(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シリンジポンプを用いた計量装置では、当該シリンジポンプのピストンの移動量により液体を計量するものであり、正確に計量するためには、このピストンの移動量を高精度に制御する必要がある。加えて、シリンジポンプは液切れが悪く、正確に計量することが難しいという問題がある。
【0006】
また、液センサを用いる計量装置では、計量室に液体を注入する注入手段を液センサの検知信号で制御するため注入手段の応答遅れ等があったときには、正確に計量することができない場合があるという問題がある。またセンサは、液滴や気泡に反応して誤検知を起こす場合もあり、この場合も正確に計量を行うことができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、簡単な構成により正確に計量を行うことをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る液体計量装置は、液体用容器に収容された液体を一端から導入して、液体を計量するための計量用流路と、前記計量用流路の他端から漏れ出る液体を貯留し、この貯留された液体が再度流路に流入しないように前記計量用流路の他端が接続された貯留容器と、前記液体用容器に収容された液体を前記計量用流路の一端から導入して前記計量用流路に充満させるとともに、前記計量用流路に充満した液体を前記計量用流路の一端から導出するポンプ機構とを備え、前記計量用流路は、充満した液体が表面張力により保持される径を有することを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、計量用流路の一端から液体を導入するとともに、計量用流路の他端から液体を漏れ出させる(オーバーフロー)だけで液体を計量することができる。このため、ポンプ機構による駆動時間(吸引時間)を設定するだけでよく、簡単な装置構成で正確に計量することができる。また、シリンジポンプや液センサが不要となるので、複雑な制御を行う必要がなく、液切れの悪さ、応答遅れ、誤作動等による計量誤差を防ぐことができる。
さらに、計量用流路は、充満した液体が表面張力により保持される径を有するので、計量用流路の配置方向や形態に関わらず、液体を計量することができ、計量用流路を含む液体計量装置の設計の自由度を高めることができる。
【0010】
前記計量用流路の他端が、その軸方向が水平方向となるように前記貯留容器に連通することが望ましい。
計量用流路の他端開口が垂直方向となる場合、計量用流路の他端から表面張力によりはみ出た液体量が液体の粘性などによって変化しやすいので、計量用流路で計量される液体量が変化する恐れがある。
また、計量用流路の他端開口が垂直方向上向きの場合、設計によっては計量用流路の他端から漏れ出た液体が貯留容器の上面に付着し、この付着した液体が再度計量用流路の他端に滴下されて、計量用流路で計量される液体量が変化する恐れがある。
しかし、本発明の構成では、計量用流路の他端の開口方向が水平方向を向くので、計量用流路の他端の開口方向が垂直方向を向く場合と比べて、計量用流路で計量される液体量の誤差が減り、計量誤差を少なくしてより一層正確に計量することができる。
【0011】
また、本発明の液体計量装置は、一端が前記貯留容器に接続されるとともに他端が前記液体用容器に接続されて、前記貯留容器に貯留した液体を排出する排出用流路をさらに備え、前記ポンプ機構が、前記貯留容器に貯留された液体を、前記排出用流路を介して前記液体用容器に送液することが望ましい。
このような構成であれば、貯留容器内に貯留された液体を液体用容器に戻すことができるので、貯留容器に液体が溜まりすぎて、計量に不具合が生じることを防ぐとともに、その液体を無駄にすることもない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な構成により正確に計量を行うことができる液体計量装置及び水質分析装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明にかかる液体計量装置の一実施形態について説明する。
【0015】
本実施形態における液体計測装置1は、例えば上下水等の液体試料に含まれる所定の測定対象成分の濃度(例えば、全窒素濃度及び全リン濃度)を測定する水質分析装置等に用いられるものであって、例えば、測定に用いられる試薬を所定の量に計量するものである。
【0016】
具体的にこの液体計測装置1は、
図1〜
図3に示すように、液体を計量するための計量用流路2Lと、計量用流路2Lの他端から漏れ出る液体を貯留する貯留容器3と、貯留容器3内の圧力を変動させるポンプ機構4と、貯留容器3に貯留した液体を排出する排出用流路5Lと、ポンプ機構4等を制御する制御部6とを備える。
【0017】
