(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パージガス供給ポートは、前記内槽内のめっき液の液面よりも下方であって、かつ前記オーバーフロー槽内のめっき液の液面よりも上方に位置していることを特徴とする請求項1に記載のめっき装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1乃至
図8において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係るめっき装置を模式的に示す平面図である。
図1に示すように、このめっき装置は、装置フレーム1と、ウェハ等の基板を収納したカセットを搭載する2台のロードポート2と、めっき装置の動作を制御する制御部3とを備えている。さらに、めっき装置は、基板のオリエンテーションフラットまたはノッチの位置を所定の方向に合わせるアライナ4と、めっき処理後の基板を高速回転させて乾燥させるスピン・リンス・ドライヤ(SRD)6と、基板ホルダ8(
図5乃至
図8参照)が水平に載置されるテーブル10と、基板を搬送する基板搬送ロボット12とを備えている。これらアライナ4、スピン・リンス・ドライヤ6、テーブル10、および基板搬送ロボット12は、装置フレーム1内に配置されている。
【0014】
テーブル10の上方に位置して、テーブル10上に載置された基板ホルダ8を開閉して基板の該基板ホルダ8への着脱を行う基板ホルダ開閉機構14が配置されている。更に、テーブル10の側方には、基板ホルダ8を起倒させる基板ホルダ起倒機構16が配置されている。
【0015】
装置フレーム1の内部には、基板ホルダ8の保管および一時仮置きを行う保管槽20、基板ホルダ8で保持した基板を純水等の前処理液で前洗浄(前処理)する前洗浄槽22、基板ホルダ8で保持した基板にめっきを行うめっき槽24、めっき後の基板を基板ホルダ8と共にリンス液でリンスするリンス槽26、およびリンス後の基板の水切りを行うブロー槽28が配置されている。
【0016】
保管槽20は、複数の基板ホルダ8を鉛直に並列に保持するように構成されている。前洗浄槽22は、内部に純水等の前処理液を保持する前洗浄セル22aを備えている。めっき装置は複数(この例では3個)のめっき槽24を備えている。本実施形態では、これらめっき槽24はシアンを含まないAuめっき液(以下、単にめっき液と呼ぶ)を貯留しているが、上記めっき液以外のめっき液を使用してもよい。これらめっき槽24の一側方には、各めっき槽24内のめっき液を攪拌するパドル38(
図2に示す)を駆動するパドルモータユニット30が設けられている。これらめっき槽24の他側方には、排気ダクト32が設けられている。
【0017】
リンス槽26は、内部にリンス液を保持するリンスセル26aを備えている。ブロー槽28は、窒素ガス(N
2ガス)やクリーンエアなどの気体を基板に吹き付けることで、基板の表面に残留した液滴を除去し、基板を乾燥するように構成されている。保管槽20、前洗浄槽22、めっき槽24、リンス槽26、およびブロー槽28は、この順に直列に配列されている。
【0018】
図1に示すように、保管槽20、前洗浄槽22、めっき槽24、リンス槽26、ブロー槽28、および基板ホルダ起倒機構16の間で基板ホルダ8を基板とともに搬送するトランスポータ40が設けられている。このトランスポータ40は、装置フレーム1に固定されて水平方向に延びる固定ベース42と、固定ベース42上を水平方向に移動可能に構成されたリフタ43と、リフタ43に連結されたアーム44とを備えている。アーム44は、基板ホルダ8を把持するグリッパ45を有している。アーム44とリフタ43は一体に水平方向に移動し、アーム44はリフタ43によって上昇および下降される。リフタ43を水平方向に移動させる駆動源としてはリニアモータまたはラック・アンド・ピニオンを採用することができる。
【0019】
図2はめっき装置を構成するめっき槽24の側面図であり、
図3はめっき槽24の正面図である。
図2および
図3では、めっき槽24の縦断面が示されている。
図3では図面を見やすくするため、パドル38を含むいくつかの要素は図示されていない。
図2に示すように、めっき装置は、めっき液を内部に貯留するためのめっき槽24と、アノード33と、このアノード33を保持してめっき槽24内のめっき液に浸漬させるアノードホルダ34と、基板Wを着脱自在に保持し、かつ基板Wを垂直姿勢でめっき槽24内のめっき液に浸漬させる基板ホルダ8を備えている。
