【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高速不揮発メモリ機能技術開発/高速不揮発メモリの開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下は、本発明者の検討によって与えられる内容である。本発明者は、抵抗層及び抵抗変化層を備える抵抗変化素子において、抵抗層がより低抵抗であることが望ましい点に着目した。すなわち、抵抗層の抵抗値が大きい場合には、抵抗層中の酸素量の変動に対して抵抗値の変動が大きくなる。抵抗層中の酸素量を複数の抵抗変化素子に対して一定にすることが製造上困難であることを考慮すると、その変動は均一な条件での制御を困難とする。また、抵抗変化素子は抵抗変化層及び抵抗層の間の酸素の流入/流出によって抵抗値を変化させるものであるため、その動作によっても抵抗層自身の抵抗値が大きく変化してしまう。さらに、通常、抵抗変化素子は、読み出し線に複数個接続され、1個の判定回路で読み取るので、各抵抗変化素子の抵抗層の比抵抗値の高さやバラツキにより、判定マージンが圧迫される可能性がある。その対策として、余計な回路が追加させられ、読み出し・書き込み時間も長く要して素子としての応答も遅くなる等の問題がある。
【0013】
そこで、本発明者は、従来技術(特許文献1参照)の低抵抗層よりもより低抵抗な抵抗層を成膜するべく鋭意実験を繰り返した結果、抵抗層としてHfAlO
xを用い、その抵抗値を桁違いに小さくなる(例えば、特許文献1における低抵抗層の比抵抗は5×10
3Ω・cmであり、以下に説明する本発明における抵抗層の比抵抗は2×10
4Ω・cmと全く異なる特性を有する)ように成膜することで酸素の流入/流出においても抵抗値が安定し、特性が均一化されることを見出した。
【0014】
ここで、HfAlO
x膜自身は種種の文献においても開示されるものであるが、それらはいずれも特許文献2に開示されるような高誘電率のゲート酸化膜や、容量絶縁膜の様に高抵抗であることを必須の要件とするものであって、決して以下に説明する本発明の様な抵抗膜を開示するものではない。
【0015】
本発明の一実施形態に係る抵抗変化素子を含むメモリセルを備えた半導体記憶装置について、図面を用いて説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る抵抗変化素子を含むメモリセルを備えた半導体記憶装置の回路構成の一例を模式的に示したブロック図である。
【0016】
半導体記憶装置20は、メモリ回路を備えた半導体チップである。半導体記憶装置20は、メモリ回路として、複数のBank0〜1に区分されたメモリセルアレイ30、各Bank0〜1に付随するロウデコーダ31、センスアンプ32、ライトアンプ33、判定レジスタ34、データレジスタ35、及び、カラムデコーダ36を有する。また、半導体記憶装置20は、メモリ回路の周辺に形成される周辺回路を有する。半導体記憶装置20は、周辺回路として、ロウアドレスバッファ37と、アレイコントロール回路38と、フェーズカウンタ39と、制御ロジック回路40と、コマンドレジスタ41と、ステータスレジスタ42と、コマンドディテクタ43と、I/Oコントロール回路44と、カラムアドレスバッファ45と、アドレスレジスタ46と、トランジスタ47と、を有する。なお、
図4の例では、2個のBank0〜1が設けられているが、Bank数は特に制約されない。また、図示していないが、半導体記憶装置20には、外部から外部電源電圧VDD及びVSSが供給される。
【0017】
メモリセルアレイ30は、複数のメモリセルMCが行方向及び列方向に配列して設けられた回路である。メモリセルアレイ30には、一方向に延在しかつ他方向(一方向の直角の方向)に並んだ複数のワード線WLと、他方向に延在しかつ一方向に並んだ複数のビット線BLと、ワード線WL及びビット線BLの各交点の近傍に設けられた複数のメモリセルMCと、を有する。ワード線WLは、ロウデコーダ31に電気的に接続されている。各ビット線BLは、センスアンプに電気的に接続されている。メモリセルアレイ30及びメモリセルMCの詳細については、後述する。
【0018】
ロウデコーダ31は、アレイコントロール回路38及びロウアドレスバッファ37からの信号に基づいて、対応するワード線WLを活性化して、ワード線WLを介してメモリセルアレイ30におけるロウ(行)アドレスを選択する回路である。
