特許第6223545号(P6223545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223545
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 7/00 20060101AFI20171023BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   F25B7/00 A
   F25B1/00 396Z
   F25B1/00 399Y
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-508332(P2016-508332)
(86)(22)【出願日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】JP2014057030
(87)【国際公開番号】WO2015140872
(87)【国際公開日】20150924
【審査請求日】2016年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】東井上 真哉
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 多佳志
(72)【発明者】
【氏名】伊東 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宇賀神 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】西山 拓未
(72)【発明者】
【氏名】松井 繁佳
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−148330(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/131378(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/157764(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/030236(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 7/00
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源用熱媒体が流通し、圧縮機、熱源用熱交換器、膨張部、及び、前記熱源用熱媒体と負荷用熱媒体との間で熱交換を行うカスケード熱交換器が配管により接続された熱源熱媒体回路と、
前記負荷用熱媒体が流通し、前記負荷用熱媒体を搬送するポンプ、負荷用熱交換器、及び前記カスケード熱交換器が配管により接続された負荷熱媒体回路と、を有し、
前記熱源用熱媒体及び前記負荷用熱媒体の両方が、HFO1123を含む非共沸混合冷媒である
冷凍装置。
【請求項2】
前記熱源用熱媒体と前記負荷用熱媒体とは、
前記カスケード熱交換器における流通方向が対向流である
請求項1記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の熱媒体回路が多段構成された冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、熱源熱媒体回路と、負荷用熱媒体回路とが多段構成された冷凍装置が提案されている。このような多段構成の冷凍装置は、熱源熱媒体回路又は負荷用熱媒体回路における熱媒体として、例えば冷媒又は水等が使用されている。特許文献1には、熱源熱媒体回路である高温側循環回路に流通する熱媒体がHFO1234yfであり、負荷用熱媒体回路である低温側循環回路に流通する熱媒体が二酸化炭素である冷凍サイクル装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−36706号公報(第4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている冷凍サイクル装置は、高温側循環回路に流通する熱媒体として、HFO1234yfが使用されている。このHFO1234yfは、沸点が高い高沸点冷媒であるため、ガス化し難く、動作圧力におけるガス密度が小さい。このため、高温側循環回路における配管内の圧力損失が増大して、冷媒の搬送動力(圧縮機の消費電力)が増大する虞がある。