特許第6222393号(P6222393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6222393
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】インゴットの切断方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20171023BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20171023BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20171023BHJP
   B28D 5/04 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   H01L21/304 611W
   B24B27/06 H
   B24B55/02 Z
   B28D5/04 C
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-54830(P2017-54830)
(22)【出願日】2017年3月21日
【審査請求日】2017年8月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】上林 佳一
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/125366(WO,A1)
【文献】 特開2003−145406(JP,A)
【文献】 特開2005−103683(JP,A)
【文献】 特開2008−213110(JP,A)
【文献】 特開2008−078474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 27/06
B24B 55/02
B28D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワイヤーガイド間に螺旋状に巻回された軸方向に走行するワイヤーでワイヤー列を形成し、ワーク送り機構により保持したインゴットを前記ワイヤー列に切込み送りし、前記インゴットと前記ワイヤーとの接触部にスラリーを供給しながら、前記インゴットを複数のウェーハに切断するワイヤソーによるインゴットの切断方法であって、
予め、前のインゴットの切断で得られたウェーハのワイヤー走行方向の反りの向きを確認しておき、
次に、前記確認されたワイヤー走行方向の反りの向きに、ワーク送り方向の反りの向きが合致する条件で前記インゴットの切断を行うことで、ワイヤー走行方向の反りとワーク送り方向の反りの向きが同じウェーハを得ることを特徴とするインゴットの切断方法。
【請求項2】
前記ワーク送り方向の反りの向きを前記ワイヤー走行方向の反りの向きに合致させるために、前記ワイヤソーが備える温調機能によって、前記ワーク送り機構を保持するワイヤソー筐体部の内部を流れる冷却水の温度、前記複数のワイヤーガイド内を流れる冷却水の温度、及び前記スラリーの温度のいずれか1つ以上を制御することで、前記インゴットから切り出す複数のウェーハのワーク送り方向の反りの向き及び絶対量を制御することを特徴とする請求項1に記載のインゴットの切断方法。
【請求項3】
前記インゴットから切り出す複数のウェーハのワーク送り方向の反りの向き及び絶対量を制御することで、前記インゴットから切り出す全てのウェーハのワーク送り方向の反りを、前記インゴット内の位置によらず同じ向きとすることを特徴とする請求項2に記載のインゴットの切断方法。
【請求項4】
前記インゴットから切り出す全てのウェーハのワーク送り方向の反りを、前記インゴット内の位置によらず同じ向きとするために、前記ワイヤソー筐体部の内部を流れる冷却水の温度、前記複数のワイヤーガイド内を流れる冷却水の温度、及び前記スラリーの温度の各温度を、前記インゴットの切始め時及び切終り時の温度と前記インゴットの中央部の切断時の温度との間の温度差が、前記インゴットの切始め時及び切終り時の温度の4%分より大きくなるように制御することを特徴とする請求項3に記載のインゴットの切断方法。
【請求項5】
前記ワイヤソー筐体部の内部を流れる冷却水の温度を、前記インゴットの中央部の切断時の温度が、前記インゴットの切始め時及び切終り時の温度の4%分より高温になるように制御し、