【0019】
センスアンプ32は、アレイコントロール回路38からの信号に基づいて、メモリセルアレイ30からワード線WLを介して読み出されたデータの電位を増幅する回路である。センスアンプ32は、電位増幅されたデータをデータレジスタ35及び判定レジスタ34に向けて出力する。
【0020】
ライトアンプ33は、アレイコントロール回路38からの信号に基づいて、データレジスタ35からのデータの電位を増幅する回路である。ライトアンプ33は、電位増幅されたデータを、選択されたビット線BLを介してメモリセルアレイ30及び判定レジスタ34に向けて出力する。
【0021】
判定レジスタ34は、アレイコントロール回路38からの信号に基づいて、ライトアンプ33における書き込みデータと、センスアンプ32における読み出しデータと、を比較することによりパスかフェイルかを判定(ベリファイ動作)するレジスタである。判定レジスタ34がフェイルを検出した場合、メモリセルアレイ30への再書き込みが行われ、全てのセルがパスするまで、再書き込み、読み出しのループが繰り返される。
【0022】
データレジスタ35は、データを保持するレジスタである。データレジスタ35は、I/Oコントロール回路44との間でデータのやり取りをする。データレジスタ35は、I/Oコントロール回路44又はセンスアンプ32からのデータを保持する。データレジスタ35は、書き込み時に、アレイコントロール回路38からの信号に基づいて、保持されたデータをライトアンプ33に向けて出力する。データレジスタ35は、読み出し時に、アレイコントロール回路38からの信号に基づいて、保持されたデータをI/Oコントロール回路44に向けて出力する。
【0023】
カラムデコーダ36は、アレイコントロール回路38及びカラムアドレスバッファ45からの各信号に基づいて、ビット線BLを介してメモリセルアレイ10におけるカラム(列)アドレスを選択する回路である。
【0024】
ロウアドレスバッファ37は、アドレスレジスタ46からのアドレスのうちロウアドレスを保持するバッファである。ロウアドレスバッファ37は、保持されたロウアドレスをロウデコーダ31に向けて出力する。
【0025】
アレイコントロール回路38は、制御ロジック回路40及びフェーズカウンタ39からの信号に基づいて、ロウデコーダ31、センスアンプ32、ライトアンプ33、判定レジスタ34、データレジスタ35、及び、カラムデコーダ36のそれぞれの動作を制御する回路である。アレイコントロール回路38は、ロウデコーダ31にワード線選択信号を供給し、カラムデコーダ36にビット線選択信号を供給し、センスアンプ32、ライトアンプ33、判定レジスタ34、及び、データレジスタ35に対しての各種制御信号を供給する。
【0026】
フェーズカウンタ39は、アレイコントロール回路38におけるアクセス対象のフェーズを制御するためのカウンタである。
【0027】
制御ロジック回路40は、各種制御信号を周辺回路に向けて出力するロジック回路である。制御ロジック回路40は、コマンドディテクタ43及びコマンドレジスタ41からの信号に基づいて、各種制御信号をアレイコントロール回路38、ステータスレジスタ42、及び、トランジスタ47に向けて出力する。制御ロジック回路40は、アレイコントロール回路38との間で信号のやり取りを行なう。
【0028】
コマンドレジスタ41は、I/Oコントロール回路44からのコマンドを保持するレジスタである。コマンドレジスタ41は、保持されたコマンドを制御ロジック回路40に向けて出力する。
【0029】
ステータスレジスタ42は、制御ロジック回路40からのステータス信号を保持するレジスタである。ステータスレジスタ42は、保持されたステータス信号をI/Oコントロール回路44に向けて出力する。ここで、ステータス信号は、書き込みのパス、フェイル等の状態を示す情報である。
【0030】
コマンドディテクタ43は、コマンド(チップイネーブル/CE、コマンドラッチイネーブルCLE、アドレスラッチイネーブルALE、ライトイネーブル/WE、リードイネーブル/RE、/WP)が入力される回路である。
【0031】
ここで、/CEは、デバイス選択信号であり、例えば、リード状態でHighとするとスタンバイモードとなる。
【0032】
