特許第6222805号(P6222805)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクサイエンスの特許一覧

特許6222805荷電粒子ビーム装置および観察像形成方法
<>
  • 特許6222805-荷電粒子ビーム装置および観察像形成方法 図000002
  • 特許6222805-荷電粒子ビーム装置および観察像形成方法 図000003
  • 特許6222805-荷電粒子ビーム装置および観察像形成方法 図000004
  • 特許6222805-荷電粒子ビーム装置および観察像形成方法 図000005
  • 特許6222805-荷電粒子ビーム装置および観察像形成方法 図000006
  • 特許6222805-荷電粒子ビーム装置および観察像形成方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222805
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム装置および観察像形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/244 20060101AFI20171023BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   H01J37/244
   H01J37/22 502E
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-63218(P2013-63218)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-191862(P2014-191862A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】小堺 智一
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 文朗
(72)【発明者】
【氏名】松田 修
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−252800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/00−27/26
H01J 37/00−37/18
H01J 37/21−37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを試料表面に照射する荷電粒子ビーム鏡筒と、
前記荷電粒子ビームの照射により前記試料表面から放出される二次粒子量を検出する検出器と、
検出された前記二次粒子量に基づいて、前記試料表面の観察像を形成する像形成部と、を有し、
前記荷電粒子ビーム鏡筒は、前記観察像の単位領域に対応する前記試料表面に向かって前記荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム装置であって、
前記荷電粒子ビーム鏡筒と前記試料との相対位置を検出する相対位置検出手段を備え、
前記像形成部は、
検出された前記荷電粒子ビーム鏡筒と前記試料との相対位置に基づいて、前記荷電粒子ビームの照射位置を特定し、
特定された前記荷電粒子ビームの照射位置が前記観察像の複数の単位領域に跨る場合に、特定された前記荷電粒子ビームの照射位置と検出された前記二次粒子量とに基づいて、前記観察像の前記複数の単位領域の輝度を設定する、
ことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
荷電粒子ビームを試料表面に照射する荷電粒子ビーム鏡筒と、
前記荷電粒子ビームの照射により前記試料表面から放出される二次粒子量を検出する検出器と、
検出された前記二次粒子量に基づいて、前記試料表面の観察像を形成する像形成部と、を有し、
前記荷電粒子ビーム鏡筒は、前記観察像の単位領域に対応する前記試料表面に向かって前記荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム装置であって、
前記荷電粒子ビーム鏡筒と前記試料との相対位置を検出する相対位置検出手段を備え、
前記像形成部は、
検出された前記荷電粒子ビーム鏡筒と前記試料との相対位置に基づいて、前記荷電粒子ビームの照射位置を特定し、
特定された前記荷電粒子ビームの照射位置から、前記観察像の単位領域への照射割合を算出し、
