特許第6222816号(P6222816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 藤森工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6222816-化学研磨処理用表面保護フィルム 図000006
  • 特許6222816-化学研磨処理用表面保護フィルム 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222816
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】化学研磨処理用表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20171023BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20171023BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20171023BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   C09J133/06
   C09J11/06
   C03C15/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-177222(P2013-177222)
(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-44942(P2015-44942A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】島口 龍介
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−040323(JP,A)
【文献】 特開2008−076768(JP,A)
【文献】 特開2009−163080(JP,A)
【文献】 特開2012−041456(JP,A)
【文献】 特開2012−207055(JP,A)
【文献】 特開2013−116992(JP,A)
【文献】 特開2010−285524(JP,A)
【文献】 特許第4845232(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
C03C15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム基材の片面に、粘着剤層を有する化学研磨処理用表面保護フィルムであって、前記樹脂フィルム基材の厚みが75μm以上であり、前記粘着剤層が、(A)アルキル基の炭素数が、C1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、(B)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー及び窒素含有ビニルモノマーの群から選択した少なくとも一種以上の共重合性ビニルモノマーとを、カルボキシル基含有モノマーを含有させないで共重合させたアクリル系共重合体と、(C)シランカップリング剤と、(D)架橋剤とを含有してなる粘着剤組成物を用いて形成されてなり、
前記シランカップリング剤が、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基からなる群から選択された少なくとも一種類の、有機官能基を有し、
前記粘着剤層は、厚みが10〜35μmで積層されてなり、前記粘着剤層の厚みが20μmのときに、ガラス板に対する粘着力が0.1〜1.5N/25mmであることを特徴とする化学研磨処理用表面保護フィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層が、(A)アルキル基の炭素数が、C1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも一種を80〜95重量部と、(B)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー及び窒素含有ビニルモノマーの群から選択した少なくとも一種類以上の共重合性ビニルモノマーを5〜20重量部と、を含むアクリル系共重合体100重量部と、(C)シランカップリング剤を0.01〜1重量部と、(D)架橋剤を0.01〜10重量部とを、含有してなる粘着剤組成物を用いて形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の化学研磨処理用表面保護フィルム。
【請求項3】
前記架橋剤が、イソシアネート化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化学研磨処理用表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルム、及び表面保護フィルムに関する。さらに詳細には、本発明は、ガラス基板の化学研磨工程などに用いられる表面保護フィルムであって、被着体であるガラス基板の上に形成された、タッチパネルセンサー用のITO面又はその反対側の面に貼り合せて、被着体を保護するために使用できる、化学研磨処理用表面保護フィルム提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガラス基板などを薄型化することを目的として、ガラス基板などの一方の面に表面保護フィルムを貼り合せた後、他方の面を、エッチング液を用いて化学研磨することが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1には、「従来の化学研磨法では、エッチング液に強酸のフッ酸を使用するため、エッチング中にマスキング層が侵食を受けたり、ガラス基板(LCD用ガラス基板など)から剥離する等の問題があった」ので、その問題を解決するため、ガラス基板の一方の面に、耐薬品性や密着性の大きい被覆層をガラス基板の表面に形成して保護しつつ、もう一方の面からエッチングして薄型化した後、該被覆層を剥離・除去する方法が示されている。エッチング中に一方の面を保護するためには、粘着力が充分に強い被覆層を用いる必要があるが、薄型化された基板等からかかる被覆層を剥離する場合、該ガラス基板にクラック等が発生する恐れがある。このため、特許文献1に示された方法は、薄型化された後のガラス基板等から、被覆層を剥離することが困難であるという問題があった。
