特許第6226090号(P6226090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6226090重合性液晶組成物及び該組成物を用いて作製した光学異方体、位相差膜、反射防止膜、液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226090
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】重合性液晶組成物及び該組成物を用いて作製した光学異方体、位相差膜、反射防止膜、液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/30 20060101AFI20171030BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20171030BHJP
   C08F 220/24 20060101ALI20171030BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20171030BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20171030BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   C08F220/30
   C08F220/28
   C08F220/24
   C09K19/38
   G02B1/111
   G02B5/30
【請求項の数】6
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2016-569263(P2016-569263)
(86)(22)【出願日】2015年12月10日
(86)【国際出願番号】JP2015084648
(87)【国際公開番号】WO2016114047
(87)【国際公開日】20160721
【審査請求日】2017年3月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-4144(P2015-4144)
(32)【優先日】2015年1月13日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】延藤 浩一
(72)【発明者】
【氏名】桑名 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中田 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】山本 美花
(72)【発明者】
【氏名】初阪 一輝
【審査官】 江間 正起
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−002822(JP,A)
【文献】 特開2005−062673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/30
C08F 220/24
C08F 220/28
C09K 19/38
G02B 1/111
G02B 5/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I−1)
【化1】
(nは、1〜10の整数を表し、Y1、Y、Y及びYはそれぞれ独立に単結合、−O−、−CH−、−CHCH−、−OCHCH−、−CHCHO−を表し、Rは水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基又は−COO−CH−Cを表し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基を表す。)で表される化合物群より選ばれる1種または2種以上の重合性化合物を含有し、
溶解度パラメータ(SP値)が8.9〜10.5(cal/cm0.5であり、かつ下記式(1)
1.00 < 100×(s+t+u)/MB < 2.10 (1)
(sは、1以上の整数であり、t及びuはそれぞれ0又は1以上の整数、MBは一般式(B)で表される重合性単量体の分子量を表す。)
を満たす一般式(B)で表される重合性単量体、及び、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とその両末端に重合性不飽和基を有する重合性単量体(D)を必須の単量体として共重合させた共重合体であり、重量平均分子量が2500から30000である共重合体(III)からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ素系界面活性剤を含有する重合性液晶組成物。
【化1】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、X、Y、及びZはそれぞれ独立のアルキレン基であり、sは、1以上の整数であり、t及びuはそれぞれ0又は1以上の整数であり、Wは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、又はアリール基である。)
【請求項2】
一般式(I−1)で表される重合性化合物として、式(I−1−1)から式(I−1−7)で表される化合物群より選ばれる1種または2種以上の重合性化合物を含有する請求項1記載の重合性液晶組成物。
【化1】
【請求項3】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の重合性液晶組成物を用いた光学異方体。
【請求項4】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の重合性液晶組成物を用いた位相差膜。
【請求項5】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の重合性液晶組成物を用いた反射防止膜。
【請求項6】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の重合性液晶組成物を用いた液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、液晶デバイス、ディスプレイ、光学部品、着色剤、セキュリティ用マーキング、レーザー発光用部材、及び、液晶ディスプレイ等の光学補償に用いられる光学異方体の構成部材として有用な重合性液晶組成物、及び該組成物からなる光学異方体、位相差膜、反射防止膜、液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
重合性液晶組成物は光学異方体の構成部材として有用であり、光学異方体は例えば位相差膜、反射防止膜として種々の液晶ディスプレイに応用されている。液晶物質を構成成分とする光学異方体は、重合性液晶組成物を基板に塗布して、配向させた状態で加熱、あるいは活性エネルギー線を照射して重合性液晶組成物を硬化することにより得られるが、安定で均一な光学特性を得るために、液晶状態における液晶分子の均一な配向状態構造を半永久的に固定化する必要がある。
【0003】
これまでに、基板への塗布性を向上させるため、界面活性剤を含有する重合性液晶組成物が開示されている(特許文献1、2)。また、近年効率的かつ経済的な塗布方法としてロールtoロールによるフィルム基材への塗布が行われている。しかしながら、この方法では塗布後のフィルム基材巻取りにより塗膜面と基材とが接触するため、接触による塗膜中の界面活性剤の移行に起因する塗膜や基材の外観不良がしばしば発生する問題があった。上記文献に記載の方法では、基板への塗布性は向上し、膜厚むらの発生を低減させることが可能になったものの、塗布後の塗膜面と基材の接触に起因する外観不良(裏移り性)の課題及び解決策は何ら記述されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−231958号公報
【特許文献2】特開2000−105315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、重合性液晶組成物を光重合させて得られる光学異方体を製造する際に、光学異方体の表面のレベリング性と裏移り性との2つの特性を同時に改善することで、上記問題を解決できる重合性液晶組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、重合性液晶組成物に着目して鋭意研究を重ねた結果、本発明を提供するに至った。
即ち、本発明は、一般式(I)
【0007】
【化1】
【0008】
(nは、1〜10の整数を表し、P及びPはそれぞれ独立にアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルエーテル基、脂肪族エポキシ基、脂環式エポキシ基を表し、Y1、Y、Y及びYはそれぞれ独立に単結合、−O−、−CH−、−CHCH−、−OCHCH−、−CHCHO−を表し、Rは水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基又は−COO−CH−Cを表す。)で表される重合性化合物を1種または2種以上含有し、溶解度パラメータ(SP値)が8.9〜10.5(cal/cm0.5であり、かつ下記式(1)
1.00 < 100×(s+t+u)/MB < 2.10 (1)
(sは、1以上の整数であり、t及びuはそれぞれ0又は1以上の整数、MBは一般式(B)で表される重合性単量体の分子量を表す。)
を満たす一般式(B)で表される重合性単量体及びフッ素原子を含有する重合性単量体を必須の単量体として共重合させた共重合体であり、重量平均分子量が2500から30000である共重合体(III)からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ素系界面活性剤を含有する重合性液晶組成物を提供する。
