(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炭化珪素からなる半導体基板の裏面に不純物を注入し、前記半導体基板の裏面の表面層に、前記半導体基板よりも不純物濃度が高い高濃度半導体領域を形成する第1工程と、
前記高濃度半導体領域の表面に金属電極を形成する第2工程と、
熱処理により、前記高濃度半導体領域と前記金属電極とのオーミックコンタクトを形成する第3工程と、
を含み、
前記第1工程では、
前記半導体基板の裏面に、30keV以上150keV以下の範囲の加速エネルギーで不純物を注入し、カーボン保護膜で保護した後、活性化熱処理し、前記カーボン保護膜を除去後に前記半導体基板の裏面を犠牲酸化し、当該犠牲酸化による犠牲酸化膜をバッファードフッ酸によるエッチングで除去することで、前記高濃度半導体領域の不純物濃度を1×1019/cm3以上8×1020/cm3以下とし、
前記高濃度半導体領域の厚さを200nm以下とし、
深さ方向に一様な不純物濃度プロファイルを有する前記高濃度半導体領域を形成することを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコン(Si)に代わる半導体材料の一つとして炭化珪素(SiC)が注目されている。炭化珪素のバンドギャップは、例えば炭化珪素の四層周期六方晶(4H−SiC)で3.25eVであり、シリコンのバンドギャップ(=1.12eV)に比べて3倍程度大きい。このため、半導体材料として炭化珪素を用いることにより、動作上限温度を高くすることができる。また、炭化珪素の絶縁破壊電界強度は、例えば4H−SiCで3.0MV/cmであり、シリコンの絶縁破壊電界強度(=0.25MV/cm)に比べて10倍程度大きい。このため、絶縁破壊電界強度の3乗に反比例するオン抵抗が低減され、定常状態での電力損失を低減することができる。
【0003】
また、炭化珪素の熱伝導度は、例えば4H−SiCで4.9W/cmKであり、シリコンの熱伝導度(=1.5W/cmK)に比べて3倍程度高い。このため、炭化珪素を用いた半導体装置(以下、炭化珪素半導体装置とする)は、シリコンを用いた半導体装置(以下、シリコン半導体装置とする)よりも熱冷却効果が高く、冷却装置を小型化することができるという利点がある。また、炭化珪素半導体装置は、飽和ドリフト速度が2×10
7cm/sと大きいため、高速動作にも優れている。このように炭化珪素は、シリコンと比較して優れた物性値を有しているため、電力用半導体素子(以下、パワーデバイスとする)や高周波デバイス、高温動作デバイスなどへの応用が期待されている。
【0004】
現在、炭化珪素半導体装置として絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、pnダイオード、ショットキーダイオード等が試作され、絶縁耐圧およびオン抵抗に関しては、シリコン半導体装置の特性を超えるデバイスが続出している。オン抵抗とは、通電時の順方向電流に対する順方向電圧の比(=順方向電圧/順方向電流)である。このような炭化珪素半導体装置の作製(製造)には、炭化珪素からなる半導体基板(以下、SiC基板とする)の内部の所定領域の導電型やキャリア濃度を制御する必要がある。
【0005】
SiC基板の内部の所定領域の導電型やキャリア濃度を制御する方法として、熱拡散法やイオン注入法が公知である。熱拡散法は、シリコン半導体装置を作製するために広く用いられている。しかし、炭化珪素中では不純物の拡散係数は非常に小さいため、熱拡散法を用いてSiC基板の内部の所定領域の導電型やキャリア濃度を制御することは難しい。このため、炭化珪素半導体装置の作製には、通常、イオン注入法が用いられる。注入されるイオン種としては、n型半導体領域の形成には窒素(N)やリン(P)が用いられ、p型半導体領域の形成にはアルミニウム(Al)やボロン(B)が多く用いられている。
【0006】
大容量・高耐圧のパワーデバイスは、半導体装置の縦方向、すなわち半導体装置のおもて面から裏面に向かって電流が流れたり、半導体装置のおもて面と裏面との間に電圧が印加される縦型の素子構造を有する。そのため、大容量・高耐圧のパワーデバイスは、半導体基板のおもて面および裏面にそれぞれ電極を有する構成となっている。例えばショットキーダイオードの場合、基板おもて面側にショットキー電極が設けられ、基板裏面にシリコン部とのコンタクト(電気的接触部)がオーミックコンタクトとなるオーミック電極が設けられている。また、縦型MOSFETの場合、基板おもて面にソース電極およびゲート電極が設けられ、基板裏面にオーミック電極であるドレイン電極が設けられている。
【0007】