計量用流路2Lは、内部に一定容積の流路を有する計量用管2を用いて構成されている。本実施形態の計量用管2は例えば樹脂等の可とう性を有する管であり、螺旋状に巻回されて配管スペースをコンパクトにしている。計量用流路2L(計量用管2)の一端は、三方電磁弁9に接続されるとともに、他端2aは貯留容器3の内部空間に接続されている。具体的に、計量用流路2Lの他端2aは、貯留容器3の側壁に挿入して接続されており、貯留容器3の内部空間に連通している。また、他端2aは、貯留容器3に貯留された液体が、再度計量用流路2Lに流入しないようにその接続位置が設定されている。さらに、他端2aはその軸方向が水平方向になるように挿入されており、つまり、他端2aの開口方向は水平方向を向いている。
【0018】
そして、計量用流路2Lの径は、充満した液体が表面張力により保持される径を有し、具体的には、充満した液体が大気開放状態において、表面張力によってその充満した状態を維持する径である。そのため、加圧もしくは吸引(圧力を変化)させなければ、計量用流路2Lに充満した液体は導出しない。例えば、計量用流路2Lは一端から他端2aに渡って一定の径を有し、その径を1mm以上3mm以下とすることが考えられる。
【0019】
三方電磁弁9は、制御部6によってその開閉を制御されるものであって、第1ポート9a、第2ポート9b、第3ポート9cを有する。
第1ポート9aには、液体用容器7からの液体を導入する導入管10の一端が接続される。なお、導入管10の他端は、液体用容器7に接続されている。第2ポート9bには、計量用流路2Lの一端が接続される。第3ポート9cには、計量用流路2Lで計量された液体を導出する導出管11の一端が接続される。なお、導出管11の他端は、試薬と液体試料とを反応させる反応用容器である測定セル8に接続される。この測定セル8は、光源及び光検出器を用いて吸光度等が測定される。
【0020】
貯留容器3は、内部に貯留空間3Sを有するものであって、計量用流路2Lの他端から漏れ出た(オーバーフローした)液体をこの貯留空間3Sに貯留するものである。この貯留空間3Sの下端部は、下方に向かって縮径するテーパ形状を有する。つまり、貯留容器3の底壁部には漏斗状の凹部が形成されている。そして、底壁部の凹部底面に液体用容器7に接続する排出用流路5Lが開口して連通している。また、上壁部には、ポンプ機構4が接続されている。
【0021】
ポンプ機構4は、貯留容器3の貯留空間3Sの空気を吸入して貯留空間3Sを負圧にし、又は、貯留空間3Sに空気を送り込み貯留空間3Sを正圧にするものであり、具体的には、ポンプ4aと、ポンプ4aと貯留容器3とを接続する接続配管4bとを有する。接続配管4bは、貯留容器3に対してポンプ4aの吸引及び吐出を切り替えるためのバルブ4cを用いた切り替え機構を有する。
【0022】
なお、本実施形態においてポンプ機構4は、接続配管4bに切り替え機構を備えることにより、ポンプ4aの吸引又は吐出を切り替えているが、ポンプ4a自体が空気を吸入する吸入モード及び空気を吐出する吐出モードを備えるものを用いてもよい。
【0023】
排出用流路5Lは、排出用管5を用いて構成されている。この排出用管5の一端は貯留容器3の底壁部に接続されて貯留空間3Sに連通するとともに、他端は液体用容器7に接続されている。そして、排出用管5は、貯留容器3の底壁部に接続されている上流側の排出用管51と、液体用容器7に接続されている下流側の排出用管52とを有している。具体的には、上流側の排出用管51と下流側の排出用管52とはその径が異なっており、上流側の排出用管51の径は、充満した液体が表面張力により保持される径を有し、1mm以上3mm以下であり、下流側の排出用管52の径は、3mm超5mm以下である。また、排出用管5の下流側の排出用管52にはピンチバルブ等の開閉弁5aが設けられている。なお、この開閉弁5aは、制御部6によって制御される。
【0024】
制御部6は、三方弁9、ポンプ4a及び開閉弁5aを制御するためのものであって、構造的には、CPU、内部メモリ、I/Oバッファ回路、ADコンバータ等を有した所謂コンピュータ回路である。そして、内部メモリの所定領域に格納したプログラムに従って動作することで情報処理を行い、三方弁9、ポンプ4a及び開閉弁5aを制御するものである。なお、この制御部6は、水質分析装置の制御装置により構成してもよい。
【0025】
具体的に、制御部6は予め処理動作にかかる時間を決定しておいて、この処理動作にかかる時間を内蔵されたクロックでカウントし、該処理動作にかかる時間が経過すると次の処理動作に移るように三方弁9、ポンプ4a及び開閉弁5aをシーケンス制御するものである。
【0026】
次に、制御部6の具体的な制御内容とともに、本実施形態における液体計量装置1の計量方法について説明する。
【0027】
まず、制御部6は、排出用流路5Lの開閉弁5aを閉じるとともに、三方弁9の第1ポート9aと第2ポート9bとを連通させる。これにより、導入管10と計量用流路2Lとが連通した状態となる。そして、この状態で貯留容器3内を負圧にするべく、ポンプ機構4を制御してポンプ4aを所定時間駆動させて空気吸入動作を行わせる。なお、この所定時間とは、計量用流路2Lが液体で充満して他端2aから液体が漏れ出るとともに、貯留空間3Sに貯留された液体の液面高さが計量用流路2Lの他端開口よりも下側の位置となる時間である。
【0028】
