特許第6222507号(P6222507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6222507光モジュール用封止材、その製造方法及び光モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222507
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】光モジュール用封止材、その製造方法及び光モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20171023BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20171023BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20171023BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20171023BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20171023BHJP
   C08F 255/02 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   H01L31/04 560
   C08L23/04
   C08L23/26
   C08L101/00
   C08L23/00
   C08F255/02
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-543005(P2016-543005)
(86)(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公表番号】特表2017-504203(P2017-504203A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】KR2015001875
(87)【国際公開番号】WO2015130103
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2016年6月24日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0022842
(32)【優先日】2014年2月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・シク・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・チョル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ヨン・イ
【審査官】 山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−040735(JP,A)
【文献】 特開2007−103738(JP,A)
【文献】 特開2013−021082(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0255756(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン/α−オレフィン系共重合体と、
シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体と、
前記エチレン/α−オレフィン系重合体より融点(Tm)が高い耐熱高分子樹脂とを含み、
前記耐熱高分子樹脂は、エチレン/α−オレフィン系共重合体とシラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体の混合100重量部に対して1重量部〜2重量部の範囲内で含まれ、
耐熱高分子樹脂は、融点(Tm)が100℃〜150℃の範囲内である、光モジュール用封止材。
【請求項2】
耐熱高分子樹脂は、エチレン/α−オレフィン共重合体より低い溶融指数(MI)を有する、請求項1に記載の光モジュール用封止材。
【請求項3】
耐熱高分子樹脂は、190℃の温度及び2.16kg荷重での溶融指数(MI)が0.1g/10分〜40g/10分以下の範囲内である、請求項1に記載の光モジュール用封止材。
【請求項4】
耐熱高分子樹脂は、ポリエチレン系樹脂及び/またはポリプロピレン系樹脂である、請求項1に記載の光モジュール用封止材。
【請求項5】
耐熱高分子樹脂は、低密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載の光モジュール用封止材。
【請求項6】
下記一般式1を満足する、請求項1に記載の光モジュール用封止材:
[一般式1]
△X≦3mm
前記一般式1で、△Xは、厚さ3.2mmの第1ガラス板(横20cm×縦30cm)と厚さ3.2mmの第2ガラス板(横20cm×縦30cm)との間に封止材(横20cm×縦25cm)を2枚重なって入れ、ラミネーションして20cm×35cm(横×縦)のサイズの試験片を製造した後、前記試験片を垂直(90゜)に立設し、第1ガラス板をつるして固定し、100℃で10時間維持した後、第2ガラス板の左側、中央及び右側が垂直方向にずれた距離の平均値である。
【請求項7】
下記一般式2を満足する、請求項1に記載の光モジュール用封止材:
[一般式2]
Y≦9%
前記一般式2で、Yは、前記封止材を5cm×7cm(横×縦)のサイズに裁断した後、これを5cm×7cm(横×縦)のサイズの低鉄分強化ガラスに挟持した後、150℃でラミネーションして製造した試験片をヘイズメーターを使用して測定したヘイズを示す。
【請求項8】
シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体は、エチレン/α−オレフィン系共重合体にシラン化合物がグラフト重合されたものである、請求項1に記載の光モジュール用封止材。
【請求項9】
シラン化合物は、不飽和シラン化合物及び/またはアミノシラン化合物を含む、請求項に記載の光モジュール用封止材。
【請求項10】
シラン化合物は、下記化学式1で表示される化合物を含む、請求項に記載の光モジュール用封止材:
[化学式1]
DSiR(3−p)
前記化学式1で、Dは、アルケニルであり、Rは、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン基、アミン基または−Rであり、前記Rは、酸素(O)または硫黄(S)原子であり、Rは、アルキル基、アリール基またはアシル基であり、
は、水素、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、
pは、1〜3の整数である。
【請求項11】
前記シラン化合物は、下記化学式2で表示される化合物を含む、請求項に記載の光モジュール用封止材:
[化学式2]
SiR(4−q)
前記化学式2で、
は、−CHNRであり、R及びRは、それぞれ独立に、窒素原子に結合された水素またはRNHであり、前記Rは、炭素数1〜6のアルキレンであり、
は、ハロゲン、アミン基、−R1011または−R11であり、前記R10は、酸素(O)または硫黄(S)原子であり、R11は、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアシル基であり、
qは、1〜4の整数である。
【請求項12】
前記シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体は、オレフィン系単量体の重合単位を含む主鎖及び前記主鎖に結合された分岐鎖を含み、
