(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
関節は、様々な理由により変性変化をしばしば受ける。関節変性が進行し、または不可逆性になると、生体関節を補綴関節と交換することが必要になり得る。股関節、肩関節、および膝関節を含む人工インプラントは、整形外科手術で広範囲に使用されている。特に、股関節補綴が一般的である。ヒト股関節は、玉継手として機械的に動作し、大腿骨の球形頭部が骨盤のソケット形の寛骨臼内に配置される。様々な変性疾患および傷害は、一般には金属、セラミックス、またはプラスチックなどの人工材料を使用して腰のすべてまたは一部分の交換を必要とする可能性がある。
【0003】
補綴関節を(しばしばより大きな)交換用関節と交換するために第2の、または後続する手術を行うことが必要になる可能性がある。「修正」手術として知られるそのような手術は、さらなる骨の変性または変性疾患の進行のためにしばしば行われ、さらなる骨の除去、および除去された病変のある骨をしばしば修正補綴と呼ばれる、より大きなまたは増強した補綴関節と交換することが必要になる。たとえば、骨はしばしば寛骨臼の縁の周りで失われ、これによって寛骨臼カップを安全に配置するための縁部の範囲がより少なくなる。
【0004】
インプラントの周りの患者の骨が損なわれている場合、さらなる支持を加えるために増強物を利用することが必要になり得る。たとえば、寛骨臼増強物が寛骨臼シェル(acetabular shell)の周りの欠陥のある空洞を充填するために配置され、シェルに伝達される負荷を支持するのを補助することができる。手術手技の一部として、外科医は、シェルと増強物の両方を、2つの要素を互いに結び付ける前に適切な嵌合を確かにするために患者の内部に配置し、それらの間の動きを防止し得る。しかし、2つの要素を結び付けることは、特に2つの要素が合同であると、骨セメントを使用する場合に困難である可能性がある。要素間の不適切なセメント接合は、移植後に要素を分離させることがあり、微粒子を発生させ、最終的には修正することになる可能性が高い。
【0005】
現在の増強物の設計では、一般にセメントの適用を補助するための対処はなされていない。したがって、外科医は、要素を互いに完全に組み立てる前に、特定の場所に限って(たとえばコーキングビードと同様に増強物の縁部に沿って)セメントを適用し、またはセメントの使用を完全に差し控える。これによって、容易に再現されない手技による首尾一貫せず、ときには望ましくない結果が生じる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書には、保持ポケットを有する整形外科増強物のためのシステム、装置、および方法が開示される。いくつかの実施形態では、システム、装置、および方法は、患者の組織または骨と接合する外側表面、およびインプラントと接合する内側表面であって、固定材料を受けるように構成された陥凹ポケット、陥凹ポケットの少なくとも一部分の周りの縁部、および縁部のポートを備える内側表面を備える整形外科増強物を含む。縁部はインプラントと接合することができる。いくつかの実施形態では、陥凹ポケットはポートから少なくとも側方の方向に内側表面に沿って延在する。ポートは外側表面から内側表面に延在し、それによって固定材料を陥凹ポケットに挿入することが可能になる。
【0007】
いくつかの実施形態では、陥凹ポケットは、稜部によって分離された第1の区画および第2の区画を備える。稜部は、縁部に対して陥凹している。固定材料は、増強物をインプラントに堅固に固定する。いくつかの実施形態では、固定材料はセメントまたはペーストである。いくつかの実施形態では、整形外科増強物はさらに第2のポートを備える。第2のポートは、ポートに対して下方に配置された充填ゲージ(fill gauge)であってもよく、第2のポートは、ポートの幾何学的形状とは異なる幾何学的形状を有することができる。いくつかの実施形態では、ポートは、ルアーロック器具(luer-lock fitting)またはプラグを備え、ポートはテーパを付けられてもよい。いくつかの実施形態では、整形外科増強物は挿入デバイスと結合されるように構成された伸長部材をさらに備えていてもよい。整形外科増強物は、フランジ、ブレード、フック、またはプレートをさらに備えていてもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、増強物の表面は、研磨された、無光沢の、および多孔性のもののうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、外側表面の少なくとも一部分は、研磨仕上げを含む。