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、X、Y、及びZはそれぞれ独立のアルキレン基であり、sは、1以上の整数であり、t及びuはそれぞれ0又は1以上の整数であり、Wは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、又はアリール基である。)
また、本発明の重合性液晶組成物を用いた光学異方体も提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の重合性液晶組成物を用いることで、表面の平滑性に優れ、液晶塗膜面からの裏移り性が低い光学異方体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明による重合性液晶組成物の最良の形態について説明するが、本発明において、重合性液晶組成物の「液晶」とは、重合性液晶組成物を基材に塗布し、乾燥した後に、液晶性を示すことを意図する。なお、重合性液晶組成物を紫外線等の光照射、あるいは加熱によって重合処理を行うことでポリマー化(フィルム化)することができる。
【0013】
(2官能重合性化合物)
本発明の重合性液晶組成物には、一般式(I)
【0014】
【化3】
【0015】
で表される2官能重合性化合物を1種又は2種以上含有するが、2種または3種以上含有するのが好ましい。nは1〜10の整数を示すが、1〜9の整数が好ましく、2〜8の整数がさらに好ましく、Y1、Y、Y及びYはそれぞれ独立に単結合、−O−、−CH−、−CHCH−、−OCHCH−、−CHCHO−を表すが、単結合、−O−、−OCHCH−、−CHCHO−が好ましく、Rは水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基又は−COO−CH−Cを表すが、水素原子、メチル基、−COO−CH−Cが好ましく、P及びPはそれぞれ独立にアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルエーテル基、脂肪族エポキシ基、脂環式エポキシ基を表すが、アクリロイル基、メタクリロイル基、脂肪族エポキシ基、脂環式エポキシ基が好ましく、アクリロイル基、メタアクリロイル基が特に好ましい。具体的には、以下の式(I−1−1)〜式(I−1−7)で表される化合物を用いることが特に好ましい。
【0016】
【化4】
【0017】
これらの2官能重合性化合物を1種または2種以上含有する本発明の重合性液晶組成物は、硬化塗膜の耐熱性や耐湿熱性が向上するので好ましい。
一般式(I)で表される2官能重合性化合物の含有量は、後述するキラル化合物を含有する場合、用いる重合性化合物及びキラル化合物の合計量のうち、40〜80質量%含有することが好ましく、45〜75質量%含有することがより好ましく、50〜70質量%含有することが特に好ましい。
【0018】
また、キラル化合物を用いない場合は、一般式(I)で表される2官能重合性化合物の含有量は、用いる重合性化合物の合計量のうち、10〜100質量%含有することが好ましく、15〜100質量%含有することがより好ましく、20〜100質量%含有することが特に好ましい。
【0019】
また、本発明の重合性液晶組成物には、上記一般式(I)に示す2官能重合性化合物以外の2官能重合性化合物を含有することもできる。具体的には、一般式(I−2)
【0020】
【化5】
【0021】
(式中、Pは重合性官能基を表し、
Spは炭素原子数0〜18のスペーサー基を表し、
mはそれぞれ独立に0又は1を表し、
MGはメソゲン基又はメソゲン性支持基を表すが、上記一般式(I)で表される化合物を除く。)で表される化合物が挙げられる。
【0022】
より具体的には、一般式(I−2)において、Spがアルキレン基を表し、(該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良い。)MGが一般式(I−2−b)
【0023】
【化6】
【0024】
(式中、A1、A2及びA3はそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、テトラヒドロチオピラン−2,5−ジイル基、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基−、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、フェナントレン−2,7−ジイル基、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a−オクタヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,4−ナフチレン基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジチオフェン−2,6−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジセレノフェン−2,6−ジイル基、[1]ベンゾチエノ[3,2−b]チオフェン−2,7−ジイル基、[1]ベンゾセレノフェノ[3,2−b]セレノフェン−2,7−ジイル基、又はフルオレン−2,7−ジイル基を表し、置換基として1個以上のF、Cl、CF3、OCF3、CN基、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケノイル基又はアルケノイルオキシ基を有していても良く、
Z0、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立して、−COO−、−OCO−、−CH2 CH2−、−OCH2−、−CH2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH2CH2COO−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−、−CONH−、−NHCO−、炭素数2〜10のハロゲン原子を有してもよいアルキル基又は単結合を表し、
nは0、1又は2を表す。)で表される化合物が挙げられる。
【0025】
重合性官能基は、ビニル基、ビニルエーテル基アクリル基、(メタ)アクリル基、グリシジル基、オキセタニル基、マレイミド基、チオール基が好ましく、生産性の観点から、ビニルエーテル基、アクリル基、(メタ)アクリル基、グリシジル基がさらに好ましく、アクリル基、(メタ)アクリル基が特に好ましい。
【0026】
例示化合物としては、以下に示されるが、これらに限定される訳ではない。
【0027】
【化7】
【0028】
(式中、o及びpはそれぞれ独立して1〜18の整数を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基を示す。これらの基が炭素数1〜6のアルコキシ基の場合、全部が未置換であるか、あるいは1つまたは2つ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい。)これらの化合物は、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。
【0029】
上記一般式(I)で表される2官能重合性化合物以外の2官能重合性化合物の含有量は、用いる重合性化合物及びキラル化合物の合計量のうち、0〜10質量%含有することが好ましく、0〜8質量%含有することがより好ましく、0〜5質量%含有することが特に好ましい。
また、キラル化合物を用いない場合は、上記一般式(I)で表される2官能重合性化合物以外の2官能重合性化合物の含有量は、用いる重合性化合物の合計量のうち、0〜10質量%含有することが好ましく、0〜8質量%含有することがより好ましく、0〜5質量%含有することが特に好ましい。
【0030】
(単官能重合性化合物)
また、本発明の重合性液晶組成物には、分子内に1個の重合性官能基を有する単官能重合性化合物を含有してもよい。該単官能重合性化合物としては一般式(II−1)
【0031】
【化8】
【0032】
で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単官能重合性化合物を挙げることができる。一般式(II−1)において、mは0〜10の整数を示すが、0〜8の整数が好ましく、0〜6の整数がさらに好ましく、qは2又は3であり、Lはそれぞれ独立して、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−N=N−を表すが、単結合、−O−、−COO−、−N=N−が好ましく、Aはそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1、6−ナフタレン基、1,4−シクロヘキシレン基を表すが、Aの1,4−フェニレン基、1、6−ナフタレン基、1,4−シクロヘキシル基はそれぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、CF3基、OCF3基、シアノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基で置換されていても良い。
【0033】
一般式(II−1)で表される化合物としては下記一般式(II−1−a)で表される化合物が好ましい。
【0034】
【化9】
【0035】
一般式(II−1−a)において、mは0〜10の整数を示すが、0〜8の整数が好ましく、0〜6の整数がさらに好ましく、qは0又は1であり、L、L及びLはそれぞれ独立して、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−N=N−を表すが、単結合、−O−、−COO−、−N=N−が好ましく、Aはそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1、6−ナフタレン基、1,4−シクロヘキシレン基を表すが、1,4−フェニレン基、1、6−ナフタレン基、1,4−シクロヘキシル基が好ましく、K及びKは水素原子、フッ素原子、塩素原子、CF3基、OCF3基、シアノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基を表すが、水素原子、シアノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基が好ましい。