【0004】
また、特許文献2には、金属、ガラス、セラミック、プラスチック等からなるプリント配線基板や、その他の結晶性脆性材料等からなる板状の基板等をエッチングする際に、非エッチング面に貼り合わされ、エッチング処理時のマスキングに用いられる、再剥離性粘着テープが開示されている。特許文献2に記載の発明は、粘着剤層を、親水性であるカルボキシル基を実質的に含有しない(メタ)アクリル系樹脂組成物で構成することで、酸やアルカリ等のエッチング液の浸入を抑制している。その結果、非エッチング面のエッチング液による侵食を抑制することができるとともに、エッチング終了後には粘着剤層が凝集破壊することなく且つ容易に剥離できるとしている。しかし、耐エッチング性が、「6インチのシリコンウエハのミラー面側に、25mm角の粘着テープのサンプルを貼り合わせ、1時間放置後に70℃の10wt%NaOH水溶液に浸漬した。20分浸漬してもエッチング液の浸入が確認されなかったものを◎、10分以上、20分未満の浸漬でエッチング液の浸入が確認されたものを○、10分未満の浸漬でエッチング液の浸入が確認されたものを×としてランク付けした。」としたものであり、ガラス基板を化学研磨するための、主成分としてフッ酸水溶液を含有するエッチング液に対する耐エッチング性としては、不充分なものであった。
【0005】
また、従来のタッチパネルの構造は、カバーガラスの下にITOガラス(フィルム)層が、2層に積層された構造であった。その後、構造の簡略化、薄膜化の流れで、使用するガラス基板を一枚とし、ガラス基板の両表面にタッチセンサー層を設けたOGS(one glass solution)構造のパネルの需要が、最近では増えている(例えば、非特許文献1〜2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−182586号公報
【特許文献2】特開2009−209223号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日本経済新聞、「ジャパンナノオプトがカバーガラス一体型のタッチパネルを開発」、[online]、2012年5月18日、インターネット<http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1703Y_X10C12A5000000/>
【非特許文献2】気になる、記になる、「次期iPad miniのディスプレイはタッチパネル・カバーガラス一体型技術を採用か?!」、[online]、2013年1月10日、インターネット<http://taisy0.com/2013/01/10/13280.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
OGSパネルの場合、大型サイズのガラス基板の両面にタッチセンサー層を設けた後、スマートフォンなどの小型パネルの大きさに裁断される。裁断されたガラス基板の端面のバリを取って平滑にするために、主成分がフッ酸であるエッチング液を用いて、化学研磨処理が施される。化学研磨処理の間、ガラス基板の両表面を保護するために、耐フッ酸保護シートが用いられる。しかし、従来の耐フッ酸保護シートでは、フッ酸の浸入を防げても、耐フッ酸保護シートを剥がした後に、粘着剤がパネル面を汚染する、いわゆる糊残りが発生するという問題があった。フッ酸の浸入を防ぐだけでなく、糊残りの発生しない、耐フッ酸保護シートが、これまで無かった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、エッチング液の浸入を防ぐだけでなく、被着体に糊残りの発生しない、化学研磨処理用表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、厚みが75μm以上の樹脂フィルムを基材とし、アルキル基の炭素数が、C1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、ヒドロキシル基含有ビニルモノマー及び窒素含有ビニルモノマーの少なくとも一種以上の共重合性ビニルモノマーと、を含むアクリル系共重合体を含有する粘着剤組成物で、粘着剤層を形成する。また、この粘着剤層が、カルボキシル基含有モノマーを含まず(カルボキシル基含有モノマーを含むのを回避し、粘着剤層が接するITO層を腐食するのを防ぐ)、さらに、シランカップリング剤を併用することで、撥水性を付加し、従来技術の課題を解決するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、樹脂フィルム基材の片面に、粘着剤層を有する化学研磨処理用表面保護フィルムであって、前記樹脂フィルム基材の厚みが75μm以上であり、前記粘着剤層が、(A)アルキル基の炭素数が、C1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、(B)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー及び窒素含有ビニルモノマーの群から選択した少なくとも一種以上の共重合性ビニルモノマーとを、カルボキシル基含有モノマーを含有させないで共重合させたアクリル系共重合体と、(C)シランカップリング剤と、(D)架橋剤とを含有してなる粘着剤組成物を用いて形成されてなり、前記シランカップリング剤が、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基からなる群から選択された少なくとも一種類の、有機官能基を有し、前記粘着剤層は、厚みが10〜35μmで積層されてなり、前記粘着剤層の厚みが20μmのときに、ガラス板に対する粘着力が0.1〜1.5N/25mmであることを特徴とする化学研磨処理用表面保護フィルムを提供する。