前記ワイヤーガイド内を流れる冷却水の温度と前記スラリーの温度を、前記インゴットの中央部の切断時の温度が、前記インゴットの切始め時及び切終り時の温度の4%分より低温になるように制御することで、前記インゴットから切り出す全てのウェーハのワーク送り方向の反りを凸形状とすることを特徴とする請求項4に記載のインゴットの切断方法。
【請求項6】
前記ワイヤソー筐体部の内部を流れる冷却水の温度を、前記インゴットの中央部の切断時の温度が、前記インゴットの切始め時及び切終り時の温度の4%分より低温になるように制御し、
前記ワイヤーガイド内を流れる冷却水の温度と前記スラリーの温度を、前記インゴットの中央部の切断時の温度が、前記インゴットの切始め時及び切終り時の温度の4%分より高温になるように制御することで、前記インゴットから切り出す全てのウェーハのワーク送り方向の反りを凹形状とすることを特徴とする請求項4に記載のインゴットの切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インゴットの切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウェーハの大型化が望まれており、この大型化に伴い、インゴットの切断には専らワイヤソーが使用されている。ワイヤソーは、ワイヤー(高張力鋼線)を高速走行させて、ここにスラリーを掛けながら、ワーク(例えば、シリコン、ガラス、セラミックス等の脆性材料のインゴットが挙げられる。)を押しあてて切断し、多数のウェーハを同時に切り出す装置である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−114280号公報
【特許文献2】特表2016−505214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなワイヤソーでインゴットを切断することで得られたウェーハは、普通、研削および研磨プロセスを経るが、エピプロセスを経るとウェーハの反り形状は、凸形状化する。エピ処理後の反りの制御については、例えば、特許文献2のような技術が有る。しかしながら、エピ処理を行った後のウェーハの面内において、うねりが発生してしまいエピタキシャルウェーハが不均一な形状となってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、エピ処理を行った後の面内において、うねりが発生し難いウェーハを得ることができるインゴットの切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、複数のワイヤーガイド間に螺旋状に巻回された軸方向に走行するワイヤーでワイヤー列を形成し、ワーク送り機構により保持したインゴットを前記ワイヤー列に切込み送りし、前記インゴットと前記ワイヤーとの接触部にスラリーを供給しながら、前記インゴットを複数のウェーハに切断するワイヤソーによるインゴットの切断方法であって、予め、前のインゴットの切断で得られたウェーハのワイヤー走行方向の反りの向きを確認しておき、次に、前記確認されたワイヤー走行方向の反りの向きに、ワーク送り方向の反りの向きが合致する条件で前記インゴットの切断を行うことで、ワイヤー走行方向の反りとワーク送り方向の反りの向きが同じウェーハを得ることを特徴とするインゴットの切断方法を提供する。
【0007】
このように、予め、ワイヤソー固有のウェーハのワイヤー走行方向の反りの向きを確認しておき、これと合致するようにワーク送り方向の反りの向きを制御して、ワーク送り方向とワイヤー走行方向の反りの向きを同一とすることで、エピ処理を行った後にうねりが発生し難いウェーハを得ることができる。
【0008】
このとき、前記ワーク送り方向の反りの向きを前記ワイヤー走行方向の反りの向きに合致させるために、前記ワイヤソーが備える温調機能によって、前記ワーク送り機構を保持するワイヤソー筐体部の内部を流れる冷却水の温度、前記複数のワイヤーガイド内を流れる冷却水の温度、及び前記スラリーの温度のいずれか1つ以上を制御することで、前記インゴットから切り出す複数のウェーハのワーク送り方向の反りの向き及び絶対量を制御することが好ましい。
【0009】
このようにして、切り出すウェーハのワーク送り方向の反りの向き及び絶対量を制御することで、ワーク送り方向の反りの向きがワイヤー走行方向の反りの向きに合致するような条件を満たすとともに、反りの量も制御してインゴットを切断することができる。
【0010】
