(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
≪絶縁部形成用感光性樹脂組成物≫
絶縁部形成用感光性樹脂組成物(以下、感光性樹脂組成物とも記す。)は、基材上の同一面内に、第1電極と第2電極とが、交互且つマトリックス状に形成されており、行方向に配列した複数の第1電極が第1導通部で行方向に連結されており、列方向に配列した複数の第2電極が第2導通部で列方向に連結されており、第1導通部が基材表面に接しており、第1導通部と第2導通部とが交差している静電容量式タッチパネルにおいて、第1導通部と第2導通部との間に設けられ、且つ第1導通部と第2導通部とを絶縁する絶縁部を形成するために用いられる。
【0021】
感光性樹脂組成物は、前述の式(1)で表される単位と、前述の式(2)で表される単位と、を含む共重合体と、感光剤と、溶剤とを含む。この感光性樹脂組成物を基材上に塗布した後、塗布膜を露光、現像して形成される絶縁部は柱状であるが、例えば、150℃以下の低温で熱処理する場合でも、略半球状の形状に容易に変形する。また、この感光性樹脂組成物を用いることで、耐薬品性や基材への密着性に優れる絶縁部を形成することができる。
【0022】
以下、感光性樹脂組成物に含まれる各成分について、順に説明する。
【0023】
<共重合体>
感光性樹脂組成物は、以下の式(1)で表される単位と、式(2)で表される単位とからなる共重合体を樹脂として含有する。共重合体は、式(1)で表される単位と、式(2)で表される単位とを、それぞれ1種又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【化3】
【0024】
式(1)及び式(2)中、R
0はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R
1は単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、R
2は、炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、R
3は、熱架橋性を有する1価の有機基を表し、aは1〜5の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、a+bは5以下である。
【0025】
式(1)で表される単位において、R
0はメチル基であるのが好ましい。
【0026】
R
1は、単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基を表す。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、及びネオペンチレン基等が挙げられる。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基が好ましい。
【0027】
式(1)で表される単位が有するベンゼン環には、少なくとも1つの水酸基が結合している。水酸基の結合数を示すaは、1〜5の整数であり、1がより好ましい。式(1)で表される単位は、−O−R
1−で表される2価基がベンゼン環と結合する位置を1位とする場合に、ベンゼン環上の4位に水酸基を有するのが好ましい。
【0028】
式(1)で表される単位が有するベンゼン環には、R
2として、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が結合していてもよい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、及びネオペンチル基等が挙げられる。R2としては、メチル基、又はエチル基が好ましい。bは0〜4の整数を表し、0がより好ましい。
【0029】
式(1)で表される単位としては、以下の式(a1−1)又は式(a1−2)で表される単位が好ましい。
【化4】
【0030】
式(2)で表される単位において、R
0は、式(1)で表される単位において説明したR
0と同様である。式(2)で表される単位は、R
3として、熱架橋性を有する1価の有機基を有する。熱架橋性基は、熱を加えることにより、架橋する基のことをいう。熱架橋性基としては、エポキシ基、オキセタニル基のいずれかを含む有機基が好ましい。これらの中でも、反応性の点から、R
3としては、エポキシ基を有する有機基が好ましい。共重合体は、式(2)で表される単位を、1種又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0031】
式(2)で表される単位としては、下記の式(a1−3)〜(a1−16)で表される単位が好ましい。
【0034】
上記式(a1−3)〜(a1−16)において、R
0については式(1)及び式(2)と同様である。R
4は、式(1)中のR
1と同様である。R
5は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜20のアルキレン基を表す。R
6は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。R
