(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板上に第1のワイヤを介して第1の半導体素子がワイヤボンディング接続されると共に、前記第1の半導体素子上に、前記第1の半導体素子の面積よりも大きい第2の半導体素子が圧着されてなる半導体装置において、前記第2の半導体素子を圧着すると共に、前記第1のワイヤ及び前記第1の半導体素子を埋め込むために用いられるフィルム状接着剤であって、
硬化後における50℃での弾性率が1000MPaよりも大きく、かつ、1600MPa以下、硬化後における150℃〜260℃の弾性率が630MPa以下であり、ガラス転移温度Tgが155℃以下であり、
エポキシ樹脂及びフェノール樹脂を含む、フィルム状接着剤。
前記フィルム状接着剤の前記ダイシングテープが設けられた面とは反対側面に設けられたカバーフィルムを有する、請求項6又は7に記載のダイシングダイボンディング一体型接着シート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。なお、本明細書における「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味する。
【0028】
(フィルム状接着剤)
図1は、本実施形態に係るフィルム状接着剤10を模式的に示す断面図である。フィルム状接着剤10は、熱硬化性であり、半硬化(Bステージ)状態を経て、硬化処理後に完全硬化物(Cステージ)状態となり得る接着剤組成物をフィルム状に成形することにより作製できる。
【0029】
フィルム状接着剤10は、硬化後における50℃での弾性率が1000MPa以下、硬化後における150℃〜260℃の弾性率が20MPa以下であり、ガラス転移温度Tgが150℃以下である。
【0030】
フィルム状接着剤10は、硬化前のずり粘度が5000Pa・s以下となる温度が60〜175℃のいずれかの温度であることが好ましい。この場合、良好な埋込性が発現するため、接着面に空隙を発生させることなく第2の半導体素子を圧着できる。これにより、得られる半導体装置の接続信頼性をより良好にすることができる。
【0031】
なお、上記ずり粘度は、ARES(レオメトリック・サイエンティフィック社製)を用い、フィルム状接着剤10に5%の歪みを与えながら5℃/分の昇温速度で昇温させながら測定した場合の測定値を意味する。一方、引っ張り弾性率は、動的粘弾性測定装置(UBM社製)を用い、3℃/分の昇温速度で昇温させながら測定した場合の測定値を意味する。また、接着剤破断伸び率および破断強度は、10mm幅、60μm厚の硬化前のフィルム状接着剤をチャック間距離20mmにて引っ張り試験機にセットし50mm/分の速度で引っ張った場合に、試験片が破断するまでの伸び率と引張強度を意味する。
【0032】
また、フィルム状接着剤10は、AUS308を塗布した基板への硬化後の接着力が1.0MPa以上であることが好ましい。この場合、得られる半導体装置の接続信頼性がより良好になる。
【0033】
フィルム状接着剤10は、(a1)軟化点が60℃以下又は常温で液体であるエポキシ樹脂及び軟化点が60℃以下又は常温で液体であるフェノール樹脂の少なくとも一方(以下、単に「(a1)成分」と記載する。)と、(a2)軟化点が60℃より高くエポキシ当量が190以上のエポキシ樹脂及び軟化点が60℃より高く水酸基当量が190以上であるフェノール樹脂の少なくとも一方と(以下、単に「(a2)成分」と記載する。)、を含む熱硬化性樹脂を100質量部、(b1)架橋性官能基をモノマー比率で5〜15%有し、重量平均分子量が10万〜40万でありガラス転移温度Tgが−50〜50℃である第1の高分子量成分(以下、単に「(b1)成分」と記載する。)と、(b2)架橋性官能基をモノマー比率で1〜7%有し、重量平均分子量が50万〜80万でありガラス転移温度Tgが−50〜50℃である第2の高分子量成分(以下、単に「(b2)成分」と記載する。)と、を含む(b)高分子量成分を20〜160質量部、(c1)平均粒径が0.2μm以上の第1のフィラー(以下、単に「(c1)成分」と記載する。)と、(c2)平均粒径が0.2μm未満の第2のフィラー(以下、単に「(c2)成分」と記載する。)と、を含む(c)無機フィラーを10〜90質量部、及び、(d)硬化促進剤を0〜0.20質量部、含有していることが好ましい。
【0034】
フィルム状接着剤10は、(a1)成分と(a2)成分とのように、硬化速度の異なる熱硬化樹脂を組み合わせると共に、(b1)成分と(b2)成分とのように、架橋性官能基の比率、重量平均分子量及びガラス転移温度Tgを調整した高分子量成分を混合し、更に(c1)、(c2)及び(d)成分を組み合わせることで、硬化後における弾性、ガラス転移温度Tg及びタック強度が低くなる。よって、薄型の半導体素子を使用した場合でも、硬化後の半導体素子の反りを抑制することができる。また、フィルム状接着剤10は、(d)効果促進剤を含むことにより良好な硬化性を得ることができる。
【0035】
ここで、フィルム状接着剤10の硬化後の50℃での弾性率を1000MPa以下、150℃〜260℃の弾性率を20MPa以下、ガラス転移温度Tgを150℃以下とするためには、例えば、(a2)成分の量を増やす、(c)無機フィラーの含有量を下げる、(b)高分子量成分の含有量を増やすことで調整することができる。
【0036】
また、フィルム状接着剤10のずり粘度が5000Pa・s以下となる温度が60〜175℃のいずれかの温度となるようにするには、例えば、(b)高分子量成分の含有量を減らす、(a1)成分の含有量を増やす、(b1)成分の含有量を増やして(b2)成分の含有量を減らす、及び(c)無機フィラーの含有量を下げる、ことで調整することができる。
【0037】
また、AUS308を塗布した基板との硬化後の接着力を1.0MPa以上とするためには、例えば、(a2)成分の量を減らす、(c)無機フィラーの含有量を増やすことで調整することができる。