また、CLEは、コマンドをデバイス内部のコマンドレジスタ41への取り込みをコントロールするための信号である。/WEの立ち上がり時及び立ち下り時にCLEをHighとすることにより、I/O端子(I/O1〜I/O8)上のデータがコマンドとしてコマンドレジスタ41に取り込まれる。
【0033】
また、ALEは、アドレス、データをデバイス内部のアドレスレジスタ46、データレジスタ35への取り込みをコントロールするための信号である。/WEの立ち上がり時及び立ち下り時にALEをHighとすることにより、I/O端子(I/O1〜I/O8)上のデータがアドレスデータとしてアドレスレジスタ46に取り込まれる。また、ALEをLowとすることによりI/O端子(I/O1〜I/O8)上のデータが入力データとしてデータレジスタ35に取り込まれる。
【0034】
また、/WEは、IO端子(I/O1〜I/O8)からのデータをデバイス内部に取り込むための書き込み信号である。
【0035】
また、/REは、データを出力(シリアル出力)させる信号である。
【0036】
また、/WPは、書き込み、消去動作を禁止しデータを保護するための制御信号である。通常、/WP=Highとし、電源投入遮断時等に、/WP=Lowとする。
【0037】
I/Oコントロール回路44は、コマンド、アドレス、及び、データの入出力を制御する回路である。I/Oコントロール回路44は、外部に対してI/O端子(I/O1〜I/O8)を介してコマンド、アドレス、及び、データのやり取りを行なう。I/Oコントロール回路44は、入力されたコマンドをコマンドレジスタ41に向けて出力する。I/Oコントロール回路44は、入力されたアドレスをアドレスレジスタ46に向けて出力する。I/Oコントロール回路44は、データレジスタ35との間でデータのやり取りを行なう。I/Oコントロール回路44は、コマンドディテクタ43及びステータスレジスタ42からの信号に基づいて、コマンド、アドレス、及び、データの入出力を制御する。
【0038】
ここで、I/O1〜8は、アドレス、コマンド、データを入出力する端子(ポート)である。
【0039】
カラムアドレスバッファ45は、アドレスレジスタ46からのアドレスのうちカラムアドレスを保持するバッファである。カラムアドレスバッファ45は、保持されたカラムアドレスをカラムデコーダ36に向けて出力する。
【0040】
アドレスレジスタ46は、I/Oコントロール回路44からのアドレスを保持するレジスタである。アドレスレジスタ46は、保持されたアドレスのうちロウアドレスをロウアドレスバッファ37に向けて出力する。アドレスレジスタ46は、保持されたアドレスのうちカラムアドレスをカラムアドレスバッファ45に向けて出力する。
【0041】
トランジスタ47は、オープンドレイン構成のnMOSトランジスタである。トランジスタ47のゲートは制御ロジック回路40に接続されている。トランジスタ47のソースは、グランドに接続されている。トランジスタ47のドレインは、内部状態通知信号RY/BYの出力端子と接続されている。トランジスタ47のゲートは、プログラム・消去・リード動作時等の動作実行中、High電位とされる。トランジスタ47のゲートは、ターンオン(導通)し、RY/BY=Low(Busy)となり、動作が完了すると、Low電位とされ、RY/BYが電源電位にプルアップされ、RY/BY=High(Ready)となる。
【0042】
ここで、RY/BYは、デバイスの内部状態を外部に通知するための信号である。
【0043】
図5は、本発明の一実施形態に係る抵抗変化素子を含むメモリセルを備えた半導体記憶装置におけるメモリセルアレイの構成の一例を模式的に示した回路図である。
【0044】
メモリセルアレイ(
図4の30)は、一方向に延在しかつ他方向(一方向の直角の方向)に並んだ複数のワード線(
図4のWL、
図5のWL0〜WL5)と、他方向に延在しかつ一方向に並んだ複数のビット線(
図4のBL、
図5のBL0〜BL2)と、ワード線及びビット線の各交点の近傍に設けられた複数のメモリセルMCと、を有する。ワード線WL0〜WL5は、ロウデコーダ(
図4の31)によって制御される。ビット線BL0〜BL2は、カラムデコーダ(
図4の36)によって制御される。メモリセルMCは、1つのMOSトランジスタ19を有し、MOSトランジスタ19のソースが共通ソース線(図示せず)を介してグランドに電気的に接続され、MOSトランジスタ19のゲートが対応するワード線WL0〜WL5に電気的に接続され、MOSトランジスタ19のドレインが抵抗変化素子15を介して対応するビット線BL0〜BL2に電気的に接続されている。