外側表面は、無光沢仕上げまたは多孔性の構成をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、上表面は多孔性の構成を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、整形外科増強物を移植する方法は、インプラントに隣接して増強物の内側表面を配置するステップであって、内側表面は陥凹ポケットおよびポートを備えるステップと、固定材料をポートを介して増強物の陥凹ポケットの陥凹ポケットに挿入し、それによって増強物をインプラントに固定するステップとを含む。いくつかの実施形態では、増強物の内側表面は、複数のポートをさらに備える。方法は、複数のポートのうちの少なくとも1つを充填ゲージとして使用するステップをさらに含んでもよく、それによって固定材料が充填ゲージとして使用される第2のポートを介して観測されるまで、固定材料が第1のポートに注入される。方法は、固定材料を陥凹ポケットに注入する第1のポートを選択するステップと、固定要素が第2のポートを通過するのが観測されるまで固定材料を陥凹ポケットに注入するステップとをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、方法はインプラントに対する増強物の好ましい向きを決定するステップと、決定に応じて固定材料を注入する複数のポートのうちの1つを選択するステップとを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、陥凹ポケットは、第1の区画および第2の区画を備える。ポートは、第1の区画の近くに配置され得る。方法は、固定材料をポートを介して第1の区画に注入するステップをさらに含んでもよく、第1の区画を過充填することにより、固定材料が第2の区画に流入する。固定材料は、セメントまたはペーストであってもよく、インプラントは、寛骨臼シェルまたは寛骨臼ケージであってもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、増強物の表面は、研磨された、無光沢の、および多孔性のもののうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、外側表面の少なくとも一部分は、研磨仕上げを含む。外側表面は、無光沢仕上げまたは多孔性の構成をさらに含む。いくつかの実施形態では、上表面は多孔性の構成を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、複数の増強物を含む整形外科的処置で使用するためのキットが提供され、各増強物は、固定材料を受けるように構成された陥凹ポケット、陥凹ポケットの少なくとも一部分の周りの縁部、および縁部のポートを有する表面を備え、複数の増強物のうちの少なくとも1つが縁部に2つ以上のポートを有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、患者の組織または骨と接合する外側表面、およびインプラントと接合する内側表面を含む整形外科増強物が提供され、前記内側表面は固定材料を受けるための陥凹手段、陥凹手段の少なくとも一部分の周りの縁部、および縁部のアクセス手段を備え、陥凹手段はアクセス手段から少なくとも側方の方向に内側表面に沿って延在する。
【0014】
これらの実施形態の様々な変形形態および修正形態が、本開示を精査した後に当業者には思いつくであろう。上記の特徴および態様は、本明細書に説明された1つまたは複数のその他の特徴との任意の組合せ、および(複数の従属的な組合せおよび下位の組合せを含む)下位の組合せで実装され得る。上記に説明または例示された様々な特徴は、その任意の構成要素を含んで、その他のシステムで結合または一体化され得る。さらに、いくつかの特徴は省略され、または実装されなくてもよい。
【0015】
上記およびその他の目的および利点は、全体を通して同様の参照符号が同様の部品を指す添付の図面とともに読めば、以下の詳細な説明を考察すると明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に記載されたシステム、装置、および方法の全体的な理解を提供するために、いくつかの例示の実施形態が説明される。本明細書に説明された実施形態および特徴は、寛骨臼システムととともに使用するために特に述べられるが、下記に概説されるすべての要素、接続機構、調整可能なシステム、製造方法、被覆、およびその他の特徴は任意の適切な様式で互いに結び付けることが可能であり、限定はされないが、整形外科的な膝関節置換処置、脊椎関節形成、頭蓋顎顔面手術処置、股関節形成、肩関節形成、ならびに足、足首、手、およびその他の四肢の処置を含む、その他の手術処置に使用される医療用具およびインプラントに適合および適用され得ることを理解されたい。