【0038】
フィルム状接着剤10は、十分な接着性を得るという観点から、(e)カップリング剤等の添加剤を含有することが好ましい。
【0039】
(a)熱硬化性成分としては、熱硬化性樹脂が好ましく、半導体素子を実装する場合に要求される耐熱性及び耐湿性を有するエポキシ樹脂及びフェノール樹脂等が好ましい。
【0040】
半導体素子を圧着時に良好な埋込性が得られ、加圧オーブンで良好にボイドを消失させるためには、ずり粘度が5000Pa・s以下となる温度が60〜175℃のいずれかの温度とすることが好ましい。熱硬化性樹脂を調整することにより、ずり粘度が5000Pa・s以下となる温度を60〜175℃のいずれかの温度とするためには、(a1)成分の含有量が(a)熱硬化性成分100質量部を基準として30質量%以上含有することが必要である。
【0041】
(a1)成分のエポキシ樹脂の例としては、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0042】
【化1】
(1)
(式(1)中、nは0〜5を示す。)
【0043】
上記一般式(1)以外の(a1)成分のエポキシ樹脂としては、軟化点が60℃以下又は常温で液体であるエポキシ樹脂で、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂等を変性させた二官能エポキシ樹脂などを使用しても良い。このようなエポキシ樹脂の例としては、VG3101L(エポキシ当量210)などが挙げられる。
【0044】
製造した半導体装置の反りを抑制するため、硬化後の50℃での弾性率を1000MPa以下、150℃〜260℃の弾性率を20MPa以下であり、ガラス転移温度Tgを150℃以下とする必要があるが、(a)熱硬化性樹脂を調整して上記弾性率及びガラス転移温度Tgの要件を満たすためには、(a2)成分を25質量%以上含有する必要がある。このようなエポキシ樹脂の例としては、(株)プリンテック製のSR35K(エポキシ当量938)、フェノール樹脂の例としては、エア・ウォーター(株)製のHEシリーズ(例えば、HE200C−10)などが挙げられる。
【0045】
(a1)成分及び(a2)成分以外のエポキシ樹脂を(a)熱硬化性樹脂として併用してもよい。例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂などを使用することができる。また、エポキシ樹脂として、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂等の一般に知られているものを用いることもできる。
【0046】
また、(a1)成分及び(a2)成分以外のフェノール樹脂を(a)熱硬化性樹脂として併用してもよい。例えば、DIC(株)製のフェノライトKA、TDシリーズ、三井化学株式会社製のミレックスXLC−シリーズとXLシリーズ(例えば、ミレックスXLC−LL)等が挙げられるが、耐熱性の観点から、85℃、85%RHの恒温恒湿槽に48時間投入後の吸水率が2質量%以下で、熱重量分析計(TGA)で測定した350℃での加熱質量減少率(昇温速度:5℃/min、雰囲気:窒素)が5質量%未満のものが好ましい。
【0047】
(a)熱硬化性成分としてエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の両方を含む場合、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂の配合量は、それぞれエポキシ当量と水酸基当量の当量比で0.70/0.30〜0.30/0.70となるのが好ましく、0.65/0.35〜0.35/0.65となるのがより好ましく、0.60/0.40〜0.40/0.60となるのがさらに好ましく、0.60/0.40〜0.50/0.50となるのが特に好ましい。配合比が上記範囲を超えると、作製したフィルム状接着剤が硬化性に劣る可能性がある。または、未硬化フィルム状接着剤の粘度が高くなり、流動性に劣る可能性がある。
【0048】
(b)高分子量成分としては、架橋性官能基比率が高く分子量が低い高分子量成分と、架橋性官能基比率が低く分子量が高い高分子量成分との併用が好ましく、後者の高分子量成分が一定量以上含まれることが好ましい。すなわち、(b1)架橋性官能基をモノマー比率で5〜15%有し、重量平均分子量が10万〜40万でありガラス転移温度Tgが−50〜50℃である第1の高分子量成分と、(b2)架橋性官能基をモノマー比率で1〜7%有し、重量平均分子量が50万〜80万でありガラス転移温度Tgが−50〜50℃である第2の高分子量成分とからなり、(b1)成分の含有量が(b)高分子量成分100質量部を基準として50質量%以上であることが好ましい。
【0049】
(b1)成分及び(b2)成分共にアクリル系樹脂が好ましく、更に、ガラス転移温度Tgが−50℃〜50℃で、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレート等のエポキシ基またはグリシジル基を架橋性官能基として有する官能性モノマーを重合して得たエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体等のアクリル系樹脂がより好ましい。
【0050】
このような樹脂として、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エポキシ基含有アクリルゴム等を使用することができ、エポキシ基含有アクリルゴムがより好ましい。エポキシ基含有アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、主として、ブチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体や、エチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体等からなるエポキシ基を有しているゴムである。