【0045】
図1は、本発明の一実施形態に係る抵抗変化素子を含むメモリセルの構成の一例を模式的に示した断面図である。
【0046】
メモリセル(
図4、
図5のMC)は、選択素子となるMOSトランジスタ19と、記録素子となる抵抗変化素子15と、を有する。メモリセルでは、p型の半導体基板1(例えば、p型シリコン基板)を有する。半導体基板1は、所定の深さの溝1aを有する。溝1aは、主面に対し垂直方向から見て網目状に形成されている。溝1aには、STI(Shallow Trench Isolation)型の絶縁膜2(例えば、シリコン酸化膜)が埋め込まれている。MOSトランジスタ19のチャネル領域となる部分の半導体基板1上には、ゲート絶縁膜3(例えば、シリコン酸化膜)を介して、MOSトランジスタ19のゲートとなるワード線4(例えば、ポリシリコン;
図4のWL、
図5のWL0〜WL5)が形成されている。ワード線4及びゲート絶縁膜3の側面の両側には、サイドウォール絶縁膜5(例えば、シリコン酸化膜)が形成されている。MOSトランジスタ19のチャネル領域となる部分の半導体基板1の両側には、MOSトランジスタ19のソース/ドレインとなるn型の拡散領域6a、6b(例えば、リンイオン拡散領域)が形成されている。
【0047】
MOSトランジスタ19及び絶縁膜2上には、層間絶縁膜7(例えば、シリコン酸化膜)が形成されている。層間絶縁膜7には、拡散領域6aに通ずる下穴が形成されており、当該下穴にコンタクトプラグ8(例えば、タングステン)が埋め込まれている。コンタクトプラグ8を含む層間絶縁膜7上の所定の位置には、コンタクトプラグ8と電気的に接続されたソース線9(例えば、銅)が形成されている。ソース線9は、グランドと電気的に接続される。
【0048】
ソース線9を含む層間絶縁膜7上には、層間絶縁膜10(例えば、シリコン酸化膜)が形成されている。層間絶縁膜10及び層間絶縁膜7には、拡散領域6bに通ずる下穴が形成されており、当該下穴にコンタクトプラグ11(例えば、TiN)が埋め込まれている。コンタクトプラグ11を含む層間絶縁膜10上の所定の位置には、下から順に抵抗変化層12(HfO
x)、抵抗層13(HfAlO
x)、上部電極14(例えば、Ta)がこの順に積層している。抵抗変化層12は、下部電極となるコンタクトプラグ11と電気的に接続されている。コンタクトプラグ11、抵抗変化層12、抵抗層13、及び上部電極14は、抵抗変化素子15となる。
【0049】
抵抗変化素子15を含む層間絶縁膜10上には、層間絶縁膜16(例えば、シリコン酸化膜)が形成されている。層間絶縁膜16には、上部電極14に通ずる下穴が形成されており、当該下穴にコンタクトプラグ17(例えば、TiN)が埋め込まれている。コンタクトプラグ17を含む層間絶縁膜16上の所定の位置には、コンタクトプラグ17と電気的に接続されたビット線18(例えば、銅)が形成されている。ビット線18は、カラムデコーダ(
図4の36)と電気的に接続される。
【0050】
ここで、抵抗変化素子15に関し、下部電極となるコンタクトプラグ11には、例えば、半導体装置の製造でよく用いられる導電性膜のTiNを用いることができる。コンタクトプラグ11の上に抵抗変化層12を形成するが、抵抗変化層12は酸化物であるため、コンタクトプラグ11は耐酸化性電極材料であるTiNが望ましい。
【0051】
また、抵抗変化層12は、下部電極となるコンタクトプラグ11と上部電極14との間に配される。抵抗変化層12は、コンタクトプラグ11及び抵抗層13のそれぞれと接合する。なお、抵抗変化層12とコンタクトプラグ11との間には、酸素バリヤ層等の挿入層が介在してもよい。抵抗変化層12は、酸素及び金属を含む材料が用いられ、例えば、HfO
xを用いることができる。抵抗変化層12は、HfO
2ターゲットに対してArスパッタガスのみを用いることで、酸素欠損のある酸化ハフニウムHfO
xを作製することができる。抵抗変化層12の膜厚は、1nm以上かつ10nm以下であり、好ましくは2nm以上かつ3nm以下である。10nmを超えるとフォーミング電圧が高すぎ、1nm未満では抵抗率一定の組成範囲から外れやすくなる。
【0052】