【0020】
図3に示すように、めっき槽24は、基板ホルダ8に保持された基板Wを収容する内槽25と、内槽25に隣接して配置されたオーバーフロー槽27とを備えている。内槽25内のめっき液は内槽25の越流堰61をオーバーフローしてオーバーフロー槽27内に流入するようになっている。アノード33および基板Wは、内槽25内に鉛直に置かれ、互いに平行に、すなわち互いに対向して配置される。
【0021】
さらに、めっき装置は、
図2に示すように、基板W上の電位分布を調整するための開口39aを有する調整板(レギュレーションプレート)39と、内槽25内のめっき液を攪拌するパドル38とを備えている。調整板39は、アノード33と基板Wとの間に配置されている。パドル38は、内槽25内の基板ホルダ8に保持された基板Wの表面近傍に配置されている。パドル38は鉛直方向に延びており、基板Wと平行に往復運動することでめっき液を攪拌する。基板Wのめっき中にパドル38がめっき液を攪拌することで、十分な金属イオンを基板Wの表面に均一に供給することができる。
【0022】
基板ホルダ8に保持された基板Wは、内槽25内のめっき液中に浸漬される。アノードホルダ34に保持されたアノード33は、めっき液中に浸漬された基板Wに対向する位置に配置されている。アノード33はアノードホルダ34を介して電源35の正極に接続され、基板Wは基板ホルダ8を介して電源35の負極に接続される。アノード33と基板Wとの間に電圧を印加することで、基板Wの表面に金属膜が形成される。
【0023】
図3に示すように、オーバーフロー槽27の底部には、めっき液を循環させるめっき液循環ライン29の一端が接続され、めっき液循環ライン29の他端は内槽25の底部に接続されている。めっき液循環ライン29には、めっき液を移送するポンプ31、めっき液の温度を調整する温度調整器36、めっき液循環ライン29内のめっき液中の気体を除去する気体除去装置41、およびめっき液内の異物を除去するフィルタ37が取り付けられている。めっき液は、内槽25の越流堰61をオーバーフローしてオーバーフロー槽27に流入し、さらにオーバーフロー槽27から内槽25にめっき液循環ライン29を通って戻される。このように、めっき液は、内槽25とオーバーフロー槽27との間を循環する。
【0024】
基板Wを保持した基板ホルダ8は、トランスポータ40によってめっき槽24に搬送され、めっき槽24の内槽25内の所定位置にセットされる。めっき槽24は上部開口部23を有しており、基板ホルダ8のめっき槽24への搬入およびめっき槽24からの搬出はこの上部開口部23を通じて行われる。このように、めっき槽24は基板ホルダ8の搬入および搬出を可能とするための上部開口部23を有しているため、めっき槽24内のめっき液は空気と接触してしまう。また、めっき液は、内槽25の越流堰61をオーバーフローするときに空気と接触してしまう。
【0025】
そこで、本実施形態に係るめっき装置は、めっき槽24の上部開口部23を開閉する蓋機構46と、めっき槽24内にパージガス(例えば、窒素ガスなどの不活性ガス)を供給するパージガス供給機構56とを備えている。
図3に示すように、蓋機構46はめっき槽24の上端に設けられている。蓋機構46は、上部開口部23を開閉する蓋47,48と、これら蓋47,48を開閉可能に支持する支持部材49,50と、蓋47,48を駆動するアクチュエータ51,52とを備えている。
【0026】
本実施形態では、支持部材49,50はヒンジから構成されており、蓋47,48は観音開き構造を有している。すなわち、蓋47,48は、支持部材49,50を中心として回転可能にそれぞれ支持部材49,50によって支持されている。アクチュエータ51,52は、
図3の矢印で示すように蓋47,48を回転させることで、上部開口部23を開閉するように構成されている。アクチュエータ51,52としては、モータまたはエアシリンダなどを使用することができる。アクチュエータ51,52が蓋47,48を移動(回転)させてめっき槽24の上部開口部23を閉じると、めっき槽24内には密閉空間54が形成される。本実施形態では、トランスポータ40は、蓋47,48が開かれた状態でも基板ホルダ8を搬送することができる。
【0027】