またこのとき、前記インゴットから切り出す複数のウェーハのワーク送り方向の反りの向き及び絶対量を制御することで、前記インゴットから切り出す全てのウェーハのワーク送り方向の反りを、前記インゴット内の位置によらず同じ向きとすることが好ましい。
【0011】
ワイヤー走行方向の反りの向きは、インゴットの位置によらず揃っていることが多いため、ワーク送り方向の反りもインゴット内の位置によらず同じ向きとすることで、切り出す全てのウェーハでワーク送り方向とワイヤー走行方向の反りの向きを同一とすることが好ましい。
【0012】
また、前記インゴットから切り出す全てのウェーハのワーク送り方向の反りを、前記インゴット内の位置によらず同じ向きとするために、前記ワイヤソー筐体部の内部を流れる冷却水の温度、前記複数のワイヤーガイド内を流れる冷却水の温度、及び前記スラリーの温度の各温度を、前記インゴットの切始め時及び切終り時の温度と前記インゴットの中央部の切断時の温度との間の温度差が、前記インゴットの切始め時及び切終り時の温度の4%分より大きくなるように制御することが好ましい。
【0013】
上記各温度のインゴットの切始め時と中央部の切断時の温度差を切始め時の温度の4%分より大きくし、かつ、インゴットの切終り時と中央部の切断時の温度差を切終り時の温度の4%分より大きくすることで、全てのウェーハのワーク送り方向の反りの方向をインゴット内の位置によらず同じ向きとすることができる。
【0014】
このとき、前記ワイヤソー筐体部の内部を流れる冷却水の温度を、前記インゴットの中央部の切断時の温度が、前記インゴットの切始め時及び切終り時の温度の4%分より高温になるように制御し、前記ワイヤーガイド内を流れる冷却水の温度と前記スラリーの温度を、前記インゴットの中央部の切断時の温度が、前記インゴットの切始め時及び切終り時の温度の4%分より低温になるように制御することで、前記インゴットから切り出す全てのウェーハのワーク送り方向の反りを凸形状とすることができる。
【0015】
一方で、前記ワイヤソー筐体部の内部を流れる冷却水の温度を、前記インゴットの中央部の切断時の温度が、前記インゴットの切始め時及び切終り時の温度の4%分より低温になるように制御し、前記ワイヤーガイド内を流れる冷却水の温度と前記スラリーの温度を、前記インゴットの中央部の切断時の温度が、前記インゴットの切始め時及び切終り時の温度の4%分より高温になるように制御することで、前記インゴットから切り出す全てのウェーハのワーク送り方向の反りを凹形状とすることができる。
【0016】
上記のようにすれば、インゴットから切り出す全てのウェーハのワーク送り方向の反りを所望の一方向にそろえることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のインゴットの切断方法であれば、ワイヤー走行方向の反りとワーク送り方向の反りの向きが同じウェーハを得ることができ、その結果、エピ処理を行った後にうねりが発生し難いウェーハを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明において使用できるワイヤソーの一例を示す概略図である。
図2】本発明において使用できるワイヤソーにおけるワーク送り機構を保持するワイヤソー筐体部の一例を示す概略図である。
図3】インゴットから切り出される全てのウェーハのワーク送り方向の反り形状を凸形状とする場合の温度条件の一例を示すグラフである。
図4】インゴットから切り出される全てのウェーハのワーク送り方向の反り形状を凹形状とする場合の温度条件の一例を示すグラフである。
図5】比較例1の温度条件を示すグラフである。
図6】比較例1の切断後のウェーハのワーク送り方向の反りの形状を示すグラフである。
図7】実施例1で切断を行う前に、予め確認したワイヤソー(号機A)におけるウェーハのワイヤー走行方向の反りの形状を示すグラフである。
図8】実施例1の切断後のウェーハのワーク送り方向の反りの形状を示すグラフである。
図9】実施例1の切断後のウェーハのワイヤー走行方向の反りの形状を示すグラフである。
図10】実施例2の温度条件を示すグラフである。
図11】実施例2の切断後のウェーハのワーク送り方向の反りの形状を示すグラフである。
図12】比較例2の温度条件を示すグラフである。
図13】比較例2の切断後のウェーハのワーク送り方向の反りの形状を示すグラフである。
図14】比較例3の切断後のウェーハのワーク送り方向の反りの形状を示すグラフである。