【0036】
より具体的には、式(II−1−1)〜式(II−1−7)で表される化合物を挙げることができる。
【0037】
【化10】
【0038】
特に、一般式(II−1−1)で表される化合物及び一般式(II−1−2)で表される化合物のいずれか1種、又は、両方を用いると配向性に優れる光学異方体が得られるため好ましい。また、一般式(II−1−3)で表される化合物を含有すると配向性に優れる光学異方体が得られるため好ましい。
【0039】
上記分子内に1個の重合性官能基を有する単官能重合性化合物の含有量は、用いる重合性化合物及びキラル化合物の合計量のうち、10〜60質量%であることが好ましく、15〜50質量%であることがより好ましく、20〜45質量%であることが特に好ましい。
また、キラル化合物を用いない場合は、上記分子内に1個の重合性官能基を有する単官能重合性化合物の含有量は、用いる重合性化合物の合計量のうち、0〜90質量%であることが好ましく、0〜85質量%であることがより好ましく、0〜80質量%であることが特に好ましい。
【0040】
上記一般式(II−1)で表される化合物の含有量は、用いる重合性化合物及びキラル化合物の合計量のうち、10〜60質量%であることが好ましく、15〜55質量%であることがより好ましく、20〜45質量%であることが特に好ましい。
また、キラル化合物を用いない場合は、上記一般式(II−1)で表される化合物の含有量は、用いる重合性化合物の合計量のうち、0〜90質量%であることが好ましく、0〜85質量%であることがより好ましく、0〜80質量%であることが特に好ましい。
【0041】
本発明の重合性液晶組成物には、上記一般式(II−1)で表される単官能重合性化合物以外の単官能重合性化合物も含有することができる。具体的には、一般式(II−2)
【0042】
【化11】
【0043】
(式中、Pは重合性官能基を表し、
Spは炭素原子数0〜18のスペーサー基を表し、
mは0又は1を表し、
MGはメソゲン基又はメソゲン性支持基を表し、
1は、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜18のアルキル基を表すが、該アルキル基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良いが、上記一般式(II−1)で表される化合物を除く。)で表される化合物が挙げられる。
【0044】
より具体的には、一般式(II−2)において、Spがアルキレン基を表し、(該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良い。)MGが一般式(II−2−b)
【0045】
【化12】
【0046】
(式中、A1、A2及びA3はそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、テトラヒドロチオピラン−2,5−ジイル基、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基−、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、フェナントレン−2,7−ジイル基、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a−オクタヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,4−ナフチレン基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジチオフェン−2,6−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジセレノフェン−2,6−ジイル基、[1]ベンゾチエノ[3,2−b]チオフェン−2,7−ジイル基、[1]ベンゾセレノフェノ[3,2−b]セレノフェン−2,7−ジイル基、又はフルオレン−2,7−ジイル基を表し、置換基として1個以上のF、Cl、CF3、OCF3、CN基、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケノイル基又はアルケノイルオキシ基を有していても良く、
Z0、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立して、−COO−、−OCO−、−CH2 CH2−、−OCH2−、−CH2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH2CH2COO−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−、−CONH−、−NHCO−、炭素数2〜10のハロゲン原子を有してもよいアルキル基又は単結合を表し、
nは0、1又は2を表す。)で表される化合物が挙げられる。
【0047】
重合性官能基は、ビニル基、ビニルエーテル基アクリル基、(メタ)アクリル基、グリシジル基、オキセタニル基、マレイミド基、チオール基が好ましく、生産性の観点から、ビニルエーテル基、アクリル基、(メタ)アクリル基、グリシジル基がさらに好ましく、アクリル基、(メタ)アクリル基が特に好ましい。
【0048】
例示化合物としては、以下に示されるが、これらに限定される訳ではない。
【0049】
【化13】
【0050】
(式中、o及びpはそれぞれ独立して1〜18の整数を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基を示す。これらの基が炭素数1〜6のアルコキシ基の場合、全部が未置換であるか、あるいは1つまたは2つ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい。)これらの化合物は、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。
【0051】
上記一般式(II−2)で表される化合物以外の単官能重合性化合物の含有量は、用いる重合性化合物及びキラル化合物の合計量のうち、0〜10質量%含有することが好ましく、0〜8質量%含有することがより好ましく、0〜5質量%含有することが特に好ましい。
また、キラル化合物を用いない場合は、上記一般式(II−2)で表される化合物以外の単官能重合性化合物の含有量は、用いる重合性化合物の合計量のうち、0〜10質量%含有することが好ましく、0〜8質量%含有することがより好ましく、0〜5質量%含有することが特に好ましい。
【0052】
本発明の重合性液晶組成物中の単官能重合性化合物と2官能重合性化合物の合計含有量は、用いる重合性化合物の合計量のうち、20〜100質量%含有することが好ましく、40〜100質量%含有することがより好ましく、60〜100質量%含有することが特に好ましい。
【0053】
(キラル化合物)
本発明の重合性液晶組成物にはキラルネマチック相を得ることを目的としてキラル化合物を配合してもよい。キラル化合物のなかでも、分子中に重合性官能基を有する化合物が特に好ましい。キラル化合物中の重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。キラル化合物の配合量は、化合物の螺旋誘起力によって適宜調整することが必要であるが、用いる重合性化合物に対して3〜400%含有することが好ましく、3〜300%含有することがより好ましく、3〜200%含有することが特に好ましい。
【0054】
キラル化合物の具体的例としては、式(1−1)〜(1−9)の化合物を挙げることができる。
【0055】
【化14】
【0056】
(式中、nは0〜12の整数を表す。)また、キラル化合物の具体的例としては、更に、式(1−10)〜(1−14)の化合物を挙げることができる。
【0057】
【化15】
【0058】
(フッ素系界面活性剤)
本発明の重合性液晶組成物には、溶解度パラメータ(SP値)が8.9〜10.5(cal/cm0.5であり、かつ下記式(1)
1.00 < 100×(s+t+u)/MB < 2.10 (1)
(sは、1以上の整数であり、t及びuはそれぞれ0又は1以上の整数、MBは一般式(B)で表される重合性単量体の分子量を表す。)
を満たす一般式(B)で表される重合性単量体及びフッ素原子を含有する重合性単量体を必須の単量体として共重合させた共重合体であり、重量平均分子量が2500から30000である共重合体(III)からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ素系界面活性剤を含有する。
【0059】
【化16】
【0060】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、X、Y、及びZはそれぞれ独立のアルキレン基であり、sは、1以上の整数であり、t及びuはそれぞれ0又は1以上の整数であり、Wは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、又はアリール基である。)
当該フッ素系界面活性剤を用いることにより、本発明の重合性液晶組成物は重合性化合物と当該フッ素系界面活性剤の相溶性が良好なため溶液安定性に優れ、光学異方体とした場合の表面レベリング性に優れる。
【0061】
