特許第6223817号(P6223817)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223817
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】チャージポンプ回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/07 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   H02M3/07
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-268900(P2013-268900)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-126595(P2015-126595A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083194
【弁理士】
【氏名又は名称】長尾 常明
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 昭
【審査官】 小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−305871(JP,A)
【文献】 特開2007−228679(JP,A)
【文献】 特開2004−343894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇圧入力端子と昇圧出力端子との間にn段(nは以上の整数)に亘って直列接続されたn個のPMOSの電荷転送用トランジスタと、
該n個の電荷転送用トランジスタにおける前段と後段を接続する各共通接続点に一端が接続されたn−1個のポンプコンデンサと、
該n−1個のポンプコンデンサの内の偶数段目のポンプコンデンサの他端に第1のクロックを供給する第1のクロックドライバと、
前記n−1個のポンプコンデンサの内の奇数段目のポンプコンデンサの他端に前記第1のクロックと逆相関係にある第1の反転クロックを供給する第2のクロックドライバと、
出力側が当該段の前記電荷転送用トランジスタのゲートに接続されるn個のCMOSインバータと、
前記n個のCMOSインバータのうち、奇数段目の前記電荷転送用トランジスタのゲートに前記出力側が接続された前記CMOSインバータを構成するNMOSトランジスタのゲートに前記第1のクロックと同相の第2のクロックを供給する第3のクロックドライバと、
前記n個のCMOSインバータのうち、偶数段目の前記電荷転送用トランジスタのゲートに前記出力側が接続された前記CMOSインバータを構成するNMOSトランジスタのゲートに前記第2のクロックと逆相関係にある第2の反転クロックを供給する第4のクロックドライバと、
前記昇圧出力端子に接続された平滑用コンデンサとを備え、
各段の前記CMOSインバータについて、NMOSトランジスタのソースは接地され、PMOSトランジスタのゲートは当該段の電荷転送用トランジスタの入力側に接続され、PMOSトランジスタのソースは当該段の電荷転送用トランジスタの出力側に接続されていて、
前記第2のクロックは、前記第1のクロックが立ち上がった後に立ち上がり、前記第1のクロックが立ち下がる前に立ち下がり、
前記第2の反転クロックは、前記第1の反転クロックが立ち上がった後に立ち上がり、前記第1の反転クロックが立ち下がる前に立ち下がる、
波形を有することを特徴とするチャージポンプ回路。
【請求項2】
請求項1に記載のチャージポンプ回路において、
前記各トランジスタは、すべてエンハンスメント型であることを特徴とするチャージポンプ回路。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路に搭載されるチャージポンプ回路に関し、特に動作クロックの周波数を高くできるようにして昇圧効率が劣化することがないようにしたチャージポンプ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の電源電圧は低電圧化が進んでいるが、集積化されるアナログ回路や一部のインタフェース回路に、電源電圧とは異なる高電圧が必要となる場合がある。その高電圧を電源電圧から生成するための1つの手段としてチャージポンプ回路が使用される。