図15】実施例3で切断を行う前に、予め確認したワイヤソー(号機B)におけるウェーハのワイヤー走行方向の反りの形状を示すグラフである。
図16】実施例3の温度条件を示すグラフである。
図17】実施例3の切断後のウェーハのワーク送り方向の反りの形状を示すグラフである。
図18】実施例3の切断後のウェーハのワイヤー走行方向の反りの形状を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
上記のように、ワイヤソーでインゴットから切り出したウェーハに後工程でエピ処理を施すと、ウェーハの面内において、うねりが発生してしまいエピタキシャルウェーハが不均一な形状となってしまうという問題があった。これに対して本発明者は、鋭意検討し、以下のような知見を得て本発明を完成させた。
【0021】
ワイヤソーでインゴットを切断することで得られたウェーハのワーク送り方向の反り形状を確認すると、インゴット内の位置により、凸形状となっているウェーハや凹形状となっているウェーハが混在する。
【0022】
また、インゴットをワイヤソーで切断することで得られたウェーハのワイヤー走行方向の反り形状を確認すると、ワーク送り方向と反りの形状が一致しているウェーハと一致しないウェーハが混在する。このように、ワーク送り方向と、ワイヤー走行方向の反りの向きに違いがあると、エピ処理を行った後のウェーハの面内において、うねりが発生してしまいエピタキシャルウェーハが不均一な形状となってしまうことを本発明者は知見した。
【0023】
また、基本的に、ワイヤー走行方向の反り形状の向きについては、ワイヤソー各装置で固有であり、インゴット内の位置によらず揃っている。さらに、ワイヤー走行方向の反り形状の制御については調整により変えることが難しい。そこで本発明者は、ワイヤー走行方向の反り形状の制御に比べて制御が比較的容易なワーク送り方向の反り形状を制御することで、ワーク送り方向と、ワイヤー走行方向の反りの向きを一致させることに想到し本発明を完成させた。以下、本発明のインゴットの切断方法について説明する。
【0024】
まず、本発明において使用できるワイヤソーの一例の概要を、図1、2を参照して説明する。図1に示すように、ワイヤソー1は、主に、インゴットWを切断するためのワイヤー2、ワイヤー2が螺旋状に巻回された複数のワイヤーガイド3、ワイヤー2に張力を付与するための張力付与機構4、切断されるインゴットWを送り出すワーク送り機構5、切断時に、砥粒をクーラントに分散して混合したスラリーを供給するためのノズル6等で構成されている。ワイヤー2は複数のワイヤーガイド3に巻回されていることで、ワイヤー列12を形成しており、インゴットを切断する際にはワイヤー2はワイヤー2の軸方向に走行している。ワーク送り機構5により保持したインゴットWをワイヤー列12に切込み送りし、同時に、インゴットWとワイヤー2との接触部にスラリーを供給しながら、インゴットWを複数のウェーハに切断する。
【0025】
ワイヤー2は、一方のワイヤーリール7から繰り出され、トラバーサ8を介してパウダクラッチ(定トルクモーター9)やダンサーローラ(デットウェイト)(不図示)等からなる張力付与機構4を経て、複数のワイヤーガイド3に入っている。ワイヤー2はこれらの複数のワイヤーガイド3に300〜400回程度巻き回された後、もう一方の張力付与機構4’を経てワイヤーリール7’に巻き取られている。
【0026】
また、複数のワイヤーガイド3は鉄鋼製円筒の周囲にポリウレタンが樹脂を圧入し、その表面に一定のピッチで溝を切ったローラーとすることができ、巻回されたワイヤー2が、駆動用モーター10によって予め定められた周期で往復方向に駆動できるようになっている。
【0027】
そして、複数のワイヤーガイド3、これらに巻回されたワイヤー2の近傍には、ノズル6が設けられており、切断時にはこのノズル6から、ワイヤーガイド3、ワイヤー2にスラリーを噴射し、インゴットWとワイヤー2との接触部にスラリーを供給できるようになっている。なお、切断に用いられたスラリーは廃スラリーとして排出される。
【0028】
供給されるスラリーは、予め設定したインゴット切断位置(切込位置)に応じた目標温度となるように、ワイヤソー内に具備されている熱交換器等の温調機能13により温調され、温度制御された状態で供給することが可能である。
【0029】
また、各ワイヤーガイド3の軸内には、冷却水が流れており、供給スラリーと同様、ワイヤソー内に具備されている熱交換器等の温調機能14により温調され、予め設定したインゴット切断位置に応じた温度となるように制御される。