前記フッ素系界面活性剤は、炭素原子、水素原子、酸素原子、フッ素原子、窒素原子のみから構成されていることが好ましい。これらの原子から構成されている界面活性剤は、本発明において用いる重合性化合物の末端部分(末端基)以外の構造(スペーサー(Sp)部分や、メソゲン(MG)部分)を構成する原子と同一であることから、重合性化合物との相溶性が増すためと考察される。
【0062】
また、前記フッ素系界面活性剤は、−(XO)−(Xは炭素原子数1〜10のアルキレン基であり、sは1以上の整数である。)で表される基を有すると、光学異方体とした場合の表面平滑性(耐ハジキ性)に優れるため好ましい。Xはアルキレン基を表すが、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、テトラメチレン基が好ましく、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基がさらに好ましい。なお、本発明において、「ブチレン」とは炭素原子数4つの分岐状のアルキレンをいい、「テトラメチレン」とは炭素原子数4つの直鎖状のアルキレンをいう。
【0063】
(一般式(B)で表される重合性単量体)
一般式(B)で表される重合性単量体は以下のようである。
【0064】
【化17】
【0065】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、X、Y、及びZはそれぞれ独立のアルキレン基であり、sは、1以上の整数であり、t及びuはそれぞれ0又は1以上の整数であり、Wは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、又はアリール基である。)
上記一般式(B)中のX、Y、及びZはアルキレン基であるが、このアルキレン基は、置換基を有していてもよい。−O−(XO)s−(YO)t−(ZO)u−部分の具体例としては、繰返し単位数sが3以上の整数でt、uが0であり、かつXがプロピレンであるポリオキシプロピレン、繰返し単位数sが3以上の整数でt、uが0であり、かつXがブチレンであるポリオキシブチレン、繰返し単位数sが3以上の整数でt、uが0であり、かつXがテトラメチレンであるポリオキシテトラメチレン、繰返し単位数s及びtがともに1以上の整数でuが0であり、かつX又はYがエチレンで他方がプロピレンであるエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体であるポリオキシアルキレン、繰返し単位数s及びtがともに1以上の整数でuが0であり、かつX又はYがプロピレンで他方がブチレンであるプロピレンオキサイドとブチレンオキサイドとの共重合体であるポリオキシアルキレン、繰返し単位数s及びtがともに1以上の整数でuが0であり、かつX又はYがエチレンで他方がテトラメチレンであるエチレンオキサイドとテトラヒドロフランとの共重合体であるポリオキシアルキレン、繰返し単位数s及びtがともに1以上の整数でuが0であり、かつX又はYがプロピレンで他方がテトラメチレンであるプロピレンオキサイドとテトラヒドロフランとの共重合体であるポリオキシアルキレン、繰返し単位数s、t及びuがともに1以上の整数であり、かつX及びZがエチレンで、Yがプロピレンである、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとの共重合体であるポリオキシアルキレンが挙げられる。
【0066】
なお、これらのポリオキシアルキレンの重合度、すなわち一般式(B)中のsとtとuとの合計が3〜50のものが好ましく、3〜45のものが更に好ましく、3〜40のものが特に好ましい。なお、Xを含む繰返し単位とYを含む繰返し単位とZを含む繰返し単位とは、ランダム状に配置されてもブロック状に配置されても構わない。
【0067】
前記一般式(B)で表される重合性単量体が有するポリオキシアルキレン鎖の中でも、少なくともポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシブチレン鎖又はポリオキシテトラメチレン鎖を有するものは、本発明の重合性液晶組成物に添加した場合に、より優れた耐ハジキ性を発揮することから好ましい。少なくともポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシブチレン鎖又はポリオキシテトラメチレン鎖を有するものとしては、これらのポリオキシアルキレン鎖を単独で有するものでも、他のポリオキシアルキレン鎖との共重合体であっても構わない。
【0068】
前記一般式(B)で表される重合性単量体は、上記の繰返し単位数sが3以上の整数でt、uが0である場合は、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、このポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルの(メタ)アクリル酸エステルではない末端が炭素原子数1〜6のアルキル基によって封止されたもの等が挙げられる。
【0069】
前記一般式(B)で表される重合性単量体のより具体的な例としては、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール・ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・ブチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール・ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・ブチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(テトラエチレングリコール・ブチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリテトラエチレングリコール・ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・トリメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・トリメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール・ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(トリメチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリトリメチレングリコール・ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(ブチレングリコール・トリメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール・ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0070】
これらの一般式(B)で表される重合性単量体は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。なお、「ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)」は、エチレングリコールとプロピレングリコールとのランダム共重合物を意味し、「ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール」は、エチレングリコールとプロピレングリコールとのブロック共重合物を意味し、他のものも同様である。
【0071】
一般式(B)で表される重合性単量体の溶解度パラメータ(以下、SP値と略記する)は、8.9〜10.5(cal/cm0.5である。SP値が前記範囲内であることで、一般式(B)で表される重合性単量体を成分として含むフッ素系界面活性剤を重合性化合物に添加したときの相溶性が保たれ、塗膜中に均一に分布することが可能となる。中でも、一般式(B)で表される重合性単量体のSP値は、上記同様の理由から、9.0〜10.4(cal/cm0.5の範囲がより好ましく、9.1〜10.3(cal/cm0.5の範囲が特に好ましい。
尚、本発明におけるSP値(溶解度パラメータ/単位:((cal/cm0.5)とは、Fedors法により算出されるものである。
【0072】
また、一般式(B)で表される重合性単量体は下記式(1)を満たす。そうすることで、一般式(B)で表される重合性単量体を成分として含むフッ素系界面活性剤を重合性化合物に添加したときの相溶性が保たれ、塗膜中に均一に分布することが可能となる。
1.00 < 100×(s+t+u)/MB < 2.10 (1)
(sは、1以上の整数であり、t及びuはそれぞれ0又は1以上の整数、MBは一般式(B)で表される重合性単量体の分子量を表す。)中でも、式(1)で表される重合性単量体は、上記同様の理由から、1.10〜2.10の範囲がより好ましく、1.20〜2.10の範囲が特に好ましい。
【0073】
(フッ素原子を含有する重合性単量体)
前記フッ素原子を含有する重合性単量体としては、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのエステル部位にフッ素原子を含有するアルキル基又はアルキレンエーテル基を有するものが挙げられる。
中でも、炭素原子数4〜6のフルオロアルキル基(ただし、前記アルキル基は酸素原子によるエーテル結合を有するものも含む。)を有する重合性単量体(A)が好ましい。
【0074】
(重合性単量体(A))
重合性単量体(A)としては、例えば、下記一般式(A1)で表されるものが挙げられる。
【0075】
【化18】
【0076】
(上記一般式(A1)中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、シアノ基、フェニル基、ベンジル基又は−C2n−Rf’(nは1〜8の整数を表し、Rf’は下記式(Rf−1)〜(Rf−7)のいずれか1つの基を表す。)を表し、Lは、下記式(L−1)〜(L−10)のいずれか1つの基を表し、Rfは下記式(Rf−1)〜(Rf−7)のいずれか1つの基を表す。)