【0003】
一般的に、チャージポンプ回路はスイッチングレギュレータ回路よりも電力効率は劣るものの、ノイズ発生の面や集積化しやすい利点もあり、現在では多くの半導体集積回路に採用されている。
【0004】
基本的なチャージポンプ回路として、ディクソン(Dickson)により提案されたチャージポンプ回路が知られている(非特許文献1)。図3に4段構成のディクソンチャージポンプ回路(第1の従来例)を示す。
【0005】
図3において、ドレインとゲートを接続することでダイオード構成となったNMOSトランジスタMNS1〜MNS5が、電荷転送スイッチとして、ノードN1〜N5を介して昇圧入力端子と昇圧出力端子との間に、直列接続されている。ノードN1〜N4にはポンプコンデンサC1〜C4の一端が接続され、そのうちの偶数段目のポンプコンデンサC2、C4の他端にはクロックCLK3がクロックドライバDR1から入力し、奇数段目のポンプコンデンサC1、C3の他端にはクロックCLK3BがクロックドライバDR2から入力している。Coutは平滑用の出力コンデンサである。クロックCLK3とクロックCLK3Bは相補関係にある。
【0006】
動作としては、クロックCLK3、CLK3BとトランジスタMNS1〜MNS5により、各ポンプコンデンサC1〜C4に対する電荷のチャージと加算が繰り返される。NMOSトランジスタMNS1〜MNS5による損失がないとすれば、前段のポンプコンデンサの電荷のチャージによって得られた電圧に、クロックCLK3又はCLK3Bの電圧Vdd分が加算されて、次段のポンプコンデンサにチャージされる。この動作の繰り返しにより昇圧出力電圧VOUTが得られる。
【0007】
例えば、クロックCLK3Bが”L”のときは、ポンプコンデンサC1に入力電圧VINがチャージされてノードN1が電圧VINになり、次にクロックCLK3Bが“H”になると、そのクロックCLK3Bの電圧Vddが加算されて、ノードN1の電圧がVIN+Vddとなる。このように、クロックCLK3Bが“H”と”L”を繰り返すたびに、ノードN1の電圧はVINとVIN+Vddを繰り返す。同様にして、ノードN2の電圧は、クロックCLK3が”L”と“H”を繰り返すたびに、VIN+VddとVIN+2Vddを繰り返す。さらに、ノードN3の電圧はクロックCLK3Bが”L”と“H”を繰り返すたびに、VIN+2VddとVIN+3Vddを繰り返す。さらに、ノードN4の電圧は、クロックCLK3が”L”と“H”を繰り返すたびに、VIN+3VddとVIN+4Vddを繰り返す。そして、ノードN5の出力電圧VOUTは、VIN+4Vddとなる。
【0008】
しかしながら、図3のチャージポンプ回路は、各電荷転送スイッチがダイオード接続されたNMOSトランジスタMNS1〜MNS5であるため、それらのスレショルド電圧分の電圧降下が生じるので、効率が劣化するという問題点をもっている。
【0009】
そこで、現在では、その電荷転送スイッチによる電圧降下を低減するために、電荷転送スイッチをMOSトランジスタで構成して、そのトランジスタをON/OFF制御する構成が主流となっている。そのような状況の下、電荷転送スイッチとなるMOSトランジスタのゲートを効率良く制御し、チャージポンプ回路の効率改善を図る方策が提案されている。
【0010】
図4は1つの改善を図ったチャージポンプ回路(第2の従来例)である。このチャージポンプ回路は、電荷転送スイッチとしてPMOSトランジスタMPS1〜MPS5を使用する。そして、その奇数段目のトランジスタMPS1、MPS3、MPS5のゲートを、クロックCLK5が入力し昇圧出力電圧VOUTを駆動電源とするレベルシフト回路LS1の出力で制御し、その偶数段目のトランジスタMPS2、MPS4のゲートを、クロックCLK5Bが入力し同様に昇圧出力電圧VOUTを駆動電源とするレベルシフト回路LS2の出力で制御するものである。
【0011】
