(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも2つの前記追加の固定部は、それぞれ、前記略四辺形の前記一の辺及び前記他の辺を除く二つの辺と、前記信号用パターンの配列部分の両端部と、の間に設けられている、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光変調器。
前記配列部分と前記一の辺との間に配された前記追加の固定部と、前記信号用パターンの配列部分と前記他の辺との間に配された前記追加の固定部と、の間の、前記一の辺に直交する方向に測った距離dが、前記パッドの前記一の辺に対向する端部と、前記配列部分と前記一の辺との間に配された前記追加の固定部と、の間の、前記一の辺に直交する方向に測った距離Lpに対し、
d≧Lp/5 の関係を有する、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光変調器。
前記信号用リードピンの配列部分は、一つ又は複数の配列部分から成り、前記一の辺及び前記他の辺を除く二つの辺のそれぞれに最も近い2つの配列部分のそれぞれの端部と、当該二つの辺のうちの対応する辺との間の距離が、互いに異なっている、
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の光変調器。
【背景技術】
【0002】
高速/大容量光ファイバ通信システムにおいては、導波路型の光変調素子を組み込んだ光変調器が多く用いられている。中でも、電気光学効果を有するLiNbO
3(以下、LNともいう)を基板に用いた光変調素子は、光の損失が少なく且つ広帯域な光変調特性を実現し得ることから、高速/大容量光ファイバ通信システムに広く用いられている。
【0003】
このLNを用いた光変調素子では、マッハツェンダ型光導波路と、当該光導波路に変調信号である高周波信号を印加するためのRF電極と、当該導波路における変調特性を良好に保つため種々の調整を行うためのバイアス電極と、が設けられている。そして、光変調素子に設けられたこれらの電極は、当該光変調素子を収容する光変調器の筺体に設けられたリードピンやコネクタを介して、外部の電子回路に接続される。
【0004】
一方、光ファイバ通信システムにおける変調方式は、近年の伝送容量の増大化の流れを受け、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)やDP−QPSK(Dual Polarization - Quadrature Phase Shift Keying)等、多値変調や、多値変調に偏波多重を取り入れた伝送フォーマットが主流となっている。
【0005】
QPSK変調を行う光変調器(QPSK光変調器)やDP−QPSK変調を行う光変調器(DP−QPSK光変調器)は、入れ子構造になった複数のマハツェンダ型光導波路を備え、複数の高周波信号電極及び複数のバイアス電極を備えることから(例えば、特許文献1参照)、光変調器の筺体のサイズが大型化する傾向があり、特に小型化の要請が強い。
【0006】
この小型化の要請に対応する一つの策として、従来、RF電極のインタフェースとして光変調器の筺体に設けられていたプッシュオン型の同軸コネクタを、バイアス電極のインタフェースと同様のリードピンに置き換え、これらのリードピンを外部の回路基板に接続するためのFPC(フレキシブル配線板(FPC:Flexible Printed Circuits)を付加した光変調器が提案されている。
【0007】
例えば、DP−QPSK光変調器では、それぞれにRF電極を有する4つのマッハツェンダ型光導波路で構成される光変調素子が用いられる。この場合、光変調器の筺体に4つのプッシュオン型同軸コネクタを設けたのでは筺体の大型化は避けられないが、同軸コネクタに代えてリードピンとFPCとを用いれば、小型化が可能となる。
【0008】
また、光変調器の筺体のリードピンと、当該光変調器に変調動作を行わせるための電子回路が搭載された回路基板と、の間が、上記FPCを介して接続されるので、従来用いていた同軸ケーブルの余長処理を行う必要が無くなり、光送信装置内における光変調器の実装スペースを縮小することができる。
【0009】
光変調器に用いられるFPCは、例えば柔軟性のあるポリイミドベースの材料を基板(以下、FPC基板)として用いて作製され、一方の端部付近に設けられた複数のスルーホールのそれぞれが、配線パターンを介して、他方の端部に設けられたパッドのそれぞれに電気的に接続されている。そして、光変調器の筺体の底面又は側面から突き出た複数のリードピンが上記複数のスルーホールにそれぞれ挿通されて例えばハンダにより固定され且つ電気的に接続され、上記複数のパッドが回路基板に例えばハンダにより固定され且つ接続される。これにより、当該回路基板上のパッドから与えられる高周波信号が、それぞれ対応する上記スルーホールとリードピンとを介して、光変調素子の対応するRF電極に与えられて、高速光変調が行われる。
【0010】
上記のFPCを用いた光変調器では、上述のように、筺体を小型化することができ、回路基板上における光変調器の実装スペースも縮小することができるので、光伝送装置の小型化に大きく貢献し得る。
【0011】
図13は、そのようなFPCを備える従来の光変調器の構成を示す図であり、
図13(a)は光変調器の上面図、
図13(b)は正面図、
図13(c)は底面図である。この光変調器1300は、光変調素子1302と、光変調素子1302を収容する筺体1304と、フレキシブル配線板(FPC)1306と、光変調素子1302に光を入射するための光ファイバ1308と、光変調素子1302から出力される光を筺体1304の外部へ導く光ファイバ1310と、を備える。
【0012】
筺体1304には、光変調素子1302の4つのRF電極(不図示)にそれぞれ接続された4つのリードピン1320、1322、1324、1326が設けられており、当該リードピン1320、1322、1324、1326は、FPC1306に設けられた後述するスルーホール1420、1422、1424、1426に挿通されて例えばハンダにより固定され且つ電気的に接続されている。
【0013】
図14は、FPC1306の構成を示す図である。FPC1306は、図示下側の一の辺1400の近傍に、当該一の辺1400の方向に沿って4つのパッド1410、1412、1414、1416が並んで設けられている。また、辺1400に対向する他の辺1402の側には、例えば辺1402の方向に沿って、4つのスルーホール1420、1422、1424、1426が並んで設けられている。さらに、4つのパッド1410、1412、1414、1416は、それぞれ、配線パターン1430、1432、1434、1436によりスルーホール1420、1422、1424、1426に電気的に接続されている。
【0014】
そして、4つのパッド1410、1412、1414、1416が外部の回路基板のパッドに対してそれぞれ例えばハンダにより固定され且つ電気的に接続されることにより、光変調器1300が備える光変調素子1302のRF電極と当該回路基板上に構成された電子回路とが電気的に接続されて光送信装置内に実装される。なお、FPC1306の形状は、配線パターンを極力短くしてマイクロ波損失を低く抑えるべく、図示のように信号伝送方向に短い辺を持つ横長の長方形になるのが一般的であり、図示の例のように4つのパッド1410、1412、1414、1416を持つ場合には、長辺方向で約20mm以下、短辺方向で約10mm以下程度の長方形となる。