【0051】
なお、(b)高分子量成分の架橋性官能基としては、エポキシ基だけでなく、アルコール性またはフェノール性水酸基、カルボキシル基等の架橋性官能基が挙げられる。
【0052】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
ガラス転移温度は、DSC(熱示差走査熱量計)(例えば、(株)リガク製「Thermo Plus 2」)を用いて測定したものをいう。
【0053】
(b1)成分の含有量は、(b)高分子量成分100質量部を基準としては50%以上であることが好ましく、55%〜90%であることがより好ましい。(b1)成分の含有量が50%より多いと、粘度が低減できるため埋込性が良好になる。一方、(b1)成分の含有量が90%以下であると硬化後の接着強度がより良好になる。
【0054】
また、(b)高分子量成分のガラス転移温度Tgが50℃以下であると、フィルム状接着剤10の柔軟性が良好になる。一方、ガラス転移温度Tgが−50℃以上であると、フィルム状接着剤の柔軟性が高くなり過ぎないため、半導体ウェハをダイシングする際にフィルム状接着剤10が切断しやすい。このため、バリの発生によりダイシング性が悪化することを抑えられる。
【0055】
(b1)成分の重量平均分子量は、10万以上40万以下であることが好ましい。(b1)成分の重量平均分子量が10万以上であると、フィルム成膜性が良好になると共に、フィルム状接着剤10の接着強度と耐熱性を高めることができる。(b1)成分の重量平均分子量が40万以下であると、ずり粘度を低減できるため、フィルム状接着剤10の埋込性が良好になる。なお、接着強度は、後述のダイシェア強度を測定することができる。
【0056】
(b2)成分の重量平均分子量は、50万以上80万以下であることが好ましい。(b2)成分の重量平均分子量が50万以上であると、(b1)成分との併用により成膜性を向上させる効果が一段と良好になる。(b2)成分の重量平均分子量が80万以下であると未硬化フィルム状接着剤のずり粘度を低減できるため、埋込性が良好になる。また、未硬化フィルム状接着剤の切削性が改善し、ダイシングの品質が良好になる場合がある。
【0057】
(b)高分子量成分は、全体でTgが−20℃〜40℃である高分子量成分が好ましく、Tgが−10℃〜30℃である高分子量成分を含むことが好ましい。この場合、ダイシング時にフィルム状接着剤を切断しやすく樹脂くずが発生し難い点、接着力と耐熱性が高い点、また未硬化フィルム状接着剤の高い流動性を発現させることができる。
【0058】
(b)高分子量成分は、(a)熱硬化性成分100質量部に対して、20〜160質量部含有することが好ましい。(b)高分子量成分の含有量が20質量部以上であると、フィルムの可とう性の低下を抑制できるともに、加熱後には低弾性化し、パッケージの反りが抑えられる。一方、(b)高分子量成分の含有量が160質量部以下であると、未硬化フィルムの流動性が上昇し、埋込性が良好になる。
【0059】
更に、高い接着力を発現させるため、(b1)成分のグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレート等の官能性モノマーのモノマー比率は5〜15%が好ましく、150℃/1時間加熱後の引っ張り弾性率を低く維持する観点から、5〜10%がより好ましい。ここで、「モノマー比率」とは、使用した全モノマーの全重量中の使用した官能性モノマーの重量の割合を意味する。
【0060】
本発明で使用する(b)高分子量成分は、市販品として入手することも可能である。例えば、帝国化学産業(株)製の商品名「アクリルゴムHTR−860P−30B−CHN」等が挙げられる。この化合物は、架橋性官能基としてグリシジル部位を有し、アクリル酸誘導体からなるアクリルゴムをベース樹脂とする化合物であり、重量平均分子量が10万〜30万、ガラス転移温度Tg(−7℃)である。
【0061】
(c)無機フィラーとしては、Bステージ状態におけるフィルム状接着剤のダイシング性の向上、フィルム状接着剤の取扱い性の向上、熱伝導性の向上、溶融粘度の調整、チクソトロピック性の付与、接着力の向上等の観点から、シリカフィラーを配合することが好ましい。
【0062】
本実施形態の接着剤組成物においては、未硬化フィルム状接着剤の流動性と破断性、硬化後フィルム状接着剤の引っ張り弾性率と接着力を制御する観点から、(a)熱硬化性成分100質量部に対して、(c)無機フィラーを10〜90質量部配合することが好ましい。上記下限値を下回る(c)無機フィラーを配合した場合、未硬化フィルム状接着剤のダイシング性が悪化し、硬化後の接着力が低下することがある。一方、上記上限値を超える(c)無機フィラーを配合した場合、未硬化フィルム状接着剤の流動性が低下し、硬化後の弾性率が高くなる傾向がある。
【0063】
(c)無機フィラーは、未硬化フィルム状接着剤のダイシング性を向上し、硬化後の接着力を十分に発現させる目的で、平均粒径の異なる2種類以上のフィラーを混合することが好ましい。すなわち、未硬化フィルム状接着剤の破断性向上を目的とした平均粒径が0.2μm以上の第1のフィラーと、硬化後の接着力を十分に発現させることを目的とした平均粒径が0.2μm未満の第2のフィラーを含み、粒径が0.2μm以上の粒子が(c)無機フィラー100質量部を基準として30質量%以上を占めることが好ましい。第1のフィラーの含有量が30体積%未満の場合には、フィルムの破断性が悪化し、未硬化フィルム状接着剤の流動性が悪化する傾向にある。ここで「平均粒径」とはレーザー回折式粒度分布測定装置でアセトンを溶媒として分析した場合に得られる値とする。各種類のフィラー同士は、粒度分布測定装置で各平均粒径が判別できる程度に平均粒径の差が大きいことがより好ましい。
