができる。
【0076】
成形後はプリフォーム20を冷却し、下型110から上型112を離してプリフォーム20(二次成形物)を下型110から脱型する。
下型から取り外す際のプリフォーム(二次成形物)の温度は、30℃以下が好ましく、23℃以下がより好ましい。
プリフォーム(二次成形物)を冷却する方法は、特に限定されず、例えば放冷によって冷却することができる。
【0077】
前記した方法で得たプリフォームを、繊維強化複合材料の形状に応じたクリアランスが設定されている成形型内に設置し、プレス機を用いて所定の温度、圧力で加熱加圧することで、繊維強化複合材料が得られる。圧縮成形に用いる成形型は所定の温度に調温しておき、圧縮成形した後、その温度のまま繊維強化複合材料を取り出すことが好ましい。これにより、成形型の昇降温を行う必要がなくなり、成形サイクルを高めることができ、生産性が高まる。
【0078】
(スタック)
本実施形態の製造方法に用いるスタックは、強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸されたシート状のプリプレグ(X)が、繊維方向が異なるように2枚以上積層された積層体である。
【0079】
強化繊維としては、特に限定されず、例えば、無機繊維、有機繊維、金属繊維、又はこれらを組み合わせたハイブリッド構成の強化繊維が使用できる。
無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維等が挙げられる。有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、その他一般のナイロン繊維、ポリエステル繊維等が挙げられる。金属繊維としては、ステンレス、鉄等の繊維が挙げられ、また金属を被覆した炭素繊維でもよい。これらの中では、繊維強化複合材料の強度等の機械物性を考慮すると、炭素繊維が好ましい。
【0080】
マトリクス樹脂組成物を含浸させる強化繊維基材の形態としては、多数の強化繊維(長繊維)を一方向に揃えてUDシート(一方向シート)とする形態、強化繊維(長繊維)を製織してクロス材(織物)とする形態等が挙げられる。
【0081】
このUDシートとしては、一方向に引き揃えた強化繊維にマトリクス樹脂組成物を含浸してプリプレグとした後に切込みを入れ、プリプレグ中の強化繊維を短く分断したものを用いてもよい。この場合、切込みと切込みの間の強化繊維の繊維長は、10〜100mmの範囲とするのが好ましい。強化繊維の繊維長が前記下限値以上であれば、得られたプリフォームを用いて製造した繊維強化複合材料の機械特性が充分に高くなりやすい。また、強化繊維の繊維長が前記上限値以下であれば、スタックを三次元形状等の複雑な形状に成形しやすい。
【0082】
スタックとしては、強化繊維が二方向に引き揃えられているものが好ましい。具体的には、一方向に引き揃えられた強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸されたプリプレグ(UDプリプレグ)が、繊維軸の方向が二方向となるように複数積層されたプリプレグ(X)の積層体が好ましい。また、プリプレグ(X)として2軸方向に強化繊維が織られたクロスプリプレグを用いたスタックも好ましい。
複数のUDプリプレグが積層されたスタックを用いる場合は、強化繊維が二方向に引き揃えられた状態となるようにUDシートを配置するのが、予備成形時の目開き、繊維蛇行がより低減されるとともに、プリフォームの成形性(成形型への追随性)が良好であり、より優れた外観のプリフォームが製造できる傾向にあり好ましい。この場合、二方向に引き揃えられた強化繊維の繊維軸同士のなす角度は、60〜120°が好ましく、80〜100°がより好ましい。前記角度の典型は90°である。
【0083】
プリプレグ(X)としてクロスプリプレグを用いる場合においても、スタック全体として、強化繊維が略二方向に引き揃えられた状態となっているのが、上記と同様な理由で好ましい。
すなわち、クロスプリプレグを構成するクロス材の織り方としては、例えば、平織、綾織、朱子織、三軸織等が挙げられるが、中でも2軸方向に強化繊維が織られた、平織、綾織、朱子織のクロス材を用いるのが、より優れた外観のプリフォームが製造できる傾向にあり好ましい。
【0084】
マトリクス樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂組成物を用いてもよく、熱可塑性樹脂組成物を用いてもよい。なかでも、繊維強化複合材料の剛性に優れる点から、マトリクス樹脂は熱硬化性樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。補強繊維として炭素繊維を用いる場合は、炭素繊維との接着性の点から、エポキシ樹脂又はビニルエステル樹脂が好ましい。