パージガス供給機構56は、めっき槽24内の密閉空間54にパージガスを供給して、密閉空間54をパージガスで満たすように構成されている。パージガス供給機構56は、めっき槽24内の密閉空間54にパージガスを供給するためのパージガス供給ポート57と、パージガス源58から供給されるパージガスをパージガス供給ポート57に移送するためのパージガス移送ライン60とを備えている。パージガス供給ポート57は、内槽25の越流堰61をオーバーフローしてオーバーフロー槽27に流入するめっき液に向かってパージガスを噴出するようにオーバーフロー槽27の側板27aに固定されている。
【0028】
パージガスは、パージガス移送ライン60を通じてパージガス供給ポート57に送られ、さらにパージガス供給ポート57からめっき槽24内に供給される。パージガスとして、安全性とコスト低減の観点から窒素ガス(N
2ガス)を使用することが好ましい。密閉空間54をパージガスで満たすことでめっき槽24のめっき液が空気と接触することを防止することができる。結果として、めっき液の酸化を防止することができ、めっき液のコストを低減することができる。
【0029】
図3に示すように、オーバーフロー槽27内のめっき液の液面は内槽25内のめっき液の液面よりも低い位置にある。窒素ガスは空気よりも軽いため、パージガスとして窒素ガスを使用する場合、パージガス供給ポート57を内槽25内のめっき液の液面よりも下方であって、かつオーバーフロー槽27内のめっき液の液面よりも上方に配置することが望ましい。このような配置により、上昇するパージガスをオーバーフローするめっき液に接触させることができる。さらに、内槽25のめっき液の液面およびオーバーフロー槽27のめっき液の液面が空気と接触することを効果的に防ぐことができる。
【0030】
パージガス供給ポート57は内槽25の越流堰61に対して垂直に延びているが、
図4に示すように、パージガス供給ポート57は越流堰61と平行に延びてもよい。いずれの配置でもオーバーフローするめっき液にパージガスを直接吹き付けることができる。内槽25内のめっき液がオーバーフローしてオーバーフロー槽27に流れ込むとき、めっき液がめっき槽24内の空気に接触してめっき液の酸化が進行しやすい。そこで、特にこのオーバーフローするめっき液にパージガスを直接吹き付けることでめっき液の酸化を防止することができる。
【0031】
パージガス供給機構56は、パージガス供給ポート57を通じてめっき槽24に供給するパージガスの流量を調整する流量調整弁62をさらに備えている。流量調整弁62はパージガス移送ライン60に設けられている。めっき槽24内に形成された密閉空間54から空気を速やかに排除するために、蓋機構46がめっき槽24の上部開口部23を閉じた後、パージガス供給機構56は、基板Wのめっき時に供給されるパージガスの流量よりも高い流量でパージガスを供給してもよい。密閉空間54がパージガスで満たされた後は、パージガス供給機構56は、パージガスの流量を基板Wのめっき時の流量と同等にまで下げる。
【0032】
基板Wをめっきしていないときは、パージガスの供給を停止してもよい。パージガスの供給を停止しても、密閉空間54はパージガスで満たされているため、めっき液の酸化を防止することができる。めっき液の酸化をより確実に防ぐためには、基板Wをめっきしていないときもパージガスを供給してもよいが、コスト低減の観点からパージガスの供給を停止してもよい。
【0033】
蓋機構46によってめっき槽24の上部開口部23が閉じられ、密閉空間54がパージガスで満たされた後に、パドル38によるめっき液の攪拌を開始することが好ましい。密閉空間54内には空気は存在しないので、パドル38がめっき液を攪拌しても、空気とめっき液とが混合されることはない。
【0034】
基板ホルダ8は、基板Wが垂直姿勢で(すなわち鉛直に)めっき液中に置かれるようにめっき槽24にセットされる。パドル38によりめっき液を攪拌しているときにめっき液中に気泡が発生しても、直立した基板Wの表面上に気泡はとどまらず、気泡は速やかにめっき液中を上昇して液面上で消滅する。したがって、基板Wの表面全体にめっき液を均一に接触させることができる。
【0035】
パージガス供給機構56は内槽25内のめっき液中にガスを供給するバブリングポート65(
図3参照)をさらに備えてもよい。バブリングポート65は内槽25の底部に接続されている。上述したパージガスとして不活性ガスが使用される場合、この不活性ガスをバブリングポート65を通じて内槽25内のめっき液中に供給してもよい。この場合は、バブリングポート65はパージガス移送ライン60を介してパージガス源58に接続される。具体的には、パージガス移送ライン60は2つの分岐ライン60a,60bに分岐しており、これら分岐ライン60a,60bはパージガス供給ポート57およびバブリングポート65にそれぞれ接続されている。パージガス源58から送られる不活性ガスは、パージガス移送ライン60およびバブリングポート65を通じて内槽25内のめっき液中に供給され、めっき液中に不活性ガスの気泡を形成する。この例では、パージガス移送ライン60は不活性ガス移送ラインとしても機能する。