算出された前記照射割合と検出された前記二次粒子量とに基づいて、前記観察像の単位領域に前記二次粒子量を割り当て、
前記観察像の単位領域に割り当てられた前記二次粒子量に基づいて、前記観察像の単位領域の輝度を設定する、
ことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
請求項2に記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記像形成部は、前記観察像の単位領域に割り当てられた前記二次粒子量の平均値に基づいて、前記観察像の単位領域の輝度を設定することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
荷電粒子ビームを試料表面に照射する荷電粒子ビーム照射工程と、
前記荷電粒子ビームの照射により前記試料表面から放出される二次粒子量を検出する二次粒子量検出工程と、
検出された前記二次粒子量に基づいて、前記試料表面の観察像を形成する像形成工程と、を有し、
前記荷電粒子ビーム照射工程では、前記観察像の単位領域に対応する前記試料表面に向かって前記荷電粒子ビームを照射する観察像形成方法であって、
前記像形成工程は、
前記荷電粒子ビームと前記試料との相対位置を検出し、
検出された相対位置に基づいて、前記荷電粒子ビームの照射位置を特定し、
特定された前記荷電粒子ビームの照射位置から、前記観察像の単位領域への照射割合を算出し、
算出された前記照射割合と検出された前記二次粒子量とに基づいて、前記観察像の単位領域に前記二次粒子量を割り当て、
前記観察像の単位領域に割り当てられた前記二次粒子量に基づいて、前記観察像の単位領域の輝度を設定する、
ことを特徴とする観察像形成方法。
【請求項5】
請求項に記載の観察像形成方法において、
前記像形成工程は、前記観察像の単位領域に割り当てられた前記二次粒子量の平均値に基づいて、前記観察像の単位領域の輝度を設定することを特徴とする観察像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム装置および観察像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体デバイス等の試料表面の観察を行うための装置として、集束イオンビーム装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。一般に集束イオンビーム装置は、集束イオンビームを試料表面に照射するイオンビーム鏡筒と、イオンビームの照射により試料表面から放出される二次電子量を検出する検出器と、検出された二次電子量に基づいて試料表面の観察像を形成する像形成部とを備えている。イオンビーム鏡筒は、観察像の画素に対応する試料表面に向かって順に集束イオンビームを照射する。
【0003】
像形成部は、イオンビーム鏡筒に出力する走査信号と、検出器から入力される検出信号とに基づいて、試料の観察像を形成する。走査信号は、時間と、イオンビームを照射する画素との関係を示す信号であり、検出信号は、時間と、検出された二次電子量との関係を示す信号である。像形成部は、走査信号において特定時間にイオンビームを照射した画素の情報と、検出信号において特定時間に検出された二次電子量の情報とに基づいて、当該画素に対して当該二次電子量に対応する輝度を設定する。このようにして、全ての画素に輝度を設定することにより、観察像を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−517840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した観察像の形成は、イオンビーム鏡筒と試料との相対位置が変動しない場合を前提にしている。しかしながら、イオンビーム鏡筒と試料との相対位置は、装置の振動など外乱の影響等により変動する。この場合、走査信号に従って特定時間において特定画素に対してイオンビームを照射しようとしても、特定画素とは異なる位置にイオンビームが照射されることになる。そのため、検出信号に基づいて特定時間に検出された二次電子量に対応する輝度を特定画素に設定しても、特定画素に対応する試料表面の実態とは異なる輝度が設定されることになる。このように、イオンビーム鏡筒と試料との相対位置が変動する場合には、正確な観察像を形成するのが困難である。
【0006】