また、抵抗層13は、下部電極となるコンタクトプラグ11と上部電極14との間であって、抵抗変化層12と上部電極14との間に配される。抵抗層13は、抵抗変化層12及び上部電極14のそれぞれと接合する。抵抗層13には、抵抗変化層12を構成する金属酸化物と同一の金属元素の酸化物に不純物としてAlを加えた材料(例えば、HfAlO
x)を用いることができる。抵抗層13は、ハフニウム、アルミニウム及び酸素から構成され、その原子組成百分率がアルミニウムの15atom%以上かつ30atom%以下(好ましくは15以上かつ28atom%以下)に対して酸素が20atom%以上かつ35atom%以下(好ましくは20atom%以上かつ25atom%以下)であり、ハフニウムが35atom%以上かつ65atom%以下(好ましくは37atom%以上かつ65atom%以下)である。抵抗層13をこのような数値範囲の組成に設定することにより、抵抗層13の比抵抗値が約2.7×10
−4Ω・cmで安定し、従来技術(特許文献1参照)に係る抵抗変化素子における低抵抗層の比抵抗値5×10
3Ω・cmと比べても大幅に低くすることができる。抵抗層13の膜厚は、1nm以上かつ10nm以下であり、好ましくは2nm以上かつ3nm以下である。10nmを超えると抵抗変化層12の組成に影響を与えやすくなり、1nm未満では抵抗変化層12から酸素が浸入した場合に抵抗率一定の組成範囲から外れやすくなる。
【0053】
さらに、上部電極14には、例えば、Taを用いることができる。上部電極14は、例えば、TaターゲットをDC(Direct Current)スパッタリングにより成膜することができる。上部電極14の膜厚は、15nm以上かつ25nm以下である。
【0054】
なお、半導体記憶装置20の製造方法については、抵抗変化素子15における抵抗層13以外の部分については、従来技術と同様な製造方法とすることができる。また、抵抗変化素子15の形状加工については、下部電極となるコンタクトプラグ11が露出する面の上に抵抗変化層12、抵抗層13、上部電極14までを連続して形成した後、半導体プロセスにおける写真製版と加工技術によって、
図1のようにコンタクトプラグ11、抵抗変化層12、抵抗層13、上部電極14が電気的に接続される構造を形成することができる。抵抗層13は、Arガス雰囲気でRF(Radio Frequency)スパッタリングにより形成することができる。抵抗層13は、例えば、スパッタ法により、Al
2O
3ターゲットとHfO
2ターゲットを同時放電させて作製することができる。
【0055】
また、抵抗変化素子15の動作については、上部電極14を基準にし下部電極となるコンタクトプラグ11が負電圧となるように電圧を印加すると、高抵抗状態から低抵抗状態に遷移(セット)し、上部電極14を基準にし下部電極となるコンタクトプラグ11が正電圧となるように電圧を印加すると、低抵抗状態から高抵抗状態に遷移(リセット)する。
【0056】
本実施形態によれば、抵抗層13が従来技術(特許文献1参照)の低抵抗層よりも大幅に低抵抗となるとともに、抵抗層13の導電性のバラツキが少なくなり、セット・リセット動作が安定し、読み出しや書き込みを均一な条件を行うことが可能となり、半導体記憶装置としての活用を容易ならしめることができる。また、読み出し・書き込み動作マージンが拡大して、良質なチップを高い歩留まりで生産することができるようになる。
【0057】
なお、抵抗変化素子において抵抗層を用いない場合は、上部電極は単純な金属膜による電極となるが、この場合、上部電極と抵抗変化層との接触界面において電極金属酸化物が発生して好ましくない。
【実施例】
【0058】
本発明の実施例に係る抵抗変化素子について図面を用いて説明する。
図2は、抵抗変化素子における抵抗層のHf、Al、Oの原子組成百分率と比抵抗値を測定した結果を示した図である。
図3は、HfAlO
x及びHfO
xのOの原子組成百分率と比抵抗の関係を示した図である。
【0059】
ここで、HfAlO
xは、スパッタ法により、Arガス雰囲気でAl
2O
3ターゲットとHfO
2ターゲットを同時放電させて作製した。HfAlO
xのOの原子組成百分率の調整は、高周波電力の調整により行った。HfO
xは、Hfターゲットを用い、スパッタガスにArとO
2の混合ガスを用いたリアクティブスパッタ法により作製した。HfO