【0064】
(d)硬化促進剤
また、良好な硬化性を得る目的で、(d)硬化促進剤を添加することが好ましい。なお、反応性の観点からイミダゾール系の化合物が好ましい。反応性が高すぎる硬化促進剤は、フィルム状接着剤の製造工程中の加熱によりずり粘度を上昇させるだけではなく、経時による劣化を顕著に引き起こす傾向がある。一方、反応性が低すぎる硬化促進剤は、半導体装置の製造工程内の熱履歴ではフィルム状接着剤が完全には硬化することが困難となり、未硬化のまま製品内に搭載されることとなり、十分な接着性が得られず、半導体装置の接続信頼性を悪化させる可能性がある。
【0065】
硬化促進剤の添加量が少なすぎる場合には、半導体装置の製造工程内の熱履歴ではフィルム状接着剤が完全には硬化することが困難となり、未硬化のまま製品内に搭載されることとなり、その後の素子不具合を誘発するおそれがある。一方、硬化促進剤の添加量が多すぎる場合には、フィルム状接着剤の製造工程中の加熱によりずり粘度を上昇させるだけではなく、経時による劣化を顕著に引き起こす傾向がある。このような観点から、硬化促進剤は熱硬化性樹脂100質量部に対して、0〜0.20質量部含有することが好ましい。
【0066】
(e)その他の成分:
本実施形態の接着剤組成物は、上記(a)〜(d)成分の以外に、接着性向上の観点から、(e)カップリング剤を含有することが好ましい。カップリング剤としては、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0067】
(フィルム状接着剤及び接着シート)
フィルム状接着剤10は、基材フィルム上に上述した接着剤組成物のワニスを塗布して乾燥した接着剤組成物を接着シートとして用いることができる。具体的には、まず、(a)〜(d)成分と必要に応じて上記(e)カップリング剤等の他の添加成分を、有機溶媒中で混合、混練してワニスを調製する。
【0068】
上記の混合、混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を用い、これらを適宜組み合わせて行うことができる。上記の加熱乾燥は、使用した溶媒が充分に揮散する条件であれば特に制限はないが、通常60℃〜200℃で、0.1〜90分間加熱して行うことができる。
【0069】
上記ワニスを作製するための有機溶媒は、上記各成分を均一に溶解、混練または分散できるものであれば制限はなく、従来公知のものを使用することができる。このような溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、Nメチルピロリドン、トルエン、キシレン等が挙げられる。乾燥速度が速く、価格が安い点でメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等を使用することが好ましい。
【0070】
上記基材フィルムとしては、特に制限はなく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム等)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルム等が挙げられる。
【0071】
次に、得られたワニスを基材フィルム上に塗布することによりワニスの層を形成する。次に、加熱乾燥によりワニス層から溶媒を除去した後、基材フィルムを除去することにより、フィルム状接着剤10が得られる。
【0072】
厚膜のフィルム状接着剤10を製造する方法の一つとして、予め得られたフィルム状接着剤10と基材フィルム上に形成されたフィルム状接着剤10とを張り合わせて製造する方法が挙げられる。
【0073】
フィルム状接着剤10の膜厚は、第1の半導体素子及び半導体素子接続用のワイヤや、基板の配線回路等の凹凸を十分に充填可能とするため、20〜200μmであることが好ましい。膜厚が20μmより薄いと、接着力が乏しくなる傾向があり、200μmより厚いと、経済的でなくなる上に、半導体装置の小型化の要求に応えることが困難となる。なお、接着性が高く、また、半導体装置を薄型化できる点で、フィルム状接着剤10の膜厚は30〜200μmがより好ましく、40〜150μmが更により好ましい。
【0074】
フィルム状接着剤10は、
図2に示すように、ワニスを塗布した基材フィルムを除去しないまま、基材フィルム20上にフィルム状接着剤10を積層した接着シート100として用いることができる。
【0075】
また、
図3に示すように、フィルム状接着剤10は、基材フィルム20が設けられた面とは反対側面にカバーフィルム30を設けた、接着シート110としても用いることもできる。カバーフィルム30としては、例えば、PETフィルム、PEフィルム、OPPフィルム等が挙げられる。
【0076】
また、フィルム状接着剤は、フィルム状接着剤10をダイシングテープ上に積層したダイシング・ダイボンディング一体型接着シートとして用いることもできる。この場合、半導体ウェハへのラミネート工程が一回で済む点で、作業の効率化が可能である。
【0077】
ダイシングテープとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。また、ダイシングテープは、必要に応じて、プライマー塗布、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理等の表面処理が行われていてもよい。
【0078】
更に、ダイシングテープは粘着性を有するものが好ましく、上述のプラスチックフィルムに粘着性を付与したものを用いてもよいし、上述のプラスチックフィルムの片面に粘着剤層を設けてもよい。
【0079】
このようなダイシング・ダイボンディング一体型接着シートとしては、
図4に示される接着シート120及び
図5に示される接着シート130等が挙げられる。接着シート120は、