そこで、荷電粒子ビーム鏡筒と試料との相対位置が変動する場合でも、正確な観察像を形成することが可能な荷電粒子ビーム装置および観察像形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)荷電粒子ビームを試料表面に照射する荷電粒子ビーム鏡筒と、前記荷電粒子ビームの照射により前記試料表面から放出される二次粒子量を検出する検出器と、検出された前記二次粒子量に基づいて、前記試料表面の観察像を形成する像形成部と、を有し、前記荷電粒子ビーム鏡筒は、前記観察像の単位領域に対応する前記試料表面に向かって前記荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム装置であって、前記荷電粒子ビーム鏡筒と前記試料との相対位置を検出する相対位置検出手段を備え、前記像形成部は、検出された前記荷電粒子ビーム鏡筒と前記試料表面との相対位置に基づいて、前記荷電粒子ビームの照射位置を特定し、特定した前記荷電粒子ビームの照射位置と前記二次粒子量とに基づいて、前記観察像の単位領域の輝度を設定する荷電粒子ビーム装置である。
【0008】
(4)荷電粒子ビームを試料表面に照射する荷電粒子ビーム照射工程と、前記荷電粒子ビームの照射により前記試料表面から放出される二次粒子量を検出する二次粒子量検出工程と、検出された前記二次粒子量に基づいて、前記試料表面の観察像を形成する像形成工程と、を有し、前記荷電粒子ビーム照射工程では、前記観察像の単位領域に対応する前記試料表面に向かって前記荷電粒子ビームを照射する観察像形成方法であって、前記像形成工程は、前記荷電粒子ビームと前記試料との相対位置を検出し、検出した相対位置に基づいて、前記荷電粒子ビームの照射位置を特定し、特定された前記荷電粒子ビームの照射位置と前記二次粒子量とに基づいて、前記観察像の単位領域の輝度を設定する観察像形成方法である。
【0009】
これらの構成によれば、荷電粒子ビーム鏡筒と試料との相対位置を検出するので、荷電粒子ビーム鏡筒と試料との相対位置が変動する場合でも、実際の荷電粒子ビームの照射位置を正確に特定することができる。また、特定された荷電粒子ビームの照射位置と検出された二次粒子量とに基づいて観察像の単位領域の輝度を設定するので、照射目標である単位領域とは異なる位置に荷電粒子ビームが照射された場合でも、実際の荷電粒子ビームの照射位置と検出された二次電子量とに基づいて、観察像の単位領域の輝度を正確に設定することができる。したがって、正確な観察像を形成することができる。
【0010】
(2)前記像形成部は、特定した前記荷電粒子ビームの照射位置から、前記観察像の単位領域への照射割合を算出し、算出された前記照射割合と検出された前記二次粒子量とに基づいて、前記観察像の単位領域に前記二次粒子量を割り当て、前記観察像の単位領域に割り当てられた前記二次粒子量に基づいて、前記観察像の単位領域の輝度を設定する、ことが望ましい。
【0011】
(5)前記像形成工程は、特定した前記荷電粒子ビームの照射位置から、前記観察像の単位領域への照射割合を算出し、算出された前記照射割合と検出された前記二次粒子量とに基づいて、前記観察像の単位領域に前記二次粒子量を割り当て、前記観察像の単位領域に割り当てられた前記二次粒子量に基づいて、前記観察像の単位領域の輝度を設定する、ことが望ましい。
【0012】
これらの構成によれば、特定された荷電粒子ビームの照射位置から観察像の単位領域への照射割合を算出し、算出された照射割合と検出された二次粒子量とに基づいて観察像の単位領域に二次粒子量を割り当てるので、照射目標である単位領域とは異なる位置に荷電粒子ビームが照射された場合でも、観察像の単位領域から放出された二次粒子量を正確に把握することができる。したがって、前記単位領域の輝度を正確に設定し、正確な観察像を形成することができる。
【0013】
(3)前記像形成部は、前記観察像の単位領域に割り当てられた前記二次粒子量の平均値に基づいて、前記観察像の単位領域の輝度を設定することが望ましい。
(6)前記像形成工程は、前記観察像の単位領域に割り当てられた前記二次粒子量の平均値に基づいて、前記観察像の単位領域の輝度を設定することが望ましい。
【0014】
これらの構成によれば、観察像の単位領域に割り当てられた二次粒子量の平均値に基づいて輝度を設定するので、複数回の荷電粒子ビームの照射による二次電子量が前記単位領域に割り当てられた場合でも、1回の荷電粒子ビームの照射により前記単位領域から放出される二次電子量を正確に把握することができる。したがって、前記単位領域の輝度を正確に設定し、正確な観察像を形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