【0015】
図15は、電子回路が構成された回路基板に光変調器1300を接続した状態の一例を示す図であり、
図15(a)は光変調器1300の上面方向から見た図、
図15(b)は
図15(a)におけるBB断面矢視図である。なお、
図15(b)において光変調器1300の内部の構成については記載を省略している。
【0016】
光変調器1300と回路基板1500とは、例えば光送信装置の筺体内のベース1502に固定されている。
図15(a)に示すように、光変調器1300のFPC1306は、リードピン1320、1322、1324、1326との接続部分から図示左方へ延在し、
図15(b)に示すように、左側端部が回路基板1500に接するように図示斜め左下方向に曲げられ、これにより、FPC1306のパッド1410、1412、1414、1416が回路基板1500上のパッド1510、1512、1514、1516に例えばハンダにより固定され且つ電気的に接続される(
図15(a))。
【0017】
しかしながら、上記のようなFPC付き光変調器を光送信装置内の回路基板に接続し、当該光送信装置を搬送してその稼働を開始すると、当該搬送の途中や稼働時の設置環境における振動等により、光変調器の筺体1304のリードピン1320、1322、1324、1326とFPC1306のスルーホール1420、1422、1424、1426との間のハンダ固定部又はハンダ接続部に剥離やヒビ割れを生じ、FPC1306のパッド1410、1412、1414、1416からリードピン1320、1322、1324、1326に至るまでの高周波特性が劣化又は変化することとなって、光変調器1300における光変調特性に問題を生じ得る。
【0018】
上述したように、FPC1306は、光変調器1300の製造の際にスルーホール1420、1422、1424、1426が光変調器の筺体1304のリードピン1320、1322、1324、1326に例えばハンダにより固定され且つ電気的に接続される。そして、光変調器1300を光送信装置内で用いる際には、パッド1410、1412、1414、1416が回路基板1500上のパッド1510、1512、1514、1516に例えばハンダにより固定され且つ電気的に接続される。このとき、FPC1306は、
図14から理解され得るように、スルーホール1420(すなわち、リードピン1320とのハンダ固定部又はハンダ接続部)から図示右側の辺1404までの部分及びスルーホール1426(すなわち、リードピン1326とのハンダ固定部又はハンダ接続部)から図示左側の辺1406までの部分が、共に長さL1の片持ち梁(それぞれ、第1及び第2の片持ち梁という)を構成することとなり、光変調器1300の設置環境の振動(環境振動)に応じて振動することとなる。また、同様に、スルーホール1420、1422、1424、1426(すなわち、リードピン1320、1322、1324、1326との固定部)からパッド1410、1412、1414、1416までの部分が、長さL2の両持ち梁を構成することとなり、スルーホール1420、1422、1424、1426から図示上方の辺1402までの部分が、長さがL3の片持ち梁(第3の片持ち梁という)を構成することとなって、それぞれが環境振動に応じて振動することとなる(すなわち、
図14に示す矩形のFPCでは、上記両持ち梁の振動、及び上記第1〜第3の片持ち梁の振動の、4つの振動モードが存在する)。
【0019】
環境振動としては、光変調器1300及び当該光変調器1300を用いる光送信装置の、搬送や組み付け時の振動のほか、光送信装置が備える放熱ファン、光送信装置が収容される装置架(ラック)の冷却ファン、光変調装置が設置される部屋の空調振動、光変調装置が設置される建物に伝達されるさまざまな振動など、多くの要因が存在し得る。
【0020】
そして、特にこれらの環境振動の周波数が、FPC1306の基板剛性と上記長さL1、L2、L3等とで定まる固有振動の周波数に近い場合には、上記片持ち梁部分及び又は両持ち梁部分は、共振振動のように大きな振幅を伴って振動することとなり、これら梁部分の固定端として機能するスルーホール1420、1422、1424、1426とリードピン1320、1322、1324、1326とのハンダ固定部又はハンダ接続部に、剥離やひび割れが生じ得る。
【0021】
ここで、上記梁部分の固有周波数は、対応する長さL1、L2,L3が長いほど低くなり、環境振動におけるパワースペクトル密度が大きい周波数範囲内に入ることとなって、当該環境振動の影響を受けやすくなる。例えば、
図14のような構成のFPC1306の場合、環境振動の影響を受けやすいのは、長さL3の部分よりも長さL1又はL2の部分となる。より具体的には、例えば
図14における長さL1の部分は、
図16(a)に太線矢印で示す如く振動して、特にリードピン1320及び1326のハンダ固定部又はハンダ接続部に剥離やひび割れを発生させ、
図14における長さL2の部分は、
図16(b)に太線矢印で示す如く振動して、リードピン1320、1322、1324、1326のハンダ固定部又はハンダ接続部に剥離やひび割れを発生させ得る。
【0022】
特に、スルーホール1420、1422、1424、1426の内径は、光変調素子1302に印加されることとなる高周波信号の周波数が数十GHz程度にまで及ぶ可能性があることから、リードピン1320、1322、1324、1326の直径と同様に数百μm程度と小さく、1mm前後のリードピンを扱う通常の電子機器に比べて上記環境振動の影響を受け易い。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
本実施形態の光変調器は、回路基板との間の電気的接続を行う略四辺形のフレキシブル配線板を備え、当該フレキシブル配線板は、当該光変調器の筺体に設けられた信号用リードピンに接続されている。そして、フレキシブル配線板は、当該フレキシブル配線板と上記信号用リードピン及び上記回路基板との接続部を固定端とする振動の固有振動の周波数を高めるための、追加の固定部を有している。そして、当該追加の固定部は、上記信号用リードピンに加えて上記光変調器の筺体に追加して設けられた追加リードピンと接続される追加配線パターンで構成されている。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る光変調器の構成を示す図である。
本光変調器100は、光変調素子102と、光変調素子102を収容する筺体104と、フレキシブル配線板(FPC)106と、光変調素子102に光を入射するための光ファイバ108と、光変調素子102から出力される光を筺体104の外部へ導く光ファイバ110と、を備える。
【0028】
