(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223323
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】小数画素生成方法
(51)【国際特許分類】
H04N 19/117 20140101AFI20171023BHJP
H04N 19/157 20140101ALI20171023BHJP
H04N 19/179 20140101ALI20171023BHJP
H04N 19/523 20140101ALI20171023BHJP
H04N 19/59 20140101ALI20171023BHJP
H04N 19/80 20140101ALI20171023BHJP
【FI】
H04N19/117
H04N19/157
H04N19/179
H04N19/523
H04N19/59
H04N19/80
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-252287(P2014-252287)
(22)【出願日】2014年12月12日
(65)【公開番号】特開2016-116039(P2016-116039A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2014年12月12日
【審判番号】不服2016-11527(P2016-11527/J1)
【審判請求日】2016年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTエレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148057
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 淑己
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 猛司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敬二
(72)【発明者】
【氏名】大西 隆之
(72)【発明者】
【氏名】佐野 卓
【合議体】
【審判長】
清水 正一
【審判官】
篠原 功一
【審判官】
渡辺 努
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−249986(JP,A)
【文献】
特表2014−512732(JP,A)
【文献】
特表2010−516082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00-19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照画像を入力して水平方向小数画素を生成する水平方向小数画素生成部と、
前記参照画像と前記水平方向小数画素を入力して垂直方向小数画素を生成する垂直方向小数画素生成部と、
前記水平方向小数画素生成部と前記垂直方向小数画素生成部のフィルタ係数を選択する係数選択部とを備えた小数画素生成回路を用い、前記参照画像から小数画素を生成する処理を行う小数画素生成方法において、
前記係数選択部は、前記小数画素生成回路が前記参照画像からHEVCに準拠した小数画素を生成する場合、−1,4,−11,40,40,−11,4,−1からなる第1のフィルタ係数、−1,4,−10,58,17,−5,1,0からなる第2のフィルタ係数のいずれかを選択し、前記小数画素生成回路が前記参照画像からH.264/AVCに準拠した小数画素を生成する場合、1,−5,20,20,−5,1,0,0からなる第3のフィルタ係数、0,1,1,0,0,1,1,0からなる第4のフィルタ係数のいずれかを選択し、
前記小数画素生成回路が前記参照画像からHEVCに準拠した小数画素を生成する場合、
前記水平方向小数画素生成部が、入力された前記参照画像から、前記第1のフィルタ係数に基づき水平方向1/2画素を生成し、入力された前記参照画像から、前記第2のフィルタ係数に基づき水平方向1/4画素を生成して全ての前記水平方向小数画素を生成するステップと、
前記垂直方向小数画素生成部が、入力された前記参照画像と前記水平方向小数画素から、前記第1のフィルタ係数に基づき垂直方向1/2画素を生成し、入力された前記参照画像と前記水平方向小数画素から、前記第2のフィルタ係数に基づき垂直方向1/4画素を生成するステップとを備え、
前記小数画素生成回路が前記参照画像からH.264/AVCに準拠した小数画素を生成する場合、
前記水平方向小数画素生成部が、入力された前記参照画像から、前記第3のフィルタ係数に基づき水平方向1/2画素を生成し、入力された前記参照画像と生成された前記水平方向1/2画素から、前記第4のフィルタ係数に基づき水平方向1/4画素を生成して全ての前記水平方向小数画素を生成するステップと、
前記垂直方向小数画素生成部が、入力された前記参照画像と前記水平方向小数画素から、前記第3のフィルタ係数に基づき垂直方向1/2画素を生成し、入力された前記参照画像と前記水平方向小数画素と生成された前記垂直方向1/2画素から、前記第4のフィルタ係数に基づき垂直方向1/4画素を生成するステップとを備え、
前記水平方向小数画素は整数画素に対して水平方向にある小数画素であり、
前記垂直方向小数画素は前記整数画素及び前記水平方向小数画素に対して垂直方向にある小数画素であることを特徴とする小数画素生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HEVCとH.264/AVCの小数画素生成処理を共通化することができる小数画素生成