図4に示すように、引張テンションを加えたときの伸びを確保できる基材フィルム40上に粘着剤層50が設けられたダイシングテープ60を支持基材とし、ダイシングテープ60の粘着剤層50上に、フィルム状接着剤10が設けられた構造を有している。接着シート130は、
図5に示すように、接着シート120においてフィルム状接着剤10の表面に基材フィルム20が設けられている。
【0080】
基材フィルム40としては、ダイシングテープについて記載した上述のプラスチックフィルムが挙げられる。また、粘着剤層50は、例えば、液状成分及び高分子量成分を含み適度なタック強度を有する樹脂組成物が挙げられる。粘着剤層50を基材フィルム40上に塗布し乾燥する、または、PETフィルム等の基材フィルムに塗布・乾燥させた粘着剤層を基材フィルム40と貼り合せることでダイシングテープは形成可能である。タック強度は、例えば、液状成分の比率、高分子量成分のTgを調整することにより、所望の値に設定される。
【0081】
接着シート120及び接着シート130等のダイシング・ダイボンディング一体型接着シートを半導体装置の製造に用いる場合、ダイシング時に半導体素子が飛散しない粘着力を有し、その後のピックアップ時にはダイシングテープから容易に剥離できることが必要である。
【0082】
かかる特性は、上述したように粘着剤層のタック強度の調整、光反応等によるタック強度を変化させることによって得ることができるが、フィルム状接着剤の粘着性が高すぎるとピックアップが困難になることがある。そのため、フィルム状接着剤10のタック強度を適宜調節することが好ましい。その方法としては、例えば、フィルム状接着剤10の室温(25℃)におけるフローを上昇させると粘着強度及びタック強度も上昇する傾向があり、フローを低下させると粘着強度及びタック強度も低下する傾向があることを利用すればよい。
【0083】
例えば、フローを上昇させる場合には、可塑剤として機能する化合物の含有量の増加等の方法が挙げられる。フローを低下させる場合には、例えば、可塑剤として機能する化合物の含有量を減らす方法が挙げられる。上記可塑剤としては、例えば、単官能のアクリルモノマー、単官能エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0084】
ダイシングテープ60上にフィルム状接着剤10を積層する方法としては、上述した接着剤組成物のワニスを全面に塗布し乾燥する、または印刷により部分的に塗工する方法のほか、予め作製した本発明のフィルム状接着剤10をダイシングテープ60上に、プレス、ホットロールラミネートにより積層する方法が挙げられる。本実施形態においては、連続的に製造でき、効率がよい点で、ホットロールラミネートによる方法が好ましい。
【0085】
ダイシングテープ60の膜厚は、特に制限はなく、フィルム状接着剤10の膜厚やダイシング・ダイボンディング一体型接着シートの用途によって適宜、当業者の知識に基づいて定めることができる。ダイシングテープ60の厚みが60μmを下回ると、取扱い性が悪く、またダイシングにより個片化された半導体素子をダイシングテープ60から剥離する工程でのエキスパンドによりダイシングテープ60が破れる傾向が高い。一方、経済性と取扱い性の良さという観点から、ダイシングテープ60の厚みは、180μm以下であることが好ましく、以上より、ダイシングテープ60の膜厚は60〜180μmであることが好ましい。
【0086】
(半導体装置)
図6は、本実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図6に示すように、半導体装置200は、第1の半導体素子Wa上に、第2の半導体素子Waaが積み重ねられた半導体装置である。詳細には、基板14に、第1のワイヤ88を介して1段目の第1の半導体素子Waがワイヤボンディング接続されると共に、第1の半導体素子Wa上に、第1の半導体素子Waの面積よりも大きい2段目の第2の半導体素子Waaがフィルム状接着剤10を介して圧着されることで、第1のワイヤ88及び第1の半導体素子Waがフィルム状接着剤10に埋め込まれてなるワイヤ埋込型の半導体装置である。また、半導体装置200では、基板14と第2の半導体素子Waaとが更に第2のワイヤ98を介して電気的に接続されると共に、第2の半導体素子Waaが封止材42により封止されている。
【0087】
第1の半導体素子Waの厚みは、10〜170μmであり、第2の半導体素子Waaの厚みは20〜400μmである。フィルム状接着剤10の厚みは、20〜200μmであり、好ましくは30〜200μmであり、より好ましくは40〜150μmである。フィルム状接着剤10内部に埋め込まれている第1の半導体素子Waは、半導体装置200を駆動するためのコントローラチップである。
【0088】
基板14は、表面に回路パターン84,94がそれぞれ二箇所ずつ形成された有機基板90からなる。第1の半導体素子Waは、回路パターン94上に接着剤41を介して圧着されており、第2の半導体素子Waaは、第1の半導体素子Waが圧着されていない回路パターン94、第1の半導体素子Wa、及び回路パターン84の一部を覆うようにフィルム状接着剤10を介して基板14に圧着されている。基板14上の回路パターン84,94に起因する凹凸の段差には、フィルム状接着剤10が埋め込まれている。そして、樹脂製の封止材42により、第2の半導体素子Waa、回路パターン84及び第2のワイヤ98が封止されている。
【0089】
(半導体装置の製造方法)
本実施形態に係る半導体装置200は、以下の手順により製造される。まず、
図7に示すように、基板14上の回路パターン94上に、接着剤41付き第1の半導体素子Waを圧着し、第1のワイヤ88を介して基板14上の回路パターン84と第1の半導体素子Waとを電気的にボンディング接続する(第1のダイボンディング工程)。
【0090】
