特許第6225079号(P6225079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6225079エアコン動作の検知方法、及びそのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6225079
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】エアコン動作の検知方法、及びそのシステム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20171023BHJP
   G01R 21/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   F24F11/02 P
   G01R21/00 P
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-146082(P2014-146082)
(22)【出願日】2014年7月16日
(65)【公開番号】特開2016-23818(P2016-23818A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 洋思
(72)【発明者】
【氏名】石山 文彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】大山 孝
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−232061(JP,A)
【文献】 特開2013−186079(JP,A)
【文献】 特開平07−332740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00−11/08
G01R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコンの消費電力のみを検出可能な電力センサから第1の時系列の電力データを取得するステップと、
前記第1の時系列の電力データから、前記エアコンの動作開始時から立ち上がり区間の立ち上がり時間幅、立ち上がり電力幅、前記立ち上がり区間後の最大小波形時間幅、最小小波形時間幅、最大小波形電力幅、及び最小小波形電力幅を演算するパラメータを演算するステップと、
前記エアコンを含む複数の電気機器に供給される電力を検出可能な電力センサから第2の時系列の電力データを取得するステップと、
前記第2の時系列の電力データから、前記立ち上がり時間幅において前記立ち上がり電力幅以上の電力変動を検知するステップと、
前記第2の時系列の電力データの前記電力変動後において、少なくとも、前記最小小波形時間幅以上前記最大小波形時間幅以下の範囲で1周期の波形が存在し、かつ、前記波形の電力変動量が、前記最小小波形電力幅以上前記最大小波形電力幅以下である場合、前記波形を小波形として検知する小波形を検知するステップと、
前記小波形を連続して2回以上検知した場合、前記電力変動の開始時刻から前記エアコンが動作していると推定するエアコン動作を推定するステップと、
を有することを特徴するエアコン動作の検知方法。
【請求項2】
前記パラメータを演算するステップは、
前記第1の時系列の電力データのユーザによって小波形範囲として指定された範囲の自己相関値が最小となる時間幅に所定の定数を乗じたものを、前記最小小波形時間幅と前記最大小波形時間幅とするよう演算するステップと、
前記第1の時系列の電力データのユーザによって小波形範囲として指定された範囲において、小波形1周期における電力の最大変動量に所定の定数を乗じたものを、前記最小小波形電力幅と前記最大小波形電力幅とするよう演算するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のエアコン動作の検知方法。
【請求項3】
前記小波形を検知するステップは、さらに、前記第2の時系列の電力データの前記電力変動後の第1の時刻の電力データに対し、その電力値及び傾きの符号において同じであるとみなせる電力データが、前記第1の時刻以降、前記最小小波形時間幅以上前記最大小波形時間幅以下の範囲ではじめて検知されるまで、前記波形を小波形として検知しないことを特徴とする請求項1又は2に記載のエアコン動作の検知方法。
【請求項4】
エアコンの消費電力のみを検出可能な電力センサから第1の時系列の電力データと、前記エアコンを含む複数の電気機器に供給される電力を検出可能な電力センサから第2の時系列の電力データとを取得する入力インタフェースと、
前記第1の時系列の電力データおよび前記第2の時系列の電力データを記憶する記憶部と、