また、特許文献1に開示されている冷凍サイクル装置は、低温側循環回路に流通する熱媒体として、二酸化炭素が使用されている。この二酸化炭素冷媒は、フロン系冷媒に比べて動作圧力が高い。これにより、低温側循環回路内が高圧となるため、配管の強度を向上させる必要があり、そのための費用がかさむ虞がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を背景としてなされたもので、消費電力を抑え、且つコストを抑えた冷凍装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る冷凍装置は、熱源用熱媒体が流通し、圧縮機、熱源用熱交換器、膨張部、及び、前記熱源用熱媒体と負荷用熱媒体との間で熱交換を行うカスケード熱交換器が配管により接続された熱源熱媒体回路と、前記負荷用熱媒体が流通し、前記負荷用熱媒体を搬送するポンプ、負荷用熱交換器、及び前記カスケード熱交換器が配管により接続された負荷熱媒体回路と、を有し、前記熱源用熱媒体及び前記負荷用熱媒体の両方が、HFO1123を含む非共沸混合冷媒である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱源用熱媒体及び負荷用熱媒体のうち少なくとも一方が、HFO1123を含む冷媒であるため、エネルギ消費量を削減することができ、また、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る冷凍装置1を示す熱媒体回路図である。
図2】実施の形態1に係る冷凍装置1の作用を示すグラフである。
図3】比較例1に係る冷凍装置の作用を示すグラフである。
図4】実施の形態1の変形例に係る冷凍装置100の作用を示すグラフである。
図5】比較例2に係る冷凍装置の作用を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る冷凍装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る冷凍装置1を示す熱媒体回路図である。この図1に基づいて、冷凍装置1について説明する。図1に示すように、冷凍装置1は、熱源側の熱源熱媒体回路2と、負荷側の負荷熱媒体回路3とを備えており、これらがカスケード熱交換器7で接続された二段構成の冷凍装置1である。なお、冷凍装置1は、二段構成されたものに限らず、多段構成としてもよい。
【0011】
熱源熱媒体回路2は、熱源用熱媒体が流通し、圧縮機21、熱源用熱交換器22、膨張部23、及びカスケード熱交換器7が配管により接続されたものである。熱源用熱媒体は、HFO1123を含む冷媒である。そして、圧縮機21は、この熱源用熱媒体を圧縮するものであり、熱源用熱交換器22は、熱源用熱媒体と、例えば室外空気とを熱交換するものである。ここで、熱源熱媒体回路2には、熱源用送風機22aが設けられており、この熱源用送風機22aは、室外空気を熱源用熱交換器22に送風するものである。また、膨張部23は、熱源用熱媒体を膨張するものである。なお、熱源用熱媒体は、HFO1123のみの単一冷媒としてもよいし、HFO1123を含む混合冷媒としてもよい。
【0012】
負荷熱媒体回路3は、負荷用熱媒体が流通し、ポンプ31、負荷用熱交換器32、カスケード熱交換器7が配管により接続されたものである。負荷用熱媒体は、熱源用熱媒体と同様に、HFO1123を含む冷媒である。そして、ポンプ31は、負荷用熱媒体を搬送するものであり、負荷用熱交換器32は、負荷用熱媒体と、例えば室内空気とを熱交換するものである。ここで、負荷熱媒体回路3には、負荷用送風機32aが設けられており、この負荷用送風機32aは、室内空気を負荷用熱交換器32に送風するものである。なお、負荷用熱媒体は、HFO1123のみの単一冷媒としてもよいし、HFO1123を含む混合冷媒としてもよい。また、負荷用熱媒体は、そのほかに、水としてもよいし、不凍液としてもよい。
【0013】
なお、熱源熱媒体回路2と、負荷熱媒体回路3におけるポンプ31とは、室外空間4に設置されており、負荷熱媒体回路3における負荷用熱交換器32は、室内空間5に設置されている。そして、ポンプ31と負荷用熱交換器32とは、第1の延長配管6aで接続されている。また、熱源熱媒体回路2と負荷熱媒体回路3とを接続するカスケード熱交換器7と、負荷用熱交換器32とは、第2の延長配管6bで接続されている。
【0014】