ポンプ機構4により貯留容器3内が負圧になると、液体用容器7に収容されていた液体(試薬)が、導入管10、第1ポート9a及び第2ポート9bを介して計量用流路2Lの一端から導入される。この試薬は、計量用流路2Lの他端2aから貯留容器3に漏れ出るまで導入され、計量用流路2Lに試薬が充満することで試薬が計量される。
【0029】
次に、制御部6は、排出用流路5Lの開閉弁5aを開けるとともに、三方弁9の第2ポート9bと第3ポート9cとを連通させる。これにより、計量用流路2Lと導出管11とが連通した状態となる。なお、この状態だけでは、液体は計量用流路2Lから導出管11には流れない。そして、この状態で、貯留容器3内を正圧にするべく、ポンプ機構4を制御してポンプ4aを所定時間駆動させて空気送出(吐出)動作を行わせる。なお、この所定時間とは、計量用流路2Lに充満した液体が導出流路11を介して全て測定セル8に送液される程度の時間である。
【0030】
このポンプ機構4の状態を切り替える間、計量用流路2L内に充満した試薬は表面張力によって流路内に充満した状態を維持しており、計量用流路2Lから液体が流出することはない。
【0031】
そして、ポンプ機構4により貯留容器3内が正圧になると、計量用流路2Lに充満することで計量された試薬が、計量用流路2Lの一端から導出されて、第2ポート9b、第3ポート9c及び導出管11を介して測定セル8に注入される。
【0032】
このとき、計量用流路2Lから漏出して貯留容器3に貯留された試薬は、排出用流路5Lを介して液体用容器7に圧送されて送液される。
【0033】
以上のように構成した本実施形態の液体計測装置によれば、以下のような効果を有する。
【0034】
つまり、このような構成によって、計量用流路2Lの一端から液体を導入するとともに、計量用流路2Lの他端2aから液体を漏れ出させる(オーバーフロー)だけで液体を計量することができる。このため、ポンプ機構4による駆動時間(吸引時間)を設定するだけでよく、簡単な装置構成で正確に計量することができる。また、シリンジポンプや液センサが不要となるので、複雑な制御を行う必要がなく、液切れの悪さ、応答遅れ、誤作動等による計量誤差を防ぐことができる。
さらに、計量用流路2Lは、充満した液体が表面張力により保持される径を有するので、計量用流路2Lの配置方向や形態に関わらず、液体を計量することができ、計量用流路2Lを含む液体計量装置1の設計の自由度を高めることができる。
【0035】
また、計量用流路2Lから計量した液体をポンプ機構4によって圧送して送液し、測定セル8に導出するので、計量用流路2Lの軸方向や形態に限られず、計量した液体を測定セル8に導出することができる。そのため、計量用流路2Lの設計自由度が増し、本実施形態のように螺旋形状をなすものであっても使用することができるとともに、装置構成をコンパクトにすることができる。さらに本実施形態では、1つの三方弁9を用いるだけで計量装置を構成することができるので、複数の弁を用いる必要がなく、設計の自由度をさらに増やすことができる。
【0036】
また、計量用流路2Lの他端2aの開口方向が水平方向を向くので、計量用流路2Lの他端2aの開口方向が垂直方向を向く場合と比べて、計量用流路2Lの他端開口に表面張力によって溜まる液体量が少なくなるので、計量誤差を少なくしてより一層正確に計量することができる。
【0037】
さらに、貯留容器3内に貯留された液体を液体用容器7に戻すことができるので、貯留容器3に液体がたまりすぎて、計量に不具合が生じることを防ぐとともに、その液体を無駄にすることもない。
【0038】
加えて、貯留空間3Sの下端部が、底に向かって縮径するテーパ形状を有するので、排出用流路5Lへ試薬を容易に排出することができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではない。
【0040】
上記実施形態では、計量用流路の他端は貯留容器の側壁に挿入されるものであったが、例えばこの他端は、貯留容器の上壁や底壁に挿入されるものであってもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、計量用流路の他端開口はその開口方向が水平方向を向くものであったが、水平方向以外の方向を向くものであってもよい。
【0042】
上記実施形態では、貯留容器内を負圧にして計量用流路に液体を充満させているが、例えば液体用容器にポンプを設けて、このポンプで液体用容器内を正圧にして計量用流路内に液体を圧送して充満させるように構成してもよい。
【0043】
同様に、上記実施形態では、貯留容器内を正圧にして、計量用流路に充満した液体を測定セルに導出しているが、例えば測定セルにポンプを設けて、このポンプで測定セル内を負圧にして計量用流路内充満した液体を導出するように構成してもよい。
【0044】
ポンプと接続された接続配管は貯留容器の上壁部だけではなく、貯留容器内に貯留された試薬の液面よりも上方であれば、どこでも配置することができる。
【0045】
上記実施形態では、水質分析装置において測定試料に添加する試薬を計量するものであったが、測定試料を計量するものであってもよい。その他、水質分析装置以外の液体計量を必要とする分析装置に用いられるものであってもよい。
【0046】
本発明は、その趣旨に反しない範囲で様々な変形が可能である。