レベルシフト回路LS1、LS2は、図5に示すような構成である。PMOSトランジスタMP11、MP12とNMOSトランジスタMN11、MN12はラッチ回路を構成する。また、PMOSトランジスタMP13とNMOSトランジスタMN13はCMOSインバータを構成し、PMOSトランジスタMP14とNMOSトランジスタMN14もCMOSインバータを構成する。このレベルシフト回路LS1、LS2では、低い入力電圧Vddを高い電圧VH(図3ではVOUT)にレベルシフトして出力する。
【0012】
図6はクロックCLK4とその反転クロックCLK4B、クロックCLK4とその反転CLK4Bの波形を示す。クロックCLK4、CLK5は相補関係にある。クロックCLK5とCLK5Bの”L”レベルは重複していない。
【0013】
図4のチャージポンプ回路では、ポンプコンデンサC1〜C4に入力電圧VINあるいは前段のポンプコンデンサの電圧をチャージする際には、レベルシフト回路LS1あるいはLS2の出力がGND電位になることで、電荷転送用のトランジスタMPS1〜MPS5の対応するものがONする。また、ポンプコンデンサC1〜C4の電圧にクロックドライバDR1あるいはDR2の出力電圧Vddを加算する際は、トランジスタMPS1〜MPS5の対応するものがOFFに制御される。
【0014】
このとき、レベルシフト回路LS1あるいはLS2の出力電圧が、チャージポンプ回路自体の最終的な昇圧電圧VOUTと高くなるので、トランジスタMPS1〜MPS5の対応するもののゲート電圧は、ソース電圧と同じかあるいはより高い逆バイアス電圧になり、そのOFFが完全に行われる。つまり、トランジスタトランジスタMPS1〜MPS5のOFFを完全に行うために、レベルシフト回路LS1、LS2を使用している。
【0015】
しかし、電荷転送用のトランジスタMPS1〜MPS5の内の前段部分については、ゲートに印加されるOFF制御のための逆バイアス電圧が必要以上に高くなり、特別な耐圧構造を採用する必要がある。
【0016】
図7に別の従来のチャージポンプ回路(第3の従来例:特許文献1)を示す。このチャージポンプ回路は、各段の電荷転送用のトランジスタMPS1〜MPS5のゲートを、個別のレベルシフト回路LS1〜LS5で制御するようにしたもので、そのレベルシフト回路LS1〜LS5の駆動電源に、当該段のノードの電圧を使用するようにしたものである。
【0017】
図7のチャージポンプ回路では、ポンプコンデンサC1〜C4に入力電圧VINあるいは前段のポンプコンデンサの電圧をチャージする際には、レベルシフト回路LS1〜LS5の対応するものの出力がGND電位になることで、電荷転送用のトランジスタMPS1〜MPS5の対応するものがONする。また、ポンプコンデンサC1〜C4の電圧にクロックドライバDR1あるいはDR2の出力電圧Vddを加算する際は、トランジスタMPS1〜MPS5の対応するものがOFFに制御される。
【0018】
このとき、レベルシフト回路LS1〜LS5の出力電圧は、対応する段のノードの電圧であるので、トランジスタMPS1〜MPS5の対応するもののゲートはソースと同じ電圧となり、そのOFFが完全に行われる。
【0019】
この図7のチャージポンプ回路では、トランジスタMPS1〜MPS5をOFFするためのゲートに印加する電圧が、必要最小限にとどめられるので、図4に示したチャージポンプ回路と比較して、レベルシフト回路LS1〜LS5に特別の耐圧は要求されす、昇圧系の自己消費電力を低減し、電力効率化を図ることができる。しかし、各段にレベルシフト回路が必要となり、回路構成が複雑となる。
【0020】
図8にさらに別の従来のチャージポンプ回路(第4の従来例:特許文献2)を示す。このチャージポンプ回路は、1段目と2段目の電荷転送スイッチとしてNMOSトランジスタMNS1、MNS2を、3段目と4段目の電荷転送スイッチとしてPMOSトランジスタMPS3、MPS4を、5段目の電荷転送スイッチとしてダイオード接続のNMOSトランジスタMNS5を使用している。
【0021】