カスケード熱交換器7は、前述の如く、熱源熱媒体回路2と負荷熱媒体回路3とを接続するものであり、例えばプレート熱交換器又は二重管熱交換器等で構成されている。そして、このカスケード熱交換器7は、熱源熱媒体回路2を流通する熱源用熱媒体と、負荷熱媒体回路3を流通する負荷用熱媒体との間で熱交換を行うものである。このように、カスケード熱交換器7によって二段構成された冷凍装置1は、熱源用熱媒体と負荷用熱媒体との間で熱交換が行われ、これにより、夫々独立した熱源熱媒体回路2及び負荷熱媒体回路3を、連携して制御することが可能である。
【0015】
次に、本実施の形態1に係る冷凍装置1の動作について説明する。なお、本実施の形態1においては、一例として、冷房運転における動作について説明する。
【0016】
先ず、熱源熱媒体回路2における動作について説明する。圧縮機21は、熱源用熱媒体を吸入し、この熱源用熱媒体を圧縮して高温高圧のガスの状態で吐出する。この吐出された熱源用熱媒体は、熱源用熱交換器22に流入し、熱源用熱交換器22は、熱源用送風機22aから供給される室外空気との熱交換により、熱源用熱媒体を凝縮する。この凝縮された熱源用熱媒体は、膨張部23に流入し、膨張部23は、凝縮された熱源用熱媒体を減圧する。そして、減圧された熱源用熱媒体は、カスケード熱交換器7に流入し、カスケード熱交換器7は、負荷熱媒体回路3における負荷用熱媒体との熱交換により、熱源用熱媒体を蒸発する。そして、蒸発された熱源用熱媒体は、圧縮機21に吸入される。
【0017】
次に、負荷熱媒体回路3における動作について説明する。ポンプ31は、負荷用熱媒体を搬送し、搬送された負荷用熱媒体は、負荷用熱交換器32に流入する。負荷用熱交換器32は、負荷用送風機32aから供給される室内空気との熱交換により、負荷用熱媒体を蒸発する。この蒸発された負荷用熱媒体は、カスケード熱交換器7に流入し、カスケード熱交換器7は、熱源熱媒体回路2における熱源用熱媒体との熱交換により、負荷用熱媒体を凝縮する。そして凝縮液化された負荷用熱媒体は、ポンプ31に流入する。
【0018】
このように、本実施の形態1において、熱源用熱媒体と負荷用熱媒体とは、カスケード熱交換器7における流通方向が対向流である。
【0019】
次に、本実施の形態1に係る冷凍装置1の作用について説明する。本実施の形態1では、上記のとおり、熱源用熱媒体及び負荷用熱媒体として、HFO1123を含む冷媒が使用されている。このHFO1123は、そのガス密度が、HFO1234yfのガス密度よりも25%程度高い。このため、熱媒体が循環する量が同一の熱媒体回路においては、熱媒体としてHFO1123を用いることによって、HFO1234yfを用いるよりも、流通する流速が遅くなり、これにより、熱媒体回路における配管の圧力損失を低減することができる。
【0020】
このように、本実施の形態1は、熱源用熱媒体及び負荷用熱媒体として、HFO1123を含む冷媒が使用されているため、熱源熱媒体回路2及び負荷熱媒体回路3における配管の圧力損失を低減することができる。従って、圧縮機21及びポンプ31の搬送動力を抑えることができ、これにより、エネルギ消費量を抑制することができる。
【0021】
また、HFO1123の標準沸点は、−51℃であり、二酸化炭素は、−78℃である。このため、熱媒体の蒸発温度が同一の熱媒体回路においては、熱媒体としてHFO1123を用いることによって、二酸化炭素を用いるよりも、低い圧力で運転させることができる。このため、熱媒体回路における配管の耐圧性を過剰に向上させる必要がない。
【0022】
このように、本実施の形態1は、熱源用熱媒体及び負荷用熱媒体として、HFO1123を含む冷媒が使用されているため、熱源熱媒体回路2及び負荷熱媒体回路3における配管等の要素機器の耐圧性を抑えることができる。このため、冷凍装置1を製造するコストを削減することができる。
【0023】
なお、本実施の形態1では、熱源用熱媒体及び負荷用熱媒体のいずれも、HFO1123を含む冷媒としたが、熱源用熱媒体及び負荷用熱媒体のうち少なくとも一方が、HFO1123を含む冷媒であればよい。この場合、HFO1123を含む冷媒が使用された熱源熱媒体回路2又は負荷熱媒体回路3のいずれかにおいて、上記のエネルギ消費量の低減及びコストの削減という効果を奏する。
【0024】