荷電粒子ビーム鏡筒と試料との相対位置を検出するので、荷電粒子ビーム鏡筒と試料との相対位置が変動する場合でも、実際の荷電粒子ビームの照射位置を正確に特定することができる。また、特定された荷電粒子ビームの照射位置と検出された二次粒子量とに基づいて観察像の単位領域の輝度を設定するので、照射目標である単位領域とは異なる位置に荷電粒子ビームが照射された場合でも、実際の荷電粒子ビームの照射位置と検出された二次電子量とに基づいて、観察像の単位領域の輝度を正確に設定することができる。したがって、正確な観察像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態の集束イオンビーム装置100の構成図である。
図2】像形成部31の構成図である。
図3】二次電子量の検出信号のグラフである。
図4】イオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置が変動しない場合の像形成作用の説明図であり、(a)はイオンビームの照射位置であり、(b)は観察像のイメージ図である。
図5】試料ステー3ジの位置変化を示すグラフであり、(a)はX方向であり、(b)はY方向である。
図6】イオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置が変動する場合の像形成作用の説明図であり、(a)はイオンビームの照射位置であり、(b)は観察像のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下には、荷電粒子ビーム装置として、ガス電界電離型イオン源を備えた集束イオンビーム装置(GFIS)を例にして説明する。
図1は、集束イオンビーム装置100の構成図である。集束イオンビーム装置100は、イオンビーム(荷電粒子ビーム)を照射するイオンビーム鏡筒(荷電粒子ビーム鏡筒)10と、試料2が配置される試料室20と、各部を制御する制御部30とを備えている。
【0018】
イオンビーム鏡筒10は、イオンビーム1を放出するイオン源室40と、イオンビーム1を集束させるコンデンサレンズ電極11と、イオンビーム1を試料表面2a上で走査する偏向器13と、イオンビーム1を試料表面2a上にフォーカスさせる対物レンズ電極12と、イオンビーム鏡筒10内を真空排気する真空ポンプ48とを備えている。
【0019】
イオン源室40は、ガス電界電離型のイオン源室であり、イオンビーム1を放出するエミッタ41と、エミッタ41の下流側に配置された引出電極49と、引出電極49とともにエミッタ41を取り囲む壁部44と、イオン源室40にイオン源ガスを供給するイオン源ガス供給部46と、イオン源ガスを冷却する冷却装置42と、エミッタの温度を調節するヒータ45とを備えている。
【0020】
エミッタ41は、タングステン(W)やモリブデン(Mo)からなる針状の基材に、白金(Pt)やパラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、金(Au)等の貴金属を被覆して形成されている。エミッタ41の先端は、原子レベルでピラミッド状に先鋭化されている。エミッタ41は、ヒータ45を介してイオン源室40の天井部に固定されている。
引出電極49は、エミッタ41との間に電圧を印加して、イオン源ガスをイオン化するとともに、イオン源室40からイオンビーム1を引き出すものである。
【0021】
イオン源ガス供給部46は、水素(H)やヘリウム(He)等のガスを、イオン源ガスとしてイオン源室40に供給する。
冷却装置42は、接続部43を介して壁部44に接続されている。冷却装置42の内部には、液体窒素や液体ヘリウム等の冷媒が収容されている。なお冷却装置42として、GM型やパルスチューブ型等のクローズドサイクル式冷凍機や、ガスフロー型の冷凍機などを用いてもよい。
【0022】
イオン源室40の動作について説明する。
イオン源ガス供給部46からイオン源室40内にイオン源ガスを導入し、冷却装置42によりイオン源ガスを冷却する。これにより、エミッタ41の周囲に高密度のイオン源ガスを配置する。次に、引出電極49によりエミッタ41との間に電圧を印加する。エミッタ41の先端は原子レベルで先鋭化されているので、エミッタ41の先端で非常に大きな電界が形成され、イオン源ガスがイオン化される。また、引出電極49によりエミッタ41との間に電圧を印加することで、イオン源室40からイオンビーム1を引き出す。原子レベルで先鋭化されたエミッタ41の先端からイオンビーム1を引き出すことで、微小なビーム径のイオンビーム1が放出される。そして、イオン源室40から放出されたイオンビーム1を試料表面2aに照射する。