【0036】
バブリングポート65を設ける場合、内槽25内に供給される不活性ガスの流量を調整する流量調整弁63をパージガス移送ライン60に設けてもよい。この場合、パージガス供給ポート57およびバブリングポート65に送られる不活性ガスの流量を流量調整弁62,63がそれぞれ独立に調整できるように、流量調整弁62は分岐ライン60aに、流量調整弁63は分岐ライン60bに設けられる。
【0037】
めっき液中に供給された不活性ガスは、めっき液中の溶存酸素を除去することができるので、めっき液の酸化をより効果的に防止することができる。つまり、めっき槽24の密閉空間54に供給されるパージガスおよびめっき槽24内のめっき液中に供給される不活性ガスの相乗効果により、めっき液の酸化をより効果的に防止することができる。さらに、めっき液中に形成された不活性ガスの気泡は、めっき液を攪拌することもできる。この場合でも、直立した基板Wの表面上に気泡はとどまらず、気泡は速やかにめっき液中を上昇して液面上で消滅する。したがって、基板Wの表面全体にめっき液を均一に接触させることができる。
【0038】
次に、基板ホルダ8について、
図5乃至
図8を参照して説明する。基板ホルダ8は、
図5乃至
図8に示すように、矩形平板状の第1保持部材70と、この第1保持部材70にヒンジ71を介して開閉自在に取付けられた第2保持部材72とを有している。他の構成例として、第2保持部材72を第1保持部材70に対峙した位置に配置し、この第2保持部材72を第1保持部材70に向けて前進させ、また第1保持部材70から離間させることによって第2保持部材72を開閉するようにしてもよい。
【0039】
第1保持部材70は例えば塩化ビニル製である。第2保持部材72は、基部73と、リング状のシールホルダ74とを有している。シールホルダ74は例えば塩化ビニル製であり、下記の押えリング75との滑りを良くしている。シールホルダ74の上部には環状の基板側シール部材76(
図7および
図8参照)が内方に突出して取付けられている。この基板側シール部材76は、基板ホルダ8が基板Wを保持した時、基板Wの表面外周部に圧接して第2保持部材72と基板Wとの隙間をシールするように構成されている。シールホルダ74の第1保持部材70と対向する面には、環状のホルダ側シール部材78(
図7および
図8参照)が取付けられている。このホルダ側シール部材78は、基板ホルダ8が基板Wを保持した時、第1保持部材70に圧接して第1保持部材70と第2保持部材72との隙間をシールするように構成されている。ホルダ側シール部材78は、基板側シール部材76の外側に位置している。
【0040】
図8に示すように、基板側シール部材76は、シールホルダ74と第1固定リング79aとの間に挟持されてシールホルダ74に取付けられている。第1固定リング79aは、シールホルダ74にねじ等の締結具80aを介して取付けられる。ホルダ側シール部材78は、シールホルダ74と第2固定リング79bとの間に挟持されてシールホルダ74に取付けられている。第2固定リング79bは、シールホルダ74にねじ等の締結具80bを介して取付けられる。
【0041】
シールホルダ74の外周部には段部が設けられており、この段部には押えリング75がスペーサ81を介して回転自在に装着されている。押えリング75は、第1固定リング79aの外周部によって脱出不能に装着されている。この押えリング75は、酸やアルカリに対して耐食性に優れ、十分な剛性を有する材料から構成される。例えば、押えリング75はチタンから構成される。スペーサ81は、押えリング75がスムーズに回転できるように、摩擦係数の低い材料、例えばPTFEで構成されている。
【0042】
押えリング75の外側には、複数のクランパ82が押えリング75の円周方向に沿って等間隔で配置されている。これらクランパ82は第1保持部材70に固定されている。各クランパ82は、内方に突出する突出部を有する逆L字状の形状を有している。押えリング75の外周面には、外方に突出する複数の突起部75bが設けられている。これら突起部75bは、クランパ82の位置に対応する位置に配置されている。クランパ82の内方突出部の下面および押えリング75の突起部75bの上面は、押えリング75の回転方向に沿って互いに逆方向に傾斜するテーパ面となっている。押えリング75の円周方向に沿った複数箇所(例えば3箇所)には、上方に突出する凸部75aが設けられている。これにより、回転ピン(図示せず)を回転させて凸部75aを横から押し回すことにより、押えリング75を回転させることができる。