従来の炭化珪素半導体装置の製造方法では、まず、SiC基板のおもて面上に炭化珪素エピタキシャル層を成長させ、その後、SiC基板の裏面に金属を蒸着して熱処理することでオーミック電極を形成するのが一般的である。また、オーミック電極を備えた炭化珪素半導体装置において、SiC基板とオーミック電極との接触抵抗(コンタクト抵抗)が大きい場合、同じ電圧を印加したとしても、接触抵抗が小さい場合に比べてデバイス動作時に活性領域に流れる電流(オン電流)が小さくなってしまう。このため、SiC基板とオーミック電極との接触抵抗を低減する方法として、イオン注入によりSiC基板の裏面に高不純物濃度のイオン注入層を形成することが提案されている(例えば、下記特許文献1,2参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、SiC基板とオーミック電極との接触抵抗を低減させるためには、上述したように基板裏面に高不純物濃度の不純物層を形成することが有効であるが、発明者らが鋭意研究を重ねた結果、上記特許文献1,2の技術では、次の問題が生じることが判明した。
図11〜13は、従来の炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。一般的に従来の炭化珪素半導体装置の製造方法では、まず、
図11に示すように、SiC基板101の裏面にイオン注入111を行い、SiC基板101の裏面の表面層に、SiC基板101よりも不純物濃度の高い高濃度半導体領域102を形成する。次に、
図12に示すように、高濃度半導体領域102の表面に裏面電極としてニッケル(Ni)層103およびチタン(Ti)層104を順に形成する。
【0010】
次に、ニッケル層103およびチタン層104をシンタリング(焼結)するためのアニール処理(熱処理)を行う。この熱処理により、
図13に示すように、ニッケル層103がシリサイド化され、SiC基板101とのオーミックコンタクトをなすオーミック電極としてニッケルシリサイド層105が形成されるが、このニッケルシリサイド層105中に炭素(C)が連続的に析出された層(以下、炭素析出層とする)106が形成される。このように、従来技術ではニッケルシリサイド層105中に炭素析出層106が形成され、この炭素析出層106を境に裏面電極(ニッケルシリサイド層105上に形成する金属層)が剥離したり、SiC基板101との接触抵抗の小さい良好な裏面電極を形成することができないことが確認された。
【0011】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、裏面電極が剥離することを抑制することができ、かつ良好な特性が得られる裏面電極を形成することができ
る炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、次のことを見出した。上述した従来技術では、ニッケルシリサイド層105を形成するための熱処理時に、高濃度半導体領域102中の炭素原子がニッケルシリサイド層105中に析出して炭素析出層106が形成されていると推測される。このため、高濃度半導体領域の不純物濃度や基板裏面からの深さを調整することにより、ニッケルシリサイド層中に炭素析出層を発生させることなく、SiC基板(高濃度半導体領域)とオーミック電極(ニッケルシリサイド層)との接触抵抗を従来と同程度以下にすることができることを見出した。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。まず、炭化珪素からなる半導体基板の裏面に不純物を注入し、前記半導体基板の裏面の表面層に、前記半導体基板よりも不純物濃度が高い高濃度半導体領域を形成する第1工程を行う。次に、前記高濃度半導体領域の表面に金属電極を形成する第2工程を行う。次に、熱処理により、前記高濃度半導体領域と前記金属電極とのオーミックコンタクトを形成する第3工程を行う。そして、前記第1工程では、
前記半導体基板の裏面に、30keV以上150keV以下の範囲の加速エネルギーで不純物を注入し、カーボン保護膜で保護した後、活性化熱処理し、前記カーボン保護膜を除去後に前記半導体基板の裏面を犠牲酸化し、当該犠牲酸化による犠牲酸化膜をバッファードフッ酸によるエッチングで除去することで、前記高濃度半導体領域の不純物濃度を1×10
19/cm
3以上8×10
20/cm
3以下とし、前記高濃度半導体領域の厚さを200nm以下とし、深さ方向に一様な不純物濃度プロファイルを有する前記高濃度半導体領域を形成する。
【0014】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記高濃度半導体領域の不純物濃度を4×10
20/cm
