(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0011】
<構造色発色基材>
本発明の構造色発色基材は、支持体と、球状微粒子層と、ラメラ構造を有する樹脂膜とを有する。
図1に模式図を示す。支持体10の上に、球状微粒子20が配列した球状微粒子層が形成され、更にラメラ構造を有する樹脂膜30が形成されている。
【0012】
本発明で用いられる支持体10としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、シリコン、銅、鉄、アルミニウム等の金属材料、ガラス、アルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア等の無機材料、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等の有機材料からなる基板やシートを用いることができる。
【0013】
本発明で用いられる球状微粒子20は、平均粒径0.1〜500μmを有するものである。より好ましくは、平均粒径0.1〜100μmを有するものがよい。ガラス、シリカ、アルミナ、チタニア等を好適に用いることができる。ここで、平均粒径の算出方法としては、電子若しくは光学顕微鏡又はノギスにより任意の粒子100個についての粒子径を求め、これらの平均値を算出することを一例として挙げることができる。
【0014】
球状微粒子層は単層でも複数積層したものでもよい。上記の球状微粒子層の厚みは0.1〜500μmが好ましく、0.4〜100μmがより好ましい。
【0015】
本発明で用いられるラメラ構造を有する樹脂膜30は、ブロック共重合体がミクロ相分離構造としてラメラ構造をとったものである。樹脂膜30は、ラメラ構造をとることによって、各層から反射される光の干渉が起こり、構造色を呈する。
【0016】
一般的に、ブロック共重合体とは、複数の種類のホモポリマー鎖がブロックとして結合した高分子をいう。例えば、繰り返し構成単位がAモノマーからなるポリマーA鎖と、繰り返し構成単位がBモノマーからなるポリマーB鎖とが末端同士で結合したポリマー等が挙げられる。
【0017】
上記の樹脂膜30に用いられるブロック共重合体は、互いに非相溶な二種以上のポリマーからなり、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体又はマルチブロック共重合体のいずれの形態であってもよい。具体的には、Aモノマーの繰り返しからなるポリマー部分をAブロック、Bモノマーの繰り返しからなるポリマー部分をBブロックと呼ぶと、Aブロック−Bブロックのジブロック共重合体、Aブロック−Bブロック−Aブロックのトリブロック共重合体等が挙げられる。なかでも、入手しやすさ、合成しやすさの観点から、ジブロック共重合体が好ましい。
【0018】
上記ブロック共重合体を構成するポリマーとしては、ビニル系高分子、ジエン系高分子、エーテル系高分子、縮合系エステル型高分子、縮合系アミド型高分子等が挙げられる。
【0019】
ビニル系高分子としては、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリジメチルスチレン、ポリトリメチルスチレン、ポリエチルスチレン、ポリイソプロピルスチレン、ポリクロロメチルスチレン、ポリメトキシスチレン、ポリアセトキシスチレン、ポリクロロスチレン、ポリジクロロスチレン、ポリブロモスチレン、ポリトリフルオロメチルスチレン等のポリスチレン類、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−アリルピリジン)、ポリ(4−アリルピリジン)等のピリジン含有ビニルポリマー類、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリヘキシルメタクリレート、ポリ(2−エチルヘキシル)メタクリレート、ポリイソデシルメタクリレート、ポリフェニルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート、ポリフェニルアクリレート、ポリメトキシエチルアクリレート、ポリグリシジルアクリレート、ポリ(N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)等のポリ(メタ)アクリレート類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネート、ポリビニルブチレート、ポリビニルイソブチレート、ポリビニルカプロエート、ポリビニルクロロアセテート、ポリビニルメトキシアセテート、ポリビニルフェニルアセテート等のポリビニルエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン等のポリアルキレン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のポリビニルハロゲン化物類等が挙げられる。
【0020】