方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HEVCはH.264/AVC(以下、H.264と記述する)よりも符号化効率の高い次世代の映像符号化標準方式である。何れの方式においても小数画素を導入した動き予測・動き補償を行い、予測効率を向上させている(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0003】
図9は、HEVCの従来の小数画素生成回路を示す図である。8tapの水平方向フィルタ11が参照画像を入力して水平方向小数画素(1/2画素精度、1/4画素精度)を生成する。次に、8tapの垂直方向フィルタ12が、垂直方向フィルタ入力バッファ13を介して水平方向小数画素を入力して垂直方向小数画素(1/2画素精度、1/4画素精度)を生成する。
【0004】
図10は、H.264の従来の小数画素生成回路を示す図である。6tapの1/2画素フィルタ14が参照画像を入力して1/2画素精度の小数画素を生成する。次に、2tapの1/4画素フィルタ15が、1/4画素フィルタ入力バッファ16を介して1/2画素精度の小数画素を入力して1/4画素精度の小数画素を生成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「ITU-T H.265 | ISO/IEC 23008-2 High Efficiency Video Coding」 ITU-T, 2013年1月
【非特許文献2】「ITU-T Rec. H.264 | ISO/IEC 14496-10 Advanced Video Coding」 ITU-T, 2003年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
HEVCとH.264の処理を一つの処理系で実行できるようにする要求がある。特に、動き予測に使用する小数画素生成は高速化のためにプロセッサ処理ではなくハードで実現する必要性が高いので、ハード量の観点からHEVCとH.264の小数画素生成処理を共通化することが望まれている。しかし、上述のようにHEVCとH.264では小数画素生成の方法が異なる点が一つの障害要素になっている。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的はHEVCとH.264の小数画素生成処理を共通化することができる小数画素生成回路を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る小数画素生成方法は、参照画像を入力して水平方向小数画素を生成する水平方向小数画素生成部と、
前記参照画像と前記水平方向小数画素を入力して垂直方向小数画素を生成する垂直方向小数画素生成部と、前記水平方向小数画素生成部と前記垂直方向小数画素生成部のフィルタ係数を選択する係数選択部とを備えた小数画素生成回路を用い、前記参照画像から小数画素を生成する処理を行う小数画素生成方法において、
前記係数選択部は、前記小数画素生成回路が前記参照画像からHEVCに準拠した小数画素を生成する場合、−1,4,−11,40,40,−11,4,−1からなる第1のフィルタ係数、−1,4,−10,58,17,−5,1,0からなる第2のフィルタ係数のいずれかを選択し、前記小数画素生成回路が前記参照画像からH.264/AVCに準拠した小数画素を生成する場合、1,−5,20,20,−5,1,0,0からなる第3のフィルタ係数、0,1,1,0,0,1,1,0からなる第4のフィルタ係数のいずれかを選択し、前記小数画素生成回路が前記参照画像からHEVCに準拠した小数画素を生成する場合、前記水平方向小数画素生成部が
、入力された前記参照画像から
、前記第1のフィルタ係数に基づき水平方向1/2画素
を生成し、入力された前記参照画像から、前記第2のフィルタ係数に基づき水平方向1/4画素
を生成して全ての前記水平方向小数画素を生成するステップと、前記垂直方向小数画素生成部が
、入力された
前記参照画像と前記水平方向小数画素から
、前記第1のフィルタ係数に基づき垂直方向1/2画素
を生成し、入力された前記参照画像と前記水平方向小数画素から、前記第2のフィルタ係数に基づき垂直方向1/4画素
を生成するステップとを備え、前記小数画素生成回路が前記参照画像からH.264/AVCに準拠した小数画素を生成する場合、前記水平方向小数画素生成部が
、入力された前記参照画像から
、前記第3のフィルタ係数に基づき水平方向1/2画素
を生成し、入力された前記参照画像と生成された前記水平方向1/2画素から、前記第4のフィルタ係数に基づき水平方向1/4画素
を生成して全ての前記水平方向小数画素を生成するステップと、前記垂直方向小数画素生成部が
、入力された
前記参照画像と前記水平方向小数画素から
、前記第3のフィルタ係数に基づき垂直方向1/2画素
を生成し、入力された前記参照画像と前記水平方向小数画素と生成された前記垂直方向1/2画素から、前記第4のフィルタ係数に基づき垂直方向1/4画素
を生成するステップとを備え、前記水平方向小数画素は整数画素に対して水平方向にある小数画素であり、前記垂直方向小数画素は前記整数画素及び前記水平方向小数画素に対して垂直方向にある小数画素であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、HEVCとH.264の小数画素生成処理を共通化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る小数画素生成回路を示す図である。
【
図3】H.264の小数画素生成の従来の処理手順のフローチャートである。
【
図4】従来の処理手順の1/2画素生成方法を示す図である。
【