3以下とすることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第1工程では、前記不純物として、アルミニウム、リン、砒素、窒素、ボロン、マグネシウムまたはガリウムを注入することを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第2工程では、前記高濃度半導体領域の表面にニッケル層およびチタン層を順に形成し、前記第3工程では、熱処理により前記ニッケル層と前記高濃度半導体領域とを反応させて、前記金属電極としてニッケルシリサイド層を形成することを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第2工程前に、前記半導体基板のおもて面側に、おもて面素子構造を形成する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0019】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。炭化珪素からなる半導体基板の裏面の表面層に、前記半導体基板よりも不純物濃度が高い高濃度半導体領域が設けられている。前記高濃度半導体領域の表面に、前記高濃度半導体領域とのオーミックコンタクトを形成する金属電極が設けられている。そして、前記高濃度半導体領域の不純物濃度は、1×10
19/cm
3以上8×10
20/cm
3以下である。前記高濃度半導体領域の厚さは、200nm以下である。
前記高濃度半導体領域の不純物濃度プロファイルは、深さ方向に一様である。
【0020】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記高濃度半導体領域の不純物濃度は、4×10
20/cm
3以下であることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記金属電極は、ニッケルシリサイド層であることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記半導体基板のおもて面側に設けられたおもて面素子構造をさらに備えることを特徴とする。
【0023】
上述した発明によれば、高濃度半導体領域の厚さを200nm以下程度とすることで、高濃度半導体領域中の炭素原子が金属電極中に析出することを抑制することができる。これにより、高濃度半導体領域から金属電極への炭素の析出量を低減させることができ、金属電極中に炭素が連続的に析出された層は生じない。したがって、金属電極中の炭素を原因として金属電極が剥離することを防止することができる。また、本発明によれば、高濃度半導体領域の不純物濃度を8×10
20/cm
3以下程度とすることで、高濃度半導体領域と金属電極との接触抵抗を従来と同程度以下とすることができる。これにより、デバイス動作時に活性領域に流れる電流が小さくなることを防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかか
る炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、裏面電極が剥離することを抑制することができるとともに、良好な特性を有する裏面電極を形成することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照して、この発明にかか
る炭化珪素半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
(実施の形態)
実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法によって作製(製造)される炭化珪素半導体装置の構造について、ショットバリアダイオード(以下、SiC−SBD)を例に説明する。
図1は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法により製造される炭化珪素半導体装置の一例を示す断面図である。
図1に示すように、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置において、炭化珪素(SiC)からなるn型半導体基板(以下、n型SiC基板とする)1のおもて面上には、n
-型ドリフト領域となるn
-型SiCエピタキシャル層2が設けられている。以下、n型SiC基板1およびn
-型SiCエピタキシャル層2からなるn型SiCエピタキシャル基板の、n
-型SiCエピタキシャル層2側の面をおもて面とし、n型SiC基板1側の面を裏面とする。
【0028】
n型SiCエピタキシャル基板のおもて面の表面層には、ジャンクション・バリア・ショットキー(JBS)構造を構成するp
+型半導体領域3が所定間隔で選択的に設けられている。n型SiCエピタキシャル基板のおもて面上には、層間絶縁膜4が設けられている。層間絶縁膜4には、p
+型半導体領域3が形成された活性領域においてn型SiCエピタキシャル基板のおもて面を露出するコンタクトホール4aが設けられている。活性領域とは、オン状態のときに電流が流れる領域である。ショットキー電極5は、層間絶縁膜4のコンタクトホール4a内に設けられ、n
-型SiCエピタキシャル層2の、p
+型半導体領域3間に挟まれた部分と、p
+型半導体領域3とに接する。ショットキー電極5の端部は、活性領域から層間絶縁膜4上にまで延在している。ショットキー電極5上には、例えばアルミニウム(Al)からなる電極パッド6が設けられている。
【0029】
n型SiCエピタキシャル基板の裏面(n型SiC基板1の裏面)の表面層には、n