ジエン系高分子としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等が挙げられる。
【0021】
エーテル系高分子としては、ポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリチオエーテル、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。
【0022】
縮合系エステル型高分子としては、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ乳酸等が挙げられる。
【0023】
縮合系アミド型高分子としては、ナイロン6、ナイロン66、ポリ−m−フェニレンイソフタラミド、ポリ−p−フェニレンテレフタラミド、ポリピロメリットイミド等が挙げられる。
【0024】
また、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(メタクリル酸3−スルホプロピル)、ポリ(2−アクリルアミドー2−メチルプロパンスルホン酸)等のスルホン酸基を有するスルホン酸変性ポリマーやリン酸基を有するリン酸変性ポリマー等が挙げられる。
【0025】
上記ブロック共重合体を構成するポリマーの組み合わせは、使用するポリマー同士が非相溶であれば特に限定されないが、例えば、ビニル系高分子同士、ビニル系高分子とジエン系高分子、ビニル系高分子とエーテル系高分子、ビニル系高分子と縮合系エステル型系高分子、ジエン系高分子同士の組み合わせが好ましく、ビニル系高分子1種以上使用することがより好ましく、ビニル系高分子同士が更に好ましい。これらの組み合わせにおいて、疎水性ブロックと親水性ブロックとを有することが好ましい。
【0026】
具体的には、ブロック共重合体として、ポリスチレン−ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン−ポリエチレンオキシド、ポリイソプレン−ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリメチルアクリレート−ポリスチレン、ポリブタジエン−ポリスチレン、ポリイソプレン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリスチレン−ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリスチレン−ポリジメチルシロキサン、ポリブタジエン−ポリエチレンオキシド、ポリスチレン−ポリアクリル酸等が挙げられる。
【0027】
特に、入手しやすく、疎水性ブロックと親水性ブロックとを有するブロック共重合体として、ポリスチレン−ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン−ポリエチレンオキシド、ポリスチレン−ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリスチレン−ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリブタジエン−ポリエチレンオキシド等のブロック共重合体が挙げられる。中でも、ポリスチレン−ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリスチレン−ポリ(4−ビニルピリジン)が特に好ましい。
【0028】
上記ブロック共重合体において、ブロック共重合体を構成するポリマーの比率は、ラメラ構造をとるために、Aブロック−Bブロックのジブロック共重合体の場合、Aブロック:Bブロックの体積分率が0.35:0.65〜0.65:0.35であることが好ましい。より好ましくは、0.45:0.55〜0.55:0.45であり、更に好ましくは0.5:0.5である。
【0029】
上記ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、ミクロ相分離構造を形成する限りにおいて特に限定されるものではないが、一般的には、Mn=1,000〜1,000,000のものが好ましく用いられる。
【0030】
上記ブロック共重合体は、リビング重合等の公知の方法で合成することができる。また、市販品を用いてもよい。
【0031】
上記樹脂膜30は球状微粒子層の上に0.1〜50μmの厚さで形成されていることが好ましく、0.2〜5μmの厚さで形成されていることがより好ましい。
【0032】
上記の樹脂膜30が疎水性ブロックと親水性ブロックとを有するブロック共重合体であれば、水又はアルコール類の存在によって親水性ブロックが膨潤し、色の変化を認識することができる。模式図を
図2に示す。
ブロック共重合体の疎水性ブロック40と親水性ブロック50とがミクロ相分離してラメラ構造をとっている状態(
図2(a))から、水又はアルコール類によって親水性ブロック50のみが膨潤して膜厚が厚くなった状態(
図2(b))に変化すると、光の吸収波長が変化し、色の変化を生じさせる。
【0033】