【0018】
本明細書に説明される増強物は、外科医に多種様々な骨の解剖学的構造およびインプラント構造を適応させるユニット化のオプションを与える。増強物は、外科医が様々な骨の解剖学的構造およびインプラント構造を適合させるために、インプラントの移植の前または後に増強物を様々な位置に配置することを可能にしながら、インプラントおよび患者の周囲の骨および組織の両方と密接した接合を維持することが好ましい。さらに、増強物は、セメントなどの固定材料が内部に堆積される陥凹ポケットを組み込む。陥凹ポケットは、増強物と増強物が結合されるインプラントとの間のより大きな表面積にわたって改善された接着を提供する位置に、固定材料が加圧されて堆積することを可能にする。
【0019】
図1Aは、増強物100の内側表面120内に陥凹ポケット130を有する増強物100の斜視図を示す。増強物100は、患者の組織または骨と接合する外側表面110、およびインプラントと接合する内側表面120を有する。内側表面120は、
図1Aに示すように、内側表面120のかなりの面積を占め、セメントまたはペーストなどの固定材料を受けるように構成された、内部に形成された陥凹ポケット130を有する。陥凹ポケット130に注入されると、セメントまたはペーストが増強物100をインプラントに固定する。それには限定されないが、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、任意の適切な生体適合性のセメントもしくはペースト、またはその他の固定材料、あるいはそれらの任意の組合せを含む、任意の適切なセメントもしくはペーストが使用され得る。いくつかの実施形態では、固定材料(たとえばPMMA)は、それには限定されないが抗生物質、抗炎症剤、および成長因子を含む1つまたは複数の薬剤と混合され得る。
【0020】
内側表面120は、インプラントと合致し、陥凹ポケット130の少なくとも一部分の周りに延在する縁部140も含む。
図1Aに示されるように、たとえば、縁部140は内側表面120の周辺部に沿って陥凹ポケット130の外周を囲む。増強物100がインプラントに対して配置されると、縁部140は陥凹ポケット130に配置された固定材料が陥凹ポケット130から出ていくのを実質的に防止する。たとえば、縁部140はインプラントと合致するように構成され、縁部140がインプラントの幾何学的形状に一致し、インプラントに当接し、それによって固定材料が陥凹ポケット130から出ていくのを防止する。
図1Cおよび
図1Dに示されるように、縁部140は、寛骨臼シェルなどのインプラント190の形状と補完しあう湾曲形状または弧形状を有する。いくつかの実施形態では、縁部140は、任意でポリ乳酸プラスチック(PLA)またはPGAプラスチックなどの吸収性、または非吸収性材料によって被覆され得る。いくつかの実施形態では、ガスケットまたはその他の密封手段が任意で増強物の縁部とインプラントとの間に設けられ得る。ガスケットは、陥凹ポケットに固定材料を封じ込める役割を果たし得る。
【0021】
外科医が固定材料を陥凹ポケット130に注入し、またはそうでなければ挿入することを可能にするために、内側表面120は外側表面110から内側表面120の陥凹ポケット130に延在する縁部140内のポート150を含む。
図1Aに示されるように、たとえば、ポート150が縁部140の頂部に配置され、上方外側表面110aから陥凹ポケット130に延在し、それによって増強物100がインプラントと接合された場合に、外科医が固定材料を陥凹ポケット130に挿入することを可能にする。これは、インプラントおよび増強物が患者に移植される前、または移植された後に行われ得る。ポート150は、縁部140の頂部に作製され、開放端部150aを有する半円形または半楕円形の切り込みとして示される。いくつかの実施形態では、ポートは、縁部140に作製された貫通穴として設けられてもよい。たとえば、ポート152が縁部140の貫通穴として設けられる。あるいは、またはそれに加えて、いくつかの実施形態では、ポート154が、陥凹ポケット130にアクセスするが、縁部140には配置されない外側表面110の貫通穴として設けられ得る。
【0022】