前記第1の時系列の電力データから、前記エアコンの動作開始時から立ち上がり区間の立ち上がり時間幅、立ち上がり電力幅、前記立ち上がり区間後の最大小波形時間幅、最小小波形時間幅、最大小波形電力幅、及び最小小波形電力幅を演算するパラメータを演算する第1の演算部と、
前記第2の時系列の電力データから、前記立ち上がり時間幅において前記立ち上がり電力幅以上の電力変動を検知し、前記第2の時系列の電力データの前記電力変動後において、少なくとも、前記最小小波形時間幅以上前記最大小波形時間幅以下の範囲で1周期の波形が存在し、かつ、前記波形の電力変動量が、前記最小小波形電力幅以上前記最大小波形電力幅以下である場合、前記波形を小波形として検知し、前記小波形を連続して2回以上検知した場合、前記電力変動の開始時刻から前記エアコンが動作していると推定するエアコン動作を推定する第2の演算部と、
を有することを特徴するエアコン動作の検知システム。
【請求項5】
前記第1の演算部は、
前記第1の時系列の電力データのユーザによって小波形範囲として指定された範囲の自己相関値が最小となる時間幅に所定の定数を乗じたものを、前記最小小波形時間幅と前記最大小波形時間幅とするよう演算し、
前記第1の時系列の電力データのユーザによって小波形範囲として指定された範囲において、小波形1周期における電力の最大変動量に所定の定数を乗じたものを、前記最小小波形電力幅と前記最大小波形電力幅とするよう演算することを特徴とする請求項4に記載のエアコン動作の検知システム。
【請求項6】
前記第2の演算部は、さらに、前記第2の時系列の電力データの前記電力変動後の第1の時刻の電力データに対し、その電力値及び傾きの符号において同じであるとみなせる電力データが、前記第1の時刻以降、前記最小小波形時間幅以上前記最大小波形時間幅以下の範囲ではじめて検知するまで、前記波形を小波形として検知しないことを特徴とする請求項4又は5に記載のエアコン動作の検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分電盤で計測した電力や電流の情報から、その先につながっている電気機器を推定するNon-intrusive load monitoring(NILM)によってエアコン動作の検知方法、及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時系列の電力もしくは電流データを用いて動作機器を同定する技術がある(非特許文献1参照)。時系列の電力データ(以下、電力時系列)を用い、複数の電気機器の中から特定の電気機器動作を同定するにあたり、図1に示すような、電気機器毎に固有の、電力の急峻な立ち上がりとその急峻な立ち上がり後の一定の傾きを持った電力の増加とを特徴として利用している。このように、急峻な立ち上がり後の一定の傾きという比較的単純な電力の変化を示す電気機器の動作を検知することは可能であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Cole A.I., Albicki A, Data extraction for effective non-intrusive identification of residential power loads, Instrumentation and Measurement Technology Conference, 1998. IMTC/98. Conference Proceedings. IEEE, pp.812-815 vol2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、内部に温度計を持ち、気温を一定に保つように制御されるエアコンでは、電力の急峻な立ち上がり後に、周期性を持つ小さな消費電力の変動が連続するように電力が複雑に変化する。このような電力時系列の変化、特に周期性を持つ小さな消費電力の変動は、従来の検知方法における検知条件では捉えることはできないため、従来の検知方法ではエアコンの動作を正確に推定することは困難であるという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、エアコンの動作開始時に発生する特徴的な電力変動を捉えることが可能なエアコン動作の検知方法、及びそのシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、エアコン動作の検知方法であって、エアコンの消費電力のみを検出可能な電力センサから第1の時系列の電力データを取得するステップと、前記第1の時系列の電力データから、前記エアコンの動作開始時から立ち上