上記の親水性ブロックには、ピリジン、スルホン酸、カルボン酸、リン酸等のイオン化が可能な官能基を有していることが好ましい。このような基を含む親水性ブロックは、水溶性が高く、水又はアルコール類に膨潤しやすく、色の変化を顕著にしやすい。
なかでも、ポリスチレン−ポリ(ビニルピリジン)ブロック共重合体のピリジル基を第四級カチオンにしたものでは、色の変化が顕著になり、好ましい。
【0034】
<構造色発色基材の製造方法>
本発明の構造色発色基材の製造方法は、支持体上に球状微粒子を配列させて球状微粒子層を形成する配列工程と、上記球状微粒子層の上に樹脂膜を形成する膜形成工程と、上記樹脂膜をアニール処理することによってラメラ構造を発現させるアニール工程と、を含むことを特徴とする。以下、本発明の構造色発色基材の作製方法の各工程について詳細に説明する。
【0035】
[配列工程]
支持体上に球状微粒子を配列させて球状微粒子層を形成する工程である。球状微粒子の配列方法は、球状微粒子間の隙間を小さくし、密に配列することができれば、特に限定されない。
【0036】
球状微粒子として平均粒径10〜500μmのガラスビーズを用いる場合には、
図3に示した方法で配列させることが好ましい。支持体10の上に水60を滴下し、表面張力による曲率を持った状態を形成させ(
図3(a))、その上にガラスビーズ70を散布する(
図3(b))。ピンセット等を用いて、水面に浮いたガラスビーズ70の配列を整えた(
図3(c))後、水分を吸水性の紙や布で吸い取り、ガラスビーズ70と支持体10とが濡れ性により吸着した状態(
図3(d))で電気炉に移し、400〜900℃で10〜60分間加熱処理を施し、ガラスビーズ70を支持体10に融着させる。これにより、支持体10上にガラスビーズ70が単層で配列した球状微粒子層が形成される。
【0037】
球状微粒子として平均粒径0.1〜10μmの微粒子を用いる場合には、スピンコート処理を行うことが好ましい。球状微粒子分散液を、支持体の上に滴下し、500〜5000rpmで10〜300秒間スピンコートすることが好ましい。スピンコート後、30〜120℃で10〜120分間乾燥すると、支持体上に球状微粒子が単層又は積層配列した球状微粒子層が形成される。このとき、球状微粒子層の厚さは0.4〜50μmになる。
【0038】
支持体にガラス基板を用いた場合には、球状微粒子層の形成後、更に、表面をシランカップリングで修飾し、蒸留水で洗浄し、30〜120℃で減圧乾燥してから、樹脂膜を形成させることが好ましい。
【0039】
[膜形成工程]
球状微粒子層の上に樹脂膜を形成する工程である。ブロック共重合体を有機溶媒に溶解させ、その高分子溶液を球状微粒子層上に塗布し、溶媒を除去することによって形成することができる。この際、塗布する方法としては、スピンコート法、浸漬法、スプレー法等の塗布手段を用いることができる。
スピンコートする場合には、500〜5000rpmで10〜300秒間行うことが好ましい。
塗布後、室温〜50℃で10〜120分間乾燥して溶媒を除去すると、厚さ0.1〜50μmの樹脂膜が球状微粒子層の上に形成される。
【0040】
ブロック共重合体を溶解させる溶媒は、ブロック共重合体を構成するポリマーにより適宜選択すればよいが、常圧で150℃以下の沸点を有するものが好ましい。具体的には、ブロック共重合体としてポリスチレン−ポリ(2−ビニルピリジン)を用いる場合には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロホルム等を用いることが好ましい。
【0041】
[アニール工程]
上記樹脂膜をアニール処理することによってラメラ構造を発現させる工程である。
【0042】
ブロック共重合体を塗布して成膜しただけでは、樹脂膜中に規則的な構造が存在しない。これは、成膜時に溶媒が急速に蒸発するためブロック共重合体のミクロ相分離過程が凍結されるためである。そこで、規則的な自己組織化構造を形成するために、成膜後にポリマー鎖が自由に運動できるようにアニールすることが必要である。一般に、アニール処理としては、熱アニール法と、溶媒アニール法とが挙げられる。
【0043】
熱アニール法は、ブロック共重合体を構成するポリマーの熱分解温度以下で、かつブロック共重合体のガラス転移温度以上の温度に保持する方法である。
また、溶媒アニール法は、ブロック共重合体の薄膜を、ブロック共重合体の良溶媒蒸気に暴露し、ブロック共重合体の薄膜を膨潤させることによりポリマー鎖に運動の自由度を与え、自己組織化を促進する方法である。
【0044】
本発明において、アニール処理の方法は、用いるブロック共重合体の種類によって適宜選択すればよい。例えば、ブロック共重合体としてポリスチレン−ポリ(2−ビニルピリジン)を用いる場合には、溶媒アニール法で処理することが好ましい。用いる溶媒は、クロロホルム、テトラヒドロフラン等が好ましい。
【0045】
具体的には、溶媒アニール処理は、溶媒を入れた密閉容器内に、溶媒に直接接触しないように、シャーレ等の上にアニール処理する基材を並べて設置し、室温〜溶媒の沸点の範囲で、1〜7日間溶媒蒸気に暴露して行えばよい。