7は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表す。wは0〜10の整数を表す。
【0035】
上記式(a1−3)〜(a1−16)で表される単位の中では、式(a1−3)で表される単位、式(a1−4)で表される単位、及び式(a1−5)で表される単位が好ましい。式(a1−3)で表される単位、及び式(a1−4)で表される単位の中では、R
0がメチル基である単位が好ましい。式(a1−5)で表される単位の中では、R
0がメチル基であり、R
4がメチレン基である単位が好ましい。
【0036】
共重合体は、上記式(1)で表される単位、及び式(2)で表される単位のみからなるものが好ましいが、式(1)で表される単位、及び式(2)で表される単位の他に、下式(3)で表される単位を含んでいてもよい。
【化7】
【0037】
式(3)中、R
0は、水素原子又はメチル基を表し、R
8は、炭素数1〜5のアルキル基を示し、cは0〜5の整数を示す。なお、繰返しにおける複数のR
0同士及びR
8同士は、互いに異なっていてもよい。
式(3)において、R
0は、式(1)で表される単位において説明したR
0と同様である。R
8は、式(1)で表される単位において説明したR
2と同様である。cは0〜5の整数を表し、0であるのがより好ましい。共重合体が、式(3)で表され、cが0である単位を含む場合、感光性樹脂組成物を用いて、耐熱性に優れる絶縁部を形成することができる。
【0038】
また、共重合体中の式(3)で表される単位の含有量を適宜調整することで、感光性樹脂組成物を用いて形成される絶縁部のガラス転移温度や耐熱性、感光性樹脂組成物のアルカリ溶解速度等を、容易にコントロールできる。
【0039】
共重合体中の、式(1)で表される繰返し単位の含有量は、20モル%〜80モル%であることが好ましい。このような範囲内の量の式(1)で表される繰り返し単位を含む共重合体を用いることで、現像時のアルカリ可溶性が良好な感光性樹脂組成物を得やすい。
【0040】
共重合体中の、式(2)で表される繰返し単位の含有量は、80モル%〜20モル%であることが好ましい。このような範囲内の量の式(2)で表される繰り返し単位を含む共重合体を用いることで、感光性樹脂組成物を用いて形成される絶縁部の、加熱による透過率の低下と、露光された感光性樹脂組成物の塗布膜を現像する際の残渣の発生とを抑制することができる。
【0041】
共重合体が式(3)で表される繰返し単位を含有する場合は、共重合体中の式(3)で表される繰り返し単位の含有量は、1モル%〜20モル%であることが好ましい。このような範囲内の量の式(3)で表される繰り返し単位を含む共重合体を用いることで、耐熱性に優れる絶縁部を形成できる感光性樹脂組成物を調製できる。
【0042】
以上説明した共重合体は、ランダム重合体であっても、ブロック重合体であってもよい。
【0043】
共重合体の質量平均分子量(Mw:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算による測定値)は、1000〜20000が好ましく、1500〜15000がより好ましい。このような範囲内の分子量の共重合体を用いることで、所望する形状の絶縁部を形成でき、現像性に優れる感光性樹脂組成物を得やすい。
【0044】
感光性樹脂組成物は、以上説明した式(1)で表される単位と、式(2)で表される単位とを含む共重合体の他に、アクリル樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ノボラック樹脂等のアルカリ可溶性樹脂を含んでいてもよい。この場合、式(1)で表される単位と、式(2)で表される単位とを含む共重合体の他の樹脂の含有量は、感光性樹脂組成物中の樹脂成分の全質量に対して、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましく、0質量%が最も好ましい。
【0045】
感光性樹脂組成物中の以上説明した共重合体の含有量は、感光性樹脂組成物100質量部に対して、5〜30質量部が好ましく、10〜20質量部がより好ましい。
【0046】
<感光剤>
感光剤は、紫外線等の照射によって前述の共重合体のアルカリ溶液(例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液)に対する溶解性を高めるものである。感光剤は、キノンジアジド基を有する感光剤(キノンジアジド基含有化合物)が好ましい。
【0047】
キノンジアジド基含有化合物としては、フェノール化合物と、ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物との完全エステル化物や部分エステル化物が挙げられる。
【0048】
前述のフェノール化合物としては、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン化合物;
トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン等のトリスフェノール型化合物;