【0077】
【化19】
【0078】
(上記式(L−1)、(L−3)、(L−5)、(L−6)及び(L−7)中のnは1〜8の整数を表す。上記式(L−8)、(L−9)及び(L−10)中のmは1〜8の整数を表し、nは0〜8の整数を表す。上記式(L−6)及び(L−7)中のRf’’は下記式(Rf−1)〜(Rf−7)のいずれか1つの基を表す。)
【0079】
【化20】
【0080】
(上記式(Rf−1)〜(Rf−4)中のnは4〜6の整数を表す。上記式(Rf−5)中のmは1〜5の整数であり、nは0〜4の整数であり、かつm及びnの合計は4〜5である。上記式(Rf−6)中のmは0〜4の整数であり、nは1〜4の整数であり、pは0〜4の整数であり、かつm、n及びpの合計は4〜5である。)
また、上記重合性単量体(A)のより好ましい具体例として、下記の重合性単量体(A−1)〜(A−15)等が挙げられる。なお、これらの重合性単量体(A)は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0081】
【化21】
【0082】
【化22】
【0083】
(重合性単量体(D))
また、前記フッ素原子を含有する重合性単量体としては、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とその両末端に重合性不飽和基を有する重合性単量体(D)も好ましい。
前記重合性単量体(D)としては、炭素原子数1〜3の2価フッ化炭素基と酸素原子が交互に連結した構造を有するものが挙げられる。炭素原子数1〜3の2価フッ化炭素基は、1種類であっても良いし複数種の混合であっても良く、具体的には、下記構造式(a1)で表されるものが挙げられる。
【0084】
【化23】
【0085】
(上記構造式(a1)中、Xは下記構造式(a1−1)〜(a1−5)であり、構造式(a1)中の複数のXは同一でも異なっていてもよく、また、複数の同一の構造がランダムに又はブロック状に存在していてもよい。また、nは繰り返し単位数を表す1以上の整数である。)
【0086】
【化24】
【0087】
これらの中でも本発明のフッ素系界面活性剤を添加したコーティング組成物のレベリング性が良好となり、平滑な塗膜が得られる点から前記構造式(a1−1)で表されるパーフルオロメチレン構造と、前記構造式(a1−2)で表されるパーフルオロエチレン構造とが共存するものがとりわけ好ましい。ここで、前記構造式(a1−1)で表されるパーフルオロメチレン構造と、前記構造式(a1−2)で表されるパーフルオロエチレン構造
との存在比率は、モル比率[構造(a1−1)/構造(a1−2)]が1/10〜10/1となる割合であることがレベリング性の点から好ましく、2/8〜8/2となる割合であることが更に好ましく、3/7〜7/3となる割合であることが特に好ましい。また、前記構造式(a1)中のnの値は3〜100の範囲であること、特に6〜70の範囲が好ましい。
【0088】
また、前記ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖は、コーティング組成物のレベリング性とコーティング組成物中の非フッ素系材料への溶解性を両立できる点からポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖1本に含まれるフッ素原子の合計が18〜200個の範囲であることが好ましく、25〜150個の範囲であることがより好ましい。
【0089】
前記重合性単量体(D)の原料となる両末端に重合性不飽和基を導入する前の化合物としては、以下の一般式(a2−1)〜(a2−6)が挙げられる。なお、下記の各構造式中における「−PFPE−」は、上記のポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を表す。
【0090】
【化25】
【0091】
前記重合性単量体(D)のポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端に有する重合性不飽和基は、例えば、下記構造式U−1〜U−5で示される重合性不飽和基を有するものが挙げられる。
【0092】
【化26】
【0093】
これらの重合性不飽和基の中でも特に重合性単量体(D)自体の入手や製造の容易さ、あるいは、重合性単量体(B)との共重合の容易さから、構造式U−1で表されるアクリロイルオキシ基、又は、構造式U−2で表されるメタクリロイルオキシ基が好ましい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基とアクリロイル基の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいう。
【0094】
前記重合性単量体(D)の具体例としては、下記構造式(D−1)〜(D−13)で表されるものが挙げられる。なお、下記の各構造式中における「−PFPE−」は、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を示す。
【0095】
【化27】
【0096】
【化28】
【0097】
これらの中でも重合性単量体(D)の工業的製造が容易である点から、前記構造式(D−1)、(D−2)、(D−5)、(D−6)で表されるものが好ましく、レベリング剤としての性能をより向上させることができることから、前記構造式(D−1)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端にアクリロイル基を有するもの、あるいは前記構造式(D−2)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端にメタクリロイル基を有するものがより好ましい。
【0098】
本発明のフッ素系界面活性剤のレベリング性能を良好なものとするために、フッ素系界面活性剤の原料である前記フッ素原子を含有する重合性単量体及び一般式(B)で表される重合性単量体の質量比[(X)/(B)]は、10/90〜75/25の範囲が好ましく、15/85〜70/30の範囲がより好ましく、20/80〜65/35の範囲がさらに好ましい。また、本発明のフッ素系界面活性剤の移行性を抑えるために、フッ素系界面活性剤の原料である前記フッ素原子を含有する重合性単量体及び一般式(B)で表される重合性単量体の質量比[(X)/(B)]は、10/90〜75/25の範囲が好ましく、15/85〜70/30の範囲がより好ましく、20/80〜65/35の範囲がさらに好ましい。また、前記フッ素原子を含有する重合性単量体及び一般式(B)で表される重合性単量体以外の重合性単量体を用いる場合は、全重合性単量体中50質量%以下とすることが好ましい。
【0099】
(その他重合性単量体)
本発明における共重合体(III)は、原料としてフッ素原子を含有する重合性単量体及び一般式(B)で表される重合性単量体を必須成分とするが、その他の重合性単量体として、アルキル基を有する重合性単量体(C)を併用することができる。前記重合性単量体(C)としては、例えば、下記一般式(C−1)で表されるものが挙げられる。
【0100】
【化29】
【0101】
(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐状又は環構造を有するアルキル基である。)
なお、上記一般式(C−1)中のRは炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐状又は環構造を有するアルキル基であるが、このアルキル基は、脂肪族又は芳香族の炭化水素基、水酸基等の置換基を有していてもよい。上記アルキル基を有するエチレン性不飽和単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸の炭素原子数が1〜18のアルキルエステル;ジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素原子数1〜18の橋架け環状アルキルエステルなどが挙げられる。これらの重合性単量体(C)は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0102】
さらに、本発明のフッ素系界面活性剤の原料として、前記フッ素原子を含有する重合性単量体、一般式(B)で表される重合性単量体及び重合性単量体(C)以外の重合性単量体として、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等の芳香族ビニル類;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類などを用いることもできる。
【0103】
さらに、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等の芳香族ビニル類;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類などを用いることもできる。さらに、炭素原子数1〜6のフッ素化アルキル基を有する重合性単量体を用いても構わない。
【0104】
(共重合体(III))