+型半導体領域7が設けられている。n
+型半導体領域7の厚さは、例えば200nm以下であるのがよい。n
+型半導体領域7の不純物濃度は、例えば1×10
19/cm
3以上8×10
20/cm
3以下であるのがよく、好ましくは例えば4×10
20/cm
3以下であるのがよい。その理由は、次の通りである。n
+型半導体領域7の不純物濃度が1×10
19/cm
3未満である場合、後述するオーミック電極8とのコンタクト(電気的接触部)をオーミックコンタクトにすることができないからである。また、n
+型半導体領域7の不純物濃度が8×10
20/cm
3よりも大きい場合、n型SiC基板1とオーミック電極8との接触抵抗を従来と同程度以下にすることができないからである。
【0030】
n
+型半導体領域7の表面上には、n型SiC基板1(n
+型半導体領域7)とのコンタクトがオーミックコンタクトとなるオーミック電極8が設けられている。オーミック電極8は、n
+型半導体領域7の表面上に順に積層した例えばニッケル(Ni)層およびチタン(Ti)層を熱処理してなるニッケルシリサイド層であるのがよい。オーミック電極8の表面上には、例えば金(Au)からなる外部接続用電極層9が設けられている。
【0031】
次に、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について、
図1のSiC−SBDを作製する場合を例に説明する。
図2〜8は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を模式的に示す断面図である。まず、n型SiC基板(半導体ウェハ)1として、例えば、1×10
16/cm
3程度の窒素(N)がドーピングされた350μm程度の厚さの炭化珪素の四層周期六方晶(4H−SiC)基板を用意する。n型SiC基板1のおもて面は、例えば(0001)面に対して4°程度のオフ角を有する。次に、
図2に示すように、n型SiC基板1のおもて面上に、例えば、5.0×10
15/cm
3程度の窒素がドーピングされた6μm程度の厚さのn
-型SiCエピタキシャル層2を成長させる。
【0032】
次に、
図3に示すように、n型SiC基板1およびn
-型SiCエピタキシャル層2からなるn型SiCエピタキシャル基板のおもて面(n
-型SiCエピタキシャル層2側の面)の表面層に、p
+型半導体領域3を例えば2μmの間隔で選択的に形成する。具体的には、例えば500℃程度の温度でn型SiCエピタキシャル基板を加熱しながら、n型SiCエピタキシャル基板のおもて面に第1イオン注入を選択的に行うことでp
+型半導体領域3を形成する。この第1イオン注入において、例えば、基板おもて面から500nm程度の深さまでのボックスプロファイルの不純物濃度が2×10
19/cm
3程度となるように、30keV以上350keV以下の範囲の加速エネルギーでアルミニウムなどのp型不純物を注入する。
【0033】
次に、
図4に示すように、n型SiCエピタキシャル基板の裏面(n型SiC基板1側の面)の表面層に、n
+型半導体領域7を形成する。具体的には、基板温度を500℃程度に加熱した状態で、n型SiCエピタキシャル基板の裏面全面に複数段の第2イオン注入を行うことでn
+型半導体領域7を形成する。この第2イオン注入において、例えば、製品完成後の基板裏面から200nm以下程度の深さ(すなわち製品完成後のn
+型半導体領域7の厚さ)までのボックスプロファイルの不純物濃度が上述したn
+型半導体領域7の不純物濃度の範囲内となるように、30keV以上150keV以下の範囲の加速エネルギーでリン(P)などのn型不純物を注入する。
【0034】
次に、
図5に示すように、第1,2イオン注入した不純物を活性化させるための熱処理を行う。具体的には、n型SiCエピタキシャル基板のおもて面全面を例えばカーボン保護膜11で保護した後、n型SiCエピタキシャル基板を例えば活性化熱処理装置の処理炉内に挿入する。そして、活性化熱処理装置の処理炉内を例えば1×10
-2Pa以上程度まで真空引きした後、処理炉内にアルゴン(Ar)ガスを導入し、例えば1×10
5Pa程度の圧力で1700℃程度の温度の熱処理を5分間程度行う。
【0035】
次に、
図6に示すように、例えばアッシング装置を用いてカーボン保護膜11を除去(アッシング)する。具体的には、例えば、アッシング装置として反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)装置を用いる。より具体的には、例えば、反応性イオンエッチング装置の反応炉内に酸素(O
2)ガスを導入して6Pa程度の圧力下とし、500W程度の高周波(RF)電力を印加して酸素ガスをプラズマ化した雰囲気中で5分間程度のアッシングを行う。次に、例えば拡散炉内においてパイロジェニック酸化によりn型SiCエピタキシャル基板の裏面を犠牲酸化する。次に、例えばバッファードフッ酸によるエッチングにより基板裏面の犠牲酸化膜を除去して、n
+型半導体領域7の厚さを100nm程度薄くする。これによって、n