がり区間の立ち上がり時間幅、立ち上がり電力幅、前記立ち上がり区間後の最大小波形時間幅、最小小波形時間幅、最大小波形電力幅、及び最小小波形電力幅を演算するパラメータを演算するステップと、前記エアコンを含む複数の電気機器に供給される電力を検出可能な電力センサから第2の時系列の電力データを取得するステップと、前記第2の時系列の電力データから、前記立ち上がり時間幅において前記立ち上がり電力幅以上の電力変動を検知するステップと、前記第2の時系列の電力データの前記電力変動後において、少なくとも、前記最小小波形時間幅以上前記最大小波形時間幅以下の範囲で1周期の波形が存在し、かつ、前記波形の電力変動量が、前記最小小波形電力幅以上前記最大小波形電力幅以下である場合、前記波形を小波形として検知する小波形を検知するステップと、前記小波形を連続して2回以上検知した場合、前記電力変動の開始時刻から前記エアコンが動作していると推定するエアコン動作を推定するステップと、を有することを特徴する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のエアコン動作の検知方法において、前記パラメータを演算するステップは、前記第1の時系列の電力データのユーザによって小波形範囲として指定された範囲の自己相関値が最小となる時間幅に所定の定数を乗じたものを、前記最小小波形時間幅と前記最大小波形時間幅とするよう演算するステップと、前記第1の時系列の電力データのユーザによって小波形範囲として指定された範囲において、小波形1周期における電力の最大変動量に所定の定数を乗じたものを、前記最小小波形電力幅と前記最大小波形電力幅とするよう演算するステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のエアコン動作の検知方法において、前記小波形を検知するステップは、さらに、前記第2の時系列の電力データの前記電力変動後の第1の時刻の電力データに対し、その電力値及び傾きの符号において同じであるとみなせる電力データが、前記第1の時刻以降、前記最小小波形時間幅以上前記最大小波形時間幅以下の範囲ではじめて検知されるまで、前記波形を小波形として検知しないことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、エアコン動作の検知システムであって、エアコンの消費電力のみを検出可能な電力センサから第1の時系列の電力データと、前記エアコンを含む複数の電気機器に供給される電力を検出可能な電力センサから第2の時系列の電力データとを取得する入力インタフェースと、前記第1の時系列の電力データおよび前記第2の時系列の電力データを記憶する記憶部と、前記第1の時系列の電力データから、前記エアコンの動作開始時から立ち上がり区間の立ち上がり時間幅、立ち上がり電力幅、前記立ち上がり区間後の最大小波形時間幅、最小小波形時間幅、最大小波形電力幅、及び最小小波形電力幅を演算するパラメータを演算する第1の演算部と、前記第2の時系列の電力データから、前記立ち上がり時間幅において前記立ち上がり電力幅以上の電力変動を検知し、前記第2の時系列の電力データの前記電力変動後において、少なくとも、前記最小小波形時間幅以上前記最大小波形時間幅以下の範囲で1周期の波形が存在し、かつ、前記波形の電力変動量が、前記最小小波形電力幅以上前記最大小波形電力幅以下である場合、前記波形を小波形として検知し、前記小波形を連続して2回以上検知した場合、前記電力変動の開始時刻から前記エアコンが動作していると推定するエアコン動作を推定する第2の演算部と、を有することを特徴する。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のエアコン動作の検知システムにおいて、前記第1の演算部は、前記第1の時系列の電力データのユーザによって小波形範囲として指定された範囲の自己相関値が最小となる時間幅に所定の定数を乗じたものを、前記最小小波形時間幅と前記最大小波形時間幅とするよう演算し、前記第1の時系列の電力データのユーザによって小波形範囲として指定された範囲において、小波形1周期における電力の最大変動量に所定の定数を乗じたものを、前記最小小波形電力幅と前記最大小波形電力幅とするよう演算することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載のエアコン動作の検知システムにおいて、前記第2の演算部は、さらに、前記第2の時系列の電力データの前記電力変動後の第1の時刻の電力データに対し、その電力値及び傾きの符号において同じであるとみなせる電力データが、前記第1の時刻以降、前記最小小波形時間幅以上前記最大小波形時間幅以下の範囲ではじめて検知するまで、前記波形を小波形として検知しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、エアコンの動作開始時に発生する特徴的な電力変動を捉えることにより、精度良くエアコン動作の検出を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電気機器動作時の電力の変動例を示す図である。