【0012】
前記粘着剤層が、(A)アルキル基の炭素数が、C1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも一種を80〜95重量部と、(B)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー及び窒素含有ビニルモノマーの群から選択した少なくとも一種類以上の共重合性ビニルモノマーを5〜20重量部と、を含むアクリル系共重合体100重量部と、(C)シランカップリング剤を0.01〜1重量部と、(D)架橋剤を0.01〜10重量部とを、含有してなる粘着剤組成物を用いて形成されてなることが好ましい。
【0013】
前記シランカップリング剤が、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基からなる群から選択された少なくとも一種類の、有機官能基を有することが好ましい。
【0014】
前記架橋剤が、イソシアネート化合物であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、前記化学研磨処理用表面保護フィルムを用いたタッチパネル用表面保護フィルムを提供する。
【0017】
また、本発明は、前記化学研磨処理用表面保護フィルムを用いた光学部材用表面保護フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フッ酸の浸入を防ぐだけでなく、糊残りなどの問題もない、化学研磨処理用表面保護フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ガラス板の端部からの、浸蝕性の試験方法を示した図である。
図2】実施例1及び比較例1の、浸蝕時間と浸蝕距離との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好適な実施形態に基づき、本発明を説明する。
本発明は、近年増加するタッチパネルの需要に伴い、タッチパネルの構造をより簡略化、薄膜化されたガラス一枚のパネル構造(OGS)を製造するための、化学研磨工程などで使用される粘着フィルムを提供する。本発明は、パネル端面などをフッ酸(硫酸などの強酸と混合する場合あり)で処理を行う化学研磨工程中に、パネルの表面(例えばITO表面)などを、エッチング液から保護するための保護シートとして用いることが可能な、粘着フィルムに関するものである。
従来の耐フッ酸保護シートは、フッ酸が浸透してきて十分にパネルの表面を保護できなかった。また、パネルの表面を保護できたとしても、化学研磨工程の終了後に剥がした際に、耐フッ酸保護シートの粘着剤がパネルを汚染するなどの現象があり、再剥離性が良くないため、十分に満足できる性能ではなかった。
【0021】
本発明の粘着フィルムは、樹脂フィルム基材の片面に粘着剤層が形成されている。そして、この粘着フィルムは、前記粘着剤層の厚みが10〜35μmで積層されてなり、前記粘着剤層の厚みが20μmのときに、ガラス板に対する粘着力が0.1〜1.5N/25mmであることを特徴とする。この粘着フィルムは、前記粘着フィルムを、ガラス板に前記粘着剤層を介して貼り合せた状態で、温度27℃、濃度が15%のフッ酸水溶液中に浸漬した後、被着体である前記ガラス板の被着面に、少なくとも150秒間以上に渡りフッ酸の浸透がないようにすることができる。
【0022】
本発明では、前記樹脂フィルム基材の厚みが75μm以上であり、(A)アルキル基の炭素数が、C1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、(B)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー及び窒素含有ビニルモノマーの群から選択した少なくとも一種以上の共重合性ビニルモノマーと、を含むアクリル系共重合体と、(C)シランカップリング剤と、(D)架橋剤とを含有する粘着剤組成物で粘着剤層を形成する。またこの粘着剤層が、カルボキシル基含有モノマーを含まず(カルボキシル基含有モノマーを含むことで、粘着剤層が接するITO層を腐食するのを防ぐことを目的とする)、さらに、撥水性を付加するため、シランカップリング剤を併用することが好ましい。
【0023】
本発明の粘着フィルムにおいて、粘着剤層を形成するために用いられる粘着剤組成物は、以下の配合割合で構成されることが好ましい。すなわち、(A)アルキル基の炭素数が、C1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも一種を80〜95重量部と、(B)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー及び窒素含有ビニルモノマーの群から選択した少なくとも一種類以上の共重合性ビニルモノマーを5〜20重量部と、を含むアクリル系共重合体100重量部と、(C)シランカップリング剤を0.01〜1重量部と、(D)架橋剤を0.01〜10重量部とを、含有してなる粘着剤組成物である。