【0085】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン(AES)樹脂、アクリロニトリル・スチレン・アクリレート(ASA)樹脂等が挙げられる。
マトリクス樹脂組成物としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
マトリクス樹脂組成物には、必要に応じて難燃性材料を配合することもできる。
この難燃性材料としては、例えば、臭素系化合物、リン及び窒素を含む化合物、リン系化合物、金属水酸化物、シリコーン系化合物、及びヒンダードアミン化合物等を挙げることができる。
【0087】
スタックにおける樹脂重量含有率(R.C.)は、10〜60質量%が好ましく、30〜40質量%がより好ましい。R.C.が下限値以上であれば、得られたプリフォームを用いて製造した繊維強化複合材料の機械特性が充分に高くなりやすい。R.C.が上限値以下であれば、スタックを三次元形状等の複雑な形状に成形しやすい。
なお、スタックにおけるR.C.は、JIS K 7071 5.1記載の測定方法等により測定される値を意味する。
【0088】
(伸縮シート)
伸縮シートは、伸縮性を有する樹脂製又はゴム製のシートである。
伸縮シートとしては、成形型における一方の型とスタックとの間で緊張させながら配置した状態で成形型によって引き延ばされたときに、その変形が弾性領域を超えないものを、成形型の形状に応じて選択することが好ましい。
【0089】
樹脂製の伸縮シートとしては、例えば、軟質ポリ塩化ビニールシート、軟質ポリオレフィンシート、エステル系ウレタンシート等が挙げられる。
ゴム製の伸縮シートとしては、シリコンゴムシート、天然ゴムシート、ニトリルゴムシート等が挙げられる。
伸縮シートとしては、スタックに対する密着性が高いものが好ましい。これにより、成形時に伸縮シートが成形型によって引き延ばされたときに伸縮シート上のスタックが滑って追従しにくくなることが抑制されやすくなる。
【0090】
伸縮シート厚みは0.01mm〜10mmの範囲とするのが好ましい。これは、伸縮シート厚みを0.01mm以上とすることによって、スタックの成形中に伸縮シートが破損しにくくなるためである。より好ましい伸縮シート厚みは0.1mm以上である。また、伸縮シート厚みを10mm以下とすることによって、成形型に対応した形状のプリフォームが得られる傾向あるためである。より好ましい伸縮シート厚みは2mm以下である。
【0091】
また、伸縮シートの引張弾性率は、0.1〜40MPaの範囲とするのが好ましい。これは、伸縮シートの引張弾性率を0.1MPa以上とすることによって、成形中のスタックに張力を付与することができ、得られるプリフォームにシワ等が発生しにくくなる傾向にあるためである。伸縮シートの引張弾性率は、より好ましくは10MPa以上である。また、伸縮シートの引張弾性率を40MPa以下とすることによって、成形時におけるスタックの面圧の過度の上昇が抑制されるとともに伸縮シートの柔軟な動きが得られ、プリフォームの繊維蛇行が発生しにくくなる傾向があるためである。伸縮シートの引張弾性率は、より好ましくは20MPa以下である。
なお、引張弾性率は、JIS K 6251により測定される値である。
【0092】
さらに、本実施形態で使用する伸縮シートとして、その厚みと引張弾性率の積(厚み[mm]×引張弾性率[MPa])が1〜6の範囲であるものを使用することによって、外観が良好であり、かつ形状の均一性に優れたプリフォームを安定して製造することが容易になる。これは、この値を1以上とすることによって、成形時においてスタックに適度な張力を均一に付与できる傾向にあるためである。前記厚みと引張弾性率の積は、より好ましくは2以上である。また、厚みと引張弾性率の積を6以下とすることによって、伸縮シートが柔軟に伸縮することで、プリフォームの予備成形に必要かつ十分なせん断変形をスタックに与えることができる傾向にあるためである。厚みと引張弾性率の積は、より好ましくは4以下である。
【0093】
以上説明したように、本実施形態の繊維強化複合材料の製造方法は、成形型の一方の型とスタックとの間に伸縮シートを特定の方向に緊張させながら配置した状態で、成形型によって伸縮シートを引き延ばしながらスタックを成形するものである。本実施形態の製造方法は、特に予備成形により一旦プリフォームを製造する場合に有用なものである。本実施形態では、伸縮シートが引き延ばされるとともにスタックが伸縮シートに追従して型の外側に向かって引っ張られるため、スタック中の強化繊維は強化繊維が配向していない方向への変形にも追従しやすくなる。その結果、繊維強化複合材料に繊維蛇行やシワの発生等の外観不良が発生することが抑制される。
