特許第6223801号(P6223801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223801
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】光デバイスウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   H01L21/78 S
   H01L21/78 B
   H01L21/78 V
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-251981(P2013-251981)
(22)【出願日】2013年12月5日
(65)【公開番号】特開2015-109368(P2015-109368A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】荒川 太朗
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−051246(JP,A)
【文献】 特開2013−118413(JP,A)
【文献】 特開2006−294674(JP,A)
【文献】 特開2012−023085(JP,A)
【文献】 特開2009−182178(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0012096(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に光デバイス層が積層され、交差する複数のストリートによって区画された各領域に光デバイスが形成された光デバイスウェーハの加工方法であって、
光デバイスウェーハに対して吸収性を有する波長のパルスレーザビームを光デバイスウェーハに照射して1パルスで1のレーザ加工穴を形成することを繰り返し、該ストリートに沿って所定の間隔を設けて複数のレーザ加工穴を形成するレーザ加工ステップと、
該レーザ加工ステップを実施した後、該レーザ加工穴にエッチング液を進入させて該レーザ加工穴の内周をエッチングするエッチングステップと、
該エッチングステップを実施した後、光デバイスウェーハに外力を付与して該ストリートに沿って光デバイスウェーハを分割し複数の光デバイスチップを形成する分割ステップと、を備えた光デバイスウェーハの加工方法。
【請求項2】
前記レーザ加工ステップを実施する前に、光デバイスウェーハの表面に保護膜を形成する保護膜形成ステップと、
少なくとも該レーザ加工ステップを実施した後、該保護膜を除去する保護膜除去ステップと、を備え、
該レーザ加工ステップでは、光デバイスウェーハの表面側に向かって前記パルスレーザビームを照射する、請求項1に記載の光デバイスウェーハの加工方法。
【請求項3】
前記エッチングステップを実施した後、かつ、前記分割ステップを実施する前に、光デバイスウェーハの裏面を研削する研削ステップを実施する
請求項1に記載の光デバイスウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイスウェーハを個々のデバイスに分割する加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光デバイスチップの製造工程では、サファイア基板や炭化珪素基板等の結晶成長用基板の表面の縦横に交差する複数のストリートによって区画される各領域に発光ダイオードやレーザダイオード等の発光素子を形成して光デバイスウェーハを製造する。その後、電極を形成し、ストリートに沿って光デバイスウェーハを分割することで個々の光デバイスチップを製造している。
【0003】
近年、生産性向上の観点から、光デバイスウェーハを分割するのにパルスレーザ加工装置が広く利用されている。パルスレーザ加工装置では、ストリートに沿ってパルスレーザを光デバイスウェーハの表面に照射してレーザ加工溝を形成した後、レーザ加工溝を分割起点に光デバイスウェーハを割断して個々のチップへと分割している(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0004】
上記のように光デバイスウェーハに対してレーザ加工を実施すると、レーザ加工溝の側面に歪みが形成される。そのため、例えば下記の特許文献2には、光デバイスウェーハを分割する前に光デバイスウェーハにドライエッチングやウェットエッチングを施して歪を除去し、製造される光デバイスチップの輝度を向上させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特開2006−024914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、レーザ加工によって形成されるレーザ加工溝は、例えば10μm以下と幅が狭い上、レーザ加工溝の内周面にはレーザ加工によって発生したデブリが多量に付着しており、エッチング液が溝の内部に進入しにくくなっている。そのため、レーザ加工溝の溝底まで十分にエッチングが施されずに光デバイスの輝度が向上しないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、更なる光デバイスの輝度向上を実現可能な光デバイスウェーハの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板の表面に光デバイス層が積層され、交差する複数のストリートによって区画された各領域に光デバイスが形成された光デバイスウェーハの加工方法であって、光デバイスウェーハに対して吸収性を有する波長のパルスレーザビームを光デバイスウェーハに照射して1パルスで1のレーザ加工穴を形成することを繰り返し、該ストリートに沿って所定の間隔を設けて複数のレーザ加工穴を形成するレーザ加工ステップと、該レーザ加工ステップを実施した後、該レーザ加工穴にエッチング液を進入させて該レーザ加工穴の内周をエッチングするエッチングステップと、該エッチングステップを実施した後、光デバイスウェーハに外力を付与して該ストリートに沿って光デバイスウェーハを分割し複数の光デバイスチップを形成する分割ステップと、を備えている。