【0043】
第2保持部材72を開いた状態で、第1保持部材70の中央部に基板Wが挿入され、ヒンジ71を介して第2保持部材72が閉じられる。押えリング75を時計回りに回転させて、押えリング75の突起部75bをクランパ82の内方突出部の内部に滑り込ませることで、押えリング75とクランパ82にそれぞれ設けたテーパ面を介して、第1保持部材70と第2保持部材72とを互いに締付けて第2保持部材72をロックする。また、押えリング75を反時計回りに回転させて押えリング75の突起部75bをクランパ82から外すことで、第2保持部材72のロックを解くようになっている。
【0044】
第2保持部材72をロックした時、基板側シール部材76の下方突出部は基板Wの表面外周部に圧接される。シール部材76は均一に基板Wに押圧され、これによって基板Wの表面外周部と第2保持部材72との隙間をシールする。同じように、第2保持部材72をロックした時、ホルダ側シール部材78の下方突出部は第1保持部材70の表面に圧接される。シール部材78は均一に第1保持部材70に押圧され、これによって第1保持部材70と第2保持部材72との間の隙間をシールする。
【0045】
図6に示すように、第1保持部材70の端部には、一対のホルダハンガ83が外方に突出して設けられている。このホルダハンガ83は、内側ハンガ部84と外側ハンガ部85から構成される。両側の内側ハンガ部84の間にはハンドレバー86が延びている。前洗浄槽22、めっき槽24、リンス槽26、およびブロー槽28内では、基板ホルダ8は、ホルダハンガ83の内側ハンガ部84または外側ハンガ部85を介してそれらの周壁に吊下げられる。
【0046】
第1保持部材70の表面には、基板Wの大きさにほぼ等しいリング状の突条部87が形成されている。この突条部87は、基板Wの周縁部に当接して該基板Wを支持する環状の支持面88を有している。この突条部87の円周方向に沿った所定位置に凹部89が設けられている。
【0047】
図6に示すように、凹部89内には複数(図示では12個)の導電体(電気接点)90がそれぞれ配置されている。これら導電体90は、ホルダハンガ83の内側ハンガ部84に設けられた接続端子91から延びる複数の配線にそれぞれ接続されている。第1保持部材70の支持面88上に基板Wを載置した際、この導電体90の端部が基板Wの側方で飛び出して、
図8に示す電気接点92の下部に弾性的に接触するようになっている。
【0048】
導電体90に電気的に接続される電気接点92は、ねじ等の締結具93を介して第2保持部材72のシールホルダ74に固着されている。この電気接点92は、板ばね形状に形成されている。電気接点92は、基板側シール部材76の外方に位置した、内方に板ばね状に突出する接点部を有している。電気接点92はこの接点部において、その弾性力によるばね性を有して容易に屈曲するようになっている。第1保持部材70と第2保持部材72で基板Wを保持した時に、電気接点92の接点部が、第1保持部材70の支持面88上に支持された基板Wの外周面に弾性的に接触するように構成されている。
【0049】
第2保持部材72の開閉は、図示しないエアシリンダと第2保持部材72の自重によって行われる。つまり、第1保持部材70には通孔70aが設けられ、テーブル10の上に基板ホルダ8を載置した時に通孔70aに対向する位置にエアシリンダ(図示せず)が設けられている。このエアシリンダのピストンロッドにより、通孔70aを通じて第2保持部材72のシールホルダ74を上方に押し上げることで第2保持部材72を開き、ピストンロッドを収縮させることで、第2保持部材72をその自重で閉じるようになっている。
【0050】
次に、上記のように構成されためっき装置による処理動作を説明する。まず、トランスポータ40のアーム44により、保管槽20から鉛直姿勢の基板ホルダ8を取り出す。基板ホルダ8を把持したアーム44は、水平方向に移動して、基板ホルダ起倒機構16に基板ホルダ8を渡す。基板ホルダ起倒機構16は、基板ホルダ8を鉛直姿勢から水平姿勢に転換し、テーブル10の上に載置する。そして、基板ホルダ開閉機構14によりテーブル10に載置された基板ホルダ8を開く。