また、本実施の形態1では、負荷熱媒体回路3における負荷用熱交換器32及びカスケード熱交換器7において、熱伝達率の良好な相変化熱伝達を利用しているため、熱交換性能が向上する。このため、これらの負荷用熱交換器32及びカスケード熱交換器7の小型化を図ることができる。
【0025】
更に、本実施の形態1では、熱源用熱媒体と負荷用熱媒体とは、カスケード熱交換器7における流通方向が対向流である。図2は、実施の形態1に係る冷凍装置1の作用を示すグラフであり、図3は、比較例1に係る冷凍装置の作用を示すグラフである。本実施の形態1に係る流通方向が対向流である冷凍装置1(図2)の作用を、カスケード熱交換器7における流通方向が並行流である比較例1(図3)と比較して説明する。なお、熱源用熱媒体及び負荷用熱媒体は、いずれも、HFO1123のみの単一冷媒である。
【0026】
図2図3において、横軸は熱媒体が流通する流れ方向を示し、縦軸は熱媒体の温度を示す。カスケード熱交換器7における流通方向が対向流である場合、図2に示すように、熱源用熱媒体の温度と負荷用熱媒体の温度との温度差ΔTfが、流れ方向において、均一である。従って、カスケード熱交換器7における熱交換性能が高い。これに対し、カスケード熱交換器7における流通方向が並行流である比較例1の場合、図3に示すように、熱源用熱媒体の温度と負荷用熱媒体の温度との温度差ΔTpが、流れ方向において、不均一である。このため、カスケード熱交換器7における熱交換性能が低い。
【0027】
以上のとおり、本実施の形態1は、熱源用熱媒体と負荷用熱媒体とは、カスケード熱交換器7における流通方向が対向流であるため、カスケード熱交換器7における熱交換性能が高い。このため、カスケード熱交換器7の小型化を図ることができる。
【0028】
(変形例)
次に、本実施の形態1の変形例について説明する。変形例では、熱源用熱媒体及び負荷用熱媒体が、いずれも、HFO1123を含む混合冷媒である点で実施の形態1と相違し、それ以外は実施の形態1と共通する。即ち、変形例においても、熱源用熱媒体と負荷用熱媒体とは、カスケード熱交換器7における流通方向が対向流である。図4は、実施の形態1の変形例に係る冷凍装置100の作用を示すグラフであり、図5は、比較例2に係る冷凍装置の作用を示すグラフである。変形例に係るカスケード熱交換器7における流通方向が対向流である冷凍装置100(図4)の作用を、カスケード熱交換器7における流通方向が並行流である比較例2(図5)と比較して説明する。
【0029】
変形例では、前述の如く、熱源用熱媒体及び負荷用熱媒体のいずれも、HFO1123を含む混合冷媒である。HFO1123に添加する冷媒は、例えばR32冷媒である。HFO1123とR32冷媒との混合冷媒は、夫々沸点が異なるため、非共沸混合冷媒となる。この非共沸混合冷媒は、熱源熱媒体回路102及び負荷熱媒体回路103における熱媒体の流れ方向に対し、温度勾配が生じる。このため、単一冷媒よりも、熱源用熱媒体の温度と負荷用熱媒体の温度との温度差が、流れ方向において、不均一になり易い。
【0030】
図4図5において、横軸は熱媒体が流通する流れ方向を示し、縦軸は熱媒体の温度を示す。カスケード熱交換器7における流通方向が対向流である場合、図4に示すように、熱源用熱媒体の温度と負荷用熱媒体の温度との温度差ΔTfが、流れ方向において、均一である。従って、カスケード熱交換器7における熱交換性能が高い。これに対し、カスケード熱交換器7における流通方向が並行流である比較例2の場合、図5に示すように、熱源用熱媒体の温度と負荷用熱媒体の温度との温度差ΔTpが、流れ方向において、不均一である。このため、カスケード熱交換器7における熱交換性能が低い。
【0031】
以上のとおり、変形例では、熱源用熱媒体と負荷用熱媒体とは、カスケード熱交換器7における流通方向が対向流であるため、熱源用熱媒体及び負荷用熱媒体のいずれもが、HFO1123を含む混合冷媒であっても、カスケード熱交換器7における熱交換性能が高い。このため、この変形例においても、カスケード熱交換器7の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 冷凍装置、2 熱源熱媒体回路、3 負荷熱媒体回路、4 室外空間、5 室内空間、6a 第1の延長配管、6b 第2の延長配管、7 カスケード熱交換器、21 圧縮機、22 熱源用熱交換器、22a 熱源用送風機、23 膨張部、31 ポンプ、32 負荷用熱交換器、32a 負荷用送風機、100 冷凍装置、102 熱源熱媒体回路、103 負荷熱媒体回路。
図1
図2
図3
図4
図5