光変調素子102は、例えばLN基板上に設けられた4つのマッハツェンダ型光導波路と、当該マッハツェンダ型光導波路上にそれぞれ設けられて光導波路内を伝搬する光波を変調する4つの高周波電極(RF電極)と、を備えたDP―QPSK光変調器である。光変調素子102から出力される2つの光は、例えばレンズ光学系により偏波合成され、光ファイバ110を介して筺体104の外部へ導かれる。
【0029】
筺体104は、上記光変調素子102が備える4つのRF電極(不図示)のそれぞれに接続された4つの信号用リードピン120、122、124、126を備える。筺体104に設けられた信号用リードピン120、122、124、126は、FPC106に設けられた後述する信号用スルーホール220、222、224、226に挿通され、当該信号用スルーホール220、222、224、226と信号用リードピン120、122、124、126との間がそれぞれ例えばハンダにより接続され及び固定されている。
【0030】
図2は、FPC106の構成を示す図である。FPC106は、例えばポリイミドを主原料とした基板(以下、FPC基板)に用いて作製されている。FPC106は、例えば平面視が矩形に構成されている。上述したように、FPC1306の形状は、配線パターンを極力短くしてマイクロ波損失を低く抑えるべく、横長の長方形になるのが一般的である。このため、本実施形態では、FPC1306と同様に、FPC106は矩形形状を為すものとしている。ただし、FPC106の形状は、これに限らず、例えば略四辺形の形状を為すものとすることができる。以下の記載において、「辺」というときは、FPC106が為す矩形の辺をいうが、FPC106が略四辺形で構成される場合には、「辺」とは、FPC106が為す当該略四辺形の辺を意味する。
【0031】
FPC106の図示下側の一の辺200の近傍には、当該一の辺200の方向に沿って4つのパッド210、212、214、216が並んで設けられている。また、辺200に対向する他の辺202の側には、例えば辺202の方向に沿って、4つの信号用スルーホール220、222、224、226が並んで設けられている。さらに、4つのパッド210、212、214、216は、それぞれ、配線パターン230、232、234、236により信号用スルーホール220、222、224、226に電気的に接続されている。
【0032】
上述のように、4つの信号用スルーホール220、222、224、226は、それぞれ、筺体104が備える4つの信号用リードピン120、122、124、126に接続されており、外部の回路基板に設けられた電子回路の一部を構成するパッドに対して(例えばハンダにより)パッド210、212、214、216がそれぞれ電気的に接続されることにより、当該電子回路から出力される高周波信号が、FPC106を介して光変調素子102のRF電極に印加される。すなわち、信号用スルーホール220、222、224、226は、光変調器100に設けられた信号伝達のための信号用リードピン120、122、124、126と接続される信号用パターンである。
【0033】
FPC106に設けられる配線パターン230、232、234、236は、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路、グランデットコプレーナ線路など、高周波用の信号線路として公知の線路構成を用いて構成されるものとすることができ、当該構成に合わせて、FPC106上にはグランドパターンも設けられ得る(不図示)。
【0034】
FPC106のサイズは、上述した従来のFPC1306と同様に、配線パターン230、232、234、236を極力短くしてマイクロ波損失を低く抑えるべく、例えば長辺方向(辺200の方向)の長さが約20mm以下、短辺方向(辺200に対し垂直な方向)の長さが約10mm以下となり得る。
【0035】
図3は、電子回路が構成された回路基板に光変調器100を接続した状態の一例を示す図であり、
図3(a)は光変調器100の上面方向から見た図、
図3(b)は
図3(a)におけるAA断面矢視図である。なお、
図3(b)において光変調器100の内部の構成については記載を省略している。
【0036】
光変調器100と回路基板300とは、例えば光送信装置の筺体内のベース302に固定されている。
図3(a)に示すように、光変調器100のFPC106は、信号用リードピン120、122、124、126との接続部分から図示左方へ延在し、
図3(b)に示すように、左側端部が回路基板300と接するように図示斜め左下方向に曲げられ、これにより、FPC106のパッド210、212、214、216が回路基板300上のパッド310、312、314、316に例えばハンダにより固定され且つ電気的に接続される(
図3(a))。
【0037】
特に、本実施形態の光変調器100では、
図2に示すように、前記パッド210、212、214、216が設けられた一の辺200及び信号用スルーホール220、222、224、226が設けられた他の辺202を除く二つの辺204、206と、信号用リードピン120、122、124、126が接続される信号用パターンである信号用スルーホール220、222、224、226の配列部分の、上記二つの辺204、206に近いそれぞれの端部(すなわち、信号用スルーホール220及び226の部分)と、の間に、それぞれ追加パターンである追加スルーホール240及び242が設けられている。
【0038】
例えば、図示の例では、信号用スルーホール220と辺204との間、及び信号用スルーホール226と辺206との間が、距離L1であり、信号用スルーホール220と辺204との間の、辺204から距離L4(<L1)の位置に、追加スルーホール240が設けられ、信号用スルーホール226と辺206との間の、辺206から距離L5(<L1)の位置に、追加スルーホール242が設けられている。そして、追加パターンである追加スルーホール240、242は、信号用リードピン120、122、124、126に追加して光変調器100の筺体104に設けられた追加リードピン132、130に、それぞれ例えばハンダにより固定され且つ電気的に接続される。
【0039】
これにより、FPC106のうち、二つの辺204、206をそれぞれ自由端とする2つの片持ち梁部分の固定端は、それぞれ、信号用スルーホール220、226に代えて追加スルーホール240、242となり、それぞれの片持ち梁部分の腕の長さはL1より短いL4及びL5となるので、当該梁部分の固有周振動数は追加スルーホール240、242を設けない場合に比べて高くなる。
【0040】
その結果、辺204、206をそれぞれ自由端とする2つの片持ち梁部分の固有振動の周波数は、環境振動の周波数範囲から離れることとなり、当該環境振動に起因する辺204、206の振動は抑制されるので、当該環境振動に起因するハンダ固定部又はハンダ接続部の剥離やヒビの発生が抑制される。
【0041】
なお、信号用スルーホール220と辺204との間、及び又は信号用スルーホール226と辺206との間に設ける追加スルーホールの数は、複数でもよい。この場合には、辺204及び206にそれぞれ最も近い位置に配された追加スルーホールと辺204及び206との間の距離により、それぞれ辺204、206を自由端とする片持ち梁部分の固有振動の周波数が決定される。
【0042】