また、本実施形態の繊維強化複合材料の製造方法においては、スタックをその都度把持して張力を付与する必要がなく、把持によるスタックの損傷が生じることが抑制される。また、伸縮シートを緊張させた状態を維持しながら複数のスタックを連続成形することができるため、高い生産性でプリフォーム等を製造できる。
【0094】
なお、本実施形態の繊維強化複合材料の製造方法は、前記した成形型100を用いる方法には限定されない。
本実施形態の繊維強化複合材料の製造方法は、せん断変形を伴わない2次元曲面形状のプリフォーム及び繊維強化複合材料を得る方法であっても構わない。
【0095】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[実施例1]
本実施例では、スタックを
図3に例示した、平面展開できない立体形状(平面の組み合わせで構成された三次元曲面形状)の繊維強化複合材料30を製造した。プリプレグ(X)として下記のプリプレグ(X1)を用い、樹脂フィルム(Y)として下記の樹脂フィルム(Y1)を用いた。
プリプレグ(X1):炭素繊維を一方向に引き揃えてエポキシ樹脂組成物を含浸して得られたシート状のUDプリプレグ(三菱レイヨン株式会社製、製品名:TR391E250S)。
樹脂フィルム(Y1):プリプレグ(X1)に含まれているのと同一のエポキシ樹脂組成物(三菱レイヨン株式会社製、樹脂名:#391)を60℃に調温し、コーターにて厚みが0.3mmとなるように製膜して得た樹脂フィルム。
【0096】
図2A〜
図2Dに示すように、プリプレグ(X1)を裁断し、サイズが縦250mm×横250mmで、それぞれの繊維方向が0°、90°、45°、135°となる4枚のプリプレグ(X)2、3、5、6を得た。
次いで、樹脂フィルム(Y1)をサイズが縦250mm×横250mmとなるように裁断し、樹脂フィルム(Y)4を得た。
次いで、
図11に示すように、裁断後の4枚のプリプレグ(X)2、3、5、6と裁断後の樹脂フィルム(Y)4とを、積層構成が[0°/90°/樹脂フィルム(Y1)/45°/135°]となるように、それぞれの4辺の位置を合わせて積層して積層ユニット1を得た。すなわち、上から順にプリプレグ(X)2/プリプレグ(X)3/樹脂フィルム(Y)4/プリプレグ(X)5/プリプレグ(X)6の積層構成となるように積層して積層ユニット1を得た。
次いで、積層ユニット1を平面上に置き、バギングフィルムで覆い、バギングフィルム内を45分間真空脱気して、各層間のエアーを排除し、スタック12とした。
【0097】
図5に例示した成形型100を用いて、得られたスタック12を予備成形してプリフォームを作製した。具体的には、
図12に示すように、ケミカルウッドを削り出して製作した下型110に、第1層のプリプレグ(X)2の0°方向が矢印方向となるようスタック12を配置した後、作業者が手で下型110の上部の溝に合わせてスタック12を押し付けて貼り付けた。
次いで、
図13に示すように、サブ型126でスタック12を押さえ、サブ型126に設けた貫通穴127にネジ(図示しない)を通して、下型110に設けたネジ穴111に螺入して締め、固定した。
次いで、赤外線ヒータを用いてスタック12全体を表面温度が60℃となるように加熱した。
次いで、
図14に示すように、エアーシリンダー(図示しない)で上下する上型112のメイン型124を下降させて下型110に近づけ、スタック12を上型112と下型110で挟圧して予備成形した。
【0098】
図15に示すように、メイン型124を下型110から外した後、
図16に示すように、貫通穴127に通したネジを取り外してサブ型126を外した。
次いで、
図17に示すように、プリフォーム50を下型110から脱型した。得られたプリフォーム50にはシワの発生がなかった。
【0099】
次いで、目的の繊維強化複合材料30の厚み1.1mmに合わせたクリアランスが設けられた圧縮成形用成形金型を140℃に加熱し、圧縮成形用成形金型の下型にプリフォーム50を設置して圧縮成形用成形金型を閉じ、設定圧力4MPaで押切り加圧して10分間保持して、繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料は外観に優れ、各方向の機械特性も安定していた。
【0100】
[実施例2]
実施例1と同様の方法で、積層ユニット1を3つと、さらにサイズが縦250mm×横250mmの樹脂フィルム(Y)を2枚を作製した。次いで、積層ユニット1/樹脂フィルム(Y)/積層ユニット1/樹脂フィルム(Y)/積層ユニット1の積層構成のスタックとした以外は、実施例1と同じ手順でプリフォームを得た。スタックにおける3つの積層ユニット1は、全て上から[0°/90°/樹脂フィルム(Y1)/45°/135°]の積層順序とした。また、圧縮成形用成形金型のクリアランスを4.1mmに設定した以外は、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。