ポート150は、インプラントに対して増強物がどこに配置されるか、または2つの要素が移植される前、または移植された後、増強物がインプラントに固定されたかどうかにかかわらず、増強物の所望の領域への固定材料の注入を補助する。外科医がセメントを使用することを望む場合、外科医は移植の前に、最初に増強物をインプラントに接着しなければならない現在の増強物の設計とは異なり、本明細書に説明された陥凹ポケット(陥凹ポケット130など)は、移植の前または後、外科医が増強物を所望の位置にインプラントに隣接して配置し、次いでポートを介して陥凹ポケットを固定材料で満たし、それによって増強物をインプラントに固定することを可能にする。したがって、増強物100の特徴は、寛骨臼シェルまたはその他のインプラントが移植される前、または移植された後に外科医が増強物を移植するための改善された固定のオプションを提供する。
【0023】
図1Bは、陥凹ポケット130、陥凹ポケット130を実質的に囲む縁部140、および縁部140の上方部分に配置されたポート150を含む、
図1Aの増強物100の内側表面120の正面図を示す。
図1Bに示すように、陥凹ポケット130は増強物100それ自体の形状と合致する形状を有するが、いくつかの実施形態では、陥凹ポケット130は増強物100の形状に適合せず、それでも増強物100の内側表面120内に嵌合する形状を含む任意の適合した形状を有することができる。縁部140は、陥凹ポケット130の少なくとも一部分の周りに延在し、
図1Bに示されるように、陥凹ポケット130の入口の周りに延在する。縁部140は、増強物100をインプラントに接合させ、増強物がインプラントに隣接している場合に陥凹ポケット130内の固定材料が陥凹ポケット130から出ていくのも防止する表面を提供する。たとえば、いくつかの実施形態では、縁部140はインプラントの表面と液密シールを形成する。いくつかの実施形態では、液密シールを形成しない接触でも、固定材料が陥凹ポケット130から出ていくのを防止するのになお十分である可能性がある。陥凹ポケット130にアクセスをもたらすポート150が、縁部140の上方部分内に配置される。
【0024】
上記に論じたように、縁部140は整形外科インプラントに接触する内側表面120の部分を提供する。
図1Cは、インプラント190に隣接した
図1Aの増強物100の側面図を示す。増強物100の縁部140は、インプラント190と接合し、インプラント190の形状と補完しあう形状にされている。縁部140は、インプラント190と実質的に同一面上での接触を形成し、それによって陥凹ポケット130内の固定材料が陥凹ポケット130から出ていくのを実質的に防止する。上記に論じたように、陥凹ポケット130は任意の適切な形状を有することができる。陥凹ポケット130は、任意の適切な深さにすることも可能であり、深さは縁部140への近接度によって変化するので、
図1Cに示された深さ130aは、ポケットの絶対的な深さである。陥凹ポケット130の深さ130aは、増強物100をインプラント190に固定するために陥凹ポケット130内に堆積され得る固定材料の量に比例する。いくつかの実施形態では、比較的大きな深さ130aを有する陥凹ポケット130を提供することが望ましいことであり得る。たとえば、陥凹ポケットの深さ(たとえば深さ130a)は、増強物または固定材料の材料強度を犠牲にすることなく可能な限り深く設計され得る。適切な深さには、たとえば約1〜10ミリメートル、約2〜5ミリメートル、または約2〜3ミリメートルが含まれる。
【0025】
縁部140はインプラント190と実質的に同一面上で合致するので、固定材料を陥凹ポケット130に注入またはそうでなければ挿入するために1つまたは複数のポート150が外科医に陥凹ポケット130へのアクセスを与えるために設けられる。
図1Dは、
図1Cの増強物100の上面図を示し、縁部140の上方部分に配置され、陥凹ポケット130から上方外側表面110aに延在するポート150を示す。1つのポート150のみが示されるが、任意の適切な数のポートを設けることができ、さらに増強物100の外側表面110の任意の適切な部分にポートを設けることができることが理解されよう。たとえば、ポート150が上方外側表面110aに示されるが、その代わりに、またはそれに加えて、側方外側表面110bおよび下方外側表面110cにポートを設けられ得る。
【0026】
図1A〜
図1Dに示されるように、陥凹ポケット130は、ポート150によって形成される開口を越えて延在する。特に、陥凹ポケット130は、