すなわち、上記の構成を有する光変調器100は、当該光変調器100と回路基板との間の電気的接続を行うフレキシブル配線板(FPC)106を備え、当該FPC106の信号用スルーホール220、222、224、226と光変調器100の信号用リードピン120、122、124、126とがそれぞれ接続されることにより設けられる固定部の他に、信号用パターンである信号用スルーホール220、222、224、226の配列部分の端部である信号用スルーホール220及び226と、当該信号用スルーホール220及び226にそれぞれ近い側の辺204及び206と、の間に、それぞれ、追加パターンである追加スルーホール240、242が設けられている。そして、当該追加スルーホール240、242が、光変調器100に設けられた追加リードピン132、130と接続されることにより、FPC106に追加の固定部が設けられる。
【0043】
このため、本光変調器100では、辺204、206から追加スルーホール240、242までの距離L4、L5を調整することで、辺204、206をそれぞれ自由端とする片持ち梁振動の固有振動の周波数を、環境振動の周波数範囲を離れて高い側にシフトさせ、当該環境振動に起因するFPC106の振動を抑制して、ハンダ固定部又はハンダ接続部の剥離やヒビの発生を抑制することができる。
【0044】
また、上記追加の固定部は、FPC106に設けた追加スルーホール240、242と、光変調器100に設けた追加リードピン132、130と、をハンダ(ハンダ以外の導電性材料でもよい)により固定することにより設けられるので、例えば、信号用リードピン120、122、124、126と信号用スルーホール220、222、224、226とのハンダ固定作業の際に同時に形成することができる。このため、上記追加の固定部の製造工数を短く抑えることができると共に、当該追加の固定部を先にハンダ固定すれば、信号用リードピン120、122、124、126と信号用スルーホール220、222、224、226との間の互いの位置関係が固定されるので、それらの間のハンダ固定の作業が容易となり、ハンダ固定部分の仕上がり品質も向上する。
【0045】
また、追加リードピン130、132と追加スルーホール240、242の設計(サイズや形状など)は、信号用リードピン120、122、124、126と信号用スルーホール220、222、224、226の設計と同じとすることができるので、製造時における各リードピンと各スルーホールとの間のハンダの量や加熱条件等を統一することができ、製造ライン作業の観点からも好都合である。
【0046】
更に、長さL4及びL5を異なる長さとすれば、辺204、206をそれぞれ自由端とする片持ち梁振動の固有振動の周波数は互いに異なるものとなるので、環境振動の周波数範囲がこれらの固有振動の周波数まで広がっていたとしても、同じ環境振動数に対して辺204及び206の部分が同時に振動することを抑制でき、環境振動に対する光変調器100の耐性をより高めることができる。
【0047】
次に、本実施形態の変形例を、
図4〜
図11を用いて説明する。以下に示すFPCは、それぞれ、FPC106に代えて光変調器100に用いることができる。なお、以下の変形例においては、光変調器100の筺体104には、それぞれ、当該変形例に係るFPCに設けられた追加スルーホールに接続・固定される追加リードピンが設けられるものとするが、図面の重複記載を避けて理解を容易にするため、個々の変形例に対応した追加リードピンを有する筺体104の変形例については図示を省略する。
【0048】
また、以下の変形例の説明においては、信号用スルーホール220、222、224、226とパッド210、212、214、216との間の部分を「両持ち梁」又は「両持ち梁部分」ともいう。また、辺204又はその変形(切り欠き部エッジ等)を自由端とする片持ち梁部分を「第1の片持ち梁」又は「第1の片持ち梁部分」ともいい、当該第1の片持ち梁部分の振動を「第1の片持ち梁振動」ともいう。同様に、辺206又はその変形(切り欠き部エッジ等)を自由端とする片持ち梁部分を「第2の片持ち梁」又は「第2の片持ち梁部分」ともいい、当該第2の片持ち梁部分の振動を「第2の片持ち梁振動」ともいう。さらに、辺202を自由端とする片持ち梁部分を「第3の片持ち梁」又は「第3の片持ち梁部分」ともいい、当該第3の片持ち梁部分の振動を「第3の片持ち梁振動」ともいう。
【0049】
〔第1の変形例〕
まず、
図1に示す光変調器100に用いられるFPC106の第1の変形例について説明する。
【0050】
図2に示すFPC106では、追加リードピン130、132と追加スルーホール240、242による追加の固定部を設けて、辺204、206を自由端とする片持ち梁振動の固有振動の周波数を高めて環境振動に起因するFPC106の振動を抑制する。
【0051】
これに対し、本変形例では、信号用スルーホール220、222、224、226と信号用リードピン120、122、124、126との接続部を一方の固定端とし、パッド210、212、214、216と回路基板との接続部を他方の固定端として、これら固定端の間に構成される両持ち梁部分の、固有振動の周波数を高める。具体的には、信号用リードピン120、122、124、126が接続される信号用スルーホール220、222、224、226の配列部分と、パッド210、212、214、216が設けられた一の辺200と、の間に、追加リードピンが接続される追加スルーホールで構成される少なくとも一つの追加の固定部を形成する。
【0052】
図4は、本変形例に係る、FPC106に代えて用いることのできるFPC400の構成を示す図である。なお、
図4において、
図2に示すFPC106と同じ構成要素については、
図2における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した
図2についての説明を援用する。
【0053】
図4に示すFPC400は、
図2に示すFPC106と同様の構成を有するが、追加スルーホール240、242を有さず、信号用リードピン120、122、124、126が接続される信号用スルーホール220、222、224、226の配列部分と、一の辺200に設けられたパッド210、212、214、216の、辺200と対向する側の端部と、の間に追加スルーホール410、412が設けられている。そして、当該追加スルーホール410、412が光変調器100の筺体104に設けられる追加リードピンに固定されることにより、追加の固定部が構成される(なお、以下では、冗長な記載を避けて理解を容易にするため、「追加スルーホール」とは、対応する「追加リードピン」が接続されて追加の固定部を構成するものをいうものとする)。
【0054】
本変形例では、辺200に設けられたパッド210、212、214、216の、辺200と対向する側の端部から、追加の固定部を構成する追加スルーホール410、412までの距離Lpが、当該端部から信号用スルーホール220、222、224、226までの距離Lsよりも短く構成される。すなわち、FPC400の両持ち梁部分を構成する2つの固定端間の距離は、Lsより短いLpとなるので、当該両持ち梁部分の固有振動の周波数を、環境振動の周波数範囲を超えて高い側にシフトさせて、当該環境振動に起因するFPC400の振動を抑制し、信号用スルーホール220、222、224、226のハンダ固定部又はハンダ接続部及びパッド210、212、214、216のハンダ固定部又はハンダ接続部の、剥離やヒビの発生を抑制することができる。