【0024】
(A)アルキル基の炭素数が、C1〜C14のアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アクリル酸エステルモノマーのアルキル基は、直鎖、分枝状、環状のいずれでもよい。
【0025】
(B)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー及び窒素含有ビニルモノマーは、(A)アルキル基の炭素数が、C1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと共重合可能なモノマーから選択される。
(B)のヒドロキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルや、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0026】
(B)の窒素含有ビニルモノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリンなどの環状窒素ビニル化合物、N−エチル−N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキル置換アクリルアミド、N−エチル−N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−イソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアクリレート、N−エチル−N−メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−プロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキル置換アミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。(B)の窒素含有ビニルモノマーは、ヒドロキシル基を含有してもよい(例えば、上述した、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルアミドなど)が、その場合は、ヒドロキシル基含有ビニルモノマーに分類するものとする。
【0027】
(C)シランカップリング剤としては、1分子中に、少なくとも1つの有機官能基と、少なくとも1つの加水分解性基を有し、前記加水分解性基が、ケイ素原子に結合したアルコキシ基等である化合物が挙げられる。前記シランカップリング剤が、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基からなる群から選択された少なくとも一種類の、有機官能基を有することが好ましい。ここで、(メタ)アクリロキシ基とは、アクリロキシ基(CH=CHCOO−)、又は、メタクリロキシ基(CH=C(CH)COO−)を意味する。
【0028】
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルメチルジメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルメチルジエトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシランなどが挙げられる。
(メタ)アクリロキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシランなどが挙げられる。
メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(メチルアミノ)プロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
また、前記有機官能基を含み、オリゴマー化したアルコキシオリゴマー(シリコーンアルコキシオリゴマー)なども、シランカップリング剤として用いることができる。
【0029】
(D)架橋剤としては、2官能以上のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート化合物)、2官能以上のエポキシ系架橋剤、アルミニウムキレート系架橋剤からなる化合物群のうちから選択される1種以上の架橋剤であることが好ましい。架橋剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて併用してもよい。
イソシアネート化合物の架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のジイソシアネート類、前記ジイソシアネートのビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンや、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体などのポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0030】
前記粘着剤組成物は、さらにその他の成分として、酸化防止剤、帯電防止剤、などの公知の添加剤等を含むこともできる。これらは、単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。
【0031】
本発明の粘着フィルムは、前記粘着剤組成物からなる粘着剤層を、樹脂フィルム基材の片面に形成することで製造することができる。また、粘着剤層の粘着面を保護するため、離型フィルム(セパレーター)を積層することができる。