【0030】
更に、図2のように、VMガイドを有するワーク送り機構5を保持するワイヤソー筐体部11の内部にも冷却水が流れており、ワイヤーガイドの軸内冷却水等と同様、ワイヤソー内に具備されている熱交換器等の温調機能15により温調され、予め設定したインゴット切断位置に応じた温度となるように制御される。
【0031】
このようなワイヤソー1を用い、ワイヤー2にワイヤー張力付与機構4を用いて適当な張力をかけて、駆動用モーター10により、ワイヤー2を往復方向に走行させ、スラリーを供給しつつインゴットWをスライスすることにより複数のウェーハが得られる。
【0032】
このようなワイヤソーを用いる場合を例に、本発明のインゴットの切断方法を以下に説明する。
【0033】
本発明では、インゴットの切断を始める前に、予め、前のインゴットの切断(前ロット)で得られたウェーハのワイヤー走行方向の反りの向きを確認しておく。尚、ワイヤー走行方向の反り形状の向きについては、基本的に、各ワイヤソーで固有となっており、切断バッチ毎に変わることは無いため、この確認は毎回行う必要はない。
【0034】
なお、ウェーハの反りの向きについては、BOWの値で判定することができ、ウェーハのBOWの値が正の場合は凸形状、BOWの値が負の場合は凹形状と判定することができる。
【0035】
続いて、次のインゴットの切断をする際(次ロット)に、ワーク送り方向の反りの向きが、前ロットのワイヤー走行方向の反りの向きと一致するように、切断条件を制御してインゴットWの切断を行う。
【0036】
ワイヤソーでのインゴット切断における、ワーク送り方向の反り形状の制御については、特に限定されることは無いが、ワイヤソーが備える温調機能13、14、15によって、ワイヤソー筐体部の内部を流れる冷却水の温度、ワイヤーガイド内を流れる冷却水の温度、インゴット切断する際に供給されるスラリーの温度のいずれか1つ以上を制御することで行うことができる。
【0037】
これらの温度のいずれか1つ以上を制御することで、インゴットから切り出す複数のウェーハのワーク送り方向の反りの向き及び絶対量を制御することができる。よって、前ロットで製造したウェーハから確認されたワイヤー走行方向の反りに合わせて、次ロットのワーク送り方向の反りの向き及び絶対量を調整することが可能である。
【0038】
さらに、本発明では、インゴットから切り出す複数のウェーハのワーク送り方向の反りの向き及び絶対量を制御することで、インゴットから切り出す全てのウェーハのワーク送り方向の反りを、インゴット内の位置によらず同じ向きとすることが好ましい。上述の通り、基本的に、ウェーハのワイヤー走行方向の反りの向きについては、インゴット内の位置によらず揃っていることが多い。従って、全てのウェーハのワーク送り方向の反りを同じ向きとすれば、全てのウェーハでワイヤー走行方向の反りとワーク送り方向の反りが同一方向とすることができる。
【0039】
また、インゴット内の各位置でウェーハのワーク送り方向の反りの向きが異なる場合、切断後のウェーハ形状を確認した後、特定の位置でウェーハを反転させることで、インゴット内の位置によらず、ワーク送り方向の反り形状の向きを揃えることができる。また、ワイヤソーで切断した後のウェーハについて、両頭研削工程を施すことで、反りの向きなどの調整を行うことも可能である。しかし、上記のように、全てのウェーハのワーク送り方向の反りを同じ向きとすれば、反転を行う工程や、ラップ工程に対し生産性の面で劣る両頭研削工程を追加する必要が無い。よって、ワイヤソーでの切断を行った後の時点でワーク送り方向の反りの向きがインゴット内の位置によらず揃っていることで、反転を行う工程や両頭研削工程を省略することができるので、ウェーハの製造における生産性をより向上させることができる。
【0040】
インゴットWから切り出す全てのウェーハのワーク送り方向の反りを、インゴット内の位置によらず同じ向きとするためには、ワイヤソー筐体部11の内部を流れる冷却水の温度、複数のワイヤーガイド3内を流れる冷却水の温度、及びスラリーの温度の各温度を、インゴットWの切始め時及び切終り時の温度とインゴットWの中央部の切断時の温度との間の温度差が、インゴットWの切始め時及び切終り時の温度の4%分より大きくなるように制御すればよい。
【0041】