【0055】
なお、信号用スルーホール220、222、224、226の配列部分とパッド210、212、214、216との間に設ける追加スルーホールの数は、本実施形態のように追加スルーホール410、412の2つに限らず、少なくとも一つ以上の任意の数とすることができる。ただし、一つ又は二つの追加スルーホールのみを設ける場合には、
図4に示すFPC400のように、信号用スルーホール220、222、224、226の配列のうち最も振動の影響を受け易い両端部の信号用スルーホール220及び226のいずれか一方又は両方の近傍に当該追加スルーホールを設けることが望ましい。
【0056】
また、複数の追加スルーホールを設ける場合には、各追加スルーホールとパッド210、212、214、216の辺200に対向する端部までの距離を互いに異ならせて、これら追加スルーホールとパッド210、212、214、216とを2つの固定端としてFPC400に構成される両持ち梁部分の固有振動の周波数を、辺200の方向に沿って分散させるものとすることができる。これにより、環境振動数が一の固有振動の周波数に一致しても、辺200の方向を幅とする当該両持ち梁部分の全体が一様に大きく振動してしまうのを避けて、環境振動に対する光変調器100の耐性をより高めることができる。
【0057】
〔第2の変形例〕
次に、
図1に示す光変調器100に用いられるFPC106の第2の変形例について説明する。
【0058】
本変形例では、
図4に示す第1の変形例に係るFPC400の構成に加えて、パッド210、212、214、216が設けられた一の辺200に対向する他の辺202(すなわち、信号用スルーホール220、222、224、226が設けられた側の辺202)を自由端とする片持ち梁振動の固有振動の周波数を高めるべく、信号用スルーホール220、222、224、226の配列部分と他の辺202との間にも少なくとも一つの追加スルーホールを設ける。
【0059】
図5は、本変形例に係る、FPC106に代えて用いることのできるFPC500の構成を示す図である。なお、
図5において、
図2に示すFPC106及び
図4に示すFPC400と同じ構成要素については、
図2及び
図4における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した
図2及び
図4についての説明を援用する。
【0060】
図5に示すFPC500は、
図4に示すFPC400と同様の構成を有するが、さらに、信号用リードピン120、122、124、126が接続される信号用スルーホール220、222、224、226の配列部分と、パッド210、212、214、216が設けられた一の辺200に対向する辺202と、の間に追加スルーホール510、512が設けられており、当該追加スルーホール510、512が光変調器100の筺体104に設けられる追加リードピンに固定されることにより、追加の固定部が構成される。
【0061】
本変形例では、FPC400と同様に追加スルーホール410、412によりパッド210、212、214、216と信号用スルーホール220、222、224、226との間のFPC500部分(両持ち梁部分)の固有振動の周波数が高められるほか、更に追加スルーホール510、512により辺202を自由端とする片持ち梁(第3の片持ち梁)部分の固有振動の周波数も高められる。また、本変形例では、追加スルーホール410、510が、信号用スルーホール220、222、224、226の配列部分の図示右側の端部に位置する信号用スルーホール220より辺204側に配され、追加スルーホール412、512が、当該配列部分の図示左側の端部に位置する信号用スルーホール226より辺206側にあるので、
図2に示すFPC106と同様に、辺204及び206をそれぞれ自由端とする第1及び第2の片持ち梁部分の固有振動の周波数も高められる。すなわち、
図5に示すFPC500は、4つの追加スルーホール410、412、510、512により上記四つの振動モード(上記両持ち梁の振動と、上記第1〜第3の片持ち梁の振動)の全ての固有振動の周波数を高めることができる効率的かつ効果的な構成となっている。
【0062】
なお、追加スルーホール410、412と、追加スルーホール510、512と、の間の、パッド210、212、214、216が設けられた辺200と直交する方向に沿って測った距離dは、狭すぎると追加スルーホール410、412、510、512が信号用スルーホール220、222、224、226と接近し過ぎることとなって、信号用スルーホール220、222、224、226のハンダ固定部分又はハンダ接続部分に対するFPC500の振動に起因したストレスに対する防御の効果が薄れることとなり得る。
【0063】
また、一方、上記距離dが大き過ぎると、信号用スルーホール220、222、224、226と追加スルーホール410、412、510、512との間が広がり過ぎて、例えば追加スルーホール410、412とパッド210、212、214、216との間に発生する両持ち梁振動が、追加スルーホール410、412を支点として、信号用スルーホール220、222、224、226に向かって伝わることとなり得る。すなわち、上記距離dは、追加スルーホール410、412とパッド210、212、214、216との間の距離Lpとの関係において、最適な範囲が存在し得る。
【0064】
図6は、上記距離Lpにより正規化された様々な距離dにおける、振動及び衝撃後における信号用リードピン120、122、124、126のハンダ固定部又はハンダ接続部分の剥離及び又はヒビの発生程度を評価した結果である。
図6に示す評価(◎:非常に良い、○:良い、△:十分でない、×:悪い)は、社団法人日本溶接教会が制定した「マイクロソルダリング技術認定・検定試験における品質判定基準」(JWES-MS060801J)をベースとして、更に仕上がりの均一性を加味して決定している。この品質判定基準は、JIS C 61191「プリント配線板実装」に記載されている高信頼性機器の品質基準に基づいており、部分的にはJIS要求基準よりも品質判定基準が具体的に規定されている。
【0065】
図6に示す結果より、正規化距離d/Lpが1/5より小さい場合には効果が十分でないことから、少なくともd≧Lp/5となるように追加スルーホール410、412、510、512を配置することが好ましく、特に、1/2≦d/Lp≦1.5の範囲とするのが更に望ましいことが分かる。
【0066】
なお、
図5に示すFPC500では、追加スルーホール510、512と、追加スルーホール410、412と、が信号用スルーホール220、222、224、226を挟んで図示上下対称となる位置に描かれているが、これに限らず、信号用スルーホール220、222、224、226を挟んで非対称に配置してもよい。ただし、