そして、トランジスタMNS1のゲート制御用にPMOSトランジスタMP1とNMOSトランジスタMN1からなるCMOSインバータを使用し、トランジスタMNS2のゲート制御用にPMOSトランジスタMP2とNMOSトランジスタMN2からなるCMOSインバータを使用し、トランジスタMPS3のゲート制御用にPMOSトランジスタMP3とディプレッション型NMOSトランジスタMND3からなるCMOSインバータを使用し、トランジスタMPS4のゲート制御用にPMOSトランジスタMP4とディプレッション型NMOSトランジスタMND4からなるCMOSインバータを使用している。ディプレッション型NMOSトランジスタMND3、MND4は、基板バイアス効果によるトランジスタのON不全を避けるために、エンハンスメント型に代えたものである。
【0022】
図8のチャージポンプ回路では、1段目と2段目では、ポンプコンデンサC1あるいはC2にチャージする際に、当該のポンプコンデンサへのチャージ電圧が次段のポンプコンデンサの加算電圧よりも低いことで、トランジスタMP1、MP2の内の当該のトランジスタのゲートがソースより低くなってONし、トランジスタMNS1、MNS2の対応するものがONする。このとき、トランジスタMN1、MN2の対応するものはゲート電圧がソース電圧と等しくなってOFFする。
【0023】
また、1段目と2段目において、ポンプコンデンサのチャージ電圧にクロックドライバDR1あるいはDR2の出力電圧Vddを加算する際には、当該の加算電圧が高くなることでトランジスタMN1、MN2の対応するものがONし、トランジスタMP1、MP2の対応するものがOFFすることで、トランジスタMNS1、MNS2の対応するものがOFFする。
【0024】
3段目と4段目では、ポンプコンデンサC3あるいはC4にチャージする際に、2段前のポンプコンデンサへのチャージ電圧が1段前のポンプコンデンサの加算電圧よりも低いことで、トランジスタMN3、MND4の内の当該のトランジスタのゲートがソースより高くなってONし、トランジスタMPS3、MPS4の対応するものがONする。このとき、トランジスタMP3、MP4の対応するものはゲートがソース電圧と等しくなってOFFする。
【0025】
また、3段目と4段目において、ポンプコンデンサのチャージ電圧にクロックドライバDR1あるいはDR2の出力電圧Vddを加算する際には、当該の加算電圧が高くなり1段前のポンプコンデンサがチャージされることでトランジスタMP3、MP4の対応するものがONし、トランジスタMND3、MND4の対応するものがOFFすることで、トランジスタMPS3、MPS4の対応するものがOFFする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開2002−305871号公報
【特許文献2】特開2007−228679号公報
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】J.F.Dickson,“On-ChipHigh-Vo1tage Generation in NMOS Integrated Cicuits Using an Improved Vo1tageMu1tip1ier Technique”IEEE Journal So1id-StateCicuits,Vo1.11,pp.374-378(June 1976)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
しかしながら、図8に示したチャージポンプ回路では、CMOSインバータにおいて、スイッチング時の貫通電流の発生を避けることはできない。よって、ポンプコンデンサの小容量化などにより動作クロックの周波数を高くせざるを得ないとき、貫通電流による昇圧効率の劣化を無視できなくなり、最悪の場合は昇圧動作をしないという課題があった。
【0029】