【0023】
試料室20は、試料2を載置する試料ステージ3と、イオンビーム1の照射により試料表面2aから放出される二次電子量を検出する検出器4と、試料表面2aにガスを吹き付けるガス供給部5と、試料室20内を真空排気する真空ポンプ6とを備えている。
【0024】
試料ステージ3は、載置した試料2の位置および姿勢を制御する。そのため試料ステージ3は、水平面内のXY軸方向および鉛直のZ軸方向に移動するための移動機構と、XY軸回りに傾斜するためのチルト機構と、Z軸回りに回転するための回転機構とを備えている。
検出器4は、二次粒子量として二次電子量を検出するが、二次イオン量を検出してもよい。検出器4は、単位時間ごとに検出した二次電子量を制御部30に出力する。
ガス供給部5は、イオンビーム1を照射中の試料表面2aにガスを吹き付ける。吹き付けるガスの種類により、試料表面2aのエッチングや試料表面2aへのデポジションを行うことができる。
【0025】
制御部30は、イオン源室40の冷却装置42およびヒータ45の動作を制御する温度制御部34と、イオン源ガス供給部46の動作を制御するイオン源ガス制御部33と、引出電極49への印加電圧を制御する引出電圧制御部32と、試料表面2aの観察像を形成する像形成部31と、形成された観察像を表示する表示部7とを備えている。
【0026】
(像形成部)
像形成部31には、偏向器13に入力される走査信号(イオンビームを試料表面2a上で走査させる信号)と同じ信号が入力される。また像形成部31には、検出器4から二次電子量の検出信号が入力される。そして像形成部31は、走査信号および検出信号に基づいて、試料表面2aの観察像を形成する。
【0027】
図4はイオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置が変動しない場合の像形成作用の説明図であり、図4(a)はイオンビームの照射位置であり、図4(b)は観察像のイメージ図(輝度を数字で表したもの)である。像形成部31は、図4(a)に示すように、試料表面2aにおける観察像の形成領域を格子状の画素Xに区画する。なお、観察像の形成領域を画素以外の単位領域に区画してもよい。そして像形成部31は、偏向器13に入力する走査信号と同じ信号を受信する。走査信号は、各画素Xに対応する試料表面2aに向かって順にイオンビームPを照射する信号である。イオンビームPは、各画素Xに対応する試料表面に所定時間(例えば10μ秒)だけ滞在するように照射される。図4の例では、イオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置が変動しないので、時間T1におけるイオンビームP1の照射位置が画素X1(に対応する試料表面)に特定される。同様に、時間T2(イオンビームP2)の照射位置が画素X2に、時間T3(イオンビームP3)の照射位置が画素X3に、時間T4(イオンビームP4)の照射位置が画素X4に、時間T5(イオンビームP5)の照射位置が画素X5に、それぞれ特定される。
【0028】
図3は、二次電子量の検出信号のグラフである。検出器4は、イオンビームの照射により試料表面2aから放出された二次電子量を検出し、検出信号を像形成部31に出力する。図3の検出信号の例では、時間T1において70ポイントの二次電子量が検出されている。同様に、時間T2には80ポイント、時間T3には30ポイント、時間T4には10ポイント、時間T5には50ポイントの二次電子量が、それぞれ検出されている。
【0029】
像形成部31は、走査信号および検出信号に基づいて、試料表面2aの観察像を形成する。すなわち、走査信号に基づいて特定したイオンビームの照射位置と、検出信号に含まれる二次電子量により、試料表面2aの観察像を形成する。図4(a)および図3の例では、時間T1において、画素X1へのイオンビームP1の照射により、70ポイントの二次電子量が検出されている。そこで図4(b)に示すように、画素X1に対して70ポイントに対応する輝度を設定している。同様に、画素X2に対して80ポイントに対応する輝度を、画素X3に対して30ポイントに対応する輝度を、画素X4に対して10ポイントに対応する輝度を、画素X5に対して50ポイントに対応する輝度を、それぞれ設定している。このようにして、観察像の全体を形成する。
【0030】
(相対位置が変動する場合の像形成作用)