+型半導体領域7の厚さが200nm以下となる。
【0036】
次に、
図7に示すように、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法により、n型SiCエピタキシャル基板のおもて面に、例えば500nmの厚さの層間絶縁膜4を形成する。次に、例えばスパッタリングなどの物理気相成長(PVD:Physical Vapor Deposition)法により、n型SiCエピタキシャル基板の裏面に、ニッケル層およびチタン層を順に積層(形成)する。そして、例えば800℃程度の温度で10分間の熱処理によりn型SiCエピタキシャル基板を加熱して、基板裏面上のニッケル層およびチタン層をシンタリング(焼結)する。この熱処理により、ニッケル層をシリサイド化して、オーミック電極8としてチタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層を形成することにより、n型SiC基板1(すなわちn
+型半導体領域7)とオーミック電極8とのオーミックコンタクトを形成する。
【0037】
次に、
図8に示すように、フォトリソグラフィにより層間絶縁膜4にコンタクトホール4aを形成し、n型SiCエピタキシャル基板のおもて面のp
+型半導体領域3が形成された活性領域を露出する。次に、例えばスパッタリングなどの物理気相成長法により、コンタクトホール4a内のシリコン部(n
-型SiCエピタキシャル層2およびp
+型半導体領域3)に接するように基板おもて面の全面にチタン層を形成する。次に、フォトリソグラフィにより、基板おもて面のチタン層をショットキー電極5のパターンにパターニングする。次に、例えば500℃程度の温度で10分間の熱処理により基板おもて面のチタン層をシンタリングしてショットキー電極5を形成する。
【0038】
次に、例えばスパッタリングなどの物理気相成長法により、ショットキー電極5上に電極パッド6として例えば5μm程度の厚さのアルミニウム層を形成する。また、例えばスパッタリングなどの物理気相成長法により、オーミック電極8上に外部接続用電極層9として例えば200nm程度の厚さの金層を形成することにより、
図1に示すSiC−SBDが完成する。
【0039】
(実施例1)
次に、n
+型半導体領域7の不純物濃度および厚さと裏面電極(オーミック電極8および外部接続用電極層9)の剥離の有無との関係について説明する。
図9は、実施例1にかかる炭化珪素半導体装置の裏面電極に対する剥離試験の結果を示す説明図である。まず、上述した実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法にしたがい、上記諸条件で
図1に示すSiC−SBDを作製した(以下、実施例1−1,1−2とする)。具体的には、実施例1−1においては、製品完成後のn
+型半導体領域7のボックスプロファイルの不純物濃度および厚さ(以降、単にn
+型半導体領域7の不純物濃度および厚さとする)がそれぞれ8×10
20/cm
3および200nmとなるように、上記加速エネルギーで第2イオン注入を行った。
【0040】
実施例1−2においては、n
+型半導体領域7の不純物濃度および厚さがそれぞれ4×10
20/cm
3および200nmとなるように、上記加速エネルギーで第2イオン注入を行った。実施例1−2の、n
+型半導体領域7の不純物濃度以外の条件は実施例1−1と同様である。比較として、第2イオン注入条件の異なる試料を作製した(以下、比較例とする)。比較例では、第2イオン注入において装置完成後の基板裏面から500nmの深さまでのボックスプロファイルの不純物濃度が8×10
20/cm
3となるように、リンを30keV以上350keV以下の範囲の加速エネルギーで複数段注入した。比較例の第2イオン注入以外の条件は実施例1−1と同様である。
【0041】
これら実施例1−1,1−2および比較例の裏面電極に対して一般的な剥離試験を行った。その結果を
図9に示す。
図9に示す結果より、実施例1−1においては、n型SiC基板1とオーミック電極8との接触抵抗(コンタクト抵抗)は比較例と同程度であったが、裏面電極は剥離しない(剥離:無)ことが確認された。また、実施例1−2においては、n型SiC基板1とオーミック電極8との接触抵抗を小さくすることができ、かつ裏面電極が剥離しないことが確認された。それに対して、比較例では、n型SiC基板1とオーミック電極8との接触抵抗は実施例1−1と同程度に維持されるが、オーミック電極8が破断して裏面電極が剥離する(剥離:有)ことが確認された。
【0042】
実施例1−1,1−2において裏面電極が剥離しない理由は、次のとおりである。n
+型半導体領域7を形成するための第2イオン注入の加速エネルギーを150keV以下程度にして、オーミック電極8への炭素の供給源となるn
+型半導体領域7の厚さを200nm以下程度にすることで、オーミック電極8への炭素の析出量を低減させることができる。これにより、オーミック電極8中に、裏面電極の剥離の原因となる炭素析出層(炭素が連続的に析出された層)が形成されないからである。また、実施例1−2のようにn
