特許第6223877号(P6223877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223877
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】免震装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20171023BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20171023BHJP
   B66C 15/00 20060101ALN20171023BHJP
   B66C 19/00 20060101ALN20171023BHJP
【FI】
   E04H9/02 331Z
   F16F15/04 P
   !B66C15/00 B
   !B66C19/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-53566(P2014-53566)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-175188(P2015-175188A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】三井造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】堀江 雅人
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−102194(JP,A)
【文献】 特開2003−027767(JP,A)
【文献】 特開2005−075608(JP,A)
【文献】 米国特許第05738330(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
F16F 15/04
B66C 15/00
B66C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造物と上部構造物の間に配置される免震手段と、地震発生時に前記免震手段の束縛を解除するせん断ピンとを有する免震装置の制御方法において、
前記下部構造体または前記上部構造体の方に対のボルト支持体を設置し先端どうしが対向する一対の押しボルトを前記ボルト支持体にそれぞれ螺着して、
一対の前記押しボルトの先端の間であり前記下部構造物または前記上部構造物の他方にボルト受け部を設置して、
台風が襲来する前に、一対の前記押しボルトを操作して一対の前記押しボルトの間に配置されている前記ボルト受け部を両側から締め付けて前記免震装置を固定することを特徴とする免震装置の制御方法
【請求項2】
台風の通過後に一対の前記押しボルトを操作して、一対の前記押しボルトの先端が前記ボルト受け部から離間する方向に移動させて前記免震装置の固定を解除する請求項1記載の免震装置の制御方法
【請求項3】
前記押しボルトの軸方向が前記免震手段の揺動方向と平行となる状態で、前記押しボルトを前記ボルト支持体に螺着する請求項1または記載の免震装置の制御方法
【請求項4】
前記押しボルトの一部であり先端から離れた位置となる後方部にのみにねじ溝を設ける請求項1〜3のいずれかに記載の免震装置の制御方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台風の襲来時に、台風の風荷重によって免震装置の免震機能が作動しないように、免震装置を固定する免震装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船上コンテナを荷役する際に使用するコンテナクレーンの下部構造物(例えば、走行台車)と上部構造物(例えば、クレーン本体)との間に介在させ、上部構造物を地震から保護する免震装置として、ゴム板と鋼板とを交互に積層した積層ゴム、滑りを用いた滑り支承、ころの転がりを用いた転がり支承などがある。
【0003】
何れの免震装置も、地震の振動方向である水平方向に対して剛性を低くして、上部構造物の水平方向の固有振動周期を、地震の水平振動の周期よりも長くして、地震による上部構造物の振動を抑制するようにしている。
【0004】
ところが、水平剛性の低い免震装置は、小さい水平方向の力でも応答するため、これに免震支持される上部構造物は、少しの風圧が加わっても水平方向に揺らされる。それ故、風圧による横揺れで免震装置に具備されているせん断ピンに地震時の数倍(例えば、約2〜3倍)の荷重が加わり破断する。
【0005】
従来は、台風情報に基づいて台風が襲来する前に、地震用のせん断ピンを台風用のせん断ピンに交換していたが、地震用のせん断ピンは、荷役作業に支障がないようにタイトに装着されているため、1本の交換に約2時間以上費やすことがある。通常、1台のコンテナクレーンにせん断ピンが4本(4脚分)設けられているため、合計8時間以上(約1日)かかることになる。更には、台風襲来後に地震用せん断ピンに戻す作業も同様に時間がかかる。
【0006】
他方、特許文献1には、基礎と戸建住宅との間に免震装置(積層ゴム)を介在する一方、強風対策として、戸建住宅の揺れを一時的に固定する固定装置を基礎の部分に設置することが記載されている。
【0007】
この固定装置は、台風の襲来時に、基礎側に設置した円柱状のピストンを戸建住宅側に設置したフックに引っ掛けて戸建住宅側にスライドさせるようになっているが、構造が複雑で、部品数が多いなどの問題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載されている滑り支承方式の免震装置は、運搬・輸送時、あるいは台風襲来時に、第1滑り支承材を支持する第1フランジと、第2滑り支承材を支持する第2フランジとをアイボルトによって固定するようにしている。この免震装置の場合は、第1、第2滑り支承材の間の間隔が狭いため、短いアイボルトで足りるが、滑り支承材の代わりに積層ゴムを使用する場合は、アイボルトの長さが長くなることから、従来と同じ太さのアイボルトを使用する場合には、アイボルトの使用数を増やす必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−154669号公報