図5】従来の処理手順の1/4画素生成方法を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態におけるH.264の小数画素生成の処理手順のフローチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態におけるH.264水平方向小数画素生成方法を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態におけるH.264の垂直方向小数画素生成方法を示す図である。
【
図9】HEVCの従来の小数画素生成回路を示す図である。
【
図10】H.264の従来の小数画素生成回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る小数画素生成回路を示す図である。8tapの水平方向フィルタ1は、参照画像を入力して水平方向小数画素を生成する。8tapの垂直方向フィルタ2は、垂直方向フィルタ入力バッファ3を介して水平方向小数画素を入力して垂直方向小数画素を生成する。係数選択部4,5は、参照画像がHEVCかH.264かに応じて、それぞれ水平方向フィルタ1と垂直方向フィルタ2のフィルタ係数を選択する。
【0012】
参照画像がHEVCの場合、
図9に示したHEVCの従来の回路と同様に、水平方向フィルタ1と垂直方向フィルタ2は処理可能である。係数選択部4,5は、参照画像がH.264の場合でも水平方向フィルタ1と垂直方向フィルタ2で処理可能となるようにフィルタ係数を選択する。表1にフィルタ係数の具体例を示す。
【0014】
続いて、参照画像がH.264の場合における本実施の形態の処理手順について、H.264の従来の処理手順と比較して説明する。
図2は小数画素の位置を示す図である。
【0015】
図3は、H.264の小数画素生成の従来の処理手順のフローチャートである。まず1/2画素を生成し(ステップS11)、次に1/4画素を生成する(ステップS12)。
図4は従来の処理手順の1/2画素生成方法を示す図である。1/2画素として位置b,h,jの小数画素を生成する。1/2画素の算出式は以下の通りである。
b
1=(E−5
*F+20
*G+20
*H−5
*I+J)
h
1=(A−5
*C+20
*G+20
*M−5
*R+T)
b=Clip((b
1+16)>>5)
h=Clip((h
1+16)>>5)
j
1=(cc−5
*dd+20
*h
1+20
*m
1−5
*ee+
ff)又は(aa−5
*bb+20
*b+20
*s
1−5
*gg+hh)
j=Clip((j
1+512)>>10)
【0016】
図5は従来の処理手順の1/4画素生成方法を示す図である。1/4画素として位置a,c,d,e,f,g,i,k,n,p,q,rの小数画素を生成する。なお、生成する小数画素の順番は任意でよい。1/4画素の算出式は以下の通りである。
a=(G+b+1)>>1
c=(H+b+1)>>1
d=(G+h+1)>>1
n=(M+h+1)>>1
f=(b+j+1)>>1
i=(h+j+1)>>1
k=(j+m+1)>>1
q=(j+s+1)>>1
e=(b+h+1)>>1
g=(b+m+1)>>1
p=(h+s+1)>>1
r=(m+s+1)>>1
【0017】
上記の従来の処理手順に対して、参照画像がH.264の場合における本実施の形態の処理手順は以下の通りである。
図6は、本発明の実施の形態におけるH.264の小数画素生成の処理手順のフローチャートである。参照画像がH.264の場合でもHEVCの場合と同様に、まず水平方向小数画素を生成し(ステップS1)、次に垂直方向小数画素を生成する(ステップS2)。このようにH.264の場合とHEVCの場合で小数画素生成の順番を同じにすることで小数画素生成回路を共有することができる。
【0018】
図7は、本発明の実施の形態におけるH.264水平方向小数画素生成方法を示す図である。水平方向小数画素として位置a,b,cの小数画素を生成する。水平方向小数画素の算出式は以下の通りである。
b
1=(E−5
*F+20
*G+20
*H−5
*I+J)
b=Clip((b
1+16)>>5)
a=(G+b+1)>>1
c=(H+b+1)>>1
【0019】
図8は、本発明の実施の形態におけるH.264の垂直方向小数画素生成方法を示す図である。垂直方向小数画素として位置d,e,f,g,h,
i,j,k,n,p,q,rの小数画素を生成する。なお、生成する小数画素の順番は任意でよい。垂直方向小数画素の算出式は以下の通りである。
h
1=(A−5
*C+20
*G+20
*M−5
*R+T)
h=Clip((h
1+16)>>5)
j
1=(cc−5
*dd+20
*h
1+20
*m
1−5
*ee+
ff)又は(aa−5
*bb+20
*b+20
*s
1−5
*gg+hh)
j=Clip((j
1+512)>>10)
d=(G+h+1)>>1
n=(M+h+1)>>1
f=(b+j+1)>>1
i=(h+j+1)>>1
k=(j+m+1)>>1
q=(j+s+1)>>1
e=(b+h+1)>>1
g=(b+m+1)>>1
p=(h+s+1)>>1
r=(m+s+1)>>1
【0020】
参照画像がH.264の場合における本実施の形態の処理手順(
図7,8)は従来の処理手順(
図4,5)とは異なる。しかし、各位置の小数画素を生成するための算出式は一致している。
【0021】
以上説明したように、本実施の形態では水平方向フィルタ1と垂直方向フィルタ2のフィルタ係数をダイナミックに変更することで、HEVCの処理系でH.264も処理可能となる。この結果、HEVCとH.264の小数画素生成処理を共通化することができる。また、
図1に示した本実施の形態に係る回路では、
図9,10に示した従来の回路を単純に併合した場合に比べて数10Kゲートのオーダーのハード量を削減することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 水平方向フィルタ、2 垂直方向フィルタ、4,5 係数選択部