前記分岐鎖は、下記化学式3で表示される化合物を含む、請求項に記載の光モジュール用封止材:
[化学式3]
−SiR121314
前記化学式3で、
12及びR13は、それぞれ独立に、ハロゲン、アミン基、−R1516または−R16であり、前記R15は、酸素(O)または硫黄(S)原子であり、前記R16は、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアシル基であり、
14は、−OSiR1718(2−m)19であり、前記R17及びR18は、それぞれ独立に、ハロゲン、アミン基、−R2021または−R21であり、前記R20は、酸素(O)または硫黄(S)原子であり、前記R21は、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアシル基であり、前記R19は、−(CHNR2223であり、前記R22及びR23は、それぞれ独立に、窒素原子に結合された水素またはR24NHであり、前記R24は、アルキレンであり、前記mは、1または2の整数であり、前記nは、1以上の整数である。
【請求項13】
前記シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体は、オレフィン系単量体の重合単位を含む主鎖及び前記主鎖に結合された分岐鎖を含み、
前記分岐鎖は、下記化学式4で表示される化合物を含む、請求項に記載の光モジュール用封止材:
[化学式4]
−SiR2526(3−r)
前記化学式4で、
25及びR26は、それぞれ独立に、ハロゲン、アミン基、−R2728または−R28であり、前記R27は、酸素(O)または硫黄(S)原子であり、前記R28は、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアシル基であり、
rは、1〜3の整数である。
【請求項14】
請求項1に記載の光モジュール用封止材の製造方法であって、
エチレン/α−オレフィン系共重合体、シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体及び前記エチレン/α−オレフィン系重合体より融点が高い耐熱高分子樹脂を含む樹脂組成物をシート形状に製造する段階を含む光モジュール用封止材の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載の封止材を含む光モジュール。
【請求項16】
前記光モジュールは、
前面基板と、
前記前面基板上に形成された封止材層と、
前記封止材層に封止された太陽電池セルと、
前記封止材層上に形成されたバックシートとを含む、請求項15に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、光モジュール用封止材、その製造方法及び光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、地球環境問題と化石燃料の枯渇などに起因して、新材生エネルギーや清浄エネルギーに対する関心が高い。そのうち、光を利用したエネルギーは、環境汚染問題及び化石燃料枯渇問題を解決することができる代表的な無公害エネルギー源として注目を集めている。光を利用したエネルギーとしては、例えば、太陽電池(solar cell)などの光電池が代表的である。
【0003】
光電池は、太陽光を電気エネルギーに転換させる素子であって、これは、一般的に太陽光を容易に吸収できるように外部環境に長期間露出しなければならないので、内部素子を保護するためのさまざまなパッケージングが行われ、ユニット(unit)形態に製造され、このようなユニットを通常「光モジュール」という。
【0004】
通常、光モジュールは、内部素子(例えば、太陽電池セル)を保護するためのバックシート(back sheet)を含む。図1は、従来の光モジュールとして太陽電池モジュールの断面を示す図である。
【0005】
図1を参照すれば、通常、太陽電池モジュールは、光が入射する透明強化ガラス3、前面封止材層2a、複数の太陽電池セルC、後面封止材層2b及びバックシート1が順次に積層された構造を有する。また、前記複数の太陽電池セルCは、互いに電気的に連結されており、前記前面及び後面封止材層2a、2bによってパッキング及び固定されている。
前記前面及び後面封止材層2a、2bを構成する封止材(Encapsulant)としては、通常、エチレン−ビニルアセテート共重合体(ethylene vinylacetate,EVA)が使用される。エチレン−ビニルアセテート共重合体は、加工性、製造費用及び透明性などのような物性において有利な側面があり、従来、多く利用されてきた。
【0006】
しかし、前記エチレン−ビニルアセテート共重合体は、水分遮断性が良くないため、高温・湿潤条件で太陽電池セルCや透明強化ガラス3との接着強度が低く、長時間使用時に層間剥離現象が発生したりする。また、エチレン−ビニルアセテート共重合体は、水分浸透による加水分解反応により酢酸ガスを発生させて、電極腐食の原因となるか、発泡などの問題点を引き起こす。このような問題点は、究極的に太陽光モジュールへの適用時に効率低下の原因になったりする。
【0007】
これを解決するために、前記封止材として、エチレン/α(アルファ)−オレフィン系共重合体を使用する技術が試みられている。特許文献1及び2は、これと関連した技術が提示されている。エチレン/α−オレフィン系共重合体は、前記エチレン−ビニルアセテート共重合体に比べて、水分透過率が低く、酢酸などの加水分解生成物を発生させないので、太陽光モジュールの信頼性を高めることができる。
【0008】
しかし、このようなエチレン/α(アルファ)−オレフィン系共重合体素材の封止材は、接着性などが弱く、特に低い融点(Tm)による耐熱脆弱性に起因して長時間使用時に、太陽電池モジュール内の剥離(Delamination)現象を起こす問題点を相変らず示しており、これによって、光モジュールへの適用時に、太陽光モジュールの出力低下を発生させ、前記太陽電池モジュール内の剥離(Delamination)現象と関連した問題点以外にも、透明性を同時に満足させることができる封止材が要求されている実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許公開第10−2012−0078026号公報
【特許文献2】特開2009−302220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願は、光モジュール用封止材、その製造方法及び光モジュールを提供する。
具体的に、本出願は、改善した接着性を示し、特に低い融点(Tm)による耐熱脆弱性に起因して長時間使用時に、太陽電池モジュール内の剥離現象を防止することができると同時に、透明性まで優れた光モジュール用封止材、その製造方法及び光モジュールを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願の例示的な封止材は、光モジュール用封止材(以下、「封止材」ということがある)に関する。
1つの例示で、前記封止材は、1)エチレン/α(アルファ)−オレフィン系共重合体、2)シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体及び3)耐熱高分子樹脂を含むことができる。
【0012】
以下、前記成分について具体的に説明する。
1)エチレン/α−オレフィン系共重合体
本出願の前記エチレン/α−オレフィン系共重合体は、エチレンとα−オレフィンが重合された共重合体なら、特に制限されずに使用され得る。
【0013】