2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−5−ヒドロキシフェノール、2,6−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール等のリニア型3核体フェノール化合物;
1,1−ビス[3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル]イソプロパン、ビス[2,5−ジメチル−3−(4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン、ビス[2,5−ジメチル−3−(4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−エチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−エチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2,5−ジメチル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン等のリニア型4核体フェノール化合物;
2,4−ビス[2−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−6−シクロヘキシルフェノール、2,4−ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−6−シクロヘキシルフェノール、2,6−ビス[2,5−ジメチル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシベンジル]−4−メチルフェノール等のリニア型5核体フェノール化合物等のリニア型ポリフェノール化合物;
ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、2,3,4−トリヒドロキシフェニル−4’−ヒドロキシフェニルメタン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3’−フルオロ−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)プロパン等のビスフェノール化合物;
1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1−[1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン等の多核枝分かれ型化合物;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等の縮合型フェノール化合物;が挙げられる。
【0049】
これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0050】
また、前述のナフトキノンジアジドスルホン酸化合物としては、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸又はナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸等が挙げられる。
【0051】
また、他のキノンジアジド基含有化合物、例えばオルトベンゾキノンジアジド、オルトナフトキノンジアジド、オルトアントラキノンジアジド又はオルトナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類等のこれらの核置換誘導体、さらにはオルトキノンジアジドスルホニルクロリドと水酸基又はアミノ基をもつ化合物、例えばフェノール、p−メトキシフェノール、ジメチルフェノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ナフトール、ピロカテコール、ピロガロール、ピロガロールモノメチルエーテル、ピロガロール−1,3−ジメチルエーテル、没食子酸、水酸基を一部残してエステル化又はエーテル化された没食子酸、アニリン、p−アミノジフェニルアミン等との反応生成物等も用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせてもよい。
【0052】
これらのキノンジアジド基含有化合物は、例えば前述のポリヒドロキシベンゾフェノンと、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド又はナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリドとをジオキサン等の適当な溶剤中において、トリエタノールアミン、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリ等のアルカリの存在下において縮合させ、完全エステル化又は部分エステル化することにより製造することができる。
【0053】
感光剤の使用量は、感光性樹脂組成物の固形分100質量部に対して10〜30質量部が好ましい。このような範囲内の量の感光剤を用いることで、パターンを良好に形成しつつ、現像時の残渣の発生を抑制できる。