本発明の目的は、電荷転送スイッチのスイッチング動作時の貫通電流の発生を避けることができ、動作クロックの周波数が高くなっても、電力効率を低下させないようにしたチャージポンプ回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、昇圧入力端子と昇圧出力端子との間にn段(nは以上の整数)に亘って直列接続されたn個のPMOSの電荷転送用トランジスタと、該n個の電荷転送用トランジスタにおける前段と後段を接続する各共通接続点に一端が接続されたn−1個のポンプコンデンサと、該n−1個のポンプコンデンサの内の偶数段目のポンプコンデンサの他端に第1のクロックを供給する第1のクロックドライバと、前記n−1個のポンプコンデンサの内の奇数段目のポンプコンデンサの他端に前記第1のクロックと逆相関係にある第1の反転クロックを供給する第2のクロックドライバと、出力側が当該段の前記電荷転送用トランジスタのゲートに接続されるn個のCMOSインバータと、前記n個のCMOSインバータのうち、奇数段目の前記電荷転送用トランジスタのゲートに前記出力側が接続された前記CMOSインバータを構成するNMOSトランジスタのゲートに前記第1のクロックと同相の第2のクロックを供給する第3のクロックドライバと、前記n個のCMOSインバータのうち、偶数段目の前記電荷転送用トランジスタのゲートに前記出力側が接続された前記CMOSインバータを構成するNMOSトランジスタのゲートに前記第2のクロックと逆相関係にある第2の反転クロックを供給する第4のクロックドライバと、前記昇圧出力端子に接続された平滑用コンデンサとを備え、各段の前記CMOSインバータについて、NMOSトランジスタのソースは接地され、PMOSトランジスタのゲートは当該段の電荷転送用トランジスタの入力側に接続され、PMOSトランジスタのソースは当該段の電荷転送用トランジスタの出力側に接続されていて、前記第2のクロックは、前記第1のクロックが立ち上がった後に立ち上がり、前記第1のクロックが立ち下がる前に立ち下がり、前記第2の反転クロックは、前記第1の反転クロックが立ち上がった後に立ち上がり、前記第1の反転クロックが立ち下がる前に立ち下がる波形を有することを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載のチャージポンプ回路において、前記各トランジスタは、すべてエンハンスメント型であることを特徴とする。

【発明の効果】
【0031】
本発明のチャージポンプ回路によれば、電荷転送スイッチのゲートのスイッチング時の貫通電流を完全に避けることができるため、動作クロックの周波数が高くなっても、電力効率を低下させないでチャージポンプ回路を動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施例をチャージポンプ回路の回路図である。
図2図1のチャージポンプ回路の動作クロックの波形図である。
図3】第1の従来例のチャージポンプ回路の回路図である。
図4】第2の従来例のチャージポンプの回路図である。
図5】レベルシフト回路の回路図である。
図6図4のチャージポンプ回路の動作クロックの波形図である。
図7】第3の従来例のチャージポンプの回路図である。
図8】第4の従来例のチャージポンプの回路図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1に本発明の1つの実施例のチャージポンプ回路を示す。VINは昇圧入力電圧、VOUTは昇圧出力電圧である。CLK1、CLK2は同相のクロック、CLK1BはクロックCLK1の反転クロック、CLK2BはクロックCLK2の反転クロックであり、これら4つのクロックは図2に示すような位相関係にあり、Iの区間とIIの区間の間の切り替わり部分では“H”レベルが重ならない波形となっている。DR1〜DR4はクロックドライバ、MN1〜MN5はCMOSインバータの一方を構成するエンハンスメント型NMOSトランジスタ、MP1〜MP5はCMOSインバータの他方を構成するエンハンスメント型PMOSトランジスタ、MPS1〜MPS5は電荷転送スイッチとしてのエンハンスメント型PMOSトランジスタ、C1〜C4はポンプコンデンサ、Coutは出力コンデンサである。
【0034】