図5に示すように対称位置に配置した場合には、FPC500を光変調器100の筺体104に対し安定に取り付けることが容易となるので、信号用スルーホール220、222、224、226と信号用リードピン120、122、124、126との間のそれぞれのハンダ固定部又はハンダ接続部分における、互いに対応するスルーホール及びリードピンの位置関係のばらつきや、ハンダ量等の製造ばらつきを抑制して、信号用スルーホール220、222、224、226のそれぞれが構成する電気線路の高周波特性を互いに同等なものとすることが容易となる。
【0067】
〔第3の変形例〕
次に、
図1に示す光変調器100に用いられるFPC106の第3の変形例について説明する。
【0068】
本変形例は、
図5に示す第2の変形例と同様の構成を有するが、信号用スルーホール220、222、224、226の配列部分とパッド210、212、214、216が設けられた一の辺200と、の間に設けられた複数の追加スルーホールと、当該配列部分と辺200に対向する辺202との間に設けられた追加スルーホールと、が、信号用スルーホール220、222、224、226のそれぞれを四方から囲むように配されている。
【0069】
図7は、本変形例に係る、FPC106に代えて用いることのできるFPC700の構成を示す図である。なお、
図7において、
図2に示すFPC106と同じ構成要素については、
図2における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した
図2についての説明を援用する。
【0070】
図7に示すFPC700は、
図2に示すFPC106と同様の構成を有するが、追加スルーホール240、242を有さず、信号用リードピン120、122、124、126が接続される信号用スルーホール220、222、224、226の配列部分と、パッド210、212、214、216が設けられた一の辺200と、の間に追加スルーホール710、712、714、716、718が設けられている。
【0071】
また、上記配列部分と、辺200に対向する辺202と、の間に追加スルーホール720、722、724、726、728が設けられている。そして、これらの追加スルーホール710、712、714、716、718、720、722、724、726、728は、信号用スルーホール220、222、224、226のそれぞれを四方から囲むように配されている。
【0072】
すなわち、信号用スルーホール220は、追加スルーホール710、712、720、722により四方から囲まれ、信号用スルーホール222は、追加スルーホール712、714、722、724により四方から囲まれ、信号用スルーホール224は、追加スルーホール714、716、724、726により四方から囲まれ、信号用スルーホール226は、追加スルーホール716、718、726、728により四方から囲まれている。
【0073】
本変形例では、追加スルーホール710、712、714、716、718、720、722、724、726、728が、信号用スルーホール220、222、224、226のそれぞれを四方から囲む位置に配されているので、信号用スルーホール220、222、224、226のそれぞれにおけるハンダ固定部又はハンダ接続部が、当該信号用スルーホールの周囲部分における全ての方向における振動から守られると共に、これら追加スルーホール710、712、714、716、718、720、722、724、726、728により、FPC700における四つの振動モード(すなわち、パッド210、212、214、216を一の固定端とする両持ち梁振動、及び辺202、204、206をそれぞれ自由端とする第1〜第3の片持ち梁振動)の全ての固有振動の周波数を高めて、環境振動の影響を低減することができる。
【0074】
また、追加スルーホール710、712、714、716、718、720、722、724、726、728は、信号用スルーホール220、222、224、226のそれぞれを中心として対称に配置されているので、FPC700を光変調器100の筺体104に対し安定に取り付けることが容易となる。このため、信号用リードピン120、122、124、126と、信号用スルーホール220、222、224、226との間のハンダ固定部又はハンダ接続部の、信号用スルーホール220、222、224、226のそれぞれにおける(それぞれの間での)ばらつきがなくなるので、信号用スルーホール220、222、224、226を含む電気線路(従って、信号用リードピン120、122、124、126と、信号用スルーホール220、222、224、226と、配線パターン230、232、234、236と、パッド210、212、214、216、でそれぞれ構成される電気線路)のそれぞれの高周波特性の、それぞれの電気線路間での差を小さく同等なものとすることが容易になる。
【0075】
〔第4の変形例〕
次に、
図1に示す光変調器100に用いられるFPC106の第4の変形例について説明する。
【0076】
図8は、本変形例に係る、FPC106に代えて用いることのできるFPC800の構成を示す図である。なお、
図8において、
図2及び
図7に示すFPC106及びFPC700と同じ構成要素については、
図2及び
図7における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した
図2及び
図7についての説明を援用する。
【0077】
図8に示すFPC800は、
図7に示すFPC106と同様の構成を有するが、さらに、パッド210、212、214、216が設けられた一の辺200及び当該一の辺200に対向する他の辺202を除く二つの辺204、206のそれぞれから、信号用スルーホール220、222、224、226の配列部分に向かって、切り欠き部810、812が設けられている。
【0078】
本変形例では、
図7に示す第3の変形例と同様の効果を奏することに加えて、辺204、206に切り欠き部を設けているので、追加スルーホール710、720を固定端として図示右側に設けられる第1の片持ち梁振動の固有振動の周波数、及び追加スルーホール718、728を固定端として図示左側に設けられる第2の片持ち梁振動の固有振動の周波数が、
図7に示すFPC700に比べてより高い振動数へ大幅にシフトする。このため、これら第1及び第2の片持ち梁部分の振動に起因する信号用スルーホール220、226におけるハンダ固定部又はハンダ接続部の剥離やヒビの発生が大きく抑制される。
【0079】
特に、本変形例では、切り欠き部810、812の深さが互いに異なっており、追加スルーホール718、728と、辺206から設けた切り欠き部812の端部と、の間の距離L6に対し、追加スルーホール710、720と、辺204から設けた切り欠き部810の端部と、の間の距離L7が短くなっている。
【0080】
これにより、追加スルーホール710、720を固定端とする第1の片持ち梁振動の固有振動の周波数と、追加スルーホール718、728を固定端とする第2の片持ち梁振動の固有振動の周波数と、は異なるものとなるので、環境振動の周波数範囲がこれらの固有振動の周波数まで広がっていたとしても、同じ環境振動数に対して上記第1及び第2の片持ち梁振動が大きな振幅で同時に発生することを抑制できるので、環境振動に対する光変調器100の耐性をより高めることができる。