本明細書で「エチレン/α−オレフィン系共重合体」というのは、エチレンの単独重合体はもちろん、少なくとも50mol%以上のエチレンを重合単位で含みながら3個以上の炭素原子を有するオレフィン単量体、またはその他の共単量体を重合単位で一緒に含んでいる共重合体をすべて含む意味することができる。
【0014】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−フェニル−1−ブテン、6−フェニル−1−ヘキセン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、5−メチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン及びビニルシクロヘキサンなどのα(アルファ)−オレフィン類;及びヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン、2−フルオロプロペン、フルオロエチレン、1,1−ジフルオロエチレン、3−フルオロプロペン、トリフルオロエチレンまたは3,4−ジクロロ−1−ブテンなどのハロゲン置換α−オレフィン類よりなる群から選択された1種以上であることができる。
【0015】
前記エチレン/α−オレフィン系共重合体は、同一の種類の単量体から製造されても、多様な形態の重合体であることができる。前記エチレン/α−オレフィン系共重合体は、例えばランダム(random)共重合体、ブロック(block)共重合体または異なるセグメントなどに調節されて重合されたグラフト(graft)共重合体を含むことができる。
【0016】
1つの例示で、前記エチレン/α−オレフィン系共重合体は、低密度エチレン/α−オレフィン系共重合体、中密度エチレン/α−オレフィン系共重合体、高密度エチレン/α−オレフィン系共重合体、低密度エチレン/α−オレフィン系共重合体、極低密度エチレン/α−オレフィン系共重合体及び直鎖状低密度エチレン/α−オレフィン系共重合体などよりなる群から選択される1種以上であることができる。
【0017】
前記エチレン/α−オレフィン系共重合体の密度は、約0.82g/cm〜0.96g/cm、または約0.85g/cm〜0.92g/cmであることができるが、これに制限されるものではない。
また、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、溶融指数(melting index,MI)が190℃の温度及び2.16kgの荷重の下で、約1.0g/10分〜50.0g/10分、約1.0g/10分〜30.0g/10分、約1.0g/10分〜10.0g/10分、約1.0g/10分〜8.0g/10分または約3.0g/10分〜7.0g/10分であることができる。前記エチレン/α−オレフィン共重合体の溶融指数(MI)を前述した範囲に調節し、封止材に製造するとき、優れた成形性などを示すことができる。
【0018】
2)シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体
本出願の前記シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体は、エチレン/α−オレフィン系共重合体のシラン変性共重合体であることができる。
【0019】
本明細書で「シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体」というのは、エチレン/α−オレフィン系共重合体及びシラン化合物が重合された共重合体を意味することができる。また、前記重合は、特に制限されるものではないが、例えばグラフト(graft)重合であることができる。
【0020】
本出願の封止材は、前記シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体を含んでいて、接着力及び封止性などの物性を確保することができる。
【0021】
前記シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体は、エチレン/α−オレフィン系共重合体100重量部に対して約0.001重量部〜20重量部、約0.01重量部〜15重量部または約0.1重量部〜10重量部のシラン化合物を含むことができる。前記シラン化合物の含量が0.001重量部未満の場合、その使用による接着力及び封止性などの改善効果が非常に弱いことがあり、20重量部を超過する場合、過剰使用による上昇効果があまりなく、むしろ粘性が高くなって、成形性が低下することができる。
【0022】
前記シラン化合物は、化合物の分子内に1つ以上のシラン基を有する化合物なら特に制限されない。前記シラン化合物としては、例えば不飽和シラン化合物及び/またはアミノシラン化合物を含むことができる。
1つの例示で、前記シラン化合物は、下記化学式1で表示される化合物から選択され得る。
【0023】
[化学式1]
DSiR(3−p)
【0024】
前記化学式1で、Dは、アルケニルであり、Rは、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン基、アミン基または−Rであり、前記Rは、酸素(O)または硫黄(S)原子であり、Rは、アルキル基、アリール基またはアシル基であり、Rは、水素、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、pは、1〜3の整数である。
【0025】
本明細書で用語「アルケニル」は、ケイ素原子に結合されているものであり、分子内に少なくとも1つ以上の不飽和基(例えば、二重結合を有する作用基)を有する炭化水素化合物を意味することができる。また、前記アルケニルの炭素数は、例えば2〜20,2〜12、または2〜6であることができる。前記アルケニルとしては、特に制限されるものではないが、例えば、ビニル、アリル、プロフェニル、イソプロフェニル、ブテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニルまたはγ−メタクリルオキシプロピルなどから選択されることができ、好ましくはビニルであることができるが、これに制限されるものではない。
【0026】
前記化学式1で、Rは、ケイ素原子に結合されたものであって、これは、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン基、アミン基または−Rから選択される。ここで、前記Rは、酸素(O)または硫黄(S)原子であり、Rは、アルキル基、アリール基またはアシル基から選択される。
【0027】
前記化学式1で、Rは、ケイ素原子に結合されているものであって、これは、水素、アルキル基、アリール基またはアラルキル基(aralkyl group)から選択される。そして、前記化学式1で、pは、1〜3の整数であり、好ましくは、3であることができるが、これに制限されるものではない。
【0028】
本明細書で用語「アルコキシ基」は、例えば炭素数1〜20、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4を有するアルコキシ基を意味することができる。前記アルコキシ基は、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基またはブトキシ基などから選択されることができ、好ましくはメトキシ基またはエトキシ基であることができるが、これに制限されるものではない。
【0029】
また、前記アシルオキシ基は、炭素数1〜12を有するアシルオキシ基であることができ、前記アルキルチオ基は、炭素数1〜12を有するアルキルチオ基であることができる。