本発明の粘着フィルムに用いる樹脂フィルム基材としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステルフィルムなどの、各種の樹脂フィルムを用いることができる。樹脂フィルム基材としては、厚みが75μm以上のポリエステルフィルムであれば、フィルムの剛性が高くて変形し難いことから好ましい。樹脂フィルム基材の厚みが、75μmよりも薄いと、剛性が低くて変形し易く、その結果、粘着剤層を介して粘着フィルムを、被着体であるガラス板に貼り合わせた状態で、粘着剤層とガラス板との間に、フッ酸が浸透し易くなるので好ましくない。
【0032】
前記粘着剤層は、厚みが10〜35μmで積層されてなることが好ましい。また、前記粘着剤層の厚みが20μmのときに、前記ガラス板に対する粘着力が0.1〜1.5N/25mmであることが好ましい。樹脂フィルム基材の粘着力が、1.5N/25mmよりも大きいと、粘着剤層を介して粘着フィルムを、被着体であるガラス板に貼り合わせた後で、剥がすときに糊残りが生じ易くなるので好ましくない。また、樹脂フィルム基材の粘着力が、0.1N/25mmよりも小さいと、粘着剤層を介して粘着フィルムを、被着体であるガラス板に貼り合わせた状態で、粘着剤層とガラス板との間にフッ酸が浸透し易くなるので好ましくない。粘着剤層の厚みが20μmでないときに、前記ガラス板に対する粘着力の好ましい数値範囲は、粘着剤層の厚みが20μmのときと同様に、0.1〜1.5N/25mmであってもよく、あるいは、粘着剤層の厚みに応じて、0.1〜1.5N/25mmより大きい数値範囲、あるいは小さい数値範囲であってもよい。
【0033】
本発明の粘着フィルムは、被着体であるガラス基板、タッチパネルのITO面又はその反対側の面に貼り合せて、化学研磨液(エッチング液)から被着体を保護するために使用できる。この場合は、樹脂フィルム基材及び粘着剤層は、十分な透明性を有することが好ましい。タッチパネルは、ガラス基板等からなる基材の少なくとも片面に、ITO膜などの透明導電膜が形成されたタッチパネルであってもよい。本発明の表面保護フィルムとしては、前記ITO膜上の面又はその反対側の面に、前記粘着剤層を介して剥離可能に貼着することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例をもって、本発明を具体的に説明する。
【0035】
<アクリル系共重合体の製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に2−エチルヘキシルアクリレート95重量部、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート5重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を100重量部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で8時間反応させ、重量平均分子量50万の、実施例1のアクリル系共重合体溶液1を得た。
[実施例2〜6及び比較例1〜3]
単量体の組成を各々、表1の(A)、(B−1)、及び(B−2)の記載のようにする以外は、上記の実施例1に用いるアクリル系共重合体溶液1と同様にして、実施例2〜6及び比較例1〜3に用いるアクリル系共重合体溶液を得た。
【0036】
<粘着剤組成物及び粘着フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造したアクリル系共重合体溶液1(そのうちアクリル系共重合体が100重量部)に対して、架橋剤として、コロネートHLの3.0重量部と、シランカップリング剤として、KBE−403(3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)の0.02重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を、シリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる剥離フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、粘着剤層の厚みが20μmである粘着フィルムを得た。
その後、厚みが75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる樹脂フィルム基材の片面に、粘着フィルムを転写させ、「樹脂フィルム基材/粘着剤層/剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)」の積層構成を有する実施例1の粘着フィルムを得た。
[実施例2〜6及び比較例1〜3]
添加剤の組成を、各々、表1の(C)及び(D)の記載のようにし、また、樹脂フィルム基材の厚みを表2の記載のようにする以外は、上記の実施例1の粘着フィルムと同様にして、実施例2〜6及び比較例1〜3の粘着フィルムを得た。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表1において、各成分の配合比は、重量部の数値を括弧で囲んで示す。原則として、(A)と(B−1)と(B−2)のモノマーの重量部の合計(共重合体の重量部)が100重量部となるようにしたが、必ずしもそうしてはいない。モノマーの重量部の合計(共重合体の重量部)は、実施例6で93重量部、比較例1で101重量部、比較例2で91重量部、比較例3で105重量部である。
また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、次の表3に示す。なお、コロネート(登録商標)HX、同L−45は、日本ポリウレタン工業株式会社の商品名である。D−110Nは、三井化学株式会社の商品名である。KBE−403、KBM−5103、KBE−903、KBM−802、X−41−1810、X−41−1056は、信越化学工業株式会社の商品名である。