得られたプリフォームにはシワの発生がなかった。また、得られた繊維強化複合材料は外観に優れ、各方向の機械特性も安定していた。
【0101】
[実施例3]
実施例1と同様にして積層ユニット1を2つ作製し、それら2つの積層ユニット1の第5層のプリプレグ(X)6を向かい合わせ、厚さ方向において積層順序が対称となる積層構成のスタックとした以外は、実施例1と同じ手順でプリフォームを得た。また、圧縮成形用成形金型のクリアランスを2.3mmに設定した以外は、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。
得られたプリフォームにはシワの発生がなかった。また、得られた繊維強化複合材料は外観に優れ、各方向の機械特性も安定していた。
【0102】
[実施例4]
積層ユニット1における第4層のプリプレグ(X)5の繊維方向を30°、第5層のプリプレグ(X)5の繊維方向を120°とした以外は、実施例1と同様にしてプリフォーム及び繊維強化複合材料を作製した。
得られたプリフォームにはシワの発生がなかった。また、得られた繊維強化複合材料は外観に優れ、各方向の機械特性も安定していた。
【0103】
[実施例5]
積層ユニット1における第4層のプリプレグ(X)5の繊維方向を60°、第5層のプリプレグ(X)5の繊維方向を150°とした以外は、実施例1と同様にしてプリフォーム及び繊維強化複合材料を作製した。
得られたプリフォームにはシワの発生がなかった。また、得られた繊維強化複合材料は外観に優れ、各方向の機械特性も安定していた。
【0104】
[実施例6]
積層ユニット1における第4層のプリプレグ(X)5の繊維方向を50°、第5層のプリプレグ(X)5の繊維方向を130°とした以外は、実施例1と同様にしてプリフォーム及び繊維強化複合材料を作製した。
得られたプリフォームにはシワの発生がなかった。また、得られた繊維強化複合材料は外観に優れ、各方向の機械特性も安定していた。
【0105】
[実施例7]
樹脂フィルム(Y1)の代わりに、エポキシ樹脂組成物(三菱レイヨン株式会社製、樹脂名:#395)からなる樹脂フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてプリフォーム及び繊維強化複合材料を作製した。
得られたプリフォームにはシワの発生がなかった。また、得られた繊維強化複合材料は外観に優れ、各方向の機械特性も安定していた。
【0106】
[実施例8]
樹脂フィルム(Y1)の代わりに、厚みが0.5mmである以外は樹脂フィルム(Y1)と同じ樹脂フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてプリフォームを得た。また、圧縮成形用成形金型のクリアランスを1.3mmに設定した以外は、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。
得られたプリフォームにはシワの発生がなかった。また、得られた繊維強化複合材料は外観に優れ、各方向の機械特性も安定していた。
【0107】
[実施例9]
樹脂フィルム(Y1)の代わりに、厚みが1.0mmである以外は樹脂フィルム(Y1)と同じ樹脂フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてプリフォームを得た。また、圧縮成形用成形金型のクリアランスを1.8mmに設定した以外は、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。
得られたプリフォームにはシワの発生がなかった。また、得られた繊維強化複合材料は外観に優れ、各方向の機械特性も安定していた。
【0108】
[実施例10]
プリプレグ(X1)の代わりに、繊維が直交するように炭素繊維を製織して得られた織物にエポキシ樹脂組成物が含浸されたシート状のクロスプリプレグ(三菱レイヨン株式会社製、製品名:TR3110 391GMP)を用いた以外は、実施例1と同様にしてプリフォームを得た。また、圧縮成形用成形金型のクリアランスを1.2mmに設定した以外は、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。
得られたプリフォームにはシワの発生がなかった。また、得られた繊維強化複合材料は外観に優れ、各方向の機械特性も安定していた。
【0109】
各例のスタックの積層条件とプリフォーム及び繊維強化複合材料の評価結果を表1に示す。プリフォームの評価は、シワの発生が見られなかったものを良好、シワの発生が見られたものを不良とした。繊維強化複合材料の評価は、外観に優れ、各方向の機械特性も安定しているものを不良とし、外観が不良であるか、又は強度が不均一もしくは低下するものを不良とした。