【0030】
本明細書で用語「アルキル基」は、例えば炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4を有することができ、例えばメチル基、エチル基またはプロピル基などから選択され得る。前記アリール基は、例えば炭素数6〜18、または炭素数6〜12を有することができ、例えばフェニル基であることができる。また、前記アラルキル基は、例えば炭素数7〜19、または炭素数7〜13を有するアラルキル基であることができ、例えばベンジル基であることができるが、これに制限されるものではない。
【0031】
1つの例示で、前記シラン化合物は、分子内に1つ以上のビニル基を有するビニルアルコキシシランから選択され得る。前記ビニルアルコキシシランとしては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリフェントキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン及びビニルトリアセトキシシランよりなる群から選択された1種以上であることができる。
1つの例示で、前記シラン化合物は、下記化学式2で表示される化合物を含むことができる。
【0032】
[化学式2]
SiR(4−q)
【0033】
前記化学式2で、Rは、−CHNRであり、R及びRは、それぞれ独立に、窒素原子に結合された水素またはR9NHであり、前記Rは、炭素数1〜6のアルキレンであり、Rは、ハロゲン、アミン基、−R1011または−R11であり、前記R10は、酸素(O)または硫黄(S)原子であり、R11は、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアシル基であり、qは、1〜4の整数である。
【0034】
前記アミン基は、1次アミン及び/または2次アミンであることができる。前記アミノシラン化合物は、例えば から選択され得る。
【0035】
前記化学式2で、前記アルキル基、アリール基、アラルキル基及びアシル基は、前記化学式1で説明した通りである。
【0036】
1つの例示で、前記シラン化合物は、アミノアルコキシシランであることができる。
前記アミノシラン化合物としては、例えばアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス[(3−トリエトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]アミン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、アミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノエチルアミノメチルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノメチルメチルジエトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリエトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ジエチレンアミノメチルメチルジエトキシシラン、(N−フェニルアミノ)メチルトリメトキシシラン、(N−フェニルアミノ)メチルトリエトキシシラン、(N−フェニルアミノ)メチルメチルジメトキシシラン、(N−フェニルアミノ)メチルメチルジエトキシシラン、3−(N−フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−フェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N−フェニルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、N−(N−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びグリシドキシプロピルトリエトキシシランよりなる群から選択された1種以上を使用することができる。
【0037】
1つの例示で、前記シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体は、シラン化合物として前述した不飽和シラン化合物及びアミノシラン化合物をすべて含むことができる。この場合、不飽和シラン化合物及びアミノシラン化合物は、例えば100:0.5〜30の重量比率で混合して含まれることができる。前記シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体が不飽和シラン化合物及びアミノシラン化合物をすべて含む場合、2つのうち1つの物質だけが含まれた場合に比べて、封止材への適用時に、さらに優れた接着物性を確保することができる。
【0038】
前記シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体は、前述したエチレン/α−オレフィン系共重合体及びシラン化合物以外にラジカル開始剤を含む樹脂組成物から重合されて製造され得る。
【0039】
前記ラジカル開始剤は、前記シラン化合物がエチレン/α−オレフィン系共重合体にグラフトされる反応を開始する役目ができるものなら特に制限されない。前記ラジカル開始剤としては、例えばビニル基のラジカル重合を開始することができるものから選択されることができ、具体的な例として、有機過酸化物、ヒドロ過酸化物及びアゾ化合物などよりなる群から選択される1種以上をあげることができる。より具体的に、前記ラジカル開始剤は、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−クミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシンなどのジアルキルペルオキシド類;クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ヒドロペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾインペルオキシド、o−メチルベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾインペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシオクトエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボネート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルペルオキシフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)−3−ヘキシンなどのペルオキシエステル類;及びメチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドなどのケトンペルオキシド類;ラウリルペルオキシド;及びアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物などよりなる群から選択された1種以上をあげることができるが、これに制限されるものではない。
【0040】
前記ラジカル開始剤は、前記エチレン/α−オレフィン系共重合体100重量部に対して0.001重量部〜5重量部、0.005重量部〜3重量部0.01重量部〜1重量部で含まれることができる。
【0041】