+型半導体領域7の不純物濃度を8×10
20/cm
3よりも低くすることにより、n型SiC基板1とオーミック電極8との接触抵抗を低減することができる。このため、実施例1−1,1−2のように、n
+型半導体領域7の不純物濃度および厚さを制御することにより、n型SiC基板1とオーミック電極8との接触抵抗を維持または低減させた状態で、裏面電極が剥離することを防止することができることが確認された。
【0043】
(実施例2)
次に、n
+型半導体領域7の厚さと裏面電極の剥離の有無との関係について説明する。
図10は、実施例2にかかる炭化珪素半導体装置の裏面電極に対する剥離試験の結果を示す説明図である。実施例2としてn
+型半導体領域7(
図10においては高濃度不純物層と記載)の厚さの異なる第1〜5試料を作製した。第1〜5試料において、n
+型半導体領域7の厚さは、それぞれ500nm、400nm、300nm、200nmおよび150nmとした。実施例2の、n
+型半導体領域7の厚さ以外の条件は実施例1−1と同様である。実施例2において、第2イオン注入の加速エネルギーは実施例1−1と同様であり、第2イオン注入の多段注入数を増減させてn
+型半導体領域7の厚さを変えている。すなわち、第2イオン注入の多段注入数を増やすことでn
+型半導体領域7の厚さを厚くしており、第2イオン注入の多段注入数は、n
+型半導体領域7の厚さの厚さが最も厚い第1試料が最も多く、n
+型半導体領域7の厚さが最も薄い第5試料が最も少ない。第4試料は、実施例1−1に相当する。
【0044】
これらの第1〜5試料の裏面電極に対して一般的な剥離試験を行った。その結果を
図10に示す。
図10に示す結果より、n
+型半導体領域7の厚さを200nm以下とすることで(第4,5試料)、裏面電極が剥離することを防止することができることが確認された。したがって、n
+型半導体領域7の厚さは200nm以下であるのが効果的であることが確認された。また、n
+型半導体領域7の厚さを200nm以下とすることにより、n
+型半導体領域7を形成するための第2イオン注入の注入段数を少なくすることができるため、スループットを向上させることができることが確認された。
【0045】
以上、説明したように、実施の形態によれば、SiC基板の裏面側に高濃度半導体領域(n
+型半導体領域)を形成するための第2イオン注入の加速エネルギーを150keV以下程度にして、高濃度半導体領域の厚さを200nm以下程度とすることで、ニッケルシリサイド層(オーミック電極)を形成するための熱処理時に、高濃度半導体領域中の炭素原子がニッケルシリサイド層中に析出することを抑制することができる。これにより、ニッケルシリサイド層への炭素の析出量を低減させることができ、ニッケルシリサイド層中に炭素が連続的に析出された層(炭素析出層)は生じない。したがって、ニッケルシリサイド層中の炭素を原因として裏面電極(オーミック電極および外部接続用電極層)が剥離することを十分に抑制することができる。また、実施の形態によれば、SiC基板の裏面に形成された高濃度半導体領域の不純物濃度を8×10
20/cm
3以下程度とすることで、SiC基板(すなわち高濃度半導体領域)とオーミック電極との接触抵抗を維持または低減することができる。これにより、デバイス動作時に活性領域に流れる電流(オン電流)が小さくなることを防止することができるため、良好な特性を有する裏面電極を形成することができる。
【0046】
以上において本発明では、SBDを例に説明しているが、これに限らず、MOSFETや、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、ダイオードなど、炭化珪素を用いた他の半導体デバイスにも適用可能である。すなわち、上述した実施の形態において、SiC基板のおもて面側に形成されるおもて面素子構造を種々変更することで、基板裏面側にオーミック電極を備えた様々な構成の炭化珪素半導体装置を作製することができる。また、上述した実施の形態では、SiC基板の裏面に高濃度半導体領域を形成するための第2イオン注入のドーパントとしてリンを用いた場合を例に説明したが、これに限らず、裏面素子構造に合わせて種々変更可能である。具体的には、例えば、第2イオン注入によりn型高濃度半導体領域を形成する場合には、リンや砒素(As)、窒素(N)を用いることが可能であり、第2イオン注入によりn型高濃度半導体領域を形成する場合には、アルミニウムやボロン(B)、マグネシウム(Mg)、ガリウム(Ga)を用いることが可能である。また、上述した実施の形態では、n型SiC基板の表面にn
-型SiCエピタキシャル層を積層したエピタキシャル基板を用いて説明しているが、これに限らず、このエピタキシャル基板と厚さの等しいn
-型SiC基板を用いてもよい。また、上述した実施の形態では、半導体層または半導体基板の導電型(n型、p型)を反転させても同様に成り立つ。