より具体的には、全てのウェーハのワーク送り方向の反り形状を凸形状(BOWの値が正)としたい場合は、先で述べたワイヤソー筐体部11の内部を流れる冷却水の温度、ワイヤーガイド3内を流れる冷却水の温度、インゴット切断する際に供給されるスラリーの温度を、図3のグラフのように温度制御すればよい。図3は、(a)が切断位置(%)に応じたワイヤソー筐体部11の内部を流れる冷却水の温度(℃)を示すグラフ、(b)が切断位置(%)に応じたワイヤーガイド内を流れる冷却水の温度(℃)を示すグラフ、(c)が切断位置(%)に応じたスラリーの温度(℃)を示すグラフである。図3のグラフでは、切断位置の値が0%付近であれば切始め時、50%付近であれば中央部の切断時、100%付近であれば切終り時を意味する。以降の温度に関するグラフにおいても同様である。
【0042】
ワイヤソー筐体部11の内部を流れる冷却水の温度については、図3の(a)の通り、インゴット中央部の切断時に対し、切始め時と切終り時の温度を下げる。また、ワイヤーガイド3内を流れる冷却水の温度と、インゴット切断する際に供給されるスラリーの温度については、図3の(b)、(c)の通り、インゴット中央部の切断時に対し、切始め時と切終り時の温度を上げる。このような温度差が生じるように温調機能13、14、15を用いて制御すれば、全てのウェーハのワーク送り方向の反り形状を凸形状とすることができる。このとき、温度差を切始め時と切終り時の温度の4%分より大きくすることで、より確実に全てのウェーハのワーク送り方向の反り形状を凸形状とすることができる。
【0043】
一方、全てのウェーハのワーク送り方向の反り形状を凹形状(BOWの値が負)としたい場合は、先で述べた各温度を、図4のグラフのように温度制御すればよい。ワイヤソー筐体部11の内部を流れる冷却水の温度については、図4の(a)の通り、インゴット中央部の切断時に対し、切始め時と切終り時の温度を上げる。また、ワイヤーガイド3内を流れる冷却水の温度と、インゴット切断する際に供給されるスラリーの温度については、図4の(b)、(c)の通り、インゴット中央部の切断時に対し、切始め時と切終り時の温度を下げる。このような温度差が生じるように温調機能13、14、15を用いて制御すれば、全てのウェーハのワーク送り方向の反り形状を凹形状とすることができる。このときも、温度差を切始め時と切終り時の温度の4%分より大きくすることで、より確実に全てのウェーハのワーク送り方向の反り形状を凹形状とすることができる。
【0044】
このように、ウェーハのワーク送り方向の反りの絶対量については、先で述べた3つの温度の、インゴット中央部を切断している時と切始め時及び切終り時との温度差により調節を行うことができる。反りの絶対量を大きくしたい場合は、中央部切断時と切始め時及び切終り時の温度差を大きく、反りの絶対量を小さくしたい場合は、中央部切断時と切始め時及び切終り時の各温度の温度差を小さくする。ただし、温度差を小さくし過ぎると、インゴット内でのワーク送り方向の反り形状の向きを揃えることが難しくなるため、一定以上の温度差を付けることが望ましい。
【0045】
以上のような本発明のインゴットの切断方法であれば、ワイヤー走行方向の反りとワーク送り方向の反りの向きが同じウェーハを得ることができ、その結果、エピ処理を行った後にうねりが発生し難いウェーハを得ることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0047】
実施例、比較例では、インゴットとしてシリコンインゴットを切断したが、以下では単にインゴットと呼称する。
【0048】
(比較例1)
比較例1では、ワイヤソー(号機A)を用いてインゴットの切断を行ったが、前のインゴットの切断で得られたウェーハのワイヤー走行方向の反りの向きを確認せず、かつ、ワイヤー走行方向の反りの向きに合わせたワーク送り方向の反りの向きの制御を行わずにインゴットの切断を行った。この比較例1では、図5のように、ワイヤソー筐体部の内部を流れる冷却水の温度、ワイヤーガイド内を流れる冷却水の温度、インゴット切断する際に供給されるスラリーの温度について、インゴット切断位置によらず一定温度としてインゴットの切断を行った。
【0049】
次に、切断後のウェーハのワーク送り方向の反りの形状を確認した。その結果を図6に示す。なお、図6ではグラフを複数示しているが、左側がインゴットのP側(トップ側)により近い位置、右側がインゴットのK側(テール側)により近い位置から切り出されたウェーハの反りを示すグラフとなっている。以降の反りに関するグラフにおいても同様である。図6に示すように、ワーク送り方向の反りは、インゴット切断位置によりBOWの値が0を跨いでおり、一方(P側により近い位置)は凸形状、もう一方(K側により近い位置)は凹形状のウェーハとなっていた。一方、後述の実施例1において確認した結果、このワイヤソー(号機A)ではワイヤー走行方向の反りはインゴット内のいずれの位置でも凸形状となるので、一部のウェーハでワイヤー走行方向の反りとワーク送り方向の反りの向きが逆になってしまった。