前記シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体を製造する方法は、特に制限されない。例えばエチレン/α−オレフィン系共重合体とシラン化合物を含む樹脂組成物を反応器に添加した後、ラジカル開始剤の存在の下で、加熱溶融を通じてグラフティング反応をさせることによって製造することができる。
【0042】
前記反応器は、加熱溶融または液状状態の反応物を反応させて、目的する共重合体を製造することができるものなら、特に制限されない。前記反応器としては、例えば二軸押出器から選択されることができ、このような押出器を通じて前記シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体をペレット(pellet)形状のマスターバッチ(master batch)形態に製造され得る。
【0043】
1つの例示で、前記シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体は、オレフィン系単量体の重合単位を含む主鎖及び前記主鎖に結合された分岐鎖を含むことができる。
【0044】
前述したエチレン/α−オレフィン系共重合体が、側鎖が多い場合には、密度が低く、側鎖が少ないエチレン/α−オレフィン系共重合体は、密度が高いため、グラフティング効率を考慮して側鎖が多いエチレン/α−オレフィン系共重合体を使用することが好ましい。前記エチレン/α−オレフィン系共重合体のグラフティングの効率を高めて、封止材の接着力をさらに向上させることができる。
【0045】
1つの例示で、前記分岐鎖は、下記化学式3で表示される化合物を含むことができる。
【0046】
[化学式3]
−SiR121314
【0047】
前記化学式3で、R12及びR13は、それぞれ独立に、ハロゲン、アミン基、−R1516または−R16であり、前記R15は、酸素(O)または硫黄(S)原子であり、前記R16は、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアシル基であり、R14は、−OSiR1718(2−m)19であり、前記R17及びR18は、それぞれ独立に、ハロゲン、アミン基、−R2021または−R21であり、前記R20は、酸素(O)または硫黄(S)原子であり、前記R21は、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアシル基であり、前記R19は、−(CHNR2223であり、前記R22及びR23は、それぞれ独立に、窒素原子に結合された水素またはR24NHであり、前記R24は、アルキレンであり、前記mは、1または2の整数であり、前記nは、1以上の整数である。
【0048】
前記化学式3で、好ましくは、R12及びR13は、それぞれ独立に、ケイ素原子に結合されているヒドロキシ基または−R1516を示し、R15は、酸素であり、R16は、アルキル基を示す。また、R14は、好ましくは、ケイ素原子に結合されているものであって、これは、−OSiR1718(2−m)19を示し、ここで、前記R17及びR18は、それぞれ独立に、ケイ素原子に結合されているヒドロキシ基または−R2021を示し、前記R20は、酸素であり、R21は、アルキル基であることができる。
【0049】
また、前記R19は、好ましくは、ケイ素原子に結合されているものであって、これは、−(CHNR2223を示し、前記R22及びR23は、それぞれ独立に、窒素原子に結合されている水素またはR24NHを示し、R24は、アルキレンであることができるが、これに制限されるものではない。
【0050】
また、より好ましくは、前記化学式3で、前記R12及びR13は、ヒドロキシ基であることができ、R14は、ケイ素原子に結合されている−OSiR1718(2−m)19であることができ、R17及びR18は、ヒドロキシ基であることができ、R19は、ケイ素原子に結合されている−(CHNR2223であることができる。また、より好ましくは、前記R22は、水素であることができ、R23は、R24NHであることができ、前記R24は、アルキレンであることができるが、これに制限されるものではない。
【0051】
1つの例示で、前記シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体は、オレフィン系単量体の重合単位を含む主鎖及び前記主鎖に結合された分岐鎖を含み、前記分岐鎖は、下記化学式4で表示される化合物を含むことができる。
【0052】
[化学式4]
−SiR2526(3−r)
【0053】
前記化学式4で、
25及びR26は、それぞれ独立に、ハロゲン、アミン基、−R2728または−R28であり、前記R27は、酸素(O)または硫黄(S)原子であり、前記R28は、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアシル基であり、
rは、1〜3の整数である。
【0054】
前記化学式4で、好ましくは、R25及びR6は、それぞれ独立に、ケイ素原子に結合されているヒドロキシ基または−R2728であることができ、前記R27は、酸素であることができ、前記R28は、アルキル基であることができるが、これに制限されるものではない。
【0055】
前記シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体が主鎖と分岐鎖を含み、前記分岐鎖が前述した化学式3及び/または化学式4の化合物を含む場合、さらに優れた接着力、封止性、絶縁性、長期耐久性及び成形性などの物性を優秀に確保することができる。
前記シラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体を構成する主鎖は、エチレン/α−オレフィン系共重合体であって、これは、前述した通りである。
【0056】
3)耐熱高分子樹脂
本出願による封止材は、前述したエチレン/α−オレフィン系共重合体及びシラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体以外に耐熱高分子樹脂を含むことができる。
【0057】
1つの例示で、前記耐熱高分子樹脂は、前記エチレン/α−オレフィン系共重合体より融点(melting point,Tm)が高い高分子樹脂であることができる。
【0058】
前記耐熱高分子樹脂は、エチレン/α−オレフィン系共重合体より融点が高いものなら、特別な制限なしに多様な高分子樹脂を使用することができる。前記耐熱高分子樹脂は、エチレン/α−オレフィン系共重合体及び/またはシラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体との相溶性などを考慮して適宜選択されることができ、例えばポリエチレン系樹脂及び/またはポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂を使用することができる。
【0059】
1つの例示で、前記耐熱高分子樹脂は、低密度ポリエチレン(low density polyethylene,LDPE)を含むことができる。本明細書で用語「低密度ポリエチレン」というのは、エチレン単量体から誘導された結晶性が低い熱可焼成エチレン重合体を意味するものであって、約2%の炭素原子を基準として計算した場合、高密度ポリエチレン(HDPE;high density polyethylene)に比べてさらに多い長鎖の分岐(longchain branching)を含むことを意味することができる。
【0060】
前記低密度ポリエチレンは、0.960g/cm以下の密度を有するポリエチレンであることができ、より具体的に、約0.820g/cm〜0.960g/cmの密度を有する低密度ポリエチレンであることができる。
【0061】