次に、厚み50μmの半導体ウェハ(サイズ:8インチ)の片面に、接着シート100をラミネートし、基材フィルム20を剥がすことで、半導体ウェハの片面にフィルム状接着剤10(厚み135μm)を貼り付ける。そして、フィルム状接着剤10にダイシングテープ60を貼り合わせた後、7.5mm角にダイシングすることにより、
図8に示すように、フィルム状接着剤10が貼付した第2の半導体素子Waaを得る(ラミネート工程)。
【0091】
ラミネート工程は、50〜100℃で行うことが好ましく、60〜80℃で行うことがより好ましい。ラミネート工程の温度が50℃以上であると、半導体ウェハと良好な密着性を得ることができる。ラミネート工程の温度が100℃以下であると、ラミネート工程中にフィルム状接着剤10が過度に流動することが抑えられるため、厚みの変化等を引き起こすことを防止できる。
【0092】
ダイシング方法としては、回転刃を用いるブレードダイシング、レーザーによりフィルム状接着剤またはウェハとフィルム状接着剤の両方を切断する方法、また常温または冷却条件下での伸張など汎用の方法が挙げられる。
【0093】
そして、フィルム状接着剤10が貼付した第2の半導体素子Waaを、第1の半導体素子Waが第1のワイヤ88を介してボンディング接続された基板14に圧着する。具体的には、
図9に示すように、フィルム状接着剤10が貼付した第2の半導体素子Waaを、フィルム状接着剤10が第1の半導体素子Waを覆うように載置し、次いで、
図10に示すように、第2の半導体素子Waaを基板14に圧着させることで基板14に第2の半導体素子Waaを固定する(ダイボンド工程)。ダイボンド工程は、フィルム状接着剤10を80〜180℃、0.01〜0.50MPaの条件で0.5〜3.0秒間圧着することが好ましい。ダイボンド工程の後、フィルム状接着剤10を60〜175℃、0.3〜0.7MPaの条件で、5分間以上加圧及び加熱する。
【0094】
次いで、
図11に示すように、基板14と第2の半導体素子Waaとを第2のワイヤ98を介して電気的に接続した後(第2のワイヤボンディング工程)、回路パターン84、第2のワイヤ98及び第2の半導体素子Waaを封止材42で封止する。このような工程を経ることで半導体装置200を製造することができる。
【0095】
以上説明したように、この半導体装置200では、基板14上に第1のワイヤ88を介して第1の半導体素子Waがワイヤボンディング接続されると共に、第1の半導体素子Wa上に、第1の半導体素子Waの面積よりも大きい第2の半導体素子Waaがフィルム状接着剤10を介して圧着されることで、第1のワイヤ88及び第1の半導体素子Waがフィルム状接着剤10に埋め込まれてなるワイヤ埋込型の半導体装置であって、フィルム状接着剤10は、硬化後における50℃での弾性率が1000MPa以下、硬化後における150℃〜260℃の弾性率が20MPa以下であり、ガラス転移温度Tgが150℃以下である。
【0096】
半導体装置200は、第2の半導体素子Waaを第1の半導体素子Waの上に圧着するために用いられたフィルム状接着剤10が、硬化後において低弾性であり、低いガラス転移温度Tgを示す。このため、薄型の第2の半導体素子Waaを使用した場合でも、フィルム状接着剤10が硬化した後の半導体装置200の反りを抑制することができる。これにより、半導体装置200の応力が緩和され、良好な接続信頼性を示す半導体装置を得ることができる。
【0097】
また、半導体装置200では、基板14と第2の半導体素子とが更に第2のワイヤ98を介して電気的に接続されると共に、第2の半導体素子Waaが封止材42により封止されている。この場合、得られる半導体装置の信頼性が更に高まる。
【0098】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、基板14上に第1のワイヤ88を介して第1の半導体素子Waを電気的に接続する第1のダイボンディング工程と、第2の半導体素子Waaの片面に、第2の半導体素子Waaの形状に合わせてフィルム状接着剤10を貼付するラミネート工程と、フィルム状接着剤10が貼付された第2の半導体素子Waaを、フィルム状接着剤10が第1の半導体素子Waを覆うように載置し、フィルム状接着剤10を80〜180℃、0.01〜0.50MPaの条件で、0.5〜3.0秒間圧着することで、第1のワイヤ88及び第1の半導体素子Waをフィルム状接着剤10に埋め込むダイボンド工程と、を備える。この場合、半導体装置200を安定的に製造することができる。
【0099】
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、ダイボンド工程の直後の工程として、フィルム状接着剤10を60〜175℃、0.3〜0.7MPaの条件で、5分間以上加圧及び加熱する工程を備えている。この場合、ダイボンド工程において、残存したわずかなボイドを消失させることができるため、歩留まりを安定させながら、より容易に半導体装置を製造することができる。
【0100】
以上、本発明に係るフィルム状接着剤、接着シート、半導体装置及び半導体装置の製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行ってもよい。
【0101】
半導体装置200において、基板14は、表面に回路パターン84,94がそれぞれ二箇所ずつ形成された有機基板90であったが、基板14としてはこれに限られず、リードフレームなどの金属基板を用いてもよい。
【0102】
半導体装置200は、第1の半導体素子Wa上に第2の半導体素子Waaが積層されており、二段に半導体素子が積層された構成を有していたが、半導体装置の構成はこれに限られない。第2の半導体素子Waaの上に第3の半導体素子を更に積層されていても構わないし、第2の半導体素子Waaの上に複数の半導体素子が更に積層されていても構わない。積層される半導体素子の数が増加するにつれて、得られる半導体装置の容量を増やすことができる。