【0054】
<溶剤>
感光性樹脂組成物は、塗布性の改善、粘度調整のために、溶剤を含有している。溶剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、通常有機溶剤が使用される。
【0055】
有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族化合物;メチルエチルケトン、アセトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノン等のケトン;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及びグリセリン等の脂肪族アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、及びジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール類のモノアルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール類のジアルキルエーテル;3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、及びプロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート等のグリコール類のモノアルキルエーテルモノアシレート:炭酸メチル、炭酸エチル、炭酸プロピル、及び炭酸ブチル等の炭酸ジアルキルが挙げられる。上記の溶剤は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
以上説明した有機溶剤は、ケトンを含むのが好ましく、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、及び4−ヘプタノンからなる群より選択される1種以上のケトンを含むのがより好ましい。感光性樹脂に含まれる溶剤が、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、及び4−ヘプタノンのようなケトンを含有する場合、感光性樹脂組成物を基材に塗布する際、特にロールコーターを用いて基材上に塗布膜を形成する際に、感光性樹脂組成物の塗布直後に塗布膜中に発生した気泡が速やかに消失する。
【0057】
感光性樹脂組成物が溶剤としてケトンを含有する場合、ケトンの含有量は、溶剤100質量部に対して、5〜50質量部が好ましく、10〜25質量部がより好ましい。感光性樹脂組成物中の溶剤がこのような量のケトンを含む場合、塗布性、安定性、及び消泡性に優れ、透明性に優れる絶縁部を与える感光性樹脂組成物を得やすい。溶剤がケトンを含有する場合、感光性樹脂組成物の塗布性及び安定性や、感光性樹脂組成物を用いて形成される絶縁部の透明性が特に優れることから、溶剤がケトンとともにPGMEAを含有するのが好ましい。
【0058】
溶剤の使用量は特に限定されず、感光性樹脂組成物が基材に塗布可能な濃度であるように、塗布膜の膜厚に応じて適宜調整される。感光性樹脂組成物の固形分濃度は、10〜50質量%が好ましく、15〜35質量%がより好ましい。
【0059】
<その他の成分>
感光性樹脂組成物は、塗布性の点から、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、従来公知のものを使用できる。好適な界面活性剤の例としては、フッ素−シリコーン系、シリコーン系の化合物が挙げられる。具体的には、XR−104(大日本インキ化学工業株式会社製)、BYK−310(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。界面活性剤の使用量は、全固形分の質量に対して400質量ppm以下であるのが好ましい。
【0060】
また、感光性樹脂組成物には、増感剤、消泡剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。しかし、感光性樹脂組成物が消泡剤を含む場合、実用上必ずしも問題となるレベルではないが、感光性樹脂組成物を用いて形成される絶縁部の、ベーク時の消泡剤の分解等に起因すると考えられる透過率の低下や、架橋反応の阻害に起因すると考えられる耐薬品性の低下が生じる場合がある。このため、感光性樹脂組成物は、消泡剤を含まないのがより好ましい。増感剤としては、例えば分子量1000以下のフェノール性水酸基を有する化合物等が挙げられる。消泡剤としては、従来公知のものであってよく、シリコーン系、フッ素系化合物が挙げられる。
【0061】
感光性樹脂組成物には、熱架橋剤を含んでいてもよいが、熱架橋剤を含まないのが好ましい。熱架橋剤は最終的に形成される絶縁部の透明性を低下させる可能性があるためである。
【0062】
<感光性樹脂組成物の調製方法>
感光性樹脂組成物は、以上説明した各成分を所定量混合した後、混合物を3本ロールミル、ボールミル、サンドミル等の攪拌機を用いて均一に混合して調製される。感光性樹脂組成物は、微小な異物を除くために、必要に応じて、孔径5μm程度のメンブランフィルターでろ過されてもよい。