本発明に用いるフッ素系界面活性剤は、前記一般式(B)で表される重合性単量体及び前記フッ素原子を含有する重合性単量体を必須の単量体として共重合させた共重合体(III)からなる群より選ばれる。共重合体(III)の重量平均分子量(Mw)は2500〜35000であるが、2500〜33000であることが好ましく、2500〜30000であることが更に好ましい。重量平均分子量が2500未満の共重合体を用いると、当該化合物を含有する重合性液晶組成物を基材に塗布して光学異方体とした場合の表面平滑性(ハジキ性)の改善に大きな効果を示さず、また、重量平均分子量が35000より高い共重合体を用いると、重合性液晶組成物への相溶性が低下するため表面平滑性に悪影響を及ぼすおそれがある。重量平均分子量が2500未満の共重合体を用いると、当該化合物を含有する重合性液晶組成物を基材に塗布して光学異方体とした場合に、分子量が小さいために基材ロール巻き取り時に塗布面から基材への界面活性剤成分の移行が大きく、また、重量平均分子量が35000より高い共重合体を用いると、重合性液晶組成物への相溶性が低下するため塗膜表面に局在化するために塗膜面から基材へ移行するおそれがある。また、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比率で表される分子量分布(Mw/Mn)が1.05〜5.00であることが好ましい。ここで、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
【0105】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR−H」(6.0mmI.D.×4cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
測定条件:カラム温度 40℃、展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、流速1.0ml/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
[分散ポリスチレン]
東ソー株式会社製「A−500」、東ソー株式会社製「A−1000」、東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」、東ソー株式会社製「F−1」、東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」、東ソー株式会社製「F−10」、東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」、東ソー株式会社製「F−80」、東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」、東ソー株式会社製「F−550」
【0106】
フッ素系界面活性剤の添加量は重合性化合物及びキラル化合物の合計量に対して、0.005〜5質量%であることが好ましく、0.01〜3質量%であることがより好ましく、0.05〜2.0質量%であることがさらに好ましい。なお、フッ素系界面活性剤の添加量は配合するフッ素系界面活性剤の分子量を考慮して適宜調節することが好ましく、一般的に分子量が低いフッ素系界面活性剤を用いた場合は、分子量が高いフッ素系界面活性剤を用いた場合より、多く添加することが望まれるが、上記重量平均分子量(Mw)が2500〜30000のフッ素系界面活性剤を用いる場合は、上記の範囲とすることが好ましい。
【0107】
前記共重合体(III)としては、−(XO)−(Xは炭素原子数1〜10のアルキレン基であり、sは1以上の整数である。)で表されるオキシアルキレン基を有することが好ましい。該オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基が好ましい。
【0108】
また、前記フッ素系界面活性剤(III)には、フルオロアルキル基、フルオロアルケニル基及び/又はフルオロアルキレンエーテル基を有していても良い。該フルオロアルキル基、フルオロアルケニル基及び/又はフルオロアルキレンエーテル基としては、部分的にフッ素化されているかまたは全てフッ素化され、炭素数3〜12個程度の直鎖または分岐のフルオロアルキル基、フルオロアルケニル基及び/又はフルオロアルキレンエーテル基を挙げることができる。
【0109】
(その他の液晶化合物)
本発明の重合性液晶組成物は、重合性基を有していない液晶化合物を必要に応じて添加してもよい。しかし、添加量が多すぎると、得られた光学異方体から液晶化合物が溶出して積層部材を汚染する恐れがあり、加えて光学異方体の耐熱性が下がるおそれがあるので、添加する場合は、重合性液晶化合物全量に対して30質量%以下とすることが好ましく、15質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0110】
(重合開始剤)
本発明の重合性液晶組成物は、熱重合開始剤、光重合開始剤等の重合開始剤を少なくとも1種類以上含有することが好ましい。熱重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。また、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン類等が挙げられる。具体的には、BASF社の「イルガキュア651」、「イルガキュア184」、「イルガキュア907」、「イルガキュア127」、「イルガキュア369」、「イルガキュア379」、「イルガキュア819」、「イルガキュアOXE01」、「イルガキュアOXE02」、「ルシリンTPO」、「ダロキュア1173」やLAMBSON社の「エサキュア1001M」、「エサキュアKIP150」、「スピードキュアBEM」、「スピードキュアBMS」、「スピードキュアPBZ」、「ベンゾフェノン」等が挙げられる。さらに、光カチオン開始剤としては、光酸発生剤を用いることができる。光酸発生剤としてはジアゾジスルホン系化合物、トリフェニルスルホニウム系化合物、フェニルスルホン系化合物、スルフォニルピリジン系化合物、トリアジン系化合物及びジフェニルヨードニウム化合物が好適に用いられる。
【0111】
光重合開始剤の使用量は重合性液晶組成物に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもでき、また、増感剤等を添加しても良い。
【0112】
本発明の重合性液晶組成物は、重合性基を有するが重合性液晶化合物ではない化合物を添加することもできる。このような化合物としては、通常、この技術分野で重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーとして認識されるものであれば特に制限なく使用することができる。添加する場合は、本発明の重合性液晶組成物に用いる重合性化合物及びキラル化合物の合計量に対して、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0113】
(その他の化合物)
本発明の重合性液晶組成物は、光学異方体とした場合の空気界面のチルト角を効果的に減じるために下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有する重量平均分子量が100以上である化合物を少なくとも1種類以上含有してもよい。
【0114】
【化30】
【0115】
(式中、R36、R37、R38及びR39はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の水素原子は1つ以上のハロゲン原子で置換されていても良い。)
該一般式(3)で表される好適な化合物として、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、パラフィン、流動パラフィン、塩素化ポリプロピレン、塩素化パラフィン、塩素化流動パラフィン等を挙げることができる。
該一般式(3)で表される化合物の添加量は重合性液晶組成物に対して、0.01〜1質量%であることが好ましく、0.05〜0.5質量%であることがより好ましい。
【0116】
(連鎖移動剤)
本発明の重合性液晶組成物は、光学異方体とした場合の基材との密着性をより向上させるため、連鎖移動剤を添加することも好ましい。連鎖移動剤としては、チオール化合物が好ましく、モノチオール、ジチオール、トリチオール、テトラチオール化合物がより好ましく、トリチオール化合物、テトラチオール化合物が更により好ましい。具体的には下記一般式(4−1)〜(4−12)で表される化合物が好ましい。
【0117】
【化31】
【0118】
【化32】
【0119】
(式中、R65は炭素原子数2〜18のアルキル基を表し、該アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であっても良く、該アルキル基中の1つ以上のメチレン基は酸素原子、及び硫黄原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−OCO−、−COO−、又は−CH=CH−で置換されていてもよく、R66は炭素原子数2〜18のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ以上のメチレン基は酸素原子、及び硫黄原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−OCO−、−COO−、又は−CH=CH−で置換されていてもよい。)
チオール化合物の添加量は重合性組成物に対して、0.5〜10質量%であることが好ましく、1.0〜5.0質量%であることがより好ましい。
【0120】
(その他の添加剤)
また、本発明の重合性液晶組成物の溶液安定性を高めるため、重合禁止剤、酸化防止剤等を添加することも好ましい。そのような化合物として、ヒドロキノン誘導体、ニトロソアミン系重合禁止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられ、より具体的には、p−メトキシフェノール、tert-ブチルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、和光純薬工業社の「Q−1300」、「Q−1301」、BASF社の「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」、「IRGANOX1076」、「IRGANOX1098」、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1330」、「IRGANOX1425」、「IRGANOX1520」、「IRGANOX1726」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX3790」、「IRGANOX5057」、「IRGANOX565」等々があげられる。