図6はイオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置が変動する場合の像形成作用の説明図であり、図6(a)はイオンビームの照射位置であり、図6(b)は観察像のイメージ図(輝度を数字で表したもの)である。前述した観察像の形成は、イオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置が変動しない場合を前提にしている。しかしながら、イオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置は、集束イオンビーム装置100の振動など外乱の影響等により変動する。この場合のイオンビームの照射軌跡は、図6(a)に示すように不規則になる。そのため、走査信号に従って画素X2に対応する試料表面2aに対してイオンビームP2を照射しようとしても、実際は画素X2とは異なる位置にイオンビームP2が照射される。同様に、画素X3〜X5とは異なる位置にイオンビームP3〜P5が照射される。
そこで本実施形態では、イオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置が変動した場合でも、実際のイオンビームの照射位置を特定して、正確な観察像を形成する。
【0031】
具体的には、イオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置を検出する相対位置検出工程と、検出された相対位置に基づいてイオンビームの照射位置を特定する照射位置特定工程と、特定されたイオンビームの照射位置と二次電子量とに基づいて観察像の画素の輝度を設定する輝度設定工程とを実施する。輝度設定工程では、特定されたイオンビームの照射位置から各画素への照射割合を算出する照射割合算出工程と、算出された照射割合と検出された二次電子量とに基づいて各画素に二次電子量を割り当てる二次電子量割当工程とを実施した上で、割り当てられた二次電子量に基づいて各画素の輝度を設定し、観察像を形成する。
【0032】
まず、イオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置を検出する(相対位置検出工程)。
図1に示すように、試料室20には、イオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置検出手段として、レーザ干渉計50が配置されている。レーザ干渉計50は、水平面内のX方向およびY方向にそれぞれ配置されている。レーザ干渉計50は、レーザ照射装置50aと、イオンビーム鏡筒10に固定された鏡筒側反射面51と、試料ステージ3に固定された試料側反射面52とを備えている。レーザ干渉計50は、レーザ照射装置50aから鏡筒側反射面51および試料側反射面52にレーザを照射して、イオンビーム鏡筒10および試料ステージ3の変位を計測し、計測結果を像形成部31に出力する。
【0033】
図5は試料ステージ3の変位(ズレ量)のグラフであり、(a)はX方向であり、(b)はY方向である。前述したレーザ干渉計50により、試料ステージ3の変位が図5のように計測される。試料ステージ3の変位の計測結果から、試料ステージ3に載置された試料2の変位を検知することができる。
このように、レーザ照射装置50aを基準にしてイオンビーム鏡筒10の変位および試料2の変位を検知することで、イオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置を検出することができる。
【0034】
次に、検出された相対位置に基づいてイオンビームの照射位置を特定する(照射位置特定工程)。
図2は、像形成部31の構成図である。像形成部31は、検出されたイオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置に基づいてイオンビームの照射位置を特定する照射位置特定部62を備えている。
図6(a)の例では、特定時間T1において画素X1に対応する試料表面2aに照射しようとしたイオンビームP1が、画素X1とは異なる位置に照射されている。そこで像形成部31は、画素X1に対応する試料表面2aの位置情報に、特定時間T1におけるイオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置情報を加算することにより、実際のイオンビームの照射位置を特定する。
【0035】
次に、特定されたイオンビームの照射位置と二次電子量とに基づいて観察像の画素の輝度を設定する(輝度設定工程)。図2に示すように、像形成部31は、特定されたイオンビームの照射位置と検出された二次電子量とに基づいて観察像の画素の輝度を設定する輝度設定部64を備えている。
【0036】