以下に本実施例のチャージポンプ回路の動作を説明する。トランジスタMPS1〜MPS5には、汎用のNウェルプロセスで構成することを前提に、基板バイアス効果を受けないように、ソースと基板を同電圧で接続できるPMOSトランジスタを採用する。このPMOSトランジスタMPS1〜MPS5の制御では、それらのトランジスタMPS1〜MPS5をONさせる時には、トランジスタMN1〜MN5の対応するものをONさせるとともにトランジスタMP1〜MP5の対応するものをOFFさせて、そのゲートに接地電圧GNDを与える。また、トランジスタMPS1〜MPS5をOFFさせる時には、トランジスタMN1〜MN5の対応するものをOFFさせるとともにトランジスタMP1〜MP5の対応するものをONさせて、トランジスタMPS1〜MPS5のゲートとソースを同電圧にする。
【0035】
クロックドライバDR1〜DR4の出力電圧は、クロックCLK1、CLKB1、CLK2、CLK2Bが“H”と“L”の間で変化するとき、電源電圧Vddと接地電圧GNDで振れる振幅をもつ。また、入力電圧VINはVdd又はそれ以下の電圧である。なお、説明を簡単にするため、電荷転送スイッチによる電圧ロス分(トランジスタMPS1〜MPS5のON時のソース・ドレイン間電圧)は無視することにする。また、昇圧動作そのものについては従来例と同様であるので、以下では電荷転送スイッチのスイッチングを主に説明する。
【0036】
さて、図2における時刻t0では、すべてのクロックCLK1、CLK2、CLK1B、CLK2Bが
“L”になっている。よって、トランジスタMN1〜MN5がOFFしている。また、ポンプコンデンサC1〜C4はノードN1〜N4と反対側の端部がGND電位になっていて、後記する動作が以前に行われたことによって、ノードN1の電圧はVIN、ノードN2の電圧はVIN+Vdd、ノードN3の電圧はVIN+2Vdd、ノードN4の電圧はVIN+3Vdd、ノードN5はVIN+4Vddとなっている。このため、トランジスタMP1はソースとゲートが同電圧でOFFしているが、トランジスタMP2〜MP5は、ソースよりもゲートの電圧が低いのでONしている。また、トランジスタMN1〜MN5はゲートがGNDになってOFFしている。よって、電荷転送スイッチとしてのトランジスタMPS1〜MPS5は、OFFしている。
【0037】
次に、時刻t1では、クロックCLK1Bが“L”→“H”に変化するので、クロックドライバDR2の出力電圧Vddによって、ノードN1がVIN+Vddに持ち上がり、ノードN3がVIN+3Vddに持ち上がる。よって、トランジスタMP2、MP4がゲートとソースが同電位となってON→OFFに変化する。トランジスタMP1はゲートがソースより低い電圧となってOFF→ONに変化する。トランジスタMP3はONを継続する。
【0038】
次に、時刻t2では、クロックCLK2Bが“L”→“H”に変化するので、トランジスタMN2、MN4がONして、トランジスタMPS2、MPS4がONする。このため、ノードN1とN2が同電位となり、トランジスタMP2がOFFを継続する。また、ノードN3とN4が同電位となり、トランジスタMP4がOFFを継続する。このとき、ノードN1の電荷がノードN2に移動して、両ノードN1、N2の電圧がVIN+Vddとなる。また、ノードN3の電荷がノードN4に移動して、両ノードN3、N4の電圧がVIN+3Vddとなる。
【0039】
このように、時刻t1〜t2では、まずトランジスタMP2がON→OFFに変化した後にトランジスタMN2がOFF→ONに変化し、トランジスタMP4がON→OFFに変化した後にトランジスタMN4がOFF→ONに変化しているので、それらのCMOSインバータでは貫通電流は発生しない。
【0040】
次に、時刻t3では、クロックCLK2Bが“H”→“L”に変化するので、トランジスタMN2、MN4がOFFする。よって、トランジスタMPS2、MPS4がOFFし、前記電荷移動が停止する。
【0041】
次に、時刻t4では、クロックCLK1Bが“H”→“L”に変化するので、ノードN1、N3の電圧がVddだけ低下する。つまり、ノードN1は電圧がVIN+VddからVINに低下し、ノードN3の電圧がVIN+3VddからVIN+2Vddに低下する。よって、トランジスタMP1がソースとゲートが同一電圧となってON→OFFに変化し、トランジスタMP2、MP4がソースよりゲートが低い電圧となってOFF→ONに変化して、トランジスタMPS2、MPS4のOFF状態を強化する。
【0042】