【0121】
重合禁止剤、酸化防止剤の添加量は重合性液晶組成物に対して、0.01〜1.0質量%であることが好ましく、0.05〜0.5質量%であることがより好ましい。
【0122】
本発明の重合性液晶組成物を偏光フィルムや配向膜の原料、又は印刷インキ及び塗料、保護膜等の用途に利用する場合には、その目的に応じて、金属、金属錯体、染料、顔料、蛍光材料、燐光材料、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物、などを添加してもよい。
【0123】
(有機溶媒)
本発明の重合性液晶組成物に用いる有機溶媒としては特に限定はないが、重合性化合物が良好な溶解性を示す溶媒が好ましく、100℃以下の温度で乾燥できる溶媒であることが好ましい。そのような溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、クメン、メシチレン等の芳香族系炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アニソール等のエーテル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、等のアミド系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン等が挙げられる。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできるが、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤のうちのいずれか1種類以上を用いることが好ましく、2種類混合して用いる場合には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤のいずれか1種類を混合して用いることが溶液安定性の点から好ましい。
【0124】
重合性液晶組成物中の有機溶媒の比率は、本発明に用いられる重合性液晶組成物が通常塗布により行われることから、塗布した状態を著しく損なわない限りは特に制限はないが、重合性液晶組成物の固形分が10〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0125】
(光学異方体の製造方法)
(光学異方体)
本発明の重合性液晶組成物を、配向機能を有する基材上に塗布し、本発明の重合性液晶組成物中の液晶分子を、ネマチック相を保持した状態で均一に配向させ、重合させることによって、本発明の光学異方体が得られる。
【0126】
(基材)
本発明の光学異方体に用いられる基材は、液晶デバイス、ディスプレイ、光学部品や光学フィルムに通常使用する基材であって、本発明の重合性組成物溶液の塗布後の乾燥時における加熱に耐えうる耐熱性を有する材料であれば、特に制限はない。そのような基材としては、ガラス基材、金属基材、セラミックス基材やプラスチック基材等の有機材料が挙げられる。特に基材が有機材料の場合、セルロース誘導体、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ナイロン又はポリスチレン等が挙げられる。中でもポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロース誘導体、ポリアリレート、ポリカーボネート等のプラスチック基材が好ましい。基材の形状としては、平板の他、曲面を有するものであっても良い。これらの基材は、必要に応じて、電極層、反射防止機能、反射機能を有していてもよい。
【0127】
本発明の重合性液晶組成物の塗布性や接着性向上のために、これらの基材の表面処理を行っても良い。表面処理として、オゾン処理、プラズマ処理、コロナ処理、シランカップリング処理などが挙げられる。また、光の透過率や反射率を調節するために、基材表面に有機薄膜、無機酸化物薄膜や金属薄膜等を蒸着など方法によって設ける、あるいは、光学的な付加価値をつけるために、基材がピックアップレンズ、ロッドレンズ、光ディスク、位相差フィルム、光拡散フィルム、カラーフィルター、等であっても良い。中でも付加価値がより高くなるピックアップレンズ、位相差フィルム、光拡散フィルム、カラーフィルターは好ましい。
【0128】
(配向処理)
また、上記基材には、本発明の重合性組成物溶液を塗布乾燥した際に重合性組成物が配向するように、通常配向処理が施されている、あるいは配向膜が設けられていても良い。配向処理としては、延伸処理、ラビング処理、偏光紫外可視光照射処理、イオンビーム処理、基材へのSiOの斜方蒸着処理、等が挙げられる。配向膜を用いる場合、配向膜は公知慣用のものが用いられる。そのような配向膜としては、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルホン、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アクリル樹脂、クマリン化合物、カルコン化合物、シンナメート化合物、フルギド化合物、アントラキノン化合物、アゾ化合物、アリールエテン化合物等の化合物が挙げられる。ラビングにより配向処理する化合物は、配向処理、もしくは配向処理の後に加熱工程を入れることで材料の結晶化が促進されるものが好ましい。ラビング以外の配向処理を行う化合物の中では光配向材料を用いることが好ましい。
【0129】
一般に、配向機能を有する基板に液晶組成物を接触させた場合、液晶分子は基板付近で基板を配向処理した方向に沿って配向する。液晶分子が基板と水平に配向するか、傾斜あるいは垂直して配向するかは、基板への配向処理方法による影響が大きい。例えば、インプレーンスイッチング(IPS)方式の液晶表示素子に使用するようなプレチルト角のごく小さな配向膜を基板上に設ければ、ほとんど水平に配向した重合性液晶層が得られる。
また、TN型液晶表示素子に使用するような配向膜を基板上に設けた場合は、少しだけ配向が傾斜した重合性液晶層が得られ、STN方式の液晶表示素子に使用するような配向膜を使うと、大きく配向が傾斜した重合性液晶層が得られる。
液晶組成物をプレチルト角のごく小さな水平配向(略水平配向)機能を有する基板に接触させたとき、組成物中の液晶分子は、基板付近ではきちんと水平配向するが空気界面付近では配向規制力がうまく伝播されず、一部配向が乱れる(これが配向欠陥である)。しかし共重合体(S)を含有する本発明の重合性液晶組成物は、該共重合体(S)が空気界面近傍に偏在し、重合性液晶組成物中の液晶分子が受けた基板側の配向規制力を妨げることなく、空気界面付近の液晶分子を配向させるため、配向欠陥がなく、均一に配向した光学的異方性の大きい光学異方体を得ることができると考えられる。
【0130】
(塗布)
本発明の光学異方体を得るための塗布法としては、アプリケーター法、バーコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、フレキソコーティング法、インクジェット法、ダイコーティング法、キャップコーティング法、ディップコーティング法、スリットコーティング法等、公知慣用の方法を行うことができる。重合性液晶組成物を塗布後、乾燥させる。
塗布後、本発明の重合性液晶組成物中の液晶分子をネマチック相を保持した状態で均一に配向させることが好ましい。具体的には、液晶の配向を促すような熱処理を行うと、共重合体(S)をより表面に偏在させ、配向をより促進することができ好ましい。熱処理法としては、例えば、本発明の重合性液晶組成物を基板上に塗布後、該液晶組成物のN(ネマチック相)−I(等方性液体相)転移温度(以下、N−I転移温度と略す)以上に加熱して、該液晶組成物を等方相液体状態にする。そこから、必要に応じ徐冷してネマチック相を発現させる。このとき、一旦液晶相を呈する温度に保ち、液晶相ドメインを充分に成長させてモノドメインとすることが望ましい。あるいは、本発明の重合性液晶組成物を基板上に塗布後、本発明の重合性液晶組成物のネマチック相が発現する温度範囲内で温度を一定時間保つような加熱処理を施しても良い。
【0131】
加熱温度が高過ぎると重合性液晶化合物が好ましくない重合反応を起こして劣化するおそれがある。また、冷却しすぎると、重合性液晶組成物が相分離を起こし、結晶の析出、スメクチック相のような高次液晶相を発現し、配向処理が不可能になることがある。
このような熱処理をすることで、単に塗布するだけの塗工方法と比べて、配向欠陥の少ない均質な光学異方体を作製することができる。
また、このようにして均質な配向処理を行った後、液晶相が相分離を起こさない最低の温度、即ち過冷却状態となるまで冷却し、該温度において液晶相を配向させた状態で重合すると、より配向秩序が高く、透明性に優れる光学異方体を得ることができる。
【0132】
(重合工程)
乾燥した重合性組成物の重合処理は、プレーナー配向した状態で一般に紫外線等の光照射、あるいは加熱によって行われる。重合を光照射で行う場合は、具体的には390nm以下の紫外光を照射することが好ましく、250〜370nmの波長の光を照射することが最も好ましい。但し、390nm以下の紫外光により重合性組成物が分解などを引き起こす場合は、390nm以上の紫外光で重合処理を行ったほうが好ましい場合もある。この光は、拡散光で、かつ偏光していない光であることが好ましい。
【0133】
(重合方法)