【0051】
基板搬送ロボット12は、ロードポート2に搭載されたカセットから基板Wを1枚取り出し、アライナ4に載せる。アライナ4はオリエンテーションフラットまたはノッチの位置を所定の方向に合わせる。基板搬送ロボット12は、基板Wをアライナ4から取り出し、テーブル10上に載置された基板ホルダ8に挿入する。この状態で、基板ホルダ開閉機構14により基板ホルダ8を閉じ、基板ホルダ8をロックする。
【0052】
次に、基板ホルダ起倒機構16は、基板ホルダ8を水平姿勢から鉛直姿勢に転換する。アーム44のグリッパ45は、この起立した状態の基板ホルダ8を把持し、この状態でアーム44は前洗浄槽22の上方位置まで基板ホルダ8を水平方向に移動させる。さらに、トランスポータ40のリフタ43は、基板ホルダ8とともにアーム44を下降させて、前洗浄槽22内の所定の位置に基板ホルダ8をセットする。この状態で、基板Wの前洗浄が行われる。基板Wの前洗浄が終了した後、アーム44のグリッパ45は基板ホルダ8を把持し、リフタ43がアーム44を上昇させることで基板ホルダ8を前洗浄槽22から引き上げる。
【0053】
次に、アーム44はめっき槽24の上方位置まで水平方向に基板ホルダ8を移動させる。蓋機構46の蓋47,48が開かれ、その後、トランスポータ40のリフタ43は、基板ホルダ8とともにアーム44を下降させて、めっき槽24の上部開口部23を通じて基板ホルダ8をめっき槽24に運び入れ、そして、基板Wが縦向きの姿勢となるように基板ホルダ8を内槽25内の所定の位置にセットする。
【0054】
基板ホルダ8のセットが完了した後、蓋機構46によってめっき槽24の上部開口部23が閉じられ、めっき槽24内に密閉空間54が形成される。パージガス供給機構56は、基板Wのめっき時に供給される流量よりも高い流量のパージガスを密閉空間54に供給し、密閉空間54内の空気を速やかに排除する。密閉空間54がパージガスで満たされた後、パージガス供給機構56は、パージガスの流量を基板Wのめっき時の流量と同等にまで低下させる。パージガスの流量コントロールは、流量調整弁62によって行われる。
【0055】
その後、パドル38が内槽25内のめっき液を攪拌しながら、アノード33と基板Wとの間に電圧を印加して基板Wをめっきする。基板Wのめっき終了後、パドル38によるめっき液の攪拌が停止され、パージガスの供給が停止される。蓋機構46の蓋47,48が開かれると、アーム44のグリッパ45は基板ホルダ8を把持し、リフタ43がアーム44を上昇させることで基板ホルダ8を上部開口部23を通じて内槽25から引き上げる。
【0056】
アーム44は、リンス槽26の上方位置まで水平方向に基板ホルダ8を移動させる。さらに、トランスポータ40のリフタ43は、基板ホルダ8とともにアーム44を下降させて、リンス槽26内の所定の位置に基板ホルダ8をセットする。この状態で、基板Wのめっき後のリンスが行われる。リンスが終了した後、アーム44のグリッパ45は基板ホルダ8を把持し、リフタ43がアーム44を上昇させることで基板ホルダ8をリンス槽26から引き上げる。
【0057】
アーム44は、ブロー槽28の上方位置まで水平方向に基板ホルダ8を移動させる。さらに、トランスポータ40のリフタ43は、基板ホルダ8とともにアーム44を下降させて、ブロー槽28内の所定の位置に基板ホルダ8をセットする。ブロー槽28は、窒素ガスやクリーンエアなどの気体の吹き付けによって、基板ホルダ8で保持した基板Wの表面に付着した液滴を除去し乾燥させる。ブロー処理が終了した後、アーム44のグリッパ45は基板ホルダ8を把持し、リフタ43がアーム44を上昇させることで基板ホルダ8をブロー槽28から引き上げる。
【0058】
アーム44は、水平方向に移動して、基板ホルダ8を基板ホルダ起倒機構16に渡す。基板ホルダ起倒機構16は、前述と同様にして、基板ホルダ8をテーブル10の上に水平に載置し、基板ホルダ開閉機構14により基板ホルダ8を開く。基板搬送ロボット12は、基板ホルダ8から処理後の基板Wを取り出し、この基板Wをスピン・リンス・ドライヤ6に搬送する。スピン・リンス・ドライヤ6は基板Wを高速で回転させることで基板Wを乾燥させる。基板搬送ロボット12は、乾燥された基板Wをスピン・リンス・ドライヤ6から取り出し、ロードポート2のカセットに戻す。これによって、1枚の基板に対する処理が終了する。
【0059】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。