【0111】
[製造例1:スタックの製造]
一方向に引き揃えられた炭素繊維(三菱レイヨン社製、製品名:TR50S)に熱硬化性樹脂組成物(三菱レイヨン社製、樹脂名:#361)が含浸されたUDプリプレグ(厚さ約220μm、三菱レイヨン社製、製品名:TR361E250S)5枚を、繊維方向が0°/90°/0°/90°/0°の順となるように積層し、平面視で縦250mm×横250mmのプリプレグ積層体からなるスタックを得た。
【0112】
[実施例11]
図5に例示した成形型100を用いてプリフォームを製造した。成形型100では、平面視で凸部116及び凸部118の上面においてプリフォームが配置される部分の外側に175mm〜190mmの幅で伸縮シートが接するように余剰領域を設けた。また、下型110の高さは、目的のプリフォームの正面視での高さに対して2倍〜2.5倍の高さとして、引き延ばされた伸縮シートが接する余剰領域を設けた。
【0113】
下型110上に、成形面122全体を覆うようにポリ塩化ビニールシート(伸縮シート10、オカモト社製、製品名:一般用PVC透明・梨地クリアープラスチックフィルム(フィルムの厚み:0.2mm、引張弾性率:18.0MPa)、縦400mm×横400mm×厚み0.2mm)を配置し、さらにその上に製造例1で得たスタック(スタック12)を配置した。次いで、サブ型126により伸縮シート10及びスタック12を固定した。張力付与手段が備えるクランプ132,134によって伸縮シート10を把持して張力を付与し、凸部116と凸部118の上面に伸縮シート10が部分的に接するようにして伸縮シート10を緊張させた。クランプ132,134により張力を付与する方向は、スタック中の強化繊維の繊維軸方向(0°、90°)に対して45°となるようにした。伸縮シート10に対して張力を付与する方向と、水平方向とがなす角度は0°とした。
次いで、赤外線ヒータによりスタック12を70℃に加熱し、上型112のメイン型124を下型110の正面側の部分に近接させ、下型110と上型112によって伸縮シート10を引き延ばしながらスタック12を成形した。成形された一次成形物の温度が23℃になってから上型112を下型110から離間させ、一次成形物を脱型した。
【0114】
次いで、一次成形物を、伸縮シート10を配置していない下型110上に再び配置し、サブ型126により固定した。赤外線ヒータにより一次成形物を70℃に加熱し、上型112のメイン型124を下型110の正面側の部分に近接させ、下型110と上型112によって一次成形物を成形した。成形されたプリフォームの温度が23℃になってから上型112を下型110から離間させ、プリフォームを脱型した。
【0115】
[実施例12]
伸縮シートとして、ポリ塩化ビニールシートの代わりに、シリコンゴムシート(TORR社製、製品名:EL78、引張弾性率:16.0MPa、縦300mm×横300mm×厚み1.6mm)を用いた以外は、実施例11と同様にしてプリフォームを得た。
【0116】
[実施例13]
伸縮シートとして、ポリ塩化ビニールシートの代わりに、シリコンゴムシート(TORR社製、製品名:EL78、引張弾性率:16.0MPa、縦300mm×横300mm×厚み1.6mm)を用い、さらに紙テープによりシートを面方向における全方向へ引っ張って緊張させた以外は、実施例11と同様にしてプリフォームを得た。
【0117】
[実施例14]
伸縮シートとして、ポリ塩化ビニールシートの代わりに、天然ゴムシート(シーテック社製、製品名:RN111(引張弾性率:約10MPa、縦300mm×横300mm×厚み1.0mm)を用いた以外は、実施例11と同様にしてプリフォームを得た。
【0118】
[外観評価]
各例で得られたプリフォームの外観を目視で確認し、以下の評価基準で評価した。
(評価基準)
○:プリフォームにシワが見られない。
△:プリフォームに僅かにシワが見られるが、問題ないレベルである。
×:プリフォームにシワが見られる。
【0119】
実施例の製造条件及び評価結果を表2に示す。
【0121】
表2に示すように、伸縮シートを用いてプリフォームを製造した実施例11〜14では、プリフォームにシワが発生することが抑制され、外観が優れていた。
【0122】
[実施例15]
実施例1にて使用したスタックを使用した以外は、実施例11と同様な条件にてプリフォームを得た。また、得られたプリフォームから、実施例1と同様な条件にて繊維強化複合材料を作製した。得られたプリフォームと繊維強化複合材料はいずれもシワが発生しておらず外観が良好であり、この繊維強化複合材料においては、各方向の機械特性も安定していた。