【0050】
(実施例1)
比較例1と同じワイヤソー(号機A)を用いてインゴットの切断を行ったが、まず、切断を行う前に、予め、前のインゴットの切断で得られたウェーハのワイヤー走行方向の反りの向きを確認した。このワイヤソー(号機A)では、図7のように、インゴット内のいずれの位置でも凸形状となっていた。
【0051】
続いて、次のインゴットから切り出すウェーハのワーク送り方向の反り形状がワイヤー走行方向の反り形状の向きと同じ凸形状となるように切断を行った。具体的には、図3のように、ワイヤソー筐体部の内部を流れる冷却水の温度、ワイヤーガイド内を流れる冷却水の温度、インゴット切断する際に供給されるスラリーの温度を制御して、インゴットの切断を行った。
【0052】
切断後のウェーハの形状を確認すると、ワーク送り方向の反り形状は、図8のようになっており、インゴット切断位置によらず、全てのウェーハでBOWは正の値であり、いずれも凸形状となっていた。また、ワイヤー走行方向の反りの形状は、図9のようになっており、予め確認したワイヤー走行方向の反りと同様に、インゴット切断位置によらず、全てのウェーハでBOWは正の値であり、いずれも凸形状となっていた。このように、インゴット内の位置によらず、ワーク送り方向の反り形状がワイヤー走行方向の反り形状の向きと同じウェーハが得られた。
【0053】
(実施例2)
実施例1と同じワイヤソー(号機A)を用いて、インゴットから切り出すウェーハのワーク送り方向の反り形状がワイヤー走行方向の反り形状の向きと同じ凸形状となるように切断を行った。実施例2では、図10のように、実施例1に比べて中央部切断時と切始め時及び切終り時の各温度の温度差が小さくなるように、ワイヤソー筐体部の内部を流れる冷却水の温度、ワイヤーガイド内を流れる冷却水の温度、インゴット切断する際に供給されるスラリーの温度を制御した。尚、図10内の表記は比較のため破線が実施例1の温度条件、実線が実施例2の温度条件になっている。
【0054】
切断後のウェーハの形状を確認すると、ワーク送り方向の反り形状は、図11のようになっており、インゴット切断位置によらず、全てのウェーハでBOWは正の値であり、いずれも凸形状を維持しつつ、反りの絶対値は実施例1に対し小さくなっていた。このように、インゴット内の位置によらず、ワーク送り方向の反り形状がワイヤー走行方向の反り形状の向きと同じウェーハが得られた。
【0055】
(比較例2)
実施例1と同じワイヤソー(号機A)を用いたが、比較例2では、ワイヤソー筐体部の内部を流れる冷却水の温度、ワイヤーガイド内を流れる冷却水の温度、インゴット切断する際に供給されるスラリーの温度の各温度について、切始め時と中央部の温度差を、実施例2よりも更に小さくした図12のような温度条件で切断を行った。尚、図12内の表記は比較のため、破線が実施例2の温度条件、実線が比較例2の温度条件を表している。比較例2の温度条件は、ワーク送り方向の反り形状を凸形状とすることを狙ったものであったが、後述のように、実際にはこの場合、全てのウェーハを凸形状とすることはできなかった。
【0056】
切断後のウェーハ形状を確認すると、ワーク送り方向の反り形状は、図13のようになっており、P側からセンター部分までのウェーハは凸形状であるのに対し、K側のウェーハはほぼ平坦〜微小ながら凹形状となっており、インゴット内全てが一方向とはならない結果であった。これは、ワイヤソー筐体部の内部を流れる冷却水の温度の切始め時及び切終り時と中央部切断時の温度差が、切始め時及び切終り時の温度の4%分以下であり、さらに、ワイヤーガイド内を流れる冷却水の温度も上記温度差が切始め時及び切終り時の温度の4%分以下であるためと考えられる。この結果から、各温度について、切始め時と中央部の温度差を切始め時温度の4%分より大きくすることが好ましいとわかった。
【0057】
このように、ワイヤソー(号機A)では、一部のウェーハでワイヤー走行方向の反りとワーク送り方向の反りの向きが合致しなかった。
【0058】
(比較例3)