図1Dの矢印144の方向によって示される、ポート150から少なくとも側方の方向に内側表面120に沿って延在する。したがって、陥凹ポケット130は、ポート150の大きさに依存しない体積を有する。
図1Cおよび
図1Dに示されるように、陥凹ポケット130は、ポート150によって形成された開口を越えて延在する深さ130aも有する。
【0027】
上記に論じたように、いくつかの構成では、増強物は2つ以上のポートを含むことができる。
図2は、複数のポートを有する増強物に隣接するインプラントの斜視図を示す。特に、
図2は、この場合には寛骨臼シェルであるインプラント202、およびそれに接合され、3つのポート212、214、216を有する増強物200を示す。ポート212、214、216は、上方外側表面210aに配置され、増強物200の上部縁部240を貫通して延在する。増強物200は、ポート212、214、216のうちのいずれからもアクセス可能な陥凹ポケット230を含む。複数のポートを提供することにより、たとえばそれらのうちの任意のもの、またはすべてを使用して固定材料を陥凹ポケット230に注入するというオプションが外科医に与えられる。たとえば、いくつかの実施形態では、外科医が作業する作業ウインドウは、1つまたは複数のポートがアクセス可能でないように制限され得る。しかし、3つのポート212、214、216が設けられるので、ポートのうちの少なくとも1つがアクセス可能であることができ、外科医が固定材料をそのポートに注入することによって陥凹ポケット230を充填することができる。任意の適切な数のポートが提供され得ることが理解されよう。2つ以上のポートを有する増強物に関しては、1つまたは複数のポートがインプラントに対する増強物のいくつかの向きに関してアクセス不可能である場合、外科医は、代替のポートを使用する同様のオプションを有する。
【0028】
上記の説明は、寛骨臼増強物に当てはまるものである。しかし、同様の陥凹ポケットは、要素が骨セメントなどの固定材料とともに固定される膝増強物またはその他の整形外科インプラントにも適用することができる。複数のポートを設けることのさらなる利点は、外科医が固定材料をポートのうちの1つに注入し、使用されないポートを充填ゲージとして使用して、増強物に注入された固定材料の量を視覚的に判定することができることである。たとえば、陥凹ポケットが固定材料によって充填されるとき、外科医はポートの中を見ることによって使用されないポートを介して固定材料を観測することができる。これは、陥凹ポケットがポートの開口を越えて延在するので役に立つ。数多くのポートにより、外科医は同様にして任意の所望の向きで増強物を配置するオプションが与えられ、その場合、少なくとも1つのポートが任意の向きからアクセス可能である。
【0029】
ポート212、214、216は、それぞれが実質的に同じ幾何学的形状を有するものとして示されるが、任意の適切な幾何学的形状が与えられ得ることを理解されたい。たとえば、いくつかのポートの幾何学的形状が、固定材料を増強物の陥凹ポケットに注入するために外科医によって使用される異なるタイプのシリンジまたはその他の挿入デバイスに対して好ましいものであり得る。
図3Aに示されるように、ポート250は、たとえば増強物の外側表面を通るストレートエッジカット252を有することができる。
図3Bは、ポート255がテーパ257を付けられ得ることを示し、
図3Cは、ポート260がテーパを付けられた部分262およびストレートエッジ部分264の両方を有し、漏斗型ポート260を形成することを示す。いくつかの実施形態では、任意のポート250、255、260は、挿入デバイスと接合するために上表面に一体化したリップ部を含むように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、ポートは、陥凹ポケットへの固定材料の注入を補助するための挿入デバイス器具を含み得る。
図3D(雌ルアーロック270)および
図3E(雄ルアーロック275)に示されるルアーロック型器具、または
図3Fに示されるテーパを付けられたプラグ282は、ポートおよび外側表面に組み込まれてもよく、それによって外科医に挿入デバイスを調整させるのではなく標準的な挿入デバイスを使用することができる。挿入デバイス器具(たとえばルアーロックまたはプラグ)は、より高い圧力が生成され、増強物とインプラントの間の隙間への固定材料の適切な流れを補助し、2つの要素の間の固定を向上させることを可能にする。いくつかの実施形態では、プラグおよびルアーロック器具の両方が使用される。たとえば、