【0103】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、ラミネート工程において、半導体ウェハの片面に、
図2に示す接着シート100をラミネートし、基材フィルム20を剥がすことで、フィルム状接着剤10を貼り付けていたが、ラミネート時に用いる接着シートはこれに限られない。接着シート100の代わりに、
図4及び5に示すダイシング・ダイボンディング一体型接着シート120,130を用いることができる。この場合、半導体ウェハをダイシングする際にダイシングテープ60を別途貼り付ける必要がない。
【0104】
ラミネート工程において、半導体ウェハではなく、半導体ウェハを個片化して得られた半導体素子を、接着シート100にラミネートしても構わない。この場合、ダイシング工程を省略することができる。
【実施例】
【0105】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0106】
(実施例1〜6及び比較例3)
表1または表2に示す品名及び組成比(単位:質量部)の(a)熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂及びフェノール樹脂、(c)無機フィラーからなる組成物にシクロヘキサノンを加え、撹拌混合した。これに、表1または表2に同様に示す、(b)高分子量成分としてのアクリルゴムを加えて撹拌し、更に表1または表2に同様に示す(e)カップリング剤及び(d)硬化促進剤を加えて各成分が均一になるまで撹拌してワニスを得た。
【0107】
なお、表1及び表2中の各成分の記号は下記のものを意味する。
【0108】
(エポキシ樹脂)
R710:(商品名、(株)プリンテック製、ビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量170、常温で液状、重量分子量約340)。
YDF−8170C:(商品名、東都化成(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量159、常温で液体、重量分子量約310)。
VG3101L:(商品名、(株)プリンテック製、多官能エポキシ樹脂、エポキシ当量210、軟化点39〜46℃)
SR35K:(商品名、株式会社プリンテック製、エポキシ樹脂、エポキシ当量:930〜940、軟化点:86〜98℃)。
YDCN−700−10:(商品名、東都化成(株)製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量210、軟化点75〜85℃)。
【0109】
(フェノール樹脂)
LF−4871:(商品名、DIC(株)製、水酸基当量118、吸水率1質量%、加熱質量減少率4質量%)。
ミレックスXLC−LL:(商品名、三井化学(株)製、フェノール樹脂、水酸基当量175、軟化点77℃、吸水率1質量%、加熱質量減少率4質量%)。
HE200C−10:(商品名、エア・ウォーター(株)製、フェノール樹脂、水酸基当量200、軟化点65〜76℃、吸水率1質量%、加熱質量減少率4質量%)。
HE910−10:(商品名、エア・ウォーター(株)製、フェノール樹脂、水酸基当量101、軟化点83℃、吸水率1質量%、加熱質量減少率3質量%)。
KA1163::(商品名、DIC株式会社製、フェノール樹脂、水酸基当量:118、軟化点:105〜115℃、加熱質量減少率4質量%)
【0110】
(無機フィラー)
SC2050−HLG:(商品名、アドマテックス(株)製、シリカフィラー分散液、平均粒径0.50μm)。
SC1030−HJA:(商品名、アドマテックス(株)製、シリカフィラー分散液、平均粒径0.25μm)。
アエロジルR972:(商品名、日本アエロジル(株)製、シリカ、平均粒径0.016μm)。
【0111】
(高分子量成分)
アクリルゴムHTR−860P−30B−CHN:(サンプル名、帝国化学産業(株)製、重量平均分子量23万、グリシジル官能基モノマー比率8%、Tg:−7℃)。
アクリルゴムHTR−860P:(サンプル名、帝国化学産業(株)製、重量平均分子量80万、グリシジル官能基モノマー比率3%、Tg:−7℃)。
【0112】
(カップリング剤)
A−1160:(商品名、GE東芝(株)製、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン)。
A−189:(商品名、GE東芝(株)製、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)。
【0113】
(硬化促進剤)
キュアゾール2PZ−CN:(商品名、四国化成工業(株)製、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)。
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
次に、得られたワニスを100メッシュのフィルターでろ過し、真空脱泡した。真空脱泡後のワニスを、基材フィルムとしての、厚さ38μmの離型処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布した。塗布したワニスを、90℃で5分間、続いて140℃で5分間の2段階で加熱乾燥した。こうして、基材フィルムとしてのPETフィルム上に、Bステージ状態にある厚み60μmのフィルム状接着剤を備えた接着シートを得た。
【0116】
<各種物性の評価>
得られた接着シートのフィルム状接着剤について、ずり粘度、175℃加圧オーブン硬化後の埋込性、硬化後の引っ張り弾性率、パッケージの反り、接着強度の測定、並びに、耐リフロー性の評価を行った。
【0117】
[ずり粘度測定]
フィルム状接着剤のずり粘度は下記の方法により評価した。