図2】エアコンが動作したときの電力時系列における急峻な立ち上がりと小波形のイメージを示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るエアコン動作の検知システムの機能構成を示す図である。
図4】本発明のエアコン動作の検知システムにおけるパラメータ演算の手順を示す図である。
図5】ユーザにより指定される各区間の例を示す図である。
図6】本発明のシステムのエアコン動作の検知システムにおけるエアコン動作推定の手順を示す図である。
図7】本発明の小波形検知の第1の演算方法を説明する図である。
図8】本発明の小波形検知の第2の演算方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0015】
本発明は、エアコンの電力変動は起動時の電力の急峻な立ち上がりの後に周期性を持つ小さな消費電力の変動が連続するという特徴を持つことから、電力時系列において急峻な立ち上がりを検知した後、さらに、小さな波(以下、小波形)を連続して検知した場合にエアコンが動作していると推定する。図2に、エアコンが動作したときの電力時系列における急峻な立ち上がりと小波形のイメージを示す。
【0016】
本発明では、エアコンが動作したときに発生する小波形を検知するために、特徴量として、小波形の最大小波形時間幅、最小小波形時間幅、最大小波形電力幅、最小小波形電力幅という4つの特徴を定義し、これらを特徴抽出する。これらの特徴量を用いることにより、エアコンの動作状態の推定精度向上を可能とした。さらに、エアコンの時系列電力変動である周期性を持つ小波形を検知することにより、エアコンの動作状態の推定精度向上を可能とした。
【0017】
本システムの動作には大きく2つの手順があり、1つは、パラメータ演算の手順と、エアコン動作推定の手順である。パラメータ演算の手順では、エアコンの電力時系列のみを用いてエアコン動作時の特徴量を抽出する。一方、エアコン動作推定の手順では、家全体の総電力の電力時系列を用いてエアコンの動作状態を推定する。
【0018】
以下に、本発明のエアコン動作の検知システムの構成と動作手順の実施例を示す。
【0019】
図3に、本発明の一実施形態に係るエアコン動作の検知システムの機能構成を示す。本システム100は、入力インタフェース110、記憶部120、演算部130、出力インタフェース140の機能を持つ装置、もしくはコンピュータによって実行されるプログラムにより構成される。また、入力インタフェース110は、電力センサ202−1、202−2、入力装置150に接続され、出力インタフェース140はモニタ160に接続されている。
【0020】
<入力インタフェース110>
電力時系列入力部111は、電力センサ202等から得られた電力時系列を数値情報としてシステムに入力するインタフェースである。本システムで利用する電力時系列のサンプリング間隔SIは20秒程度が好ましいが、20秒に限るものではない。電力時系列入力部においてエアコン301に供給される電力時系列と電力系統から分電盤201に供給される家全体の総電力の電力時系列を電力センサ202−1、202−2から取得する。
【0021】
範囲指定入力部112は、電力時系列から立ち上がりと小波形の範囲を指定するのに使用する入力装置150を接続するインタフェースである。
【0022】
<記憶部120>
電力時系列記憶部121は、電力時系列入力部111により取得した電力時系列を任意の期間内で記憶する。
【0023】
パラメータ記憶部122は、パラメータ演算部134により算出されたパラメータを記憶する。以下に、本システムで利用するパラメータを示す。
【0024】
−立ち上がり時間幅:電力時系列において変化率が所定の閾値以上である立ち上がり区間の開始から終了までの時間
−立ち上がり電力幅:電力時系列において変化率が所定の閾値以上である立ち上がり区間の最小電力と最大電力との差分
−最大小波形時間幅:電力時系列の小波形1周期の最大時間
−最小小波形時間幅:電力時系列の小波形1周期の最小時間
−最大小波形電力幅:電力時系列の小波形1周期における電力の最大変動量
−最小小波形電力幅:電力時系列の小波形1周期における電力の最小変動量
【0025】