【0063】
≪パターン化された絶縁部を備える基材の製造方法≫
以下、パターン化された絶縁部を備える基材の製造方法について、
図1〜
図6を参照して説明する。
図1は、基材10上の、第1電極11と、第2電極12と、第1導通部13とを備える面の一部を示す図である。パターン化された絶縁部15は、第1電極11、第2電極12及び第1導通部13を備える基材10の表面に形成される。
図1に示される基材10の表面では、同一面内に、第1電極11と第2電極12とが、交互且つマトリックス状に形成されている。行方向に配列される複数の第1電極11は、第1導通部13で行方向に連結されている。第1導通部13は、基材10表面に接しつつ第1電極11を連結している。
【0064】
基材10の材質は、十分な透明性を有し、その表面に、第1電極11、第2電極12、及び第1導通部13を形成可能なものであれば特に限定されない。基材10の材質の好適な例としては、ガラスや、PET(ポリエチレンテレフタレート)のような透明な樹脂等が挙げられる。また、第1電極11、第2電極12、及び第1導通部13の材質は、透明な導電性膜を形成可能な材質であれば特に限定されない。第1電極11、及び第2電極12の材質の好適な例としては、ITO(インジウム錫酸化物)、酸化亜鉛、酸化インジウム、アンチモン添加酸化スズ、アルミニウム添加酸化亜鉛等の種々の金属酸化物が挙げられる。これらの金属酸化物の中では、低抵抗である点からITOが好ましい。第1導通部13も、第1電極11、及び第2電極12と同様の材料を用いて形成される
【0065】
以上説明した基材と、第1電極11、及び第2電極12との組み合わせとしては、軽量であり割れにくく、電気的性能に優れるタッチパネルを製造できることから、PETからなる基材と、ITOからなる第1電極11、及び第2電極12との組み合わせが好ましい。
【0066】
パターン化された絶縁部を備える基材の製造方法は、以下の工程を含む。以下、下記の工程について順に説明する。
・前述の感光性樹脂組成物を、第1電極11、第2電極12、及び第1導通部13を被覆するように基材10上の表面に塗布して、塗布膜14を形成する工程(塗布工程)
・基材10上に形成された塗布膜14のうち、第1導通部13を被覆する箇所以外の箇所を位置選択的に露光する工程(露光工程)
・露光された塗布膜14を現像して、露光部を除去して、パターン化された絶縁部15を形成する工程(現像工程)
・パターン化された絶縁部15を備える基材10をベークする工程(ベーク工程)
【0067】
<塗布工程>
塗布工程では、
図2に示されるように、第1電極11、第2電極12、及び第1導通部13を被覆するように基材10の表面に、前述の感光性樹脂組成物を塗布して、塗布膜14を形成する。塗布膜14の形成方法は特に限定されず、ロールコーターやスピナーを用いる方法のような周知の方法を塗布膜14の形成方法として採用できる。塗布膜14の形成方法としては、塗布膜14を備える基材10のスループットに優れることから、ロールコーターを用いる方法が好ましい。
【0068】
塗布膜14の膜厚は特に限定されず、1.0〜2.0μm程度が好ましい。塗布膜14は、必要に応じて乾燥される。乾燥方法は特に限定されず、例えば(i)ホットプレートを用いて80℃〜120℃の温度において60秒〜120秒間乾燥する方法、(ii)室温において数時間〜数日間放置する方法、(iii)温風ヒーターや赤外線ヒーター中に数十分〜数時間入れて溶剤を除去する方法、のいずれでもよい
【0069】
<露光工程>
塗布工程で形成された塗布膜14を、所望するパターンの絶縁部15が形成されるようにポジ型のマスクを介して露光する。塗布膜14を露光する際、紫外線、エキシマレーザー光等の活性化エネルギー線を照射する。照射エネルギー線量は、感光性樹脂組成物の組成によっても異なるが、例えば30〜2000mJ/cm
2程度が好ましい。
【0070】
<現像工程>
塗布膜14を露光した後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液のような有機アルカリ水溶液や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、メタケイ酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウム等の無機アルカリ水溶液を用いて、露光された塗布膜14を現像処理する。そうすることで、露光された部分が溶解除去され、
図3に示されるように、基材10上に、第1導通部13を被覆するようにパターン化された絶縁部15を形成させる。
【0071】
<ベーク工程>
図4は、ベーク工程前のパターン化された絶縁部15を備える基材10の、
図3に示されるA−A’方向の断面図である。また、
図5はベーク工程後のパターン化された絶縁部15を備える基材10の、
図3に示されるA−A’方向の断面図である。
【0072】
ベーク工程では、現像工程で形成されたパターン化された絶縁部15を備える基材10をベークすることにより、絶縁部15の断面形状を、