実施例1と同じワイヤソー(号機A)を用いたが、比較例3では、ワーク送り方向の反り形状が凹形状となるように切断を行った。即ち、ワーク送り方向の反りの向きがワイヤー走行方向の反りとは逆になるような条件でインゴットの切断を行った。比較例3では、ワイヤソー筐体部の内部を流れる冷却水の温度、ワイヤーガイド内を流れる冷却水の温度、インゴット切断する際に供給されるスラリーの温度の各温度について、切始め時と中央部の温度差は図4のような温度条件とした。
【0059】
切断後のウェーハの形状を確認すると、ワーク送り方向の反り形状は、図14のようになり、インゴット切断位置によらず、全てのウェーハでBOWは負の値であり、いずれも凹形状となっていた。一方、ワイヤー走行方向の反り形状は、インゴット切断位置によらず、全てのウェーハで凸形状となっていた。このように、全てのウェーハでワイヤー走行方向の反りとワーク送り方向の反りの向きが逆になった。
【0060】
(実施例3)
実施例1、2、比較例1〜3と異なるワイヤソー(号機B)を用いてインゴットの切断を行った。まず、切断を行う前に、予め、前のインゴットの切断で得られたウェーハのワイヤー走行方向の反りの向きを確認した。実施例3で使用したワイヤソー(号機B)では、図15のように、インゴット内のいずれの位置でもワイヤー走行方向の反り形状が凹形状となっていた。
【0061】
そこで、次のインゴットから切り出すウェーハのワーク送り方向の反り形状もワイヤー走行方向の反り形状の向きと同じ凹形状となるように切断を行った。ここでは、ワイヤソー筐体部の内部を流れる冷却水の温度、ワイヤーガイド内を流れる冷却水の温度、インゴット切断する際に供給されるスラリーの温度を、凹形状を狙った比較例3の図4の条件よりも各温度の温度差を小さくした図16の条件で切断を行った。尚、図16内の表記は比較のため、破線が比較例3の温度条件、実線が実施例3の温度条件になっている。
【0062】
切断後のウェーハの形状を確認すると、ワーク送り方向の反り形状は、図17のようになっており、インゴット切断位置によらず、全てのウェーハでBOWは負の値であり、いずれも凹形状となっていた。なお、反りの絶対値は、比較例3よりも小さくなっていた。また、ワイヤー走行方向の反りの形状は、図18のようになっており、予め確認したワイヤー走行方向の反りと同様に、インゴット切断位置によらず、全てのウェーハでBOWは負の値であり、いずれも凹形状となっていた。このように、インゴット内の位置によらず、ワーク送り方向の反りがワイヤー走行方向の反りの向きと同じウェーハが得られた。
【0063】
表1に、実施例1〜3、比較例1〜3における切断条件と切断結果をまとめたもの示す。
【0064】
【表1】
【0065】
(エピタキシャルウェーハの作製)
上記の実施例1〜3、比較例1〜3で得られたシリコンウェーハに、研磨、研削を施した後に主表面にエピタキシャル層を成長させた。その結果、ワーク送り方向の反りの向きをワイヤー走行方向の反りと同じ向きに合わせた実施例1〜3では、全てのエピタキシャルウェーハでうねりは発生していなかった。一方、比較例1〜3では、エピタキシャルウェーハにうねりが発生した。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0067】
1…ワイヤソー、 2…ワイヤー、 3…複数のワイヤーガイド、
4、4’…張力付与機構、 5…ワーク送り機構、 6…ノズル、
7、7’…ワイヤーリール、 8…トラバーサ、 9…定トルクモーター、
10…駆動用モーター、 11…ワイヤソー筐体部、 12…ワイヤー列、
13、14、15…温調機能、
W…インゴット。
【要約】
【課題】エピ処理を行った後の面内において、うねりが発生し難いウェーハを得ることができるインゴットの切断方法を提供する。
【解決手段】複数のワイヤーガイド間に螺旋状に巻回された軸方向に走行するワイヤーでワイヤー列を形成し、ワーク送り機構により保持したインゴットをワイヤー列に切込み送りし、インゴットとワイヤーとの接触部にスラリーを供給しながら、インゴットを複数のウェーハに切断するワイヤソーによるインゴットの切断方法であって、予め、前のインゴットの切断で得られたウェーハのワイヤー走行方向の反りの向きを確認しておき、次に、確認されたワイヤー走行方向の反りの向きに、ワーク送り方向の反りの向きが合致する条件でインゴットの切断を行うことで、ワイヤー走行方向の反りとワーク送り方向の反りの向きが同じウェーハを得ることを特徴とするインゴットの切断方法。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図18