前記耐熱高分子樹脂は、例えば、60℃以上の融点を有することができる。本明細書で用語「融点」は、通常的な意味の「融点」と同一を意味し、より具体的に、前記樹脂の主鎖が流動することができる最小の温度を意味することができる。
【0062】
前記耐熱高分子樹脂の融点は、他の例示で、70℃以上、80℃以上、90℃以上、または100℃以上であることができるが、これに制限されるものではない。
【0063】
また、前記耐熱高分子樹脂の融点は、高いほど成形性に優れ、前述したエチレン/α−オレフィン系共重合体及び/またはシラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体との相溶性に優れ、上限は特に制限されないが、例えば250℃,200℃または150℃程度であることができる。
【0064】
1つの例示で、前記耐熱高分子樹脂の融点は、成形性及び他の共重合体との相溶性を考慮して100℃〜150℃であることができる。
【0065】
前記耐熱高分子樹脂は、特に制限されるものではないが、例えば190℃の温度及び2.16kg荷重での溶融指数(melting index,MI)が0.1g/10分〜40g/10分以下、0.1g/10分〜35g/10分以下、0.1g/10分〜30g/10分以下または0.1g/10分〜25g/10分以下の範囲内であることができる。
【0066】
前記耐熱高分子樹脂の溶融指数を前述した範囲内で調節し、クリープ特性の改善効果が非常に弱く、封止材への適用時に、太陽電池モジュール内の剥離現象を防止することができると同時に、前述したエチレン/α−オレフィン共重合体などとの相溶性を高めることができ、シート形状に成形時に、成形性を優秀にすることができる。
【0067】
前記耐熱高分子樹脂は、エチレン/α−オレフィン系共重合体及びシラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体の混合100重量部に対して、例えば0.01重量部以上〜3重量部未満、より具体的に、0.1重量部〜2.5重量部または1重量部〜2重量部の範囲内で含まれることができる。
前記耐熱高分子樹脂の含量を前述した範囲内で調節して、封止材シートへの適用時に、クリープ特性の改善と同時に優れた透明性を確保することができる。
【0068】
4)付加成分
本出願の封止材は、前述した3つの成分を含み、選択的に他の樹脂成分や添加剤をさらに含むことができる。
【0069】
前記樹脂成分としては、前述した融点及び/または溶融指数などを考慮して通常的に使用される樹脂を適宜選択して含まれることができる。
【0070】
前記添加剤としては、例えば熱安定剤、光安定剤(UV安定剤),UV吸収剤または酸化防止剤などを使用することができる。
【0071】
前記熱安定剤は、例えばトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホネート及びビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトルジホスファイトなどのリン系熱安定剤;及び8−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンとの反応生成物などのラクトン系熱安定剤などから選択された1種以上を使用することができる。
【0072】
前記光安定剤は、例えば光酸化を防止することができるものであって、これは、アミン系化合物またはピペリジン系化合物などを例示することができるが、これに制限されるものではない。
【0073】
前記UV吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリルニトリル系、金属錯塩系、アミン系、酸化チタン及び酸化亜鉛などを例示することができる
【0074】
また、前記酸化防止剤としては、当業界で公知されたものなどを制限なしに使用することができ、例えばフェノール系、アミン系、リン系または硫黄系などを例示することができ、市販製品を使用することもできる。前記市販製品としては、例えばIrganox 1076(BASF社),Irgafos 168(BASF社),Irganox 1010(CIBAChemical社),Irganox 1098(CIBA Chemical社),Irganox 1330(CIBA Chemical社),Irganox 3114(CIBA Chemical社),Irganox 3125(CIBA Chemical社),Cyanox 1790(CYTECK社),Tinuvin 120(BASF社),Tinuvin 326(BASF社),Tinuvin 327(BASF社),Tinuvin 328(BASF社),Irgafos 12(CIBA Chemical社),Irgafos 38(CIBA Chemical社),Weston 618(GE社),Weston 619G(GE社)またはUltranox 626(GE社)を適宜選択して1種または2種以上を混合して使用することができる。前記酸化防止剤の含量は、使用目的及び種類によって適宜調節され得るが、例えば、前述したエチレン/α−オレフィン系共重合体及びシラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体の混合100重量部に対して、例えば0.1重量部〜10重量部の範囲内で含まれることができる。
【0075】
前記添加剤は、これら以外に、当分野で公知されている多様な添加剤を適宜さらに使用され得る。前記添加剤の含量は、使用目的及びその種類などによって適宜調節され得る。前記添加剤は、例えばエチレン/α−オレフィン系共重合体及びシラン変性エチレン/α−オレフィン系共重合体の混合100重量部に対して、約0.001重量部〜10重量部範囲内でそれぞれまたは混合して適切な範囲で含まれることができるが、これに制限されるものではない。
【0076】
本出願の封止材は、前述した成分を含んで優れたクリープ特性を示すことができる。
1つの例示で、本出願の封止材は、下記一般式1を満足することができる。
【0077】
[一般式1]
△X≦3mm
【0078】
前記一般式1で、△Xは、厚さ3.2mmの第1ガラス板(横20cm×縦30cm)と厚さ3.2mmの第2ガラス板(横20cm×縦30cm)との間に封止材(横20cm×縦25cm)を2枚重なって入れ、ラミネーションし、20cm×35cm(横×縦)のサイズの試験片を製造した後、前記試験片を垂直(90゜)に立設し、第1ガラス板をつるして固定し、100℃で10時間維持した後、第2ガラス板の左側、中央及び右側が垂直方向にずれた距離の平均値である。
【0079】
前記一般式1についてより具体的に図2を参照して説明する。
図2を参照すれば、厚さが3.2mmであり、横20cm×縦30cmである第1ガラス板G1と;厚さが3.2mmであり、横20cm×縦30cmである第2ガラス板G2を準備する。この場合、前記ガラス板G1及びG2は、鉄含量が低い低鉄分強化ガラス板を使用することが好ましく、前記第1ガラス板G1及び第2ガラス板G2は、それぞれ約465g〜480gの重量を有することができる。
【0080】
次に、前記第1ガラス板G1と第2ガラス板G2との間に封止材Sを2枚重ねて入れ、真空ラミネータで約150℃の温度にラミネーションし、20cm×35cm(横×縦)のサイズの試験片を製造する。この場合、封止材Sのサイズは、横20cm×縦25cmとなるように切断して使用し、封止材Sの厚さは制限されない。また、封止材Sの両面にガラス板G1及びG2を配置するに際して、図2に示されたように、第1ガラス板G1は、上側に約5cm、第2ガラス板G2は、下側に約5cm余裕をもって行き違いになった形態で配置することが好ましい。