輝度設定工程では、特定されたイオンビームの照射位置から各画素への照射割合を算出し(照射割合算出工程)、算出された照射割合と検出された二次電子量とに基づいて各画素に二次電子量を割り当てる(二次電子量割当工程)。そして、各画素に割り当てられた二次電子量の平均値に基づいて各画素の輝度を設定する。
図2に示すように、輝度設定部64は、照射割合算出部66と、二次電子量割当部(二次粒子量割当部)68とを備えている。照射割合算出部66は、特定されたイオンビームの照射位置から各画素への照射割合を算出する。二次電子量割当部68は、算出された照射割合と検出された二次電子量とに基づいて各画素に二次電子量を割り当てる。そして輝度設定部64は、各画素に割り当てられた二次電子量の平均値に基づいて各画素の輝度を設定する。
【0037】
図6(a)の例では、イオンビームP2の全部が画素X2に照射されてはいないが、イオンビームP2の一部が画素X2に照射されているので、他の画素とともに画素X2からも二次電子が放出されている。検出器4で検出された二次電子量うち、画素X2から放出された二次電子量の割合は、イオンビームP2の画素X2への照射割合に相当する。そこで輝度設定部64は、イオンビームの照射位置から各画素への照射割合を算出する。次に二次電子量割当部68が、検出された二次電子量に各画素への照射割合を乗算して、二次電子量を各画素に割り当てる。すべてのイオンビームについて検出された二次電子量を各画素に割り当てたら、輝度設定部64が、各画素において割り当てられた二次電子量の平均値を算出する。そして輝度設定部64は、算出された二次電子量の平均値に基づいて、図6(b)に示すように各画素の輝度を設定する。
【0038】
図6の例について具体的に説明する。
まず、時間T1のイオンビームP1の照射位置から、イオンビームP1の画素X1への照射割合を100%と算出する。また図3の検出信号において、時間T1に検出された二次電子量は70ポイントである。そこで、二次電子量の70ポイントに、画素X1への照射割合の100/100を乗算して、70ポイントの二次電子量を画素X1に割り当てる。画素X1に割り当てられた二次電子量は、時間T1の70ポイントだけであるから、画素X1に割り当てられた二次電子量の平均値は70ポイントである。そこで図6(b)に示すように、70ポイントに対応する輝度を画素X1に設定する。
【0039】
また、時間T2のイオンビームP2の照射位置から、イオンビームP2の画素X2への照射割合を50%と算出する。時間T2に検出された二次電子量の80ポイントに、画素X2への照射割合の50/100を乗算して、40ポイントの二次電子量を画素X2に割り当てる。画素X2に割り当てられた二次電子量の平均値は40ポイントであるから、40ポイントに対応する輝度を画素X2に設定する。
【0040】
また、時間T3のイオンビームP3の照射位置から、イオンビームP3の画素X3への照射割合を40%と算出する。時間T3に検出された二次電子量の30ポイントに、画素X3への照射割合の40/100を乗算して、12ポイントの二次電子量を画素X3に割り当てる。画素X3に割り当てられた二次電子量の平均値は12ポイントであるから、12ポイントに対応する輝度を画素Xに設定する。
【0041】
前述したイオンビームP3は、画素X3とともに画素X4にも照射されている。時間T3のイオンビームP3の照射位置から、イオンビームP3の画素X4への照射割合を25%と算出する。時間T3に検出された二次電子量の30ポイントに、画素X4への照射割合の25/100を乗算して、7.5ポイントの二次電子量を画素X4に割り当てる。
一方、時間T4のイオンビームP4の照射位置から、イオンビームP4の画素X4への照射割合を30%と算出する。時間T4に検出された二次電子量の10ポイントに、画素X4への照射割合の30/100を乗算して、3ポイントの二次電子量を画素X3に割り当てる。
このように画素X4には、時間T3の7.5ポイントおよび時間T4の3ポイントの二次電子量が割り当てられるから、画素X4に割り当てられた二次電子量の平均値は約5ポイントである。そこで、5ポイントに対応する輝度を画素X4に設定する。
【0042】
また、時間T4のイオンビームP4の照射位置から、イオンビームP4の画素X5への照射割合を70%と算出する。そこで、時間T4に検出された二次電子量の10ポイントに、画素X4への照射割合の70/100を乗算して、7ポイントの二次電子量を画素X5に割り当てる。
一方、時間T5のイオンビームP5の照射位置から、イオンビームP5の画素X5への照射割合は0%であるから、時間T5の画素X5への二次電子量の割り当てはない。