図4に示されるような矩形から、
図5に示されるような略半円形状に変換する。つまり、ベーク工程によって、絶縁部15の形状は、頂部が丸まった略半球状の形状に変化する。
【0073】
基材10上にパターン化された絶縁部15が形成された後には、絶縁部15の表面に沿って、第2電極12間を連結する第2導通部16が形成される。絶縁部15の表面に鋭い稜線が存在すると、第2導通部16と稜線とが接触する部分において、第2導通部16が断線する恐れがある。しかし、前述のように、絶縁部15の形状が略半球状であると、第2導通部16形成後の、第2導通部16の断線を顕著に抑制することができる。
【0074】
基材10の面方向に対して垂直方向の絶縁部15の断面において、絶縁部15の表面と、基材10の表面とがなす角のうち、鋭角である角の角度が45℃以下であるのが好ましく、30℃以下であるのがより好ましい。絶縁部15を、このような形状であるように形成することで、第2導通部16の断線をより抑制しやすい。
【0075】
基材10をベークする温度は、基材10が過度に軟化したり、熱変形したりしない温度であれば特に限定されない。PET等の樹脂製の基材10にも適用可能であることや、ベーク工程でのエネルギーの消費量の低減の観点でベーク温度は、150℃以下が好ましい。前述の感光性樹脂組成物を用いる場合、150℃以下のベークであっても短時間で、絶縁部15を所望する形状に変形させることができる。また、絶縁部15を短時間で十分に変形させる観点から、ベーク温度は120℃以上が好ましい。
【0076】
上記の通り、第1導通部13と、第2導通部16との間を絶縁するためのパターン化された絶縁部15を基材10上に形成した後、
図6に示されるように、絶縁部15の表面に沿って第2導通部16を形成して、第2電極12を列方向に連結する。第2導通部16を形成する方法は特に限定されず、第2導通部16は周知の方法に従って形成することができる。
【0077】
以上説明したように、前述の感光性樹脂組成物を用いることで、第2導通部の断線を抑制できる、稜線を持たず、なめらかな表面を有するパターン化された絶縁部を、150℃以下のような低い温度での熱処理(ベーク)によって形成することができる。このようにして形成された、所定の構成静電容量式のタッチパネルとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0078】
〔実施例1〜10〕
実施例1〜10では、以下に説明する、共重合体、感光剤、溶剤を均一に混合して、感光性樹脂組成物を調製した。
【0079】
<共重合体>
実施例1〜10では、下式A−1、A−2、及びA−3で表される単位を、下表1に示されるモル比率で含む共重合体100質量部を用いた。実施例1〜10で用いた各共重合体の質量平均分子量(Mw)は、いずれも8,000であった。
【化8】
【0080】
【表1】
【0081】
<感光剤>
実施例1〜10では、感光剤として、下式で表される化合物が有する水酸基中の水素原子が、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基で置換された置換体30質量部を用いた。感光剤が有する水酸基中の水素原子の1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基による置換率は、98.7モル%であった。
【化9】
【0082】
<溶剤>
実施例1〜10では、下表2に記載の種類の溶剤440質量部を用いた。なお、表2中のPGMEAは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを意味する。
【0083】
【表2】
【0084】
以上の成分を混合して得られた実施例1〜10の感光性樹脂組成物について、以下の方法に従って、形成される絶縁部の熱フロー性、耐薬品性、及び基材への密着性、並びに消泡性を評価した。これらの評価結果を表3に記す。
【0085】
<熱フロー性評価>
8インチのSiウエハ上に、スピナー(SC−W80A−AV、大日本スクリーン製造株式会社製)を用いて感光性樹脂組成物を塗布した。次いで、ウエハを、ダイレクトホットプレートを用いて、90℃で90秒間加熱し、膜厚1.5μmの塗布膜を形成した。形成された塗布膜に対して、2μm/0.3μmのドットアンドスペースパターン形成用のテストチャートマスク(レチクル)を介して、i線露光機(NSR2205 i14E、株式会社ニコン製)を用いて、2μm/0.3μmのドットアンドスペースパターンを寸法通りに再現できる露光量で露光を行った。次いで、23℃のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの濃度1.2質量%の水溶液を現像液として用いて、露光後の塗布膜を、65秒間現像した。現像後、ウエハの表面を30秒間水洗した後、ウエハをスピン乾燥させた。その後、乾燥されたウエハに対して、ダイレクトホットプレートを用いて、150℃、300秒間のポストベークを行った。ポストベーク後のウエハ上のドットの断面形状をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、ウエハ表面と、ドットの表面とがなす角のうち鋭角である角の角度(テーパー角)を測定した。測定されたテーパー角に基づいて、以下の基準に従って熱フロー性を評価した。テーパー角が小さい場合、熱処理によりドットが十分に変形している。