【0081】
次に、前記試験片を地面と垂直(90゜)になるように立設した後、前記第1ガラス板G1をクランプ(clamp)などでつるして固定する。そして100℃のチャンバ内で約10時間垂直に保持した後、前記第2ガラス板G2が垂直方向にずれた距離、すなわち図2に示されたベースラインから第2ガラス板G2が下方向に垂れ下がった距離を左側、中央及び右側でそれぞれ測定し、これに対する平均値(△X)を算出することができる。
【0082】
前記例示的な形態によって測定された平均値(△X)が3mm以下の場合、優れたクリープ特性を有することができる。他の例示で、本出願による前記ずれた距離(△X)は、2.75mm以下または2.5mm以下であることができる。
【0083】
本出願の封止材を前記一般式1を満足するように調節し、優れたクリープ特性の確保によって高温及び/または高湿条件で長時間使用した場合にも、変形が少なく、剥離現象などが発生せず、光モジュールに適用される場合、優れた耐久性などを示すことができる。
【0084】
1つの例示で、本出願の封止材は、下記一般式2を満足することができる。
【0085】
[一般式2]
Y≦9%
【0086】
前記一般式2で、Yは、前記封止材を5cm×7cm(横×縦)のサイズに裁断した後、これを5cm×7cm(横×縦)のサイズの低鉄分強化ガラスに挟持した後、150℃でラミネーションして製造した試験片をヘイズメーターを使用して測定したヘイズを示す。
【0087】
本出願の封止材が前記一般式2を満足するように調節し、より優れた透明性を確保し、光モジュールに適用される場合、優れた発電効率に寄与することができる。
【0088】
本出願は、また、封止材製造方法に関する。
例示的な前記封止材製造方法は、前述した成分を含む樹脂組成物からシート(sheet)形状で製造する段階を含む限り、特に制限されない。
【0089】
より具体的に、前記封止材製造方法は、エチレン/α−オレフィン共重合体、シラン変性エチレン/α−オレフィン共重合体及び耐熱高分子樹脂を含む樹脂組成物を利用してシート形状で製造する段階を含む。
【0090】
前記封止材は、例えばTダイ押出器などのような押出器を用いてシート形状に成形され得る。また、前記各成分は、押出器にそのまま投入されるか、またはマスターバッチ(masterbatch)の形態に投入され得るが、マスターバッチ(master batch)の形態に投入されることが好ましい。
【0091】
前記押出工程を通じて製造される封止材の厚さは、例えば10μm〜5000μm,50μm〜2000μmまたは100μm〜1500μmであることができるが、これに制限されるものではない。
【0092】
本出願は、また、光モジュールに関する。
例示的な光モジュールは、前述した封止材を含むものなら、特に制限されない。
【0093】
本出願による光モジュールは、前記封止材と、前記封止材によってカプセル化された光素子とを含む。前記光素子は、例えば太陽電池などの光電池素子と;発光ダイオードや有機発光ダイオードなどの光放出素子と;光を感知する光センサーなどから適宜選択され得る。本出願による光モジュールは、例えば太陽電池モジュールであることができる。
【0094】
図3は、本出願の光モジュールに対する構造を例示的に示す図である。
図3に示されたように、本出願による例示的な光モジュールは、前面基板210、封止材層220、太陽電池セルC及びバックシート100を含む。
【0095】
前記前面基板は、太陽電池セルの前面側(図面で、上部側)を保護すると共に、受光面を提供するものなら良い。前記前面基板は、光透過率に優れたものが好ましい。前記前面基板としては、例えば光の入射に有利な透明基板であって、強化ガラスまたは透明プラスチック板などの硬質基板を使用することが好ましい。
【0096】
前記封止材層は、太陽電池セルを封止(パッキング及び/または固定)するものであって、これは、前面封止材層221と後面封止材層222を含むことができる。この場合、図3に示されたように、太陽電池セルは、前面封止材層と後面封止材層との間にパッキング及び/または固定され得る。前記前面封止材層221及び後面封止材層222のうち1つ以上は、本出願の封止材で構成され得る。
【0097】
図3に示されたように、前記太陽電池セルは、封止材層内に複数個配列され得る。すなわち、前記太陽電池セルは、前面封止材層221及び後面封止材層222に複数個で配列された状態でパッキング及び/または固定され得る。また、前記太陽電池セルは、互いに電気的に連結されている。
【0098】
前記太陽電池セルは、特に制限されず、例えば結晶形太陽電池または薄膜形太陽電池などが使用され得る。また、前記太陽電池セルは、前面電極型、後面電極型及びこれらの組合を含むことができる。
【0099】
前記バックシートは、前記後面封止材層の下部に付着する。前記バックシートは、後面封止材層の下部面に熱ラミネーション(熱融着)や接着剤などを通じて付着することができる。前記接着剤は、特に制限されず、例えばアクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤及びポリオレフィン系接着剤などから選択された1種以上の接着剤を使用することができる。
【0100】
前記バックシート及び後面封止材層の熱ラミネーション実行のための条件は、特に制限されるものではないが、例えば90℃〜230℃または110℃〜200℃の温度で1分〜30分または1分〜10分間進行することができるが、これに制限されるものではない。
【0101】
本出願による光モジュールは、前面基板、前面封止材層、互いに電気的に連結された複数の太陽電池セル、後面封止材層及びバックシートを順次に積層した後、これらを一体に真空吸引しながら熱ラミネーションする方法で付着させて製造され得る。
【0102】
前記バックシートは、基材10及び前記基材10の少なくとも一面に形成された表面層20及び30を含むことができる。前記バックシートは、透明、白色またはブラックなどの多様な色相を有することができる。色相は、例えば前記表面層20及び30に含まれた色相顔料の種類及び含量によって適宜具現され得る。
【0103】
前記表面層20及び30は、1個または2個以上であることができる。図3は、本出願の例示的な実施形態であって、これは、前記表面層20及び30が基材10の両面に形成された様子を例示したものである。
【0104】
前記バックシートは、前記基材及び表面層以外に他の機能性層を1つまたは2つ以上さらに含むことができ、前記基材及び表面層の材料としては、当分野で公知された多様な素材を使用することができる。
【発明の効果】
【0105】
本出願による封止材は、優れた耐熱性などを有し、クリープ特性が改善すると同時に、一定水準以下のヘイズを示し、透光性などの光学的特性に優れていて、光モジュールへの適用時に耐久性及び透光性などの物性を向上させて、これによって、光モジュールの発電効率を優秀に示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1】従来の光モジュールとして太陽電池モジュールの断面を示す図である。
図2】本出願の封止剤に対するクリープ特性の測定方法を例示的に説明するための図である。
図3】本出願の光モジュールに対する構造を例示的に示す図である。
図4】本出願の実施例1及び比較例1による封止材試験片のクリープ特性評価の結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0107】
以下、本出願による実施例及び本出願によらない比較例を通じて本出願をより詳しく説明するが、本出願の範囲が下記提示された実施例によって制限されるものではない。
【0108】