【0081】
なお、切り欠き部810、812は、辺202まで延在して、辺202と辺204との角部及び辺202と辺206との角部をそれぞれ矩形に切り取る形状として設けてもよい。
【0082】
〔第5の変形例〕
次に、
図1に示す光変調器100に用いられるFPC106の第5の変形例について説明する。
【0083】
図9は、本変形例に係る、FPC106に代えて用いることのできるFPC900の構成を示す図である。なお、
図9において、
図2及び
図7に示すFPC106及びFPC700と同じ構成要素については、
図2及び
図7における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した
図2及び
図7についての説明を援用する。
【0084】
図9に示すFPC900は、
図7に示すFPC700と同様の構成を有するが、さらに、信号用スルーホール220、222、224、226とパッド210、212、214、216が設けられた一の辺200との間に設けられた追加スルーホール710、712、714、716、718の配列の両端部に位置する追加スルーホール710及び718と、一の辺200及びこれに対向する辺202を除く2つの辺204及び206との間に、それぞれ、追加スルーホール910及び912が設けられている。
【0085】
本変形例では、
図7に示す第3の変形例と同様の効果を奏することに加えて、追加スルーホール710、712、714、716、718の配列の両端部に位置する追加スルーホール710及び718と、辺204及び206と、の間に、それぞれ、追加スルーホール910及び912が設けられているので、辺204及び206をそれぞれ自由端とする第1及び第2の片持ち梁振動の固有振動の周波数が
図7の構成に比べてさらに高い振動数へシフトする。このため、これら片持ち梁振動に起因する信号用スルーホール220、226におけるハンダ固定部又はハンダ接続部の剥離やヒビの発生が大きく抑制される。
【0086】
特に、本変形例では、辺204と追加スルーホール910との距離L6と、辺206と追加スルーホール912との距離L7と、が互いに異なっているので、辺204を自由端とする第1の片持ち梁振動の固有振動の周波数と、辺206を自由端とする第2の片持ち梁振動の固有振動の周波数と、は異なるものとなり、環境振動の周波数範囲がこれらの固有振動の周波数まで広がっていたとしても、同じ環境振動数に対して上記第1及び第2の片持ち梁振動が大きな振幅で同時に発生することを抑制できるので、環境振動に対する光変調器100の耐性をより高めることができる。
【0087】
本変形例は、例えば、FPCにおける電気線路の配置上の制約や、FPCの取り付け治具等の制約などから、FPCに大きな切り欠き部を設けることが困難な場合などに、
図8に示すFPC800に代えて用いることができる。
【0088】
なお、
図9に示す構成において、
図8に示す切り欠き部810、812と同様な切り欠き部も設けて、上記片持ち梁振動の固有振動の周波数を更に高めて、環境振動に対する光変調器100の耐性を更に高めることもできる。
【0089】
〔第6の変形例〕
次に、
図1に示す光変調器100に用いられるFPC106の第6の変形例について説明する。
【0090】
図10は、本変形例に係る、FPC106に代えて用いることのできるFPC1000の構成を示す図である。なお、
図10において、
図2及び
図7に示すFPC106及びFPC700と同じ構成要素については、
図2及び
図7における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した
図2及び
図7についての説明を援用する。
【0091】
図10に示すFPC1000は、
図7に示すFPC700と同様の構成を有するが、パッド210、212、214、216が設けられた一の辺200及びこれに対向する他の辺202を除く2つの辺204、206と、当該他の辺202と、が構成する2つの角部1010、1012に、それぞれ、切り欠き部1020、1021が設けられている。そして、切り欠き部1020、1021は、追加スルーホール710、712、714、716、718、720、722、724、726、728の配列部分の両端部に位置する追加スルーホール710、720及び718、728から前記切り欠き部1020、1021のそれぞれのエッジ1030、1032までの、辺200の方向に沿って測った距離が、当該一の辺200からの距離に従って変化するように設けられている。例えば、切り欠き部1020は、辺200の方向に沿って測った追加スルーホール710及び720からエッジ1030までの距離が、辺200から離れるに従って短くなるように構成されており、追加スルーホール710が設けられている位置での当該距離L8に対し、辺200に対し追加スルーホール710より離れた追加スルーホール720の位置での当該距離L9は短くなっている。
【0092】
本変形例では、辺200の方向に沿って測った追加スルーホール710、720から切り欠き部1020のエッジ1030までの距離が、辺200からの距離に従って変化するように、切り欠き1020が設けられているので、追加スルーホール710、720を固定端として図示右側に設けられる第1の片持ち梁の固有振動の周波数は、辺200からの距離に従って変化する。このため、エッジ1030を自由端とする第1の片持ち梁振動の固有振動の周波数は有限の振動数範囲に分布することとなり、環境振動に起因して発生する当該片持ち梁振動の振動振幅が大きく抑制される。また、同様の原理から、エッジ1032を自由端とする第2の片持ち梁振動の固有振動の周波数も有限の振動数範囲に分布することとなり、環境振動に起因して発生する当該片持ち梁振動の振動振幅も大きく抑制される。
【0093】
したがって、本変形例に係るFPC1000では、追加スルーホール710、720及び718、728をそれぞれ固定端として図示右側及び左側に設けられる第1及び第2の片持ち梁部分の振動に伴う信号用スルーホール220、222、224、226のハンダ固定部又はハンダ接続部の剥離やヒビが効果的に抑制される。
【0094】
また、一般に、FPC母材からの打ち抜きによって個々のFPCを作成する場合には、当該個々のFPCが有する直角又は鋭角を為す角部において変形を生じ易い。このため、例えば
図8に示すような角部を多く持つFPC800を作成する場合には変形個所が多くなる。これに対し、本変形例のFPC1000では、直角の角部1010、1012に切り欠き部1020、1032を設けたことで、当該直角の角部1010、1012が、それぞれ2つの鈍角で構成される形状に置き換わるので、上記打ち抜きによりFPC1000を作製した場合にも、角部における変形を生じ難い。
【0095】
〔第7の変形例〕
次に、
図1に示す光変調器100に用いられるFPC106の第7の変形例について説明する。
【0096】
図11は、本変形例に係る、FPC106に代えて用いることのできるFPC1100の構成を示す図である。なお、
図11において、
図2及び
図7に示すFPC106及びFPC700と同じ構成要素については、
図2及び
図7における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した