◎:テーパー角が30°以下
○:テーパー角が30°超45°以下
×:テーパー角が45°超
【0086】
<耐薬品性評価>
8インチのSiウエハ上に、スピナー(SC−W80A−AV、大日本スクリーン製造株式会社製)を用いて感光性樹脂組成物を塗布した。次いで、ウエハを、ダイレクトホットプレートを用いて、90℃で90秒間加熱し、膜厚1.5μmの塗布膜を形成した。形成された塗布膜に対いて、HMW−532D(ORC社製)を用いて500mJのブリーチング処理を行った。その後、塗布膜に対して、ダイレクトホットプレートを用いて、150℃、300秒間のポストベークを行った。ポストベークされた塗布膜を備えるウエハを、PGMEA、アセトン、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、及びNMD−3(テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの濃度2.38質量%の水溶液、東京応化工業株式会社製)に10分間浸漬し、浸漬前の膜厚(T
0)に対する浸漬後の膜厚(T
1)の変化率を、下式に従って求めた。
膜厚の変化率(%)=|1−T
1/T
0|×100
膜厚の変化率に基づいて、感光性樹脂組成物を用いて形成される絶縁部の、4種の試験液に対する耐性を、以下の基準に従って評価した。4種の試験液を用いた試験の評価結果のうち、最も悪い評価結果を、耐薬品性の評価結果とした。
◎:膜厚変化率0%
○:膜厚変化率0%超10%未満
△:膜厚変化率10%以上100%未満
×:膜厚変化率100%以上
【0087】
<基材への密着性評価>
感光性樹脂組成物を用いて形成される絶縁部の基材への密着性をクロスハッチ試験によって評価した。
ITO基板及びPETフィルム上にそれぞれ感光性樹脂組成物を塗布し、ダイレクトホットプレートを用いて、90℃で90秒間加熱し、膜厚1.5μmの塗布膜を形成した。形成された塗布膜に対して、HMW−532D(ORC社製)を用いて500mJのブリーチング処理を行った。その後、塗布膜に対して、ダイレクトホットプレートを用いて、150℃、300秒間のポストベークを行った。
カッターナイフを用いて、ポストベーク後の塗布膜に1mm×1mmのクロスハッチ(升目)を100個形成し、その上にセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り、それを剥がした。以下の基準で密着性を評価した。
◎:剥がれた升目の数が0
○:剥がれた升目の数が1〜10
△:剥がれた升目の数が11〜50
×:剥がれた升目の数が51〜100
【0088】
<消泡性試験>
容量10mLのスクリューバイアル管に、感光性樹脂組成物の試料5mLを加えた後、試料中の気泡が完全に消失するまでスクリューバイアル管を静置した。次いで、スクリューバイアル管を、30cmの区間を20秒かけて上下に往復させる操作を60回繰り返して、スクリューバイアル管内の感光性樹脂組成物を発泡させた。その後、スクリューバイアル管を静置し、完全に泡が消失するまでの時間を計測した。測定された消泡に要する時間に基づいて、以下の基準で、感光性樹脂組成物の消泡性を評価した。
◎:3分以内の時間で完全に消泡
○:3分超4分以内の時間で完全に消泡
△:4分超5分以内の時間で完全に消泡
×:5分超の時間で完全に消泡
【0089】
【表3】
【0090】
実施例1〜10によれば、式(1)で表される単位と、式(2)で表される単位とを含む共重合体と、感光剤と、溶剤とをも含む感光性樹脂組成物を用いることで、150℃以下の低温での熱処理でも所望する形状に良好に変形し、耐薬品性や、ITOやPET等に対する密着性に優れる絶縁部を形成できることが分かる。また、実施例1〜7と、実施例8〜10との比較から、感光性樹脂組成物が、溶剤としてシクロヘキサノンや2−ヘプタノン等のケトンを含有する場合、消泡性に優れる感光性樹脂組成物が得られることが分かる。
【0091】
〔比較例1及び2〕
比較例1及び2では、以下に説明する、共重合体、感光剤、溶剤を均一に混合して、感光性樹脂組成物を調製した。
【0092】
<共重合体>
比較例1及び2では、m−クレゾール35モル%、及びp−クレゾール65モル%とからなる混合物を、シュウ酸とホルムアルデヒドとを用いて縮合させたクレゾールノボラック樹脂100質量部を共重合体として用いた。クレゾールノボラック樹脂のフェノール類の2核体の含有量は約6質量%であった。
【0093】
<感光剤>
比較例1及び2では、実施例1〜10で用いた感光剤と同じ感光剤30質量部を用いた。
【0094】
<溶剤>
比較例1及び2では、下表4に記載の種類の溶剤440質量部を用いた。
【0095】
【表4】
【0096】