【0009】
また、本発明は、上記レーザ加工ステップを実施する前に、光デバイスウェーハの表面に保護膜を形成する保護膜形成ステップと、少なくとも該レーザ加工ステップを実施した後、該保護膜を除去する保護膜除去ステップと、を備え、該レーザ加工ステップでは、光デバイスウェーハの表面側に向かって上記パルスレーザビームを照射することが望ましい。
さらに、本発明は、エッチングステップを実施した後、かつ、分割ステップを実施する前に、光デバイスウェーハの裏面を研削する研削ステップを実施することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる光デバイスウェーハの加工方法では、レーザ加工ステップを実施して1パルスのパルスレーザビームで1つのレーザ加工穴を形成することを繰り返し行い、ストリートに沿った複数のレーザ加工穴を形成するため、各レーザ加工穴の内周面への多量なデブリの付着を抑えることができる。これにより、レーザ加工ステップの実施後のエッチングステップにおいて、エッチング液をレーザ加工穴に十分に進入させてレーザ加工穴の穴底まで十分にエッチングを施すことができ、光デバイスの輝度の向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】光デバイスウェーハの一例を示す斜視図である。
図2】保護膜形成ステップを示す断面図である。
図3】レーザ加工ステップを示す断面図である。
図4】レーザ加工ステップを示す平面図である。
図5】レーザ加工穴の構成を示す断面図である。
図6】エッチングステップを示す断面図である。
図7】保護膜除去ステップを示す断面図である。
図8】研削ステップを示す断面図である。
図9】研削後の光デバイスウェーハを示す断面図である。
図10】分割ステップを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示す光デバイスウェーハWは、被加工物の一例であり、円形のサファイア基板1を備えている。図2に示すように、サファイア基板1の表面2aには、LEDなどの発光層5が積層され、図1に示す格子状のストリート3によって区画された各領域に光デバイス4が形成されている。一方、サファイア基板1の裏面2bは、研削される研削面となっており、光デバイス4が形成されていない。以下では、添付の図面を参照しながら光デバイスウェーハWを個々の光デバイス4に分割する加工方法について説明する。
【0013】
(1) 保護膜形成ステップ
図2に示すように、光デバイスウェーハWを構成するサファイア基板1の表面2aに積層された発光層5を覆う保護膜6を形成する。保護膜6は、例えば、SiO2などの酸化膜やレジストなどにより形成される。保護膜形成ステップは、少なくとも後記のレーザ加工ステップを実施する前に実施する。
【0014】
(2) レーザ加工ステップ
保護膜形成ステップを実施した後、図3に示すように、レーザビーム照射手段10により光デバイスウェーハWに対してレーザビームを照射してレーザ加工穴を形成する。保護膜6が形成された光デバイスウェーハWを、水平方向(+X方向)に移動させながら、レーザビーム照射手段10が、光デバイスウェーハWに対して吸収性を有する波長(例えば、355nmの波長)のパルスレーザビーム11をサファイア基板1の表面2aに向けて照射する。このとき、レーザビーム照射手段10は、パルスレーザビーム11の照射スポットを重ね合わせることなく、1パルスのパルスレーザビーム11で1つのレーザ加工穴7を形成する。
【0015】
レーザビーム照射手段10は、1パルスのパルスレーザビーム11の照射による1つのレーザ加工穴7の形成を間欠的に繰り返し行い、図4に示すように、光デバイスウェーハWのストリート3に沿って所定の間隔を設けてレーザ加工穴7を複数形成する。各レーザ加工穴7の間隔は、例えば1〜5μm程度とする。従来のように、ストリートに沿って一条のレーザ加工溝を形成する場合は、パルスレーザビームの照射スポットを部分的に重ねる必要があり、パルスレーザビームの照射により生成されたデブリが、先のパルスレーザビームによって形成された溝の内部に付着するため、レーザ加工溝の内側側壁に多くのデブリが堆積することとなっていたが、複数のレーザ加工穴7をサファイア基板1の表面2aに形成することで、照射スポットを部分的に重ねる必要がなく、レーザ加工中に発生するデブリがレーザ加工穴7の内部に付着するおそれを低減できる。また、発光層5が保護膜6によって覆われているため、デバイスウェーハWの表面側に向かってパルスレーザビームを照射しても、保護膜6にデブリが付着し、発光層5にデブリが付着することはない。
【0016】
レーザ加工穴7を形成するときは、レーザビーム照射手段10によって照射されるパルスレーザビーム11のスポット径と集光位置とを調整することによりパルスレーザビーム11の入射角度を調整し、図5に示すレーザ加工穴7のように、上記したパルスレーザビーム11が入射する部分において、傾斜したテーパー部8aを形成することが望ましい。
【0017】