上記接着シート(厚み135μm)から、基材フィルムを剥離除去し、厚み方向に10mm角に打ち抜くことで、10mm角、厚み160μmの四角形の積層体を得た。動的粘弾性装置ARES(レオメトリック・サイエンティフィック社製)に直径8mmの円形アルミプレート治具をセットし、更にここに打ち抜いたフィルム状接着剤の積層体をセットした。その後、35℃で5%の歪みを与えながら5℃/分の昇温速度で175℃まで昇温させながら測定し、ずり粘度の値が5000Pa・sとなる温度を記録した。
【0118】
[175℃加圧オーブン硬化後の埋込性]
フィルム状接着剤の175℃加圧オーブン硬化後の埋込性を下記の方法により評価した。
上記で得られた接着シートのフィルム状接着剤(厚み135μm)を、厚み50μmの半導体ウェハ(8インチ)に70℃で貼り付けた。次に、それらを7.5mm角にダイシングして半導体素子を得た。
また、日立化成工業製のFH−SC13−10(厚み20μm)を厚み50μmの半導体ウェハ(8インチ)に70℃で貼り付けた。次に、それらを3.0mm角にダイシングしてチップを得た。
個片化したFH−SC13−10付きのチップを、表面凹凸が最大6μmである評価用基板に130℃、0.20MPa、2秒間の条件で圧着し、120℃/2時間加熱し、半硬化させた。
次に、このようにして得られたサンプルに、本発明で使用したフィルム状接着剤付きの7.5mm角チップを120℃、0.20MPa、2秒間の条件で圧着した。この際、先に圧着しているFH−SC13−10付きチップが真ん中にくるように位置合わせをした。
得られたサンプルを加圧オーブンに投入し、35℃から3℃/分の昇温速度で175℃まで昇温させ、175℃で30分加熱した。
このようにして得られたサンプルを超音波映像装置SAT(日立建機製、品番FS200II、プローブ:25MHz)にて分析し、埋込性を確認した。埋込性の評価基準は以下の通りである。
○:ボイドの割合が5%未満。
×:ボイドの割合が5%以上。
【0119】
[硬化後の引っ張り弾性率の測定]
フィルム状接着剤の硬化後の引っ張り弾性率は下記の方法により評価した。
上記接着シート(厚み135μm)から、基材フィルムを剥離除去した後、厚み方向に4mm幅、長さ30mmに切り出し、120℃のオーブンで2時間、170℃で3時間加熱した。得られたサンプルを動的粘弾性装置(製品名:Rheogel−E4000、(株)UMB製)にセットし、引張り荷重をかけて、周波数10Hz、昇温速度3℃/分で測定し、50℃、150〜260度での測定値を記録した。また、測定中のTanδの値が最大となる最大温度をTgとして定義した。
【0120】
[反り量の評価]
フィルム状接着剤を用いて作製した接着剤付きチップを基板へ実装した際の反り量は、下記の方法により評価した。
上記[175℃加圧オーブン硬化後の埋込性の評価]で得たサンプルと同様にしてサンプルを作製した。得られたサンプルを170℃で3時間硬化させた後、チップの対角線方向に8mmの距離上を表面粗さ計で測定し、得られた測定値の最大値と最小値との差を硬化前のサンプルの反り量とした。本反り量が100μm以下であるものを○とし、100μm以上のものは×とした。
【0121】
[接着強度の測定]
フィルム状接着剤のダイシェア強度(接着強度)を下記の方法により測定した。
まず、上記で得られた接着シートのフィルム状接着剤(厚み135μm)を厚み400μmの半導体ウェハに70℃で貼り付けた。次に、それらを5.0mm角にダイシングして半導体素子を得た。個片化した半導体素子のフィルム状接着剤側をAUS308を塗布した基板上に120℃、0.1MPa、5秒間の条件で熱圧着してサンプルを得た。その後、得られたサンプルの接着剤を120℃で2時間、170℃で3時間加熱し、硬化させた。更に、接着剤硬化後のサンプルを85℃、60RH%条件の下、168時間放置した。その後、サンプルを25℃、50%RH条件下で30分間放置し、250℃でダイシェア強度を測定し、これを接着強度とした。
【0122】
[耐リフロー性の評価]
フィルム状接着剤の耐リフロー性を下記の方法により評価した。
上記[175℃加圧オーブン硬化後の埋込性の評価]で得たサンプルと同様にしてサンプルを作製した。得られたサンプルはモールド用封止材(日立化成工業(株)製、商品名「CEL−9750ZHF10)を用いて、175℃/6.7MPa/90秒の条件で樹脂封止し、175℃、5時間の条件で封止材を硬化させてパッケージを得た。
【0123】
上記のパッケージを24個準備し、これらをJEDECで定めた環境下(レベル3、30℃、60RH%、192時間)に曝して吸湿させた。続いて、IRリフロー炉(260℃、最高温度265℃)に吸湿後のパッケージを3回通過させた。パッケージの破損や厚みの変化、フィルム状接着剤と半導体素子との界面での剥離等が1個も観察されない場合を「○」、1個でも観察された場合を「×」と評価した。結果を表3及び4に示す。
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
表3、4に示した結果から明らかなように、実施例1〜4の接着シートは、実施例5,6及び比較例3の接着シートと比較して、175℃加圧オーブン後の埋込性に優れ、硬化後のパッケージ反りが小さく、耐リフロー性にも優れることが確認された。
【解決手段】基板14上に第1のワイヤ88を介して第1の半導体素子Waがワイヤボンディング接続されると共に、第1の半導体素子Wa上に、第2の半導体素子Waaが圧着されてなる半導体装置200において、フィルム状接着剤10は、第2の半導体素子Waaを圧着すると共に、第1のワイヤ88及び第1の半導体素子Waを埋め込むために用いられる。フィルム状接着剤10では、硬化後における50℃での弾性率が1000MPaよりも大きく、かつ、1600MPa以下、硬化後における150℃〜260℃の弾性率が630MPa以下であり、ガラス転移温度Tgが155℃以下である。フィルム状接着剤10は、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂を含む。