図3Fに示されるように、ポート280内に配置されたプラグ282に挿入デバイス290を直接的に取り付ける代わりに、ルアーロック292を介して挿入デバイス290に結合された伸長チューブ294が使用される。伸長チューブ294は、たとえばポート280の近くの軟組織からの干渉を防止する。いくつかの実施形態では、伸長チューブ294等の伸長部材が、様々なシリンジタイプまたはその他の挿入デバイスのための代替の器具(たとえばルアーロック292以外の)を有することができる。
【0030】
複数のポートを有する増強物の構成に加えて、いくつかの構成では、増強物は、フランジ、ブレード、フック、プレート、またはそれらの任意の組合せなどの装着部材を含み、増強物をインプラント、患者の組織もしくは骨、またはその両方に装着するのを補助することができる。装着部材は、配置されると増強物に追加の支持および/または安定性を提供する。装着部材は、しばしば影響を受けた領域(たとえば股関節)における骨変性、骨量減少、または骨欠損のためにしばしば好ましいものである。
図4は、装着部材360を有する増強物300の斜視図を示す。装着部材360は、複数のネジ穴362のうちの1つまたは複数が、骨ねじなどの固定材料を受けるように構成されたフランジである。いくつかの実施形態では、装着部材360などの装着部材は、従来のねじ穴、ロック穴、コンビホール、またはスロットを含むことができる。部位はネジ山をつけた、ネジ山をつけない、または部分的にネジ山をつけたものであってもよく、固定された、または多軸のものであってもよい。いくつかの実施形態では、取り付け部位が、様々な角度でロックすることを可能にする可変の低プロファイル穴を含んでいてもよい。フランジ装着部材360は、増強物300の外側表面310に結合され、そこから延在する。
【0031】
増強物300の内側表面320は、縁部340およびそれを貫通し陥凹ポケット330にアクセスをもたらすポート350によって少なくとも部分的に囲まれた陥凹ポケット330など、
図1Aの増強物100に関連して上記に論じたのと同じ特徴を有する。ポート350は、縁部340の底部340aに設けられ、増強物300の下方外側表面310cに延在する。しかし、ポート350(または追加のポート、図示せず)は、(たとえば縁部の頂部340bに沿って、装着部材360およびねじ穴362に隣接して)
図1Aのポート150の位置と同様に縁部の一方もしくは両方の側面、または縁部の頂部に設けられ得ることを理解されたい。さらに、いくつかの実施形態では、1つまたは複数のポートが縁部340を通らずに(たとえばポケットの裏側を通って)陥凹ポケット330にアクセスをもたらす外側表面310の一部分にもたらされ得る。図示されるように、縁部(たとえば縁部140および340)は陥凹ポケットの外周を実質的に囲み、それによって陥凹ポケットの外周および内側表面の外周を提供する。しかし、いくつかの実施形態では、縁部は陥凹ポケットの外周を完全には囲まなくてもよい。たとえば、増強物は複数の陥凹ポケットを含んでいてもよい。
【0032】
図5Aおよび
図5Bは、複数の陥凹ポケットを有する増強物の斜視図を示す。複数のポケットは、処置中の様々なオプションを外科医に与える。たとえば、ポケットはそれぞれが固定要素を満たされている必要はない。さらに、ポケットは、たとえば患者特有のまたはインプラント特有の用途に応じて異なるそれぞれの体積によって設計され得る。たとえば、
図5Aに示されるように、増強物400は、陥凹ポケット430、432、434を有する内側表面420を備える。増強物400の縁部440は、各陥凹ポケット430、432、434の少なくとも一部分の周りに設けられるが、縁部440はどの陥凹ポケット430、432、434の外周も完全には囲まない。たとえば、縁部440は中央の陥凹ポケット430の上方の境界および下方の境界を提供し、側方の陥凹ポケット432の側方の境界、および側方の陥凹ポケット434の側方の境界を提供する。それぞれの陥凹ポケットの間に稜部442aおよび442bが配置される。稜部442aおよび442bは縁部440までは延在せず、したがって増強物400がインプラントに隣接して配置される場合に、インプラントに接触しない(しかしいくつかの実施形態では、稜部442aおよび442bの少なくとも一部分はインプラントに接触するように構成され得る)。稜部442aおよび442bは任意の適切なそれぞれの高さを有することができることが理解されよう。増強物400は、2つのポート450および452を含み、ポート450は側方の陥凹ポケット432への直接的なアクセスをもたらし、ポート452は側方の陥凹ポケット434への直接的なアクセスをもたらす。