図5に示すように、レーザ加工穴7には、テーパー部8aに連接する側壁部8bと、該側壁部8bに連接する底部8cとが形成されている。なお、レーザ加工穴7の最大径は、例えば2〜5μmとなっており、レーザ加工穴7の深さは、例えば20μmとなっている。このようにして図1で示した光デバイスウェーハWの全てのストリート3に沿ってパルスレーザビーム11を照射し、複数のレーザ加工穴7を形成したら、レーザ加工ステップを終了する。
【0018】
(3) エッチングステップ
レーザ加工ステップを実施した後、図6に示すように、レーザ加工穴7の内部にエッチング液12を供給し、ウェットエッチングを実施する。エッチング液12としては、例えば、硫酸、リン酸、塩酸等のエッチング液を使用できる。
【0019】
レーザ加工穴7にエッチング液12を供給するとき、レーザ加工穴7のテーパー部8aの傾斜によってレーザ加工穴7の内部にエッチング液が進入しやすくなっているため、エッチング液12がレーザ加工穴7の側壁部8bに沿って下方に流れる。また、レーザ加工穴7の側壁部8bには、デブリが堆積して付着していないことから、エッチング液12が底部8cに至るまで流れる。その結果、レーザ加工穴7の側壁部8bだけでなく底部8cまで十分にエッチングを施すことができる。
【0020】
(4) 保護膜除去ステップ
次に、図6で示した光デバイスウェーハWのように、サファイア基板1の表面2a側に形成された保護膜6を除去し、図7に示すように、サファイア基板1の表面2aに積層された発光層5を上向きに露出させる。保護膜6を除去する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、保護膜6がレジスト膜である場合は、酸素プラズマや専用リムーバーを使用することができる。また、保護膜6がSiO2膜である場合は、KOHによるウェットエッチングやSF6によるドライエッチング等で除去することができる。保護膜除去ステップは、少なくともレーザ加工ステップを実施した後に実施する。保護膜6の除去により、レーザ加工ステップにおいて保護膜6に付着したデブリも除去される。
【0021】
(5) 研削ステップ
保護膜除去ステップを実施した後、図8に示す研削手段20によって光デバイスウェーハWを研削する。研削手段20は、鉛直方向の軸心を有するスピンドル21と、スピンドル21の下端においてマウント22を介して連結された研削ホイール23と、研削ホイール23の下部に環状に固着された研削砥石24とを少なくとも備えている。図示しないモータによってスピンドル21を回転させると、研削ホイール23を所定の回転速度で回転させることができる。
【0022】
光デバイスウェーハWを薄化するためには、サファイア基板1の表面2aに表面保護テープ9を貼着し、保持テーブル25の上面に表面保護テープ9側を載置してサファイア基板1の裏面2bを上向きに露出させ、図示しない吸引源によってサファイア基板1を保持テーブル25で吸引保持する。次いで、保持テーブル25を、例えば、矢印A方向に回転させつつ、スピンドル21を回転させて研削ホイール23を矢印A方向に回転させながらサファイア基板1の裏面2bに接近する方向に研削手段20を下降させる。そして、研削砥石24によって裏面2bを押圧しながら所定の厚みに至るまで研削する。
【0023】
研削ステップの他の例として、図2で示した保護膜6を光デバイスウェーハWの研削時の保護膜として使用するようにしてもよい。すなわち、上記保護膜除去ステップを実施する前に、図8で示した保持テーブル25の上面において、保護膜6側を保持してサファイア基板1の裏面2bを上向きに露出させ、上記の研削と同様に研削手段20によってサファイア基板1の裏面2bに研削を施す。そして、図9に示すように、サファイア基板1の裏面2bを研削して所定の厚みに形成された後、サファイア基板1の表面2aから保護膜6を除去する。
【0024】
(6) 分割ステップ
次に、図10に示すように、ブレーキングによって光デバイスウェーハWを個々の光デバイス4に分割する。縦横のストリート3上に沿って形成された複数のレーザ加工穴7の整列方向を分割位置13として光デバイスウェーハWに対して外力を付与し、当該分割位置13を起点にして光デバイスウェーハWを個々の光デバイス4に割断する。このようにして光デバイスウェーハWを個々の光デバイス4に分割したら、分割ステップを終了する。
【0025】
以上のとおり、本発明の光デバイスウェーハの加工方法では、レーザ加工ステップを実施して1パルスのパルスレーザビーム11で1つのレーザ加工穴7を形成することをサファイア基板1の表面2aのストリート3に沿って所定の間隔をあけて繰り返し行うため、レーザ加工穴7の側壁部8bに多量のデブリが堆積して付着するのを低減できる。
また、レーザ加工ステップの実施後エッチングステップを実施する際には、レーザ加工穴7にテーパー部8aが形成されていることから、エッチング液がレーザ加工穴7の内部に進入しやすい上、レーザ加工穴7の側壁部8bから底部8cにかけてエッチング液12を進入させて効果的にエッチングを行うことができる。これにより、光デバイス4の更なる輝度向上を実現できる。
【符号の説明】
【0026】
1:サファイア基板 2a:表面 2b:裏面 3:ストリート 4:光デバイス
5:発光層 6:保護膜 7:レーザ加工穴 8a:テーパー部 8b:側壁部
8c:底部 9:表面保護テープ
10:レーザビーム照射手段 11:パルスレーザビーム 12:エッチング液
13:分割位置
20:研削手段 21:スピンドル 22:マウント 23:研削ホイール
24:研削砥石 25:保持テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10