以上の成分を混合して得られた比較例1及び2の感光性樹脂組成物について、実施例1〜10と同様の方法で、形成される絶縁部の耐薬品性、及び基材への密着性、並びに消泡性を評価した。また、形成される絶縁部の熱フロー性については、現像液の濃度を1.2質量%から2.38質量%に変えることの他は、実施例1〜10と同様の方法で評価した。これらの評価結果を表6に記す。
【0097】
〔比較例3及び4〕
比較例3及び4では、以下に説明する、共重合体、感光剤、溶剤を均一に混合して、感光性樹脂組成物を調製した。
【0098】
<共重合体>
比較例3及び4では、下式A−4で表される単位16モル%、A−5で表される単位64モル%、及びA−6で表される単位20モル%からなる共重合体100質量部を用いた。比較例3及び4で用いた共重合体の質量平均分子量(Mw)は、8,000であった。
【化10】
【0099】
<感光剤>
比較例3及び4では、実施例1〜10で用いた感光剤と同じ感光剤30質量部を用いた。
【0100】
<溶剤>
比較例3及び4では、下表5に記載の種類の溶剤440質量部を用いた。
【0101】
【表5】
【0102】
以上の成分を混合して得られた比較例3及び4の感光性樹脂組成物について、実施例1〜10と同様の方法で、形成される絶縁部の熱フロー性、耐薬品性、及び基材への密着性、並びに消泡性を評価した。これらの評価結果を表6に記す。
【0103】
〔比較例5〕
比較例5では、以下に説明する、共重合体、光重合性モノマー、感光剤(光重合開始剤)、溶剤を均一に混合して、感光性樹脂組成物を調製した。
【0104】
<共重合体>
比較例5では、下式A−5で表される単位31モル%、A−6で表さる単位12モル%、A−7で表される単位40モル、及びA−8で表される単位17モル%からなる共重合体100質量部を用いた。比較例5で用いた共重合体の質量平均分子量(Mw)は、8,000であった。
【化11】
【0105】
<光重合性モノマー>
比較例5では、光重合性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート50質量部を用いた。
【0106】
<感光剤(光重合開始剤)>
比較例5では、感光剤(光重合開始剤)として、OXE−02(BASF社製)5質量部を用いた。
【0107】
<溶剤>
比較例5では、溶剤としてPGMEA440質量部を用いた。
【0108】
以上の成分を混合して得られた比較例5の感光性樹脂組成物について、実施例1〜10と同様の方法で、形成される絶縁部の耐薬品性、及び基材への密着性、並びに消泡性を評価した。また、形成される絶縁部の熱フロー性については、マスクをネガ型のマスクに変更することと、現像液の濃度を1.2質量%から2.38質量%に変えることの他は、実施例1〜10と同様の方法で評価した。これらの評価結果を表6に記す。
【0109】
【表6】
【0110】
比較例1及び2によれば、共重合体としてノボラック樹脂を用いる場合、感光性樹脂組成物を用いて形成される絶縁部が耐薬品性に劣ることが分かる。比較例3及び4によれば、式(1)で表される単位と、式(2)で表される単位とを含まない共重合体を用いる場合、感光性樹脂組成物を用いて形成される絶縁部が耐薬品性に劣ることが分かる。比較例5によれば、アルカリ可溶性樹脂(共重合体)と、光重合性モノマーと、光重合開始剤と、溶剤とを含むネガ型の感光性樹脂組成物を用いる場合、150℃以下の低温での熱処理によって所望する形状に良好に変形する絶縁部を形成できないことが分かる。
【0111】
〔実施例11及び12〕
さらに、消泡剤(BYK−A506(ビックケミー・ジャパン株製:商品名))3質量部を配合することの他は、実施例1と同様にして実施例11の感光性樹脂組成物を得た。また、さらに消泡剤(BYK−A506(ビックケミー・ジャパン株製:商品名))3質量部を配合することの他は、実施例8と同様にして実施例12の感光性樹脂組成物を得た。
得られた実施例11及び12の感光性樹脂粗組成物について、実施例1の感光性樹脂組成物と同様に、消泡性と、耐薬品性との評価を行った。また、実施例1、8、11、及び12の感光性樹脂組成物を用いて、感光性樹脂組成物を用いて形成される絶縁部の透過率を評価した。これらの評価結果を表7に記す。
【0112】
<透過率試験>
ガラス基板上に、スピナー(SC−W80A−AV、大日本スクリーン製造株式会社製)を用いて感光性樹脂組成物を塗布した。次いで、基板を、ダイレクトホットプレートを用いて、90℃で90秒間加熱し、膜厚1.5μmの塗布膜を形成した。形成された塗布膜に対いて、HMW−532D(ORC社製)を用いて500mJのブリーチング処理を行った。その後、塗布膜に対して、ダイレクトホットプレートを用いて、150℃、300秒間のポストベークを行った。ポストベーク後の膜について、波長400nmにおける240度透過率を、MCPD−3000(大塚電子(株)製)を用いて測定した。透過率95%超を◎、90%超〜95%未満を○とした。
【0113】
【表7】
【0114】
実施例11及び1の比較と、実施例12及び8の比較とによれば、感光性樹脂組成物に消泡剤を配合する場合、消泡性は改良されるものの、感光性樹脂組成物を用いて形成される絶縁部の耐薬品性と透過率とが若干低下することが分かる。