したがって、画素X5に割り当てられた二次電子量の平均値は7ポイントであるから、7ポイントに対応する輝度を画素X5に設定する。
【0043】
同様に、全ての画素の輝度を設定して、観察像を形成する。なお本実施形態では、全てのイオンビームの照射時間を一定としたが、イオンビーム毎に照射時間を異ならせる場合には、検出された二次電子量をイオンビームの照射時間で除算して、単位照射時間当たりの二次電子量を評価することが望ましい。
【0044】
以上に詳述したように、本実施形態の集束イオンビーム装置100は、イオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置を検出するレーザ干渉計50を備え、像形成部31は、検出されたイオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置に基づいて、イオンビームの照射位置を特定する照射位置特定部62と、特定されたイオンビームの照射位置と検出された二次電子量とに基づいて、観察像の画素の輝度を設定する輝度設定部64と、を有する構成とした。
【0045】
この構成によれば、イオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置を検出するので、イオンビーム鏡筒10と試料2との相対位置が変動する場合でも、実際のイオンビームの照射位置を正確に特定することができる。また、特定されたイオンビームの照射位置と検出された二次電子量とに基づいて観察像の画素の輝度を設定するので、照射目標である画素とは異なる位置にイオンビームが照射された場合でも、実際のイオンビームの照射位置と検出された二次電子量とに基づいて、観察像の画素の輝度を正確に設定することができる。したがって、正確な観察像を形成することができる。
【0046】
また輝度設定部64は、特定されたイオンビームの照射位置から、観察像の画素への照射割合を算出する照射割合算出部66と、算出された照射割合と検出された二次電子量とに基づいて、観察像の画素に二次電子量を割り当てる二次電子量割当部68と、を有し、輝度設定部64は、観察像の画素に割り当てられた二次電子量に基づいて、観察像の画素の輝度を設定する構成とした。
【0047】
この構成によれば、特定されたイオンビームの照射位置から観察像の画素への照射割合を算出し、算出された照射割合と検出された二次電子量とに基づいて観察像の画素に二次電子量を割り当てるので、照射目標である画素とは異なる位置にイオンビームが照射された場合でも、観察像の画素から放出された二次電子量を正確に検出することができる。したがって、観察像の画素の輝度を正確に設定し、正確な観察像を形成することができる。
【0048】
また輝度設定部は、観察像の画素に割り当てられた二次電子量の平均値に基づいて、観察像の画素の輝度を設定する構成とした。
この構成によれば、画素に割り当てられた二次電子量の平均値に基づいて輝度を設定するので、複数回のイオンビームの照射による二次電子量が前記画素に割り当てられた場合でも、1回のイオンビームの照射により前記画素から放出される二次電子量を正確に把握することができる。したがって、観察像の画素の輝度を正確に設定し、正確な観察像を形成することができる。
【0049】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や層構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0050】
例えば荷電粒子ビーム装置として、実施形態ではガス電界電離型イオン源を備えた集束イオンビーム装置(GFIS)を例にして説明したが、プラズマ型イオン源や液体金属イオン源など他のイオン源を備えた集束イオンビーム装置を採用することも可能である。また荷電粒子ビーム装置として、電子ビームを照射する電子ビーム装置を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
X1〜X5…画素(単位領域) 1、P1〜P5…イオンビーム(荷電粒子ビーム) 2…試料 2a…試料表面 10…イオンビーム鏡筒(荷電粒子ビーム鏡筒) 31…像形成部 50…レーザ干渉計(相対位置検出手段) 62…照射位置特定部 64…輝度設定部 66…照射割合算出部 68…二次電子量割当部(二次粒子量割当部) 100…集束イオンビーム装置(荷電粒子ビーム装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6