xのOの原子組成百分率の調整は、スパッタガスの酸素分圧の調整により行った。
【0060】
また、
図2の抵抗層のHf、Al、Oの原子組成百分率は、核反応法による高精度な測定によるものであり、他の分析方法に比べて軽元素の酸素の定量精度が極めて高いものである。また、
図2の抵抗層の比抵抗値は、4端子法によって測定した。
【0061】
図2の比抵抗値が一定になる範囲(実施例)では、Oの原子組成百分率が約20〜33atom%まで変化しているにもかかわらず、抵抗層の比抵抗値がほぼ一定であることがわかる。この比抵抗値が一定になる範囲のAlの原子組成百分率は約15〜28atom%、Hfの原子組成百分率は約65〜39atom%である。この範囲において、酸素の原子組成百分率のアルミニウムの原子組成百分率に対する比が、1.1以上かつ1.4以下であることが好ましい。つまり、比抵抗値が一定になる範囲においては、HfO
x中のAlの原子組成百分率が15〜28atom%の範囲で変動しても、比抵抗値が一定であることがわかった。
【0062】
図3は、HfO
x(酸素濃度欠陥のあるHfO
x;特許文献1の低抵抗層に相当)、及び、HfAlO
xのOの原子組成百分率と比抵抗値との関係を示した図である。
図3の比抵抗値が一定になる範囲(Oの原子組成百分率が約15〜33atom%の範囲)において、HfAlO
xは、HfO
xと比べて、比抵抗値の変動が少ないことが確認できた。
【0063】
また、
図3の比抵抗値が一定になる範囲において、実施例に係るHfAlO
xの比抵抗値は、約2.7×10
−4Ω・cmとなり、比較例に係る酸素濃度欠陥のあるHfO
x(特許文献1の低抵抗層に相当)の比抵抗値の5×10
3Ω・cmと比べて、大幅に低い値を示した。
【0064】
したがって、例えば、
図2の比抵抗値が一定になる範囲の中央あたりの原子組成百分率(Alの原子組成百分率が20atom%程度)のHfAlO
xを用いればOの原子組成百分率が多少変動した絶縁層を作製しても、HfAlO
xの比抵抗値は変わらないので、抵抗変化素子の作製の際、抵抗層の比抵抗値のバラツキが抑えられる。また、比抵抗値が一定になる範囲の中央あたりでは、HfAlO
xについてOの原子組成百分率が多少変動しても、抵抗層の比抵抗値が変わらないので、セット・リセット動作における酸素イオンの流出入に対しても耐性がある。よって、実施例に係るHfAlO
xを抵抗層に適用すれば、抵抗変化層の抵抗値の変化に比べて、電極部分の抵抗変動は極めて少なくでき、安定した読み出しが可能になる。
【0065】
なお、本出願において図面参照符号を付している場合は、それらは、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【0066】
また、本発明の全開示(請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、本願に記載の数値及び数値範囲については、明記がなくともその任意の中間値、下位数値、及び、小範囲が記載されているものとみなされる。
【0067】
(付記)
本発明の一視点においては、抵抗変化素子において、視点第1電極及び第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配されるとともに、酸素及び金属を含む抵抗変化層と、前記抵抗変化層と前記第2電極との間に配されるとともに、前記抵抗変化層及び前記第2電極にそれぞれ接合する抵抗層と、を備え、前記抵抗層は、ハフニウム、アルミニウム及び酸素から構成され、その原子組成百分率がアルミニウムの15atom%以上かつ30atom%以下に対して酸素が20atom%以上かつ35atom%以下であり、ハフニウムが35atom%以上かつ65atom%以下であることを特徴とする。
【0068】
本発明の前記抵抗変化素子において、前記酸素の原子組成百分率の前記アルミニウムの原子組成百分率に対する比は、1.1以上かつ1.4以下であることが好ましい。
【0069】
本発明の前記抵抗変化素子において、前記抵抗層の膜厚は、1nm以上かつ10nm以下であることが好ましい。
【0070】
本発明の前記抵抗変化素子において、前記抵抗変化層は、酸素欠損のある酸化ハフニウムよりなることが好ましい。
【0071】
本発明の前記抵抗変化素子において、前記抵抗変化層の膜厚は、1nm以上かつ10m以下であることが好ましい。