以下、実施例及び比較例での物性は、下記の方式で評価した。
1.クリープ(Creep)特性測定及び評価
1)ガラス板及び封止材シート:厚さが3.2mmであり、サイズが20cm×30cm(横×縦)である2個の低鉄分強化ガラス板(重量475g)を準備した。また、前記各実施例及び比較例による封止材シート(厚さ:約500μm)を20cm×25cm(横×縦)のサイズに切断した。
【0109】
2)熱ラミネーション:前記2個のガラス板の間に2枚の封止材シートを、第1ガラス板(下板)、封止材(2枚)及び第2ガラス板(上板)を順次に積層した。前記第1ガラス板及び第2ガラス板の一方にそれぞれ5cmの余裕をもって2枚の封止材を配置して積層した(図2参照)。その後、真空ラミネータで150℃の温度で17分間熱ラミネーション(真空6分→圧着1分→維持10分)し、20cm×35cm(横×縦)のサイズの試験片を製造した。
【0110】
3)ずれた距離測定:前記試験片をチャンバ(chamber)内に垂直(90゜)に設置するものの、第1ガラス板は、クランプ(clamp)でつるして固定し、100℃温度と60%の湿度に維持されているチャンバ(chamber)内で10時間垂直保持(図2参照)した後、ベースラインから第2ガラス板のずれた距離(垂れ下がった距離)を左側、中央、右側でそれぞれ測定し、これに対する平均値(△X)を計算して下記基準によって評価し、表1に示した。
【0111】
〈評価基準〉
○:ずれた距離を左側、中央及び右側でそれぞれ測定して平均した値(△X)が3mm以下の場合
×:ずれた距離を左側、中央及び右側でそれぞれ測定して平均した値(△X)が3mm以上の場合
【0112】
2.光学特性測定
各実施例及び比較例による封止材シートを横5cm×7cm(横×縦)のサイズに裁断した後、これを横5cm×7cm(横×縦)のサイズの低鉄分強化ガラスの間に挟持した後、150℃でラミネーションして製造した試験片に対して、ヘイズメーター(Hazemeter,Murakami社製),HM−150)を利用して通常的な方法で測定した電光線透過率(Total transmittance,Tt)及びヘイズ(Haze)値を測定した後、前記電光線透過率の値及び前記ヘイズ値の下記基準による評価を表2に示した。
【0113】
〈評価基準〉
○:測定されたヘイズの値が9%以上の場合
×:測定されたヘイズの値が9%以下の場合
【0114】
実施例1
〈シラン変性エチレン/α−オレフィン共重合体の製造〉
ビニルトリメトキシシラン(vinyltrimethoxysilane,VTMS)及びLuperox(登録商標)101(2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン(2,5−Bis(tert−butylperoxy)−2,5−dimethylhexane)を50:1の重量比で混合した後、これを密度が0.870g/cmであり、溶融指数(MI)が190℃、2.16kgの荷重の下で5g/10分のエチレン/1−オクテン共重合体(LC670、LG化学社製)100重量部に対して5重量部で二軸押出器(Twin screw extruder)に一緒に投入し、220℃の温度でグラフティング反応押出(加熱溶融撹拌)して、シラン変性エチレン/α−オレフィン共重合体のマスターバッチ(以下、「Si M/B」という)を製造した。
【0115】
〈封止材シートの製造〉
密度が0.870g/cmであり、融点(Tm)が58℃であり、溶融指数(MI)が190℃、2.16kgの荷重の下で5g/10分のエチレン/1−オクテン共重合体(LC670,LG化学社製、以下、「ベース樹脂」という)に、UV吸収剤、UV安定剤及び酸化防止剤を一定量混合及び押出して、UVマスターバッチ(以下、「UV M/B」という)を製造した。
【0116】
その後、ベース樹脂、前記製造されたSi M/B及びUV M/Bと耐熱高分子樹脂として融点(Tm)が約105℃であり、溶融指数(MI)が190℃、2.16kgの荷重の下で3g/10分の低密度ポリエチレン(BC500、LG化学社製、以下、「LDPE」という)をそれぞれ65:35:3:2の重量比率で混合し、混合物を製造した。
【0117】
前記混合物を二軸押出器(φ19mm)及びTダイス(幅:200mm)を有する押出成形器のホッパーに投入し、押出温度180℃、取出速度3m/minで押出成形した後、厚さが約500μmの封止材シートを製造した。
【0118】
実施例2
ベース樹脂及びSi M/Bを混合した混合物100重量部に対してLDPEを1重量部で含むことを除いて、前記実施例1と同一の方式で封止材シートを製造した。
【0119】
実施例3
耐熱高分子樹脂として融点(Tm)が約105℃であり、溶融指数(MI)が190℃、2.16kgの荷重の下で0.3g/10分のLDPE(BF0300、LG化学社製)を含むことを除いて、前記実施例1と同一の方式で封止材シートを製造した。
【0120】
実施例4
耐熱高分子樹脂として融点(Tm)が約105℃であり、溶融指数(MI)が190℃、2.16kgの荷重の下で8.5g/10分のLDPE(LB8500、LG化学社製)を含むことを除いて、前記実施例1と同一の方式で封止材シートを製造した。
【0121】
実施例5
耐熱高分子樹脂として融点(Tm)が約105℃であり、溶融指数(MI)が190℃、2.16kgの荷重の下で24g/10分のLDPE(MB9205,LG化学社製)を含むことを除いて、前記実施例1と同一の方式で封止材シートを製造した。
【0122】
比較例1
押出成形器のホッパーにLDPEを添加せずに、ベース樹脂、Si M/B及びUV M/Bを63.1:34:2.9の重量比率で混合した混合物を使用したことを除いて、前記実施例1と同一の方式で封止材シートを製造した。
【0123】
比較例2
ベース樹脂及びSiM/Bを混合した混合物100重量部に対してLDPEを3重量部で含むことを除いて、前記実施例1と同一の方式で封止材シートを製造した。
【0124】
比較例3
ベース樹脂及びSiM/Bを混合した混合物100重量部に対してLDPEを5重量部で含むことを除いて、前記実施例1と同一の方式で封止材シートを製造した。
【0125】
比較例4
耐熱高分子樹脂として融点(Tm)が約105℃であり、溶融指数(MI)が190℃、2.16kgの荷重の下で50g/10分のLDPE(MB9500,LG化学社製)を含むことを除いて、前記実施例1と同一の方式で封止材シートを製造した。
【0126】
前記各実施例1〜2及び比較例1〜3による封止材シートに対するクリープ特性評価及び光学特性測定値を下記表1に示した。
【0127】
【表1】
【0128】
また、図4は、前記実施例1及び比較例1による封止材シートに対してクリープ特性実験を行った直後の様子を写真で示したものである。
【0129】
前記表1及び図4に示したように、耐熱高分子樹脂(LDPE)が適切な含量で含まれた場合、クリープ特性及びヘイズ特性が同時に満足され、封止材に有用に適用され得ることを確認することができる。
【0130】
また、前記実施例3〜5及び比較例4による封止材シートに対するクリープ特性を下記表2に示した。
【0131】
【表2】
【0132】
前記表2に示されたように、LDPEの溶融指数(MI)によってもクリープ特性が異なることが分かり、溶融指数(MI)が約40g/10min以下の場合に、封止材適用のための水準にクリープ特性に優れていることを確認した。
【符号の説明】
【0133】
1,100 バックシート
2a,221 前面封止材層
2b,222 後面封止材層
3 強化ガラス
10 基材
20,30 表面層
210 前面基板
220 封止材層
C 太陽電池セル
図1
図2
図3
図4