このように、時刻t3〜t4では、まずトランジスタMN2がON→OFFに変化した後にトランジスタMP2がOFF→ONに変化し、トランジスタMN4がON→OFFに変化した後にトランジスタMP4がOFF→ONに変化しているので、それらのCMOSインバータでは貫通電流は発生しない。
【0043】
次に、時刻t5では、クロックCLK1が“L”→“H”に変化するので、クロックドライバDR1の出力電圧Vddによって、ノードN2がVIN+2Vddに持ち上がり、ノードN4がVIN+4Vddに持ち上がる。よって、トランジスタMP3、MP5がゲートとソースが同電位となってOFFし、トランジスタMP2、MP4がゲートがソースより高い電圧となり、ONを継続する。
【0044】
次に、時刻t6では、クロックCLK2が“L”→“H”に変化するので、トランジスタMN1、MN3、MN5がONして、トランジスタMPS1、MPS3、MPS5がOFF→ONに変化する。このため、入力端子とノードN1が同電位となり、トランジスタMP1がOFFを継続する。また、ノードN2とN3が同電位となり、トランジスタMP3がOFFを継続する。さらに、ノードN4とN5が同電位となり、トランジスタMP5がOFFを継続する。このとき、ノードN1の電荷がノードN2に移動して、両ノードN1、N2の電圧がVIN+Vddとなる。また、ノードN3の電荷がノードN4に移動して、両ノードN3、N4の電圧がVIN+3Vddとなる。
【0045】
このように、時刻t5〜t6では、まずトランジスタMP3がON→OFFに変化した後にトランジスタMN3がOFF→ONに変化し、トランジスタMP5がON→OFFに変化した後にトランジスタMN5がOFF→ONに変化しているので、それらのCMOSインバータでは貫通電流は発生しない。
【0046】
次に、時刻t7では、クロックCLK2が“H”→“L”に変化するので、トランジスタMN1、MN3、MN5がOFFする。よって、トランジスタMPS1、MPS3、MPS5がOFFし、前記電荷移動が停止する。
【0047】
次に、時刻t8では、クロックCLK1が“H”→“L”に変化するので、ノードN2、N4の電圧がVddだけ低下する。つまり、ノードN2は電圧がVIN+2VddからVIN+Vddに低下し、ノードN4の電圧がVIN+4VddからVIN+3Vddに低下する。よって、トランジスタMP3、MP5がソースよりゲートが低い電圧となってOFF→ONに変化して、トランジスタMPS3、MPS5のOFF状態を強化する。
【0048】
このように、時刻t7〜t8では、まずトランジスタMN3がON→OFFに変化した後にトランジスタMP3がOFF→ONに変化し、トランジスタMN5がON→OFFに変化した後にトランジスタMP5がOFF→ONに変化しているので、それらのCMOSインバータでは貫通電流は発生しない。
【0049】
なお、トランジスタMN1とMP1については、トランジスタMN1が時刻t0以前にON→OFFしてから時刻t2にトランジスタMP1がOFF→ONに変化し、また、トランジスタMP1が時刻t4にON→OFFに変化しているので、そのCMOSインバータでは貫通電流は発生しない。
【0050】
以上のように、本実施例では、電荷転送スイッチとしてのPMOSトランジスタをON/OFF制御するためのCMOSインバータを構成するNMOSトランジスタとPMOSトランジスタが、同時にON状態になることが確実に回避されているので、小さな容量のポンプコンデンサC1〜C5を使用するために、クロックCLK1、CLK1B、CLK2、CLK2Bの周波数を高くしても、チャージポンプ回路を確実に動作させることができる。
【符号の説明】
【0051】
MPS1〜MPS5:電荷転送スイッチとしてのPMOSトランジスタ
MN1〜MN5:CMOSインバータの一方を構成するNMOSトランジスタ
MP1〜MP5:CMOSインバータの他方を構成するPMOSトランジスタ
C1〜C4:ポンプコンデンサ
Cout:出力コンデンサ
DR1〜DR4:クロックドライバ
N1〜N5:ノード
CLK1、CLK2、CLK1B、CLK2B:クロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8