中央の陥凹ポケット430への直接的なアクセスを提供するポートが示されないが、側方の陥凹ポケット432、434のいずれかまたは両方をポート450、452を介して過充填することにより固定材料が稜部442aおよび442bを越えて流れ、それによって中央の陥凹ポケット430を充填する。したがって、1つのみの陥凹ポケットがポートに直接的なアクセスを有する場合でも、稜部によって分離された複数の陥凹ポケットにアクセスをもたらすことができる。いくつかの実施形態では、複数の陥凹ポケットがポケットの間の稜部なしに設けられ得る。たとえば、増強物は、ポケットの間の連続的および/または円滑な部分を設けられ、または固定材料が結合する非円滑構造を捕捉またはその他の方法で提供する、内側表面420に沿ったその他の稜部または突起を有する。
【0033】
図5Bは、上方外側表面410aの斜視図であり、ポート450、452の別の図を提供する。
図5Bで理解できるように、たとえばポート452は陥凹ポケット434と同様に形状を定められ、稜部442aおよび442bの使用によって中央の陥凹ポケット430および側方の陥凹ポケット432への間接的なアクセスを提供し、それによって側方の陥凹ポケット434を過充填すると固定材料が、他の陥凹ポケット430、432への流れを生じる。
図5Bでも理解できるように、縁部440はインプラントが配置される接触表面を提供し、それに対して稜部442aおよび442bは縁部440に対して切り込まれている。稜部442aおよび442bは縁部440までは延在せず、固定材料がポケットからポケットに過充填されることを可能にするためにインプラントに接触しない。たとえば、
図5Aの線C-Cに沿った断面図である
図5Cに示されるように、増強物400の中央の陥凹ポケット430は縁部440に対して最大の深さを有し、中央の陥凹ポケット430と側方の陥凹ポケット434の間に配置された稜部442bは、距離dだけ縁部440に対して切り込まれている。縁部440と稜部442bの間の距離dは、固定材料が過充填されポケットからポケットへ流れる領域である。稜部442bは、縁部440に対して切り込まれている任意の適切な距離dで設けられ得る。
図5Dは、
図5Aおよび
図5Bの増強物400の上面図を示す。図示されるように、ポート450および452は上方外側表面410aに設けられ、各陥凹ポケット430、432、434は深さ430a、432a、434aによって示される縁部440の端からのそれぞれの深さを有する。それぞれのポケットを分離する稜部442aおよび442bも示される。
図5Dは、内側表面410の縁部440がインプラント490に当接するが、稜部442aおよび442bは切り込まれ、インプラント490には接触しないことも示す。
【0034】
図5A〜
図5Dに示されるように、側方の陥凹ポケット432、434は、ポート450、452によって形成される開口を越えて延在する。特に、側方の陥凹ポケット432、434は、
図5Dの矢印444の方向によって示される、ポート450および452から少なくとも側方の方向に内側表面420に沿って延在する。中央の陥凹ポケット430は、それに直接的なアクセスを提供するポートを有していない。したがって、陥凹ポケット430、432、434は、ポート450、452の大きさに依存しないそれぞれの体積を有する。
図5Cおよび
図5Dに示されるように、陥凹ポケットは、ポート450、452によって形成された開口を越えて延在する深さ430a、432a、434aも有する。
【0035】
図6Aおよび
図6Bは、様々な表面仕上げを有する増強物500の斜視図を示す。図示された増強物500は、縁部540によって少なくとも部分的に閉鎖される2つの陥凹ポケット530および532、ならびに増強物500から延在する装着フランジ560を含む。いくつかの実施形態では、陥凹ポケットのうちの少なくとも1つがねじを受けるように構成される。たとえば、陥凹ポケット532がねじを受けるように構成され得る。陥凹ポケット530および532は、稜部542によって少なくとも部分的に分離され、それぞれポート550、552を介してアクセス可能である。稜部542は縁部540の高さには延在しない高さを有し、したがって、稜部542は、増強物500がインプラント490などのインプラントに隣接して配置された場合にインプラントに接触しない。しかし、いくつかの実施形態では、稜部542はインプラント490に接触するように延在し得ない。たとえば稜部542は、縁部540の高さ以上の高さを有し得る。ポート550および552は、縁部540の底部540bに作製された半円形または半楕円形の切り込みとして示される。しかし、1つまたは複数のポートが、たとえば縁部540に作製された貫通穴または切り込み、あるいは任意のその他の適切な形状で、縁部540の任意の側面540a、または縁部540の底部540bもしくは頂部540cに提供され得ることを理解されたい。さらに、いくつかの実施形態では、1つまたは複数のポートが縁部540を通過せずに陥凹ポケット530および532にアクセスをもたらす外側表面510に含まれ得る。陥凹ポケット530の内側表面530aおよび縁部540の表面540dが、多孔性の構成を有するものとして