【0046】
上記の工程を含む処理を行えば、支持体の上に平均粒径0.1〜500μmの球状微粒子を配列した球状微粒子層が形成され、上記球状微粒子層の上にラメラ構造を有する樹脂膜が形成された構造色発色基材を作製することができる。このような構造色発色基材では、ラメラ構造を有する樹脂膜表面が球体の部分形状をとるため、どの角度から見てもラメラ構造の各層に対して垂直方向から見ることになり、同じ色に見えるようになる。
【0047】
[その他の工程]
本発明の構造色発色基材の製造方法には、上記の工程に加え、更に水溶化工程、架橋化工程を含んでもよい。これらの工程を加えることによって、環境変化に対する色の変化を調整することができる。
【0048】
水溶化工程は、樹脂膜形成に用いたブロック共重合体の親水性ブロックに、化学反応を行って、水溶性の高い基を導入する工程である。これにより、ブロック共重合体中の親水性ブロックは、水又はアルコール類に膨潤しやすくなり、膜厚の変化が大きくなるので、色の変化を顕著にすることができる。
【0049】
例えば、親水性ブロックが、ピリジル基を有するポリマーである場合、ハロゲン化アルキル、スルホン酸エステル、アルキルスルトン、及びこれらの誘導体等を反応させることによって、ピリジル基に第四級窒素カチオンを導入して、水溶性を高めることができる。具体的には、ヨードメタン、ヨードエタン、ブロモエタン、ブロモプロパン、塩化ベンジル、4−ブロモメチルフェニルボロン酸等を用いて第四級窒素カチオンを導入するとよい。
【0050】
また、親水性ブロックが、エステル基を有するポリマーである場合、加水分解によって、カルボキシル基に変換して、水溶性を高めることができる。更に、カルボン酸塩に変換してもよい。
【0051】
架橋化工程は、樹脂膜形成に用いたブロック共重合体の親水性ブロックに架橋剤を反応させて、ポリマー鎖を架橋する工程である。架橋することによってラメラ構造を安定化する。
【0052】
例えば、親水性ブロックが、ピリジル基を有するポリマーである場合、架橋剤としてジハロゲン化アルキル、ジスルホン酸エステル、遷移金属塩等を反応させれば、架橋することができる。具体的には、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、ジブロモブタン、ジクロロエタン、ジクロロプロパン等のハロゲン化アルキル、塩化コバルト、酢酸コバルト、塩化ニッケル、塩化銅、塩化亜鉛、塩化鉄等の遷移金属塩のアルコール溶液等を用いて架橋するとよい。
【0053】
また、親水性ブロックが、エステル基又はカルボキシル基を有するポリマーである場合、架橋剤としてジアミンを用いることができる。具体的には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレングリコールジアミン等を用いて架橋するとよい。
【0054】
水溶化の反応剤として、4−ブロモメチルフェニルボロン酸を用いた場合は、ピリジル基が四級化した上に、三級化したボロンがフリーのピリジル基と強く結合するため、架橋剤を更に加えずとも架橋状態をとることができる。また、親水性ブロック内のボロン酸残基はグルコース等の糖と結合することができるため、これによって膜厚が変化し、ブロック共重合体の色の変化を顕著にし、糖のセンサーに用いることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
[試験例1]
1.5cm×1.5cmの白板ガラスをアルカリバス(水酸化カリウム濃度10wt%、メタノール溶液)中に24時間浸漬させた後、蒸留水、エタノールの順に洗浄を行った。このガラス基板上に、水を滴下し、表面張力による曲率を持った状態を形成させ、その上に平均粒径500μmのガラスビーズ(ユニオン製、高精度ユニビーズSPL−500)を散布した。水面に浮いたガラスビーズの配列をピンセットで整えた後、水分をキムワイプを用いて吸い取り、ビーズとガラス基板が濡れ性により吸着した状態で電気炉に移し、720℃で1時間加熱処理を行い、融着させた。乾燥後、更に(3−アミノプロピル)トリメトキシシランの1wt%エタノール溶液中に室温下4時間浸漬させてシランカップリング処理を行った。蒸留水で洗浄後、80℃で3時間減圧乾燥して、ガラスビーズ配列基板を得た。
【0057】
ポリスチレン−ポリ(2−ビニルピリジン)ブロック共重合体(Polymer Source inc.製、PS−b−P2VP、Mn=190kg/mol−b−190kg/mol)の5wt%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液20μlを上記で得られたガラスビーズ配列基板上に滴下し、基板全体に延ばした後、室温下で2時間乾燥させた。
次に、クロロホルムを入れたセパラブルフラスコ内に、上記で得られた基板を成膜面を下にして空間部分に設置し、密閉して室温下24時間クロロホルムの蒸気に暴露してアニール処理を行った。