【0040】
【表3】
【0041】
(粘着力の測定方法)
実施例1〜6及び比較例1〜3における粘着フィルムを、ソーダライムガラスのアセトンで洗浄した非錫面に、圧着ロールで貼り合わせた。その後、50℃、0.5MPa×20分間オートクレーブ処理した後、23℃、50%RHの雰囲気下に戻し、1時間経過後の粘着フィルムを、引張試験機によって180°方向に300mm/minの速度で剥離した時の剥離強度を、粘着フィルムの粘着力とする。
【0042】
(汚染性の試験方法)
粘着力を測定した後の、被着体(ソーダライムガラス板)の表面を目視で確認し、粘着剤層に起因する汚染状態を判断する。汚染性は、被着体の汚染状態に応じて、次のような判定基準により、評価した。
・汚染性の評価(○):粘着剤層が、被着体を全く汚染していない。
・汚染性の評価(△):粘着剤層が、被着体を一部汚染している。
・汚染性の評価(×):粘着剤層が、被着体を汚染し、粘着剤層も移行している。
【0043】
(耐フッ酸浸透性の試験方法)
実施例1〜6及び比較例1〜3における粘着フィルムを、高さが4μmの段差の設けられたソーダライムガラス板の表面に、圧着ロールで貼り合せた後、温度27℃の濃度15%のフッ酸水溶液に150秒浸漬した後、よく水洗した。その後、粘着フィルムを剥がした後、粘着フィルムが貼り合わされていたガラス基板の被着面を目視で確認し、フッ酸の浸透によるソーダライムガラス板の、腐食の有無を確認する。耐フッ酸浸透性は、ガラス基板の腐食の有無及び程度に応じて、次のような判定基準により、評価した
・耐フッ酸浸透性の評価(○):ガラス基板の腐食が、全くない場合。
・耐フッ酸浸透性の評価(△):粘着フィルムが貼られていた場所にフッ酸が浸透し、ガラス基板の一部が腐食している場合。
・耐フッ酸浸透性の評価(×):粘着フィルムが貼られていた場所にフッ酸が浸透し、ガラス基板が腐食している場合。
【0044】
(ガラス板の端部からの、浸蝕性の試験方法)
厚みが0.4mmの、縦横の長さがそれぞれ10cmの四角形状をした、タッチパネルセンサー用のガラス板の両表面に、ITO膜を蒸着した。図1に示すように、10cm×10cmの寸法に裁断した実施例1の粘着フィルムを4枚作製し、そのガラス板1の一辺の先端から0.3mmの幅で、粘着フィルム4がはみ出すように、粘着フィルム4の粘着剤層3を介して、前記ガラス板1の両表面のITO膜5上に貼り合せて、実施例1の積層体を2つ作製した。これらの積層体を、温度27℃の濃度15%のフッ酸水溶液に、1つの積層体は5分間、もう1つの積層体は10分間浸漬した後、室温で5分間水洗した。その後、それぞれの積層体から、両面の粘着フィルムを剥離して、フッ酸が浸透することにより、ITO膜の表面が変色した範囲の、ガラス板の一端部からの最大距離を測定し、浸蝕距離とした。また、実施例1の粘着フィルムに代えて、比較例1の粘着フィルムを用いたこと以外は同様にして、比較例1の積層体を2つ作製し、浸蝕距離を測定した。その試験結果を表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
また、表4の試験結果により、浸蝕時間と浸蝕距離との関係を図2に示した。
図2により、実施例1の粘着フィルムを用いた場合には、温度27℃、濃度が15%のフッ酸水溶液中に浸漬した後、被着体であるガラス板の被着面の、前記粘着フィルムの貼り合わせ面の端部からの距離が80μm以上の部分に、少なくとも150秒間以上に渡りフッ酸の浸透がないことが確認できる。
【0047】
(ITOへの腐食性の試験方法)
ITOフィルムの表面に、粘着フィルムの粘着剤層を貼り合せ、85℃、90%RH×1000時間経過後の、ITOフィルムの表面抵抗率(SR1)を測定する。表面抵抗率(Ω/□)は、抵抗率計ハイレスタUP−HT450(三菱化学アナリテック製)を用いて測定した。粘着フィルムの粘着剤層を貼り合わせる前の、ITOフィルムの表面抵抗率を初期値(SR0)とし、表面抵抗率の変化率(%)を、「100×(SR1−SR0)/SR0」により算出する。ITOへの腐食性は、表面抵抗率の変化率に応じて、次のような判定基準により、評価した。
・腐食性の評価(○):表面抵抗率の変化率が、2%未満の場合。
・腐食性の評価(△):表面抵抗率の変化率が、2%以上5%未満の場合。
・腐食性の評価(×):表面抵抗率の変化率が、5%以上の場合。
【0048】
表2に示した試験結果によれば、実施例1〜6の粘着フィルムは、適度な粘着力を有し、汚染性、耐フッ酸浸透性、ITOへの腐食性のそれぞれにおいて、いずれも良好(○)と評価された。
比較例1の粘着フィルムは、粘着力が大きいため、汚染性がやや劣っていた。また、粘着剤層がシランカップリング剤を含まないため、撥水性が付加されておらず、耐フッ酸浸透性が劣っていた。
比較例2の粘着フィルムは、粘着力が大きいため、汚染性が劣っていた。また、粘着剤がカルボン酸を含むため、ITOへの腐食性が劣っていた。
比較例3の粘着フィルムは、粘着力が大きいため、汚染性が劣っていた。また、粘着剤層がシランカップリング剤を含まないため、撥水性が付加されておらず、耐フッ酸浸透性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、被着体であるガラス基板と粘着剤層との間に、化学研磨液の主成分であるフッ酸の浸透を防ぐだけでなく、糊残りの発生しない、粘着フィルム及び表面保護フィルムを提供することができるため、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0050】
1…ガラス板、2…樹脂フィルム基材、3…粘着剤層、4…粘着フィルム、5…ITO膜。
図1
図2