図2及び
図7についての説明を援用する。
【0097】
図11に示すFPC1100は、
図2及び
図7に示すFPC106、700と同様の構成を有するが、信号用スルーホールの配列部分が分離して2つの配列部分からなる。具体的には、FPC106の左右中心線を挟んで信号用スルーホール220、222と対称位置にあった信号用スルーホール224、226に代えて、当該信号用スルーホール224、226の位置から図示左方向へ移動した位置に配された信号用スルーホール1110、1112が設けられている。これにより、信号用スルーホールの配列部分は、信号用スルーホール220、222が配列された配列部分と、信号用スルーホール1110、1112が配列された配列部分と、の2つの配列部分で構成される。
【0098】
また、
図7に示すFPC700の追加スルーホール716、718、726、728に代えて、当該追加スルーホール716、718、726、728の位置から図示左方向へ移動した位置に配された追加スルーホール1122、1124、1132、1134が設けられている。さらに、追加スルーホール1120、1130が設けられ、追加スルーホール1120、1122、1124、1130、1132、1134は、信号用スルーホール1110、1112のそれぞれを四方から囲む位置に配されている。
【0099】
なお、FPC1100を光変調器に用いる場合には、光変調器100の変形として、当該光変調器の筺体において、信号用スルーホール220、222、1110、1112に対応する位置に信号用リードピンを設ける必要がある。
【0100】
本変形例では、信号用スルーホールの配列部分が、信号用スルーホール220、222の配列部分と、信号用スルーホール1110、1112の配列部分と、の2つの配列部分から成り、信号用スルーホール1110、1112は、上記のように、左右中心線を挟んで信号用スルーホール220、222に対する対称位置から図示左方へ移動する位置に設けられているので、信号用スルーホール220を図示右側から囲む追加スルーホール710、720と辺204との距離L10に対し、信号用スルーホール1112を図示左側から囲む追加スルーホール1124、1134と辺206との距離L11が短くなっている。
【0101】
このため、本変形例では、辺206を自由端とする第2の片持ち梁振動の固有振動の周波数と、辺204を自由端とする第1の片持ち梁振動の固有振動の周波数と、は異なるものとなり、環境振動の周波数範囲がこれらの固有振動の周波数まで広がっていたとしても、同じ環境振動数に対して上記第1及び第2の片持ち梁振動が大きな振幅で同時に発生することを抑制できるので、環境振動に対する光変調器100の耐性をより高めることができる。
【0102】
また、本変形例では、信号用スルーホール220、222、1110、1112のそれぞれを四方から囲む位置に追加スルーホール710、712、714、720、722、724、1120、1122、1124、1130、1132、1134が設けられているので、
図7に示すFPC700と同様に、信号用スルーホール220、222、1110、1112のそれぞれにおけるハンダ固定部又はハンダ接続部が、当該信号用スルーホールの周囲部分における全ての方向における振動から守られると共に、これら追加スルーホール710、712、714、720、722、724、1120、1122、1124、1130、1132、1134により、FPC1100における四つの振動モード(両持ち梁部分の振動、及び第1〜第3の片持ち梁部分の振動)の全ての固有振動の周波数を高めて、環境振動の影響を低減することができる。
【0103】
なお、上述したFPC106、400、500、700、800、900、1000、1100においては、各FPCに設けられたグランドパターン(不図示)が、追加スルーホール(240等)と追加リードピン(132等)により、光変調器100(又はその変形)の筺体グランドに接続されるものとすることができる。これにより、各FPCにおける接地電位の変動を効果的に抑制して、安定な高周波伝送特性及び反射特性を得ることができる。
【0104】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態に示した光変調器100(
図4〜
図11に示す任意の変形例を含む)を搭載した光送信装置である。
【0105】
図12は、本実施形態に係る光送信装置の構成を示す図である。本光送信装置1200は、光変調器1202と、光変調器1202に光を入射する光源1204と、変調信号生成部1206と、変調データ生成部1208と、を有する。
【0106】
光変調器1202は、
図1に示す光変調器100である(FPC106に代えて、
図4、5、7〜10に示すFPC400、500、700、900、又は1000のいずれかを備えていてもよい。また、
図11に示すFPC1100を備える光変調器の変形であってもよい)。変調データ生成部1208は、外部から与えられる送信データを受信して、当該送信データを送信するための変調データ(例えば、送信データを所定のデータフォーマットに変換又は加工したデータ)を生成し、当該生成した変調データを変調信号生成部1206へ出力する。
【0107】
変調信号生成部1206は、光変調器1202に変調動作を行わせるための電気信号を出力する電子回路であり、変調データ生成部1208が出力した変調データに基づき、光変調器1202に当該変調データに従った光変調動作を行わせるための高周波信号である変調信号を生成して、光変調器100に入力する。当該変調信号は、光変調器100が備える光変調素子102の4つのRF電極(不図示)に対応する4つのRF信号から成る。
【0108】
当該4つのRF信号は、光変調器100のFPC106(上述したとおり、FPC106についての上述した変形例のいずれかであってもよい)のパッド210、212、214、216にそれぞれ入力され、配線パターン230、232、234、236、信号用スルーホール220、222、224、226、及び信号用リードピン120、122、124、126を介して上記RF電極にそれぞれ印加される。
【0109】
これにより、光源1204から出力された光は、光変調器100により変調され、変調光となって光送信装置1200から出力される。
【0110】
特に、本光送信装置1200では、上述した構成を有する光変調器100を用いるので、光送信装置1200の搬送時や稼働時の環境振動に起因するFPC106におけるハンダ固定部又はハンダ接続部の剥離やヒビの発生を抑制して、良好な光伝送品質を確保することができる。
【0111】
なお、上述した各実施形態では、LNを基板として用いた4つのRF電極を有する光変調素子を備える光変調器を示したが、本発明は、これに限らず、4つ以外の数のRF電極を持つ光変調器、及び又はLN以外の材料を基板として用いる光変調器にも、同様に適用することができる。また、
図2示すFPC106の構成、及び
図3〜
図11に示した当該FPC106の変形例の構成は、それぞれ個別のFPCとして単独に用いることができるだけでなく、それらの構成を適宜組み合わせて一つのFPCを構成して用いるものとすることもできる。