本発明の重合性液晶組成物を重合させる方法としては、活性エネルギー線を照射する方法や熱重合法等が挙げられるが、加熱を必要とせず、室温で反応が進行することから活性エネルギー線を照射する方法が好ましく、中でも、操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。照射時の温度は、本発明の重合性液晶組成物が液晶相を保持できる温度とし、重合性液晶組成物の熱重合の誘起を避けるため、可能な限り30℃以下とすることが好ましい。尚、液晶組成物は、通常、昇温過程において、C(固相)−N(ネマチック)転移温度(以下、C−N転移温度と略す。)から、N−I転移温度範囲内で液晶相を示す。一方、降温過程においては、熱力学的に非平衡状態を取るため、C−N転移温度以下でも凝固せず液晶状態を保つ場合がある。この状態を過冷却状態という。本発明においては、過冷却状態にある液晶組成物も液晶相を保持している状態に含めるものとする。具体的には390nm以下の紫外光を照射することが好ましく、250〜370nmの波長の光を照射することが最も好ましい。但し、390nm以下の紫外光により重合性組成物が分解などを引き起こす場合は、390nm以上の紫外光で重合処理を行ったほうが好ましい場合もある。この光は、拡散光で、かつ偏光していない光であることが好ましい。紫外線照射強度は、0.05kW/m〜10kW/mの範囲が好ましい。特に、0.2kW/m〜2kW/mの範囲が好ましい。紫外線強度が0.05kW/m未満の場合、重合を完了させるのに多大な時間がかかる。一方、2kW/mを超える強度では、重合性液晶組成物中の液晶分子が光分解する傾向にあることや、重合熱が多く発生して重合中の温度が上昇し、重合性液晶のオーダーパラメーターが変化して、重合後のフィルムのリタデーションに狂いが生じる可能性がある。
【0134】
マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させた後、該未重合部分の配向状態を、電場、磁場又は温度等をかけて変化させ、その後該未重合部分を重合させると、異なる配向方向をもった複数の領域を有する光学異方体を得ることもできる。
また、マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させる際に、予め未重合状態の重合性液晶組成物に電場、磁場又は温度等をかけて配向を規制し、その状態を保ったままマスク上から光を照射して重合させることによっても、異なる配向方向をもった複数の領域を有する光学異方体を得ることができる。
本発明の重合性液晶組成物を重合させて得られる光学異方体は、基板から剥離して単体で光学異方体として使用することも、基板から剥離せずにそのまま光学異方体として使用することもできる。特に、他の部材を汚染し難いので、被積層基板として使用したり、他の基板に貼り合わせて使用したりするときに有用である。
【実施例】
【0135】
以下に本発明を合成例、実施例、及び、比較例によって説明するが、もとより本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0136】
(実施例1)
式(A−1)で表される化合物30部、式(A−2)で表される化合物30部、式(B−1)で表される化合物15部、式(B−2)で表される化合物15部、式(B−3)で表される化合物10部、化合物(E−1)0.1部、化合物(F−1)5部、及び、界面活性剤である式(H−1)で表される化合物0.15部を、有機溶媒である化合物(G−1)300部に、攪拌プロペラを有する攪拌装置を用いて、攪拌速度が500rpm、溶液温度が80℃の条件下で1時間攪拌後、0.2μmのメンブランフィルターで濾過して実施例1の重合性液晶組成物(1)を得た。
【0137】
(実施例2〜37、比較例1〜6)
本発明の重合性液晶組成物(1)の調製と同様に、表1〜表4に示す式(A−1)〜式(A−10)、式(B−1)〜式(B−8)、式(C−1)〜式(C−2)、式(D−1)〜式(D−2)で表わされる化合物、化合物(E−1)、化合物(F−1)、式(H−1)〜式(H−17)で表される化合物を、有機溶媒である化合物(G−1)300部に、攪拌プロペラを有する攪拌装置を用いて、攪拌速度が500rpm、溶液温度が80℃の条件下で1時間攪拌後、0.2μmのメンブランフィルターで濾過して、実施例2〜33の重合性液晶組成物(2)〜(33)及び実施例34〜37の重合性液晶組成物(40)〜(43)、及び比較例1〜6の重合性液晶組成物(34)〜(39)を得た。
【0138】
表1〜表4に、本発明の重合性組成物(1)〜(33)及び(40)〜(43)、比較用の重合性液晶組成物(34)〜(39)の具体的な組成を示す。また、表5に、式(H−1)〜式(H−17)で表される化合物における一般式(B)で表される重合性単量体のSP値及び式(1)の値、式(H−1)〜式(H−17)で表される化合物の重量平均分子量(Mw)、式(H−1)〜式(H−17)で表される化合物におけるフッ素原子を含有する重合性単量体(X)及び一般式(B)で表される重合性単量体の質量比[(X)/(B)]の値を示す。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
【表3】
【0142】
【表4】
【0143】
【化33】
【0144】
【化34】
【0145】
【化35】
【0146】
【化36】
【0147】
【化37】
p−メトキシフェノール(E−1)
イルガキュア907(F−1)
メチルイソブチルケトン(G−1)
【0148】
【化38】
【0149】
【化39】
【0150】
【化40】
【0151】
【化41】
【0152】
【化42】
【0153】
【化43】
【0154】
【化44】
【0155】
【化45】
【0156】
【化46】
【0157】
【化47】
【0158】
【化48】
【0159】
【化49】
【0160】
【表5】
【0161】
(レベリング性評価)
【0162】
【化50】
【0163】
TACフィルム上に前記式(5)で表される光配向ポリマーをバーコーターで塗布し、80℃で1分間乾燥し、乾燥膜厚40nmの塗膜に、超高圧水銀ランプに波長カットフィルター、バンドパスフィルター、及び、偏光フィルターを介して、波長365nm付近の可視紫外光(照射強度:20mW/cm)の直線偏光でかつ平行光を、基材に対して垂直方向から照射し(積算光量:100mJ/cm)光配向膜が積層した基材を得た。調整した重合性液晶組成物(1)をバーコーター#4で塗布し、80℃で2分間乾燥し、その後室温で15分放置した後に、乾燥膜厚1.0μmの塗膜にコンベア式の高圧水銀ランプを使用して積算光量が500mJ/cmとなるようにUV光を照射し、得られたフィルムのハジキ具合を目視にて観察した。
◎:塗膜表面にハジキ欠陥が全く観察されない。
○:塗膜表面にハジキ欠陥が極僅かに観察される。
△:塗膜表面にハジキ欠陥が少し観察される。
×:塗膜表面にハジキ欠陥が多数観察される。
【0164】
(裏移り評価)
レべリング性評価用サンプルとして作成したフィルムの重合性液晶組成物面(A)に同一のTACフィルム(B)を重ね合わせ、荷重40g/cm、80℃で30分間保持したのち、重ね合わせたまま室温まで冷却させた。その後、フィルム(B)を剥離し、フィルム(B)に重合性液晶組成物中の界面活性剤が裏移りしているかどうかを目視にて観察した。なお、界面活性剤がフィルム(B)に移行した場合、裏移りした部分が白濁したように観察される。
◎:全く観察されない。
○:極僅かに観察される。
△:少し観察される。
×:全体的に観察される。
【0165】
(配向性評価)
調製した重合性液晶組成物(1)を室温で、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム上にバーコーター♯4で塗布した後、80℃で2分乾燥した。その後、室温で15分放置した後に、コンベア式の高圧水銀ランプを使用して、積算光量が500mJ/cmとなるようにセットしてUV光を照射し、得られたフィルムの配向性を目視及び偏光顕微鏡にて評価した。
◎:目視で欠陥が全くなく、偏光顕微鏡観察でも欠陥が全くない。
○:目視では欠陥がないが、偏光顕微鏡観察で一部に無配向部分が存在している。
△:目視では欠陥がないが、偏光顕微鏡観察で全体的に無配向部分が存在している。
×:目視で一部欠陥が生じており、偏光顕微鏡観察でも全体的に無配向部分が存在している。
【0166】
得られた結果を以下の表に示す。
【0167】
【表6】
【0168】
実施例1と同一条件で、重合性液晶組成物(2)〜(39)及び(40)〜(43)を用いて、レベリング性、裏移り、及び配向性を評価し、結果を上記表に示した。なお、レベリング性、裏移り、配向性評価用フィルムの基質としては、実施例2〜20、実施例29〜33、実施例36〜37、及び比較例1〜5では、実施例1と同様に、TACフィルム基材上に前記式(5)で表される光配向ポリマーを配向膜として積層したものを用い、実施例22、実施例24、実施例26〜28、実施例35では、COPフィルム基材上にシランカップリング系垂直配向膜を積層したものを用い、実施例21、実施例23、実施例25、実施例34、及び、比較例6では、COPフィルム基材(垂直配向膜なし)を用いた。また、実施例2〜28、実施例31〜37、及び比較例1〜6では、実施例1と同様にバーコーター#4で塗布し、実施例29、および実施例30では、バーコーター#9で塗布し、評価用塗膜を作成した。
【0169】
その結果、式(H−1)〜式(H−11)、及び式(H−17)で表される界面活性剤を用いた重合性液晶組成物(実施例1〜37)は、レベリング性評価、裏移り評価、配向性試験結果が全て良好であり、生産性に優れているといえる。そのうち、特に、特定のポリオキシアルキレン骨格、及び特定の分子量を有するフッ素系界面活性剤を用いた重合性液晶組成物は、レベリング性評価、裏移り評価、配向性試験結果が非常に良好な結果となった。一方、比較例1〜6の結果から、特定の分子量範囲外、特定のポリオキシアルキレン骨格を有しないフッ素系界面活性剤を用いた場合、レベリング性評価、裏移り評価、及び配向性試験結果の何れかが不良であり、本発明の重合性液晶組成物に比べ劣る結果となった。