【特許文献2】特開2003−41801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、これらの問題を解消するために成されたものであり、台風の襲来時に、地震用のせん断ピンを台風用のせん断ピンと交換する必要がない免震装置の制御方法を提供することにある。更に、従来の固定装置よりも構造が簡単で部品数も少なく取り扱いの容易な免震装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の免震装置の制御方法は、下部構造物と上部構造物の間に配置される免震手段と、地震発生時に前記免震手段の束縛を解除するせん断ピンとを有する免震装置の制御方法において、前記下部構造体または前記上部構造体の方に対のボルト支持体を設置し先端どうしが対向する一対の押しボルトを前記ボルト支持体にそれぞれ螺着して、一対の前記押しボルトの先端の間であり前記下部構造物または前記上部構造物の他方にボルト受け部を設置して、台風が襲来する前に、一対の前記押しボルトを操作して一対の前記押しボルトの間に配置されている前記ボルト受け部を両側から締め付けて前記免震装置を固定することを特徴とする
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、台風が襲来する前に、固定装置の左右の押しボルトを操作して、その先端によって左右のボルト受け部材を左右両側から締め付けることにより、クレーンの脚部構造体をクレーンの走行装置に固定することができる。
【0016】
それ故、台風等、地震とは関係のない風荷重によって免震装置のせん断ピンが破断することを防ぐことができる。また、台風襲来前後に行っていた地震用せん断ピンと台風用せん断ピンとの交換作業が不必要になり、台風襲来前後の作業が簡単になる。
【0017】
更に、固定装置によってクレーンの脚部構造体をクレーンの走行装置に固定することにより、走行装置に設けたブラケットの孔と、免震装置に設けたアンカーリンクの孔とを正確に位置合わせできるので、仮に、せん断ピンが破断したとしても、せん断ピンの交換を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る免震装置における固定装置の断面図である。
図2】本発明に係る免震装置における固定装置の配置図である。
図3】本発明に係る免震装置の正面図である。
図4】本発明に係るコンテナクレーンの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【0020】
図4に示すように、船上のコンテナ(図示せず)を荷役する際に使用するコンテナクレーン1は、岸壁Gに敷設された走行レール60上を走行する。コンテナクレーン1は、クレーン本体2と、クレーン本体2の四隅の下部に設けた4台の走行装置3より構成されている。クレーン本体2は、2本の海脚4と2本の陸脚5からなる脚部構造体6の上端にガーダ7を水平に設けている。ガーダ7の海側端には、ブーム8が俯仰自在に取り付けられている。ガーダ7及びブーム8は、頂点鉄構9、バックステー10などによって補強されている。
【0021】
ガーダ7上に搭載されたトロリー11は、ガーダ7及びブーム8に敷設された横行レール(図示せず)に沿って横行し、トロリー11に設けたスプレッダ(吊り具)12によってコンテナCの荷役を行う。
【0022】
上記コンテナクレーン1は、図4に示すように、4台の走行装置(下部構造物)3と、各走行装置3に対応する脚部構造体(上部構造物)6との間に免震装置20を設けている。この免震装置20は、図3に示すように、ゴム板と鋼板とを交互に積層した積層ゴム(免震手段)21と、積層ゴム21の左右両側に設置させた浮上り防止装置22と、地震発生時に積層ゴム21を束縛から解放するせん断ピン23から構成されている。
【0023】
上記浮上り防止具22は、上下両端に長孔(図示せず)を設けたリンク24から成り、一方の長孔を貫通した軸25は、脚部構造体6に固定された上部ブラケット26に固定され、他の一方の長孔(図示せず)を貫通した軸27は、走行装置3に固定された下部ブラケット28に固定されている。
【0024】
上記せん断ピン23は、予め設定された所定のせん断力を持つピンであり、上記リンク24に設けたアンカーリンク29の孔(図示せず)と、走行装置3に設けたブラケット30の孔(図示せず)に差し込まれている。
【0025】
更に、本発明では、台風の襲来時に、台風の風荷重によって免震装置20の免震機能が作動しないように、免震装置20を固定する固定装置40を設けている。
【0026】
固定装置40は、押しボルト41を螺着した左右一対のボルト支持体42と、押しボルト41の先端に対峙する左右一対のボルト受け部43より構成され、ボルト支持体42は、図1に示すように、下部構造物である走行装置3に設けられている。他方、ボルト受け部43は、上部構造物である脚部構造体6に設けられている。
【0027】
ここで、固定装置40は、図2に示すように、浮上り防止装置22のリンク24の外側(前方)に設けることが望ましいが、リンク24の内側に設けても支障がない。但し、固定装置40を浮上り防止装置22のリンク24の外側(前方)に設けた方が押しボルト41の操作が容易である。
【0028】
また、押しボルト41は、積層ゴム21の揺動方向(せん断ピン23の破断方向)に向けて配置することが望ましいが、せん断ピン23の破断方向と直交する方向に向けて配置しても支障がない。また、押しボルト41は、その全長にわたってねじ溝を設けてもよいが、押しボルト41の一部、望ましくは、後方部のみにねじ溝を設ける方が、締付け作業を短縮することが可能となる。押しボルト41の寸法としては、例えば、直径42mm、全長300〜500mm程度を想定している。
【0029】
更に、上記とは逆に、ボルト支持部42を脚部構造体6に設け、ボルト受け部43を走行装置3に設けても支障がない。また、ボルト受け部43は、左右のボルト受け部43、43を一つの合体しても支障がない。図2中、符号50は、クレーン本体2、つまり、脚部構造体6を初期位置に復帰させる初期位置復帰手段を示している。
【0030】
しかして、台風が襲来する前に、固定装置40の左右の押しボルト41、41を操作し、その先端によって左右のボルト受け部材43,43を左右両側から締め付ける。それ故、コンテナクレーン1の脚部構造体6が前後左右の4台の固定装置40によって走行装置3に固定される。
【0031】
台風の通過後、固定装置40の押しボルト41をそれぞれ緩めることにより、免震装置20の拘束が解除される。
【0032】
以上の説明では、固定装置40をコンテナクレーン1に適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば、戸建住宅の免震装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0033】
3下部構造物
6上部構造物
20免震装置
21免震手段
23せん断ピン
41押しボルト
42ボルト支持体
43ボルト受け部
図1
図2
図3
図4