立ち上がり区間記憶部123は、範囲指定入力部112より指定された立ち上がり区間を記憶する。
【0026】
小波形区間記憶部124は、範囲指定入力部より指定された小波形区間を記憶する。
【0027】
<演算部130>
立ち上がり検知部131は、後述するように、電力時系列記憶部121に記憶された電力時系列から急峻な立ち上がりを検知する。
【0028】
小波形検知部132は、後述するように、電力時系列記憶部121に記憶された電力時系列から小波形を検知する。
【0029】
エアコン動作推定部133は、電力時系列の急峻な立ち上がりと連続する小波形の検知結果より、エアコンの動作状態を推定する。
【0030】
パラメータ演算部134は、立ち上がりと小波形を検知する演算に用いるパラメータを演算する。
【0031】
<出力インタフェース140>
電力時系列出力部141は、電力時系列記憶部121に記憶された電力時系列をグラフ表示し、モニタ等に出力するインタフェースである。
【0032】
推定結果出力部142は、エアコン動作推定部133で算出されたエアコンの動作状態の推定結果を出力するインタフェースである。
【0033】
図4に、本発明のエアコン動作の検知システムにおけるパラメータ演算の手順を示す。
【0034】
電力時系列入力部111よりエアコン301の電力時系列を取得し、それを電力時系列記憶部121に記憶する(S401)。電力時系列出力部121よりエアコン301の電力時系列を、電力時系列出力部141を介してモニタ160にグラフ出力する(S402)。
【0035】
モニタ160上に表示された電力時系列グラフに対して、ユーザが入力装置150を使用して指定する立ち上がり区間と小波形区間とのデータを取得する(S403)。図5に、ユーザにより指定される各区間の例を示す。立ち上がり区間および小波形区間には、それぞれ時間幅と電力幅とが指定される。
【0036】
S403で指定された立ち上がり区間の電力時系列を立ち上がり区間記憶部123に記憶し、S403で指定された小波形区間の電力時系列を小波形区間記憶部124に記憶する(S404)。
【0037】
パラメータ演算部134で立ち上がり時間幅、立ち上がり電力幅、最大小波形時間幅、最小小波形時間幅、最大小波形電力幅、最小小波形電力幅を演算する(S405)。以下に演算式をそれぞれ示す。なお、以下の演算式は一例であり、以下の演算式に限るものではない。
【0038】
−立ち上がり時間幅ST:立ち上がり区間記憶部123に記憶された立ち上がり区間のデータに対し、複数の立ち上がり時のデータがある場合、最大の時間幅を立ち上がり時間幅STの値とする。演算式は以下の通り。
【0039】
【数1】
【0040】
ここで、STはS403で複数指定した立ち上がり時間幅の各値、MAX()は最大値を選択する関数を表す。
【0041】
−立ち上がり電力幅SP:立ち上がり区間記憶部123に記憶された立ち上がり区間のデータに対し、複数の立ち上がり時のデータがある場合、最小の電力幅を立ち上がり電力幅SPの値とする。演算式は以下の通り。
【0042】
【数2】
【0043】
ここで、SPはS403で複数指定した立ち上がり電力幅のそれぞれの値、MIN()は最小値を選択する関数を表す。
【0044】
−最大小波形時間幅WT_MAXと最小小波形時間幅WT_MIN:小波形区間記憶部124に記憶された小波形区間のデータに対し、自己相関関数式を利用して最大小波形時間幅と最小小波形時間幅の値を演算する。演算式は以下の通り。
【0045】
【数3】
【0046】
ここで、Rは自己相関値、pは時刻tにおける電力値、pt−k・SIは時刻tからk個のサンプル点分戻った時刻の電力値、μは電力値の平均、E()は期待値関数、Var()は分散関数を表す。なお、自己相関関数がノイズ等によって生じる微小な波の周期性の影響を抑制するために、前処理として電力時系列に5分程度の移動平均を施すことは有効である。
【0047】
代表的な小波形の時間幅WTは以下の式で演算する。すなわち、小波形区間において自己相関値Rが最小になるkにサンプリング間隔SIを乗じた値を小波形の時間幅WTとする。なお下式のカッコ内は条件を示している。
【0048】
【数4】
【0049】
実際のエアコンの消費電力の変動では小波形の時間幅に多少の揺らぎがあるため、小波形の時間幅WTに適当な定数を乗じて最大小波形時間幅WT_MAXと最小小波形時間幅WT_MINの値を演算する。演算式は以下の通り。
【0050】
【数5】
【0051】
−最大小波形電力幅WP_MAXと最小小波形電力幅WP_MIN:小波形区間のデータに対し、小波形1周期における電力の最大変動量を取得し、揺らぎを考慮して、その最大変動量に適当な定数を乗じて最大小波形電力幅WP_MAXと最小小波形電力幅WP_MINのパラメータを演算する。