次に、ブロモエタン:1,4−ジブロモブタン=7:3(v/v)混合液の10vol%ヘキサン溶液中に、アニール処理した基板を浸漬し、密閉して50℃で24時間保持し、ピリジル基の四級化及び架橋化を行った。基板を溶液から取り出し、室温で乾燥した。
【0058】
得られた構造色発色基材は、500μmのガラスビーズの単層上に、四級化及び架橋化したポリスチレン−ポリ(2−ビニルピリジン)ブロック共重合体がラメラ構造を形成したものであった。この構造色発色基材をエタノールに浸漬すると、垂線方向から観察した色は、無色から緑色へ変化した。
【0059】
[試験例2]
1.5cm×1.5cmの白板ガラスをアルカリバス(水酸化カリウム濃度10wt%、メタノール溶液)中に24時間浸漬させた後、蒸留水、エタノールの順に洗浄を行った。このガラス基板上に、水を滴下し、表面張力による曲率を持った状態を形成させ、その上に平均粒径30±2μmのガラスビーズ(ユニオン製、高精度ユニビーズSPL−30)を散布した。水面に浮いたガラスビーズの配列をピンセットで整えた後、水分をキムワイプを用いて吸い取り、ビーズとガラス基板が濡れ性により吸着した状態で電気炉に移し、690℃で1時間加熱処理を行い、融着させた。乾燥後、更に(3−アミノプロピル)トリメトキシシランの1wt%エタノール溶液中に室温下4時間浸漬させてシランカップリング処理を行った。蒸留水で洗浄後、80℃で3時間減圧乾燥して、ガラスビーズ配列基板を得た。
【0060】
ポリスチレン−ポリ(2−ビニルピリジン)ブロック共重合体(Polymer Source inc.製、PS−b−P2VP、Mn=190kg/mol−b−190kg/mol)の5wt%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液20μlを上記で得られたガラスビーズ配列基板上に滴下し、基板全体に延ばした後、室温下で2時間乾燥させた。
次に、クロロホルムを入れたセパラブルフラスコ内に、上記で得られた基板を成膜面を下にして空間部分に設置し、密閉して室温下24時間クロロホルムの蒸気に暴露してアニール処理を行った。
次に、ブロモエタン:1,4−ジブロモブタン=7:3(v/v)混合液の10vol%ヘキサン溶液中に、アニール処理した基板を浸漬し、密閉して50℃で24時間保持し、ピリジル基の四級化及び架橋化を行った。基板を溶液から取り出し、室温で乾燥した。
【0061】
得られた構造色発色基材は、ガラスビーズの単層上に、四級化及び架橋化したポリスチレン−ポリ(2−ビニルピリジン)ブロック共重合体がラメラ構造を形成したものであった。構造色発色基材の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を
図4に示す。
図4から分かるように、ガラスビーズが配列された球状微粒子層の上に、ガラスビーズの形状に沿って樹脂膜が形成されていた。
【0062】
試験例2で製造した構造色発色基材の発色の角度依存性を確認するため、以下の実験を行った。
まず、構造色発色基材のガラスビーズが配列されている面に水を滴下し、その上にカバーガラスを載置した。そして、入射光の入射角度を15°,30°,45°,60°の4段階、反射光の測定角度を5°,20°,35°,50°の4段階として、紫外可視近赤外分光光度計を用いて絶対反射率スペクトルを測定した。なお、反射光の測定角度を正反射角−10°としているのは、入射光に対して正反射となる角度ではカバーガラスの最表面における反射が強く影響してしまうためである。
【0063】
測定した絶対反射率スペクトルを
図5に示す。また、比較のため、構造色発色基材の代わりにガラス基板を用いた場合の絶対反射率スペクトルを
図6に示す。
図5,6から分かるように、構造色発色基材を用いた場合には、ガラス基板を用いた場合と比較してスペクトル形状がよりブロード化し、可視光全体の反射率が増加した。
【0064】
図5,6の絶対反射率スペクトルから把握される色をCIE色度図にプロットしたときの色度値を以下の表1に示す。表1から分かるように、構造色発色基材を用いた場合には、ガラス基板を用いた場合と比較して入射角度の変化による色度値の変化が小さく、発色の角度依存性が小さかった。
【0065】
【表1】
【0066】
構造色発色基材のガラスビーズが配列されている面に滴下する溶媒を塩化ナトリウム水溶液(0.025mol/l)に変えたほかは上記と同様にして絶対反射率スペクトルを測定した。
測定した絶対反射率スペクトルを
図7に示す。また、比較のため、構造色発色基材の代わりにガラス基板を用いた場合の絶対反射率スペクトルを
図8に示す。
図7,8から分かるように、構造色発色基材を用いた場合には、ガラス基板を用いた場合と比較してスペクトル形状がよりブロード化し、可視光全体の反射率が増加した。
【0067】
図7,8の絶対反射率スペクトルから把握される色をCIE色度図にプロットしたときの色度値を以下の表2に示す。表2から分かるように、構造色発色基材を用いた場合には、ガラス基板を用いた場合と比較して入射角度の変化による色度値の変化が小さく、発色の角度依存性が小さかった。
【0068】
【表2】