図6Aに示され、陥凹ポケット532の内側表面532aが無光沢の表面仕上げを有するものとして示される。多孔性の構成は、セメントまたはペーストなどの固定材料によりよく接着することを可能にする。多孔性の構成は、骨と接合し、骨の内部成長を促進し得る。いくつかの実施形態では、内側表面530aおよび532bは、縁部540の表面540dに加えて、少なくとも部分的に様々な異なる表面処理、構成、または被覆を含むことができる。たとえば、増強物500は、装着フランジ560に延在する増強物の裏側に多孔性の構成、無光沢の仕上げ、および研磨仕上げを示す。
【0036】
装着フランジ560は、増強物500から外側に延在し、骨ねじなどの固定部材を受けるように構成された6つのねじ穴562を含む。いくつかの実施形態では、任意の数のねじ穴562が含まれ得る。
図6Aおよび
図6Bに示されるように、装着フランジ560は多孔性の構成を有する上表面564および研磨仕上げを有する下表面510を有する。多孔性の上表面564は、固定材料を受けることができ、研磨された下表面510は、患者の組織、筋肉、靭帯、もしくは骨、またはそれらの任意の組合せと接合用に構成され得る。多孔性の上表面564は、好ましくは骨と接合し、骨の内部成長を促進するように構成される。研磨された下表面510は、好ましくは患者の組織、筋肉、および/または靭帯と接合し、組織、筋肉、および/または靭帯と、研磨された下表面510との間の相互作用および取り付けを防止するように構成される。いくつかの実施形態では、上表面564および下表面510は、少なくとも部分的に様々な異なる表面処理、構成、または被覆を含むことができる。たとえば、増強物500は、多孔性の構成および研磨仕上げを有する装着フランジ560を示す。任意のその他の適切な表面処理の組合せが、増強物500の様々な表面に使用され得る。
【0037】
本明細書に説明された増強物は、チタン、コバルト-クロム、酸化ジルコニウム、ステンレス鋼、ジルコニア、アルミナ、もしくはその他の複合物などのモノリシックセラミックまたは複合セラミック、または適切な強度、耐摩耗性を有する任意のその他の生体適合性材料または合金など、あるいはそれらの任意の組合せを含むいくつかの材料から作製され得る。増強物は、完全な多孔性または部分的な多孔性にも作成され、たとえばより多くの骨の内部成長を可能にすることができ、増強物は、ヒドロキシアパタイト、もしくは任意のその他の骨促進剤、またはそれらの組合せによって被覆され得る。増強物は、たとえば高速の製造装置または標準的な製造装置を使用することを含む、任意の適切な1つまたは複数の技術にしたがって製造され得る。
【0038】
上記の内容は、本開示の原理を例示したに過ぎず、システム、装置、および方法は、限定する目的でなく例示の目的で提示された、説明された実施形態以外のものによって実践され得る。本発明に開示されたシステム、装置、および方法は、寛骨臼システムに使用するために示されるが、それには限定されないが、脊椎関節形成、頭蓋顎顔面手術処置、膝関節置換、肩関節形成、ならびに足、足首、手、およびその他の四肢の処置を含むその他の手術処置に使用されるシステム、装置、および方法に適用され得ることを理解されたい。
【0039】
変形形態および修正形態が、本開示を精査した後に当業者には思いつくであろう。開示された特徴は、本明細書に説明された1つまたは複数のその他の特徴と(複数の独立の組合せおよび下位の組合せを含む)任意の組合せおよび下位の組合せで実装され得る。上記に説明または例示された様々な特徴は、その任意の構成要素を含んで、その他のシステムで結合または一体化され得る。さらに、いくつかの特徴は省略され、または実装されなくてもよい。
【0040】
変更、代替、および改変の例が当業者によって確認可能であり、本明細書に開示された情報の範囲から逸脱せずになされ得る。本明細書に列挙されたすべての参照は、その全体が参照によって組み込まれ、本出願の一部分となされる。