【0052】
【数6】
【0053】
そして、このようにS405で演算した各パラメータをパラメータ記憶部122に記憶する(S406)。
【0054】
このようにして予め求められた各パラメータに基づき、本発明のシステムのエアコン動作の検知システムは以下のようにエアコン動作推定を行う。
【0055】
図6に、本発明のシステムのエアコン動作の検知システムにおけるエアコン動作推定の手順を示す。
【0056】
電力時系列入力部111より家全体の総電力の電力時系列を取得し、それを電力時系列記憶部121に記憶する(S601)。S601により取得した総電力の電力時系列とパラメータ記憶部122に記憶されている立ち上がり時間幅STにおいて、立ち上がり電力幅SP以上の電力の変動があった場合に電力の急峻な立ち上がりを検知する(S602)。演算式は以下の通り。
【0057】
【数7】
【0058】
なお、Judge_S=1のとき、電力の急峻な立ち上がりを検知し、Judge_S=0のとき、検知しない。
【0059】
S602で立ち上がりを検知した条件で、S601により取得した電力時系列とパラメータ記憶部122に記憶されている最大小波形時間幅WT_MAXと最小小波形時間幅WT_MINと最大小波形電力幅WP_MAXと最小小波形電力幅WP_MINを用いて小波形を検知する(S604)。演算方法は以下であり、以下に示す<小波形検知の演算1>もしくは<小波形検知の演算2>のどちらかが成立するとき小波形を検知し、どちらも成立しないとき小波形を検知しない。
【0060】
本発明において小波形検知とは、最小小波形時間幅と最大小波形時間幅の範囲で1周期の波形が存在し、その波形の電力変動量が、最小小波形電力幅と最大小波形電力幅に収まる場合に、小波形を検知するというものであり、具体的には以下のように演算する。
【0061】
<小波形検知の演算1>
図7に、本発明の小波形検知の第1の演算方法を説明する図を示す。時刻tにおいて電力時系列の傾きがプラスであり、かつ、時刻t+WT_MINから時刻t+WT_MAXの区間において傾きがプラスで電力がpとの差が所定の値以下となる点があり、かつ、時刻tから時刻t+WT_MINの区間で傾きがプラスで電力がpとなる点が一度たりとも生じることなく、かつ、時刻tから時刻t+k・SIまでの区間における最大電力値と最小電力値の差がWP_MIN以上WP_MAX以下である場合に小波形を検知し、本条件を満たさない場合、小波形を検知しない。
【0062】
なお、電力がpとの差が所定の値以下となる点とは、その点の存在によって、離散値として得られる電力時系列において、電力がpとなる点が時刻t+WT_MINから時刻t+WT_MAXの区間に存在するとみなせる点である。pとの差は、サンプリング期間に応じて適当な値を設定すれば良い。
【0063】
<小波形検知の演算2>
図8に、本発明の小波形検知の第2の演算方法を説明する図を示す。時刻tにおいて電力時系列の傾きがマイナスであり、かつ、時刻t+WT_MINから時刻t+WT_MAXの区間において傾きがマイナスで電力がpとの差が所定の値以下となる点があり、かつ、時刻tから時刻t+WT_MINの区間で傾きがマイナスで電力がpとなる点が一度たりとも生じることなく、かつ、時刻tから時刻t+k・SIまでの区間における最大電力値と最小電力値の差がWP_MIN以上WP_MAX以下である場合に小波形を検知し、本条件を満たさない場合、小波形を検知しない。なお、pとの差は、<小波形検知の演算1>と同様に、サンプリング期間に応じて適当な値を設定すれば良い。
【0064】
S604を繰り返し、小波形を連続して2回以上検知したかを判定する(S605)。小波形を連続して2回以上検知した場合、急峻な立ち上がりの開始時刻から現時刻までをエアコン動作と推定し(S606)、小波形を連続して2回以上検知しない場合、エアコン非動作と推定する(S607)。
【符号の説明】
【0065】
100 エアコン動作の検知システム
110 入力インタフェース
111 電力時系列入力部
112 範囲指定入力部
120 記憶部
121 電力時系列記憶部
122 パラメータ記憶部
123 立ち上がり区間記憶部
124 小波形検知部
130 演算部
131 立ち上がり検知部
132 小波形検知部
133 エアコン動作推定部
134 パラメータ演算部
140 出力インタフェース
141 電力時系列出力部
142 推定結果出力部
150 入力装置
160 モニタ
201 分電盤
202 電力センサ
301 エアコン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8